(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相中で、前記商CR/CAが時間的および空間的に常に0.70以下になるように、前記反応装置への2−メトキシエタノールの添加を時間的および空間的に選択することを特徴とする、請求項1記載の方法。
1〜5の2−メトキシエタノールに対する水の重量比率を使用し、ここで前記重量比率が、半連続的な方法では、使用された水および2−メトキシエタノールの総質量を基準とし、連続的な方法では、前記反応装置に供給された水および2−メトキシエタノールの質量流を基準とすることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
半連続的に実施され、かつ2−メトキシエタノールを1〜10時間の期間にわたり前記反応装置に供給することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
連続的に実施され、かつ2−メトキシエタノールおよび水の質量流が、前記反応装置における総反応器体積を基準として毎時0.05〜0.5になるように、2−メトキシエタノールおよび水を前記反応装置に供給することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
半連続的に実施され、かつ前記反応装置が、撹拌釜、トリクルベッド反応器および気泡塔反応器の群からの反応器を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
連続的に実施され、かつ前記反応装置が、撹拌釜カスケード、トリクルベッド反応器カスケード、カスケード化された気泡塔反応器およびカスケード化されたジェットループ反応器の群からの反応器を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置内にて、水および白金含有不均一系触媒の存在のもと、20〜100℃の温度および0.01〜2MPaの酸素分圧で、酸素により2−メトキシエタノールを酸化させることで2−メトキシ酢酸を製造する方法に関する。
【0002】
2−メトキシ酢酸は、化学合成において重要な中間生成物である。ホスゲンまたは塩化チオニルをハロゲン化することで、これらから、反応性の合成構成要素として、例えば2−メトキシ酢酸クロリドを得ることができるだろう。これは例えば、防かび剤の有効成分であるメタラキシルおよびオキサジキシルの合成において用いられる。
【0003】
2−メトキシ酢酸は、工業的には、例えば2−メトキシエタノールを触媒により酸化させることで入手可能である。
【化1】
【0004】
一般的に、米国特許第3,342,858号明細書(US3,342,858)には、水と、塩基、例えば水酸化ナトリウムと、白金含有触媒との存在のもと、7超のpH値で、相応するアルコキシエタノールを酸素で酸化させて、相応するアルコキシ酢酸塩を形成し、引き続き、酸、例えば塩酸を添加することでアルコキシ酢酸を遊離させ、酸性化した反応混合物からアルコキシ酢酸を蒸留により得ることでアルコキシ酢酸を製造することが記載されている。
【0005】
この方法の欠点は、相応するアルコキシ酢酸塩を中間生成物として形成し、引き続きアルコキシ酢酸を後の工程で遊離させるという非常に手間のかかる反応の構想である。この手法には、塩基と、続いて助剤としての酸とを、それぞれ化学量論的な尺度で添加することが必要とされる。添加された塩基と添加された酸とから必然的に形成される塩は、処理に手間がかかる。それに加えて、アルコキシ酢酸を単離するのに、分留が必要とされる。アルコキシ酢酸の収率は、50〜90%だけである。
【0006】
西独国特許出願公開第2936123号明細書(DE2936123A)では、水および白金含有触媒の存在のもと、7以下のpH値で、相応するアルコキシエタノールを酸素で酸化させて、アルコキシ酢酸を反応混合物中で直接形成することによりアルコキシ酢酸を製造することが教示されている。西独国特許出願公開第2936123号明細書(DE2936123A)の例は、非連続的な反応の実施および連続的な反応の実施の双方に関する。
【0007】
このドイツ語文献の例1における非連続的な反応の実施において、15%の2−メトキシエタノール水溶液と、活性炭に担持させたPtを5%有する触媒とをガラス管に予め装入し、標準圧力および45℃で酸素を貫流させた。これにより、95%の2−メトキシ酢酸の収率が達成された。
【0008】
このドイツ語文献の例4における連続的な反応の実施において、数週間にわたり、0.5MPaおよび48〜53℃で、一定の20%の2−メトキシエタノール水溶液流を、酸素と一緒に、活性炭に担持させたPtを10%有する触媒が存在するステンレス鋼管に通した。反応混合物の凝縮可能な割合を分析すると、2−メトキシ酢酸の収率は、転化した2−メトキシエタノールを基準として90%超であると検出された。これは計算上、転化した2−メトキシエタノールを基準として10%までの副生成物が形成されたことに相当する。
【0009】
この方法の欠点は、副生成物の割合が明らかに高いことであり、これは、一方で出発物質の損失を表し、他方で反応混合物の煩雑な後処理を必要とする。
【0010】
同様に、中国特許出願公開第104892390号明細書(CN104892390A)には、水および触媒としてのPt/Cの存在のもと、酸素で2−メトキシエタノールを酸化させることにより2−メトキシ酢酸を製造することが開示されている。例1〜5には、非連続的な方法の実施が記載されており、ここでPt/C触媒および2−メトキシエタノール水溶液を、32.4〜49.0重量%の範囲にある2−メトキシエタノール濃度でそれぞれ反応器に予め装入し、引き続き、圧力、温度および反応時間を変えながら、酸素で転化させた。得られた反応混合物を真空でそれぞれ蒸留して、2−メトキシ酢酸を単離した。それぞれ99%の純度が得られた。収率は91〜96%の範囲にあった。
【0011】
この方法の欠点は、少なくとも99%の純度を得るために、2−メトキシ酢酸を蒸留により分離する必要があることである。
【0012】
本発明によると、2−メトキシエタノールを触媒により酸化させて2−メトキシ酢酸にする際の実質的な副反応が、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの形成であることが確認された。
【化2】
【0013】
よって、本発明の範囲において、従来技術による方法の場合に、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの含量が比較的高い2−メトキシエタノールが得られることが判明した。2−メトキシエタノールの合計量が反応器に予め装入されている、非連続的な操作における実験的な比較例では、例えば、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの含量が2.6重量%である2−メトキシエタノール排出物が得られた(比較例1)。
【0014】
しかしながら、2−メトキシ酢酸の使用次第では、より低いパーセント範囲にある残留量のメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルですでに障害となる。よって、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの含量が1.5重量%以下である2−メトキシ酢酸を得ることは非常に有益である。
【0015】
沸点の観点から、水(100hPaで沸点46℃)および転化していない2−メトキシエタノール(100hPaで沸点54℃)は、比較的容易に2−メトキシ酢酸(100hPaで沸点125℃)から分離可能であるが、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステル(100hPaで沸点123℃)からは分離可能ではない。というのも、沸点が2−メトキシ酢酸よりも僅かだけ下回っているからである。メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルを2−メトキシ酢酸から蒸留により分離することは、極めて手間がかかり、非常に多くの理論段数を有する蒸留塔および高い還流比の調整が必要となるだろう。それに加えて、このようなカラムの操作は、比較的エネルギー消費が激しいだろう。さらに、理論段数が非常に多く、還流比が高いにもかかわらず、目的生成物である2−メトキシ酢酸の損失が予測される。過小評価すべきではない2−メトキシ酢酸の不利な特性は、水との結合におけるその腐食性である。よって、精製塔も耐食性の素材から成る必要があり、これは、塔の準備費が高くなることを意味する。形成されたメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルは、原料である2−メトキシエタノールおよび目的生成物である2−メトキシ酢酸の直接の損失も少なからず意味する。
【0016】
西独国特許出願公開第3345807号明細書(DE3345807A)においても、2−メトキシ酢酸とメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルとを含有する混合物から2−メトキシ酢酸を蒸留により得ることの問題点がすでに認識されていた。このドイツ語文献は、全く異なる分離法、すなわち、2−メトキシ酢酸を8.5℃未満の温度でゆっくりと晶出させることを解決策として提案している。それにより、4重量%のメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルを有する溶液から、99.8重量%の純度で2−メトキシ酢酸を得ることもできる。メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルは、母液中に残留する。
【0017】
西独国特許出願公開第3345807号明細書(DE3345807A)において提案された方法により、2−メトキシ酢酸を高純度で得ることは可能になるが、それでも結晶化装置内でのさらなる方法工程が必要とされる。結晶化装置の用意および結晶化の実施費用のみならず、この方法では、溶液全体を8.5℃未満の温度に冷却するために、冷却媒体を激しいエネルギー消費を伴って用意する必要もある。したがって、この方法は、実施するには比較的手間がかかり、エネルギー消費が激しい。
【0018】
よって、本発明の課題は、従来技術の欠点を回避し、かつ容易に入手可能な使用物質に基づき、かつ容易に実施可能あり、かつ2−メトキシ酢酸をできるだけ高い選択率、収率および純度で形成し、かつ殊に副生成物であるメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルを従来技術による方法よりも著しく少ない量で生成する、2−メトキシ酢酸を製造する方法を見つけることであった。さらに、本方法は、従来技術に比べてメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの形成が少なく、そのため2−メトキシ酢酸に対する選択率がより高いにもかかわらず、できるだけ少ない反応体積で済むため、理想的には、2−メトキシ酢酸の濃度ができるだけ高い反応混合物を提供することが望ましい。さらに、本方法は、できるだけ容易な反応混合物の後処理を可能にすることが望ましい。
【0019】
反応装置内にて、水および白金含有不均一系触媒の存在のもと、20〜100℃の温度および0.01〜2MPaの酸素分圧で、酸素により2−メトキシエタノールを酸化させることで2−メトキシ酢酸を製造する方法であって、半連続的または連続的に実施され、かつ反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相中で、商CR/CAが時間的および空間的に常に0.80以下になるように、反応装置への2−メトキシエタノールの添加を時間的および空間的に選択し、
ここでCRが、
【数1】
[式中、C(2メトキシエタノール反応器)は、2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相の体積要素あたりの2−メトキシエタノールの質量を表し、C(水反応器)は、2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相の体積要素あたりの水の質量を表す]
と規定され、
半連続的な方法については、CAが、
【数2】
[式中、MT(2メトキシエタノール総質量)は、半連続的な方法で使用された2−メトキシエタノールの総質量を表し、MT(水総質量)は、半連続的な方法で使用された水の総質量を表す]
と規定され、
連続的な方法については、CAが、
【数3】
[式中、MF(2メトキシエタノール質量流)は、反応装置に供給された2−メトキシエタノールの質量流を表し、MF(水質量流)は、反応装置に供給された水の質量流を表す]
と規定される方法が見つかったことは驚くべきことである。
【0020】
従来技術による公知の方法に比べて、本発明による方法は、同じ添加量の2−メトキシエタノールおよび同じ反応器体積で、2−メトキシ酢酸の純度がより高く、かつ殊に不所望なメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの含量が著しくより低い反応混合物をもたらす。この驚くべき結果は、2−メトキシエタノールを本発明により添加することで達成され、ここで、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相中で、商CR/CAが時間的および空間的に常に0.80以下になるように、2−メトキシエタノールを反応装置に時間的および空間的に添加する。
【0021】
反応装置とは、冷却または加熱に必要な熱交換装置と、反応混合物を部分的に返送するための装置とを含む反応器または場合によって複数の互いに接続された反応器を備える装置のユニットであると理解される。
【0022】
値CRは、
【数4】
と規定され、
式中、C(2メトキシエタノール反応器)は、2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相の体積要素あたりの2−メトキシエタノールの質量を表し、C(水反応器)は、2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相の体積要素あたりの水の質量を表す。したがって、値CRは、反応装置内の2−メトキシエタノールおよび水の濃度を基準とする、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相における2−メトキシエタノールの濃度である。よって、CRは、2−メトキシエタノールおよび水の質量を基準とする2−メトキシエタノールの質量に相応する。よって、値CRは基本的に、時間および場所に応じる。反応の進み次第で、各濃度C(2メトキシエタノール反応器)およびC(水反応器)が、反応時間および反応装置内の場所に応じて変化し、したがって、値CRも変化する。
【0023】
値CAの場合、方法を半連続的に実施するか、連続的に実施するかで区別する。
【0024】
半連続的な実施に特徴的なのは、反応の間に特定量の2−メトキシエタノールを反応装置に添加することであり、ここでこの期間には、反応混合物を反応装置から取り出さない。2−メトキシエタノールの合計量を反応の間に添加しても、特定の部分量を始めに予め装入して、残りの量だけを反応の間に添加してもよい。水については、合計量を始めに反応装置内に予め装入しても、少なくともその一部を予め装入してもよく、ここで残りの部分は、反応の間に供給される。半連続的な方法を実施する場合、反応装置内の液体量は、2−メトキシエタノールおよび場合によって水を添加することにより増加する。その後、引き続き反応混合物を反応装置から取り出してもよい。よって、半連続的な方法は、個々の充填(またはバッチとも称される)で実施される。半連続的な方法について、CAは、
【数5】
と規定され、
式中、MT(2メトキシエタノール総質量)は、半連続的な方法で使用された2−メトキシエタノールの総質量を表し、MT(水総質量)は、半連続的な方法で使用された水の総質量を表す。すなわち、半連続的な方法において、値CAは、各充填において使用された2−メトキシエタノールおよび水の総質量を基準とする、各充填において使用された2−メトキシエタノールの総質量である。当然のことながら、使用された2−メトキシエタノールの総質量には、場合によって反応器内に予め装入されている2−メトキシエタノールの質量も含まれる。水について、予め装入されている水の質量および場合によって添加される水の質量のどちらも考慮されるが、形成された反応水は考慮されない。
【0025】
連続的な実施に特徴的なのは、時間平均で連続的に2−メトキシエタノールおよび水を反応装置に添加すること、ならびに時間平均で連続的に反応混合物を反応装置から取り出すことである。連続的な方法において、CAは、
【数6】
と規定され、
式中、MF(2メトキシエタノール質量流)は、反応装置に供給された2−メトキシエタノールの質量流を表し、MF(水質量流)は、反応装置に供給された水の質量流を表す。反応装置は、反応混合物を部分的に返送し得る装置をすでに備える装置のユニットと理解されるため、よって、反応混合物を場合によって部分的に返送することで返送された2−メトキシエタノールおよび/または水の流は、MF(2メトキシエタノール質量流)にも、MF(水質量流)にも含有されていない。すなわち、連続的な方法において、値CAは、時間単位あたりに反応装置に新たに供給された2−メトキシエタノールおよび水の質量を基準とする、時間単位あたりに反応装置に新たに供給された2−メトキシエタノールの質量である。同様に、反応の間に形成された水は、CAの計算において考慮されない。
【0026】
2−メトキシエタノールの反応装置への相応する時間的および空間的な添加は、本発明による方法の成功に重要である。「時間的」とは、反応における添加が時間的に分配されていることを指し、「空間的」とは、反応装置における添加場所を指す。「常に」という表現は、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相における記載した商CR/CAの上限が、あらゆる場所においても(すなわち空間的に)、方法の実施全体にわたっても(すなわち時間的にも)遵守されていることを明確にしている。
【0027】
時間的に分配された添加は例えば、特定量の2−メトキシエタノールが特定の期間にわたり反応装置に供給されるように行うことができる。その際、例えば、これらの期間にわたり連続的または断続的に供給を行うことができる。同様に、例えば、この期間にわたって時間単位あたりに増加または減少する量も可能であり、ここで当然のことながら、増加量および減少量は、入れ替わってもよい。
【0028】
時間的に分配された添加は、半連続的な方法において行われることが好ましい。添加を特定の期間に分配し、これまでに添加した2−メトキシエタノールを部分的に化学変換させることで、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相における商CR/CAを、反応の推移にわたって0.80以下の値に維持することができる。それに比べて、従来技術による非連続的な方法において、反応開始時に2−メトキシエタノールの合計量を完全に添加すると、商CR/CAは計算上1になるだろう。
【0029】
空間的に分配された添加は例えば、2−メトキシエタノールが、反応装置の特定の場所に供給されるように、または反応装置の様々な場所に分配して供給されるように行うことができる。
【0030】
連続的な方法においては、空間的に分配された添加を行うことが好ましい。空間的な反応の推移に沿って様々な添加場所を介して添加を連続的に分配し、各添加箇所の前ですでに添加された2−メトキシエタノールを部分的に化学変換させることで、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相における商CR/CAを、反応の推移にわたって0.80以下の値に維持することができる。それに比べて、従来技術による連続的な方法では、2−メトキシエタノールが1箇所でしか添加されない直線状の通路において、反応の推移の空間的な開始点で、すなわち2−メトキシ酢酸が初めて形成される箇所で、商CR/CAは、計算上1になるだろう。
【0031】
CRの時間的および空間的な推移は、半連続的および連続的な方法の実施のどちらの場合においても、例えば単純な実験により事前に実験的に求めても、公知の反応速度論において事前に計算してもよい。実験的に求める場合、例えば2−メトキシエタノールおよび水の濃度を、様々な場所および様々な時間で、反応の推移にわたって反応装置内で分析的に求めることができる。定量的な分析は、所望の場所においてオンラインで行っても、試料を採取して引き続きオフライン分析で行ってもよい。2−メトキシエタノール、2−メトキシ酢酸および水は、例えば、ガスクロマトグラフィー、IR分光法、NIR分光法または
1H−NMR分光法により定量的に求めることができる。2−メトキシ酢酸を定量的に求めるためには、伝導性測定、誘電率測定およびインピーダンス測定も考えられる。オンライン分析により、実際の反応の推移の追跡が可能になり、それにより、反応における反応条件、例えば、温度、酸素分圧または時間単位および場所あたりの2−メトキシエタノールの添加量を手動または自動で適合させることも可能になる。オンライン分析については、IR分光法およびNIR分光法、伝導性測定、誘電率測定、ならびにインピーダンス測定が殊に適している。しかしながら、反応における反応条件を適合させるためには、2−メトキシエタノール、2−メトキシ酢酸および水の濃度をそれぞれ求めることは必ずしも必要ではない。そのためには、多くの場合、間接的に反応の推移の尺度となる特徴的な測定値、例えば、電気伝導性、誘電率またはインピーダンスをオンライン測定すれば十分である。この測定値により、例えば、2−メトキシエタノールの添加を制御する自動制御ループを調節することができる。反応の推移のさらなる間接的な追跡は、生じた熱を測定することによっても可能である。いわゆる熱量測定または熱平衡は例えば、半連続的な方法の追跡において使用されるのが有利であり得る。
【0032】
しかしながら、値CAは、半連続的な方法においては添加すべき2−メトキシエタノールおよび水の総量により、連続的な方法においては添加すべき2−メトキシエタノールおよび水の質量流により予め定められている。
【0033】
本発明による方法において、反応装置内の2−メトキシエタノールと2−メトキシ酢酸とを含有する液相中で、商CR/CAが時間的および空間的に常に0.75以下、特に好ましくは常に0.70以下、極めて特に好ましくは常に0.60以下になるように、反応装置への2−メトキシエタノールの添加を時間的および空間的に選択することが好ましい。基本的に、時間的および空間的な反応の推移にわたる商CR/CAが低いほど、より少ないメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルが形成される。
【0034】
しかしながら全体的に見ると、できるだけ高い空時収率を得るためには、商CR/CAが、本発明の範囲におけるできるだけ上の範囲にあるように、すなわち実質的に0.80までであるように、2−メトキシエタノールの添加を時間的および空間的に選択することが有利である。当然のことながら、反応の推移が進むにつれて商CR/CAは減少し、計算上、2−メトキシエタノールが完全に転化すると、0になるだろう。しかしながら、反応時間があまりに長くなるのを防止するために、さらに以下で幾つかの段落に記載されているように、2−メトキシエタノールにおいて特定の転化率が達成されたら反応を中断する。その際、商CR/CAは、通常0〜0.1、好ましくは0〜0.05、特に好ましくは0〜0.02の範囲にある。
【0035】
本発明の教示とは異なり、例えば西独国特許出願公開第2936123号明細書(DE2936123A)の例1では、方法は非連続的に実施され、2−メトキシエタノールの合計量は、酸素を反応器に添加する前に予め装入される。したがって、商CR/CAは、転化の始めに1であった。反応を非連続的に実施する中国特許出願公開第104892390号明細書(CN104892390A)の例1〜5においても同様に、商CR/CAは、転化の始めに1であった。
【0036】
西独国特許出願公開第2936123号明細書(DE2936123A)の例4では、方法は連続的に実施され、2−メトキシエタノール水溶液は酸素と一緒にステンレス鋼管に通された。したがって、商CR/CAは、開始側で同様に1であった。
【0037】
よって、本発明による方法は、従来技術から著しく際立っている。
【0038】
本発明による方法において添加すべき2−メトキシエタノールを、純物質として、またはさらなる成分と混合して反応装置に供給することができる。さらなる成分を選択する際に、反応の実施に対して不利な影響を及ぼし、かつ/または反応混合物からの分離に非常に手間がかかる成分を回避することが有利であるものとする。できるだけ単純な後処理を保証するためには、2−メトキシエタノールを、99重量%以上、特に好ましくは99.5重量%以上、極めて特に好ましくは99.8重量%以上のできるだけ高い純度で使用することが有利である。
【0039】
2−メトキシエタノールを本発明により酸化させる際に水が化学量論量で形成されるとしても、すでに反応の始めに水を溶媒として供給して、2−メトキシエタノールを希釈溶液中に用意する。これは例えば、すでに反応の始めに、水または水と2−メトキシエタノールとの混合物が予め装入されるように行ってもよい。これは通常、例えば半連続的な方法の場合に該当する。連続的な方法では、2−メトキシエタノールおよび水を連続的に供給することが一般的である。反応の実施に応じて、2−メトキシエタノールおよび水を別々に供給しても、一緒に2−メトキシエタノール水溶液として供給してもよい。
【0040】
2−メトキシエタノールに対する水の重量比率は、半連続的な方法では、使用された水および2−メトキシエタノールの総質量を基準として、また連続的な方法では、反応装置に供給された水および2−メトキシエタノールの質量流を基準として、それぞれ、通常1.5以上、好ましくは2以上、かつ通常10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0041】
基本的には、本発明による方法をさらなる溶媒の存在下で実施してもよい。この溶媒は、当反応条件において不活性であり、かつ引き続き容易に分離可能であるべきである。しかしながら、単純な反応実施および後処理、ならびに2−メトキシエタノールをできるだけ高い純度で得るという目的の観点から、さらなる溶媒を添加しないことが有利である。
【0042】
酸素を、純粋な形態で添加するか、その他のガスで希釈して、例えば、空気またはO
2/N
2混合物の形態で添加する。所定の酸素分圧で気体体積をできるだけ小さく維持するためには、酸素含量ができるだけ高いガスを使用することが有利である。よって、酸素含有ガスを、90体積%以上、特に好ましくは95体積%以上、極めて特に好ましくは99体積%以上、殊に99.5体積%以上の含量で用いることが好ましい。
【0043】
本発明による方法において、酸素分圧は、0.01〜2MPa、好ましくは0.02MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上、かつ好ましくは1MPa以下、特に好ましくは0.3MPa以下である。
【0044】
2−メトキシエタノールの本発明による酸化は、20〜100℃、好ましくは30℃以上、特に好ましくは40℃以上、かつ好ましくは80℃以下、特に好ましくは60℃以下の温度で行われる。
【0045】
本発明による方法において用いるべき不均一系触媒は、触媒活性成分として白金を含有する。通常、白金は担体に固定されている。
【0046】
担体としては、様々な材料を使用することができる。例としては、無機酸化物、例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムのような無機ケイ酸塩、炭素またはポリマーが挙げられる。当然のことながら、様々な担体材料の混合物も使用することができる。炭素を担体として使用することが好ましい。
【0047】
触媒は、白金を、それぞれ不均一系触媒の総質量を基準として、0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5重量%以上、極めて特に好ましくは1重量%以上、かつ特に好ましくは8重量%以下、極めて特に好ましくは6重量%以下含有する。
【0048】
本発明による方法において、炭素に担持させた白金を0.1〜10重量%含有する不均一系触媒白金を使用することが特に好ましい。
【0049】
不均一系担持触媒は、様々な幾何学的形態および大きさで、例えば粉末または成形体として使用可能である。粉末状の触媒を、例えば懸濁式で用いることができる。固定床式の場合、成形体、例えば、顆粒、円柱、中空円柱、球体または押出成形物を用いることが好ましい。通常、成形体は、公知の方法により反応器内に固定されている。触媒成形体の場合、これは、平均粒径が1〜10mmであることが好ましい。
【0050】
しかしながら、粉末の形態にある触媒を用いることが好ましい。粉末状の触媒は、反応器内で懸濁液中に存在する。ここで、反応系からの排出を防止するためには、懸濁触媒を保持するためのフィルタを用いることが一般的である。一般的に適したフィルタの例としては、クロスフローフィルタが挙げられる。
【0051】
触媒粒子の幾何学的形態および大きさにかかわらず、白金は、X線回折で測定して、一般的に平均直径が0.1〜50nmである粒子の形態で存在する。しかしながら、より小さなまたはより大きな粒子が存在していてもよい。
【0052】
不均質な担持触媒を製造する場合、白金は、適切な方法により担体に施与されることが一般的である。
【0053】
その際、白金は、適切な塩の溶液から担体に施与されることが一般的である。適切な白金塩は例えば、水性媒体または酸性の水性媒体に可溶かつpH値の上昇により白金化合物を沈殿させることができるものである。適切な白金塩の好ましい例としては、硝酸白金(II)、塩化白金(IV)およびヘキサクロロ白金酸六水和物が挙げられる。
【0054】
pH値を上昇させる手段としては、殊にアルカリ金属塩、例えばアルカリ金属炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウムの水溶液が考えられる。
【0055】
不溶性または難溶性の白金化合物を施与するためには、基本的に様々な方法が可能である。好ましい実施形態において、担体は、適切な装置、例えば回転式ドラムまたは撹拌容器内において、上澄液、例えば水中に予め装入され、これに、白金塩溶液およびpH値を上昇させる溶液が添加される。その際、まず白金塩を添加して、引き続きpH値を上昇させる溶液を添加しても、まずpH値を上昇させる溶液を添加して、引き続き白金塩を添加しても、これら双方を交互または同時に添加してもよい。
【0056】
担体を水に予め装入し、pH値を上昇させる溶液でpH値を調整して、白金塩が不溶性または難溶性の白金化合物として沈殿する値にすることが好ましい。引き続き、混合しながら白金塩溶液を添加し、ここでpH値は、pH値を上昇させる溶液を、白金塩が不溶性または難溶性の白金化合物として沈殿する範囲でさらに添加することで維持される。添加すべき液体の総量と担体との間の重量比率は、一般的に1〜100の値にある。
【0057】
沈殿を行った後に、白金化合物含有担体を単離し、乾燥させ、水素で処理して白金を還元させる。その際、還元は、純粋な水素を用いて実施しても、不活性ガスで希釈した水素を用いて実施してもよい。適切な不活性ガスは、例えば窒素または希ガスである。
【0058】
含浸の場合、適切な白金塩の溶液を、適切な装置、例えば回転式混合ドラム内で担体に噴霧する。その際、噴霧すべき白金塩溶液の総量は、予め装入された担体の液体吸収量であるか、またはこれを下回ることが好ましい。含浸の場合、熱処理により残渣なく元素の白金に変換する白金塩を用いることが好ましい。含浸のために好ましい白金塩は、例えば硝酸白金(II)およびヘキサクロロ白金酸である。
【0059】
不均一系担持触媒は、DIN ISO 9277:2014−01により求めて、BET表面積が、一般的に1m
2/g以上10000m
2/g以下である。炭素を担体として使用する場合、BET表面積は、500m
2/g以上10000m
2/g以下であることが好ましい。
【0060】
本発明による方法において基本的には、1つの同じ反応装置内で様々な触媒を空間的な反応の推移に沿って使用してもよい。よって例えば、カスケード化または区分された反応器内で、一部を固定床触媒により、その他の部分を懸濁触媒により操作することさえできる。用いるべき触媒量の観点から、本発明による方法は、非常に柔軟である。基本的には、白金の含量が多いほど触媒活性が高くなると言えるため、基本的には、時間単位あたりにより多くの2−メトキシエタノールを転化させることができる。半連続的な方法において、反応装置内に存在する白金の量に対する、使用された2−メトキシエタノールの総量のモル比は、1〜10000、好ましくは10以上、特に好ましくは100以上、かつ好ましくは5000以下、特に好ましくは1000以下である。連続的な方法において、反応装置内に存在する白金の量に対する、時間単位あたりに反応装置に供給される2−メトキシエタノールの量のモル比は、毎時1〜500、好ましくは毎時5以上、特に好ましくは毎時20以上、かつ好ましくは毎時300以下、特に好ましくは毎時200以下である。
【0061】
半連続的な方法では、通常1〜10時間、好ましくは2時間以上、かつ好ましくは6時間以下の期間をかけて2−メトキシエタノールを反応装置に供給する。しかしながら、必要に応じて、ここに挙げた時間の値からの著しいずれがあってもよい。また、2−メトキシエタノールの添加量は、不規則に、例えば、断続的に、増加するように、減少するように、または増減するように行ってもよいことに言及したい。反応の推移にわたる商CR/CAの時間的および空間的な推移については、上記の実施形態を参照されたい。2−メトキシエタノールの添加終了後に、一般的には、これまでにまだ転化していない2−メトキシエタノールをさらに後反応させるために、反応混合物をさらなる一定の期間にわたり反応条件で静置し、それに引き続き、さらに後処理をする。半連続的な方法において、反応開始後の合計反応時間は、通常2〜20時間、好ましくは9時間以上、かつ好ましくは14時間以下である。
【0062】
連続的な方法において、2−メトキシエタノールおよび水の質量流が、反応装置における総反応器体積を基準として、通常毎時0.05〜0.5、好ましくは毎時0.11以下、かつ好ましくは毎時0.07以上であるように、2−メトキシエタノールおよび水を反応装置に供給する。
【0063】
反応時間は、主に所望の転化率に応じる。反応時間以外同等の条件において、反応時間が長いほど、基本的に2−メトキシエタノールの転化率も高い。しかしながら、転化していない2−メトキシエタノールは、比較的容易に分離されて、再び返送されるか、または後続のバッチにおいて再利用され得るため、効率的な方法の実施という意味合いにおいては、完全な転化率を目指すのではなく、意図的に部分転化率を狙うことが極めて有利である。それにより、時間単位および反応器体積あたりにより高い転化率の2−メトキシエタノールが達成される。この理由から、80〜99%、好ましくは90%以上、特に好ましくは93%以上、かつ好ましくは98%以下、特に好ましくは97%以下の2−メトキシエタノールの転化率のみを目指すことが有利である。
【0064】
本発明による方法において、反応装置内の反応器としては、基本的に、不均一系触媒による発熱性の気液反応の実施に適し、かつ半連続的または連続的に操作可能な反応装置が考えられる。例としては、撹拌釜、トリクルベッド反応器、気泡塔反応器、ジェットループ反応器およびここに挙げた反応器のカスケードが挙げられる。半連続的な方法においては、撹拌釜、トリクルベッド反応器および気泡塔反応器が好ましく、連続的な方法においては、撹拌釜カスケード、トリクルベッド反応器カスケード、カスケード化された気泡塔反応器およびカスケード化されたジェットループ反応器が好ましい。連続的な方法において通常使用される反応器カスケードは、一般的に2〜10個、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個の直列式に接続された反応器を含む。カスケード化された気泡塔反応器またはカスケード化されたジェットループ反応器の場合、これらは、一般的に2〜8個、好ましくは2〜5個、特に好ましくは2または3個の直列式に配置された区画を含む。
【0065】
冒頭ですでに述べたように、反応器により、または複数の反応器を、熱交換器と、反応混合物を部分的に返送するためのいずれかの装置と一緒に接続することにより、いわゆる反応装置が形成される。
【0066】
2−メトキシ酢酸水溶液の腐食性が高いことを理由に、2−メトキシ酢酸水溶液と直接接触している反応装置または少なくともその一部を耐食性原料から作製することが推奨される。適切な原料は、例えば高合金ステンレス鋼、ニッケル系合金、チタンまたはチタン−パラジウム合金、ジルコンまたはタンタルである。高合金化されたステンレス鋼を使用することが好ましい。場合によって、関連する装置の一部のライニングも代替的に可能である。例えば、耐酸性プラスチックまたはエナメルが考えられる。
【0067】
通常、反応装置は熱交換装置を備える。熱交換装置は、反応の始めに加熱すること、および反応の間に生じた熱を排出することに役立ち、したがって、所望の反応温度を維持するのに役立つ。構成に応じて、熱交換装置は、反応器の内部にあっても、外部にあってもよい。熱交換装置が内部に存在する場合、これは通常、熱交換チューブまたは熱交換プレートである。反応器の外部に存在する熱交換装置を使用することが特に有利である。その際、操作においては、液体流を反応器から連続的に取り出し、外部の熱交換装置に通し、その後、反応器に再び返送する。内部または外部の熱交換装置であるか否かにかかわらず、この熱交換装置は、反応の推移の間に生じた熱を最大限に排出することもでき、したがって所望の反応温度を上回らないように寸法決めされていることが有利である。
【0068】
圧力を維持するために、かつ場合によって過酸化により生成し得る排ガス、例えば二酸化炭素、または酸素含有ガスの供給により導入される不活性ガスを選択的に除去するために、反応装置は圧力保持弁を含むことが好ましい。この圧力保持弁により、反応の圧力が所望の最大値に制限され、最大値に達したら、排ガスが反応装置から排出される。
【0069】
本発明による方法で得られた反応混合物は、生成された2−メトキシ酢酸のみならず、当然のことながら、水、転化していない2−メトキシエタノール、少量のメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルおよび少量のさらなる副生成物を含有する。この反応混合物を、できるだけ純粋な2−メトキシ酢酸を得るために、引き続き後処理する。その際に、本発明の大きな利点が示される。2−メトキシエタノールを本発明により反応装置に添加することで、2−メトキシ酢酸は、著しくより低い含量の不所望なメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルとともに形成されるため、多くの場合、得られた反応混合物から、低沸点物質である水および2−メトキシエタノールを蒸発により除去するだけで十分である。本発明によると、それにより得られた2−メトキシ酢酸は、少量のメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルしか含有せず、しばしば、さらなる精製なしで、後の反応において合成構成要素として直接用いることができる。
【0070】
低沸点物質である水および2−メトキシエタノールの蒸発を、例えばSambay蒸発器または蒸留塔内で行うことができる。場合によっては、使用される反応器の構造に応じて、低沸点物質である水および2−メトキシエタノールの蒸発を、反応終了後に反応器内で直接実施することさえできる。低沸点物質である水および2−メトキシエタノールの蒸発をできるだけ低いエネルギー投入量で実施するために、好ましくは標準圧力または負圧で、特に好ましくは負圧で蒸発を実施する。
【0071】
しかしながら、なお一層純粋な2−メトキシ酢酸を得ることが望ましい場合、低沸点物質である水および2−メトキシエタノールの蒸発後に得られる生成物をさらに精製してもよい。2−メトキシ酢酸およびメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの蒸留による分離は、その沸点が非常に類似していることを理由に、比較的手間がかかるため、まず代替的な方法を考慮する。代替的な可能性としては、例えば西独国特許出願公開第3345807号明細書(DE3345807A)に記載の結晶化がある。
【0072】
低沸点物質である水および2−メトキシエタノールを単純に蒸発させることで、2−メトキシ酢酸を、すでに99重量%以上の純度で得ることができる。反応装置への2−メトキシエタノールの添加の実施に応じて、より単純なやり方で99.5重量%以上の純度も可能である。商CR/CAが低いほど、より少ないメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルが基本的に形成され、2−メトキシ酢酸がより純粋になる。
【0073】
以下では、本発明による方法の幾つかの可能な実施形態について説明されている。
図1〜7では、以下の略語を用いる:
A 2−メトキシエタノール(場合によって水溶液として)
B 酸素
C 水
M 反応混合物
Z 排ガス(圧力制御済み)。
【0074】
半連続的な方法の実施は、撹拌釜、トリクルベッド反応器または気泡塔反応器内で行われることが好ましい。
【0075】
図1aおよび1bは、撹拌釜を使用した半連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。熱交換装置は、
図1aでは撹拌釜の内部に存在しており、
図1bでは撹拌釜の外部に存在している。撹拌釜は、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式での操作が好ましい。通常、反応の始めに、水および触媒を撹拌釜に予め装入する。それに加えて、すでに始めに、用いるべき2−メトキシエタノールの一部を予め装入してもよい。そして、反応装置を反応条件に設定して、すなわち、殊に混合しながら所望の温度に設定して、酸素で加圧して所望の酸素分圧を調整する。その後、添加すべき2−メトキシエタノールの総質量が供給管またはノズルを通して供給されるまで、2−メトキシエタノールを時間的に分配する。変形例に応じて、2−メトキシエタノール水溶液を供給することも可能である。所望の酸素分圧を維持するために、反応の間に酸素を後から計量供給する。同様に、酸素の供給は、例えば供給管またはノズルを通して行ってもよい。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。2−メトキシエタノールの添加終了後は、後反応のために、よって転化率の上昇のために、反応混合物を特定の時間にわたり反応条件下で静置することが基本的に有利である。引き続き、基本的には、反応装置を放圧させ、空にして、反応混合物を後処理する。
【0076】
図2は、トリクルベッド反応器を使用した半連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。トリクルベッド反応器は、外部の熱交換器を備えることが有利である。トリクルベッド反応器は、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式の場合、不活性のばら状充填材(Schuettung)または不活性の充填材構造物(Packung)がトリクルベッドとしての役割を果たす。固定床式で操作することが好ましい。通常、反応の始めに、水および触媒をトリクルベッド反応器に予め装入する。そして、反応装置を反応条件に設定して、すなわち、殊に外部の熱交換回路により所望の温度に設定して、酸素で加圧して所望の酸素分圧を調整する。その後、添加すべき2−メトキシエタノールの総質量が反応装置に供給されるまで、2−メトキシエタノールを時間的に分配する。熱交換回路を理由に液相が実質的に完全に逆混合されているため、基本的には、2−メトキシエタノールをどこでも反応装置に計量供給することができる。しかしながら、熱交換回路において供給を行うことが好ましい。変形例に応じて、2−メトキシエタノール水溶液を供給することも可能である。所望の酸素分圧を維持するために、反応の間に酸素を後から計量供給する。酸素の供給は、トリクルベッドの下で行うことが好ましい。しかしながら、代替的には、酸素をその他の箇所でも、例えば反応器の頂部でも供給してもよい。所望の酸素分圧を維持するために、反応の間に必要に応じて酸素を後から計量供給する。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。反応の実施の間、トリクルベッドの上に存在するノズルを介してトリクルベッドに注入を行い、このノズルより、外部の熱交換回路からの反応混合物が流れる。トリクルベッド反応器の操作において、液位はトリクルベッドの下にある。底部領域と称される領域から、熱交換回路のために流を取り出す。2−メトキシエタノールの添加終了後は、後反応のために、よって転化率の上昇のために、反応混合物を特定の時間にわたり反応条件下で静置することが基本的に有利である。引き続き、基本的には、反応装置を放圧させ、空にして、反応混合物を後処理する。
【0077】
図3は、気泡塔反応器を使用した半連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。気泡塔反応器も同様に、外部の熱交換器を備えることが有利である。気泡塔反応器も、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式の場合、不活性のばら状充填材または不活性の充填材構造物を混合要素として任意で使用してもよい。固定床式で操作することが好ましい。通常、反応の始めに、水および触媒を気泡塔反応器に予め装入する。そして、反応装置を反応条件に設定して、すなわち、殊に外部の熱交換回路により所望の温度に設定して、酸素で加圧して所望の酸素分圧を調整する。その後、添加すべき2−メトキシエタノールの総質量が反応装置に供給されるまで、2−メトキシエタノールを時間的に分配する。熱交換回路を理由に液相が実質的に完全に逆混合されているため、基本的には、2−メトキシエタノールをどこでも反応装置に計量供給することができる。しかしながら、熱交換回路において供給を行うことが好ましい。変形例に応じて、2−メトキシエタノール水溶液を供給することも可能である。所望の酸素分圧を維持するために、反応の間に酸素を後から計量供給する。酸素の供給は、混合要素の下に取り付けられた1つまたは複数のノズルを介して行われる。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。通常、液状の反応混合物は、気泡塔反応器の下部領域から取り出され、外部の熱交換回路に貫流させた後に、混合要素の上に再び返送される。気泡塔反応器の操作において、液位は混合要素の上にある。2−メトキシエタノールの添加終了後は、後反応のために、よって転化率の上昇のために、反応混合物を特定の時間にわたり反応条件下で静置することが基本的に有利である。引き続き、基本的には、反応装置を放圧させ、空にして、反応混合物を後処理する。
【0078】
連続的な実施は、撹拌釜カスケード、トリクルベッド反応器カスケード、カスケード化された気泡塔反応器またはカスケード化されたジェットループ反応器内で行われることが好ましい。
【0079】
図4aは、撹拌釜カスケードを使用した連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。この撹拌釜カスケードは、複数の直列式に接続された撹拌釜から成る。基本的に、個々の撹拌釜の熱交換装置は、各撹拌釜の内部に存在していても、外部に存在していてもよい。各熱交換装置は、外部の回路に存在していることが好ましい。撹拌釜カスケードは、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式での操作が好ましい。この場合、懸濁触媒を含む各撹拌釜の排出物は、懸濁触媒を各撹拌釜内に保持するために、クロスフローフィルタを介して取り出されることが好ましい。通常、反応の始めに、水および触媒を撹拌釜に予め装入する。それに加えて、始めに、2−メトキシエタノールをすでに幾らか、例えば第一の撹拌釜内に予め装入してもよい。そして、反応装置を反応条件に設定して、すなわち、殊に混合しながら所望の温度に設定して、酸素で加圧して所望の酸素分圧を調整する。そして、2−メトキシエタノール、酸素および水を連続的に反応装置に供給する。酸素を個々の撹拌釜にそれぞれ供給することが好ましい。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。2−メトキシエタノールの供給は、第一の撹拌釜から、最後から2つ目の撹拌釜までにおいて空間的に分配して行われる。通常、最後の撹拌釜は、後反応域としての役割を果たし、よって、一般的に2−メトキシエタノールは添加されない。そして、水を第一の撹拌釜においてのみ供給することが好ましい。反応混合物をそれぞれ連続的に撹拌釜から取り出し、後続の撹拌釜に供給する。反応混合物を最後の撹拌釜から連続的に取り出し、基本的には、放圧させ、後処理する。
【0080】
撹拌釜カスケードの幾らか修正された実施形態は、カスケード化された撹拌釜である。
図4bは、カスケード化された撹拌釜を使用した連続的な方法を実施するための反応装置を大幅に単純化して示す。このカスケード化された撹拌釜は、反応容器内に、複数の直列式に接続された撹拌釜の区画を含み、この区画はそれぞれ、次の区画への余水路を備える。基本的に、個々の区画の熱交換装置は、各区画の内部に存在していても、外部に存在していてもよい。各熱交換装置は、外部の回路に存在していることが好ましい。カスケード化された撹拌釜は、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式での操作が好ましい。この場合、懸濁触媒を含む各区画の排出物は、懸濁触媒を各区画内に保持するために、クロスフローフィルタを介して取り出されることが好ましい。2−メトキシエタノールおよび水の添加は、基本的に撹拌釜カスケードの場合と同じように行われる。最後の区画は、後反応に役立ち、よって、一般的に2−メトキシエタノールは添加されない。しかしながら、カスケード化された撹拌釜の場合、撹拌釜カスケードとは反対に、通常は酸素を中央箇所で計量供給する。よって一般的には、中央での圧力保持で十分である。反応混合物を最後の区画から連続的に取り出し、基本的には、放圧させ、後処理する。
【0081】
図5は、トリクルベッド反応器カスケードを使用した連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。このトリクルベッド反応器カスケードは、好ましくは外部の熱交換回路を有する複数の直列式に接続されたトリクルベッド反応器から成る。トリクルベッド反応器の基本的な構造および操作は、すでに半連続的な操作において記載されている。トリクルベッド反応器カスケードも、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。固定床式での操作が好ましい。2−メトキシエタノール、酸素および水を連続的に反応装置に供給する。酸素を個々のトリクルベッド反応器にそれぞれ供給することが好ましい。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。2−メトキシエタノールの供給は、第一のトリクルベッド反応器から、最後から2つ目のトリクルベッド反応器までにおいて空間的に分配して行われる。通常、最後のトリクルベッド反応器は、後反応域としての役割を果たし、よって、一般的に2−メトキシエタノールは添加されない。水を第一のトリクルベッド反応器においてのみ供給することが好ましい。反応混合物をそれぞれ連続的にトリクルベッド反応器から取り出し、後続のトリクルベッド反応器に供給する。反応混合物を最後のトリクルベッド反応器から連続的に取り出し、基本的には、放圧させ、後処理する。
【0082】
図6は、カスケード化された気泡塔反応器を使用した連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。このカスケード化された気泡塔反応器は、気泡塔反応器と同じように構築されているが、複数の直列式に接続された気泡塔の区画を含む。通常、これらの区画は、適切な分離装置、例えば穿孔板により互いに分離されている。これらは、下から上昇してくる酸素および液状の反応混合物のどちらも透過可能であるが、流れの抵抗となり、逆混合を低減する。個々の区画において、それぞれ不均一系触媒が存在する。カスケード化された気泡塔反応器は、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。懸濁式の場合、不活性のばら状充填材または不活性の充填材構造物がそれぞれ混合要素としての役割を果たす。固定床式での操作が好ましい。一番上の区画は例外として、それぞれ各混合要素の上で反応混合物を取り除き、熱交換回路に通し、各混合要素の下で再び返送する。一番上の区画は、後反応域としての役割を果たし、冷却を必要としない。2−メトキシエタノール、酸素および水を反応装置に連続的に供給する。1つまたは複数のノズルを介して、第一の混合要素の下で酸素を供給する。2−メトキシエタノールの供給は、第一の区画から、最後から2つ目の区画の各熱交換回路を介して空間的に分配して行われる。熱交換回路を理由に液相が実質的に完全に逆混合されているため、基本的には、2−メトキシエタノールを各区画の内部でどこでも計量供給することができる。水は、第一の区画の下においてのみ供給されることが好ましい。カスケード化された気泡塔反応器の操作において、液位は、一番上の混合要素の上にある。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。最後の混合要素の上において、反応混合物を連続的に取り出し、基本的には、放圧させ、後処理する。
【0083】
図7は、カスケード化されたジェットループ反応器を使用した連続的な方法を実施するために用いられ得る反応装置を大幅に単純化して示す。このカスケード化されたジェットループ反応器は、ジェットループ反応器と同じように構築されているが、複数の直列式に接続されたジェットループの区画を含み、ここで一番上の区画は、ジェットループ内部構造物なしで備えられており、かつ後反応域としての役割を果たす。通常、個々の区画は、適切な分離装置、例えば穿孔板により互いに分離されている。これらは、流れの抵抗になり、逆混合を低減する。ジェットループ反応器について一般的であるように、ジェットループ内部構造物は、ジェットノズル、パルス管および偏向板をそれぞれ含む。カスケード化されたジェットループ反応器の場合、反応混合物はそれぞれ、偏向板の下で取り出され、熱交換回路を介して通され、新たに供給された酸素と一緒に、パルス管内に存在するジェットノズルにより返送されるため、各ジェットループ区画の内部で激しい混合が保証される。個々の区画において、それぞれ不均一系触媒が存在する。カスケード化されたジェットループ反応器は、懸濁式および固定床式のどちらにおいても操作可能である。固定床式での操作が好ましい。固定床式での操作の場合、触媒は、パルス管と反応器壁との間の環状領域に固定されている。後反応域において、最も単純な場合には、触媒が古典的な固定床の形態で周囲のジェットループ内部構造物なしで存在する(図示される)。しかしながら、代替的には、後反応域においても、ジェットループ内部構造物は外部の回路ポンプと一緒に存在していてもよく、触媒は、パルス管と反応器壁との間の環状領域に固定されて存在していてもよい。いずれにせよ、懸濁式の場合には、後反応域を能動的に混合することも保証すべきである。これは例えば、外部の回路ポンプを有する機械的撹拌機またはジェットループ内部構造物により達成可能である。カスケード化されたジェットループ反応器が懸濁式で操作されるか、固定床式で操作されるかにかかわらず、2−メトキシエタノールは、後反応域を除いて、各ジェットループ区画へと空間的に供給される。熱交換回路および激しい混合を理由に液相が各ジェットループ区画において実質的に完全に逆混合されているため、基本的には、2−メトキシエタノールを各区画の内部でどこでも計量供給することができる。水は、第一の区画の下においてのみ供給されることが好ましい。カスケード化されたジェットループ反応器の操作において、液位は、一番上の混合要素の上にある。余分なガスを、例えば圧力を維持することで排出することができる。一番上の区画の上部領域から反応混合物を連続的に取り出すが、液位の下で取り出し、基本的には、放圧させ、後処理する。
【0084】
本発明による方法により、2−メトキシ酢酸を、高い選択率、収率および純度で製造することが可能になる。本方法は、実施が容易であり、容易に入手可能な使用物質である2−メトキシエタノールに基づく。本発明により得られる2−メトキシ酢酸は、従来技術により製造された2−メトキシ酢酸よりも著しく高い純度で得られる。本発明により得られる2−メトキシ酢酸は殊に、著しくより少ない量の不所望な副生成物であるメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルを含有する。さらに、本発明による方法は、2−メトキシ酢酸に対する選択率がより高く、メトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの形成がより少ないにもかかわらず、2−メトキシエタノールおよび2−メトキシ酢酸についてより集中した操作を可能にし、したがって、より小さな反応器体積の使用を可能にする。副生成物、殊にメトキシ酢酸−2−メトキシエチルエステルの形成がより少ないこと、およびより集中した操作によって、装置面でより単純かつエネルギー消費の少ない後処理が可能になる。それに加えて、得られる2−メトキシ酢酸は、色価がより少なくなる。