特許第6834957号(P6834957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6834957
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20210215BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20210215BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
   G02B5/02 C
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
   G02F1/1335
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-528622(P2017-528622)
(86)(22)【出願日】2016年7月6日
(86)【国際出願番号】JP2016069991
(87)【国際公開番号】WO2017010368
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年4月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-139044(P2015-139044)
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸本 壮悟
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−145985(JP,A)
【文献】 特表2015−505074(JP,A)
【文献】 特開2015−004857(JP,A)
【文献】 特開2008−090068(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046467(WO,A1)
【文献】 特開2013−008034(JP,A)
【文献】 特開2011−033815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側から、偏光板、及びTNモードの液晶セルを、この順で備えるTNモードの液晶表示装置であって、
前記偏光板は、視野角拡大フィルムと、偏光子とを備え、その前記視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、
前記視野角拡大フィルムは、その少なくとも一方の面に、互いになす角が±30°以内の孔含有部を複数備え、前記孔含有部は孔を含有
表示画面を斜め方向から視認した時に階調反転する方位角度と前記孔含有部の長手方向とのなす角が垂直である、TNモードの液晶表示装置
【請求項2】
前記偏光子の吸収軸と前記孔含有部の長手方向とのなす角が45°である、請求項1に記載の液晶表示装置
【請求項3】
視認側から、偏光板、及びVAモードの液晶セルを、この順で備えるVAモードの液晶表示装置であって、
前記偏光板は、視野角拡大フィルムと、偏光子とを備え、その前記視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、
前記視野角拡大フィルムは、その少なくとも一方の面に、互いになす角が±30°以内の孔含有部を複数備え、前記孔含有部は孔を含有し、
前記孔含有部の長手方向が前記偏光子の吸収軸に対して平行である、VAモードの液晶表示装置
【請求項4】
前記孔含有部の長手方向が、前記偏光子の吸収軸に対して平行又は垂直である、請求項3に記載の液晶表示装置
【請求項5】
前記視野角拡大フィルムが、2層以上の樹脂層を備え、前記孔含有部は、前記樹脂層のうちの1層以上の面に設けられる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示装置
【請求項6】
前記視野角拡大フィルムにおいて、隣り合う前記孔含有部の間隔が、50μm以下のランダムな間隔である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示装置
【請求項7】
前記視野角拡大フィルムが、紫外線吸収剤を含有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶表示装置
【請求項8】
前記視野角拡大フィルムが、偏光板保護フィルムである、請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶表示装置
【請求項9】
前記視野角拡大フィルムにおいて、前記孔含有部がクレーズからなり、
前記クレーズは、前記フィルムに形成される割れ目であり、前記割れ目の間において形成されるフィブリルと、その間に形成される孔としてのボイドとを有し、
前記フィブリルは、前記フィルムを構成する樹脂を構成する分子が繊維化することにより得られた繊維である、請求項1〜のいずれか1項に記載の液晶表示装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視野角拡大フィルム、偏光板、及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TNモード及びVAモードの液晶表示装置は、技術が確立され比較的安価に供給可能である一方、斜めから見た場合、階調反転の発生や輝度とコントラストの低下が起こり、液晶表示装置の視認が困難となる。このため、TNモードの液晶表示装置は、従来は中小型テレビやパーソナルコンピュータなどの決まった角度から視認する表示装置に主に採用されてきた。しかしながら、近年、タブレット型端末などの、広視野角での視認性が求められる装置でも、視野角を拡大するための手段と共に、これらのモードの液晶表示を用いることが試みられている。
【0003】
視野角を拡大するための手段の例としては、特定の位相差を有し、それにより視野角を補償する位相差層が知られている。また、そのような位相差層の製造方法についても、種々の提案がなされている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−151162号公報
【特許文献2】国際公開第2009/084661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたものであり、広視野角でも視認可能となる視野角拡大フィルム、偏光板、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、フィルムの少なくとも一方の面に、互いに略平行な孔含有部を複数備えるフィルムを、TNモード及びVAモードの液晶表示装置に実装すると視野角が拡大することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕 視野角を拡大するための視野角拡大フィルムであって、
前記視野角拡大フィルムは、その少なくとも一方の面に、互いに略平行な孔含有部を複数備え、前記孔含有部は孔を含有する、視野角拡大フィルム。
〔2〕 2層以上の樹脂層を備え、前記孔含有部は、前記樹脂層のうちの1層以上の面に設けられる、〔1〕に記載の視野角拡大フィルム。
〔3〕 隣り合う前記孔含有部の間隔が、50μm以下のランダムな間隔である、〔1〕又は〔2〕に記載の視野角拡大フィルム。
〔4〕 紫外線吸収剤を含有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の視野角拡大フィルム。
〔5〕 前記視野角拡大フィルムが、偏光板保護フィルムである、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の視野角拡大フィルム。
〔6〕 前記孔含有部がクレーズからなる、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の視野角拡大フィルム。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の視野角拡大フィルムと、偏光子とを備える、偏光板。
〔8〕 前記孔含有部の長手方向が、前記偏光子の吸収軸に対して平行又は垂直である、〔7〕に記載の偏光板。
〔9〕 前記偏光子の吸収軸と前記孔含有部の長手方向とのなす角が45°である、〔7〕に記載の偏光板。
〔10〕 視認側から、〔7〕又は〔9〕に記載の偏光板、及びTNモードの液晶セルを、この順で備えるTNモードの液晶表示装置であって、
前記偏光板は、その前記視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、
表示画面を斜め方向から視認した時に階調反転する方位角度と前記孔含有部の長手方向とのなす角が垂直である、TNモードの液晶表示装置。
〔11〕 視認側から、〔7〕又は〔8〕に記載の偏光板、及びVAモードの液晶セルを、この順で備えるVAモードの液晶表示装置であって、
前記偏光板は、その前記視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、
前記孔含有部の長手方向が前記偏光子の吸収軸に対して平行である、VAモードの液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の視野角拡大フィルムは、TNモード及びVAモードの液晶表示装置に実装すると視野角を拡大することができる。
本発明の偏光板、及び本発明の液晶表示装置は、視野角が拡大されていることから、広視野角で視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、視野角拡大フィルムの一例を模式的に示す平面図である。
図2図2は、クレーズの構造の一例を示す拡大模式図である。
図3図3は、クレーズ加工装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図3のブレード付近を拡大して模式的に示す側面図である。
図5図5は、実施例1〜3及び比較例1の階調輝度特性を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「偏光板」とは、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0012】
また、構成要素の方向が「45°」、「平行」、「垂直」又は「直交」とは、特に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば、通常±5°、好ましくは±2°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0013】
また、MD方向(machine direction)は、製造ラインにおけるフィルムの流れ方向であり、通常は長尺のフィルムの長手方向及び縦方向に一致する。さらに、TD方向(traverse direction)は、フィルム面に平行な方向であって、MD方向に垂直な方向であり、通常は長尺のフィルムの幅方向及び横方向に一致する。
【0014】
[1.視野角拡大フィルム]
本発明の視野角拡大フィルムは、液晶表示装置の視野角を拡大するための視野角拡大フィルムである。
【0015】
[1.1.視野角拡大フィルムの材料]
本発明の視野角拡大フィルムの材料は、各種の重合体を含む樹脂としうる。かかる重合体の例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、及び脂環構造含有重合体が挙げられるが、孔含有部の形成のしやすさの観点からポリスチレン、ポリプロピレン、脂環構造含有重合体が好ましい。
【0016】
ポリスチレンは、スチレン系単量体に由来する繰り返し単位(以下、適宜「スチレン系単量体単位」という。)を含有する重合体である。前記のスチレン系単量体とは、スチレン及びスチレン誘導体のことをいう。スチレン誘導体の例としては、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ニトロスチレン、p−アミノスチレン、p−カルボキシスチレン、及びp−フェニルスチレンが挙げられる。スチレン系単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。したがって、スチレン系重合体は、1種類のスチレン系単量体単位を単独で含有していてもよく、2種類以上のスチレン系単量体単位を任意の比率で組み合わせて含有していてもよい。
【0017】
また、ポリスチレンは、スチレン系単量体のみを含有する単独重合体又は共重合体であってもよく、スチレン系単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。スチレン系単量体と共重合しうる単量体の例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、及び酢酸ビニルが挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ポリプロプレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレン以外の単量体との共重合体であってもよい。ポリプロプレンが共重合体である場合、ポリプロプレンはランダム重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト重合体であってもよい。ただし、ポリプロプレンが共重合体である場合でも、ポリプロプレンが含むプロピレン由来の繰り返し単位の含有率が高いことが好ましく、具体的には、80重量%以上が好ましく、85重量%以上がより好ましい。
【0019】
脂環構造含有重合体の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン系重合体、(3)環状共役ジエン系重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素系重合体、及び(1)〜(4)の水素化物などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物が好ましい。
【0020】
本発明の視野角拡大フィルムの材料を構成ずる樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常5,000以上、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上であり、通常50,000以下、好ましくは45,000以下、より好ましくは40,000以下である。
【0021】
本発明の視野角拡大フィルムを構成する樹脂は、必要に応じて重合体以外の任意成分を含有していてもよい。任意成分の例は、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、分散剤、塩素捕捉剤、難燃剤、結晶化核剤、強化剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、離型剤、顔料、有機又は無機の充填剤、中和剤、滑剤、分解剤、金属不活性化剤、汚染防止剤、及び抗菌剤が挙げられる。
【0022】
紫外線吸収剤の例は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、及び無機粉体が挙げられる。好適な紫外線吸収剤の例は、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。特に好適なものの例は、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)が挙げられる。
【0023】
視野角拡大フィルムを構成する樹脂が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有量は、樹脂100重量%当たり0.5〜5重量%が好ましい。
【0024】
本発明の視野角拡大フィルムは、1層の樹脂層のみからなってもよく、2層以上の樹脂層を備えていてもよい。本発明の視野角拡大フィルムが2層以上の樹脂層を有する場合は、それぞれの樹脂層を構成する材料として、上に例示した材料を用いうる。本発明の視野角拡大フィルムが2層以上の樹脂層を備える場合、孔含有部は、樹脂層のうちの1層以上の面に設けうる。この場合、孔含有部が設けられる面は、視野角拡大フィルムの最表面であってもよく、視野角拡大フィルム内部の複数の樹脂層の間の1以上の界面であってもよい。本発明の視野角拡大フィルムが2層以上の樹脂層を備える場合、各樹脂層は同一の樹脂層であってもよく、異なる樹脂層であってもよい。
【0025】
また、視野角拡大フィルムは、任意の層を備えうる。任意の層の例は、視野角拡大フィルムと他の部材との接着性を向上させるための易接着層が挙げられる。また、任意の層は、1層のみを単独で設けてもよく、2層以上を任意に組み合わせて設けてもよい。
【0026】
視野角拡大フィルムの厚みは、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは20μm以上である。上限については特に限定されないが、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。視野角拡大フィルムが2層以上の樹脂層を備える場合、樹脂層の合計厚みが前記の範囲に収まることが好ましい。
【0027】
[1.2.孔含有部]
本発明の視野角拡大フィルムは、その少なくとも一方の面に、互いに略平行な孔含有部を複数備え、孔含有部は孔を含有する。
図1は、視野角拡大フィルムの一例を模式的に示す平面図である。図1の例において、長尺状の視野角拡大フィルム1は、その表面に、互いに平行な直線状の孔含有部20を複数備える。孔含有部20は、多数の孔(図1において不図示)を備える。図1の例において、孔含有部20の長手方向は、視野角拡大フィルム1のTD方向と平行な方向である。
【0028】
孔含有部は孔を含有するので、孔含有部に入射した光は散乱される。また、孔を含有することで、孔含有部の屈折率は、フィルムの孔含有部が形成されていない箇所の屈折率よりも低くなり、従って、視野角拡大フィルムの面内に屈折率の異なる領域が混在することになる。その結果、光の散乱方向の角度が拡大しうる。特定の理論に拘束されるものではないが、かかる広範囲への光の散乱により、視野角の拡大が達成されるものと考えられる。
【0029】
孔含有部に含有されている孔は、視野角拡大フィルムの厚み方向に貫通していてもよく、貫通していなくてもよい。いずれの場合であっても、孔含有部は孔を含有するので、視野角拡大フィルムの厚み方向に深さのある構造となる。各孔含有部は、通常多数の孔を有するが、孔含有部の構造はこれに限られず、単一のクラック状の孔からなっていてもよい。
【0030】
複数の孔含有部は、互いに略平行に設けられる。孔含有部が互いに「略平行」であるとは、本発明の効果が得られる範囲内で、互いになす角が0°を超える角度であってもよい。具体的には、好ましくは±40°以内、より好ましくは±30°以内の誤差を有していてもよい。互いに「略平行」な孔含有部は、このような角度関係を有しうるので、本発明の視野角拡大フィルムにおいて、複数の孔含有部は、互いに交差した箇所を有していてもよい。
【0031】
個々の孔含有部は、通常、略直線状の形状を有する。孔含有部の形状が「略直線状」であるとは、本発明の効果が得られる範囲内での褶曲を有する場合をも包含する。
【0032】
また、孔含有部の形成のしやすさの観点から、孔含有部の長手方向は、視野角拡大フィルムのTD方向と略平行(MD方向に略垂直)であることが好ましい。この場合、図1に一例を示したように、視野角拡大フィルム1の一方の端部から該端部と対向する他方の端部まで直線状に形成されている必要はない。
【0033】
隣り合う孔含有部の間隔Pは、一定でもよく、ランダムであってもよい。例えば、図1に示す例では、隣り合う孔含有部20の間隔Pは、一定ではなくランダムな間隔となっている。高い視野角拡大の効果を得る観点から、孔含有部の間隔はランダムであることが好ましい。
【0034】
隣り合う孔含有部の間隔Pは、特に限定されないが、良好な表示画面品質を得る等の観点からは、狭い間隔であることが好ましい。かかる間隔Pについて、具体的には、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下としうる。間隔Pがランダムである場合、視野角拡大フィルム中の間隔Pの最大値が、当該上限以下であることが好ましい。
【0035】
好ましい態様において、視野角拡大フィルムが備える複数の孔含有部は、その一部又は全部が、クレーズからなる。孔含有部の形成のしやすさの観点から、孔含有部はクレーズからなることが好ましい。
【0036】
クレーズとは、フィルムに形成される略直線状の割れ目のことをいう。クレーズは通常、かかる割れ目の間において形成されるフィブリルと、その間に形成される、孔としてのボイドとを有する。フィブリルとは、樹脂を構成する分子が繊維化することにより得られた繊維をいう。
【0037】
図2は、クレーズの構造の一例を示す拡大模式図である。図2において、クレーズ21は多数の細長いフィブリル211と、その間に存在するボイド212とを有している。フィブリル211は通常、孔含有部としてのクレーズの長手方向と略直交する方向に延長して存在する。このような構造を有するクレーズは、フィルムをクレーズ加工することにより形成しうる。フィルムをクレーズ加工し、フィルムに圧力を加えることにより、フィルムに割れ目を形成させ、さらに、割れ目の間隙内において、樹脂を構成する分子を繊維化させ、フィブリルとその間のボイドを形成させることができる。クレーズ加工の詳細は後述する。
【0038】
フィブリルの直径は、通常5nm〜50nmであり、好ましくは10nm〜50nmであり、より好ましくは10nm〜40nmであり、さらにより好ましくは20nm〜40nmである。クレーズにおけるボイドの直径は、通常5nm〜45nmであり、好ましくは10nm〜30nmである。孔含有部がクレーズからなる場合、かかるクレーズの幅は、通常30nm〜1000nmであり、好ましくは100nm〜1000nmであり、より好ましくは200nm〜800nmであり、さらにより好ましくは300nm〜800nmである。ここでのフィブリルの直径、ボイドの直径及びクレーズの幅の値は、平均値であり、具体的にはクレーズが発現している任意の3箇所を走査型電子顕微鏡で観察し、フィブリルとボイドの大きさを測定することにより求めうる。
【0039】
[1.3.視野角拡大フィルムの形状、物性等]
本発明の視野角拡大フィルムは、長尺のフィルムであってもよく、枚葉のフィルムであってもよい。通常、製造効率を高める観点から、視野角拡大フィルムは長尺のフィルムとして製造される。また、枚葉の視野角拡大フィルムを製造する場合には、長尺の視野角拡大フィルムを所望の形状に切り出すことにより、枚葉の視野角拡大フィルムを製造しうる。
【0040】
本発明の視野角拡大フィルムは、光学異方性が小さく実質的に光学的に等方性のフィルムであってもよく、光学的に異方性のフィルムであってもよい。
本発明の視野角拡大フィルムが光学的に異方性のフィルムである場合、その面内レターデーションReは、好ましくは360nm以下、より好ましくは330nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。また、厚み方向のレターデーションRthは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは30nm以上である。
【0041】
視野角拡大フィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。また、視野角拡大フィルムの厚み方向のレターデーションRthは、別に断らない限り、Rth={(nx+ny)/2−nz}×dで表される値である。ここで、nxは、視野角拡大フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、視野角拡大フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0042】
視野角拡大フィルムの全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光(株)社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。
【0043】
[2.視野角拡大フィルムの製造方法]
本発明の視野角拡大フィルムは、既知の方法等の任意の方法で製造し得る。例えば、孔含有部の形成に供するためのフィルムを製造した後、該フィルムの面に孔含有部を形成することで、本発明の視野角拡大フィルムを製造し得る。本願においては、このような、孔含有部の形成に供するためのフィルムを、単に「フィルム」という場合がある。
【0044】
[2.1.フィルムの製造]
フィルムの製造方法の例としては、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、及び圧縮成形法が挙げられる。
【0045】
フィルムを製造する際の溶融樹脂温度等の条件は、フィルムの種類に応じて適宜変更することができ、公知の条件で行うことができる。
【0046】
フィルムが2層以上の樹脂層を備える場合、フィルムの製造方法の例としては、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法、ドライラミネーション、共流延法、及びコーティング成形法が挙げられる。
【0047】
フィルムは、延伸されていない未延伸フィルムであってもよく、延伸された延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムが好ましい。延伸方法は、一軸延伸、及び二軸延伸のいずれを採用してもよいが、二軸延伸が好ましい。中でも、好適な実施形態は、フィルムのTD方向に延伸倍率が高い二軸延伸である。
【0048】
延伸は、公知の延伸装置を用いて行うことができる。延伸装置の例は、縦一軸延伸機、テンター延伸機、バブル延伸機、及びローラー延伸機が挙げられる。
【0049】
延伸温度は、好ましくは(TG−30℃)以上、より好ましくは(TG−10℃)以上であり、好ましくは(TG+60℃)以下、より好ましくは(TG+50℃)以下である。ここで、「TG」とは、樹脂のガラス転移温度を表す。
【0050】
延伸倍率は、1.2倍〜5倍が好ましく、1.5倍〜4倍がより好ましく、2倍〜3倍がさらに好ましい。二軸延伸のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率が、前記の範囲に収まることが好ましい。
【0051】
[2.2.孔含有部の形成]
フィルムを製造後、フィルムの面上に孔含有部を形成することにより、視野角拡大フィルムを製造しうる。
孔含有部を形成する具体的な方法の例としては、クレーズ加工が挙げられる。クレーズ加工を行うことにより、孔含有部がクレーズからなる視野角拡大フィルムを、効率的に製造することができる。
【0052】
クレーズ加工は、既知の方法等の任意の方法で行うことができる。クレーズ加工の例としては、特開平6−82607号公報、特開平7−146403号公報、特開平9−166702号公報、特開平9−281306号公報、WO2007/046467号(特開2006−313262号公報)、特開2009−298100号公報、及び特開2012−167159号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0053】
クレーズ加工の具体例を、図3及び図4を参照して説明する。図3は、クレーズ加工装置の一例を模式的に示す斜視図であり、図4は、図3のブレード付近を拡大して模式的に示す側面図である。図4では、装置をTD方向から観察している。
【0054】
図3の例において、クレーズ加工装置100は、繰り出しロール41、搬送ロール42及び43、並びにブレード30を備える。ブレード30は、TD方向に平行な方向に延長するエッジ30Eを備える。
クレーズ加工装置100の操作において、繰り出しロール41から矢印A11方向に搬送されたフィルム10は、搬送ロール42及び43により、ブレード30のエッジ30Eに対して付勢された状態で支持されて搬送される。これにより、フィルム10に圧力を加えることができる。その結果、フィルム10の表面に、加圧による変形が生じ、TD方向に略平行な方向に延長する孔含有部20が形成され、視野角拡大フィルム1を製造することができる。
【0055】
クレーズ加工において、ブレード30がフィルム10に接する角度は、所望のクレーズが形成される角度に適宜調整しうる。当該角度は、図3及び図4の例では、エッジ30Eの延長方向から観察したブレード30の中心線30Cと、フィルム10の下流側の表面とがなす角度θとして表される。角度θは、10°〜60°が好ましく、15°〜50°がより好ましく、20°〜40°がさらに好ましい。
【0056】
フィルムにブレードを押し当てる際のフィルムの張力は、所望のクレーズが形成される値に適宜調整しうる。当該張力は、10N/m〜300N/mが好ましく、50N/m〜200N/mがより好ましい。
【0057】
クレーズ加工は、フィルムの延伸処理前に行ってもよく、延伸処理と同時に行ってもよい。
【0058】
フィルムとして、2層以上の樹脂層を備えるフィルムを用い、かかるフィルムにクレーズ加工を行った場合、2層以上の樹脂層の全てにクレーズが発生する場合もあり、一部の樹脂層のみにクレーズが発生する場合もある。さらに、一部の樹脂層のみにクレーズが発生する場合は、最表面の層にクレーズが発生する場合もあり、内側の層にクレーズが発生する場合もある。例えば、比較的脆い材質の中間層と、そのおもて面及び裏面の、比較的柔軟な材質の表面層とからなるフィルムにクレーズ加工を行った場合、中間層のみにクレーズが発生しうる。そのようなフィルムも、本発明の視野角拡大フィルムとして用いうる。
【0059】
[3.視野角拡大フィルムの用途:偏光板]
本発明の視野角拡大フィルムは、液晶表示装置の視野角を拡大させる用途に用いうる。但し、本発明の視野角拡大フィルムの機能は、これに限られない。例えば、本発明の視野角拡大フィルムは、視野角拡大フィルムとしての機能に加えて、それ以外の機能とを併せて発揮するものであってもよい。かかる視野角拡大フィルム以外の機能の例としては、保護フィルムとしての機能、位相差フィルムとしての機能、及び光学補償フィルムとしての機能が挙げられる。特に以下に述べる通り、偏光板において偏光板保護フィルムとしての機能を併せて発揮するものとして、好ましく用いうる。
【0060】
本発明の偏光板は、本発明の視野角拡大フィルムと、偏光子とを備える。本発明の偏光板において、視野角拡大フィルムは、偏光板保護フィルムとしても機能しうる。このような偏光板は、例えば、偏光子と視野角拡大フィルムとを貼合することにより製造しうる。本発明の偏光板において、偏光子と視野角拡大フィルムとは、接着層を介することなく直接貼合されていてもよく、接着剤により形成された接着層を介して貼合されていてもよい。さらに、偏光子と視野角拡大フィルムとの間に、さらに他の保護フィルムが介在していてもよい。
【0061】
視野角拡大フィルムが、その一方の表面のみに孔含有部を有する場合、当該表面は、偏光子側に位置してもよく、偏光子と反対側に位置してもよい。また例えば、視野角拡大フィルムが中間層と、そのおもて面及び裏面の表面層とからなるフィルムであり、中間層の一方の面のみに孔含有部を有する場合、当該孔含有部を有する中間層の面は、偏光子側を向いていてもよく、偏光子とは反対側を向いていてもよい。
【0062】
本発明の偏光板は、偏光子の一方の面だけに視野角拡大フィルムを備えてもよく、両方の面に備えてもよい。偏光子の一方の面だけに視野角拡大フィルムを備える場合、偏光板は、偏光子の他方の面において、保護フィルムとして機能しうる、視野角拡大フィルム以外の任意のフィルムを備えうる。
【0063】
本発明の偏光板を、後述するVAモードの液晶表示装置において用いる場合、孔含有部の長手方向が偏光子の吸収軸に対して平行であることが好ましい。これにより、VAモードの液晶表示装置の視野角を拡大することができる。
【0064】
また、本発明の偏光板を、後述するTNモードの液晶表示装置において用いる場合、液晶表示装置の表示画面を斜め方向から視認した時に階調反転する方位角度と孔含有部の長手方向とのなす角が垂直であることが好ましい。これにより、TNモードの液晶表示装置の視野角を拡大することができる。
【0065】
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素若しくは二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって製造しうる。また、例えば、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素もしくは二色性染料を吸着させ延伸し、さらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによっても製造しうる。さらに、偏光子として、例えば、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光とに分離する機能を有する偏光子を用いてもよい。これらの中でも、ポリビニルアルコールを含んでなる偏光子が好ましい。偏光子の偏光度は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。偏光子の平均厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
【0066】
偏光子と視野角拡大フィルムとを接着するための接着剤としては、光学的に透明な任意の接着剤を用いうる。接着剤の例は、水性接着剤、溶剤型接着剤、二液硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、及び感圧性接着剤が挙げられる。この中でも、水性接着剤が好ましく、特にポリビニルアルコール系の水性接着剤が好ましい。また、接着剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
接着層の平均厚みは、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上であり、好ましくは5μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【0068】
視野角拡大フィルムと偏光子とを貼合する方法に制限は無いが、例えば、偏光子の一方の面に必要に応じて接着剤を塗布した後、ロールラミネーターを用いて偏光子と視野角拡大フィルムとを貼り合せ、必要に応じて乾燥を行う方法が好ましい。乾燥時間及び乾燥温度は、接着剤の種類に応じて適宜選択される。
【0069】
[4.液晶表示装置]
本発明の視野角拡大フィルム、及び本発明の偏光板は、液晶表示装置に使用しうる。液晶表示装置を構成する液晶セルは、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Virtical Alignment)モード、IPS(In−Plane Switching)モード等の公知のものを使用できるが、視野角を効果的に拡大できる観点からTNモード及びVAモードが好ましい。
【0070】
[4.1.TNモードの液晶表示装置]
本発明の視野角拡大フィルム、又は本発明の偏光板は、TNモードの液晶表示装置に使用されることが好ましい。
【0071】
本発明のTNモードの液晶表示装置は、視認側から本発明の偏光板、及びTNモードの液晶セルを、この順で備え、偏光板は、その視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、液晶表示装置の表示画面を斜め方向から視認した時に階調反転する方位角度と、孔含有部の長手方向とのなす角が垂直である。
【0072】
TNモードの液晶表示装置は、通常、TNモードの液晶セルの視認側とは反対側に偏光板及び光源を備える。視認側とは反対側に配置される偏光板としては、本発明の偏光板を使用してもよく、公知の偏光板等の、本発明の偏光板以外の偏光板を使用してもよい。また、光源としては、公知の光源等の、任意の光源を使用しうる。
【0073】
視認側とは、液晶表示装置の使用に際して、表示される画像の観察者が位置する側をいう。
【0074】
通常、液晶表示装置を、黒表示から、明度を徐々に上げて白表示とするよう操作した場合、表示画面の輝度も徐々に上昇することになる。例えば、液晶表示装置の表示画面に8ビットグレースケール(黒表示を0、白表示を255とし、中間階調は0から255の値で表現される)を表示させるよう操作した場合、スケールを0から255まで上昇させるのに伴い、表示画面の輝度も上昇する。しかしながら、観察する方向によっては、明度を徐々に上昇させる操作を行うと、それに反して表示画面の輝度が下降する場合がある。例えば、図5に示す比較例1の観察においては、グレースケールを130付近から230付近まで上昇させる操作に伴い、表示画面の輝度が下降している。このように、表示装置に表示させる明度を上昇又は下降させる操作と、実際の表示画面の輝度の上昇又は下降が一致しないことを、「階調反転」という。階調反転は、液晶表示装置の表示画面を斜め方向から視認した時に、ある方位角度においてみられることがある。本発明のTNモードの液晶表示装置は、表示画面を斜め方向から視認した時に階調反転する方位角度と孔含有部の長手方向とのなす角を垂直とすることにより、そのような階調反転を低減し、視野角度を拡大することができる。
階調反転する方位角度は一方向に限られず、二方向、あるいはある程度の広がりを持った角度範囲である場合もある。その場合は、そのうちで、最も視野角を拡大したい方向を定め、当該方向と垂直な方向に、孔含有部の長手方向を設定しうる。
本発明のTNモードの液晶表示装置において、本発明の偏光板としては、偏光子の吸収軸と孔含有部の長手方向とのなす角が45°であるものを好ましく用いうる。通常のTNモードの液晶表示装置(矩形の表示画面を有し、表示画面が略垂直方向に直立し、矩形の長辺方向が水平方向、短辺方向が略垂直方向となる状態で使用されるもの)においては、下側から観察した際に階調反転が見られる場合が多い。また、通常のTNモードの液晶表示装置においては、偏光子は、その吸収軸と表示画面水平方向とがなす角が45°である場合が多い。したがって、本発明の偏光板として、偏光子の吸収軸と孔含有部の長手方向とのなす角が45°であるものを用いた場合、偏光子の吸収軸と表示画面水平方向とがなす角が45°となり且つ孔含有部の長手方向と表示画面水平方向とがなす角度が平行となる配置を容易に行うことができるので、TNモードの液晶表示装置の視野角の拡大を容易に行うことができる。
【0075】
[4.2.VAモードの液晶表示装置]
本発明の視野角拡大フィルム、又は本発明の偏光板はまた、VAモードの液晶表示装置に使用されることが好ましい。
【0076】
本発明のVAモードの液晶表示装置は、視認側から、本発明の偏光板、及びVAモードの液晶セルを、この順で備え、偏光板は、その視野角拡大フィルム側の面が視認側となるよう配置され、孔含有部の長手方向が偏光子の吸収軸に対して平行である。
【0077】
VAモードの液晶表示装置は、通常、VAモードの液晶セルの視認側とは反対側に偏光板及び光源を備える。視認側とは反対側に配置される偏光板としては、本発明の偏光板を使用してもよく、公知の偏光板等の、本発明の偏光板以外の偏光板を使用してもよい。また、光源としては、公知の光源等の、任意の光源を使用しうる。
【0078】
本発明のVAモードの液晶表示装置において、本発明の偏光板としては、孔含有部の長手方向が、偏光子の吸収軸に対して平行又は垂直であるものを好ましく用いうる。通常の液晶表示装置において、このような偏光板を配置する場合において、孔含有部の長手方向と表示画面の長辺方向との関係は平行又は垂直であることが好ましい。このような配置とすることにより、VAモードの液晶表示装置の視野角を拡大することができる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0080】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0081】
[実施例1]
(1−1.視野角拡大フィルムの製造)
図3及び図4に概略的に示す装置を用いて、視野角拡大フィルムの製造を行った。
幅300mm、厚み15μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)社製)と、幅300mm、厚み40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)社製)を、長手方向を揃えてサーマルラミネート法で貼り合せ、複層のフィルム10を得た。
【0082】
フィルム10を、矢印A11の方向に、速度50mm/min、フィルムの張力100N/mで搬送した。搬送されるフィルム10の無延伸ポリプロピレンフィルム側の面に、テフロン(登録商標)製のブレード30を押し当て、クレーズ加工を行った。クレーズ加工に際して、ブレード30のエッジ30Eの方向は、フィルムの幅方向(TD方向)とした。エッジ30Eの延長方向から観察したブレード30の中心線30Cと、フィルム10の下流側の表面とがなす角度θは30°とした。これにより、視野角拡大フィルムを製造した。
【0083】
得られた視野角拡大フィルムの孔含有部は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム側に発現した。その孔含有部は、略直線状の形状のクレーズであり、孔含有部の長手方向は、互いに略平行であり、フィルムのTD方向と略平行であった。孔含有部の間隔Pは、30μm以下のランダムな間隔であった。個々の孔含有部の幅の平均値は550nm、孔の深さの平均値は15μm、フィブリルの直径の平均値は30nmであった。これらの値は、クレーズフィルムの任意の箇所3点を選択し、走査型電子顕微鏡で25μm角の面積を観察することにより求めた。
【0084】
(1−2.液晶表示装置の製造)
TNモードの液晶表示装置(富士通(株)社製、ESPRIMO FH99/CM)の視認側表面の偏光板に、(1−1)で得られた視野角拡大フィルムを貼合した。貼合に際しては、視認側偏光板における偏光子の吸収軸と、視野角拡大フィルムの孔含有部の長手方向とのなす角が45°になり、且つ、孔含有部の長手方向が矩形の表示画面の長辺方向に対して平行となるように、これらの向きを調整した。また、視野角拡大フィルムの貼合は、孔含有部が形成された側の面が視認側となるように行った。これにより、本発明の偏光板を含む液晶表示装置を得た。
【0085】
[実施例2]
(2−1.視野角拡大フィルムの製造)
図3及び図4に概略的に示す装置を用いて、視野角拡大フィルムの製造を行った。
幅300mm、厚み15μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)社製)と、幅300mm、厚み40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)社製)を、長手方向を揃えてサーマルラミネート法で貼り合せ、複層のフィルム10を得た。
【0086】
フィルム10を、矢印A11の方向に、速度100mm/min、フィルムの張力50N/mで搬送した。搬送される複層フィルム10の無延伸ポリプロピレンフィルム側の面に、テフロン(登録商標)製のブレード30を押し当て、クレーズ加工を行った。クレーズ加工に際して、ブレード30のエッジ30Eの方向は、フィルムの幅方向(TD方向)とした。エッジ30Eの延長方向から観察したブレード30の中心線30Cと、フィルム10の下流側の表面とがなす角度θは30°とした。これにより、視野角拡大フィルムを製造した。
【0087】
得られた視野角拡大フィルムの孔含有部は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム側に発現した。その孔含有部は、略直線状の形状のクレーズであり、孔含有部の長手方向は、互いに略平行であり、フィルムのTD方向と略平行であった。孔含有部の間隔Pは、70μm以下のランダムな間隔であった。個々の孔含有部の幅の平均値は500nm、孔の深さの平均値は15μm、フィブリルの直径の平均値は25nmであった。これらの値は、クレーズフィルムの任意の箇所3点を選択し、走査型電子顕微鏡で25μm角の面積を観察することにより求めた。
【0088】
(2−2.液晶表示装置の製造)
(1−1)で得られた視野角拡大フィルムに代えて、(2−1)で得られた視野角拡大フィルムを用いた他は、実施例1の(1−2)と同じ操作により、液晶表示装置を製造した。
【0089】
[実施例3]
(3−1.視野角拡大フィルムの製造)
図3及び図4に概略的に示す装置を用いて、視野角拡大フィルムの製造を行った。
幅300mm、厚み40μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学(株)社製)10を、矢印A11の方向に、速度100mm/min、フィルムの張力20N/mで搬送した。搬送されるフィルム10に、テフロン(登録商標)製のブレード30を押し当て、クレーズ加工を行った。クレーズ加工に際して、ブレード30のエッジ30Eの方向は、フィルムの幅方向(TD方向)とした。エッジ30Eの延長方向から観察したブレード30の中心線30Cと、フィルム10の下流側の表面とがなす角度θは30°とした。これにより、視野角拡大フィルムを製造した。
【0090】
得られた視野角拡大フィルムの孔含有部は、略直線状の形状のクレーズであり、孔含有部の長手方向は、互いに略平行であり、フィルムのTD方向と略平行であった。孔含有部の間隔Pは、70μm以下のランダムな間隔であった。個々の孔含有部の幅の平均値は100nm、孔の深さの平均値は15μm、フィブリルの直径の平均値は25nmであった。これらの値は、クレーズフィルムの任意の箇所3点を選択し、走査型電子顕微鏡で25μm角の面積を観察することにより求めた。
【0091】
(3−2.液晶表示装置の製造)
(1−1)で得られた視野角拡大フィルムに代えて、(3−1)で得られた視野角拡大フィルムを用いた他は、実施例1の(1−2)と同じ操作により、液晶表示装置を製造した。
【0092】
[比較例1]
TNモードの液晶表示装置(富士通(株)社製、ESPRIMO FH99/CM)をそのまま評価に供した。
【0093】
[評価]
(視認性の評価)
実施例1〜3及び比較例1の液晶表示装置について、下側斜め方向からの目視確認を行い、視認性を評価した。観察方向は、極角(正面観察方向を0°とした角度)60°とした。評価は、以下の基準で行った。評価結果を表1に示す。
良好:液晶画面に表示された画像が視認できる。
不良:液晶画面に表示された画像が階調反転により、視認できない。
【0094】
(階調輝度特性評価)
LCD視野角特性測定評価装置(オートロニック・メルシャス社製、ConoScope)を用いて実施例1、実施例2、実施例3及び比較例1の液晶表示装置について任意のグレースケール表示を行い、各グレースケール条件において下側斜め極角60°の方向から輝度値の取得を行い、測定したグレースケール表示毎に白表示時の輝度で規格化した規格化輝度を下記式1から算出し、階調輝度特性を求めた。結果を表1及び図5に示す。なお、ここでいうグレースケールは8ビットで定義され、黒表示を0、白表示を255とし、中間階調は0から255の値で表現される。
規格化輝度=任意のグレースケール表示の輝度/白表示時の輝度(式1)
【0095】
【表1】
【0096】
表1に示す通り、実施例1、実施例2、及び実施例3は、比較例1と比較して液晶表示装置の下側から斜めに観察すると視認性が良いことから視野角が拡大していることがわかる。
【0097】
また、階調輝度特性について、図5に示す通り、比較例1はグレースケールが120付近より規格化輝度が低下し、階調反転が起きていることが確認された。一方、実施例1、実施例2は、グレースケールと規格化輝度との関係がほぼ線形であり階調反転が起きていないことが確認された。実施例3は、グレースケールが175付近より規格化輝度が少し低下し、僅かに階調反転が起きていることが確認された。実施例1、実施例2、及び実施例3は、比較例1と比較して視野角が拡大されていることがわかる。
【符号の説明】
【0098】
1 視野角拡大フィルム
10 フィルム
20 孔含有部
21 クレーズ(孔含有部)
211 フィブリル
212 孔
100 クレーズ加工装置
30 ブレード
図1
図2
図3
図4
図5