(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836243
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年2月24日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20210215BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20210215BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20210215BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20210215BHJP
【FI】
H02M3/155 F
H02M7/48 A
H02M3/155 U
H02J50/12
H02J7/00 302A
H02J7/00 301D
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-84564(P2017-84564)
(22)【出願日】2017年4月21日
(65)【公開番号】特開2018-183012(P2018-183012A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100163511
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 啓太
(72)【発明者】
【氏名】大森 洋一
(72)【発明者】
【氏名】穐吉 啓史
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】居村 岳広
(72)【発明者】
【氏名】竹内 琢磨
【審査官】
佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/133301(WO,A1)
【文献】
特開2005−295680(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/076806(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0049674(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155,7/48
H02J 7/00,50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリが設けられた一次側と電動機が設けられた二次側との間でワイヤレス電力伝送を行う電力変換装置であって、
一次側直流コンデンサと、
共振周波数fを有する一次共振回路と、
前記バッテリと前記一次側直流コンデンサとの間に接続された昇降圧形DC−DCコンバータと、
前記一次側直流コンデンサと前記一次共振回路との間に接続され、前記共振周波数fと同じ周波数の電圧V1を前記一次共振回路に出力する一次側単相インバータと、
前記一次共振回路と同じ共振周波数fを有し、前記一次共振回路と磁気的に結合した二次共振回路と、
二次側直流コンデンサと、
キャパシタと、
前記二次共振回路と前記二次側直流コンデンサとの間に接続され、前記共振周波数fと同じ周波数の電圧V2を前記二次共振回路に出力する二次側単相インバータと、
前記二次側直流コンデンサと前記電動機との間に接続された三相インバータと、
前記二次側直流コンデンサと前記キャパシタとの間に接続された昇圧形DC−DCコンバータと、
前記二次側直流コンデンサの電圧E2を指示する電圧指令E2*に前記電圧E2が追従するような電流Icが前記キャパシタに流れるように前記昇圧形DC−DCコンバータを制御する二次側制御部と、を備えることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
一次側無線機と、
前記一次側無線機と無線通信を行う二次側無線機と、
前記電動機のトルクを指示するトルク指令T*を前記一次側無線機に前記二次側無線機へ送信される一次側制御部と、をさらに備え、
前記二次側制御部は、前記二次側単相インバータに流れる電流I2の位相と、前記電圧E2と、前記キャパシタの電圧E3と、前記電流Icと、前記電動機の速度ωと、前記二次側無線機を介して受信したトルク指令T*とに基づき、前記二次側単相インバータ、前記三相インバータおよび前記昇圧形DC−DCコンバータを制御するとともに、前記電圧V1を指示する電圧指令V1*を生成し、前記二次側無線機に前記一次側無線機へ送信させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電力変換装置において、
前記二次側制御部は、前記電圧E3と前記電圧E3を指示する電圧指令E3
*との偏差に基づき、前記一次共振回路と前記二次共振回路との間で伝送される電力Pを指示する電力指令P
*を生成し、前記速度ωの最大値ωmaxと、前記電圧E3の最大値E3maxと、前記電圧E3の最小値E3minとに基づき、前記電圧指令E3
*を式(1),(2)に従い算出することを特徴とする電力変換装置。
【数1】
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
前記二次側制御部は、前記一次共振回路と前記二次共振回路との相互インダクタンスMと、前記電力指令P
*の絶対値|P
*|と、所定値である基本パルス幅比率αrとに基づき、前記電圧指令V1
*を式(3),(4)に従い算出し、前記算出した電圧指令V1
*が所定値以上となるように制限することを特徴とする電力変換装置。
【数2】
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置において、
前記二次側制御部は、前記電圧指令V1
*を前記一次側無線機と前記二次側無線機との通信時間だけ遅延させた電圧指令V1LPF
*に基づき、前記電圧V2のパルス幅比率αを以下の式(5)に従い算出し、
前記二次側単相インバータは、前記パルス幅比率αが正の場合には、前記電圧V1の位相を前記電流I2と同位相とし、前記パルス幅比率αが負の場合には、前記電圧V1の位相を前記電流I2と逆位相として、前記パルス幅比率αに応じた大きさの前記電圧V2を出力することを特徴とする電力変換装置。
【数3】
【請求項6】
請求項2から5のいずれか一項に記載の電力変換装置において、
外部受電用共振回路と、
前記外部受電用共振回路と前記二次側直流コンデンサとの間に接続された単相コンバータとをさらに備え、
前記一次側無線機は、前記バッテリの充電率を前記二次側無線機へ送信し、
前記二次側制御部は、前記二次側無線機を介して受信した充電率が所定値以上である場合には、前記外部受電用共振回路からの電力が遮断されるように前記単相コンバータを制御し、前記充電率が所定値未満であれば、前記外部受電用共振回路からの電力を受電するように前記単相コンバータの動作を制御することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに接続された一次側と、電動機に接続された二次側との間でワイヤレス電力伝送を行う電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケーブルを用いず、無線にて電力を伝送するワイヤレス電力伝送が注目されている。ワイヤレス電力伝送の適用例の1つとして、車両のホイール側に駆動源(電動機)を配置し、車体側からホイール側に無線で電力を伝送し、駆動源を駆動するシステムがある。このようなシステムは、ワイヤレスインホイールモータ駆動システムと称される(非特許文献1,2参照)。
【0003】
図7は、上述したようなワイヤレス電力伝送に適用される電力変換装置1Aの構成例を示す図である。
図7に示す電力変換装置1Aは、バッテリ2が設けられた一次側と電動機3が設けられた二次側との間でワイヤレス電力伝送を行い、バッテリ2の直流電力を三相交流電力に変換して電動機3に供給するものである。
【0004】
図7に示す電力変換装置1Aは、昇降圧形DC−DCコンバータ11と、一次側直流コンデンサ12と、一次側単相インバータ13と、一次共振回路14と、一次側無線機17と、一次側マイコン18Aと、二次共振回路21と、二次側単相インバータ24と、二次側直流コンデンサ25と、三相インバータ26と、電流検出器27と、電圧検出器28と、速度検出器29と、位相検出器41と、二次側無線機42と、二次側マイコン43Aとを備える。昇降圧形DC−DCコンバータ11、一次側直流コンデンサ12、一次側単相インバータ13、一次共振回路14、一次側無線機17および一次側マイコン18Aは、一次側に設けられている。また、二次共振回路21、二次側単相インバータ24、二次側直流コンデンサ25、三相インバータ26、電流検出器27、電圧検出器28、速度検出器29、位相検出器41、二次側無線機42および二次側マイコン43Aは、二次側に設けられている。
【0005】
バッテリ2と一次側直流コンデンサ12との間に、昇降圧形DC−DCコンバータ11が接続される。また、一次側直流コンデンサ12と一次共振回路14との間に一次側単相インバータ13が接続される。一次共振回路14は、コンデンサ15とインダクタ16とが直列接続されて構成され、共振周波数fを有する。
【0006】
一次側単相インバータ13は、ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q1〜Q4からなる。スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2とが直列に接続され、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4とが直列に接続される。スイッチング素子Q1,Q2からなる直列体と、スイッチング素子Q3,Q4からなる直列体とが一次側直流コンデンサ12に並列に接続される。また、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2との接続点、および、スイッチング素子Q3とスイッチング素子Q4との接続点が一次共振回路14に接続される。一次側単相インバータ13は、一次側直流コンデンサ12の電圧E1を一次共振回路14の共振周波数fと同じ周波数の電圧V1に変換して、一次共振回路14に出力する。
【0007】
一次側無線機17は、一次側マイコン18Aの制御に従い、二次側無線機42と無線通信を行う。
【0008】
一次側マイコン18Aは、電動機3のトルクを指示するトルク指令T
*が入力され、昇降圧形DC−DCコンバータ11および一次側単相インバータ13を構成するスイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号を出力する。また、一次側マイコン18Aは、トルク指令T
*を一次側無線機17に二次側無線機42へ送信させる。
【0009】
二次共振回路21と二次側直流コンデンサ25との間に、二次側単相インバータ24が接続される。二次共振回路21は、インダクタ22とコンデンサ23とが直列接続されて構成される。二次共振回路21は、一次共振回路14と同じ共振周波数fを有し、一次共振回路14と磁気的に結合している。
【0010】
二次側単相インバータ24は、ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q5〜Q8からなる。スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6とが直列に接続され、スイッチング素子Q7とスイッチング素子Q8とが直列に接続される。スイッチング素子Q5,Q6からなる直列体と、スイッチング素子Q7,Q8からなる直列体とが二次側直流コンデンサ25に並列に接続される。また、スイッチング素子Q5とスイッチング素子Q6との接続点、および、スイッチング素子Q7とスイッチング素子Q8との接続点が二次共振回路21に接続される。二次側単相インバータ24は、二次側直流コンデンサ25の電圧E2を二次共振回路21の共振周波数fと同じ周波数の電圧V2に変換して、二次共振回路21に出力する。
【0011】
二次側直流コンデンサ25と電動機3との間に、三相インバータ26が接続される。三相インバータ26は、二次側直流コンデンサ25の電圧E2を三相交流電圧に変換して、電動機3に出力する。
【0012】
電流検出器27は、二次側単相インバータ24に流れる電流I2を検出し、検出結果を位相検出器41に出力する。電圧検出器28は、二次側直流コンデンサ25の電圧E2を検出し、検出結果を二次側マイコン43Aに出力する。速度検出器29は、電動機3の速度ωを検出し、検出結果を二次側マイコン43Aに出力する。
【0013】
二次側無線機42は、二次側マイコン43Aの制御に従い、一次側無線機17と無線通信を行う。
【0014】
位相検出器41は、電流検出器27により検出された電流I2の位相を検出し、検出結果を二次側マイコン43Aに出力する。二次側マイコン43Aは、電圧検出器28により検出された電圧E2と、速度検出器29により検出された速度ωと、位相検出器41により検出された電流I2の位相と、二次側無線機42を介して受信したトルク指令T
*とに基づき、二次側単相インバータ24および三相インバータ26を構成するスイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号を生成する。
【0015】
図8は、非特許文献1に記載されている電圧E2に応じたスイッチング素子Q5,Q7のゲート信号G5,G7,電流I2および電流V2の波形例を示す図である。なお、図示していないが、スイッチング素子Q6,Q8のゲート信号はそれぞれ、ゲート信号G5,G7を反転させた信号である。
【0016】
電流I2は、一次共振回路14と二次共振回路21との相互インダクタンスM、共振周波数fおよび電圧V1を用いて、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0017】
式(1)において、例えば、電圧V1を固定すると、電流I2は固定値となる。電動機3が力行状態であり、電圧E2が所定値E2’より小さい場合、二次側単相インバータ24から電流I2と同位相の電圧V2が出力されるように、スイッチング素子Q5,Q7のゲート信号G5,G7が制御される。電流I2と同位相の電圧V2が出力されることで、二次側直流コンデンサ25が充電され、電圧E2が上昇する。そして、電圧E2が所定値E2’を超えると、二次側単相インバータ24から出力される電圧V2が0となるように、ゲート信号G5,G7が制御される。電圧V2が0となることで、二次側直流コンデンサ25の充電が停止される。
【0018】
電動機3が回生状態となると、電圧E2が上昇する。そして、電圧E2が所定値E2’’を超えると、二次側単相インバータ24から電流I2と逆位相の電圧V2が出力されるように、ゲート信号G5,G7が制御される。電流I2と逆位相の電圧V2が出力されることで、二次側直流コンデンサ25が放電され、電圧E2が低下する。このようにして、二次側直流コンデンサ25の電圧E2は所定の範囲内に制御される。
【0019】
図9は、非特許文献2に記載されている、ゲート信号G5,G7の位相をシフトさせる位相シフト方式におけるゲート信号G5,G7、電流I2および電流V2の波形例を示す図である。
【0020】
非特許文献2に記載されている位相シフト方式においては、
図9に示すように、ゲート信号G5の立ち上がりを、Ts/4(Tsは電流I2の一周期の時間)からαTs/4だけ進んだタイミングとし、ゲート信号G7の立ち上がりをTs/4からαTs/4だけ遅れたタイミングとする。ただし、−1≦α≦1である。
【0021】
ゲート信号G5,G7の立ち上がりをシフトさせることで、α≧0では、電流I2が正のとき、電圧V2はαTs/2のパルス幅で大きさがE2となり、電流I2が負のとき、電圧V2はαTs/2のパルス幅で大きさが−E2となる。したがって、電圧V2の位相は電流I2の位相と一致し、二次側直流コンデンサ25が充電される。
【0022】
α<0の場合、電流I2が正のとき、電圧V2はαTs/2のパルス幅で大きさが−E2となり、電流I2が負のとき、電圧V2はαTs/2のパルス幅で大きさがE2となる。したがって、電圧V2は電流I2の位相が反転した波形となり、二次側直流コンデンサ25が放電される。なお、上述したように、電流I2の一周期に占める電圧V2のパルス幅は、αに応じた値となる。以下では、αをパルス幅比率と称する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Motoki Sato, Giuseppe Guidi, Takehiro Imura, Hiroshi Fujimoto, “Model for Loss Calculation Wireless In-Wheel Motor Concept Based on Magnetic Resonant Coupling”, IEEE Workshop on Control and Modeling for Power Electronics COMPEL 2016, 2016
【非特許文献2】Motoki Sato, Giuseppe Guidi, Takehiro Imura, Hiroshi Fujimoto, “Experimental Verification for Wireless In-Wheel Motor using Synchronous Rectifiaction with Magnetic Resonance Coupling”, International Electric Vehicle Technology Conference & Automotive Power Electronics Japan 2016, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
図7に示す電力変換装置1Aに非特許文献1,2に記載されている方法を適用することで、バッテリ2と電動機3との間で双方向に給電を行うことができる。しかしながら、
図7に示す電力変換装置1Aにおいては、バッテリ2と電動機3との間で電力伝送を行う際に常に、昇降圧形DC−DCコンバータ11、一次側単相インバータ13、一次共振回路14、二次共振回路21、二次側単相インバータ24、三相インバータ26といった複数の電力変換器および共振回路を介するため、電力の伝送効率が悪くなるという問題がある。
【0025】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、一次側と二次側との間でワイヤレス電力伝送を行う際の電力の伝送効率の向上を図ることができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、本発明に係る電力変換装置は、バッテリが設けられた一次側と電動機が設けられた二次側との間でワイヤレス電力伝送を行う電力変換装置であって、一次側直流コンデンサと、共振周波数fを有する一次共振回路と、前記バッテリと前記一次側直流コンデンサとの間に接続された昇降圧形DC−DCコンバータと、前記一次側直流コンデンサと前記一次共振回路との間に接続され、前記共振周波数fと同じ周波数の電圧V1を前記一次共振回路に出力する一次側単相インバータと、前記一次共振回路と同じ共振周波数fを有し、前記一次共振回路と磁気的に結合した二次共振回路と、二次側直流コンデンサと、キャパシタと、前記二次共振回路と前記二次側直流コンデンサとの間に接続され、前記共振周波数fと同じ周波数の電圧V2を前記二次共振回路に出力する二次側単相インバータと、前記二次側直流コンデンサと前記電動機との間に接続された三相インバータと、前記二次側直流コンデンサと前記キャパシタとの間に接続された昇圧形DC−DCコンバータと、前記二次側直流コンデンサの電圧E2を指示する電圧指令E2
*に前記電圧E2が追従するような電流Icが前記キャパシタに流れるように前記昇圧形DC−DCコンバータを制御する二次側制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る電力変換装置によれば、一次側と二次側との間でワイヤレス電力伝送を行う際の電力の伝送効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態に電力変換装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図1に示す二次側マイコンが備えるデューティ演算ブロックの構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す二次側マイコンが備える電力指令演算ブロックの構成例を示す図である。
【
図5】
図1に示す二次側マイコンが備える電圧指令・パルス幅比率演算ブロックを示す図である。
【
図6】
図5に示す電圧指令・パルス幅比率演算ブロックが算出する電圧指令V1
*およびパルス幅比率αの波形例を示す図である。
【
図7】従来の電力変換装置の構成例を示す図である。
【
図8】従来の電力変換装置における電流I2、ゲート信号G5,G7および電圧V2の波形の一例を示す図である。
【
図9】従来の電力変換装置における電流I2、ゲート信号G5,G7および電圧V2の波形の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る電力変換装置1の構成例を示す図である。なお、
図1において、
図7と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る電力変換装置1は、例えば、電気自動車に搭載され、一次側(バッテリ2が設けられた本体側または地上に設けられた外部共振回路)と、電動機3が設けられた二次側(車輪側)との間でワイヤレス電力伝送を行い、ワイヤレス電力伝送により得られた電力を三相交流電力に変換して電動機3に供給するものである。なお、非特許文献1には、地上に設けられた外部共振回路から電気自動車にワイヤレス電力伝送を行うことが記載されているが、具体的な回路構成や制御方法については記載されていない。
【0032】
図1に示す電力変換装置1は、
図7に示す電力変換装置1Aと比較して、外部受電用共振回路31、単相コンバータ34、昇圧形DC−DCコンバータ35、キャパシタ37、電流検出器38および電圧検出器39を追加した点と、一次側マイコン18Aおよび二次側マイコン43Aをそれぞれ、一次側マイコン18(一次側制御部)および二次側マイコン43(二次側制御部)に変更した点とが異なる。外部受電用共振回路31、単相コンバータ34、昇圧形DC−DCコンバータ35、キャパシタ37、電流検出器38および電圧検出器39は、二次側に設けられる。
【0033】
外部受電用共振回路31と二次側直流コンデンサ25との間に単相コンバータ34が接続されている。外部受電用共振回路31は、インダクタ32とコンデンサ33とが直列接続されて構成される。外部受電用共振回路31は、地上に設けられた外部共振回路(図示せず)との間でワイヤレス電力伝送を行う。
【0034】
単相コンバータ34は、ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q9〜Q12からなる。スイッチング素子Q9とスイッチング素子Q10とが直列に接続され、スイッチング素子Q11とスイッチング素子Q12とが直列に接続される。スイッチング素子Q9,Q10からなる直列体と、スイッチング素子Q11,Q12からなる直列体とが二次側直流コンデンサ25に並列に接続される。また、スイッチング素子Q9とスイッチング素子Q10との接続点、および、スイッチング素子Q11とスイッチング素子Q12との接続点が外部受電用共振回路31に接続される。
【0035】
キャパシタ37と二次側直流コンデンサ25との間に昇圧形DC−DCコンバータ35が接続されている。昇圧形DC−DCコンバータ35は、ダイオードがそれぞれ逆並列接続されたスイッチング素子Q13,Q14と、インダクタ36とを備える。スイッチング素子Q13とスイッチング素子Q14とが直列に接続され、スイッチング素子Q13とスイッチング素子Q14との直列体が二次側直流コンデンサ25に並列に接続される。また、スイッチング素子Q13とスイッチング素子Q14との接続点にインダクタ36の一端が接続される。キャパシタ37は、一端にはインダクタ36の他端が接続され、他端にはスイッチング素子Q14のスイッチング素子Q13と接続された一端とは異なる他端が接続される。
【0036】
電流検出器38は、キャパシタ37に流れる電流Icを検出し、検出結果を二次側マイコン43に出力する。電圧検出器39は、キャパシタ37の電圧E3を検出し、検出結果を二次側マイコン43に出力する。
【0037】
一次側マイコン18は、昇降圧形DC−DCコンバータ11および一次側単相インバータ13を構成するスイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号を出力する。また、一次側マイコン18は、バッテリ2の充電率SOC(State of Charge)を算出し、算出した充電率SOCおよびトルク指令T
*を一次側無線機17に二次側無線機42へ送信させる。
【0038】
二次側マイコン43は、電圧検出器28により検出された電圧E2と、速度検出器29により検出された速度ωと、電流検出器38により検出された電流Icと、電圧検出器39により検出された電圧E3と、位相検出器41により検出された電流I2の位相と、二次側無線機42が一次側無線機17から受信したトルク指令T
*および充電率SOCとが入力される。二次側マイコン43は、これらの入力に基づき、二次側単相インバータ24、三相インバータ26、単相コンバータ34および昇圧形DC−DCコンバータ35それぞれを構成するスイッチング素子のオンオフを制御するゲート信号を生成する。また、二次側マイコン43は、電圧V1を指示する電圧指令V1
*と、電圧V2のパルス幅比率αとを算出する。そして、二次側マイコン43は、算出した電圧指令V1
*を二次側無線機42に一次側無線機17へ送信させる。また、二次側マイコン43は、算出したパルス幅比率αに応じた電圧V2が出力されるように二次側単相インバータ24を制御する。
【0039】
一次側マイコン18は、一次側無線機17が二次側無線機42から受信した電圧指令V1
*に応じた電圧V1が出力されるように、一次側単相インバータ13を制御する。
【0040】
次に、二次側マイコン43の構成および動作についてより詳細に説明する。
【0041】
図2は、昇圧形DC−DCコンバータ35を構成するスイッチング素子Q13,Q14のスイッチングのデューティDchを演算するデューティ演算ブロック50の構成例を示す図である。
図2に示すデューティ演算ブロック50は、二次側マイコン43が備えるものである。
【0042】
図2に示すデューティ演算ブロック50は、減算器51,53と、PI制御部52,54とを備える。
【0043】
減算器51は、電圧検出器28により検出された電圧E2と、電圧E2を指示する電圧指令E2
*とが入力され、電圧指令E2
*と電圧E2との偏差をPI制御部52に出力する。
【0044】
PI制御部52は、PI(Proportional Integral)制御により、減算器51から出力された電圧指令E2
*と電圧E2との偏差がゼロとなるような電流Icを指示する電流指令Ic
*を生成し、減算器53に出力する。
【0045】
減算器53は、PI制御部52から出力された電流指令Ic
*と、電流検出器38により検出された電流Icとが入力され、電流Icと電流指令Ic
*との偏差をPI制御部54に出力する。
【0046】
PI制御部54は、PI制御により、減算器53から出力された電流Icと電流指令Ic
*との偏差がゼロとなるようなデューティDchを生成する。
【0047】
二次側マイコン43は、スイッチング素子Q13のゲート信号G13として、PI制御部54が生成したデューティDchに応じたゲート信号を生成し、スイッチング素子Q13に出力する。また、二次側マイコン43は、スイッチング素子Q14のゲート信号として、ゲート信号G13を反転させた信号を生成し、スイッチング素子Q14に出力する。すなわち、二次側マイコン43は、電圧指令E2
*に電圧E2が追従するような電流Icがキャパシタ37に流れるように昇圧形DC−DCコンバータ35を制御する。こうすることで、二次側直流コンデンサ25の電圧E2を電圧指令E2
*に追従させることができる。
【0048】
電圧E2が電圧指令E2
*に追従するような電流Icがキャパシタ37に流れるように昇圧形DC−DCコンバータ35を制御することで、電動機3の力行時にはキャパシタ37に蓄積された電力を三相交流電力に変換して電動機3に供給し、また、電動機3の回生時には、電動機3から出力された三相交流電力を直流電力に変換してキャパシタ37に蓄積することができる。そのため、昇降圧形DC−DCコンバータ11、一次側単相インバータ13、一次共振回路14、二次共振回路21、二次側単相インバータ24、三相インバータ26などを介する一次側との間のワイヤレス電力伝送と比べて、低損失での電力伝送が可能となり、電力の伝送効率の向上を図ることができる。
【0049】
図3は、一次共振回路14と二次共振回路21との間で伝送する電力Pを指示する電力指令P
*を演算する電力指令演算ブロック60の構成例を示す図である。
図3に示す電力指令演算ブロック60は、二次側マイコン43が備えるものである。
【0050】
図3に示す電力指令演算ブロック60は、減算器61と、PI制御部62とを備える。
【0051】
減算器61は、電圧検出器39により検出された電圧E3と、電圧E3を指示する電圧指令E3
*とが入力され、電圧指令E3
*と電圧E3との偏差をPI制御部62に出力する。
【0052】
PI制御部62は、PI制御により、減算器61から出力された電圧指令E3
*と電圧E3との偏差がゼロとなるような電力指令P
*を生成する。
【0053】
電圧指令E3
*と電圧E3との偏差がゼロとなるように電力指令P
*を生成することで、電圧E3<電圧指令E3
*である場合には、電圧E3と電圧指令E3
*との偏差に相当する電力が一次共振回路14から二次共振回路21に供給される。また、電圧E3>電圧指令E3
*である場合には、電圧E3と電圧指令E3
*との偏差に相当する電力が二次共振回路21から一次共振回路14に供給される。したがって、キャパシタ37の電圧E3を電圧指令E3
*に追従させることができる。
【0054】
次に、電圧指令E3
*の算出方法について説明する。
【0055】
電圧E3が最大値E3maxの状態から、電力変換装置10が搭載された電気自動車が加速し始め、電気自動車の運動エネルギーとキャパシタ37の充放電エネルギーとが等しいと仮定する。この場合、電気自動車の重量に相当する値m、キャパシタ37の静電容量C、電動機3の速度ωおよび電圧E3の最大値E3maxを用いて、電圧E3は以下の式(2)で表される。
【数2】
【0056】
式(2)の電圧E3を電圧指令E3
*とすると、電動機3、三相インバータ26、昇圧形DC−DCコンバータ35などの損失分に相当する電力指令P
*が生成される。しかしながら、電気自動車が上り坂を走行しているか、下り坂を走行しているかなど種々の条件により、式(2)自体が変わってしまうことがあり、正確な値を把握することは困難である。
【0057】
そこで、m/CをK1と定義し、電圧E3が最小値E3minであるときに電動機3の速度ωが最大速度ωmaxとなるようにK1を演算する。式(2)において、m/C=K1,E3=E3min,ω=ωmaxとすると、K1は以下の式(3)で表される。
【0059】
電圧指令E3
*は、式(2),(3)を用いて、以下の式(4)で表される。
図4は、電圧指令E3
*の波形例を示す図であり、式(4)に従い演算したものである。
【0061】
図5は、電圧指令V1
*およびパルス幅比率αを算出する電圧指令・パルス幅比率演算ブロック70を示す図である。
図5に示す電圧指令・パルス幅比率演算ブロック70は、二次側マイコン43が備えるものである。
【0062】
電圧指令・パルス幅比率演算ブロック70は、電力指令演算ブロック60が算出した電力指令P
*が入力され、入力された電力指令P
*に基づき、電圧指令V1
*およびパルス幅比率αを算出する。以下では、電圧指令V1
*およびパルス幅比率αの算出方法について説明する。
【0063】
まず、電圧指令V1
*の算出方法について説明する。
【0064】
位相シフト方式の場合、一次共振回路14と二次共振回路21との間で伝送される電力Pは、以下の式(5)で表される。
【0066】
式(5)より、α=αr,P=|P
*|,V1=V1
*とすると、電圧指令V1
*は、以下の式(6)で表される。なお、式(6)におけるK2は以下の式(7)で表される。ここで、αrは基本パルス幅比率であり、予め定められる所定値である。基本パルス幅比率αrは、伝送効率を上げるためには1に近い方が望ましいが、一次側と二次側との通信遅延などに起因する電圧V1の制御遅れを補うための制御の余裕を確保するために、0.8程度とすることが適当である。
【0068】
式(6)より、電圧指令V1
*をゼロとすると、電流I2が流れなくなるため、位相検出器41による位相検出が不可能となる。したがって、電圧指令・パルス幅比率演算ブロック70は、電圧指令V1
*が所定値(位相検出器41による位相検出が可能な電流I2が流れる電圧以上の電圧)以上となるように制限する。
【0069】
次に、パルス幅比率αの算出方法について説明する。
【0070】
パルス幅比率αは、式(5),(7)より以下の式(8)で表される。
【0072】
一次側無線機17と二次側無線機42との間の通信時間に相当する遅延を付与する一次遅れフィルタを通過した電圧指令V1
*を電圧指令V1LPF
*とし、P=P
*,V1=V1LPF
*として、式(8)を近似すると、以下の式(9)となる。
【0074】
二次側マイコン43は、パルス幅比率αが正のときは、電圧V1の位相が電流I2の位相と同位相であるとし、パルス幅比率αが負のときは、電圧V1の位相が電流I2の位相と逆位相であるとして、パルス幅比率αに応じた電圧V2が出力されるように二次側単相インバータ24を制御する。換言すると、パルス幅比率αが正のときは、一次共振回路14から二次共振回路21に電力が供給され、パルス幅比率αが負のときは、二次共振回路21から一次共振回路14に電力が供給される。
【0075】
図6は、電圧指令V1
*およびパルス幅比率αの波形例を示す図である。
図6では、式(6)に従い演算された電圧指令V1
*、および、式(9)に従い演算されたパルス幅比率αの波形例を示している。
【0076】
電圧指令V1
*が最小値制限されていない場合には、基本パルス幅比率αr=0.8のときに、パルス幅比率αは0.8または−0.8となる。例えば、基本パルス幅比率αr=1.0として、パルス幅比率αを1.0または−1.0とした場合、二次側単相インバータ24がI2≒0のタイミングでスイッチングを行うため、スイッチング損失が最も小さくなり、高効率となる。しかしながら、パルス幅比率αを1.0または−1.0とした場合、パルス幅比率αを操作することができないため、電圧指令V1
*の操作のみで、一次共振回路14と二次共振回路21との間で伝送する電力Pを操作することになる。一次側無線機17と二次側無線機42との間の無線通信には通信遅延が存在するため、二次側マイコン43が電圧指令V1
*を演算し、実際に一次側単相インバータ13が電圧指令V1
*に追従する電圧V1を出力するまでに遅れが発生する。したがって、電力指令P
*が変化している過渡状態では、電力Pと電力指令P
*とが一致しない。基本パルス幅比率αr=0.8とすることで、電力指令P
*が変化している過渡状態においても、パルス幅比率αを操作することができ、電力Pと電力指令P
*とを一致させることができる。
【0077】
次に、単相コンバータ34の制御方法について説明する。
【0078】
二次側マイコン43は、一次側無線機17から送信されてきたバッテリ2の充電率SOCが所定値以上であれば、スイッチング素子Q9,Q11をオン、または、スイッチング素子Q10,Q12をオンとすることで、外部受電用共振回路31からの電力を遮断する。すなわち、外部共振回路からの電力供給を受けないようにする。また、二次側マイコン43は、バッテリ2の充電率SOCが所定値未満である場合には、スイッチング素子Q9〜Q12をオフとし、外部共振回路から外部受電用共振回路31を介して電力を受電する。外部共振回路から供給された電力は二次側から一次側に送電され、バッテリ2が充電される。
【0079】
このように本実施形態においては、電力変換装置1は、電圧指令E2
*に電圧E2が追従するような電流Icがキャパシタ37に流れるように昇圧形DC−DCコンバータ35を制御する二次側マイコン43を備える。
【0080】
電圧指令E2
*に電圧E2が追従するような電流Icがキャパシタ37に流れるように昇圧形DC−DCコンバータ35を制御することで、電動機3の力行時にはキャパシタ37に蓄積された電力を三相交流電力に変換して電動機3に供給し、また、電動機3の回生時には、電動機3から出力された三相交流電力を直流電力に変換してキャパシタ37に蓄積することができる。そのため、昇降圧形DC−DCコンバータ11、一次側単相インバータ13、一次共振回路14、二次共振回路21、二次側単相インバータ24、三相インバータ26などを介する一次側との間のワイヤレス電力伝送と比べて、低損失での電力伝送が可能となり、電力の伝送効率の向上を図ることができる。
【0081】
本発明を図面および実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形または修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形または修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各ブロックなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数のブロックを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 電力変換装置
2 バッテリ
3 電動機
11 昇降圧形DC−DCコンバータ
12 一次側直流コンデンサ
13 一次側単相インバータ
14 一次共振回路
15,23,33 コンデンサ
16,22,32,36 インダクタ
17 一次側無線機
18 一次側マイコン
21 二次共振回路
24 二次側単相インバータ
25 二次側直流コンデンサ
26 三相インバータ
27,38 電流検出器
28,39 電圧検出器
29 速度検出器
31 外部受電用共振回路
34 単相コンバータ
35 昇圧形DC−DCコンバータ
37 キャパシタ
41 位相検出器
42 二次側無線機
43 二次側マイコン
50 デューティ演算ブロック
51,53,61 減算器
52,54,62 PI制御部
60 電力指令演算ブロック
70 電圧指令・パルス幅比率演算ブロック