特許第6835145号(P6835145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6835145電荷輸送性ワニス及びそれを用いる電荷輸送性薄膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835145
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電荷輸送性ワニス及びそれを用いる電荷輸送性薄膜
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20210215BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20210215BHJP
   C08L 79/00 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 5/41 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20210215BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20210215BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   C08L79/00 A
   C08K3/36
   C08K3/22
   C08K5/41
   C08K5/09
   C08K3/00
【請求項の数】31
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2019-110331(P2019-110331)
(22)【出願日】2019年6月13日
(62)【分割の表示】特願2018-526819(P2018-526819)の分割
【原出願日】2018年1月18日
(65)【公開番号】特開2019-192928(P2019-192928A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年6月13日
(31)【優先権主張番号】特願2017-6991(P2017-6991)
(32)【優先日】2017年1月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-126778(P2017-126778)
(32)【優先日】2017年6月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】中家 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉武 桂子
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/129947(WO,A1)
【文献】 特開2011−193002(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/013660(WO,A1)
【文献】 特表2007−531807(JP,A)
【文献】 特開2012−023020(JP,A)
【文献】 特表2012−524834(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/058777(WO,A1)
【文献】 特開2005−347271(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/125721(WO,A1)
【文献】 特開2007−326097(JP,A)
【文献】 特開2008−095015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C08K 3/00
C08K 3/22
C08K 3/36
C08K 5/09
C08K 5/41
C08L 79/00
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリゴアニリン化合物と、
電子受容性ドーパントと、
SiOを含む、金属酸化物ナノ粒子と、
溶媒と、を含み、
前記溶媒が有機溶媒のみからなり、且つ、グリコール系溶媒(A)及びグリコール系溶媒に該当しない有機溶媒(B)を含み、
前記グリコール系溶媒が、グリコールジエーテル、グリコールエステルエーテル、グリコールジエステル、グリコールモノエーテル及びグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記グリコール系溶媒(A)の合計含有量をwtA(重量)、前記グリコール系溶媒に該当しない有機溶媒(B)の合計含有量をwtB(重量)とした場合に、下記式(1−1):
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1−1)
を満たし、
前記金属酸化物ナノ粒子が、前記溶媒に分散している、電荷輸送性ワニス。
【請求項2】
グリコール系溶媒(A)の合計含有量をwtA(重量)、グリコール系溶媒に該当しない有機溶媒(B)の合計含有量をwtB(重量)とした場合に、下記式(1−2):
0.10≦wtB/(wtA+wtB)≦0.40 (1−2)
を満たす、請求項1に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項3】
グリコール系溶媒(A)の合計含有量をwtA(重量)、グリコール系溶媒に該当しない有機溶媒(B)の合計含有量をwtB(重量)とした場合に、下記式(1−3):
0.15≦wtB/(wtA+wtB)≦0.30 (1−3)
を満たす、請求項1に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項4】
重合性の有機化合物モノマーを含まない、請求項1〜のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項5】
前記グリコール系溶媒が、式(G)で表される有機溶媒である請求項1〜のいずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
−O−(R−O)−R (G)
(式中、それぞれのRは、各々独立に、直鎖状C−C非置換アルキレン基であり、R及びRは、各々独立に、水素原子、直鎖状、分岐状若しくは環状C−C非置換アルキル基、又は直鎖状若しくは分岐状C−C非置換脂肪族アシル基であり、nは、1〜6の整数である。)
【請求項6】
前記Rが、エチレン基又はトリエチレン基である請求項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項7】
前記R及びRが、各々独立に、直鎖状C−C非置換アルキル基である請求項又は記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項8】
前記R及びRが、各々独立に、メチル基又はn−ブチル基である請求項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項9】
前記R及びRが、各々独立に、直鎖状又は分岐状C−C非置換脂肪族アシル基である請求項又は記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項10】
前記R及びRが、各々独立に、直鎖状C−C非置換アシル基である請求項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項11】
前記R及びRが、各々独立に、アセチル基又はプロピオニル基である請求項10記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項12】
前記nは、1〜4の整数である請求項11のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項13】
前記グリコール系溶媒が、グリコールジエーテル、グリコールモノエーテル及びグリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜いずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項14】
前記グリコール系溶媒が、少なくとも1種のグリコールジエーテル及び少なくとも1種のグリコールを含む請求項1〜いずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項15】
前記グリコール系溶媒が、エチレングリコールジエーテル、ジエチレングリコールジエーテル、プロピレングリコールジエーテル、ジプロピレングリコールジエーテル、エチレングリコールモノエーテルアセタート及びプロピレングリコールモノエーテルアセタートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜いずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項16】
前記グリコール系溶媒が、
エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、
1,3−オクチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、
エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、
プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、
プロピレングリコールジアセタート、
エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、
トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、及び
ポリプロピレングリコール
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜いずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項17】
前記オリゴアニリン化合物の平均分子量が、200〜5000である請求項1〜16のいずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項18】
前記オリゴアニリン化合物及び前記電子受容性ドーパントが、前記有機溶媒に溶解している請求項1〜17のいずれか一項に記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項19】
前記金属酸化物ナノ粒子の一次粒子の平均粒径が、500nm以下である、請求項1〜18のいずれか1記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項20】
有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層または正孔輸送層形成用である、請求項1〜19のいずれか1記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項21】
前記オリゴアニリン化合物が、式(1)若しくは式(1′)で表されるオリゴアニリン化合物又はこれらの酸化体であるキノンジイミン化合物より選択される少なくとも1種である、請求項1〜20のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【化25】

(式中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、t−ブトキシカルボニル基、またはベンジルオキシカルボニル基を示し、
〜R34は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基またはハロゲン原子を示し、
mおよびnは、それぞれ独立して1以上の整数であり、m+n≦20を満足する。)
【化26】

(式中、
35、R36及びR37は、それぞれ独立して水素原子、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基を示し、
L及びMは、それぞれ独立して一般式(6)又は(7)で表される二価の基であり、
38〜R45は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基、アシル基、又はスルホン酸基であり、
x及びyは、それぞれ独立して1以上の整数であり、x+y≦20を満足する。)
【化27】
【請求項22】
前記RおよびRが、それぞれ独立して水素原子またはt−ブトキシカルボニル基であり、
前記R〜R34が、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、またはハロゲン原子であり、
前記mおよびnが、それぞれ独立して1以上の整数で、m+n≦10を満足する、請求項21記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項23】
前記R〜R34が、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、またはハロゲン原子であり、
mおよびnが、それぞれ独立して1以上の整数で、m+n≦5を満足する、請求項21または22記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項24】
前記R〜R34における一価炭化水素基が、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、または置換もしくは非置換アリールアミノ基である、請求項22記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項25】
前記ハロゲン原子がフッ素原子である、請求項22記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項26】
前記R〜R34がすべて水素原子である、請求項21記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項27】
前記電子受容性ドーパント物質が、アリールスルホン酸化合物、ヘテロポリ酸化合物、長周期型周期表の第13族に属する元素を含むイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜26のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【請求項28】
前記電子受容性ドーパント物質が、ヘテロポリ酸化合物、式(2)で表されるアリールスルホン酸誘導体、式(5a)で表されるアニオンとその対カチオンからなるイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜27のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【化28】

〔式中、
Xは、O、SまたはNHを表し、
Aは、Xおよびn個の(SOH)基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環またはアントラセン環を表し、
Bは、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、または非置換もしくは置換の下記式(3)もしくは(4)
【化29】

で示される基(式中、WおよびWは、それぞれ独立して、O、S、S(O)基、S(O)基、または非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基を示す。
は単結合でもよい。R46〜R59はそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)を表し、
nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、
qは、BとXとの結合数を示し、1≦qを満たす整数である。〕
【化30】

(式中、
Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素を表し
Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い芳香族複素環基を表わす。)
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させる工程を含む、電荷輸送性薄膜の製造方法。
【請求項30】
請求項29記載の製造方法により電荷輸送性薄膜を製造する工程を含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項31】
請求項29記載の製造方法により電荷輸送性薄膜を製造する工程を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年1月18日に出願された特願2017−006991及び2017年6月28日に出願された特願2017−126778に基づく優先権を主張する。これらの出願の内容全体が、この参照により本明細書に明示的に組み入れられる。
本発明は、電荷輸送性ワニスに関する。より詳細には、本発明は、特定の成分を含む電荷輸送性ワニス及びそれを用いて形成される電荷輸送性薄膜に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(以下「有機EL」と称する)素子中の正孔注入層における電荷輸送性物質として、オリゴアニリン化合物が用いられるようになり、この化合物の種々の特性の改善が進められている。そのような特性の例として、電荷輸送性や、有機EL素子に使用したときの発光効率および輝度特性に加え、この化合物を含む電荷輸送性ワニスを塗布して正孔注入層を形成する際に用いる、スピンコート、インクジェット塗布、スプレー塗布等の種々の塗布方式に対応するための、特に有機溶媒に対する溶解性などを挙げることができる。
本発明者らは、特定の化学構造を有するオリゴアニリン化合物が、有機溶媒に対する良好な溶解性を示すと共に、電荷受容性物質と組み合わせて用いると、高い電荷輸送性を示し、また有機EL素子の正孔注入層における電荷輸送性物質として用いると、高い発光効率および輝度特性を発揮し得ることを報告している(特許文献1参照)。
【0003】
有機EL素子の、正孔注入層等の電荷輸送性薄膜は、可視領域での光透過率が高く、着色していないことが望ましい。電荷輸送性薄膜の着色は、有機EL素子の色純度及び色再現性を低下させることが知られている。しかもこの着色は、3色発光法、白色法及び色変換法等の、有機ELディスプレイにおける種々のフルカラー化技術において問題になり、有機EL素子を安定に生産する際の著しい障害になる。しかし、オリゴアニリン化合物は通常有色物質であるため、これを用いて作成した電荷輸送性薄膜が着色するという問題がある。オリゴアニリン化合物は通常、複数の同一の繰り返し単位の連続からなる構造を分子内に有しており、その繰り返し単位数の増加に伴いその共役系が伸長するほど、可視領域の吸光度が大きくなる(光透過率が低くなる)ため、電荷輸送性薄膜の着色が著しくなる。
【0004】
分子内の共役系を一部切断したオリゴアニリン化合物や、アニリン単位とは異なる繰り返し単位構造から構成される共役系を一部に含むオリゴアニリン化合物を用いることで、可視領域での光透過率が高く、着色が抑制された電荷輸送性薄膜が得られることが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、光の取り出し効率等の向上のため、更に着色の少ない薄膜が望まれていた。また、そのような薄膜を備えた有機EL素子には、素子特性や寿命性能等の点で改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/129947号
【特許文献2】国際公開第2008/032616号
【特許文献3】特表2012−524834
【特許文献4】特表2012−520381
【特許文献5】特許第5381931号
【特許文献6】特開2002−151272
【非特許文献1】Advanced Materials、2011年、23(6)、p.740−745
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、電荷輸送性物質としてオリゴアニリン化合物を用いながらも、可視領域での光透過率が高く、着色のより少ない電荷輸送性薄膜を与える電荷輸送性ワニス、及びそのような電荷輸送性ワニスを用いて得られる電荷輸送性薄膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果意外にも、電荷輸送性ワニスにおいて、特定のオリゴアニリン化合物を、電荷輸送性を付与するための電子受容性ドーパントと共に、金属酸化物ナノ粒子と組み合わせて用いることにより、オリゴアニリン化合物自体の化学構造を変えずとも、得られる電荷輸送性薄膜の可視領域における光透過率が著しく改善され、従って電荷輸送性薄膜の着色が大幅に減少するのみならず、その他の特性も更に向上することを見出した。以上の新たな知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.オリゴアニリン化合物と、電子受容性ドーパントと、金属酸化物ナノ粒子と、有機溶媒とを含む電荷輸送性ワニス。
【0009】
2.前記オリゴアニリン化合物が式(1)または式(1′)で表されるオリゴアニリン化合物より選択される少なくとも1種である、前項1記載の電荷輸送性ワニス。
【化1】

(式中、
およびRは、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、t−ブトキシカルボニル基、またはベンジルオキシカルボニル基を示し、
〜R34は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基またはハロゲン原子を示し、
mおよびnは、それぞれ独立して1以上の整数であり、m+n≦20を満足する。)
【化2】

(式中、
35、R36及びR37は、それぞれ独立して水素原子、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基を示し、
L及びMは、それぞれ独立して一般式(6)又は(7)で表される二価の基であり、
38〜R45は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基、アシル基、又はスルホン酸基であり、
x及びyは、それぞれ独立して1以上の整数であり、x+y≦20を満足する。)
【化3】
【0010】
3.前記RおよびRが、それぞれ独立して水素原子またはt−ブトキシカルボニル基であり、
前記R〜R34が、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、またはハロゲン原子であり、
前記mおよびnが、それぞれ独立して1以上の整数で、m+n≦10を満足する、前項2記載の電荷輸送性ワニス。
【0011】
4.前記R〜R34が、それぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、またはハロゲン原子であり、
mおよびnが、それぞれ独立して1以上の整数で、m+n≦5を満足する、前項2または3記載の電荷輸送性ワニス。
【0012】
5.前記R〜R34における一価炭化水素基が、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、または置換もしくは非置換アリールアミノ基である、前項3記載の電荷輸送性ワニス。
【0013】
6.前記ハロゲン原子がフッ素原子である、前項3記載の電荷輸送性ワニス。
【0014】
7.前記R〜R34がすべて水素原子である、前項2記載の電荷輸送性ワニス。
【0015】
8.前項2記載のオリゴアニリン化合物の酸化体であるキノンジイミン化合物と、電子受容性ドーパントと、金属酸化物ナノ粒子および有機溶媒とを含む電荷輸送性ワニス。
【0016】
9.前記電子受容性ドーパント物質が、アリールスルホン酸化合物、ヘテロポリ酸化合物、長周期型周期表の第13族に属する元素を含むイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前項1〜8のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【0017】
10.前記電子受容性ドーパント物質が、ヘテロポリ酸化合物、式(2)で表されるアリールスルホン酸誘導体、式(5a)で表されるアニオンとその対カチオンからなるイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、前項1〜9のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
【化4】

〔式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Aは、Xおよびn個の(SOH)基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、または非置換もしくは置換の下記式(3)もしくは(4)
【化5】

で示される基(式中、WおよびWは、それぞれ独立して、O、S、S(O)基、S(O)基、または非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基を示す。Wは単結合でもよい。R46〜R59はそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)を表し、nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、1≦qを満たす整数である。〕
【化6】

(式中、Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素を表し、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い芳香族複素環基を表わす。)
【0018】
11.前項1〜10のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスから作製される電荷輸送性薄膜。
【0019】
12.前項11記載の電荷輸送性薄膜を有する電子デバイス。
【0020】
13.前項11記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0021】
14.前項1〜10のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させる工程を含む、電荷輸送性薄膜の製造方法。
【0022】
15.オリゴアニリン化合物と、金属酸化物ナノ粒子とを含む電荷輸送性薄膜であって、金属酸化物ナノ粒子を含むことにより、波長400〜800nmの範囲における平均透過率が向上している、電荷輸送性薄膜。
【0023】
16.オリゴアニリン化合物と、金属酸化物ナノ粒子とを含む電荷輸送性薄膜であって、石英基板上に50nmで成膜した時の、波長400〜800nmの範囲における平均透過率が90%以上である、電荷輸送性薄膜。
を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性物質として、有色物質である従来のオリゴアニリン化合物を含んでいるにもかかわらず、これを用いて作成した電荷輸送性薄膜は、従来の電荷輸送性ワニスを用いて作成したものに比して、可視領域における光透過率が著しく改善されており、従って電荷輸送性薄膜の着色が大幅に減少している上に、その他の特性においても著しい向上が認められる。よって、本発明の電荷輸送性ワニスを用いることにより、得られる電荷輸送性薄膜のみならず、その薄膜を用いて製造される有機EL素子についても、それらの種々の特性を、従来のオリゴアニリン化合物の化学構造を変えることなしに、著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】石英基板上に、本発明の電荷輸送性ワニス及び従来の電荷輸送性ワニスを用いて作成した薄膜(各々実施例2−1及び比較例2−1)における、可視領域における光透過率を示すグラフである。
図2】石英基板上に、本発明の電荷輸送性ワニス及び従来の電荷輸送性ワニスを用いて作成した薄膜(各々実施例2−2及び比較例2−2)における、可視領域における光透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の電荷輸送性ワニスに含まれるオリゴアニリン化合物は、平均分子量200〜5000の、アニリン誘導体由来の複数の構造単位(同一であっても異なっていてもよい)で構成される化合物である。オリゴアニリン化合物中において、隣接する2個の前記構造単位は互いに結合している。また、オリゴアニリン化合物に2種以上の異なる前記構造単位が含まれる場合、前記構造単位は任意の順序で配列されていてよい。本発明においては、電荷輸送性物質として、いかなるオリゴアニリン化合物を用いてもよいが、好ましくは、下記式(1)または(1′):
【化7】

(式中、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、t−ブトキシカルボニル基、またはベンジルオキシカルボニル基を示し、
〜R34は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基またはハロゲン原子を示し、
mおよびnは、それぞれ独立して1以上の整数であり、m+n≦20を満足する。)
【化8】

(式中、
35、R36及びR37は、それぞれ独立して水素原子、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基を示し、
L及びMは、それぞれ独立して一般式(6)又は(7)で表される二価の基であり、
38〜R45は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基、アシル基、又はスルホン酸基であり、
x及びyは、それぞれ独立して1以上の整数であり、x+y≦20を満足する。)
【化9】

で表されるオリゴアニリン化合物(国際公開第2008/129947号(特許文献1)および特開2002−151272(特許文献6)参照)を含む。
【0027】
上記一価炭化水素基における炭素数は、特に限定されるものではないが、炭素数1〜20が好ましく、1〜8がより好ましい。
置換または非置換一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1または2または3−ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基等や、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、スルホン基などで置換されたものが挙げられる。
なお、非置換とは水素原子が結合していることを意味する。また、置換基において、置換基同士が連結されて環状である部分を含んでいてもよい。
【0028】
上記RおよびRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、またはt−ブトキシカルボニル基が好ましく、特に、水素原子、t−ブトキシカルボニル基が好ましい。すなわち、RおよびRが、共に水素原子のもの、共にt−ブトキシカルボニル基のもの、Rが水素原子でRがt−ブトキシカルボニル基のもの、Rがt−ブトキシカルボニル基でRが水素原子のものが好適である。
【0029】
上記式(1)において、R〜R34は、それぞれ独立して水素原子、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、置換または非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基、ハロゲン原子などを表す。
置換または非置換の一価炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
オルガノオキシ基の具体例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などが挙げられ、これらのアルキル基、アルケニル基としても、上記で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
【0030】
オルガノアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基等のシクロアルキルアミノ基;ジシクロヘキシルアミノ基等のジシクロアルキルアミノ基;モルホリノ基;ビフェニルアミノ基等のアリールアミノ基などが挙げられる。
オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0031】
オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などのアルキルチオ基が挙げられる。
アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素原子が挙げられる。
リン酸エステル基としては、−P(O)(OQ)(OQ)が挙げられる。
エステル基としては、−C(O)OQ、−OC(O)Qが挙げられる。
チオエステル基としては、−C(S)OQ、−OC(S)Qが挙げられる。
アミド基としては、−C(O)NHQ、−NHC(O)Q、−C(O)NQ、−NQC(O)Qが挙げられる。
ここで、上記QおよびQは、アルキル基、アルケニル基またはアリール基を示し、これらについては、上記一価炭化水素基で例示した基と同様のものが挙げられる。
【0032】
〜R34において、上記一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基およびアミド基などにおける炭素数は、特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜20、好ましくは1〜8である。
【0033】
これらの中でも、R〜R34としては、互いに独立して水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、またはハロゲン原子が好ましく、特に、水素原子、置換もしくは非置換の一価炭化水素基、またはハロゲン原子が好適である。
ここで、一価炭化水素基としては、フェニル基、ビフェニル基またはナフチル基が好適である。
ハロゲン原子としては、フッ素原子が好適である。オルガノアミノ基としては、アリールアミノ基が好ましく、特にビフェニルアミノ基が好適である。
【0034】
一実施態様において、R〜R34はすべて水素原子である。
【0035】
一実施態様において、R37は置換基を有しても良いフェニル基である。
【0036】
上記式(1)において、mおよびnは、それぞれ独立して1以上、かつ、m+n≦20を満たす整数であるが、特に、m+n≦10を満たすことが好ましく、m+n≦5を満たすことがより好ましい。
これらの範囲に調整することで、良好な電荷輸送性を発揮させつつ、各種溶媒に対する溶解性を確保することが容易になる。
【0037】
式(1)のオリゴアニリン化合物は、溶解性を高めるとともに、電荷輸送性を均一にするということを考慮すると、分子量分布のない、換言すれば、分散度が1のオリゴアニリン化合物であることが好ましい。
その分子量は、材料の揮発の抑制および電荷輸送性発現のために、下限として通常200以上、好ましくは400以上であり、また溶解性向上のために、上限として通常5000以下、好ましくは3000以下である。
【0038】
上記式(1)で表されるオリゴアニリン化合物の製造方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。
すなわち、下記オリゴアニリン化合物(8)のハロゲン原子Xに対し、式(9)および(10)のトリフェニルアミン構造を有するアミン化合物を作用させる、または、下記式(8′)のオリゴアニリン化合物のハロゲン原子Xに対し、式(9′)および(10′)のジフェニルアミン構造を有するアミン化合物を作用させる。この場合、反応の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な求核置換反応を用いることができる。
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
オリゴアニリン化合物(8)および(8′)は、その構造中のアミノ基が保護された化合物を使用することもできる。アミノ基の保護基としては、上述したt−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
式(9)および(9′)、または式(10)および(10′)のアミン化合物の使用量は、オリゴアニリン化合物(8)または(8′)に対して2倍モルが好適である。
【0042】
オリゴアニリン化合物(8)と、式(9)もしくは(9′)、または式(10)もしくは(10′)のアミン化合物とを反応させる場合、触媒を用いることもできる。この触媒としては、例えば、酢酸パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)、(1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)ジクロロパラジウム等が挙げられる。また、配位子として、(トリ−t−ブチルホスフィン)、(2、2’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル)、(トリ−o−トルイルホスフィン)等、塩基として、NaOtBu、CsCO、KCO、NaOPh等、溶媒としては、トルエン、キシレン、THF、NMP、DMF、1,4−ジオキサン等が挙げられる。
【0043】
反応温度は、0〜160℃の範囲が好ましい。反応時間は、通常、0.1〜100時間である。反応終了後、反応溶媒の留去、固−液抽出または液−液抽出による無機塩の除去、再結晶、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等によって、精製することができる。
【0044】
なお、アミノ基が保護されたオリゴアニリン化合物を使用した場合は、トリフルオロ酢酸、塩酸等の強酸を作用させることで保護基を除くことができる。
また、アミノ基が保護されたオリゴアニリン化合物と酸系のドーパントを含む電荷輸送性ワニスとした場合は、薄膜作製時に保護基が脱離するので、この場合、アミノ基が保護されたオリゴアニリン化合物をそのまま電荷輸送性物質として用いることもできる。
特に、アミノ基が保護されたオリゴアニリン化合物は、保護されていない化合物よりも有機溶媒に対する溶解性に優れており、高溶解性を示すホストとして好適に用いることができる。
【0045】
式(1′)のオリゴアニリン部の置換基R35及びR36〜R45は一般的には水素であるが、溶剤に対する溶解性を上げるためにアルキル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、ビフェニル基、ビシクロヘキシル基、フェニルシクロヘキシル基などが適している。例えばアルキル基としては一般的にはメチル基、エチル基、プロピル基等があるが、炭素数としては1から4が一般的であるが、炭素数20までの導入は可能である。オリゴアニリン部のxおよびyの数はそれぞれ独立に1以上の整数であるが、その導電性を考慮した場合2以上が望ましく、またその溶剤に対する溶解性を考慮した場合、20以下が望ましい。
【0046】
置換基R36は、水素原子、水酸基、非置換もしくは置換の一価炭化水素基又はオルガノオキシ基、アシル基、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルコキシ基が適している。例えばアルキル基としては一般的にはメチル基、エチル基、プロピル基等があるが、炭素数としては1から4が一般的であるが、炭素数20までの導入は可能である。
【0047】
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性物質として、式(1)または式(1′)で表されるオリゴアニリン化合物、またはオリゴアニリン化合物の酸化体であるキノンジイミン化合物を含む。
ここで、電荷輸送性ワニスとは、電荷輸送機構の本体である、式(1)または式(1′)のオリゴアニリン化合物および電子受容性ドーパントからなる電荷輸送性有機材料を、少なくとも1種の溶媒に溶解または分散し、更に金属酸化物ナノ粒子を分散してなるものである。
なお、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性、電子輸送性、正孔および電子の両電荷輸送性のいずれかを意味する。本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
【0048】
本発明の電荷輸送性ワニスの電荷輸送能等を向上させるために用いられる電子受容性ドーパントは、高い電子受容性を有することが好ましい。電子受容性ドーパントの溶解性に関しては、ワニスに使用する少なくとも一種の溶媒に溶解するものであれば特に限定されない。
電子受容性ドーパントとしては、無機酸、有機酸、有機または無機酸化剤等が用いられる。
有機酸としては、ポリマー有機酸及び/又は低分子有機酸(非ポリマー有機酸)が用いられる。
一実施形態では、有機酸はスルホン酸であり、その塩(−SOM(ここで、Mは、アルカリ金属イオン(例えば、Na、Li、K、Rb、Csなど)、アンモニウム(NH)、モノ−、ジ−、及びトリアルキルアンモニウム(トリエチルアンモニウムなど))でもよい。該スルホン酸のなかでも、アリールスルホン酸が好ましい。
【0049】
幾つかの実施態様において、電子受容性ドーパントの具体例としては、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機強酸;塩化アルミニウム(III)(AlCl)、四塩化チタン(IV)(TiCl)、三臭化ホウ素(BBr)、三フッ化ホウ素エーテル錯体(BF・OEt)、塩化鉄(III)(FeCl)、塩化銅(II)(CuCl)、五塩化アンチモン(V)(SbCl)、五フッ化砒素(V)(AsF)、五フッ化リン(PF)、トリス(4−ブロモフェニル)アルミニウムヘキサクロロアンチモナート(TBPAH)等のルイス酸;ポリスチレンスルホン酸等のポリマー有機酸;ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファースルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、国際公開第2006/025342号に記載されているアリールスルホン酸誘導体、特開2005−108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の低分子有機酸(非ポリマー有機酸);7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、ヨウ素、ヘテロポリ酸化合物等の有機または無機酸化剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
幾つかの実施態様において、電子受容性ドーパントは、アリールスルホン酸化合物、ヘテロポリ酸化合物、長周期型周期表の第13族に属する元素を含むイオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
特に好ましい電子受容性ドーパントとしては、ポリスチレンスルホン酸等のポリマー有機酸、5−スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、国際公開第2005/000832号に記載されている1,4−ベンゾジオキサンジスルホン酸誘導体、特開2005−108828号公報に記載されているジノニルナフタレンスルホン酸誘導体等の低分子有機酸(非ポリマー有機酸)を挙げることができる。また、下記式(2)で示されるスルホン酸誘導体も、好適に用いることができる。
【0051】
【化12】

〔式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Aは、Xおよびn個の(SOH)基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環またはアントラセン環を表し、Bは、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、または非置換もしくは置換の下記式(3)もしくは(4):
【化13】

で示される基(式中、WおよびWは、それぞれ独立して、O、S、S(O)基、S(O)基、または非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基を示す。Wは単結合でもよい。R46〜R59はそれぞれ独立して水素原子またはハロゲン原子を表す。)を表し、nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、qは、BとXとの結合数を示し、1≦qを満たす整数である。〕
【0052】
式(3)または(4)のR46〜R59は好ましくはフッ素原子であり、全てフッ素原子であることがより好ましい。式(3)のWは単結合が好ましい。最も好ましいのは式(3)におけるWが単結合であり、R46〜R53が全てフッ素原子である。
【0053】
本発明に係るアリールスルホン酸化合物は、更に下記式(11)で示されるものを用いることもできる。
【化14】

(式中、Xは、O、SまたはNHを表し、Arは、アリール基を表し、nは、スルホン基数を表し、1〜4を満たす整数である。)
【0054】
前記式(11)中、Xは、O、SまたはNHを表すが、合成が容易であることから、特に、Oが好ましい。
nは、ナフタレン環に結合するスルホン基数を表し、1〜4を満たす整数であるが、当該化合物に高電子受容性および高溶解性を付与することを考慮すると、n=1または2が好ましい。中でも、下記式(12)で示される化合物が、好適である。
【化15】

(式中、Arは、アリール基を表す。)
【0055】
式(11)および式(12)におけるアリール基としては、フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基が挙げられ、これらのアリール基は置換基を有していてもよい。
この置換基としては、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、シアノ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基、ハロゲン原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらのアリール基の中でも特に下記式(13)で示されるアリール基が好適に用いられる。
【化16】

(式中、R60〜R64は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基を示す。)
【0056】
式(13)中、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素原子のいずれでもよいが、本発明においては、特にフッ素原子が好適である。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、2−エチルヘキシル基、n−デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4−ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基(アリル基)、パーフルオロブテニル基等が挙げられる。
これらの中でも、有機溶剤に対する溶解性をより高めることを考慮すると、特に、下記式(14)で示されるアリール基を用いることが好ましい。
【化17】

(式中、R62は、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、炭素数2〜10のハロゲン化アルケニル基を示す。)
【0057】
式(14)中、R62は特に、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルキニル基、ニトロ基が好ましく、トリフルオロメチル基、パーフルオロプロペニル基、ニトロ基がより好ましい。
【0058】
更に、下記式(5a)またはZで表されるアニオンと、その対カチオンからなるイオン化合物も、電子受容性ドーパントとして好適に用いることができる。
【化18】

(式中、Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素を表し、Ar〜Arは、各々独立に、置換基を有しても良い芳香族炭化水素基又は置換基を有しても良い芳香族複素環基を表わす。)
【0059】
式(5a)中、Eは長周期型周期表の第13族または15族に属する元素の中でもホウ素、ガリウム、リン、アンチモンが好ましく、ホウ素がより好ましい。
【0060】
式(5a)中、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
更に、Ar〜Arのうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基
として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、Ar〜Arの水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが最も好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
【0061】
としては、下記式(5b)で表されるイオン、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
【化19】

(式中、Eは、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わし、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。)
【0062】
式(5b)中、Eは、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
Xは化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが最も好ましい。
【0063】
上述した中でも、下記式(15)、(16)、(17)、(18):
【化20】

で示されるアニオンとカチオンの組み合わせであるイオン化合物(特許第5381931号(特許文献5)参照)を好適に用いることができる。
【0064】
また、ヘテロポリ酸化合物も、電子受容性ドーパントとして特に好ましい。ヘテロポリ酸化合物は、代表的に式(A)で示されるKeggin型あるいは式(B)で示されるDawson型の化学構造で示される、ヘテロ原子が分子の中心に位置する構造を有し、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の酸素酸であるイソポリ酸と、異種元素の酸素酸とが縮合してなるポリ酸である。このような異種元素の酸素酸としては、主にケイ素(Si)、リン(P)、ヒ素(As)の酸素酸が挙げられる。
【化21】
【0065】
ヘテロポリ酸化合物の具体例としては、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、リンタングステン酸、リンタングストモリブデン酸、ケイタングステン酸等が挙げられるが、得られる薄膜を備えた有機EL素子の特性を考慮すると、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイタングステン酸が好適であり、リンタングステン酸がより好ましい。
なお、これらのヘテロポリ酸化合物は、公知の合成法によって合成して用いてもよいが、市販品としても入手可能である。例えば、リンタングステン酸(Phosphotungstic acid hydrate、または12-Tungstophosphoric acid n-hydrate,化学式:H(PW1240)・nHO)や、リンモリブデン酸(Phosphomolybdic acid hydrate、または12-Molybdo(VI)phosphoric acid n-hydrate,化学式:H(PMo1240)・nHO(n≒30))は、関東化学(株)、和光純薬(株)、シグマアルドリッチジャパン(株)、日本無機化学工業(株)、日本新金属(株)等のメーカーから入手可能である。
【0066】
電子受容性ドーパントと電荷輸送性物質との混合比率は、電子受容性ドーパントの分子構造、電荷輸送性物質の分子構造、電子受容性ドーパントの分子量、電荷輸送性物質の分子量、導電性膜の目標導電率により異なるが、上記のような、SOH基を有する有機強酸である電子受容性ドーパントを用いる場合、電荷輸送性物質中のNH構造に対して、電子受容性ドーパント中のSOHが1:0.01〜20(モル比)となる量が好ましく、より好ましくはNH:SOH=1:0.05〜10(モル比)である。
特に、式(1)または式(1′)のオリゴアニリン化合物と、電子受容性ドーパント;下記式(19)で示されるナフタレンジスルホン酸オリゴマー(NSO−2)(国際公開第2006/025342号記載の化合物)との組み合わせでは、透明性(ホスト量が少なくなると透過率が向上する)、EL特性(ホストは可視領域に吸収を持っており、励起子からのエネルギー移動を引き起こし易いため、混合比が重要となる)の観点から、最適混合モル比は、電荷輸送性物質:電子受容性ドーパント=1:0.01〜10.0であり、より好ましくは電荷輸送性物質:電子受容性ドーパント=1:0.05〜4.0である。
【0067】
【化22】
【0068】
本発明の電荷輸送性ワニスは、1種以上の金属酸化物ナノ粒子を含む。有機EL素子の電荷輸送性薄膜における光学的特性の向上等を目的として、金属酸化物ナノ粒子を用いることが知られていた(例えば、特許文献3、特許文献4及び非特許文献1参照)が、電荷輸送性物質としてオリゴアニリン化合物を用いる系に金属酸化物ナノ粒子を適用することは知られていなかった。特に、有色の電荷輸送性物質の使用に伴う電荷輸送性薄膜の着色の改善に、金属酸化物ナノ粒子の添加が有効であることは、本発明者らにより初めて知見されたことである。
【0069】
本明細書において「半金属」とは、金属と非金属との化学的及び/又は物理的性質の中間の又は混合物の性質を有する元素のことをいう。本明細書において、「半金属」とは、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、及びテルル(Te)のことをいう。
本明細書において、「金属酸化物」とは、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びW(タングステン)などの金属および上述した半金属のうち1種または2種以上の組み合わせの酸化物のことをいう。
【0070】
本明細書に使用されるとき、「ナノ粒子」という用語は、ナノスケールの粒子であって、その一次粒子の平均径が、典型的には500nm以下である粒子のことをいう。一次粒子の平均径は、例えば、透過電子顕微鏡法(TEM)や、BET法による比表面積から換算する方法などを利用することができる。
【0071】
TEMによる粒子径の測定法では、ナノ粒子の投影画像を画像処理ソフトウェアを用いて処理してから、面積相当径(これは、ナノ粒子と同じ面積を持つ円の直径として定義される)を求める方法で測定できる。典型的には、TEM(例えば、透過型電子顕微鏡HT7700(株式会社日立ハイテクノロジーズより入手可能))と共に提供される、TEMの製造販売元が作成した画像処理ソフトウェアを用いて、前記の投影画像の処理を行う。平均粒子径は、円相当径の数平均として求める事ができる。
【0072】
本明細書に記載の金属酸化物ナノ粒子の一次粒子の平均粒径は、500nm以下;250nm以下;100nm以下;又は50nm以下;又は25nm以下である。典型的には、金属酸化物ナノ粒子は、約1nm〜約100nm、更に典型的には約2nm〜約30nmの数平均粒径を有する。
【0073】
本開示の使用に適した金属酸化物ナノ粒子としては、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)及びW(タングステン)などの酸化物、またはこれらを含む混合酸化物が挙げられる。適切な金属酸化物ナノ粒子の非限定的な特定の例は、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、Sb、Sb、TeO、SnO、ZrO、Al、ZnO及びこれらの混合物を含むナノ粒子を含むが、これらに限定されない。
【0074】
一実施態様において、本開示の電荷輸送性ワニスは、B、BO、SiO、SiO、GeO、GeO、As、As、As、SnO、SnO、Sb、TeO、又はこれらの混合物を含む1種以上の金属酸化物ナノ粒子を含む。
【0075】
一実施態様において、本開示の電荷輸送性ワニスは、SiOを含む1種以上の金属酸化物ナノ粒子を含む。
【0076】
金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含んでもよい。このような有機キャッピング基は、反応性であっても非反応性であってもよい。反応性有機キャッピング基は、例えば、UV線又はラジカル開始剤の存在下で、架橋できる有機キャッピング基である。
【0077】
一実施態様において、金属酸化物ナノ粒子は、1種以上の有機キャッピング基を含む。
【0078】
適切な金属酸化物ナノ粒子の例は、日産化学工業株式会社によりORGANOSILICASOL(商標)として販売されている、種々の溶媒(例えば、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、イソプロパノール、メタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸エチル、トルエン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートなど)中の分散液として利用できるSiOナノ粒子を含む。
【0079】
本明細書に記載の電荷輸送性ワニス中に使用される金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子と、ドープされているか、又はドープされていない式(1)又は式(1′)のオリゴアニリン化合物を合わせた重量に対する重量百分率として、調節及び測定することができる。ある実施態様において、金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子と、ドープされているか、又はドープされていない式(1)又は式(1′)のオリゴアニリン化合物を合わせた重量に対して、1重量%〜98重量%、典型的には約2重量%〜約95重量%、更に典型的には約5重量%〜約90重量%、更になお典型的には約10重量%〜約90重量%である。ある実施態様において、金属酸化物ナノ粒子の量は、金属酸化物ナノ粒子と、ドープされているか、又はドープされていない式(1)又は式(1′)のオリゴアニリン化合物を合わせた重量に対して、約20重量%〜約98%、典型的には約25重量%〜約95重量%である。
【0080】
本開示の電荷輸送性ワニスは、非水系でもよく水が含まれていても良いが、インクジェット塗布におけるプロセス適合性とインクの保存安定性の観点で、非水系であることが好ましい。本明細書に使用されるとき、「非水系」は、本開示の電荷輸送性ワニス中の水の総量が、電荷輸送性ワニスの総量に対して0〜2重量%であることを意味する。典型的には、電荷輸送性ワニス中の水の総量は、電荷輸送性ワニスの総量に対して0〜1重量%、更に典型的には0〜0.5重量%である。ある実施態様において、本開示の非水系電荷輸送性ワニスには水が実質的に存在しない。
【0081】
電荷輸送性ワニスに用いられる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(165℃)、N−メチルピロリドン(202℃)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(225℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)、N−シクロヘキシル−2−ピロリジノン(284℃)、芳香族炭化水素〔ベンゼン(80℃)、トルエン(111℃)、エチルベンゼン(136℃)、p−キシレン(138℃)、o−キシレン(138℃)、スチレン(145℃)等〕、ケトン類〔アセトン(56℃)、メチルエチルケトン(80℃)、メチルイソプロピルケトン(94℃)、ジエチルケトン(102℃)、メチルイソブチルケトン(117℃)、メチルn−ブチルケトン(127℃)、シクロヘキサノン(155℃)、エチルn−アミルケトン(167℃)〕、エステル類〔酢酸エチル(77℃)、酢酸イソプロピル(85℃)、酢酸n−プロピル(101℃)、酢酸イソブチル(116℃)、酢酸n−ブチル(125℃)、酢酸n−アミル(142℃)、カプロン酸メチル(151℃)、酢酸−2−メチルペンチル(162℃)、乳酸n−ブチル(186℃)等〕、グリコールエステルおよびグリコールエーテル類〔エチレングリコールジメチルエーテル(85℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(119℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(132℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(136℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(144℃)、エチレングリコールメチルエーテルアセテート(145℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(146℃)、エチレングリコールエチルエーテルアセテート(156℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(162℃)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(170℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(171℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(188℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(189℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(198℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(216℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(217℃)、ジエチレングリコール(244℃)等〕、アルコール類〔メタノール(65℃)、エタノール(78℃)、イソプロパノール(82℃)、tert−ブタノール(83℃)、アリルアルコール(97℃)、n−プロパノール(97℃)、2−メチル−2−ブタノール(102℃)、イソブタノール(108℃)、n−ブタノール(117℃)、2−メチル−1−ブタノール(130℃)、1−ペンタノール(137℃)、2−メチル−1−ペンタノール(148℃)、2−エチルヘキサノール(185℃)、1−オクタノール(196℃)、エチレングリコール(197℃)、ヘキシレングリコール(198℃)、トリメチレングリコール(214℃)、1−メトキシ−2−ブタノール(135℃)、シクロヘキサノール(161℃)、ジアセトンアルコール(166℃)、フルフリルアルコール(170℃)、テトラヒドロフルフリルアルコール(178℃)、プロピレングリコール(187℃)、ベンジルアルコール(205℃)、1,3−ブタンジオール(208℃)等〕、フェノール類〔フェノール(182℃)、m−クレゾール(202℃)等〕、エーテル類及びカルボン酸とその誘導体〔イソプロピルエーテル(68℃)、1,4−ジオキサン(101℃)、アニソール(154℃)、酢酸(117℃)、γ−ブチロラクトン(204℃)等〕が挙げられる。
これらの有機溶媒は、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
本発明においては、電荷輸送性物質および電子受容性ドーパントを良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。このような高溶解性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルイソ酪酸アミド等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
なお、電荷輸送性ワニスは、各成分が上記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましい。
【0083】
また、本発明の電荷輸送性ワニスは、20℃で10〜200mPa・s、特に50〜150mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を、少なくとも一種類含有することが好適である。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%であることが好ましい。
【0084】
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、焼成時に膜の平坦性を付与し得るその他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等が挙げられる。
【0085】
これらの溶媒の組み合わせの具体例としては、限定されるものではないが、例えば、
2種の溶媒の組み合わせとして、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノール、テトラエチレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテル、3−フェノキシトルエンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノール、N,N−ジメチルアセトアミドとジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドとn−へキシレンアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、3−フェノキシトルエンとテトラリン、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテル、3−フェノキシトルエンとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテル;
3種の溶媒の組み合わせとして、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールとプロピレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールとプロピレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールと2,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールと2,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとへキシレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールとジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとトリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルとトリエチレングリコールジメチルエーテルと3−フェノキシベンジルアルコール、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテルと2−ベンジルオキシエタノール、エチレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテルと2−ベンジルオキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−ベンジルオキシエタノールとトリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールとエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルと2−ベンジルオキシエタノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノメチルエーテルとシクロヘキサノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールと2,3−ブタンジオールとトリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテルと2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコールとジプロピレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールとジプロピレングリコールモノメチルエーテルと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールと2−ベンジルオキシエタノールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジプロピレングリコールとトリプロピレングリコールモノメチルエーテル、N,N−ジメチルアセトアミドとシクロヘキサノールとジエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジプロピレングリコールモノプロピルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジプロピレングリコールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノールと2,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと1,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと安息香酸メチルと1,3−ブタンジオール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとテトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコールとジプロピレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコールとトリエチレングリコールジメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとシクロヘキサノールとジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとへキシレングリコール、テトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジプロピレングリコールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールジメチルエーテルとジエチレングリコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2,3−ブタンジオールとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテル;
4種の溶媒の組み合わせとして、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテルとジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテルとジエチレングリコールイソプロピルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとトリエチレングリコールモノメチルエーテルと2,3−ブタンジオールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとジエチレングリコールとジエチレングリコールモノフェニルエーテルとジエチレングリコールモノメチルエーテル、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとテトラエチレングリコールとトリエチレングリコールモノメチルエーテルと3−フェノキシベンジルアルコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンとへキシレングリコールと2,3−ブタンジオールとテトラヒドロフリルアルコール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと2−フェノキシエタノールとジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートと2,3−ブタンジオール
などが挙げられる。
【0086】
また、ある実施態様においては本発明における電荷輸送性ワニスに用いる有機溶媒は、エーテル、例えば、アニソール、エトキシベンゼン、ジメトキシベンゼン及びグリコールジエーテル(グリコールジエーテル類)、例えば、エチレングリコールジエーテル(1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン及び1,2−ジブトキシエタンなど);ジエチレングリコールジエーテル(ジエチレングリコールジメチルエーテル及びジエチレングリコールジエチルエーテルなど);プロピレングリコールジエーテル(プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル及びプロピレングリコールジブチルエーテルなど);ジプロピレングリコールジエーテル(ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル及びジプロピレングリコールジブチルエーテルなど);並びに本明細書に言及されるエチレングリコール及びプロピレングリコールエーテルのより高次の類似体(すなわち、トリ−及びテトラ−類似体、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等)を含む。
【0087】
エチレングリコールモノエーテルアセタート及びプロピレングリコールモノエーテルアセタートなど(グリコールエステルエーテル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、ここで、エーテルは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル及びシクロヘキシルから選択されることができる。また、上記リストのより高次のグリコールエーテル類似体(ジ−、トリ−及びテトラ−など)を含む。
例は、限定されないが、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート、2−エトキシエチルアセタート、2−ブトキシエチルアセタート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む。
【0088】
エチレングリコールジアセテートなど(グリコールジエステル類)のさらに他の溶媒を考慮することができ、また、より高次のグリコールエーテル類似体(ジ−、トリ−及びテトラ−など)を含む。
例は、限定されないが、エチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセタートを含む。
【0089】
例えば、メタノール、エタノール、トリフルオロエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール及びアルキレングリコールモノエーテル(グリコールモノエーテル類)などのアルコールもまた電荷輸送性ワニス中での使用に考慮され得る。好適なグリコールモノエーテル類の例は、限定されないが、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルセロソルブ)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol PnB)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルカルビトール)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(Dowanol DPnB)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol DPM)、ジイソブチルカルビノール、2−エチルヘキシルアルコール、メチルイソブチルカルビノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol PnP)、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルカルビトール)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルカルビトール)、2−エチルヘキシルカルビトール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(Dowanol DPnP)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(Dowanol TPM)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)及びトリプロピレングリコールモノブチルエーテル(Dowanol TPnB)を含む。
【0090】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される有機溶媒は、例えば、基板湿潤性、溶媒除去の容易性、粘性、表面張力及び出射性などのインク特性を改善するために、電荷輸送性ワニス中に種々の割合で使用されることができる。
【0091】
ある実施態様において、電荷輸送性ワニスは、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール(グリコール類)、テトラメチルウレア又はそれらの混合物を含む。
好適なグリコール類の例は、限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
【0092】
上記、グリコールジエーテル類、グリコールエステルエーテル類、グリコールジエステル類、グリコールモノエーテル類およびグリコール類等を総称して、「グリコール系溶媒」とする。即ち、本発明にいう「グリコール系溶媒」とは、式R−O−(R−O)−R(式中、それぞれのRは、各々独立に、直鎖状C−C非置換アルキレン基であり、R及びRは、各々独立に、水素原子、直鎖状、分岐状又は環状C−C非置換アルキル基或いは直鎖状又は分岐状C−C非置換脂肪族アシル基であり、nは、1〜6の整数である)で表される、1種以上の芳香族構造を有していない有機溶媒である。前記Rは、C又はC非置換アルキレン基であることが特に好ましい。前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状C−C非置換アルキル基が好ましく、直鎖状C−C非置換アルキル基がより好ましく、メチル基及びn−ブチル基が特に好ましい。前記アシル基としては、直鎖状又は分岐状C−C非置換脂肪族アシル基が好ましく、直鎖状C−C非置換アシル基がより好ましく、アセチル基及びプロピオニル基が特に好ましい。また前記nは、1〜4の整数であることが特に好ましい。このグリコール系溶媒は、例えば以下の溶媒を包含する。
・エチレングリコール、プロピレングリコール又はそのオリゴマー(2量体〜4量体、例えばジエチレングリコール)であるグリコール類
・前記グリコール類のモノアルキルエーテルであるグリコールモノエーテル類
・前記グリコール類のジアルキルエーテルであるグリコールジエーテル類
・前記グリコール類の脂肪族カルボン酸モノエステルであるグリコールモノエステル類
・前記グリコール類の脂肪族カルボン酸ジエステルであるグリコールジエステル類
・前記グリコールモノエーテル類の脂肪族カルボン酸モノエステルであるグリコールエステルエーテル類
インクジェット法による塗布性を考慮すると、グリコール系溶媒を含む液体担体を使用することが好ましい。
以降の記載において、便宜上、前記グリコール系溶媒とこれに該当しない有機溶媒を対比して、前者を(A)、後者を(B)で示すことがある。
ある実施態様において、電荷輸送性ワニスは、1種以上のグリコール系溶媒(A)を含む電荷輸送性ワニスである。
ある実施態様において、電荷輸送性ワニスは、1種以上のグリコール系溶媒(A)と、グリコール系溶媒を除く1種以上の有機溶媒(B)とを含む電荷輸送性ワニスである。
【0093】
前記グリコール系溶媒(A)として、好ましくは、グリコールジエーテル類、グリコールモノエーテル類またはグリコール類が挙げられ、これらは混合してもよい。
例は、限定されないが、グリコールジエーテル類とグリコール類を混合させることが挙げられる。
具体例としては、上述のグリコールジエーテル類およびグリコール類の具体例が挙げられるが、好ましくは、グリコールジエーテル類として、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコールが挙げられる。
前記有機溶媒(B)として、好ましくは、ニトリル類、アルコール類、芳香族エーテル類、芳香族炭化水素類が挙げられる。
例は、限定されないが、ニトリル類として、メトキシプロピオニトリル、エトキシプロピオニトリル、アルコール類として、ベンジルアルコール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、芳香族エーテル類として、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール、フェノキシトルエン、芳香族炭化水素類として、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼンまたはテトラリンが挙げられる。
これらの中でも、アルコール類がより好ましく、アルコール類の中でも2−(ベンジルオキシ)エタノールがより好ましい。
グリコール系溶媒(A)に有機溶媒(B)を添加することにより、インクジェット塗布による成膜時に、インク固形分の溶解性を保ったまま金属酸化物ナノ粒子の凝集を適切に制御し、より平坦な膜を形成することができる。
【0094】
グリコール系溶媒(A)に有機溶媒(B)を添加する場合、前記グリコール系溶媒(A)の含有量:wtA(重量)と、前記有機溶媒(B)の含有量(重量):wtB(重量)とが、式(1−1)を満たすことが好ましく、式(1−2)を満たすことがより好ましく、式(1−3)を満たすことが最も好ましい。
0.05≦wtB/(wtA+wtB)≦0.50 (1−1)
0.10≦wtB/(wtA+wtB)≦0.40 (1−2)
0.15≦wtB/(wtA+wtB)≦0.30 (1−3)
(本発明の組成物にグリコール系溶媒(A)が2種以上含有されている場合、wtAはグリコール系溶媒(A)の合計含有量(重量)を示し、有機溶媒(B)が2種以上含有されている場合、wtBは有機溶媒(B)の合計含有量(重量)を示す。)
【0095】
電荷輸送性ワニスの固形分は、ワニスを塗布する場合の操作性を考慮すると、0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましい。
【0096】
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることで基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
溶媒の蒸発法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発させればよい。これにより、均一な成膜面を有する薄膜を得ることが可能である。
焼成温度は、溶媒を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うことが好ましい。この場合、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよい。
【0097】
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmであることが望ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
【0098】
以上のようにして得られる電荷輸送性薄膜は、金属酸化物ナノ粒子を含むことにより、波長400〜800nmの範囲における平均透過率(%)が向上している。ここでいう「向上している」とは、金属酸化物ナノ粒子を含む電荷輸送性薄膜における前記平均透過率が、金属酸化物ナノ粒子を含まない対応する電荷輸送性薄膜におけるそれを上回っていることを意味する。前者が後者と比較してその向上した平均透過率は、通常1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。
この結果、本発明の電荷輸送性薄膜は、電荷輸送性物質として有色物質であるオリゴアニリン化合物を用いているにも関わらず、可視領域での光透過率が高く、従来のものに比して着色が少ない。本発明の電荷輸送性薄膜において、石英基板上に50nmで成膜したときの、波長400〜800nmの範囲における平均透過率は、通常90%以上、好ましくは95%以上である。
【0099】
本発明の電荷輸送性ワニスは、低分子発光材料を用いた有機EL(以下「OLED」と称する)素子と、高分子発光材料を用いた有機EL(以下「PLED」と称する)素子のいずれの作製にも用いることができる。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてOLED素子を作製する場合に使用する材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を予め行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
【0100】
正孔輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合、以下の方法を挙げることができる。
陽極基板上に当該正孔輸送性ワニスを塗布し、上記の方法により蒸発、焼成を行い、電極上に正孔輸送性薄膜(正孔注入層)を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
【0101】
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類を挙げることができる。
【0102】
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)および4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、電子輸送材料または正孔輸送材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としては、Alq、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられる。
【0103】
発光性ドーパントとしては、キナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy))、(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)phen)等が挙げられる。
【0104】
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ、BCP等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(LiO)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化ストロンチウム(SrF)、Liq、Li(acac)、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
【0105】
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてPLED素子を作製する方法は、特に限定されないが、以下の方法が挙げられる。
上記OLED素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、発光性電荷輸送性高分子層を形成することによって、本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜(正孔注入層)を含むPLED素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板上に、電荷輸送性ワニス(正孔輸送性ワニス)を塗布して上記の方法により正孔輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
【0106】
使用する陰極材料としては、上記OLED素子作製時と同様の物質が使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
発光性電荷輸送性高分子層の形成法としては、発光性電荷輸送性高分子材料、またはこれに発光性ドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、正孔注入層を形成してある電極基板に塗布した後、溶媒の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
発光性電荷輸送性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げることができる。
【0107】
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解または均一分散法としては攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではなく、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが望ましい。
溶媒の蒸発法としては、不活性ガス下または真空中、オーブンまたはホットプレートで加熱する方法を挙げることができる。
【実施例】
【0108】
以下、製造例および実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(2)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS−A100
(3)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダET−4000
(4)EL素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
(5)EL素子の輝度等の測定:(株)イーエッチシー製 多チャンネルIVL測定装置
(6)EL素子の寿命測定(半減期の測定):(株)イーエッチシー製 有機EL輝度寿命評価システムPEL−105S
(7)透過率の測定:島津サイエンス(株)紫外可視近赤外分光光度計UV−3600
【0109】
[1]ワニスの作製
[実施例1−1]
まず、窒素雰囲気下で、国際公開第2013/084664号記載の方法に従って合成した式(A1)で表されるアニリン誘導体0.060gと、国際公開第2006/025342号記載の方法に従って合成した式(S1)で表されるアリールスルホン酸0.120gとを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン5.8gに溶解させた。そこへ、2,3−ブタンジオール7.8gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル4.2gを加えて撹拌し、最後にエチレングリコール分散シリカゾル(日産化学工業株式会社製 EG−ST、粒子径10−15nm、SiO 20.5質量%)2.029gを加え撹拌し、正孔注入層形成用ワニスを得た。
【0110】
【化23】
【0111】
[比較例1−1]
実施例1−1と同様にして、式(A1)で表されるアニリン誘導体0.312gと、式(S1)で表されるアリールスルホン酸0.616gとを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン9.0gに溶解させた。そこへ、2,3−ブタンジオール12.0gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gを加えて撹拌し、正孔注入層形成用ワニスを得た。
【0112】
[2]透過率評価
[実施例2−1]
実施例1−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気焼成下、80℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させた石英基板を大気雰囲気下、230℃で15分間焼成し、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
【0113】
[比較例2−1]
実施例2−1と同様にして、比較例1−1で得られたワニスを用い、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
【0114】
実施例2−1及び比較例2−1にて得られた石英基板を用いて、分光光度計にて光透過率の測定を行った。結果を図1と表1に示す。
【表1】
【0115】
図1と表1に示される通り、オルガノシリカゾルの添加により、可視領域の平均光透過率が向上した。
【0116】
[3]有機EL素子の作製および特性評価
[実施例3−1]
実施例1−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下、80℃で1分間乾燥した。次に、乾燥させたITO基板を大気雰囲気下、230℃で15分間焼成し、ITO基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。ITO基板としては、パターニングされた厚さ150nmのインジウム錫酸化物(ITO)膜が表面に形成された、25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にOプラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10−5Pa)を用いて、α−NPD(N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン)を0.2nm/秒にて120nm成膜した。次に、関東化学社製の電子ブロック材料HTEB−01を10nm成膜した。次いで、新日鉄住金化学社製の発光層ホスト材料NS60と発光層ドーパント材料Ir(PPy)を共蒸着した。共蒸着は、Ir(PPy)の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して、有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alqおよびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nmおよび80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点−76℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤(((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカット WB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製,HD−071010W−40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
【0117】
【化24】
【0118】
[比較例3−1]
実施例1−1で得られたワニスに代えて、比較例1−1で得られたワニスを用いた以外は、実施例3−1の手順を繰り返した。
【0119】
実施例3−1及び比較例3−1の素子それぞれについて、輝度10,000cd/mで駆動した場合における駆動電圧、電流密度および発光効率、並びに輝度の半減期(初期輝度10,000cd/mが半分に達するのに要する時間)を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
表2に示されるように、本発明の電荷輸送性薄膜を備えるEL素子は、オルガノシリカゾルの添加により電流効率が向上した。また、寿命特性にも優れていた。
【0122】
[1]ワニスの作製
[実施例1−2]
まず、窒素雰囲気下で、国際公開第2013/084664号記載の方法に従って合成した式(A1)で表されるアニリン誘導体0.050gと、リンタングステン酸0.250gとを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン5.7gに溶解させた。そこへ、2,3−ブタンジオール7.6gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル4.165gを加えて撹拌し、最後にトリエチレングリコールジメチルエーテル分散シリカゾル2.295gを加え撹拌し、正孔注入層形成用ワニスを得た。
【0123】
(トリエチレングリコールジメチルエーテル分散シリカゾルの作成方法)
500mlのナスフラスコに、MEK分散シリカゾル(日産化学工業(株)製 MEK−ST、粒子径10−15nm、SiO30質量%)250gとトリエチレングリコールジメチルエーテル170gを入れ、ロータリーエバポレーターにセットした。重量が250gとなるまで減圧濃縮し、SiO30質量%のトリエチレングリコールジメチルエーテル分散シリカゾルを得た。
[比較例1−2]
実施例1−2と同様にして、式(A1)で表されるアニリン誘導体0.175gと、リンタングステン酸0.877gとを、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン6.0gに溶解させた。そこへ、2,3−ブタンジオール8.0gおよびジプロピレングリコールモノメチルエーテル6.0gを加えて撹拌し、正孔注入層形成用ワニスを得た。
【0124】
[2]透過率評価
[実施例2−2]
実施例2−1と同様にして、実施例1−2で得られたワニスを用い、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
【0125】
[比較例2−2]
実施例2−1と同様にして、比較例1−2で得られたワニスを用い、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
【0126】
実施例2−2及び比較例2−2にて得られた石英基板を用いて、分光光度計にて光透過率の測定を行った。結果を図2と表3に示す。
【表3】
【0127】
図2と表3に示される通り、オルガノシリカゾルの添加により、可視領域の平均光透過率が向上した。
【0128】
[3]有機EL素子の作製および特性評価
[実施例3−2]
実施例1−1で得られたワニスに代えて、実施例1−2で得られたワニスを用い、α−NPDの膜厚を30nmとした以外は、実施例3−1の手順を繰り返した。
【0129】
[比較例3−2]
実施例1−2で得られたワニスに代えて、比較例1−2で得られたワニスを用いた以外は、実施例3−2の手順を繰り返した。
【0130】
実施例3−2及び比較例3−2の素子それぞれについて、輝度10,000cd/mで駆動した場合における駆動電圧、電流密度および発光効率、並びに輝度の半減期(初期輝度10,000cd/mが半分に達するのに要する時間)を測定した。結果を表4に示す。
【0131】
【表4】
【0132】
表4に示されるように、本発明の電荷輸送性薄膜を備えるEL素子は、オルガノシリカゾルの添加により電流効率が向上した。また、寿命特性にも優れていた。
図1
図2