特許第6834628号(P6834628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6834628ランスチューブの矯正器具および矯正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834628
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】ランスチューブの矯正器具および矯正方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 3/10 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   B21D3/10 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-47682(P2017-47682)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2018-149575(P2018-149575A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村川 宗治郎
【審査官】 藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−079838(JP,U)
【文献】 実開平04−064417(JP,U)
【文献】 中国特許出願公開第104588449(CN,A)
【文献】 特開平09−303678(JP,A)
【文献】 実開昭63−102562(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の基材と、
前記基材の両端部に取り付けられ、ランスチューブに掛け回される一対の索体と、
前記基材の中央部に取り外し可能に設けられ、前記基材と前記ランスチューブとの間を広げるジャッキと、
前記ジャッキの底部に設けられた設置板と、
前記基材の中央部に設けられ、前記設置板が嵌る凹部を有する受け材と、を備える
ことを特徴とするランスチューブの矯正器具。
【請求項2】
棒状の基材と、
前記基材の両端部に取り付けられ、ランスチューブに掛け回される一対の索体と、
前記基材の中央部に取り外し可能に設けられ、前記基材と前記ランスチューブとの間を広げるジャッキと、
前記ジャッキの底部に設けられた設置板と、
前記基材の中央部に設けられ、前記設置板がスライド嵌合する保持材と、を備える
ことを特徴とするランスチューブの矯正器具。
【請求項3】
請求項1または2記載の矯正器具を用いてランスチューブの曲がりを矯正する
ことを特徴とするランスチューブの矯正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランスチューブの矯正器具および矯正方法に関する。さらに詳しくは、スートブロワに備えられたランスチューブの曲がりを矯正するための矯正器具および矯正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自熔製錬炉から排出された製錬ガスは排熱ボイラーに導かれ、熱が回収される。排熱ボイラー内部の水壁管に煙灰が付着すると熱伝導率が下がり熱回収効率が低下する。また、煙灰が製錬ガスに含まれる水分と反応して水壁管を腐食する原因となる。そこで、排熱ボイラーには付着した煙灰を落とすスートブロワが設けられる。
【0003】
スートブロワはテレスコピック状に構成されたランスチューブを備えている。使用時はランスチューブを伸長させて排熱ボイラーの内部に挿入し、ランスチューブの先端から空気を噴出することで煙灰を落下させる。待機時はランスチューブを収縮させて、排熱ボイラーから抜き出す。
【0004】
ランスチューブは長尺の管状部材であるため、繰り返し使用するにしたがい、自重や排熱ボイラー内の熱により撓んでくる。ランスチューブの曲がりが大きくなった場合には、曲がりを矯正する必要がある。特許文献1、2には、ランスチューブの曲がりを矯正する器具が開示されている。
【0005】
排熱ボイラーは自熔製錬炉から排出された製錬ガスが上昇することを考慮して高所に設置される。また、排熱ボイラーに設けられる足場は建設費を抑えるために必要最小限の広さしか確保されていない。そのため、一般に、ランスチューブは高所、狭所に設置され、ランスチューブが曲がった場合には、矯正器具を高所、狭所まで運ぶ必要がある。しかも、排熱ボイラーは複数基が離れて設置されるため、ランスチューブを矯正する必要が生じるたびに、矯正器具を運ぶ必要がある。しかし、従来の矯正器具は重く、嵩張っていたため、矯正器具を持って狭い階段を昇降することは困難である。排熱ボイラーの周辺に運搬手段が設けられていない場合には、クレーンなどを手配する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4−64417号公報
【特許文献2】特開2014−156942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、持ち運びが容易な矯正器具を提供することを目的とする。
また、その矯正器具を用いたランスチューブの矯正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明のランスチューブの矯正器具は、棒状の基材と、前記基材の両端部に取り付けられ、ランスチューブに掛け回される一対の索体と、前記基材の中央部に取り外し可能に設けられ、前記基材と前記ランスチューブとの間を広げるジャッキと、前記ジャッキの底部に設けられた設置板と、前記基材の中央部に設けられ、前記設置板が嵌る凹部を有する受け材と、を備えることを特徴とする。
第2発明のランスチューブの矯正器具は、棒状の基材と、前記基材の両端部に取り付けられ、ランスチューブに掛け回される一対の索体と、前記基材の中央部に取り外し可能に設けられ、前記基材と前記ランスチューブとの間を広げるジャッキと、前記ジャッキの底部に設けられた設置板と、前記基材の中央部に設けられ、前記設置板がスライド嵌合する保持材と、を備えることを特徴とする。
第3発明のランスチューブの矯正方法は、第1または第2発明の矯正器具を用いてランスチューブの曲がりを矯正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、索体は基材に沿わせた状態にでき、また、基材からジャッキを取り外せるので、矯正器具をコンパクトに格納でき、持ち運びが容易である。また、設置板を受け材に嵌めるだけで、ジャッキを基材に取り付けることができる。
第2発明によれば、設置板が保持材にスライド嵌合しているので、ジャッキが基材に対して傾くことがなく、安全である。
第3発明によれば、ランスチューブの曲がりを矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る矯正器具の正面図である。
図2図1におけるII-II線矢視部分断面図である。
図3図1におけるIII-III線矢部分視断面図である。
図4】同矯正器具の基材の平面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る矯正器具の正面部分拡大図である。
図6図5におけるVI-VI線矢視部分断面図である。
図7】スートブロワの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
〔第1実施形態〕
(ランスチューブ)
まず、ランスチューブについて説明する。
図7に示すように、スートブロワ100はランスチューブ110を備えている。ランスチューブ110は内管111と外管112とからテレスコピック状に構成されている。内管111の基端部にはヘッドバルブ120を介して空気供給源130が接続されている。外管112の先端部には噴射ノズル113が設けられている。空気供給源130から供給された空気はランスチューブ110の内部を通って、噴射ノズル113から噴射される。
【0012】
使用時はランスチューブ110を伸長させて排熱ボイラー200の内部に挿入する。噴射ノズル113から空気を噴出することで煙灰を落下させる。待機時はランスチューブ110を収縮させて、排熱ボイラー200から抜き出す。
【0013】
ランスチューブ110、特に外管112は長尺の管状部材であるため、繰り返し使用するにしたがい、自重や排熱ボイラー200内の熱により撓んでくる。外管112の曲がりが大きくなった場合には、曲がりを矯正する必要がある。外管112の曲がりを矯正するために矯正器具が用いられる。
【0014】
(矯正器具)
つぎに、本発明の第1実施形態に係る矯正器具1を説明する。
図1に示すように、矯正器具1は基材10と、一対の索体20、20と、ジャッキ30とを備えている。基材10は外管112の矯正に必要な長さを有する棒状の部材である。基材10は例えばH形鋼やC形鋼を加工して形成される。強度に影響しない程度に、角部を削り落としたり、孔15(図4参照)を形成したりして、軽量化してもよい。
【0015】
基材10の両端部には取付孔11、11が形成されている。一対の索体20は取付孔11、11を用いて基材10の両端部に取り付けられている。取付孔11の周囲に環状の補強板12を接合して、取付孔11の周囲の部分を補強してもよい。
【0016】
図2に示すように、索体20の両端部はシャックルなどの取付金具21により取付孔11に固定されている。外管112を矯正する場合には、索体20が外管112に掛け回される。索体20は外管112の矯正に必要な強度を有していれば特に限定されないが、縒り鋼線や鎖などを用いることができる。
【0017】
図3および図4に示すように、基材10の中央部上面には矩形の凹部13aを有する受け材13が設けられている。一方、ジャッキ30の底部(シリンダキャップ)には矩形の設置板31が設けられている。設置板31を受け材13の凹部13aに嵌めるだけで、ジャッキ30を基材10の中央部に取り付けることができる。しかも、ジャッキ30は基材10に対して取り外し可能である。なお、設置板31はジャッキ30に対して取り外し可能なようにボルトなどで固定すればよい。
【0018】
ジャッキ30のロッド先端部には断面U字形の支持材32が設けられている。支持材32の凹部に外管112を嵌め込むことで、外管112がずれないように、しっかりと支えることができる。なお、支持材32はジャッキ30に対して取り外し可能に設けることが好ましい。
【0019】
ジャッキ30としては、液圧式、空圧式、機械式など種々のタイプを用いることができる。
【0020】
(矯正方法)
上記の矯正器具1を用いて外管112の曲がりを矯正するにはつぎの操作を行えばよい。
図1に示すように、基材10の中央部にジャッキ30を取り付ける。索体20を外管112に掛け回して基材10の両端部に取り付ける。この際、取付金具21を取り付け、取り外しすることにより索体20で環を形成し、その環の内側に外管112を通すようにする(図2参照)。
【0021】
ジャッキ30を伸長させて、外管112の曲がりにより生じた凸部に支持材32を押し当てる。ここで、外管112の凸側をジャッキ30に向ける。ジャッキ30をさらに伸長させて基材10と外管112との間を広げるように、外管112に力を加える。以上の操作により外管112の曲がりを矯正できる。
【0022】
本実施形態の矯正器具1によれば、索体20は基材10に沿わせた状態にでき、また、基材10からジャッキ30を取り外せるので、矯正器具1をコンパクトに格納できる。したがって、高所、狭所への持ち運びが容易である。
【0023】
〔第2実施形態〕
つぎに、本発明の第2実施形態に係る矯正器具2を説明する。
図5および図6に示すように、本実施形態の矯正器具2は第1実施形態の矯正器具1において、受け材13に代えて保持材14を基材10に設けた構成である。
【0024】
保持材14は三辺が断面コの字形に形成されており、設置板31の三辺の縁部が嵌め込まれるようになっている。ジャッキ30を基材10に取り付けるには、設置板31を保持材14にスライド嵌合させればよい。設置板31が保持材14にスライド嵌合しているので、外管112の曲がりを矯正する際にジャッキ30が基材10に対して傾くことがなく、安全である。
【0025】
なお、保持材14は対向する二辺のみが断面コの字形に形成されてもよい。この場合でも設置板31の対向する二辺の縁部が保持材14に嵌め込まれる。
【符号の説明】
【0026】
1、2 矯正器具
10 基材
11 取付孔
13 受け材
14 保持材
20 索体
21 取付金具
30 ジャッキ
31 設置板
32 支持材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7