(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のバッテリを切り替えて使用するIABP駆動装置では、例えば一部のバッテリを装置に対して着脱可能とすることにより、充電器等の他の装置でバッテリを充電することが可能となる。このように、一部のバッテリを装置に対して着脱可能としたIABP駆動装置では、例えば充電済の予備のバッテリを用意しておくことで、患者の搬送に長時間を要するような緊急事態などに備えることが可能である。しかしながら、充電器等の他の装置で充電したバッテリを使用可能とした場合、そのバッテリの放置時間や、そのバッテリにおけるメモリ効果の有無などに依存して、放電開始後における電圧降下速度に大きなバラツキが生じる問題がある。したがって、例えばバッテリの電圧値のみに基づいて、このようなバッテリからの給電を開始すると、急激な電圧降下により当該バッテリからの電力供給が中断され、その電圧降下が急激すぎる場合には他のバッテリへの切り替え制御を行うための時間または電力が不足して、装置を駆動させるために必要な電力供給自体が中断されて装置が停止してしまうリスクが生じる。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑み、着脱可能なバッテリを、電力供給の中断を回避して安全に使用することができるIABP駆動装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るIABP駆動装置は、
バルーンが接続されたバルーンカテーテルを取り付け、前記バルーンを膨張及び収縮させるIABP駆動装置であって、
使用履歴に関する使用履歴情報を記憶する記憶部を有しており着脱可能な第1バッテリと、
前記第1バッテリと分離している第2バッテリと、
前記第1バッテリ及び前記第2バッテリから電力の供給を受けて駆動される被電力供給部と、
前記記憶部に対して前記使用履歴情報の読み出し及び書き込みが可能な情報制御部と、
前記第1バッテリ及び前記第2バッテリと前記被電力供給部との接続を制御するバッテリ制御部と、を有し、
前記バッテリ制御部は、前記情報制御部が読み出した前記第1バッテリの前記使用履歴情報を用いて、前記第1バッテリからの前記被電力供給部に対する電力の供給の可否を決定することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るIABP駆動装置は、装置に着脱可能な第1バッテリが使用履歴情報を記憶する記憶部を有しているため、その使用履歴情報を用いて第1バッテリからの電力の供給の可否を決定することにより、放電開始後の急激な電圧降下に伴う電力供給の中断のようなリスクを回避した、安全な第1バッテリの使用が可能となる。
【0009】
また、例えば、前記使用履歴情報には、前記第1バッテリの最終接続時に関する情報が含まれていてもよく、
前記バッテリ制御部は、前記最終接続時から所定期間が経過している場合、前記第1バッテリには前記被電力供給部に対して電力の供給をさせないように制御してもよい。
【0010】
最終接続時から所定時間経過しているバッテリは、充電後の自然放電が進んでいると考えられるため、このような第1バッテリには、被電力供給部に対する電力の供給を行わせないようにすることで、放電開始後における急激な電圧降下の発生を回避して、電力供給が中断する問題を防止できる。
【0011】
また、例えば、本発明に係るIABP駆動装置は、前記第1バッテリの電圧であるバッテリ電圧を検出する検出部を有してもよく、
前記バッテリ制御部は、前記最終接続時から所定期間が経過しておらず、かつ、前記バッテリ電圧が所定値以上である場合に、前記第1バッテリに、前記被電力供給部への電力の供給をさせるように制御してもよい。
【0012】
最終接続時から所定期間が経過していないことを確認できれば、その第1バッテリのバッテリ電圧は、放電可能な容量を表す指標として信頼度が高いと考えられるため、このような条件で、被電力供給部に対する電力の供給を第1バッテリに行わせることにより、電力供給の中断を回避した安全な使用が可能となる。
【0013】
また、例えば、本発明に係るIABP駆動装置は、前記第1バッテリの電圧であるバッテリ電圧を検出する検出部を有してもよく、
前記使用履歴情報には、前記第1バッテリの最終接続装置に関する情報が含まれていてもよく、
前記バッテリ制御部は、前記第1バッテリに前記被電力供給部への電力の供給をさせるための必要条件となる前記バッテリ電圧の値を、前記最終接続装置に応じて変化させてもよい。
【0014】
第1バッテリの最終接続装置に関する情報は、その第1バッテリのバッテリ電圧の放電容量の指標としての信頼度に関連するため、これに応じて、被電力供給部への電力供給を許可するバッテリ電圧の値を変化させることにより、電力供給の中断を回避しつつ、バッテリ電圧の低い第1バッテリを有効利用できる。例えば、第1バッテリの最終接続装置が、第1バッテリが現在搭載されている装置と同一であれば、その第1バッテリの放電開始後において、急激な電圧降下が生じるリスクは低いと考えられる。したがって、このような場合、被電力供給部への電力供給を許可するバッテリ電圧の値を、最終接続装置が現在の装置と異なる場合に比べて下げることにより、バッテリ電圧の低い第1バッテリであっても、電力供給の中断を回避しつつ有効利用できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るIABP駆動装置を、図面に示す実施形態に基づき、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るIABP駆動装置10の概略構成図である。IABP駆動装置10は、バルーン82が接続されたIABP用バルーンカテーテル80を取り付けて、バルーン82を膨張及び収縮させるために用いられる駆動装置である。バルーンカテーテル80は、IABP駆動装置10のカテーテル接続部(不図示)に取り付けて使用される。バルーンカテーテル80の先端に接続されたバルーン82は、下行大動脈内に留置されて使用される。IABP駆動装置10は、心臓の拍動に合わせてバルーン82を膨張及び収縮させることにより、心臓の血液循環機能を補助することができる。
【0018】
IABP駆動装置10は、電力供給元として電力を供給する第1バッテリ12及び第2バッテリ14と、電力供給元からの電力の供給を受けて駆動される被電力供給部30と、第1バッテリ12等の電圧であるバッテリ電圧50を検出する検出部としてのバッテリ検出部26と、電力供給元と被電力供給部30との接続を制御するバッテリ制御部20とを有する。また、IABP駆動装置10は、第1バッテリ12が有する記憶部12aが記憶する使用履歴情報の読み出し及び書き込みが可能な情報制御部24を有する。さらに、IABP駆動装置10は、第1バッテリ12及び第2バッテリ14から電力の供給を受けるだけでなく、AC電源接続部16を介して交流電源に接続され、交流電源から電力の供給を受けることも可能である。
【0019】
被電力供給部30には、バルーン82を膨張・収縮するための圧力発生手段32や、バルーン82の駆動タイミングを制御するタイミング制御部34や、バルーン82の内圧等の駆動状態を表示する表示部36や、圧力発生手段32のポンプ等を冷却するファンなどで構成される冷却部38等が含まれる。
【0020】
圧力発生手段32は、圧力を発生させるためのポンプのほかに、バルーン82を膨張させるヘリウム等のガスを貯蔵するガスタンクや、圧力を伝達する圧力伝達隔壁装置(アイソレータ)等を有している。また、タイミング制御部34はマイクロプロセッサ等の演算手段で構成され、表示部36は
図2に示すような液晶表示装置等で構成される。なお、被電力供給部30に含まれる圧力発生手段32等については、任意の公知技術を採用すればよく、その詳細な説明については省略する。
【0021】
第1バッテリ12と第2バッテリ14とは、いずれも被電力供給部30に電力を供給することが可能である。第1バッテリ12及び第2バッテリ14と被電力供給部30との接続は、バッテリ制御部20によって制御される。また、第1バッテリ12及び第2バッテリ14は、IABP駆動装置10を交流電源に接続することにより、筐体に取り付けられた状態で充電することができる。ただし、着脱自在である第1バッテリ12に関しては、他のIABP駆動装置10や、IABP駆動装置10とは別途用意された充電器等を用いて充電することも可能である。
【0022】
第1バッテリ12と第2バッテリ14は、IABP駆動装置10の筐体内部に収納されている。
図2に示すように、第1バッテリ12は筐体に対して容易に着脱可能であるのに対して、第2バッテリ14は、第1バッテリ12とは分離しており、常時IABP駆動装置10の筐体内部に固定された状態で使用される。
【0023】
さらに、第1バッテリ12は、IABP駆動装置10の電源が投入されており、かつ、第2バッテリ14が
図1に示す被電力供給部30に電力を供給し、被電力供給部30の圧力発生手段32がバルーン82の膨張・収縮を行っている状態において、活線挿抜可能であることが好ましい。このような活線挿抜が可能な第1バッテリ12を有するIABP駆動装置10は、第1バッテリ12を複数用意することにより、AC電源がない環境においても、長時間の駆動が可能となる。さらには、第1バッテリ12を複数用意して交換しながら使用することにより、バッテリの劣化を抑制することが可能となる。
【0024】
第1バッテリ12は、第1バッテリ12の使用履歴に関する使用履歴情報を記憶する記憶部12aを有する。記憶部12aは、例えば半導体メモリなどの不揮発性メモリ等で構成されるが、特に限定されない。記憶部12aは、第1バッテリ12の充電日時、充電時間、充電機器のシリアルナンバー、放電日時、放電を行ったIABP駆動装置10のシリアルナンバー、放電終了時の電圧等を記憶する。
【0025】
記憶部12aが記憶する使用履歴情報には、第1バッテリ12の最終接続時に関する情報が含まれることが好ましい。ここで、第1バッテリ12の最終接続時とは、第1バッテリ12が充電器等に接続されて最後に充電された時、及びIABP駆動装置10等に接続されて被電力供給部30に対して最後に電力を供給した時のうち、いずれか遅い方を意味する。使用履歴情報に含まれる最終接続時に関する情報を読み出し、最終接続時からの経過時間を算出することにより、IABP駆動装置10は、第1バッテリ12が、最終接続時以降に、どの程度自然放電しているかを推定することができる。
【0026】
また、記憶部12aが記憶する使用履歴情報には、第1バッテリ12の最終接続装置に関する情報が含まれていることが好ましい。ここで、第1バッテリ12の最終接続装置に関する情報とは、最終接続時に第1バッテリ12に充電を行った充電器の個体を識別できるシリアルナンバーや、最終接続時に第1バッテリ12が電力の供給を行ったIABP駆動装置10の個体を識別できるシリアルナンバー等を意味する。使用履歴情報に含まれる最終接続装置に関する情報を読み出すことにより、IABP駆動装置10は、第1バッテリ12の最終接続時における充放電状態を認識できる場合があり、また、第1バッテリ12の放電を開始した後に生じる第1バッテリ12の電圧降下速度を推定できる場合がある。
【0027】
第1バッテリ12と第2バッテリ14は、繰り返し充放電が可能な二次電池であり、ニッケル水素(NiMH)蓄電池、リチウムイオン(Li・ION)蓄電池、ニッカド(NiCd)蓄電池等を採用可能であるが、二次電池の種類は特に限定されない。
【0028】
図1に示す情報制御部24は、第1バッテリ12が有する記憶部12aに対して、使用履歴情報の読み出し及び書き込みが可能である。例えば、情報制御部24は、被電力供給部30への電力供給元を決定する過程において、記憶部12aが有する使用履歴情報を読み出し、これをバッテリ制御部20に伝える。また、例えば、情報制御部24は、第1バッテリ12による被電力供給部30への電力の供給が終了したタイミングで、最終接続時及び最終接続装置のような使用履歴情報を、第1バッテリ12の記憶部12aに書き込むことができる。
【0029】
図1に示すバッテリ検出部26は、第1バッテリ12の電圧(起電力)であるバッテリ電圧と、第1バッテリ12の電圧降下速度と、第1バッテリ12の温度とを検出する。第1バッテリ12の電圧降下速度は、単位時間当たりの電圧降下(V/秒)とすることができるが、電圧降下速度の算出方法はこれに限定されず、第1バッテリ12が放電した電気量当たりの電圧降下を、電圧降下速度としてもよい。
【0030】
図5は、バッテリ検出部26が検出するバッテリ電圧50を模式的に表したものである。
図5では、第1バッテリ12の温度が20℃である場合における放電曲線60を実線で表示し、第1バッテリ12の温度が0℃である場合における放電曲線62を破線で表示している。第1バッテリ12の電圧であるバッテリ電圧は、被電力供給部30に接続され、被電力供給部30に電力を供給することにより、放電曲線60、62に示すように、放電時間の経過とともに降下する。
【0031】
また、バッテリ検出部26は、例えば放電曲線60、62の傾きを算出したり、所定時間経過前後におけるバッテリ電圧の差分を経過時間で割ったりすることにより、第1バッテリ12の電圧降下速度を検出する。放電曲線60、62に示すように、第1バッテリ12が電力を供給する被電力供給部30の消費電力はほぼ一定であっても、電圧降下速度は放電の進行とともに変化する。なお、
図5に示す放電曲線60、62は、メモリ効果等を生じていない第1バッテリ12が、100%充電状態から終止電圧58まで放電を行った場合における理想的な放電曲線である。
【0032】
さらに、バッテリ検出部26は、第1バッテリ12の表面又は周辺等に取り付けられたサーミスタ等の出力信号により、第1バッテリ12の温度であるバッテリ温度を検出する。放電曲線60、62の違いから理解できるように、第1バッテリ12の理想的な放電曲線は温度によって変化する。そのため、後述するバッテリ制御部20は、バッテリ温度を検出することにより、実際に検出されたバッテリ電圧50及び電圧降下速度が、理想的な値に対してどの程度乖離しているのかを、適切に認識することができる。
【0033】
図1に示すバッテリ制御部20は、被電力供給部30への電力供給元を決定し、被電力供給部30と電力供給元との接続を制御する。バッテリ制御部20は、演算部20aと回路部20bとを有している。回路部20bは、被電力供給部30と電力供給元との間に配置されたスイッチ回路で構成されており、AC電源接続部16を介して接続される交流電源と、第1バッテリ12と、第2バッテリ14からなる3つの電力供給元のうちいずれかを、被電力供給部30に接続する。
【0034】
演算部20aは、マイクロプロセッサとメモリ等で構成され、回路部20bの動作を制御する。ここで、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12と第2バッテリ14のうち、第1バッテリ12を優先して被電力供給部30に接続し、第1バッテリ12を先に放電させる。したがって、バッテリ12、14から被電力供給部30への電力供給を行う場合、バッテリ制御部20の演算部20aは、まず、第1バッテリ12からの被電力供給部30に対する電力の供給の可否を判断する。この際、バッテリ制御部20は、情報制御部24が読み出した第1バッテリ12の使用履歴情報や、バッテリ検出部26で検出されたバッテリ電圧50等を用いて、第1バッテリ12の使用の可否を判断する。
【0035】
そして、第1バッテリ12が使用可能であれば、バッテリ制御部20は、回路部20bを制御して、第1バッテリ12を被電力供給部30に接続する。これに対して、第1バッテリ12が使用できない場合には、バッテリ制御部20は、回路部20bを制御して、第2バッテリ14を被電力供給部30に接続する。
【0036】
また、バッテリ制御部20は、IABP駆動装置10がAC電源に接続されている際、第1バッテリ12と第2バッテリ14のうち、第2バッテリ14を優先して充電する。すなわち、IABP駆動装置10のバッテリ制御部20は、第2バッテリ14をなるべく放電させないように、あるいは第2バッテリ14を100%充電された状態になるべく近づけるように制御する。
【0037】
また、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12から被電力供給部30への電力の供給が開始された場合、第1バッテリ12の放電状態を監視し、適切なタイミングで電流供給元の切替制御を行う。すなわち、第1バッテリ12が放電を行っている際、バッテリ制御部20は、バッテリ検出部26からデータを受け取ることにより、放電中の第1バッテリ12の状態を認識する。さらに、バッテリ検出部26で検出されたバッテリ電圧50と電圧降下速度等とが所定の条件を満たす場合に、バッテリ制御部20は、被電力供給部30への電力供給元を第1バッテリ12から第2バッテリ14に変更する切替制御を行う。
【0038】
バッテリ制御部20が切替制御を行う条件は、特に限定されないが、例えば、第1バッテリ12のバッテリ電圧50が所定の終止電圧58(
図5参照)以下となった場合に、切替制御を行うことができる。さらに、バッテリ制御部20は、切替制御を行う終止電圧58を、第1バッテリ12の電圧降下速度に基づき変更することができる。また、さらに、バッテリ制御部20は、切替制御を行う終止電圧58を、第1バッテリ12の電圧降下速度及びその電圧降下速度が検出されたバッテリ電圧50とを組み合わせた条件に基づき、変更することができる。
【0039】
以下、
図3及び
図4を用いて、
図1に示すIABP駆動装置10におけるバッテリ制御方法を、具体例を挙げて説明する。ただし、本発明は具体例に示される内容に限定されるものではない。
【0040】
図1に示すIABP駆動装置10がバッテリによる運転を開始する際、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12と第2バッテリ14のうちどちらを被電力供給部30への電力供給元とするかを決定する。
図3は、バッテリ制御部20を含むIABP駆動装置10が、電力供給元を決定する際の一連の処理を表すフローチャートである。
【0041】
図3に示すステップS001では、バッテリ制御部20が電力供給元を決定する処理を開始する。
図3に示す処理は、回路部20bが被電力供給部30と第1バッテリ12とを接続する前に行われる。
図3に示す処理は、バッテリによる運転を開始する時の他に、第2バッテリ14を使用して被電力供給部30を駆動している最中に第1バッテリ12が取り付けられた時などに行われる。
【0042】
ステップS002では、
図1に示す情報制御部24が、第1バッテリ12の記憶部12aが有する使用履歴情報を読み出す。情報制御部24は、読み出した使用履歴情報を、IABP駆動装置10に備えられる記憶装置等に、一時的に格納しておくことができる。また、情報制御部24は、読み出した使用履歴情報を、要求に応じてバッテリ制御部20に伝えることができる。
図3に示す具体例では、使用履歴情報には、第1バッテリ12の最終接続時に関する情報と、第1バッテリ12の最終接続装置に関する情報とが含まれる。
【0043】
ステップS003では、バッテリ制御部20の演算部20aが、情報制御部24が読み出した第1バッテリ12の最終接続時と現在の時刻とを比較し、第1バッテリ12の最終接続時から所定時間が経過しているか否かを判断する。演算部20aは、第1バッテリ12がその最終接続時から所定期間、例えば30日以上経過していた場合は、第1バッテリ12は使用不可と判断し、ステップS009へ進む。
【0044】
最終接続時から所定時間経過している第1バッテリ12は、充電後の自然放電が進んで容量が低下していると考えられるため、これを使用しないことにより、電力供給が中断する問題を未然に防止できる。ステップS009では、バッテリ制御部20が回路部20bを制御し、第2バッテリ14と被電力供給部30とを、回路部20bを介して接続することにより、第2バッテリ14に被電力供給部30への電力の供給を行わせる。
【0045】
これに対して、第1バッテリ12がその最終接続時から所定期間経過していない場合は、ステップS004の処理へ進む。ステップS004では、
図1に示すバッテリ検出部26が第1バッテリ12のバッテリ電圧50を検出し、検出結果をバッテリ制御部20に伝える。さらに、ステップS005では、バッテリ制御部20の演算部20aが、検出されたバッテリ電圧50が所定の第1放電開始電圧54以上であるか否かを判断する。
【0046】
ここで、第1放電開始電圧54は、
図5に示すように、第1バッテリ12による被電力供給部30の電力の供給を停止する終止電圧58に対して、例えば数ボルト程度の余裕を持たせて設定される。先に述べたように、第1バッテリ12は着脱可能であるため、第1バッテリ12は、放電開始後に、メモリ効果や自然放電等の影響によって、理想的な放電曲線よりも急激な電圧降下を生じる可能性がある。そのため、そのような電圧降下が生じた場合にも、
図4で説明する切替制御が正常に行われて電力供給が継続されるように、第1放電開始電圧54は終止電圧58より高い値に設定される。
【0047】
ステップS005において、バッテリ電圧50が第1放電開始電圧54以上であると判断された場合、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12が使用可能であると判断し、ステップS008へ進む。ステップS008では、バッテリ制御部20が回路部20bを制御し、第1バッテリ12と被電力供給部30と回路部20bを介して接続することにより、第1バッテリ12に、被電力供給部30への電力の供給を行わせる。
【0048】
この際、第1バッテリ12は、第1ステップS003において、その最終接続時から所定時間経過前であることが確認されたものであるため、ステップS004で検出されるバッテリ電圧50の値は、第1バッテリ12が放電可能な容量を表す指標としての信頼度が高い。なぜなら、自然放電が進んだバッテリでは、放電開始後に急激な電圧降下が起きる場合があるが、最終接続時から所定時間経過後である第1バッテリ12を排除することで、そのような問題が防止されているためである。したがって、このような条件で第1バッテリ12による被電力供給部30への電力供給の可否を決定することにより、IABP駆動装置は、電力供給の中断を回避した安全な駆動が可能となる。
【0049】
図3のステップS005において、バッテリ電圧50が第1放電開始電圧54より低いと判断された場合は、ステップS006の処理へ進む。ステップS006では、バッテリ制御部20の演算部20aが、情報制御部24が読み出した第1バッテリ12の最終接続装置が現在の装置(IABP駆動装置10)と同一であるか否かを判断する。演算部20aは、第1バッテリ12の最終接続装置が現在の装置と同一でなければ、第1バッテリ12は使用不可と判断し、ステップS009へ進む。
【0050】
これに対して、第1バッテリ12の最終接続装置が現在の装置と同一である場合は、ステップS007の処理へ進む。ステップS007では、バッテリ制御部20の演算部20aが、ステップS004で検出されたバッテリ電圧50が、第2放電開始電圧56より低いか否かを判断する。
図5に示すように、ステップS007では、ステップS005で用いた第1放電開始電圧54より低い第2放電開始電圧56が用いられる。
【0051】
ステップS007において、バッテリ電圧50が第2放電開始電圧56以上である場合、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12は使用可能であると判断し、ステップS008の処理へ進む。また、ステップS007において、バッテリ電圧50が第2放電開始電圧56より低い場合、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12は使用不可であると判断し、ステップS009の処理へ進む。
【0052】
ステップS005〜ステップS007に示す処理から理解できるように、
図3に示す処理では、第1バッテリ12に被電力供給部30への電力の供給をさせるための必要条件となるバッテリ電圧の値を、第1バッテリ12の最終接続装置が現在の装置と同一であるか否かに応じて変化させている。すなわち、第1バッテリ12の最終接続装置が現在の装置と同一である場合、第1バッテリ12の充放電は、たとえ一定期間の中断があるとしても、同一のIABP駆動装置10によって継続的に行われるものであると判断できる。
【0053】
そうすると、最終接続装置が現在の装置と同一である第1バッテリ12は、放電開始後に急激な電圧降下を生じる可能性について、最終接続装置が現在の装置とは異なる第1バッテリ12に比べて低いと判断できる。したがって、
図3に示す処理では、被電力供給部30への電力供給を許可するバッテリ電圧50の値を、最終接続装置が現在の装置と同一である場合に、それが異なる場合に比べて低い第2放電開始電圧56とすることによって、バッテリ電圧50の低い第1バッテリ12であっても、電力供給の中断を回避しつつ有効利用できる。
【0054】
図3に示す処理の後、被電力供給部30は、第1バッテリ12又は第2バッテリ14から電力の供給を受けて駆動され、IABP駆動装置10によるバルーン82の駆動が開始される。ここで、被電力供給部30への電力供給元を第1バッテリ12として被電力供給部30が駆動される場合(
図3のステップS008に進んだ場合)、バッテリ制御部20は、適切なタイミングで被電力供給部30への電力供給元を第1バッテリ12から第2バッテリ14に変更できるように、
図4に示す一連の処理を実施する。
【0055】
図4のステップS101では、第1バッテリ12の放電状態を監視し、被電力供給部30への電力供給元を、所定の条件で第1バッテリ12から第2バッテリ14に変更する一連の処理を開始する。
図4のステップS102では、第1バッテリ12の終止電圧58を初期設定する。ここで、終止電圧58は、バッテリ電圧50が終止電圧58以下であることを検出直後に切替制御を開始すれば、第1バッテリ12にメモリ効果等が生じない限り、電力供給の中断が発生することなく円滑に、第1バッテリ12から第2バッテリ14へ電力供給元を切り替えることができる電圧に設定される。なお、
図3〜
図5に示す具体例では、第1バッテリ12の温度は20℃であると仮定して説明を行う。
【0056】
図4のステップS103では、バッテリ検出部26が、第1バッテリ12のバッテリ電圧50を検出し、検出結果をバッテリ制御部20に送信する。また、ステップS104では、バッテリ検出部26が、第1バッテリ12の電圧降下速度を検出し、検出結果をバッテリ制御部20に送信する。
【0057】
図4のステップS105では、バッテリ制御部20の演算部20aが、ステップS103及びステップS104で検出されたバッテリ電圧50及び電圧降下速度に基づき、終止電圧58を算出し直す。例えば、バッテリ制御部20は、第1バッテリ12の電圧降下速度が基準値よりも高い場合は、再算出する終止電圧58を、初期設定値より高くすることができる。
【0058】
ステップS106では、バッテリ制御部20の演算部20aが、ステップ105で算出された終止電圧58と、直前に検出されたバッテリ電圧50とを比較し、第1バッテリ12のバッテリ電圧50が、終止電圧58以下であるか否かを判断する。ステップS106において、第1バッテリ12のバッテリ電圧50が終止電圧58より高いと判断された場合は、ステップS103へ戻り、ステップS103〜ステップS106の処理を繰り返す。
【0059】
これに対して、ステップS106において、第1バッテリ12のバッテリ電圧50が終止電圧58以下であると判断された場合は、ステップS107へ進む。ステップS107では、バッテリ制御部20は、被電力供給部30への電力供給元を第1バッテリ12から第2バッテリ14に変更する切替制御を行う。より具体的には、バッテリ制御部20が回路部20bを制御し、回路部20bが被電力供給部30と第1バッテリ12を接続している状態から、回路部20bが被電力供給部30と第2バッテリ14を接続している状態へと接続状態を変化させる。このようにして、IABP駆動装置10では、第1バッテリ12から第2バッテリ14への電力供給元の切替が行われる。
【0060】
そして、電力供給元が第2バッテリ14に切り替えられた後に、電力供給元として適さなくなった第1バッテリ12が他の第1バッテリ12に交換されると、再び、バッテリ制御部20による電力供給元を決定する処理が行われる。バッテリ制御部20が、交換された他の第1バッテリ12が電力供給元として使用可能であると判断した場合には、バッテリ制御部20は、被電力供給部30への電力供給元を第2バッテリ14から第1バッテリ12に変更する切替制御を行う。IABP駆動装置10では、このように、第1バッテリ12及び第2バッテリ14が順次切り替えられて被電力供給部30への電力供給が行われるので、電力供給元として適さなくなった第1バッテリ12を他の第1バッテリ12に交換し、その交換中には第2バッテリ14が電力を供給することにより、長時間のバッテリ運転が可能となる。
【0061】
上述の具体例で示したように、IABP駆動装置10は、装置に着脱可能な第1バッテリ12が使用履歴情報を記憶する記憶部12aを有しているため、その使用履歴情報を用いて第1バッテリ12からの電力の供給の可否を決定することにより、電力供給の中断のようなリスクを回避した、安全な第1バッテリ12の使用が可能である。また、第1バッテリ12から被電力供給部30への電力供給の可否を決定する基準を、使用履歴情報を用いて変更することにより、電力供給の中断を回避しつつ、電圧の低いバッテリの有効利用を実現できる。
【0062】
また、IABP駆動装置10は、バッテリ検出部26で検出されたバッテリ電圧50と電圧降下速度とに基づき、終止電圧58を調整することにより、被電力供給部30への電力供給元を、第1バッテリ12から第2バッテリ14へ適切なタイミングで変更することができる。これにより、IABP駆動装置10は、バッテリの切り替え時に電力供給が中断する問題を確実に防止できるとともに、第1バッテリ12を適切に放電させることで、バッテリが小型であっても要求される放電容量を確保することが可能である。
【0063】
なお、IABP駆動装置10は、実施形態等で示す態様に限定されず、様々な変形例を有している。例えば、
図3に示す具体例では、第1バッテリ12の使用履歴情報として、最終接続時間及び最終接続装置に関する情報を用いたが、判断に用いる使用履歴情報としてはこれに限定されない。また、使用履歴情報として記録される最終接続時間の単位(分解能)は、日単位、時間単位、分単位、秒単位その他、任意の単位を採用できる。また、最終接続装置に関する情報としては、個体まで識別可能なシリアルナンバーに限定されず、たとえば装置の型式や製造者など、その装置の特性を認識可能な任意の情報を採用できる。
【0064】
また、上述の具体例では説明を省略したが、IABP駆動装置10のバッテリ制御部20は、バッテリ検出部26で検出したバッテリ温度を用いて、放電開始電圧54、56及び終止電圧58を決定してもよい。これにより、IABP駆動装置10は、第1バッテリ12をより適切に放電させることができる。