(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6835629
(24)【登録日】2021年2月8日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】測定尺を取付けるための装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20210215BHJP
G01B 5/00 20060101ALI20210215BHJP
G01B 5/02 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
G01B21/00 L
G01B5/00 L
G01B5/02
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-39056(P2017-39056)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2017-161520(P2017-161520A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年10月31日
(31)【優先権主張番号】10 2016 203 509.6
(32)【優先日】2016年3月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・フィッシャー
【審査官】
國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2837483(JP,B2)
【文献】
特開2015−231882(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0154180(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00 − 21/32
G01B 5/00 − 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持体(5,105)の取付け面(51)に位置測定装置の測定尺(4)を取付けるための装置であって、
この装置が、
−基体(1,101)と
−押し部材(2)とを備え、この押し部材が、基体(1,101)に対して軸線(Z)に沿って取付け面(51)に対して垂直に移動可能でありかつ測定尺(4)を着脱可能に保持するための保持要素(22)を備えている装置において、
−バネ要素(3)を備え、バネ要素(3)が測定尺(4)を取付ける際に軸線に沿って取付け面(51)に向かって押圧力(F)を押し部材(2)に及ぼすように、このバネ要素が基体(1,101)と押し部材(2)の間に配置されていること、及び保持要素(22)がクランプ機構であり、測定尺(4)が取付ける際に押圧力(F)でもって取付け面(51)に押付けられるように、測定尺(4)を押し部材(2)にクランプするように保持するためにこのクランプ機構は構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
バネ要素(3)が複数の圧縮バネの構造体から成り、これらの圧縮バネが互いに間隔をおいて基体(1,101)と押し部材(2)の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
クランプ機構がバネで予荷重されたレバーであることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
バネ要素(3)が張りつめることにより、軸線(Z)に沿って基体(1)に対して押し部材(2)を移動させることにより押圧力(F)を発生させるために装置が構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
軸線(Z)に沿って基体(10)に対して押し部材(2)を移動させることにより押圧力(F)を発生させるために装置が構成されており、その際にバネ要素(3)が弛緩していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
軸線(Z)に沿った押し部材(2)の移動の移動距離(W)は、基体(1,101)の第一の接合部(11,111)と基体(1,101)の第二の接合部(6,61)により設定されており、
第一の接合部(11,111)が、押し部材(2)を基体(1,101)における軸線(Z)に沿って、そこから移動が可能にされる位置で位置決めし、第二の接合部(6,61)が、測定尺(4)を取付ける際に、軸線(Z)に沿って担持体(5,105)に対して基体(1,101)を位置決めするために構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の装置により、担持体(5,105)の取付け面(51)に位置測定装置の測定尺(4)を取付けるための方法において、
以下の工程、すなわち
−保持要素(22)により押し部材(2)に測定尺(4)を保持する工程と、
−軸線(Z)に沿って担持体(5,105)に基体(1,101)を位置決めし、バネ要素(3)により押圧力(F)を加え、この押圧力が測定尺(4)を軸線(Z)に沿って取付け面(51)に押付ける工程と、
−押し部材(2)から測定尺(4)を外す工程を備えていることを特徴とする方法。
【請求項8】
クランプ機構により押し部材(2)に測定尺(4)が保持されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
測定尺(4)が接着フィルム(41)を備えており、押圧力(F)が測定尺(4)をその接着フィルム(41)でもって取付け面(51)に押付けることを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴による測定尺を取付けるための装置ならびに請求項
7の特徴による測定尺を取付けるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、担持体の取付け面に位置測定装置の測定尺を取付けるための同じ類の構成の装置が開示されており、基体と押し部材を備えており、この押し部材は基体に対して取付け面の方向に移動可能でありかつ測定尺を着脱可能に保持するための保持要素を備えている。
【0003】
測定尺を取付ける際に、押し部材は弾性力に抗して押圧される。その際に測定尺に作用する押圧力は、オペレータが押し部材にかける力に依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102015006222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底を成す課題は、コンパクトに組立てられておりかつ測定尺でもって担持体の取付け面に再生可能に取付けられることができ、従ってそれにより正確な位置測定が可能にされる、位置測定装置の測定尺を取付けるための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を備えた装置により解決される。この装置は基体と押し部材を備えており、この押し部材は、基体対して軸線に沿って取付け面に対して垂直に移動可能でありかつ測定尺を着脱可能に保持するための保持要素を備えている。基体と押し部材の間には、弾性要素(バネ要素)が測定尺を取付ける際に軸線に沿って取付け面に向かって押圧力を押し部材に及ぼすように、弾性部材が配置されている。この装置により、測定尺は再生可能に貼付けられることができ、測定尺と取付け面の間には接着フィルムが配置されており、この接着フィルム上に、装置の構造により設定される押圧力が作用する。
【0007】
弾性要素は複数の圧縮バネの構造体から成るのが好ましく、これらの圧縮バネは基体押し部材の間で互いに間隔をおいて配置されている。
【0008】
保持要素はクランプ機構であるのが好ましく、測定尺が取付ける際に押圧力でもって取付け面に押付けられ、測定尺の取付けが行われた後に押し部材から引離されることができるように、測定尺を押し部材にクランプするように保持するためにこのクランプ機構は構成されている。
【0009】
その際に弾性要素が張りつめることにより、軸線に沿って基体に対して押し部材を移動させることにより押圧力を発生させるために本発明による装置が構成されていてもよいか、或いは軸線に沿って基体に対して押し部材を移動させることにより押圧力を発生させるために装置が構成されていてもよく、その際に弾性要素は弛緩している。
【0010】
この二つの可能性において、軸線に沿って押し部材を移動させる際の移動距離(バネの移動距離)は、基体の第一の接合部(Widerlager)と基体の第二の接合部により設定されている。
第一の接合部は、押し部材を基体における軸線に沿った、そこから移動が可能にされる位置で位置決めし、第二の接合部は、軸線に沿って担持体に対して測定尺を取付ける際に基体を位置決めするために構成されている。
【0011】
測定尺は、鋼あるいはガラスもしくはガラスセラミックから成る、数センチメートルの長さを備えた短いスケールであるのが好ましい。測定尺は絶対コーディングあるいはインクリメンタルコーディングの形式の測定目盛を担持する。さらに測定目盛は、光電子方式で、磁気方式で、容量方式であるいは走査可能に構成されていてもよい。
【0012】
本発明により構成された装置により測定尺を取付けるための方法は、請求項
7に挙げられている。
【0013】
方法は以下の方法工程、すなわち
−保持要素により押し部材に測定尺を保持する工程と、
−軸線に沿って担持体に基体を位置決めし、弾性要素により押圧力を加え、この押圧力が測定尺を軸線に沿って取付け面に押付ける工程と、
−押し部材から測定尺を外す工程を備えている。
【0014】
測定尺はその下側に、すなわち取付け面に向かい合うようにして、接着フィルムを備えており、従って測定尺は押圧力をかける際に貼付けられる。この貼付けの後、押し部材から測定尺は外される。
【0015】
本発明の有利な構成は、従属請求項に挙げられている手段から明らかになる。
【0016】
本発明の他の詳細および長所は、図と関連付けて実施例の以下に続く明細書に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】測定尺を取付けるための本発明による装置の横断面図を示す。
【
図2】担持体上で測定尺を取付ける場合の
図1による第一の装置を示す。
【
図7】測定尺を取付けるための本発明による第二装置の横断面図を示す。
【
図8】担持体上へ測定尺を取付ける際の第二の装置を示す。
【
図11】担持体上へ測定尺を取付ける際の第二の装置を示す。
【
図12】担持体上へ測定尺を取付ける際の第二の装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は二つの実施例に基づいて説明される。第一の実施例において、本発明による装置は第一の装置と呼ばれ、第二の実施例においては第二の装置と呼ばれる。機能的に同じ要素は、両実施例において、各々同じ符号を備えている。本発明による二つの装置は、測定尺4を取付け面51に接着により取付けるように設計されていることが共通であり、この目的で、装置は測定尺4を取付け面51への一定の押圧力Fでもって押し当てる。本発明による装置4を接着剤で固定するために、この装置は測定尺の下側および/または取付け面51は接着フィルム41を備えている。
【0019】
本発明による装置の第一の実施例ならびにそれにより実施される方法は、以下に
図1〜6に基づいて説明される。担持体5の取付け面51に位置測定装置の測定尺4を取付けるための第一の装置は、基体1と押し部材2を備えている。押し部材2は基体1に対して軸線Zに沿って取付け面51に対して垂直に移動可能である。この目的で基体1は長手方向案内部Lを備えており、この長手方向案内部には押し部材2が軸線Zに沿って長手方向に移動されることができる。
【0020】
基体1と押し部材2の間には、弾性要素3が配置されており、この弾性要素は、押し部材2を基体1に対して取付け面51の方向に、すなわちZ方向に押付ける。
図5から明らかのように、弾性要素3は好ましくは複数の圧縮バネの機構から形成されており、圧縮バネは基体1と押し部材2の間で向き合って相互の間隔をおいて分配されて配置されているので、押し部材2上へのバネ力はできるだけ均等に分配され、従って測定尺4は全長にわたり均等に押圧力Fでもって取付け面51に押し当てられる。
【0021】
押し部材2は測定尺4を外すことが可能に保持するための保持要素22を備えている。この保持要素が取付け面51に固定されているまで長い間測定尺4を押し部材2にはさんで保持するために押し部材2は構成されており、保持要素22における測定尺4の締付けは、測定尺4を取付け面51に取付けが行われた後に取消し可能である。示された実施例において、保持要素22は締付け機構である。押し部材2に測定尺を収容するために、締付け機構は凹部21を備えている。押し部材2のこの凹部21の中で測定尺4を固定するために、保持要素22はレバーを備えており、このレバーは支点Dを中心にして回転可能であり、かつ
図3に示されているように、バネ23により測定尺4を締付け力Kでもって凹部21内で保持する。バネで予荷重されたレバーは、測定尺4の停止位置に押付け、それにより測定尺4は押し部材2に規定されて位置決めされている。Z方向での凹部21の深さは、測定尺4の厚さに合されておりかつ接着フィルム41が持ちこたえるように選定されている。
【0022】
示されていない方法において、測定尺4は、ほかに例えば磁気力により押部材2に着脱可能に保持されることができる。基体1には第一の接合部11が配置されており、この第一の接合部には押し部材2が静止状態で支持されている。弾性要素3は取付け面51の方向に、すなわちZ方向に押し部材2を接合面11に押付ける。接合部11は押し部材2が規定されたZ位置で基体1に保持されることを配慮する。
図1において押し部材22は静止位置で示されている。この静止位置において、測定尺4は押し部材2に保持要素22を用いて着脱可能に固定されている。
【0023】
次の工程において基体1は担持体5に位置決めされる。Z方向に対して横方向に位置決めすることは位置決め要素52で行われ、例えばピン形状で行われる。これから先、基体1は担持体5に載置される。その際に、押し部材2を従って測定尺4を取付け面51に押付ける押圧力Fが導入される。押圧力Fは弾性要素3の弾性曲線と弾性移動量Wにより決定されており、この弾性移動量だけ押し部材2は弾性要素3にかける力に抗して接合部11から離間するように移動される。従って弾性移動量Wは基体1の第一の接合部11のZ位置と第二の接合部6のZ位置により決定されている。この第二の接合部6は、停止面として構成されており、この停止面は担持体5の基準面53と接触しており、基体のZ方向移動を制限する。
【0024】
従って押圧力Fは装置自体の構造により決定されている。それにより測定尺は、規定されかつ再生可能な押圧力Fでもって取付け面51に押圧されかつ貼付けられる。
【0025】
第一の接合部11或いは第二の接合部6の位置は、示されていない方法では基体1に調節可能に形成されていてもよい。このことは、取付け面51と基準面53の間の異なるZ方向位置(高低差)を調整するのに有利で有りうる。
【0026】
規定されかつ再生可能な押圧力Fでもって、測定尺4を取付け面51に貼り付けるために、この測定尺はその下側に
図3に示されているように接着フィルム41を備えている。
【0027】
測定尺4を押圧力Fでもって取付け面51に平坦な接着が行われた後、測定尺は保持要素22を用いて押し部材2から剥がされ、装置は担持体5から除去される。
【0028】
図6において、担持体105は測定テープであり、このテープの裏側には測定尺45が貼付けられねばならない。この場合、中空断面の開口部の側壁は、担持体105に対して基体1を整向するために使用され、従って中空断面はそれ自体軸線Z(Z方向)に対して装置を整向するための位置決め要素152として使用される。
【0029】
この後、
図7〜12に基づいて、第二の実施例、従って本発明による第二の装置が詳しく説明される。
【0030】
第二の装置はその中に一体化された二つの別の機能の点で第一の装置とは異なる。
【0031】
第一の別の機能は、第一の接合部111の特殊な形態である。接合部111は、担持体5に位置決めされた基体101に接した測定尺4が取付け面51に対して間隔をおいて配置されているように、この場合、押し部材2を
図7による静止状態では基体1に位置決めする。この静止状態から出発して、従ってすでに位置決めされた状態で、接合部111は作用しなくされ、従って弾性要素3の力Fが作用し、かつ取付けられた測定尺4を備えた押し部材2を取付け面51に押付ける。従って押圧力Fは弾性要素3の弛緩により発生される。
【0032】
押圧力Fは、弾性要素3の弾性特性曲線により及びバネの移動距離Wにより決定されており、このバネの移動距離だけ押し部材2は取付け面51に向かって動かされる。バネの移動距離Wは、第一の接合部111のZ位置により及び基体101の第二の接合部61のZ位置により決定されている。第二の接合部61は、停止面として形成されており、この停止面は担持体5の基準面53の基準面53と接触かつ基体101のZ位置を定める。
【0033】
図示された実施例において、接合部111を作用しなくするために偏芯スリーブ(Exzenter)が使用される。特に接合部111自体は偏芯して支承された棒状体により構成されており、この棒状体は取っ手8を用いて捩じり上げ可能である。
【0034】
第二の別の機能は、基体101が支持部材100を備えていることにあり、この支持部材には、基体101が押し部材2と一緒にZ方向に調節可能に固定されている。調節はこの例ではネジ7を用いて行われる。測定尺4を担持体5に取付ける際に、支持部材100は担持体5に対して位置決めされる。この場合、支持部材100は第二の接合部61を停止面の形態で備えており、この停止面は、測定尺4を対応する担持体5の、取付け面51に対して平行に整向されている基準面に貼り付ける際に載置される。それにより、
図11及び12示すように、Z方向における取付け面51の位置の相違は調整されることができる。
【0035】
測定尺4は例えば帯状に、特に数ミリの長さを備えた短い鋼ストリップとして形成されている。