(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタクリル酸メチル単量体単位を70質量%以上有するメタクリル系樹脂を含む第1の樹脂層と、スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマーを含む第2の樹脂層と、アイオノマーを含む第3の樹脂層とを備え、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とが互いに隣接した、積層シート。
前記第1の樹脂層が、前記メタクリル系樹脂90〜5質量%と、芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を有するビニル共重合体10〜95質量%とを含む、請求項1に記載の積層シート。
前記アイオノマーは、α−オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物との共重合体のイオン中和誘導体である、請求項1〜8のいずれかに記載の積層シート。
前記共重合体中のα,β−不飽和カルボン酸またはα,β−不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位の含有量が2〜30質量%である、請求項9に記載の積層シート。
前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層と前記第3の樹脂層のうち、互いに隣接する少なくとも2層を溶融共押出しにより積層する、請求項1〜10のいずれかに記載の積層シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。
「積層シート」
本発明の積層シートは、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層と、スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層と、アイオノマー(C)を含む第3の樹脂層とを備え、第1の樹脂層と第2の樹脂層とが互いに隣接した積層シートである。
本発明の積層シートは、各種基材に積層して、各種基材の表皮材として用いることができる。本発明の積層シートは、各種基材の表面保護シートまたは意匠性付与シート等として好適に用いることができる。
【0023】
一般的に、薄膜成形体としては、厚さ5〜250μmの平面状成形体(主に「フィルム」に分類される。)および250μmより厚い平面状成形体(主に「シート」に分類される。)等が挙げられる。本明細書では、フィルムとシートとを明確に区別せず、両者を合わせて「シート」と称す。
【0024】
図1に、本発明に係る一実施形態の積層シートの模式断面図を示す。図中、符号10Xは本実施形態の積層シート、符号11はメタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層、符号12はスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層、符号13はアイオノマー(C)を含む第3の樹脂層をそれぞれ示す。
図示例の積層シート10Xは、1層の第1の樹脂層と1層の第2の樹脂層12と1層の第3の樹脂層13とからなる3層構造シートである。なお、本発明の積層シートは3層構造に限定されない。本発明の積層シートにおいて、第1〜第3の樹脂層はいずれも単層でも複層でもよい。本発明の積層シートは、他の任意の層を含んでいてもよい。
【0025】
図2に、本発明に係る他の実施形態の積層シートの模式断面図を示す。この積層シートは、他の樹脂層を含む態様である。図中、符号10Yは本実施形態の積層シート、符号14は他の樹脂層をそれぞれ示す。符号11〜13は
図1と同様である。なお、他の樹脂層を含む態様は、適宜設計変更可能である。
【0026】
本発明者らは、メタクリル系樹脂(A)とスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)との接着性が良好であることを見出した。上記構成の本発明の積層シートでは、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層とアイオノマー(B)を含む第3の樹脂層との層間接着性に優れる。ただし、スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂層は、ガラス転移温度(Tg)が比較的低く、表面硬度が比較的低い傾向がある。スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)よりもTgが高く、表面硬度が高いメタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層を併用することで、積層シートの耐熱性と表面硬度が良好となる。その結果、基材への積層時等において軟化および傷付き等による積層シートの表面形状の悪化を抑制することができる。アイオノマー(C)を含む第3の樹脂層は各種基材との接着性に優れるため、第3の樹脂層が基材に隣接するように、本発明の積層シートを基材に積層することで、基材と積層シートとの接着性に優れた積層体を提供することができる。
【0027】
(第1の樹脂層)
<メタクリル系樹脂(A)>
第1の樹脂層は、1種または2種以上のメタクリル系樹脂(A)を含む。
第1の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)の含有量が増す程、Tgが増加して耐熱性が向上し、表面硬度が高くなる傾向がある。第1の樹脂層中のメタクリル系樹脂(A)の含有量は特に制限されず、第1の樹脂層の耐熱性および表面硬度が優れることから、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは70〜80質量%である。
【0028】
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸メチル(MMA)の単独重合体であるポリメタクリル酸メチル(PMMA)、または、MMAと他の1種または2種以上の単量体との共重合体である。
メタクリル系樹脂(A)中のMMA単量体単位の含有量は70質量%以上であり、第1の樹脂層の耐熱性が優れることから、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0029】
メタクリル系樹脂(A)中のMMA単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂(A)をメタノール中で再沈殿することにより精製した後、熱分解ガスクロマトグラフィを用いて熱分解および揮発成分の分離を行い、MMAと共重合成分とのピーク面積の比から算出することができる。
【0030】
メタクリル系樹脂(A)は、MMA単量体単位以外の1種または2種以上の単量体単位を含むことができる。MMAと共重合可能な単量体としては、MMA以外のメタクリル酸エステルが挙げられる。MMA以外のメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル等のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸1−メチルシクロペンチル等のメタクリル酸シクロアルキルエステル;メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アラルキルエステル等が挙げられる。
【0031】
MMAと共重合可能なメタクリル酸エステル以外の単量体としては、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル(BA)、アクリル酸イソブチル、およびアクリル酸tert−ブチル等のアクリル酸エステルが挙げられる。
【0032】
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、好ましくは40,000〜500,000、より好ましくは60,000〜300,000、特に好ましくは80,000〜200,000である。Mwが40,000以上であることで、第1の樹脂層は力学強度に優れたものとなる。Mwが500,000以下であることで、第1の樹脂層は成形性に優れるものとなる。
【0033】
メタクリル系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されず、好ましくは0.1〜10g/10分、より好ましくは0.5〜8g/10分、特に好ましくは1〜5g/10分である。MFRが0.1〜10g/10分であることで、第1の樹脂層は成形性に優れるものとなる。本明細書において、「メタクリル系樹脂(A)のMFR」は、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件において測定される値である。
【0034】
メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は特に制限されず、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、特に好ましくは110℃以上である。Tgが100℃以上であることで、第1の樹脂層は耐熱性に優れたものとなる。
【0035】
メタクリル系樹脂(A)は、重合開始剤の存在下、MMAを含む1種または2種以上の単量体を重合することで製造できる。重合には必要に応じて、連鎖移動剤等の任意成分を用いることができる。重合方法としては特に制限されず、ラジカル重合法およびアニオン重合法等が挙げられる
ラジカル重合法を用いる場合、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法、または乳化重合法を選択することが可能である。かかる重合方法において、生産性および耐熱分解性の観点から、懸濁重合法および塊状重合法が好ましい。塊状重合は連続流通式で行うことが好ましい。
メタクリル系樹脂(A)をアニオン重合する方法としては、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩等の鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法(特公平7−25859号公報を参照)、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とし有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法(特開平11−335432号公報を参照)、および有機希土類金属錯体を重合開始剤としてアニオン重合する方法(特開平6−93060号公報を参照)等が挙げられる。
【0036】
本明細書に記載するメタクリル系樹脂(A)の各種特性値は、重合温度、重合時間、重合開始剤の種類と量、および、連鎖移動剤の種類と量等の重合条件を調整することによって、好ましい範囲内に調整することができる。
【0037】
第1の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)の他にさらに、芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を有するビニル共重合体(以下、「SMA樹脂(S)」と称す。)を含むことが好ましい。第1の樹脂層がSMA樹脂(S)を含むことで、隣接する層との層間接着性を一層向上させることができる。
【0038】
第1の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)90〜5質量%とSMA樹脂(S)10〜95質量%とを含むことが好ましい。第1の樹脂層中のSMA樹脂(S)の含有量は、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、特に好ましくは25質量%以上、最も好ましくは40質量%以上である。第1の樹脂層中のSMA樹脂(S)の含有量は、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下、最も好ましくは70質量%以下である。第1の樹脂層は、SMA樹脂(S)の含有量が10質量%以上であることで隣接する層との層間接着性に優れたものとなり、95質量%以下であることで耐擦傷性に優れたものとなる。
【0039】
SMA樹脂(S)は、芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位を有するビニル共重合体である。以下、SMA樹脂(S)の原料単量体について説明する。
【0040】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン(St)、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、およびα−メチル−p−メチルスチレン等のスチレン系単量体が挙げられる。中でも、スチレン(St)が好ましい。芳香族ビニル単量体は、1種または2種以上用いることができる。
【0041】
SMA樹脂(S)中の芳香族ビニル化合物単量体単位の含有量は好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。SMA樹脂(S)中の芳香族ビニル化合物単量体単位の含有量は好ましくは89質量%以下、より好ましくは87質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。芳香族ビニル化合物単量体単位の含有量が45〜89質量%であると、第1の樹脂層が透明性に優れたものとなる。但し、SMA樹脂(S)が芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸単量体単位のみからなる場合には、SMA樹脂(S)中の芳香族ビニル化合物単量体単位の含有量は好ましくは45〜90質量%である。
【0042】
不飽和ジカルボン酸無水物としては、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、およびアコニット酸無水物等が挙げられる。中でも、マレイン酸無水物が好ましい。不飽和ジカルボン酸無水物は、1種または2種以上用いることができる。
【0043】
SMA樹脂(S)中の不飽和ジカルボン酸単量体単位の含有量は好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。SMA樹脂(S)中の不飽和ジカルボン酸単量体単位の含有量は好ましくは54質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。不飽和ジカルボン酸単量体単位の含有量が10〜54質量%の範囲にあることで、第1の樹脂層が透明性と耐熱性に優れたものとなる。但し、SMA樹脂(S)が芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸単量体単位のみからなる場合には、SMA樹脂(S)中の不飽和ジカルボン酸単量体単位の含有量は好ましくは10〜55質量%である。
【0044】
SMA樹脂(S)は、芳香族ビニル化合物単量体単位および不飽和ジカルボン酸単量体単位に加え、メタクリル酸エステル単量体単位を有することが好ましい。SMA樹脂(S)中のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上、最も好ましくは10質量%以上である。SMA樹脂(S)中のメタクリル酸エステル単量体単位の含有量は好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは26質量%以下である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が1〜35質量%の範囲にあることで、第1の樹脂層が透明性と熱安定性により優れたものとなる。
【0045】
メタクリル酸エステルとしては、MMAおよびMMAと共重合可能な単量体としてメタクリル系樹脂(A)の項で例示したものが挙げられる。中でも、アルキル基の炭素数が1〜7のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、SMA樹脂(S)の耐熱性および透明性が優れることから、MMAが特に好ましい。メタクリル酸エステルは、1種または2種以上用いることができる。
【0046】
SMA樹脂(S)のMwは、好ましくは40,000〜300,000である。Mwが40,000以上であることで、第1の樹脂層は力学強度に優れたものとなる。Mwが300,000以下であることで、メタクリル系樹脂(A)との相溶性が良好となり、第1の樹脂層の透明性が優れたものとなる。
【0047】
SMA樹脂(S)のTgは好ましくは115℃以上、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは125℃以上である。Tgが115℃以上であることで、第1の樹脂層は耐熱性に優れたものとなり、熱に起因する積層シートの反りを抑制できる。
【0048】
第1の樹脂層がメタクリル系樹脂(A)とSMA樹脂(S)とを含む場合、これらの樹脂の混合方法としては、溶融混合法および溶液混合法等が挙げられる。溶融混合法では、単軸または二軸以上の混練押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、およびニーダー等の溶融混練機を用い、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、およびヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で、溶融混練を行うことができる。
【0049】
第1の樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル系樹脂(A)およびSMA樹脂(S)以外の他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、ポリオレフィン;スチレン系樹脂;メタクリル酸メチル−スチレン共重合体;ポリエステル;ポリアミド;ポリカーボネート等の他の熱可塑性樹脂;アクリル系コアシェルゴム、アクリル系ブロック共重合体;オレフィン系ゴム等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。第1の樹脂層中の他の重合体の含有量は特に制限されず、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0050】
第1の樹脂層は必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染料・顔料、光拡散剤、艶消し剤、耐衝撃性改質剤、フィラー、および蛍光体等が挙げられる。添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。例えば、酸化防止剤の含有量は好ましくは0.01〜1質量%、紫外線吸収剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、光安定剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、滑剤の含有量は好ましくは0.01〜3質量%、染料・顔料の含有量は好ましくは0.01〜3質量である。
【0051】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、およびホルムアミジン類等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、または波長380〜450nmにおけるモル吸光係数の最大値εmaxが1200dm
3・mol
−1cm
−1以下である紫外線吸収剤が好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤を併用して用いる場合、紫外線吸収剤のうち、骨格内に硫黄原子を含有しないベンゾトリアゾール類を[1]、骨格内に硫黄原子を含有しないトリアゾール類を[2]、骨格内に硫黄原子を含有する紫外線吸収剤を[3]と標記すると、例えば、[1]と[2];[1]と[3];[2]と[3]:[1]と[2]と[3]等の組合せが挙げられる。さらに、[1]〜[3]のいずれにも該当しない紫外線吸収剤を[4]を併用してもよい。
【0053】
メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層に任意成分を含有させる場合、メタクリル系樹脂(A)と混合してもよいし、メタクリル系樹脂(A)の重合時に添加してもよい。
メタクリル系樹脂(A)とSMA樹脂(S)とを含む第1の樹脂層に任意成分を含有させる場合、メタクリル系樹脂(A)および/またはSMA樹脂(S)の重合時に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)および/またはSMA樹脂(S)を混合する際に添加してもよいし、メタクリル系樹脂(A)およびSMA樹脂(S)を混合した後に添加してもよい。
【0054】
第1の樹脂層がSMA樹脂(S)または他の任意成分を含む場合、第1の樹脂層の原料樹脂組成物のTgは特に制限されず、耐熱性の観点から、好ましくは98〜120℃、より好ましくは100〜118℃、特に好ましくは102〜115℃である。
第1の樹脂層がSMA樹脂(S)または他の任意成分を含む場合、第1の樹脂層の原料樹脂組成物のMFRは特に制限されず、第1の樹脂層の成形性が良好となることから、好ましくは1〜20g/10分である。MFRの下限値は、好ましくは1.5g/10分、より好ましくは2.0g/10分である。MFRの上限値は好ましくは10.0g/10分、より好ましくは7.0g/10分である。
【0055】
(第2の樹脂層)
<熱可塑性エラストマー(B)>
第2の樹脂層は、少なくとも1種のスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含む。第2の樹脂層は、熱可塑性エラストマー(B)の含有量が増す程、アイオノマー(C)を含む第3の樹脂層との層間接着性が向上する傾向がある。ただし、熱可塑性エラストマー(B)の含有量が増す程、第2の樹脂層のTgが低下するため、耐熱性が低下し、また表面硬度が低下する傾向がある。本発明では、これらの欠点をメタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層を用いることで、解消する。
【0056】
スチレン系ブロック共重合体は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも1つの脂肪族炭化水素重合体ブロックとを有する。これらの重合体ブロックの結合形態は特に制限されず、直鎖状結合、分岐状結合、放射状結合、およびこれらの組合せのいずれでもよいが、直鎖状結合が好ましい。
【0057】
以下、芳香族ビニル重合体ブロックを「a」、脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックを「b」と表記する。直鎖状の結合形態としては、a−bで表されるジブロック共重合体、a−b−aまたはb−а−bで表されるトリブロック共重合体、a−b−a−bで表されるテトラブロック共重合体、a−b−a−b−aまたはb−a−b−a−bで表されるペンタブロック共重合体、(а−b)
nX型共重合体(ここで、符号Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す。)、およびこれらの組合せが挙げられる。中でも、ジブロック共重合体またはトリブロック共重合体が好ましい。トリブロック共重合体としては、a−b−aで表されるトリブロック共重合体が特に好ましい。
【0058】
スチレン系ブロック共重合体における芳香族ビニル単量体単位および脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0059】
スチレン系ブロック共重合体における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは12〜20質量%である。芳香族ビニル単量体単位の含有量が5質量%以上であると、本発明の積層シートは成形性に優れたものとなる。芳香族ビニル単量体単位の含有量が40質量%以下であると、第2の樹脂層とアイオノマー(C)を含む第3層の樹脂層との層間接着性が優れたものとなる。なお、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、スチレン系ブロック共重合体を合成する際の原料単量体の仕込み組成またはスチレン系ブロック共重合体の
1H−NMR等の測定結果から求めることができる。
【0060】
芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位以外に少量の他の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロック中の芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0061】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン(St);α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、および4−ドデシルスチレン等のアルキルスチレン;2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、および2−ビニルナフタレン等のアリールスチレン;ハロゲン化スチレン;アルコキシスチレン;ビニル安息香酸エステル等が挙げられる。中でも、スチレン(St)およびα−メチルスチレンが好ましく、α−メチルスチレンがより好ましい。芳香族ビニル単量体は、1種または2種以上用いることができる。
【0062】
スチレン系ブロック共重合体における脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の含有量は、好ましくは60〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%、特に好ましくは80〜88質量%である。脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の含有量が60質量%以上であると、エラストマーとしての特性が良好に発現する。脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の含有量が95質量%以下であると、積層シートの成形性が優れたものとなる。なお、脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の含有量は、スチレン系ブロック共重合体を合成する際の原料単量体の仕込み組成およびスチレン系ブロック共重合体の
1H−NMR等の測定結果から求めることができる。
【0063】
脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロックは、脂肪族不飽和炭化水素単量体以外に少量の他の単量体を含んでいてもよい。脂肪族不飽和炭化水素重合体ブロック中の脂肪族不飽和炭化水素単量体単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0064】
脂肪族不飽和炭化水素単量体としては、入手容易性および取り扱い性の観点から、炭素数2〜12の脂肪族不飽和炭化水素が好ましく、炭素数4〜8の脂肪族炭化水素がより好ましい。中でも、ブタジエン、イソプレン、およびこれらの組合せが好ましい。
【0065】
脂肪族不飽和炭化水素単量体としては、入手容易性、取り扱い性、および合成のしやすさの観点から、共役ジエンが好ましい。共役ジエンを用いたスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)は、少なくとも一部の共役ジエン単量体単位が水素添加(水添)されていることが好ましい。一般的に、少なくとも一部の共役ジエン単量体単位が水添されたスチレン系熱可塑性エラストマーは、「水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)」と称される。SEBSの水添率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。なお、「水添率」は、水素添加反応前後のスチレン系ブロック共重合体のヨウ素価を測定して求められる。
【0066】
スチレン系ブロック共重合体の製造方法としては、アニオン重合法、カチオン重合法、およびラジカル重合法等が挙げられる。
例えばアニオン重合の場合、具体的には、(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、および芳香族ビニル単量体を逐次重合させる方法;(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、芳香族ビニル単量体および共役ジエン単量体を逐次重合させ、さらにカップリング剤を加えてカップリングする方法;(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、共役ジエン単量体および芳香族ビニル単量体を逐次重合させる方法等が挙げられる。
脂肪族不飽和炭化水素単量体として共役ジエンを用いる場合、アニオン重合の際に有機ルイス塩基を添加することによって熱可塑性エラストマーの1,2−結合量および3,4−結合量を増やすことができる。また、有機ルイス塩基の添加量によって熱可塑性エラストマーの1,2−結合量および3,4−結合量を調整することができる。
【0067】
有機ルイス塩基としては、酢酸エチル等のエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、およびN−メチルモルホリン等のアミン;ピリジン等の含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミド等のアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、およびジオキサン等のエーテル;エチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;アセトンおよびメチルエチルケトン等のケトン等が挙げられる。
【0068】
未水添スチレン系熱可塑性エラストマーの水素添加反応方法としては、重合反応終了後に得られる未水添スチレン系熱可塑性エラストマーを含む反応液、または、この反応液から単離した未水添スチレン系熱可塑性エラストマーを水素添加触媒に対して不活性な溶媒に溶解させた溶液を用いて、水素添加触媒の存在下、水素と反応させる方法が挙げられる。
【0069】
水素添加触媒としては、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、およびNi等の金属をカーボン、アルミナ、および珪藻土等の担体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物またはアルキルリチウム化合物等との組合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等が挙げられる。水素添加反応は通常、水素圧力0.1〜20MPa、反応温度20〜250℃、反応時間0.1〜100時間の条件で行うことができる。
【0070】
熱可塑性エラストマー(B)は、分子鎖および/または分子末端が極性官能基で変性された変性熱可塑性エラストマー(BX)であってもよい。極性官能基は、少なくとも一方の分子末端に導入されていることが好ましい。極性官能基としては、無水マレイン酸無水物基等の酸無水物基、カルボキシ基、マレイン酸基等のジカルボキシ基、アミノ基、イミノ基、アルコキシシリル基、シラノール基、シリルエーテル基、ヒドロキシル基、およびエポキシ等が挙げられる。中でも、アミノ基が好ましい。
【0071】
変性熱可塑性エラストマー(BX)の製造方法としては、未変性のスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を共重合し、必要に応じて水素添加処理した後に極性官能基を導入する方法、および、極性官能基を有する単量体を用いて変性スチレン系熱可塑性エラストマー(BX)を直接共重合する方法が挙げられる。
【0072】
変性熱可塑性エラストマー(BX)としては、アミノ基で変性されたSEBS(アミン変性SEBS)、および無水マレイン酸基で変性されたSEBS(無水マレイン酸変性SEBS)等が挙げられる。中でも、アミン変性SEBSが好ましい。
【0073】
変性熱可塑性エラストマー(BX)の市販品としては、旭化成ケミカルズ社製の「タフテックMP10」、JSR社製の「ダイナロン8630P」、および旭化成ケミカルズ社製の「タフテックM1913」等が挙げられる。
【0074】
スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、力学特性および成形加工性の観点から、好ましくは30,000〜400,000、より好ましくは50,000〜300,000である。スチレン系ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.5である。なお、本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0075】
第2の樹脂層は、スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)に合わせて、1種または2種以上のメタクリル系樹脂を含むことが好ましい。第2の樹脂層がメタクリル系樹脂を含むことで、第1層のメタクリル系樹脂(A)との相溶性を高め、第1の樹脂層と第2の樹脂層との層間接着性を向上させることができる。第2の樹脂層に用いられるメタクリル系樹脂は、第1の樹脂層で挙げたメタクリル系樹脂(A)でもよいし、他の任意のメタクリル系樹脂でもよい。好ましい構造および物性は上記の(第1の樹脂層)の項を参照されたい。なお、第1の樹脂層中のメタクリル系樹脂(A)と第2の樹脂層中のメタクリル系樹脂とは同一でも非同一でもよい。
【0076】
第2の樹脂層中のメタクリル系樹脂の含有量は特に制限されず、第2の樹脂層が透明性に優れることから、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜45質量%。特に好ましくは20〜40質量%である。
【0077】
第2の樹脂層中のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されず、好ましくは50,000以下、より好ましくは45,000以下、特に好ましくは40,000以下である。Mwが50,000以下であることで、第2の樹脂層は透明性に優れたものとなる。
【0078】
第2の樹脂層が熱可塑性エラストマー(B)とメタクリル系樹脂とを含む場合、これらの樹脂の混合方法としては、溶融混合法および溶液混合法等が挙げられる。溶融混合法では、単軸または二軸以上の混練押出機、オープンロール、バンバリーミキサー、およびニーダー等の溶融混練機を用い、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、およびヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で、溶融混練を行うことができる。溶液混合法では、熱可塑性エラストマー(B)とメタクリル系樹脂とを双方の良溶媒である有機溶媒に溶解させて混合することができる。これらの混合方法の中で、溶融混合法が好ましく、特に単軸または二軸の混練押出機を用いる方法が好ましい。混合・混練時の温度は、使用する熱可塑性エラストマー(B)とメタクリル系樹脂の溶融温度等に応じて適宜調節することができ、好ましくは110〜300℃である。
【0079】
第2の樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマー(B)およびメタクリル系樹脂以外の他の重合体および/または各種添加剤を含有してもよい。使用可能な他の重合体および各種添加剤の種類と好ましい含有量は、第1の樹脂層と同様であり、上記の(第1の樹脂層)の項を参照されたい。
【0080】
熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層に任意成分を含有させる場合、熱可塑性エラストマー(B)と混合してもよいし、熱可塑性エラストマー(B)の重合時に添加してもよい。
熱可塑性エラストマー(B)とメタクリル系樹脂とを含む第2の樹脂層に任意成分を含有させる場合、熱可塑性エラストマー(B)および/またはメタクリル系樹脂の重合時に添加してもよいし、熱可塑性エラストマー(B)および/またはメタクリル系樹脂を混合する際に添加してもよいし、熱可塑性エラストマー(B)およびメタクリル系樹脂を混合した後に添加してもよい。
【0081】
(第3の樹脂層)
<アイオノマー(C)>
第3の樹脂層は、1種または2種以上のアイオノマー(C)を含む。第3の樹脂層中のアイオノマー(C)の含有量は特に制限されず、第3の樹脂層の透明性および基材接着性が優れることから、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上、最も好ましくは100質量%である。
【0082】
アイオノマー(C)は、α−オレフィン単量体単位とα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む共重合体(以下、単に「酸コポリマー」と称することがある。)を部分的または完全に中和することによって得られるポリマーである。酸コポリマーは、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル等の他の1種または2種以上の共重合単位を含んでいてもよい。すなわち、アイオノマー(C)としては、α−オレフィン単位とα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位とを含む酸コポリマーのイオン中和誘導体が好ましい。酸コポリマーの中和は、酸コポリマー中のアニオンをカチオンを用いて中和する反応である。カチオン源としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属等を用いることができる。
【0083】
酸コポリマーの原料であるα−オレフィンとしては、2〜10個の炭素原子を有するα−オレフィンが好ましい。かかるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、および4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、エチレンが好ましい。
【0084】
酸コポリマーの原料であるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、3〜8個の炭素原子を有するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。かかるα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、およびマレイン酸モノメチル等が挙げられる。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれらの組合せが好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
【0085】
酸コポリマー中のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸またはα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物に由来する単量体単位の含有量は特に制限されず、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは5〜25質量%、特に好ましくは18〜24質量%である。当該含有量が2質量%以上であると基材との接着性が良好となり、30質量%以下であると硬度および弾力性が良好となる。
【0086】
酸コポリマーは、α−オレフィン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物以外の他の単量体に由来する単量体単位を含むことができる。これにより、例えば積層シートの剛性および巻取り易さ等を調節できる。
【0087】
酸コポリマーに用いられる他の単量体としては、不飽和カルボン酸アミドおよび不飽和カルボン酸エステル等が挙げられ、不飽和カルボン酸エステルが好ましい。これらは1種または2種以上用いることができる。中でも、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、およびこれらの組合せが好ましく、アクリル酸ブチルがより好ましい。
【0088】
酸コポリマー中のα−オレフィン、α,β‐エチレン性不飽和カルボン酸、およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸無水物以外の他の単量体に由来する単量体単位の含有量は特に制限されず、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0%である。
【0089】
酸コポリマーのMFRは特に制限されず、好ましくは1〜1000g/10分、より好ましくは20〜900g/10分である。本明細書において、「酸コポリマーのMFR」は、ASTM方法D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件において測定される値である。
【0090】
酸コポリマーとしては、三井・デュポンポリケミカル株式会社製のニュクレルシリーズ等の市販品を用いることができる。酸コポリマーは、米国特許第3,404,134号明細書、米国特許第5,028,674号明細書、米国特許第6,500,888号明細書、および米国特許第6,518,365号明細書等に記載の公知方法にて、重合して用いてもよい。
【0091】
アイオノマー(C)は、上記の酸コポリマーを1つ以上の塩基との反応により部分的または完全に中和することで得られる。中和反応の後、酸コポリマー中のα,β−エチレン性不飽和カルボキシ基の水素原子の1〜100%が中和されていることが好ましく、5〜90%中和されていることがより好ましく、10〜60%中和されていることが特に好ましい。
【0092】
アイオノマー(C)は、カルボキシレートアニオンに対する対イオンとして、カチオンを含む。カチオンとしては特に制限されず、一価、二価、三価、または四価以上の多価の金属カチオンが好ましい。金属カチオンは1種または2種以上用いることができる。一価の金属カチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、銀イオン、水銀イオン、銅イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。二価の金属カチオンとしては、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、銅イオン、カドミウムイオン、水銀イオン、錫イオン、鉛イオン、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、亜鉛イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。三価の金属カチオンとしては、アルミニウムイオン、スカンジニウムイオン、鉄イオン、イットリウムイオン、およびこれらの組合せが挙げられる。四価以上の多価の金属カチオンとしては、チタンイオン、ジルコニウムイオン、ハフニウムイオン、バナジウムイオン、タンタルイオン、タングスチンイオン、クロムイオン、セリウムイオン、鉄イオン、およびこれらの組合せが挙げられる。金属カチオンが四価以上の多価イオンである場合、米国特許第3,404,134号明細書中に記載されるように、ステアレート、オレエート、サリチレートおよびフェノレートラジカル等の錯化剤を用いてもよい。中でも、一価または二価の金属カチオンが好ましく、ナトリウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、カリウムイオン、およびこれらの組合せがより好ましく、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、およびこれらの組合せが特に好ましい。
【0093】
アイオノマー(C)のMFRは特に制限されず、第3の樹脂層の成形性が良好となることから、好ましくは25g/10分以下、より好ましくは20g/10分以下、特に好ましくは10g/10分以下、最も好ましくは5g/10分以下である。本明細書において、「アイオノマー(C)のMFR」は、ASTM方法D1238に準拠して、190℃、2.16kg荷重の条件において測定される値である。
【0094】
アイオノマー(C)としては、デュポン社製のサーリンシリーズ、および三井・デュポンポリケミカル株式会社製のハイミランシリーズ等の市販品を用いることができる。
酸コポリマーを中和し、アイオノマー(C)を得る方法は、米国特許第3,404,134号明細書および米国特許第6,518,365号明細書等に記載されている。これら公知方法にしたがって、アイオノマー(C)を合成して用いてもよい。
【0095】
第3の樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲で、アイオノマー(C)以外の他の重合体を含有していてもよい。第3の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)および/またはスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含有していてもよい。第3の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)およびスチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)以外の各種重合体を含有していてもよい。
第3の樹脂層は、公知の添加剤を含んでいてもよい。
メタクリル系樹脂(A)および熱可塑性エラストマー(B)以外の各種重合体および各種添加剤の種類と好ましい含有量は、第1の樹脂層と同様であり、上記の(第1の樹脂層)の項を参照されたい(ただし、エチレン系アイオノマーは除く)。
【0096】
(積層構成)
本発明の積層シートにおいて、第1〜第3の樹脂層はいずれも単層でも複層でもよく、第1〜第3の樹脂層以外の他の樹脂層を有していてもよい。他の樹脂層の構成樹脂は特に制限されず、メタクリル系樹脂(A)、熱可塑性エラストマー(B)、およびアイオノマー(C)を除く1種または2種以上の熱可塑性樹脂、1種または2種以上の熱硬化樹脂、1種または2種以上のエネルギー線硬化樹脂、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0097】
他の樹脂層の機能は特に制限されず、第1〜第3の樹脂層を支持する支持層、耐擦傷層、帯電防止層、防汚層、摩擦低減層、防眩層、反射防止層、粘着層、熱線吸収層、遮音層、および衝撃強度付与層等の各種機能層として機能してもよい。他の樹脂層は単数でも複数でもよい。他の樹脂層が複数である場合、組成は同一でも非同一でもよい。
【0098】
本発明の積層シートにおいて、第1の樹脂層の厚さは特に制限されず、耐擦傷性、耐候性、および耐衝撃性等の観点から、好ましくは0.01〜9.0mm、より好ましくは0.05〜5.0mm、特に好ましくは0.02〜3.0mmである。
本発明の積層シートにおいて、第2の樹脂層の厚さは特に制限されず、層間接着性の観点から、好ましくは0.01〜9.0mm、より好ましくは0.015〜3.0mm、特に好ましくは0.02〜1.0mmである。
本発明の積層シートにおいて、第3の樹脂層の厚さは特に制限されず、耐貫通性、接着性、透明性、および生産性等の観点から、好ましくは0.01〜9.0mm、より好ましくは0.05〜4.0mm、特に好ましくは0.1〜2.0mmである。
本発明の積層シートの全体厚さは特に制限されず、外観不良なく生産性よく製造する観点から、好ましくは0.1〜10.0mm、より好ましくは0.5〜6.0mm、特に好ましくは1.0〜4.0mmである。
【0099】
本発明の積層シートは、耐擦傷性向上の観点から、一方の最表層は第1の樹脂層であることが好ましい。各種基材への接着性の観点から、他方の最表層は第3の樹脂層であることが好ましい。
【0100】
「積層シートの製造方法」
本発明の積層シートの製造方法は特に制限されず、第1〜第3の樹脂層の積層は、公知の多層成形によって行うことが好ましい。多層成形としては、多層押出成形;多層ブロー成形;多層プレス成形;多色射出成形;インサート射出成形等の貼合成形法等が挙げられる。生産性の観点から多層押出成形が好ましい。なお、本明細書において、「多層成形」は2層以上の積層成形を意味する。
【0101】
他の樹脂層をさらに積層する方法としては特に制限されず、第1〜第3の樹脂層とともに他の樹脂層を前記した方法で多層成形する方法、あらかじめ作製した第1〜第3の樹脂層のうちいずれかの層の表面に流動性の他の樹脂を塗布して乾燥固化または硬化する方法、あらかじめ作製した第1〜第3の樹脂層のうちいずれかの層の表面に粘着層を介して他の樹脂層を貼り合わせる方法等が挙げられる。
【0102】
多層押出成形は公知方法にて実施することができ、第1〜第3の樹脂層のうち互いに隣接する少なくとも2層を溶融共押出しにより積層することができる。
溶融状態の第1〜第3の樹脂層の原料樹脂(組成物)を積層状態でシート状に押出すTダイと、Tダイから押し出された溶融状態のシート状物を冷却しながら加圧する互いに隣接配置された複数のロールからなるロールユニットとを備えた装置を用いて、多層押出成形を実施することが好ましい。
【0103】
積層方式としては、溶融状態の第1〜第3の樹脂層の原料樹脂(組成物)をTダイ流入前に積層するフィードブロック方式、および、溶融状態の第1〜第3の樹脂層の原料樹脂(組成物)をTダイ内部で積層するマルチマニホールド方式が挙げられる。中でも、積層シートの各層間の界面平滑性を高める観点から、マルチマニホールド方式が好ましい。
【0104】
ロールユニットを構成するロールとしては例えば、ロール表面が鏡面仕上げされたポリシングロール;金属、ステンレス鋼、および炭素鋼のコアの表面にゴムが巻き付けられたゴムロール;ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を有するエンボスロール等が挙げられる。一方の最表層をなす第1の樹脂層と接する側のロールは、鏡面性付与の目的からポリシングロールが好ましい。他方の最表層をなす第3の樹脂層と接する側のロールは、ロールからの剥離性の観点からゴムロールまたはエンボスロールが好ましい。
【0105】
ポリシングロールとしては例えば、金属ロールおよび外周部に金属製薄膜を備えた弾性ロール(金属弾性ロール)が挙げられる。金属ロールとしては、高剛性であれば特に限定されず、ドリルドロール、およびスパイラルロール等が挙げられる。金属ロールの表面状態は特に限定されず、鏡面であってもよく、模様あるいは凹凸等があってもよい。金属弾性ロールは例えば、略円柱状の回転自在な軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され、シート状物に接触する円筒形の金属製薄膜と、これら軸ロールおよび金属製薄膜の間に封入された流体とからなり、流体により金属弾性ロールは弾性を示す。軸ロールは特に限定されず、例えばステンレス鋼等からなる。金属製薄膜は例えばステンレス鋼等からなり、その厚みは2〜5mm程度であるのが好ましい。金属製薄膜は、屈曲性および可撓性等を有しているのが好ましく、溶接継ぎ部のないシームレス構造であるのが好ましい。このような金属製薄膜を備えた金属弾性ロールは、耐久性に優れると共に、金属製薄膜を鏡面化すれば通常の鏡面ロールと同様の取り扱いができ、金属製薄膜に模様や凹凸を付与すればその形状を転写できるロールになるので、使い勝手がよい。
【0106】
ゴムロールとしては、シリコーンゴムロール、フッ素ゴムロール、ニトリルブタジエンゴムロール、スチレンブタジエンゴム、および、離型性を上げるために砂を混ぜたゴムロール等が挙げられる。使用するゴムロールは特に限定されず、耐熱性の観点からシリコーンゴムロールが好ましい。シリコーンゴムロールの表面仕上げには、公知の加工方法を使用できる。
【0107】
エンボスロールとしては、金属ロールの表面に酸化アルミニウムおよび酸化珪素等の研削材を用いてブラスト処理を行い、次いで表面の過大ピークを減少させるためにバーチカル研削等を用いてラッピングを行うことにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。他にも、彫刻ミル(マザーミル)を用いてエンボス模様(凹凸模様)を金属ロールの表面に転写することにより、ロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。さらに、エッチング(蝕刻)によりロール表面に微細なエンボス模様(凹凸模様)を付与したエンボスロールが挙げられる。エンボスロールの表面に離形処理を施すことが好ましい。離形処理としては、シリコーン処理、テフロン(登録商標)処理、およびプラズマ処理等が挙げられる。
【0108】
積層シートの各層の原料樹脂(組成物)は、多層成形前および/または多層成形時に、フィルタ濾過することが好ましい。フィルタ濾過した原料樹脂(組成物)を用いて多層成形することにより、異物およびゲルに起因する欠点の少ない積層シートが得られる。使用されるフィルタの材質は特に制限されず、使用温度、粘度、および濾過精度等に応じて適宜選択され、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、コットン、およびグラスファイバ等からなる不織布;フェノール系樹脂含浸セルロースフィルム;金属繊維不織布焼結フィルム;金属粉末焼結フィルム;金網;およびこれらの組合せ等が挙げられる。中でも、耐熱性および耐久性の観点から、金属繊維不織布焼結フィルムを複数枚積層して用いることが好ましい。フィルタの開口径は特に制限されず、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは5μm以下である。
【0109】
「積層体」
本発明の積層体は、基材上に第3の樹脂層が隣接して上記の本発明の積層シートが積層されたものである。
図3および
図4に、本発明に係る実施形態の積層体の模式断面図を示す。
図1および
図2と同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。図中、符号20X、20Yは積層体であり、符号21は基材である。
【0110】
基材の形態は特に制限されず、基板、シート、および任意形態の成形品等が挙げられる。基材の材質は特に制限されず、ガラス、金属、セラミック、木材、紙、不織布、織布、皮革(人工皮革または天然皮革)、樹脂、およびこれらの組合せ等が挙げられる。上記の本発明の積層シートは、基材保護または意匠性付与等の目的で、各種基材に積層して、基材の表皮材(表面保護シートまたは意匠性付与シート等)として用いることができる。なお、基材と積層シートとの接着性が良好となることから、基材に対して第3の樹脂層が隣接するように積層を行うことが好ましい。
【0111】
基材に用いられる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エネルギー線硬化性樹脂、およびこれらの組合せ等が挙げられる。例えば、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、スチレン−メタクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリスルホン類、ポリウレタン類、アクリルポリマー、セルロースアセテート類、セロファン類、塩化ビニルポリマー、フルオロポリマー、およびこれらの組合せ等が挙げられる。
【0112】
基材に用いられるガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、低鉄ガラス、強化ガラス(Corning inc.社製「Gorilla Glass(登録商標)」、および旭硝子株式会社製「Dragontrail(登録商標)等の化学強化ガラス等)、無CeO強化ガラス、フロートガラス、色ガラス、特殊ガラス(太陽光の光または熱を制御する成分を含むガラス等)、コートガラス(太陽光の光または熱を制御する目的で、表面に銀等の金属またはインジウム錫酸化物等の金属酸化物のスパッタリングが施されたガラス等)、低Eガラス、Saint−Gobain N.A.Inc.(Trumbauersville、PA)社製「Toroglas(登録商標)」、PPG Industries(Pittsburgh、PA)社製「Solexia(登録商標)」、およびPPG Industries社製「Starphire(登録商標))等が挙げられる。
【0113】
基材に用いられる金属としては、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、クロム、亜鉛、およびこれらの組合せ等が挙げられる。基材は、任意材質の基材の表面に、銅メッキ、ニッケルメッキ、クロムメッキ、錫メッキ、亜鉛メッキ、白金メッキ、金メッキ、および銀メッキ等の金属メッキが施されたものでもよい。
【0114】
基材に用いられるセラミックとしては、金属酸化物、金属炭化物、および金属窒化物等が挙げられる。具体的には、セメント類、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛系セラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびフェライト類等が挙げられる。
【0115】
基材に用いられる木材としては、オバンコール、ブビンガ、バーズアイメープル、カーリーメープル、ホワイトアッシュ、サペリマホガニー、タモ、スギ、ヒノキ、チェリー、およびチーク等が挙げられる。
【0116】
積層体の製造方法としては特に制限されず、第1〜第3の樹脂層とともに他の樹脂からなる基材(基材層)を上記した方法で多層成形する方法、本発明の積層シートを直接、任意材質の基材に熱ロールラミネートする方法、本発明の積層シートを押出ラミネート成形によって任意材質の基材上にコーティングする方法等が挙げられる。なお、本発明の積層シートを積層する基材の表面には、接着力を向上させるために、例えばコロナ放電処理等の公知の表面処理を予め施してもよい。
【0117】
本発明の積層体は例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、および屋上看板等の看板部品またはマーキングフィルム;ショーケース、仕切板、および店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、およびシャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、およびミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、およびFRP等の外装装飾部材;安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、およびレジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車内装/外装部材(サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、バンパー、サンルーフ、およびグレージング等)等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク;保育器およびレントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、および観察窓等の機器関係部品;液晶保護板、導光板、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面板、および拡散板等の光学関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、および防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク;パソコン、携帯電話、家具、自動販売機、および浴室部材等に用いる表面材料等が挙げられる。
【0118】
以上説明したように、本発明の積層シートは、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層と、スチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層と、アイオノマー(C)を含む第3の樹脂層とを備える。メタクリル系樹脂(A)と熱可塑性エラストマー(B)との接着性が良好であることから、本発明によれば、メタクリル系樹脂(A)を含む樹脂層とアイオノマー(C)を含む樹脂層とを備え、層間接着性および各種基材との接着性に優れた積層シートを提供することができる。
本発明によれば、メタクリル系樹脂(A)を含む樹脂層とアイオノマー(C)を含む樹脂層とを含み、層間接着性および各種基材との接着性に優れ、かつ、透明性が高く、表面硬度が高い積層シートを提供することも可能である。
本発明の積層シートは、メタクリル系樹脂(A)を含む樹脂層と熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層との接着性に優れるため、溶融共押出し等により好適に製造することができる。本発明の積層シートは表面保護シートまたは意匠性付与シート等として各種基材に積層することができ、各種基材と積層シートとの接着性に優れた積層体を提供することができる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明に係る製造例と実施例、および比較例について説明する。
【0120】
[評価項目および評価方法]
製造例、実施例、および比較例における評価項目および評価方法は、以下の通りである。
(重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn))
樹脂の重量平均分子量(Mw)、および、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、GPC法(ガスクロマトグラフィ法)により求めた。溶離液としてテトラヒドロフランを用いた。カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel SuperMultipore HZM−Mの2本とSuperHZ4000とを直列に繋いだものを用いた。GPC装置として、示差屈折率検出器(RI検出器)を備えた東ソー株式会社製のHLC−8320(品番)を使用した。測定対象樹脂4mgをテトラヒドロフラン5mlに溶解させて試料溶液を調製した。カラムオーブンの温度を40℃に設定し、溶離液流量0.35ml/分で、試料溶液20μlを装置内に注入して、クロマトグラムを測定した。分子量が400〜5000000の範囲内にある標準ポリスチレン10点をGPC測定し、保持時間と分子量との関係を示す検量線を作成した。この検量線に基づいて測定対象樹脂のMwおよびMw/Mnを決定した。
【0121】
(全光線透過率、ヘイズ)
単層シートまたは積層シートについて、分光色差計(日本電色工業(株)製「SE5000」)を使用し、JIS−K7361に準拠して全光線透過率およびヘイズを測定した。
全光線透過率が90%以上のものを良(○)、90%未満のものを不良(×)と判定した。また、ヘイズ値が5%未満のものを良(○)、5%以上のものを不良(×)と判定した。
なお、樹脂(組成物)の全光線透過率およびヘイズは、溶融状態の樹脂(組成物)を金型枠に入れ、230℃、50kg/cm
2にて5分間プレス成形して得られた厚さ1mmの単層シートについて、評価を実施した。
【0122】
(表面硬度(鉛筆引掻き硬度))
単層シートまたは積層シートについて、テーブル移動式鉛筆引掻き試験機(型式P)(東洋精機社製)を用いて、表面の鉛筆引掻き硬度(鉛筆硬度)を測定した。なお、積層シートの場合の評価表面は、表5に示す第1の樹脂層の表面とした。
角度45°、荷重750gの条件で、単層シートまたは積層シートの表面に鉛筆の芯を押し付けながら引っ掻き、引っ掻き傷の傷跡の有無を確認した。鉛筆の芯の硬度は順に増していき、傷跡を生じた時点よりも1段階軟かい芯の硬度を鉛筆硬度のデータとした。
鉛筆硬度がF以上のものを良(○)、F未満のものを不良(×)と判定した。
なお、樹脂(組成物)の鉛筆硬度は、溶融状態の樹脂(組成物)を金型枠に入れ、230℃、50kg/cm
2にて5分間プレス成形して得られた厚さ1mmの単層シートについて、評価を実施した。
【0123】
(ガラス転移温度(Tg))
樹脂(組成物)10mgを80℃で24時間乾燥した後、アルミパンに入れた。示差走査熱量計(TA Instruments社製「Q20」)を用い、30分以上窒素置換を行った後、10ml/分の窒素気流中、25℃から200℃まで20℃/分の速度で昇温し、200℃で10分間保持した後、25℃まで自然冷却した(1次走査)。次いで、10℃/分の速度で再度200℃まで昇温し(2次走査)、中点法にてガラス転移温度(Tg)を算出した。
【0124】
(層間接着力)
積層シートの90°剥離接着強さをJIS−K6854−1に準拠して測定した。積層シートを幅15mm、長さ150mmのサイズに切り出した。測定は、23℃、相対湿度50%環境下で24時間調温調湿されたサンプルについて、23℃、相対湿度50%の環境下で実施した。小型卓上試験機(SHIMADZU社製「EZ−SX」)を用い、引張速度300mm/minの条件で、少なくとも50mmの剥離が生じるまで測定を行い、得られた力−つかみ移動距離曲線から平均剥離力を求め、層間接着力を評価した。なお、剥離前に少なくとも1つの層が破断したもの、もしくは、層間接着が強固で剥離試験が実施不可能であったものに関しては、「剥離なし」と評価した。
【0125】
(基材に対する接着性)
実施例および比較例で得られた積層体において、基材と積層シートとの180°剥離接着強さをJIS−K6850に準拠して測定した。試験は、23℃、相対湿度50%環境下で24時間調温調湿した積層体について、23℃、相対湿度50%の環境下で実施した。島津製作所製「オートグラフAG−1S」を用い、引張速度50mm/minの条件で、引張りせん断接着強さ試験を実施し、下記基準にて目視評価した。
<評価基準>
良(○):接着強度が高く、接着界面で凝集破壊が生じた。
可(△):接着強度が比較的高く、接着界面で部分的に凝集破壊が生じた。
不可(×):接着強度が低く、接着界面で剥離が生じた。
【0126】
[樹脂原料]
以下の製造例、実施例、および比較例では、以下の樹脂を用いた。これらの樹脂の各種物性を表1および表2に示す。
(メタクリル系樹脂)
メタクリル系樹脂(A1):株式会社クラレ社製「パラペット」、メタクリル酸メチル(MMA)の単独重合体。
メタクリル系樹脂(A2):株式会社クラレ社製「パラペット」、メタクリル酸メチル(MMA)とアタクリル酸メチル(MA)との共重合体(MMA/MA(質量比)=86/14)。
メタクリル系樹脂(A3):株式会社クラレ社製「パラペット」、メタクリル酸メチル(MMA)とn−アクリル酸ブチル(BA)との共重合体(MMA/BA(質量比)=30/70)。
【0127】
(SMA樹脂(S))
SMA樹脂(S1):デンカ株式会社製「レジスファイ」、スチレン(St)と無水マレイン酸とメタクリル酸メチル(MMA)との共重合体(St/無水マレイン酸/MMA(質量比)=56/18/26))。
【0128】
(熱可塑性エラストマー(B))
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(B1):旭化成株式会社製「タフテック H1221」、スチレン(St)ブロックとエチレン・ブチレン(EB)ブロックとからなるブロック共重合体(Stブロック/EBブロック(質量比)=12/88。
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(B2):旭化成株式会社製「タフテック MP10」、スチレン(St)ブロックとエチレン・ブチレン(EB)ブロックとからなるブロック共重合体(Stブロック/EBブロック(質量比)=30/70、アミン変性グレード。
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(B3):後記製造例1で製造したα―メチルスチレン(MSt)ブロックとエチレン・ブチレン(EB)ブロックとからなるブロック共重合体(MStブロック/EBブロック(質量比)=33/67)。
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(B4):旭化成株式会社製「タフテック M1913」、スチレン(St)ブロックとエチレン・ブチレン(EB)ブロックとからなるブロック共重合体(Stブロック/EBブロック(質量比)=30/70、無水マレイン酸変性グレード)。
【0129】
(EMAA樹脂(E))
EMAA樹脂(E1):三井・デュポン ポリケミカル株式会社製「ニュクレル N1525」、エチレン−メタクリル酸ランダム共重合体。
【0130】
(ポリエステル系ブロック共重合体(F))
ポリエステル系ブロック共重合体からなるポリエステル系熱可塑性エラストマー(F1):東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル 4777」。
【0131】
(アイオノマー(C))
アイオノマー(C1):デュポン社製。
【0132】
[基材]
実施例および比較例では、下記に示す基材を使用した。
ガラス:フロートガラス板(日本板硝子株式会社製、厚さ5.0mm)、
金属:アルミニウム板(日本軽金属株式会社製5N材、厚さ0.3mm)、
セラミック:セメント板(ノザワ株式会社製「アスロック(登録商標)」、厚さ60mm)、
木材:天然木突板化粧合板(服部突板社製、厚さ2.5mm)、
ポリオレフィン:無延伸透明ポリプロピレンシート(出光ユニテック株式会社製「スーパーピュアレイ(登録商標)」、厚さ0.4mm)。
【0133】
[製造例1]
(1)窒素置換した撹拌装置付き耐圧容器に、α―メチルスチレン90.9g、シクロヘキサン138g、メチルシクロヘキサン15.2g、およびテトラヒドロフラン5.7gを仕込んだ。この混合液にsec−ブチルリチウム(1.3Mシクロヘキサン溶液)2.1mlを添加し、−10℃で3時間重合させた(ブロックA)。次いで、この反応混合液にブタジエン4.4gを添加し、−10℃で30分間撹拌後、シクロヘキサン930gを加えた(ブロックb1)。次に、この反応液にさらにブタジエン158.0gを加え、50℃で2時間重合反応を行った(ブロックb2)。この時点のサンプリングで得られたスチレン系ブロック共重合体(構造:A−b1−b2)の
1H−NMR測定から求めた1,4−結合量は53%であった。
(2)続いて、この重合反応溶液に、安息香酸フェニル(0.5Mトルエン溶液)2.7mlを加え、50℃にて1時間撹拌し、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレントリブロック共重合体を得た。
1H−NMR解析の結果、このトリブロック共重合体中のα−メチルスチレン重合体ブロック含有量は33%であり、ブタジエン重合体ブロック全体(すなわち、ブロックb1およびブロックb2)の1,4結合量は51%であった。
(3)上記(2)で得られた重合反応溶液中に、オクチル酸ニッケルおよびトリエチルアルミニウムから形成されたZiegler系水素添加触媒を水素雰囲気下に添加し、水素圧力0.8MPa、80℃で5時間の水素添加反応を行うことにより、α−メチルスチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物からなるスチレン系熱可塑性エラストマー(B3)を得た。なお、
1H−NMR測定から求めた、ブロックb1およびブロックb2から構成されるブタジエンブロックの水素転化率は99%であった。
【0134】
[製造例2、3]
表3に示す配合比でメタクリル系樹脂(A1)とSMA樹脂(S1)とを二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダ温度230℃で溶融混練して押出成形し、ペレット状のメタクリル系樹脂組成物(RA1)、(RA2)を得た。これらの樹脂組成物の物性を表3に示す。なお、ここでは便宜上、メタクリル系樹脂(A)を10質量%以上含む樹脂組成物を「メタクリル系樹脂組成物」と称している。
【0135】
[製造例4、5]
表4に示す配合比でスチレン系熱可塑性エラストマー(B3)とメタクリル系樹脂(A2)とを二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダ温度200℃で溶融混錬して押出成形し、ペレット状のスチレン系熱可塑性エラストマー組成物(RB1)、(RB2)を得た。これらの樹脂組成物の物性を表3に示す。
【0136】
[実施例1]
軸径50mmのベント式単軸押出機にメタクリル系樹脂(A1)のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度190〜230℃、吐出量20kg/hrの条件にて溶融押出した。軸径30mmのベント式単軸押出機にスチレン系熱可塑性エラストマー(B1)のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度130〜210℃、吐出量5kg/hrの条件にて溶融押出した。軸径30mmの単軸押出機にアイオノマー(C1)のペレットを連続的に投入し、シリンダ温度150〜190℃、吐出量5kg/時の条件にて溶融押出した。
上記の溶融状態のメタクリル系樹脂(A1)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B1)とアイオノマー(C1)とをジャンクションブロックに導入し、230℃に設定した幅300mmのマルチマニホールドダイより積層押出(共押出)し、40℃に設定したエンボスロールと100℃に設定した金属鏡面ロールとでニップすることでシート状に成形し、0.55m/minの速度にて引き取った。
以上のようにして、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層(厚さ2000μm)とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層(厚さ500μm)とアイオノマー(C)を含む第3の樹脂層(厚さ500μm)とが順次積層された3層構造の積層シート(総厚さ3000μm)を得た。得られた共押出成形積層シートの各層の組成を表5に示す。
また、別途、各種評価用に、鏡面仕上げの金型を用いプレス機により作製した同一3層構造のプレス成形積層シートを得た。プレス成形積層シートの全光線透過率、ヘイズ、および鉛筆硬度の評価結果を表5に示す。また、各層の層間接着性の評価結果を表6に示す。
さらに、得られた共押出成形積層シート(幅25mm、長さ100mm)と上記の各種基材(幅25mm、長さ100mm)とを、第3の樹脂層と基材とが隣接するように部分的に重ねて金型枠に入れ、230℃、50kg/cm
2の条件にて5分間プレスし、幅25mm、長さ175mmの積層体を得た。なお、重ね合わせ部の幅は25mm、長さは25mmとした。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0137】
[実施例2〜8]
第1〜第3の樹脂層の原料を変更した以外は実施例1と同様にして、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層とアイオノマー(C)を含む第3の樹脂層とが順次積層された3層構造の共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表5、表6に示す。また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0138】
[比較例1、2]
第1の樹脂層と第3の樹脂層との2層構造または第1の樹脂層と第2の樹脂層との2層構造とした以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表5、表6に示す。また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0139】
[比較例3]
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマー(B1)の代わりにEMAA樹脂(E1)を使用した以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表5、表6に示す。また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形積層シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0140】
[比較例4]
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマー(B1)の代わりにポリエステル系熱可塑性エラストマー(F1)を使用した以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表5、表6に示す。また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形積層シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0141】
[比較例5]
実施例1のメタクリル系樹脂(A1)の代わりにメタクリル系樹脂(A3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、共押出成形積層シートおよびプレス成形積層シートを作製し、評価した。各層の組成と評価結果を表5、表6に示す。また、実施例1と同様にして、得られた共押出成形積層シートと各種基材との積層体を得、評価した。積層シートと各種基材との接着性の評価結果を表7に示す。
【0142】
[評価結果のまとめ]
実施例1〜8では、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層とアイオノマー(C)を含む第3の樹脂層との3層構造の積層シートを得た。メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層との層間接着性が良好であった。実施例2、7、8の比較から、第1の樹脂層は、SMA樹脂(S)を添加することでSMA樹脂(S)に含まれる無水マレイン酸部位とスチレン系熱可塑性エラストマー(B2)に含まれるアミン部位との反応により、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層との層間接着性が向上することが分かった。また、実施例3、5、6の比較から、第2の樹脂層にメタクリル系樹脂(A)を添加することで、第2の樹脂層の透明性を保ちつつ、第1の樹脂層との層間接着性を高めることができることが分かった。実施例1〜4の比較から、第2の樹脂層にα−メチルスチレンブロックを有するスチレン系熱可塑性エラストマー(B3)を用いることで、第1の樹脂層との層間接着性を高めることができることが分かった。実施例1〜8の積層シートは、各層単体でもシート全体でも全光線透過率が90%以上であり、透明性も良好であった。アイオノマー(C)を含む第3の樹脂層は各種基材に対する接着性が良好であった。
【0143】
メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層とアイオノマー(C)を含む第3の樹脂層との2層構造の積層シートを得た比較例1では、積層シートの層間接着性が不良であった。
メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層とスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む第2の樹脂層との2層構造の積層シートを得た比較例2では、積層シートの各種基材への接着性が不良であった。
第2の樹脂層にEMAA樹脂(E)を用いた比較例3と第2の樹脂層にポリエステル系熱可塑性エラストマー(F)を用いた比較例4では、全光線透過率が90%未満、ヘイズが5%以上であり、透明性が不良であった。さらに、これら比較例3、4の第2の樹脂層は、メタクリル系樹脂(A)を含む第1の樹脂層との層間接着性が不良であった。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
【表6】
【0150】
【表7】
【0151】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
【0152】
この出願は、2016年5月6日に出願された日本出願特願2016−093033号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。