(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
離型フィルムと、ハードコート層と、前記ハードコート層側に粘着層を有する保護フィルムと、をこの順に備え、前記ハードコート層は、ガラス転移点が90℃以下であり、アクリル−シリコーン変性ポリマーおよび粒子を含み、該粒子が前記粘着層側の前記ハードコート層表面に偏在するフィルム積層体。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルム積層体の製造方法であって、離型フィルム上にハードコート層形成用塗布液を塗布し、乾燥してハードコート層を形成する工程と、形成したハードコート層の表面に保護フィルムを貼合する工程と、が同一製造工程から構成されるフィルム積層体の製造方法。
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフィルム積層体から前記離型フィルムを剥離して、前記ハードコート層を被着体に接着し、次いで前記保護フィルムを剥離する工程を有するハードコート層付き部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<フィルム積層体>
本発明のフィルム積層体は、離型フィルムと、ハードコート層と、ハードコート層側に粘着層を有する保護フィルムと、をこの順に備え、ハードコート層は、ガラス転移点が90℃以下であり、アクリル−シリコーン変性ポリマーおよび粒子を含み、粒子が粘着層側のハードコート層表面に偏在する。
フィルム積層体は、離型フィルムと、ハードコート層と、粘着層を有する保護フィルムと、をこの順に備えており、通常、離型フィルムを剥がして、ハードコート層を建材等の被着体に接着し、保護フィルムを剥がしてハードコート層を露出させて用いる。
フィルム積層体は、離型フィルム、ハードコート層、保護フィルム以外の層を更に有していてもよく、例えば、ハードコート層の被着体への密着性を高めるために、ハードコート層の離型フィルム側の表面に、更に接着層を備えていてもよい。
以下、フィルム積層体が有するハードコート層、離型フィルム等の詳細について説明する。
【0010】
〔ハードコート層〕
本発明のフィルム積層体は、離型フィルム上に、ハードコート層を備える。
ハードコート層は、ガラス転移点が90℃以下であり、アクリル−シリコーン変性ポリマーおよび粒子を含み、粒子は、ハードコート層の表面のうち、粘着層側の表面に偏在する。
フィルム積層体がハードコート層を備えることで、ハードコート層が接着した被着体に、防汚性と耐擦傷性を付与することができる。
本発明のフィルム積層体が備える保護フィルムは、ハードコート層が被着体に接着された後、ハードコート層から剥がされ、ハードコート層が露出する。従って、ハードコート層の保護フィルム側の表面に、粒子が偏在することで、ハードコート層表面は親水性を有する。ハードコート層表面が親水性になることで、ハードコート層表面に付着したゴミは、雨等の流水で洗い流され、汚れがつきにくいため、ハードコート層は防汚性に優れる。
ハードコート層は、透明性の高いアクリル−シリコーン変性ポリマーを含んでいるため、本発明のフィルム積層体が備えるハードコート層は透明性に優れている。
ハードコート層の表面に偏在する粒子は、ハードコート層表面を親水性にし、フィルム積層体の防汚性を付与すると共に、ハードコート層がアクリル−シリコーン変性ポリマーと粒子とを含むことで、ハードコート層の強度を上げる。その結果、ハードコート層はクラックが生じにくく、外観に優れ、また、ハードコート層の強度が高まることで、ハードコート層は耐候性に優れる。
【0011】
また、ハードコート層のガラス転移点が90℃以下であることで、ハードコート層が柔軟になり、被着体の形状に追随して密着し易くなり、被着体に対する接着性に優れる。ハードコート層のガラス転移点は、被着体に対する接着性をより向上する観点から、80℃以下であることが好ましい。ハードコート層のガラス転移点は、フィルム積層体から保護フィルムと離型フィルムをそれぞれ剥がし、例えば、動的粘弾性測定装置で測定することにより求まる。具体的には、例えば、アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性測定装置「itk DVA−200」を用い、0℃から300℃の温度範囲において、昇温速度3℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性引張測定を行い、得られたtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度とする。
ハードコート層の厚みは、ハードコート層の機能性の低下を抑制し、被着体に対する接着性を損ねることを抑制するため、1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることがより好ましい。
【0012】
更に、フィルム積層体は、防汚性をより高める観点から、粘着層側のハードコート層表面(粒子が偏在する表面)の水滴接触角は40°以下であることが好ましい。
なお、当該水滴接触角は、フィルム積層体から離型フィルムを剥がして平面状被着体に転写し、保護フィルムをハードコート層から剥がし、露出したハードコート層表面における測定値である。接触角の測定は、例えば、接触角計(協和界面科学株式会社製、Drop Master500)を用いて測定することができる。
粘着層側のハードコート層表面の水滴接触角は、38°以下であることがより好ましい。
【0013】
(粒子)
ハードコート層は、粒子を含む。
粒子の種類は特に制限されず、有機粒子、無機粒子等が挙げられるが、ハードコート層の強度を高めて外観と耐候性を向上し、ハードコート層表面の親水性をより高める観点から、無機粒子、特に、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子、酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子が好ましく、シリカ粒子及びアルミナ粒子がより好ましい。
粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、これらの形状が均一で、整粒であることが好ましい。
【0014】
粒子は、ハードコート層の表面のうち、保護フィルムの粘着層側の表面に偏在する。
ここで、粒子が、「ハードコート層表面に偏在する」とは、ハードコート層の厚み方向(フィルム積層体の離型フィルム、ハードコート層、及び保護フィルムの積層方向と換言することもできる)において、粒子の濃度分布があり、ハードコート層の表面のうち、保護フィルムの粘着層側の表面の粒子濃度が最も高いことを意味する。
尚、ハードコート層における、粒子の濃度分布に関しては、例えば、電子顕微鏡による断面観察により確認することが可能である。
【0015】
粒子は、シリカ粒子が特に好ましい。
粒子としてシリカ粒子を用いると、シラノール基が有するOH基によりハードコート層表面は高い親水性を有し、ハードコート層表面にゴミが付着しても、取れ易く、ハードコート層の防汚性をより高くすることができ、また、ハードコート層に硬さ、耐候性を付与することができる。
シリカ粒子の種類は、特に制限されず、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等を用いることができる。
【0016】
ハードコート層中の粒子の含有量は、アクリル−シリコーン変性ポリマー100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、1〜15質量部がより好ましい。粒子量を0.5質量部以上とすることにより、ハードコート層表面の親水性が向上する。シリカ粒子量を20質量部以下とすることにより、ハードコート層の耐候性、耐水性、耐凍害性を低下させることなく、防汚性を更に向上することができる。
【0017】
粒子の平均粒子径は、1〜100nmが好ましく、5〜60nm以下がより好ましく、10〜50nmが最も好ましい。粒子の平均粒子径を100nm以下とすることで、ハ−ドコート層形成時に粒子が塗膜最表面に浮上しやすくなり、ハ−ドコート層表面において粒子がアクリル−シリコーン変性ポリマー粒子間隙を密に埋め、かつ適度な厚みを持ってシリカ粒子層を形成し、アクリル−シリコーン変性ポリマーと粒子、および粒子同士が最表面に存在することで、所望する防汚性を発現できると考えられる。また、粒子の平均粒子径を60nm以下とすることで、ハードコート層表面における光の乱反射を抑え、目視による外観評価において、ハードコート層が白く見えることを抑えることができる。
粒子の平均粒子径は、画像処理ソフトウエアを用い、粒子のTEM(Transmission Electron Microscope;透過型電子顕微鏡)観察像から粒子の粒径をTEM観察像のスケールバーの長さと比較して10点算出し、これらの平均値を求めることにより算出することができる。
【0018】
(アクリル−シリコーン変性ポリマー)
ハードコート層は、アクリル−シリコーン変性ポリマーを含む。
アクリル−シリコーン変性ポリマーは、ハードコート層のバインダー成分であり、ハードコート層を、ハードコート層形成用塗布液を用いて形成する場合の皮膜形成成分でもある。アクリル−シリコーン変性ポリマーは、ハードコート層に、成膜性、透明性、耐候性、耐水性、耐凍害性等を付与する。
【0019】
アクリル−シリコーン変性ポリマーを構成するラジカル重合性単量体としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等のビニルシラン類;γ−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等のアクリロイルオキシアルキルシラン類;
【0020】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ アクリレート等のヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体類が挙げられる。
【0021】
アクリル−シリコーン変性ポリマーは、ハードコート層の防汚性、耐候性、耐水性の点から、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体に由来する単位を含有することが好ましい。加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体に由来する単位を含有することによって、共重合体とシリカ粒子とが結着しやすくなり、また、シリカ粒子層に厚みを持たせることができ、防汚性、耐候性、耐水性をより向上させることができる。
【0022】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体としては、上述のビニルシラン類、アクリロイルオキシアルキルシラン類、メタクリロイルオキシアルキルシラン類等が挙げられる。これらのうち、ラジカル重合反応性、防汚性、耐候性、耐水性を考慮すると、アクリロイルオキシアルキルシラン類、メタクリロイルオキシアルキルシラン類が特に好ましい。
【0023】
ハードコート層は、アクリル−シリコーン変性ポリマー及び粒子以外の成分、例えば、アクリル−シリコーン変性ポリマー以外のポリマー;紫外線吸収剤、酸化防止剤等の種々の機能性成分を含んでいてもよい。
本発明の効果を十分に発現する観点から、ハードコート層中のアクリル−シリコーン変性ポリマー及び粒子以外の成分の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。ハードコート層は、アクリル−シリコーン変性ポリマー及び粒子からなることが特に好ましい。
【0024】
ハードコート層は、ハードコート層形成用塗布液を離型フィルム上に塗布し、乾燥することにより得ることができる。
ハードコート層形成用塗布液は、アクリル−シリコーン変性ポリマーと、粒子と、溶媒とを混合することにより調製することができる。溶媒としては、水、アルコール等の水溶性溶媒を用いることができる。また、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ブチルセロソルブ等の助剤を更に混合してもよい。
【0025】
ハードコート層中の粒子を、保護フィルム側のハードコート層表面に偏在させる方法は、例えば、アクリル−シリコーン変性ポリマーに対する粒子の量を既述の範囲にしたり、粒子の粒子径を、小さい側で特定範囲にする(例えば、既述の範囲にする)ことが挙げられる。また、ハードコート層形成用塗布液に、界面活性剤、乳化剤等を混合し、エマルジョン等の分散液として用いることが好ましい。
【0026】
(接着層)
本発明のフィルム積層体は、離型フィルムを剥離した積層体を被着体に密着させる際に、ハードコート層と被着体との密着性をより高める観点から、ハードコート層の離型フィルム側の表面に、更に接着層を備えていてもよい。
接着層を構成する接着成分は特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種類で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層は、更に、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の機能性成分を含有していてもよい。
接着層の厚みは1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。
接着層は、上記接着成分と、必要に応じて含み得る機能性成分と、溶媒とを含有する接着層形成用塗布液を、ハードコート層上に塗布し、乾燥することにより形成することができる。接着層形成用塗布液に用いる溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等に代表されるケトン類等が挙げられる。
【0027】
〔離型フィルム〕
本発明のフィルム積層体は、離型フィルムを備える。
離型フィルムを備えることでハードコート層の被着体への密着面側表面を汚しにくく、フィルム積層体の作業性に優れる。
離型フィルムは、被着体にハードコート層を接着するときに剥がれ易いことが好ましく、具体的には、ハードコート層から離型フィルムを剥離するときの剥離力(F)が0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以下であることがより好ましい。
ハードコート層から剥離フィルムを引き剥がすときの剥離力は、アクリル粘着テープ(日東電工株式会社製:No.31Bテープ)から剥離フィルムを引き剥がすときの剥離力に、おおよそ相当し、当該アクリル粘着テープに対する剥離フィルムの剥離力が、0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以下であることがより好ましい。
離型フィルムは、ハードコート層から剥がし易い性質の材質であれば特に制限されず、例えば、シリコーン樹脂のフィルムを離型フィルムとして用いることができる。
なお、本発明のフィルム積層体が、ハードコート層の表面に接着層を備える態様である場合は、剥離力(F)は、上記ハードコート層を接着層と読み替えるものとする。
【0028】
(離型層)
離型フィルムは、離型フィルムの耐久性と剥離力の調整のし易さの観点から、基材と離型層とを含む積層構造であることが好ましい。この場合、ハードコート層に対する離型層の剥離力が0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以下であることがより好ましい。また、前記アクリル粘着テープに対する離型層の剥離力が、0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以下であることがより好ましい。
【0029】
離型層の構成成分は特に制限されず、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。
離型層は、通常、基材に、離型層形成用塗布液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。かかる観点から、離型層は、離型成分として、硬化型シリコーン樹脂の硬化物を含有することが好ましい。離型成分は、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0030】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型、縮合型、紫外線硬化型、電子線硬化型、無溶剤型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
具体例を挙げると、信越化学工業株式会社製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−1387、X−62−5039、X−62−5040、KNS−3051、X−62−1496、KNS320A、KNS316、X−62−1574A/B、X−62−7052、X−62−7028A/B、X−62−7619、X−62−7213;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、TPR6500、TPR6501、UV9300、UV9425、XS56−A2775、XS56−A2982、UV9430、TPR6600、TPR6604、TPR6605;東レ・ダウコーニング株式会社製SRX357、SRX211、SD7220、SD7292、LTC750A、LTC760A、LTC303E、SP7259、BY24−468C、SP7248S、BY24−452、DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210等が例示される。
さらに離型層の剥離性調整のために剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0031】
一方、エマルションタイプの硬化型シリコーン樹脂の具体例として、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製Dehesive(登録商標)430、Dehesive(登録商標)440;荒川化学工業株式会社製シリコリース(登録商標)902等が例示される。
【0032】
離型層形成用塗布液は、例えば、硬化型シリコーン樹脂と、硬化剤と、溶媒とを混合することにより調製することができる。硬化剤は公知のものを用いることができ、市販品(例えば、信越化学工業株式会社製PL−3)でもよい。離型層形成用塗布液の溶媒としては、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン(MEK))、芳香族化合物(例えば、トルエン)等を用いることができ、これらを単独で、又は混合して用いることができる。離型層形成用塗布液は、更に、剥離調整剤を含有していてもよい。
【0033】
基材に、硬化型シリコーン樹脂を含む離型層形成用塗布液を塗布して、離型層を設ける方法としては、リバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」(槇書店 原崎勇次著 1979年発行)に記載例がある。
【0034】
基材上に離型層を形成する際の、硬化型シリコーン樹脂の硬化条件に関しては特に限定されない。
オフラインコーティングにより離型層形成用塗布液を塗布して離型層を設ける場合、通常、120〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として離型層形成用塗布液を熱処理(加熱)することが好ましい。また、必要に応じて、離型層形成用塗布液に、熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。
なお、活性エネルギー線照射による硬化型シリコーン樹脂の硬化のためのエネルギー源としては、従来から公知の装置,エネルギー源を用いることができる。離型層形成用塗布液の塗工量は、塗工性の面から、通常0.005〜1g/m
2、好ましくは0.005〜0.5g/m
2、さらに好ましくは0.005〜0.1g/m
2の範囲である。塗工量が0.005g/m
2以上であることで、塗工性の面より安定性が損なわれにくく、均一な塗膜を得易い。一方、離型層形成用塗布液の塗工量が1g/m
2以下であることで、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等を損ねにくい。
【0035】
(基材)
離型フィルムの基材(離型フィルム基材)の材質は特に制限されないが、ハードコート層からの剥離のし易さの観点から、耐久性と柔軟性を有していることが好ましく、かかる観点から、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム等を用いることが好ましい。
まず、基材としてポリエステルフィルムを用いる場合について、以下に説明する。
【0036】
[ポリエステルフィルム]
離型フィルム基材として用いるポリエステルフィルムは、単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0037】
使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましく、1種の芳香族ジカルボン酸と1種の脂肪族グリコールとからなるポリエステルであってもよく、1種以上の他の成分を共重合させた共重合ポリエステルであってもよい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルの成分として用いるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、セバシン酸が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。またp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸も用いることができる。
【0038】
ポリエステルフィルムには、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、ハードコート層が含有する粒子を用いてもよい。具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0039】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0040】
また、用いる粒子の平均粒子径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜2μmの範囲である。平均粒子径が0.01μm以上であることで、粒子が凝集しにくく、分散性に優れ、一方、3μm以下であることで、フィルムの表面粗度が粗くなりにくく、後工程において種々の表面機能層を設ける際に不具合が生じにくい。
【0041】
ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、12〜100μm、好ましくは25〜75μmの範囲である。
【0042】
離型層は塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上に離型層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
また、ポリエステルフィルムには予め、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0043】
[ポリオレフィンフィルム]
離型フィルム基材として用いるポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレンフィルム等、従来から公知のフィルムを離型フィルムとして用いることができる。ポリオレフィンフィルムは、予め、フィルム表面にコロナ処理を施してもよい。
ポリオレフィンフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、12〜100μmであり、好ましくは25〜75μmの範囲である。
【0044】
〔保護フィルム〕
本発明のフィルム積層体は、ハードコート層上に、ハードコート層側に粘着層を有する保護フィルムを備える。
フィルム積層体が保護フィルムを備えることで、ハードコート層表面の汚れを防止し、また、フィルム積層体製造においてフィルム積層体をロール搬送するときに、ハードコート層とロールとが擦れて、ハードコート層に傷がつくことを防止することができるため、フィルム積層体の透明性、防汚性、及び外観を損ねにくい。また、保護フィルムが粘着層を有することで、フィルム積層体のロール搬送時に機械的負荷がフィルム積層体にかかっても、ハードコート層から保護フィルムが剥がれにくく、ハードコート層を保護し易い。
【0045】
(粘着層)
保護フィルムは、それ自体が粘着性を有する構造、すなわち、粘着層単層構造であってもよいし、粘着層と基材(保護フィルム基材)との積層構造であってもよい。
保護フィルムは、フィルム積層体のロール搬送時に機械的負荷がフィルム積層体にかかっても、ハードコート層から保護フィルムが剥がれにくい程度の粘着性が要求される一方、ハードコート層を被着体に転写した後は、保護フィルムはハードコート層から剥がされることから、粘着層の粘着力はさほど大きくないことが好ましい。
かかる観点から、粘着層のハードコート層に対する粘着力は、0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.12N/25mm以下であることがより好ましい。
また、保護フィルムの厚みは、保護フィルムが粘着層単層構造である場合も、粘着層と基材との積層構造である場合も、取扱い性を考慮して、9〜75μmであることが好ましく、12〜50μmであることがより好ましい。
保護フィルムの粘着層のハードコート層に対する粘着力は、アクリル板に対する粘着層の粘着力に、おおよそ相当し、アクリル板に対する粘着層の粘着力が、0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.10N/25mm以下であることがより好ましい。
【0046】
粘着層を構成する粘着成分は特に制限されず、粘着層は、例えば、アクリル樹脂、オレフィン系樹脂等を含有することができる。
【0047】
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である(以下、アクリルおよびメタアクリルを合わせて(メタ)アクリルと略記する場合がある)。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれを用いてもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体(例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体等)であってもよい。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)、ポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)であってもよい。
【0048】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0049】
[オレフィン系樹脂]
オレフィン系樹脂は、プロピレンモノマー、α−オレフィンモノマー等の単独重合体を用いてもよいし、共重合体を用いてもよいが、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と水添スチレン系エラストラマーにより構成されることが好ましい。
保護フィルムの粘着層は、保護フィルムをハードコート層から剥離した際に、ハードコート層表面に粘着成分が残存してハードコート層表面を汚染することがないように配慮した自己粘着層であることが好ましい。
自己粘着層は、粘着強度、加工性、経時での粘着力変動が極力小さいことが好ましく、粘着成分として、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と水添スチレン系エラストラマーを用いることで、自己粘着層である粘着層を得ることができる。
プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、具体例には、プロピレン−エチレン−1ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体等が例示される。また、水添スチレン系エラストラマーの具体例としては、水添スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−エチレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体等が例示される。
【0050】
(基材)
保護フィルムの基材(保護フィルム基材)の材質は特に制限されないが、フィルム積層体のロール搬送時にフィルム積層体が柔軟に折れ曲がり易く、また、製品使用時にはハードコート層からの保護フィルムを剥がし易くする観点から、保護フィルムは耐久性と柔軟性を有していることが好ましく、かかる観点から、保護フィルム基材は、ポリプロピレンフィルムまたはポリエステルフィルムの何れかを基材とすることが好ましい。ポリエステルフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いることが好ましい。
【0051】
ポリプロピレンフィルムは二軸延伸法により延伸されることが好ましい。延伸法に関しては、テンター法、チューブラー法、ロール延伸法等、従来公知の手法を用いることができる。
また、ポリプロピレンフィルムには、製膜性、加工性、作業性向上等を目的として、酸化防止剤、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤等を本発明の主旨を損なわない範囲で使用することができる。また、帯電防止層等の塗布層を必要に応じて、設けることもできる。
【0052】
粘着層と保護フィルム基材との積層構造の保護フィルムは、保護フィルム基材上に、粘着層形成用塗布液を塗布し、乾燥することにより製造することができる。粘着層形成用塗布液は、既述の粘着成分と溶媒とを混合することにより調製することができる。
粘着層形成用塗布液の保護フィルム基材への塗布方法は、離型層形成用塗布液を離型フィルム基材に塗布する方法として説明した方法を用いることができる。
保護フィルムは、市販製品(例えば、フタムラ化学株式会社製:タイプ「FSA−100M」OPPフィルム基材、50μm)を用いてもよい。
【0053】
〔被着体〕
本発明のフィルム積層体のハードコート層の接着対象となる被着体は、特に制限されず、各種外装材、内装材等が挙げられる。ハードコート層は、防汚性、透明性、及び耐擦傷性に優れることから、塵、砂等のゴミが付着し易い屋外に置かれ、雨曝しの環境に置かれ易い各種外装材に好適である。被着体は、具体的には、例えば、建築構造物一般住居、公共施設等の壁、屋根等の建材;車、列車、船舶、飛行機等の乗り物の内外装用部品;家電製品用部材;看板、標識等が挙げられる。
被着体の素材は、特に制限されず、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂;ガラス、セラミックス等の無機酸化物;鉄、ステンレス鋼、銅等の金属等が挙げられる。
被着体は、以上の中でも、建材に好適であり、樹脂製の建材に特に好適である。
【0054】
<フィルム積層体の製造方法>
本発明のフィルム積層体の製造方法は特に制限されず、離型フィルム、ハードコート層、及び保護フィルムをそれぞれ製造してから、各々貼り合せてフィルム積層体を製造してもよいし、離型フィルム、ハードコート層、及び保護フィルムを1つの流れ作業により製造してもよい。
本発明においては、フィルム積層体の生産性及びコスト低減の観点から、1つの流れ作業によりフィルム積層体を製造することが好ましい。具体的には、離型フィルム上にハードコート層形成用塗布液を塗布し、乾燥してハードコート層を形成する工程と、形成したハードコート層の表面に保護フィルムを貼合する工程と、が同一製造工程から構成される製造方法によりフィルム積層体を製造することが好ましい。
前述の通り、保護フィルムは粘着層を有し、保護フィルムの粘着層がハードコート層の表面に密着する。
【0055】
具体的には、離型フィルム上に既述のハードコート層形成用塗布液を塗布し、乾燥した後、ハードコート層を形成し、ハードコート層形成の同一ライン上で、ハードコート層表面に保護フィルムを貼り合わせることでフィルム積層体を得ることができる。ハードコート層表面に保護フィルムを貼合する方法については、従来から公知のラミネート方法を用いることができる。また、必要に応じて、ハードコート層と保護フィルムとを加熱しながら、ラミネートする方法も使用できる。
【0056】
ハードコート層を、予め、フィルム積層体として保管、在庫しておくことで、ハードコート層を使いたい時にタイムリーに、ハードコート層を被着体に貼合することが可能であり、作業工程の省略化が図れる利点を有する。フィルム積層体の形態に関してはロール状、シート状等、使用する目的に応じて適宜選択することができる。
【0057】
<ハードコート層付き部材の製造方法>
本発明のハードコート層付き部材の製造方法は、本発明のフィルム積層体から離型フィルムを剥離して、ハードコート層を被着体に接着し、次いで保護フィルムを剥離する工程を有する。
本発明のハードコート層付き部材の製造方法は、上記工程のみからなるものでもよいし、更に、他の工程を有していてもよい。他の工程としては、例えば、被着体とハードコート層との接着性を上げるために、被着体のハードコート層接着面を洗浄したり、コロナ放電処理する工程等が挙げられる。
既述のように、本発明のフィルム積層体は、離型フィルムと、ハードコート層と、ハードコート層側に粘着層を有する保護フィルムと、をこの順に備え、ハードコート層は、ガラス転移点が90℃以下であり、アクリル−シリコーン変性ポリマーおよび粒子を含み、該粒子が粘着層側の前記ハードコート層表面に偏在する。当該製造方法によって製造されるハードコート層付き部材のハードコート層は、保護フィルムが剥離され、粒子が偏在する表面が露出している。そのため、ハードコート層付き部材は、表面に塵、砂等のゴミが付着しても、雨等の流水で洗い流され、汚れがつきにくく、防汚性に優れる。また、ハードコート層は、透明性の高いアクリル−シリコーン変性ポリマーを含んでいるため、透明性が高く、被着体の視認性に優れる。更に、ハードコート層は、ガラス転移点が90℃以下であり、耐擦傷性に優れる。
よって、本発明のハードコート層付き部材の製造方法により製造されるハードコート層付き部材は、防汚性、被着体の視認性、及び耐擦傷性に優れる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に記載しない限り、「部」、「%」は、質量基準である。
実施例および比較例において使用した各種材料は、以下のようにして準備したものである。
【0059】
<フィルム積層体の製造>
〔実施例1〕
離型フィルム(フタムラ化学株式会社製:OPPフィルム基材、タイプ「FOR」、50μm)上に下記ハードコート形成用塗布液を塗布厚み(乾燥後)が10μmになるように塗布、120℃、2分間、熱処理(加熱)を施し、ハードコート層を設けた。
【0060】
(ハードコート層形成用塗布液組成)
アクリル−シリコーン変性ポリマー(Tg:70℃) 36.5部
シリカ粒子(平均粒子径15nm) 1.3部
溶媒:イオン交換水 56.6部
助剤:ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル 2.8部
助剤:ブチルセロソルブ 2.8部
なお、表1には、バインダーであるアクリル−シリコーン変性ポリマー100部に対するシリカ粒子の量(1.3×100/36.5=3.6部)を粒子含有量として示した。実施例2〜8及び比較例1〜4も同様である。
【0061】
次に、得られたハードコート層表面に粘着層を有する保護フィルム(フタムラ化学株式会社製:タイプ「FSA−100M」OPPフィルム基材、50μm)を貼合し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
尚、ハードコート層におけるシリカ粒子の濃度分布状態に関しては電子顕微鏡による断面観察により、シリカ粒子が偏在していることを確認した。
【0062】
〔実施例2〕
実施例1において、ハードコート層の厚み(乾燥後)を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0063】
〔実施例3〕
実施例1において、使用する保護フィルムを株式会社サンエー化研製:タイプ「NSA33T」PETフィルム基材、38μm)にし、離型フィルムを下記離型フィルムに変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0064】
(離型フィルムの製造)
下記ポリエステルA、Bをそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステルA100%を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給した。その後、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出しし、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.3倍延伸し、225℃で5秒間熱処理(加熱)を行った後、横方向に5%弛緩し、厚さ50μm(表層(片側)3μm、中間層44μm)のポリエステルフィルムを得た。
【0065】
〔ポリエステルAの製造方法〕
テレフタル酸ジメチル100質量部とエチレングリコール60質量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09質量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステルAの固有粘度は0.63であった。
【0066】
〔ポリエステルBの製造方法〕
ポリエステルAの製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、固有粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステルAの製造方法と同様の方法を用いてポリエステルBを得た。得られたポリエステルBは、固有粘度0.65であった。
【0067】
その後、オフラインにより、ポリエステルフィルム上に、下記離型層形成用塗布液を塗布量(乾燥後)が0.1g/m
2になるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、180℃で10秒間熱処理(加熱)して、離型フィルムを得た。
【0068】
[離型層形成用塗布液組成]
硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学工業株式会社製) 100部
硬化剤(PL−3 :信越化学工業株式会社製) 5部
剥離調整剤(X−92−183:信越化学工業株式会社製) 15部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は質量基準で1:1) 1500部
【0069】
〔実施例4〕
実施例1において、使用する離型フィルムを三菱ケミカル株式会社製:タイプ「MRX38」(PETフィルム基材、38μm)に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0070】
〔実施例5〕
実施例1において、使用する保護フィルムを株式会社サンエー化研製:タイプ「NSA33T」(PETフィルム基材、38μm)に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0071】
〔実施例6〕
使用する保護フィルムをフタムラ化学株式会社製:タイプ「FSA−300M」(OPPフィルム基材、30μm)に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0072】
〔実施例7〕
実施例3において、離型層組成の種類を変更する以外は実施例3と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0073】
(離型層形成用塗布液組成)
硬化型シリコーン樹脂(X−62−5039:信越化学工業株式会社製) 55部
硬化剤(PL−5000 :信越化学工業株式会社製) 5部
剥離調整剤(KS−3800 :信越化学工業株式会社製) 45部
添加剤(X−92−185 :信越化学工業株式会社製) 5部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は質量基準で1:1) 1500部
【0074】
〔実施例8〕
離型フィルム上に、予め、接着層形成用塗布液を塗布した後、120℃、1分間熱処理(加熱)して、接着層(乾燥後の厚み:4μm)を形成した。次に接着剤層上にハードコート層を設けた以外は、実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表1に示す。
【0075】
(接着層形成用塗布液組成)
メタクリル酸ブチル樹脂
*(平均分子量7万、Tg=75℃) 20部
紫外線吸収剤(TINUVIN479:
ヒドロキシフェニルトリアジン系) 1部
メチルエチルケトン 80部
*:CH
2=CCH
3COO(CH
2)
3CH
3で表される、メタクリル酸n−ブチルモノマーを重合して得られるアクリル樹脂
【0076】
〔比較例1〕
実施例1において、ハードコート層組成を変更する(粒子を含有しないこと)以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表2に示す。
【0077】
〔比較例2〕
実施例1において、ハードコート層形成用塗布液の組成を下記組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表2に示す。
(ハードコート層形成用塗布液組成)
カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 40部
アクリロイルオキシアルキルイソシアヌレート 35部
2官能ウレタンアクリレート 20部
トリアジン系紫外線吸収剤(TINUVIN479) 10部
ヒンダードアミン系光安定剤(TINUVIN144) 2部
ベンゾフェノン系光重合開始剤(ADEKA製:1413) 3部
コロイダルシリカ(平均粒子径:15nm) 4部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 170部
【0078】
〔比較例3〕
実施例1において、ハードコート層形成用塗布液の組成を下記組成(アクリル−ウレタン樹脂組成物)に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表2に示す。比較例3のフィルム積層体は、保護フィルム側のハードコート層表面にシリカ粒子が偏在しなかった。尚、シリカ粒子の濃度分布状態に関しては電子顕微鏡による断面観察により確認した。
【0079】
(ハードコート層形成用塗布液組成)
アクリル−ウレタン樹脂組成物
アクリルポリオール(単体Tg=64℃) 45.0部
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリマー 7.8部
コロイダルシリカ(平均粒子径:15nm) 5.5部
キシレン 19.5部
酢酸ノルマルブチル 35.0部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 54.5部
【0080】
〔比較例4〕
実施例1において、保護フィルムを貼合しない以外は実施例1と同様にして製造し、フィルム積層体を得た。得られたフィルム積層体の特性を下記表2に示す。
【0081】
<物性測定、評価方法>
実施例及び比較例で得られた各フィルム積層体(以下、試料フィルムと称する)、試料製造に用いた各種成分の物性測定及び試料フィルムの評価方法は、以下の通りである。
【0082】
(1)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0083】
(2)ポリエステル原料中の粒子の平均粒子径(d
50:μm)
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(質量基準)50%の値を平均粒子径とした。
【0084】
(3)保護フィルムの粘着層の粘着力
JIS−Z−0237(2000)に記載の方法に準拠したアクリル板への粘着強度を測定した。
【0085】
(4)離型フィルムの剥離力
剥離面にアクリル粘着テープ(日東電工株式会社製、「31B」)を貼合し、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にて剥離力を測定し、単位をN/25mmに換算した。
【0086】
(5)ハードコート層のガラス転移温度(貯蔵弾性率も同様の測定方法)
アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性測定装置「itk DVA−200」を用い、0℃から300℃の温度範囲において、昇温速度3℃/min、周波数10Hzの条件で動的粘弾性引張測定を行い、得られたtanδのピーク温度を求め、ガラス転移温度とした。
【0087】
(6)ハードコート層の透明性
ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)にてヘーズ値を測定し、初期性能としての透明性の評価を行った。
【0088】
(7)ハードコート層の防汚性(接触角)
試料フィルムのハードコート層表面(保護フィルムと接する側)の水滴接触角を接触角計(協和界面科学株式会社製、Drop Master500)を用いて測定した。
【0089】
(8)ハードコート層の耐擦傷性
試料フィルムのハードコート層表面(保護フィルムと接する側)をスチールウール#0000を用いて、荷重9.8N×50回試験前後のヘーズ変化率を測定し、下記判定基準に基づき評価した。
(判定基準)
○:ヘーズ変化率が50%以下
×:ヘーズ変化率が50%を越える
【0090】
(9)ハードコート層の密着性
JIS K5600−5−6記載の方法により、ハードコート層とポリカーボネートシートとの熱ラミネート性を評価した。
【0091】
(10)ハードコート層の外観
目視にて試験片のハードコート層外観(保護フィルムと接する側)について、ひび割れ(クラック)の有無を確認した。
【0092】
(11)ハードコート層の耐候性
超促進耐候性試験機(岩崎電気株式会社製「アイスーパーUVテスターSUV−151W」)を用いて、以下の3工程を1サイクルとする促進耐候性試験を行った。
【0093】
(試験条件)
i)UV照射工程
照射強度:75mW/cm
2
温度:53℃
湿度:50%、
シャワー:3秒/59分
(59分間UV照射した後、3秒間シャワー噴射するサイクルをUV照射工程時間繰り返す。)
UV照射工程時間:6時間
【0094】
ii)結露工程
温度:60℃
湿度:90%
結露時間:4時間
【0095】
iii)休止工程
休止時間:2時間
【0096】
上記3工程のサイクルを繰り返し、総試験時間として300時間経過後に、防汚性および外観の観点から、耐候性の評価を行った。
【0097】
(12)ハードコート層の転写性
試料フィルムを用いて、離型フィルムを剥離した後、露出する面を市販のポリカーボネートシート(旭硝子株式会社製:カーボグラス(登録商標)C110C、厚み700μm、Tg165℃)表面に貼り合わせた。その後、保護フィルムを剥離して、ハードコート層付きポリカーボネートシートを得た。評価項目として、防汚性と外観の観点から、転写性の評価を行った。
【0098】
(13)総合評価
試料フィルムについて、下記判定基準により、判定を行った。
(判定基準)
○:透明性、防汚性、耐擦傷性、密着性、外観のすべての項目が○。
△:透明性、防汚性、耐擦傷性、密着性、外観の中で、少なくとも一つの項目が△。
×:透明性、防汚性、耐擦傷性、密着性、外観の中で、少なくとも一つの項目が×。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
表1及び表2中、「ハードコート層」欄の「粒子含有量」は、ハードコート層中のバインダー含有量(固形分)100部に対する粒子(固形分)の含有量を意味する。
【0102】
表1及び表2からわかるように、ハードコート層が粒子を含まない比較例1、ハードコート層のガラス転移点が90℃を超える比較例2、ハードコート層がアクリル−シリコーン変性ポリマーを含まず、ハードコート層中の粒子が、ハードコート層の保護フィルム側の表面に偏在していない比較例3、及び、保護フィルムを備えていない比較例4の各フィルム積層体のハードコート層は、防汚性、外観、被着体との密着性に優れなかった。
一方、実施例のフィルム積層体は、いずれも、ハードコート層中の粒子が、ハードコート層の保護フィルム側の表面に偏在し、透明性、防汚性、及び外観に優れ、被着体との密着性に優れることがわかった。