特許第6834278号(P6834278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834278
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】コークス製造装置
(51)【国際特許分類】
   C10B 55/00 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   C10B55/00
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-180511(P2016-180511)
(22)【出願日】2016年9月15日
(65)【公開番号】特開2018-44084(P2018-44084A)
(43)【公開日】2018年3月22日
【審査請求日】2019年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 政徳
(72)【発明者】
【氏名】安楽 太介
(72)【発明者】
【氏名】平原 聡
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−231961(JP,A)
【文献】 特開平11−246866(JP,A)
【文献】 特開昭50−070418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B57/00
C10C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分含有量が0.5重量%以上のコールタールであるコールタール(a)が得られるコークス炉(A)、水分含有量が0.5重量%未満、100℃における粘度が5〜300mPa・sのコールタールであるコールタール(b)が得られる加熱装置(B)、及び100℃における粘度が10〜12000mPa・sであるコールタール(b)の蒸留残油が回収される蒸留塔(C)を有すると共に、
原料炭を前記コークス炉(A)に供給するための供給ライン(11)、
前記コールタール(a)を前記加熱装置(B)に供給するための供給ライン(12)、
前記コールタール(b)を蒸留塔(C)に供給するための供給ライン(13)、
前記コールタール(b)の蒸留残油を抜き出すための抜き出しライン(14)、
前記供給ライン(13)から分岐され、前記供給ライン(13)内の前記コールタール(b)の一部を前記抜き出しライン(14)に供給するための供給ライン(15)、及び
前記供給ライン(15)内の前記コールタール(b)と、前記抜き出しライン(14)内の前記コールタール(b)の蒸留残油とが混合され、100℃における粘度が10〜12000mPa・sであり、100℃以上160℃以下とし、かつ、前記供給ライン(11)にその混合液体が送られる供給ライン(16)、
を有するコークス製造装置。
【請求項2】
前記抜き出しライン(14)に熱交換器(D)を有する請求項1に記載のコークス製造装置。
【請求項3】
前記供給ライン(15)に熱交換器(E)を有する請求項1又は2に記載のコークス製造装置。
【請求項4】
前記供給ライン(12)にタールデカンターを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークス製造装置。
【請求項5】
水分含有量が0.5重量%以上のコールタールであるコールタール(a)が得られるコークス炉(A)、水分含有量が0.5重量%未満、100℃における粘度が5〜300mPa・sのコールタールであるコールタール(b)が得られる加熱装置(B)、100℃における粘度が10〜12000mPa・sであるコールタール(b)の蒸留残油が回収される蒸留塔(C)、及びコールタール(b)とコールタール(b)の蒸留残油を貯蔵、混合して混合液体とする貯蔵設備(F)を有すると共に、
原料炭を前記コークス炉(A)に供給するための供給ライン(21)、
前記コールタール(a)を前記加熱装置(B)に供給するための供給ライン(22)、
前記コールタール(b)を蒸留塔(C)に供給するための供給ライン(23)、
前記コールタール(b)の蒸留残油を貯蔵設備(F)に供給する供給ライン(24)、
前記供給ライン(23)から分岐され、前記供給ライン(23)内の前記コールタール(b)の一部を貯蔵設備(F)に供給するための供給ライン(25)、及び
前記貯蔵設備(F)から抜き出され、かつ前記供給ライン(21)に、100℃における粘度が10〜12000mPa・s、かつ、100℃以上160℃以下の前記混合液体が送られる供給ライン(26)、
を有するコークス製造装置。
【請求項6】
前記供給ライン(24)に熱交換器(D)を有する請求項5に記載のコークス製造装置。
【請求項7】
前記供給ライン(25)に熱交換器(E)を有する請求項5又は6に記載のコークス製造装置。
【請求項8】
前記供給ライン(22)にタールデカンターを有する請求項5〜7のいずれか1項に記
載のコークス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコークス製造装置に関する。より詳細には、本発明は、設備が簡素化され、保守、点検を容易に行うことができるコークス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄用のコークスは高炉内において、還元剤、熱源、通気性を保つための支持材等として用いられている。この製鉄用コークスは、粘結炭や非微粘結炭等の石炭の粉砕物(粉炭)を配合してコークス炉に装入し、これをコークス炉内において高温で乾留することにより製造される。コークスは、製鉄時に高炉内で粉化すると、高炉内の通気性を悪化させるため、高い強度を有することが望ましい。このコークスの強度を上げる方法として、原料炭に各種粘結材を配合する方法が知られている(非特許文献1)。
【0003】
この粘結材の代表的なものとして、コールタールピッチやアスファルトピッチ等の固形状の成分が用いられている。特に、粘結材として用いられるコールタールピッチは、コールタールを加熱、固形化して製造される。このコールタールはコークスの乾留時に発生し、タールデカンターにてコールタールとコールタールスラッジとに分離される。そして、コールタールのみがコールタールピッチを製造するための次工程に送られ、粘結材であるコールタールピッチが製造される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「石炭 化学と工業」P.285−290、P.315−319
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、非特許文献1に記載されているようなコールタールピッチの原料であるコールタールは通常、水分を含む液状であるため、常温で粘度が低く、配管等を利用した取り扱いが可能であるが、そのままでは粘結材としての性能が期待できない。一方、水分を含まないコールタールの蒸留残部は粘結材として使用することが可能であるが、常温で高粘性を有するため、配管等による輸送が困難である。
【0006】
これらの理由から両者を混合することにより粘結材として利用することが期待されるが、水分を含むコールタールを蒸留残油と混合した場合、突沸等により設備を破損するおそれがあり、これを防ぐためには高価な設備が必要であると共に、保守、点検等に多大な労力を要するものであった。また、水分を含まないコールタールの蒸留残部から固形のコールタールピッチを製造する際の加熱、固形化するための設備も必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点を解決し、設備が簡素化され、保守、点検を容易に行うことができるコークス製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、前記コールタールとして実質的に水分を含まないコールタールとそのコールタールの蒸留残油を配管内又は貯蔵設備内で混合する機構を備えた装置により上記課題を解決し得ることができることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の[1]〜[8]の通りである。
【0009】
[1]水分含有量が0.5重量%以上のコールタールであるコールタール(a)が得られるコークス炉(A)、水分含有量が0.5重量%未満のコールタールであるコールタール(b)が得られる加熱装置(B)、及びコールタール(b)の蒸留残油が回収される蒸留塔(C)を有すると共に、原料炭を前記コークス炉(A)に供給するための供給ライン(11)、前記コールタール(a)を前記加熱装置(B)に供給するための供給ライン(12)、前記コールタール(b)を蒸留塔(C)に供給するための供給ライン(13)、前記コールタール(b)の蒸留残油を抜き出すための抜き出しライン(14)、前記供給ライン(13)から分岐され、前記供給ライン(13)内の前記コールタール(b)の一部を前記抜き出しライン(14)に供給するための供給ライン(15)、及び前記供給ライン(15)内の前記コールタール(b)と、前記抜き出しライン(14)内の前記コールタール(b)の蒸留残油とが混合され、かつ、前記供給ライン(11)にその混合液体が送られる供給ライン(16)、有するコークス製造装置。
【0010】
[2]前記抜き出しライン(14)に熱交換器(D)を有する[1]に記載のコークス製造装置。
[3]前記供給ライン(15)に熱交換器(E)を有する[1]又は[2]に記載のコークス製造装置。
[4]前記供給ライン(12)にタールデカンターを有する[1]〜[3]のいずれか1項に記載のコークス製造装置。
【0011】
[5]水分含有量が0.5重量%以上のコールタールであるコールタール(a)が得られるコークス炉(A)、水分含有量が0.5重量%未満のコールタールであるコールタール(b)が得られる加熱装置(B)、コールタール(b)の蒸留残油が回収される蒸留塔(C)、及びコールタール(b)とコールタール(b)の蒸留残油を貯蔵、混合して混合液体とする貯蔵設備(F)を有すると共に、原料炭を前記コークス炉(A)に供給するための供給ライン(21)、前記コールタール(a)を前記加熱装置(B)に供給するための供給ライン(22)、前記コールタール(b)を蒸留塔(C)に供給するための供給ライン(23)、前記コールタール(b)の蒸留残油を貯蔵設備(F)に供給する供給ライン(24)、前記供給ライン(23)から分岐され、前記供給ライン(23)内の前記コールタール(b)の一部を貯蔵設備(F)に供給するための供給ライン(25)、及び前記貯蔵設備(F)から抜き出され、かつ前記供給ライン(21)にその混合液体が送られる供給ライン(26)、
を有するコークス製造装置。
【0012】
[6]前記供給ライン(24)に熱交換器(D)を有する[5]に記載のコークス製造装置。
[7]前記供給ライン(25)に熱交換器(E)を有する[5]又は[6]に記載のコークス製造装置。
[8]前記供給ライン(22)にタールデカンターを有する[5]〜[7]のいずれか1項に記載のコークス製造装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるコークス製造装置を用いることにより、副生するコールタールを液状のまま粘結材として用いることができ、副生物の有効利用を図ることができる。また、副生コールタールは、加熱装置を用いて水分を除去し、高価な設備を用いることなく、コークス炉に供給するので、設備が簡素化され、保守、点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明に係るコークス製造装置の一例を示すフロー図
図2】この発明に係るコークス製造装置の他の例を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
この発明は、コークス炉を含む装置用いて、コークスを製造すると共に、副生するコールタールを再利用するためのコークス製造装置に係る発明である。
このコークス炉において、原料炭からコークスを製造する際、コールタールが副生する。この副生コールタールは、粘結材として、原料炭の一部として用いることができ、次に示すコールタール回収工程を有するコークス製造装置を用いてコールタールを回収し、再利用することができる。
【0016】
〔コークス製造装置〕
本発明の第1の態様にかかるコークス製造装置は、図1に示すように、コークス炉A、加熱装置B、及び蒸留塔Cを有する装置である。また、原料炭を前記コークス炉Aに供給するための供給ライン11、このコークス炉Aで得られたコールタールAを前記加熱装置Bに供給するための供給ライン12、この加熱装置Bで得られたコールタールBを蒸留塔Cに供給するための供給ライン13、この蒸留塔Cで生じたコールタールBの蒸留残油を抜き出すための抜き出しライン14、前記供給ライン13から分岐され、前記供給ライン13内の前記コールタールBの一部を前記抜き出しライン14に供給するための供給ライン15、及び前記供給ライン15内の前記コールタールBと、前記抜き出しライン14内の前記コールタールBの蒸留残油とが混合され、かつ、前記供給ライン11にその混合液体が送られる供給ライン16等の各ライン、すなわち移送のための各配管を有する。
【0017】
また、本発明の第2の態様にかかるコークス製造装置は、図2に示すように、コークス炉A、加熱装置B、蒸留塔C、及び貯蔵設備Fを有する装置である。また、原料炭を前記コークス炉Aに供給するための供給ライン21、このコークス炉Aで得られたコールタールAを前記加熱装置Bに供給するための供給ライン22、この加熱装置Bで得られたコールタールBを蒸留塔Cに供給するための供給ライン23、この蒸留塔Cで生じたコールタールBの蒸留残油を抜き出して貯蔵設備Fに供給するライン24、前記供給ライン23内のコールタールBの一部を貯蔵設備Fに供給するための供給ライン25、及び貯蔵設備Fから抜き出され、かつ前記供給ライン21にその混合液体が送られる供給ライン26等の各ライン、すなわち移送のための各配管を有する。
【0018】
なお、図1及び図2は本発明の第1の態様及び第2の態様のそれぞれにかかるコークス製造装置の一例を示すものであり、本発明のコークス製造装置は、これらの図面で示された装置に限定されず、その要旨を超えない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0019】
次に、これらのコークス製造装置について、詳細に説明する。
まず、前記コークス炉Aには、前記原料炭が供給ライン11、21を通して、水分等と共に供給される。そして、このコークス炉Aにおいて、1000〜1300℃程度で15〜25時間程度、蒸し焼き(乾留)される。これにより、コークスが製造されると共に、コールタール、ガス液及びコークス炉ガスが副生される。なお、このコークス炉Aよりコークス抜き出しライン17、27を通じてコークスが抜き出される。
【0020】
前記の原料炭とは、コークスの製造に用いられる石炭のことをいい、粘結炭及び非微粘結炭等を含む石炭の粉砕物(粉炭)の配合物である。前記原料炭中の前記粘結炭の含有量(配合割合)は限定されないが、10〜80重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましい。また、原料炭中の前記非微粘結炭の配合量は限定されないが、5〜60重量%が好ましく、10〜40重量%がより好ましい。前記原料炭中の前記粘結炭の配合割合が上記下限未満である場合は、得られるコークスの強度が低下する傾向がある。一方、前記原料炭中の前記粘結炭の配合割合が上記上限を超過する場合は、コークス製造において炉内の閉塞を生じる場合がある。
【0021】
前記原料炭は、通常、粒径が3mm以下の石炭粒子を70〜90重量%程度の範囲で含有する。すなわち、使用する原料炭の粒径が前記範囲に該当するものである場合は、原料炭が全て粉炭で構成されていることを意味する。なお、粉炭は一般的には石炭を粉砕することによって製造される。
【0022】
次いで、図示しないが、図1又は図2のコークス炉Aと後記する加熱装置Bとの間、詳しくは、前記供給ライン12、22の途中に通常、設置されるタールデカンターにより、コークス炉Aにおいて発生したガス液(コークス炉から発生する水分)と副生物たるコールタールとが分離される。
【0023】
一方、副生物たるコールタールは、水分を0.5重量%以上含むコールタール(本発明において「コールタールA」と称する。)であり、以降の工程で加熱の際に沸騰し、配管内の圧力が上昇することで配管が破損するなどの問題が生じ、取扱いが難しくなるので、前記加熱装置Bに送られ、水分を除去し、水分含有量が0.5重量%未満のコールタール(本発明において「コールタールB」と称する。)とされる。また、コールタールBの100℃における粘度は通常、5〜300mPa・sであり、好ましくは10〜250mPa・sである。粘度が10mPa・s未満の場合、高粘度の流体を扱うポンプを使用する場合において、送液が困難になる傾向があり、かつコールタールBと混合した際に軽質成分の揮発量が大きくなりコールタールBとの混合物の性状が不安定なる。さらに、揮発分量が大きくなくことで、コークス歩留が低下するおそれがある。また、粘度が250mPa・s超過する場合、コールタールとの混合性が悪くなるおそれがある。
【0024】
この加熱装置Bにおいて、通常100℃以上、好ましくは105℃以上、かつ、通常150℃以下、好ましく145℃以下の温度条件下で、通常10分以上、好ましくは30時間以上、かつ、通常2時間以下、好ましく1時間以下の範囲内で加熱処理が行われる。この温度範囲より低すぎると、必要な加熱時間が長くなりすぎるために効率的ではない。また、この温度範囲より高すぎると、コールタールが固形化して設備が閉塞し、破損するという問題点を生じる場合がある。また、この時間の範囲より短すぎると、十分な水分除去ができないおそれがある。一方、この時間の範囲より長くてもよいが、効率的ではない。
【0025】
得られた前記コールタールBの一部は、供給ライン13、23を経由して前記蒸留塔Cに送られて蒸留にかけられ、軽質な油分を得ると共に、塔の底部より残油成分であるコールタールBの蒸留残油が排出される。コールタールBの蒸留残油を得る方法(主に分離方法)としては、特に限定されないが、例えば、遠心分離、溶剤抽出、ストリッピング、水蒸気蒸留、フラッシュ蒸留、薄膜蒸留、常圧蒸留、減圧蒸留等が挙げられる。
【0026】
また、コールタールBの蒸留残油の100℃における粘度は通常、10〜12000mPa・sであり、好ましくは15〜3500mPa・sである。粘度が10mPa・s未満の場合、高粘度の流体を扱うポンプを使用する場合において、送液が困難になる傾向があり、かつコールタールBと混合した際に軽質成分の揮発量が大きくなりコールタールBとの混合物の性状が不安定なる。さらに、揮発分量が大きくなくことで、コークス歩留が低下する。また、粘度が12000mPa・s超過する場合、コールタールとの混合性が悪化する。
【0027】
さらに、本発明において、コールタールB、コールタールBの蒸留残油と共に石油系重質油を抜き出しライン14又は供給ライン24に他のライン(図示せず)を接続し、当該ラインから石油系重質油を供給することにより混合して用いてもよい。混合して用いることのできる石油系重質油は特に制限されないが、例えば、流動接触分解油、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、シェールオイル、タールサンドビチューメン、オリノコタール、石炭液化油、エチレンボトム油及びこれらを水素化精製した重質油などが挙げられる。上記以外に、直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、脱硫減圧軽油等の比較的軽質な油を更に含有してもよい。これらの中でも特に流動接触分解油、及び常圧蒸留残油は芳香族成分が比較的多く含まれることから好ましい。さらに、コールタールを減圧または常圧下で蒸留して得られる重質成分であるコールタールピッチ、コールタールピッチを溶剤法・遠心法等によりコールタールピッチの重質成分であるキノリン不溶分やトルエン不溶分を減らしたもの、更にはコールタールピッチをディレードコーカー等で加熱処理した際に発生する分解油等のコールタール由来の軽質成分・重質成分を混合してもよい。これらの混合量は混合物の粘度は通常、10〜12000mPa・sの範囲であれば、実質的に問題はない。
【0028】
本発明の第1の態様においては、抜き出しライン14から抜き出されたコールタールBの蒸留残油と供給ライン15を通ったコールタールBは連結された供給ライン16で混合される。供給ライン15から供給されるコールタールがコールタールAではなく、コールタールBであるため、本発明においてはコールタールを装置外に抜き出して混合することを必要とせずに、ライン配管内で混合することができる。このため、容易に混合することができるので、設備を簡素化することができる。これにより、設備の点検も容易となり、設備の保安上も好ましいものとなる。
【0029】
本発明の第2の態様においては、供給ライン24から抜き出されたコールタールBの蒸留残油と供給ライン25を通ったコールタールBは、貯蔵設備Fで貯蔵、混合され、混合液体とされる。供給ライン25から供給されるコールタールがコールタールAではなく、コールタールBであるため、本発明においてはコールタールを装置外に抜き出して混合することを必要とせずに、貯蔵設備Fで混合することができる。このため、容易に混合することができるので、設備を簡素化することができる。これにより、設備の点検も容易となり、設備の保安上も好ましいものとなる。
【0030】
ここで、貯蔵設備Fは液状物を貯蔵し、混合することができるものであれば特にその種類は制限されず、具体的には、円錐屋根タンク、球面タンク等を用いることができる。また、貯蔵設備Fは、コールタールBとコールタールBの蒸留残油とを混合性を高めるため、撹拌翼又は噴流混合装置を有するものであることが好ましい。
【0031】
本発明の第1の態様及び第2の態様において、前記コールタールBの一部と前記コールタールBの蒸留残油とが混合される際、両者の温度を所定範囲内に制御すると、前記コールタールBの一部及び前記無水コールタールBの蒸留残油を適切な範囲の粘度に制御することができ、流動性を確保すると共に、両者を混合しやすくなる。このため、抜き出しライン14又は供給ライン24及び供給ライン15、25の途中にそれぞれ熱交換器D、Eを設けることが好ましい。この熱交換器D、Eにより、抜き出しライン14又は供給ライン24及び供給ライン15、25を通る前記常圧蒸留残油及び前記コールタールBの一部を加熱又は冷却することが可能となり、両者の温度を上げたり下げたりすることが可能となる。
【0032】
熱交換器Dは、好ましくは150〜350℃、より好ましくは180〜320℃に温度を制御することができるものである。また、熱交換器Eは、好ましくは100〜150℃、より好ましくは120〜140℃に温度を制御することができるものである。熱交換器D、Eのそれぞれに使用可能な熱交換器の例としては、多管式熱交換器、二重管式熱交換器、コイル式熱交換器、プレート型熱交換器等が挙げられる。
【0033】
前記供給ライン16、26により送られる前記コールタールBの蒸留残油及び前記コールタールBの一部の混合物の温度は、100℃以上がよく、好ましくは120℃以上である。一方、160℃以下がよく、好ましくは140℃以下である。この温度範囲より低すぎると、混合物の粘性が上昇し配管が閉塞するという問題が生じる場合があり、また、この温度範囲より高すぎると、混合物からガス成分が発生し配管を破損するという問題点を生じる場合がある。
【0034】
前記供給ライン16で混合された前記コールタールBの蒸留残油及び前記コールタールBの一部の混合物、又は貯蔵設備Fで混合された混合液体は、粘結材の一部として、前記供給ライン11、21に送られ、原料炭や水に混合され、前記コークス炉Aに送られ、コークス製造に供される。
【0035】
ここで、供給ライン16、26は、コールタールBとコールタールBの蒸留残油とを混合性を高めるため、配管内部にスタティックミキサーを有するもの、又は配管外部に超音波混合装置を有するものであることが好ましい。
【0036】
本発明の第1の態様及び第2の態様のそれぞれにかかるコークス製造装置により、副生するコールタールを粘結炭として、液状のまま配管で輸送し、有効に使用することが可能となり、固形化する設備等が不要となる。
【符号の説明】
【0037】
11、12、13、15、16、21、22、23、24、25、26 供給ライン
14 抜き出しライン
17、27 コークス抜き出しライン
A コークス炉
B 加熱装置
C 蒸留塔
D、E 熱交換器
F 貯蔵設備
図1
図2