特許第6835503号(P6835503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000016
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000017
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000018
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000019
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000020
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000021
  • 特許6835503-光学式位置測定装置 図000022
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835503
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】光学式位置測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20210215BHJP
【FI】
   G01D5/347 E
   G01D5/347 110M
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-165262(P2016-165262)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2017-44700(P2017-44700A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2019年5月29日
(31)【優先権主張番号】10 2015 216 268.0
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・ホルツアップフェル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・リンク
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・トラウトナー
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−49167(JP,A)
【文献】 特開2004−37275(JP,A)
【文献】 特開2003−65803(JP,A)
【文献】 特開平8−20117(JP,A)
【文献】 特開2000−205819(JP,A)
【文献】 特開昭61−712(JP,A)
【文献】 特開平5−40046(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0179826(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/26−5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
インクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択されることを特徴とする光学式位置測定装置。
【請求項2】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記走査格子(24;124;224)と検出平面との間の垂線間隔(v)が、
【数1】
にしたがって選択されるか、または
【数2】
にしたがって選択され、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性
であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である光学式位置測定装置。
【請求項3】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記インクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、
【数3】
にしたがって選択され、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である光学式位置測定装置。
【請求項4】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記走査格子(24;124;224)と検出平面との間の垂線間隔(v)が
【数4】
にしたがって選択され、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性
であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造である光学式位置測定装置。
【請求項5】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
アブソリュートコード(12;112;212)の光学式走査が陰影原理に基づいており、光学結像素子を配置することなしに、アブソリュートコード(12;112;212)の構造がアブソリュート方式検出器(26;126;226)の検出平面に投影される光学式位置測定装置。
【請求項6】
請求項に記載の光学式位置測定装置において、
前記アブソリュートコード(12;112;212)が、疑似乱コードとして形成されている光学式位置測定装置。
【請求項7】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記基準器(10;110;210)および走査ユニット(20;120;220)の互いに向かい合った側の間の走査間隔が50μm以下に選択されている光学式位置測定装置。
【請求項8】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
周期的なインクリメンタル信号の所定の信号振幅が常に得られるように、周期的なインクリメンタル信号の信号振幅に応じて光源(21;121;221)の光線強度に影響を及ぼす調整ユニット(30)を備える光学式位置測定装置。
【請求項9】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記走査格子(24;124;224)と検出装置(25;125;225)との間に、少なくとも部分的に、屈折率n>1を有する透明な充填媒体が配置されている光学式位置測定装置。
【請求項10】
アブソリュート方式に位置を決定するための光学式位置測定装置であって、
測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、
基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットと
を備え、
検出装置が、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備え、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共通の検出平面に配置されている光学式位置測定装置において、
走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器(27;127;227)におけるストライプパターンの周期性(d)が、基準器(10;110;210)および/または走査格子(24;124;224)の領域に散乱汚染が生じた場合にインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択され、
前記走査格子(24;124;224)が充填媒体の内部に配置されている光学式位置測定装置。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の光学式位置測定装置において、
インクリメンタル目盛(13;113;213)の光学式走査が3格子走査原理に基づいており、走査光路において最初に入射される格子が、インクリメンタル目盛(13;113;213)であり、2番目に入射される格子が前記走査格子(24;124;224)であり、3番目に入射される格子が、構造化された検出器として形成された前記インクリメンタル方式検出器(27;127;227)である光学式位置測定装置。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の光学式位置測定装置において、
前記基準器(10;110;210)が透過光基準器として形成されており、インクリメンタル目盛(13;113;213)および前記アブソリュートコード(12;112;212)が、交互に配置された透過特性の異なる領域をそれぞれ備える光学式位置測定装置。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の光学式位置測定装置において、
走査ユニット(20;120;220)が、インクリメンタル目盛(13;113;213)およびアブソリュートコード(12;112;212)を照射するための単一の光源(21;121;221)を含む光学式位置測定装置。
【請求項14】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の光学式位置測定装置において、
前記インクリメンタル方式検出器(27;127;227)およびアブソリュート方式検出器(26;126;226)が共に検出器チップに配置されている光学式位置測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の光学式位置測定装置に関する。この光学式位置測定装置は、高精度にアブソリュート方式で位置を決定するために適している。
【背景技術】
【0002】
一般的なアブソリュート方式の光学式位置測定装置が、例えば米国特許第5,235,181号明細書により既知である。この光学式位置測定装置は基準器を含み、基準器は測定方向に沿って延在し、インクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える。走査ユニットは、基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されている。走査ユニットは、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を備える。検出装置は、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを含む。アブソリュート信号とインクリメンタル信号とを組み合わせることにより、基準器に対する走査ユニットの正確な絶対位置を決定することができる。
【0003】
このような位置測定装置は、例えば、定置機械部品に対する可動機械部品の位置を高精度に検出する必要のある用途で使用され、機械制御によってこれらの機械部品の正確な相対的位置決めを行う。これらの機械が、例えば工作機械である場合には、光学式位置測定装置の機能を損ないかねない使用条件が生じることもある。冷却潤滑剤またはオイルミストなどの汚染物質が位置測定装置の光学部品、特に、例えばガラススケールとして形成された基準器に堆積する可能性がある。その結果、極端な場合には位置測定装置が故障することもある。このような汚染に基づいた故障を防止し、このような汚染が生じる可能性を最小限にするために光学式位置測定装置の多様な保護手段が既知である。保護手段として、例えば基準器を周辺部材によって密閉すること、圧縮空気によってこの部材を洗浄すること、圧縮空気ユニット内にフィルタを配置することなどが挙げられる。しかしながら、これらの保護手段より、位置測定装置の光学部品が上記のような影響によって汚染され、位置測定装置の機能が損なわれることを全ての場合に防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,235,181号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、アブソリュート方式で位置を決定するための光学式位置測定装置において、基準器を光学式に走査する場合にできるだけ汚染耐性が確保され、光学部品が汚染された場合にも位置信号が確実に生成されることを保障する光学式位置測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載の特徴を有する光学式位置測定装置によって解決される。
【0007】
本発明による光学式位置測定装置の有利な実施形態が、従属請求項に記載の手段によって得られる。
【0008】
アブソリュート方式に位置を決定するための本発明による光学式位置測定装置は、測定方向に沿って延在し、少なくとも1つのインクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを備える基準器と、基準器に対して測定方向に沿って相対的に移動可能に配置されており、光源、インクリメンタル目盛を光学式に走査するための走査格子、および検出装置を含む走査ユニットを含む。検出装置は、インクリメンタル目盛を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器と、アブソリュートコードを光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器とを備える。インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器は共通の検出平面に配置されている。走査格子と検出平面との間に所定の垂線間隔(v)が設けられ、および/またはインクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性は、基準器および/または走査格子の領域に散乱汚染が生じた場合にはインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が一様に低下するように選択される。
【0009】
可能な一実施形態では、走査格子と検出平面との間の垂線間隔(v)は、
【数1】
にしたがって選択されるか、または
【数2】
にしたがって選択され、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性
であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0010】
別の一実施形態では、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性は、
【数3】
にしたがって選択され、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0011】
代替的には、走査格子と検出平面との間の垂線間隔(v)は
【数4】
にしたがって選択されることも可能であり、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性
であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0012】
有利には、インクリメンタル目盛の光学式走査は3格子走査原理に基づいており、走査光路において最初に入射される格子はインクリメンタル目盛であり、2番目に入射される格子は走査格子であり、3番目に入射される格子は、構造化された検出器として形成されたインクリメンタル方式検出器である。
【0013】
アブソリュートコードの光学式走査は陰影原理に基づいており、光学結像素子を配置することなしに、アブソリュートコードの構造がアブソリュート方式検出器の検出平面に投影される。
【0014】
この場合、アブソリュートコードは疑似乱コードとして形成されていてもよい。
【0015】
可能な一実施形態では、基準器は透過光基準器として形成されており、インクリメンタル目盛およびアブソリュートコードは、交互に配置された透過特性の異なる領域をそれぞれ備える。
【0016】
基準器および走査ユニットの互いに向かい合った側の間の間隔が50μm以下に選択された場合、有利であることが判明している。
【0017】
好ましくは、走査ユニットは、インクリメンタル目盛およびアブソリュートコードを照射するための単一の光源を含む。
【0018】
さらに、周期的なインクリメンタル信号の所定の信号振幅が常に得られるように、周期的なインクリメンタル信号の信号振幅に応じて光源の光線強度に影響を及ぼす調整ユニットが設けられていることも可能である。
【0019】
さらに、インクリメンタル方式検出器およびアブソリュート方式検出器が共に検出器チップに配置されている場合、有利であることが判明している。
【0020】
さらに、走査格子と検出装置との間に少なくとも部分的に、屈折率n>1を有する透明な充填媒体が配置されていてもよい。
【0021】
さらに、走査格子が充填媒体の内部に配置されていることも可能である。
【0022】
本発明の重要な利点として、基準器の光学式走査において特に汚染耐性が得られる。既知の機械的保護手段によって汚染耐性が保証され、さらに、特に散乱汚染に対する耐性を確保することができる。散乱汚染とは、この場合、光の伝搬方向が少なくとも局所的に変更される汚染として理解される。耐性は、この場合、例えば結像レンズなどの手間のかかる構成要素を必要としない簡単で安価な走査光学系によって達成することができる。危機的状況においても光学式位置測定装置の使用可能性を著しく向上させることができる。
【0023】
特定の用途では、冒頭で述べた機械的保護手段の一部を放棄することさえもが可能であり、この場合、本発明による光学式位置測定装置においてコスト面における明白な利点を得ることができる。
【0024】
図面に関連した本発明による装置の実施例の説明に基づいて、本発明のさらなる詳細および利点を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明による光学式位置測定装置の第1実施例を示す概略断面図である。
図2a図1に示した第1実施例の基準器を示す平面図である。
図2b図1に示した第1実施例の走査パネルを示す平面図である。
図2c図1に示した第1実施例の検出装置を示す平面図である。
図3】関連システムパラメータを含めて、第1実施例におけるインクリメンタル信号を生成するための光路を示す概略図である。
図4a】本発明による光学式位置測定装置の第2実施例を示す概略断面図である。
図4b】本発明による光学式位置測定装置の第3実施例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に図1図2a〜図2c、および図3に基づいて本発明による光学式位置測定装置の第1実施例を説明する。図1は基準器、走査パネル、および検出装置の概略断面図を示し、図2a〜図2cは基準器、走査パネル、および検出装置の平面図をそれぞれ示し、図3は、様々なシステムパラメータを含めて、インクリメンタル信号を生成するための光路を示す図である。これらの図面に示した光学式位置測定装置は基準器10を含み、基準器10は、線形の測定方向xに沿って延在し、インクリメンタル目盛13およびアブソリュートコード12を備える。測定方向xに沿って基準器10に対して相対的に移動可能な走査ユニット20が設けられており、走査ユニット20は、少なくとも1つの光源21と、インクリメンタル目盛13を走査するために走査パネル23に配置された走査格子24と、検出装置25とを備える。検出装置25は、インクリメンタル目盛13を光学式に走査することによりインクリメンタル信号を生成するためのインクリメンタル方式検出器27と、アブソリュートコード12を光学式に走査することによりアブソリュート信号を生成するためのアブソリュート方式検出器26とを備える。インクリメンタル方式検出器27およびアブソリュート方式検出器26は、走査ユニット20の共通の検出平面に配置されており、共に検出器チップ25.1に配置されている。図示の実施例では、さらに調整ユニット30が概略的に示されている。調整ユニット30は、インクリメンタル信号の信号振幅に応じて光源21に影響を及ぼす。この場合、常にインクリメンタル信号の所定の信号振幅が得られるように影響が及ぼされる;したがって、インクリメンタル信号の信号振幅が低下した場合には、調整ユニット30によって、例えば光源の光線強度が高められる。好ましくは、調整ユニット30は電子回路として形成されており、同様に走査ユニット20に配置されている。本発明による光学式位置測定装置の単一の光源21は、基準器10においてインクリメンタル目盛13を照射するためにも、アブソリュートコード12を照射するためにも用いられる。
【0027】
本発明による光学式位置測定装置の基準器10および走査ユニット20は、一般に測定方向xに沿って互いに対して移動可能な機械部品に接続されている。光学式位置測定装置によって生成されたアブソリュート信号およびインクリメンタル信号に基づいて、測定方向xに沿って基準器10に対して走査ユニット20の絶対位置を決定し、移動する機械構成要素の移動制御を担う機械制御ユニット(図示しない)に供給することができる。例えば適切な直列のデータインターフェイスを介して絶対位置情報を機械制御ユニットに伝達する代わりに、当然ながら、本発明による位置測定装置によって生成されたアブソリュート信号およびインクリメンタル信号を機械制御ユニットに伝達してもよい。次いでようやく機械制御ユニットは、伝達されたアブソリュート信号およびインクリメンタル信号を組み合わせ、絶対位置値を生成する。
【0028】
本発明による光学式位置測定装置は、図示の第1実施例では透過光システムとして形成されている。透過光基準器が基準器10としての役割を果たす。透過光基準器は、基準器担体11、例えばガラスプレートからなり、このガラスプレートは表面に平行な2本のトラックを備え、これらのトラックは測定方向xに沿って延在し、トラックには、インクリメンタル目盛13およびアブソリュートコード12が配置されている。インクリメンタル目盛13およびアブソリュートコード12は、交互に配置された透過特性の異なる領域13a,13bもしくは12a,12bをそれぞれ備える。すなわち、インクリメンタル目盛13およびアブソリュートコード12は振幅格子として形成されている。本実施例では、黒により示された領域12b,13bは非透過性に形成されており、白により示された領域12a,13aは透過性に形成されている。
【0029】
アブソリュート信号の生成は、図示の実施例では陰影の原理を用いてアブソリュートコード12を光学式に走査することによって行われる。この場合、非周期的に配置した透過性および非透過性の領域12a,12bを備える疑似乱コード(PRC)として基準器10に形成されたアブソリュートコード12が、レンズ22によってコリメートされた光線束によって照射され、光学結像素子を配置することなしに、アブソリュートコード12の構造もしくは領域12a,12bがアブソリュート方式検出器26の検出平面に投影される。それぞれの光線束は基準器10のアブソリュートコード12を通過した後に、走査格子24にy方向に隣接する走査パネル23の透過性の窓領域28を通過し、次いで検出平面でアブソリュート方式検出器26に入射する。アブソリュート方式検出器26は、図2cに示すように、測定方向xに互いに隣接して配置された長方形の多数の個別の電気光学式検出素子26.1〜26.nからなる線形センサもしくはCCDアレイとして形成されている。
【0030】
例えば、SPIE Vol. 36, 1st European Congress on Optics applied to Metrology (1977), P. 325 - 33 に記載の“Analysis of Grating Imaging and its Application to Displacement Metrology”というタイトルを有するR.ペティグルーの刊行物により既知のように、インクリメンタル目盛13からインクリメンタル信号を生成するために、本発明による光学式位置測定装置において3格子走査原理が使用される。この場合、周期的なインクリメンタル目盛13は走査光路の第1の格子であり、レンズ22によってコリメートされた光線束によって照射される。インクリメンタル目盛13は、測定方向xに連続して配置された透過性および非透過性のインクリメンタル目盛13a,13bの幅の合計を示す目盛周期dを有する。走査光路で入射される第2の格子としての役割を果たすのは走査ユニット20の走査格子24であり、走査格子24は、光伝搬方向にインクリメンタル目盛13から垂線間隔uだけ離間して配置されている。本実施例では振幅格子として形成された走査格子24は、測定方向xに連続して配置された走査格子24の透過性および非透過性の走査格子領域24a,24bの幅の合計を示す目盛周期dを有する。インクリメンタル信号‐走査光路の第3の、そして最後の格子は、インクリメンタル方式検出器27である。インクリメンタル方式検出器27は構造化された検出器として形成されており、検出平面に配置された長方形の多数の電気光学式検出素子27.1〜27.nからなる。インクリメンタル方式検出器27は、光線伝搬方向に走査格子24から垂線間隔vだけ離間して配置されている。
【0031】
検出平面もしくはインクリメンタル方式検出器27において、上記走査では、光源21から放出された光線束とインクリメンタル目盛13および走査格子24との相互作用により周期的なストライプパターンが生じ、このストライプパターンは周期性dを備える。上記刊行物から、次の(式1)および(式2)に記載のようなストライプパターンの周期性dと本発明による光学式位置測定装置の他の幾何学的なシステムパラメータとの間の関係が既知である:
【数5】
【数6】
この場合、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、走査格子の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期であり、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔である。
【0032】
測定方向xに沿って基準器10と走査ユニット20とが相対移動した場合には、インクリメンタル方式検出器27によって検出平面に生成されるストライプパターンは移動する。インクリメンタル方式検出器27の多数の検出素子27.1〜27.nによって、既知のように互いに位相変位された複数の正弦状のインクリメンタル信号を生成することができ、例えば120°だけ互いに位相変位された3つのインクリメンタル信号、またはそれぞれ90°だけ互いに位相変位された4つのインクリメンタル信号を生成することもできる。
【0033】
このようにして生成された高分解能のインクリメンタル信号と分解能の粗いアブソリュート信号とを組み合わせる、もしくは相殺することにより、一般的な方式で、測定方向xに沿って移動する走査ユニット20の絶対位置を決定することができる。
【0034】
本発明の範囲では、特に走査光路の所定の構成要素の散乱汚染によってシステム全体の感度が著しく影響されることが認識された。この場合、散乱汚染とは、入射する光線の方向を少なくとも局所的に元来の方向から変更してしまう汚染として理解されたい。この場合、このような散乱汚染は、例えば基準器10においてのみ、または走査格子24においてのみで生じるか、あるいは基準器10および走査格子24の両方において生じる場合もある。この場合、第1に基準器10の両面や、走査格子24を備え、基準器10に向いた走査パネル23の側が汚染にさらされている。散乱汚染は運転時に、例えば上記構成要素の表面に溜まる液滴、例えば、上述の用途で一般的に生じる凝縮された冷却潤滑剤、オイルミストなどによって引き起こされる場合がある。
【0035】
本発明によれば、光学式位置測定装置の個々のシステムパラメータに関する特定の幾何学条件を保持することによって、このような散乱汚染が走査に及ぼすネガティブな影響を最小限にすることができる。このような幾何学条件には、検出平面と走査格子24との間で所定の垂線間隔vを選択すること、および/またはインクリメンタル方式検出器17において生成されるストライプパターンの所定の周期性dを選択することが挙げられる。この場合、本発明によれば、垂線間隔vおよび/または周期性dは、基準器10および/または走査格子24の領域に散乱汚染が生じた場合にはインクリメンタル信号の振幅およびアブソリュート信号の振幅が同時に低下するように選択される。したがって、本発明によれば、散乱汚染がインクリメンタル信号およびアブソリュート信号にできるだけ等しい影響を及ぼすよう努力がなされる。このために、本発明によれば、インクリメンタル信号生成もしくはアブソリュート信号生成のそれぞれの理論が必要とするのとは異なる特定の幾何学的なシステムパラメータを選択する必要がある。光源調整を行う場合には、両方の信号に散乱汚染の影響が等しく及ぼされることにより、適切な調整ユニット30によって両方の信号を同等に補正することができる。このように、散乱汚染が生じた場合にも一定のインクリメンタル信号およびアブソリュート信号が得られる;したがって本発明による光学式位置側的装置の使用可能性を著しく向上させることができる。
【0036】
この場合、次の2つの(式3.1)または(式3.2)にしたがって、走査格子24と検出平面との間の垂線間隔vを選択することは、基準器10における散乱汚染に関して有利であり、システム全体の汚染耐性を著しく改善することが示された:
【数7】
【数8】
この場合、
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性
であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0037】
実験調査によって理想的な理論的な垂線間隔vに関して約±10%の上記許容差が得られる。このことは、本発明により理想的な値周辺の特定の許容範囲内で垂線間隔vが選択されることにより、散乱汚染が生じた場合にもまだ十分に良好な特性が保証されることが示された。
【0038】
システムパラメータd=20μm、d=80μm、u=0.376mm、dABS=210μm、およびλ=850nmを備える本発明による光学式位置測定装置の具体的な実施例では、汚染耐性の高い総システムのためには、最適化された垂線間隔vは、(式3.1)によれば、v=1.203mm±10%、(式3.2)によればv=1.946mm±10%であることが明らかである。
【0039】
走査格子24の領域に散乱汚染が生じた場合には、本発明によれば、インクリメンタル方式検出器27におけるストライプパターンの周期性dが、所定の許容差を含めて、測定方向xに沿ってアブソリュートコード12の最小構造の幅dABSと等しく選択されるか、または幅dABSの2倍に選択された場合には、極めて向上した汚染耐性が得られる。すなわち、
【数9】
であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0040】
この場合、上記条件(4)を保持して、走査格子24からそれぞれ随意の垂線間隔vをおいて検出平面を配置することができる。すなわち、向上した汚染耐性が確保されている。インクリメンタル方式検出器27における周期的なストライプパターンの周期性dおよび他のシステムパラメータu、dに基づいて、上記(式1)および(式2)を使用して寸法dが決定され、最終的に(式3.1/3.2)に基づいて垂線間隔vが確定される。
【0041】
散乱汚染が基準器10においても走査格子24の領域においても予想される場合には、本発明により、次の(式5)にしたがって走査格子24と検出平面との間の垂線間隔vが選択される:
【数10】
vは、走査格子と検出平面との間の垂線間隔であり、
uは、基準器と走査格子との間の垂線間隔であり、
は、基準器におけるインクリメンタル目盛の目盛周期であり、
は、インクリメンタル方式検出器におけるストライプパターンの周期性であり、
ABSは、測定方向におけるアブソリュートコードの最小構造の幅である。
【0042】
システムパラメータd=20μm、d=80μm、u=0.376mm、dABS=210μm、およびλ=850nmを備える本発明による光学式位置測定装置の具体的な実施例では、汚染耐性の高い総システムのためには、垂線間隔v=0.716mm±10%であることが明らかである。
【0043】
実際には、走査格子24および/または走査格子24と検出器26,27との間の容積は、たいていは極めて良好に密閉することができる。すなわち、周辺の影響に対して遮蔽することができる。これに対して、基準器10は、透過光システムの場合、特に裏側は保護されておらず、例えば、滴の形態で裏側に凝縮した液体から強散乱性の膜が形成される。このような形態の散乱汚染の場合には、上記(式3.1)または(式3.2)にしたがって、本発明による光学式位置測定装置を最適化することが有利である。
【0044】
走査パネル23の保護されていない側および走査パネル23に向いている基準器10の側の汚染は、実際にはさらに10〜100μmの範囲の極めて狭い走査間隔によって、好ましくは50μm未満の走査間隔によって制限することができる。この場合、走査間隔は、一方の基準器10および他方の走査ユニット20の向かい合った側もしくは境界面の間の空間として理解されたい。この場合、極めて小さい滴しか走査ギャップに形成されない。走査ユニット20に向いていない基準器10の反対側の前面には、この境界は存在しない。このように、(式3.1)もしくは(式3.2)に基づいた本発明による光学式位置測定装置の最適化は特に有利である。したがって総システムは、同時に基準器10の前面の汚染に関しても最適化され、外側に向いた走査パネル23の面だけが高感度であり、汚染され得る唯一の面として残る。
【0045】
本発明による光学式位置測定装置の第2および第3実施例の断面図がそれぞれ図4aおよび図4bに示されている。第1実施例に対する重要な相違点のみを以下に説明する。
【0046】
図4aに示す第2実施例では、走査格子124と検出装置127との間の空間に少なくとも部分的に、屈折率n>1を有する透明な充填媒体129が配置される。適宜な充填媒体129として、ここではプレート状に構成され、走査格子124と検出装置127との間の領域に配置されている、例えばガラスまたは透明なプラスチック材料を設けてもよい。充填媒体129は、複数の材料、例えばガラスおよび適切に選択された接着剤層を含んでいてもよい。図示の実施例では充填媒体129はこの領域を完全に充填している。この場合、走査格子124は、基準器110に向いた充填媒体129の側に配置されている。充填媒体129によって、走査格子124と検出装置127との間の垂線間隔vを極めて正確に調節することができる。さらに、凝縮液が走査格子124と検出装置127との間の領域に入り込むことがないことが確保され、このようにして必要に応じて信号生成が妨げられる。
【0047】
このような充填媒体129が走査格子124と検出装置127もしくは検出平面との間の領域に設けられている場合には、上記式を用いる際に、垂線間隔vが充填媒体129の屈折率nに関して補正されるように注意すべきである。なぜなら、この場合にはそれぞれの光線束は変更された光学距離を通過するからである。すなわち、上記式では、垂線間隔vが表現v/nによって置き換えられている。
【0048】
図4bに示す第3実施例では、上記第2実施形態に対する変更点が示されている。したがって、走査ユニット220では、検出装置227の前方の空間は透明なプレート状の充填媒体によって完全に充填されており、この充填媒体は、本実施例では2つのガラスパネル229,230からなる;しかしながら、位相または振幅格子として形成された走査格子224は、充填媒体の内部に配置されており、これにより損傷もしくは汚染に対して保護されている。このような振幅もしくは位相格子は、例えば担体ガラスとしての役割を果たすガラスパネル229に取り付けることができ、ガラスパネル229は、次いで他のガラスパネル230に貼り付けられる。このようにして、さらに、基準器210に配置されたインクリメンタル目盛213と走査ユニット220の境界面との間の間隔、すなわち、基準器210の表面に液滴が押し付けられる間隔を特に小さく形成することができる。
【0049】
具体的に説明した実施例の他に本発明の範囲では当然ながらさらに他の構成可能性が存在する。
【0050】
したがって、インクリメンタル目盛およびアブソリュートコードは、上述の実施例の場合のように分離した2つのトラックとして基準器に配置されているのではなく、単一の光源によって照射される共通のトラックに組み込まれていることも可能である。
【0051】
走査格子は、90°の位相ずれを有する振幅格子または位相格子として形成する代わりに、180°の位相ずれを有する位相格子として形成してもよい。これは、インクリメンタル信号を生成するための走査原理に関するR.ペティグルーの上記開示内容では、いわゆる「回折像」の説明に相当する。この場合、(式1)および(式2)では、目盛周期dを1/2dによって置き換える必要があり、(式3.1)、(式3.2)、(式4)および(式5)は変更なしに適用される。
【0052】
さらに走査ユニットにおいて走査格子と検出装置との間の空間が屈折率n>1を有する透明な充填媒体によって完全に充填されることは必須ではない;例えば、この空間は部分的にのみ適切な充填媒体によって充填されていることも可能である。しかしながら、この場合、走査格子と検出装置との間の空気を充填された空間領域が汚染を防止するために適切にシールされている場合、有利であることが判明している。
【0053】
当然ながら、本発明によって線形の光学式位置測定装置を形成することもできるし、回転式の光学式位置測定装置を形成することもできる。
【符号の説明】
【0054】
…目盛周期
…寸法
…周期性
ABS…幅
n…屈折率
v…垂線間隔
x…測定方向
10,110,210…基準器
11…基準器担体
12,112,212…アブソリュートコード
12a,12b,13a,13b…領域
13,113,213…インクリメンタル目盛
17…インクリメンタル方式検出器
19…基準器
20,120,220…走査ユニット
21,121,221…光源
22…レンズ
23…走査パネル
24,124,224…走査格子
24a,24b…走査格子領域
25,125,225…検出装置
25.1…検出器チップ
26,126,226…アブソリュート方式検出器
26.1〜26.n,27.1〜27.n,…電気検出素子
27,127,227…インクリメンタル方式検出器
28…窓領域
30…調整ユニット
110…基準器
129…充填媒体
229,230…ガラスパネル
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4a
図4b