特許第6836369号(P6836369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6836369リチウム二次電池用正極活物質前駆体、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836369
(24)【登録日】2021年2月9日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質前駆体、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20210222BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210222BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   C01G53/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-213835(P2016-213835)
(22)【出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2018-73686(P2018-73686A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592197418
【氏名又は名称】株式会社田中化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】今成 裕一郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕介
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/067959(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記組成式(I)で表され、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βとの比(α/β)が0.9以上であり、二次粒子径が7μm以上13μm以下であるリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
【請求項2】
下記組成式(I)で表され、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βとの比(α/β)が0.9以上であり、BET比表面積が5m/g以上50m/g以下であるリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
【請求項3】
下記組成式(I)で表され、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βとの比(α/β)が0.9以上であり、タップかさ密度が1.0g/cm以上、2.1g/cm以下であるリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
【請求項4】
前記比(α/β)が、1.3以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項5】
2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βが0.35以上1.0以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体と、リチウム化合物とを混合して混合物を得る工程、該混合物を焼成する工程とを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記リチウム二次電池用正極活物質が、下記組成式(II)で表される請求項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
Li[Li(NiCoMn1−a]O・・・(II)
(‐0.1≦a≦0.1、0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質前駆体、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウム二次電池用正極活物質として用いられている。リチウム二次電池は、既に携帯電話用途やノートパソコン用途などの小型電源だけでなく、自動車用途や電力貯蔵用途などの中・大型電源においても、実用化が進んでいる。
【0003】
従来のリチウム二次電池用正極活物質として、X線回折法により得られたX線回折パターンを基にして求められる結晶子サイズに着目した試みがされている。特許文献1にはLi1.00Ni0.33Co0.34Mn0.33で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であって、BET比表面積が0.7m/gであり、X線回折法により得られたX線回折パターンを基にして求めた104面の垂線方向の結晶子サイズが800Åである非水電解液二次電池用正極活物質が開示されている。
特許文献1では、リチウム二次電池用正極活物質の前駆体として、コバルト、ニッケル及びマンガンの炭酸塩を製造し、該炭酸塩にホウ酸リチウムを混合することにより、リチウム二次電池用正極活物質を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−335278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来のリチウム含有複合金属酸化物を正極活物質として用いて得られるリチウム二次電池は、高い初回充放電効率を有するリチウム二次電池を得る上で、十分なものではなかった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、高い初回充放電効率を示すリチウム二次電池に有用な正極活物質の製造に用いられるリチウム二次電池用正極活物質前駆体、及び該前駆体を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]の発明を包含する。
[1]下記組成式(I)で表され、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βとの比(α/β)が0.9以上であるリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
[2]前記比(α/β)が、1.3以下である、[1]に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
[3]2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βが0.35以上1.0以下である[1]又は[2]に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
[4]二次粒子径が7μm以上13μm以下である[1]〜[3]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
[5]BET比表面積が5m/g以上50m/g以下である[1]〜[4]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
[6]タップかさ密度が1.0g/cm3以上、2.1g/cm3以下である[1]〜[5]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質前駆体と、リチウム化合物とを混合して混合物を得る工程、該混合物を焼成する工程とを含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
[8]前記リチウム二次電池用正極活物質が、下記組成式(II)で表される[7]に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
Li[Li(NiCoMn1−a]O・・・(II)
(‐0.1≦a≦0.1、0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば高い初回充放電効率を示すリチウム二次電池に有用な正極活物質の製造に用いられるリチウム二次電池用正極活物質前駆体、及び該前駆体を用いたリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】リチウムイオン二次電池の一例を示す概略構成図である。
図2】本発明を適用した前駆体のSEM画像である。
図3】本発明を適用しない前駆体のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<リチウム二次電池用正極活物質前駆体>
本発明は、下記一般式(I)で表され、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βとの比(α/β)が0.9以上であるリチウム二次電池用正極活物質前駆体(以下、「前駆体」と記載することがある)である。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
【0010】
本実施形態において、比(α/β)は0.9以上が好ましく、0.91以上がより好ましく、0.92以上が特に好ましい。また、比(α/β)は1.3以下が好ましく、1.28以下がより好ましく、1.26以下が特に好ましい。
上記上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0011】
本実施形態において、比(α/β)が上記特定の範囲であると、前駆体とリチウム化合物とを混合して焼成した際に粒子が規則的に成長するため、高い初回充放電効率を示すリチウム二次電池に有用な正極活物質の前駆体とすることができると推察できる。
【0012】
本実施形態において、2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.35以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。
また、半値幅αは、1.0以下が好ましく、0.95以下がより好ましく、0.9以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0013】
本実施形態において、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.35以上が好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。
また、半値幅αは、1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が特に好ましい。
上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0014】
本実施形態において、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークAの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークBの半値幅βは、以下のようにして確認することが出来る。
【0015】
まず、前駆体について、Cu−Kαを線源とし、かつ回折角2θの測定範囲を10°以上90°以下とする粉末X線回折測定を行い、ピークAおよびピークBに対応するピークを決定する。次に、各回折ピークのプロファイルをガウス関数で各々近似し、2次微分曲線の値がゼロになる2点の2θの差に、係数である2ln2(≒1.386)をかけて半値幅αおよび半値幅βを算出する(例えば、「粉末X線解析の実際−リートベルト法入門」2006年6月20日第7刷発行、中井泉、泉富士夫著、参照)。
【0016】
本実施形態において、前駆体は、下記組成式(I)で表される。
NiCoMn(OH) ・・・(I)
[0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。]
【0017】
可逆容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるxは0.7以上が好ましく、0.74以上がより好ましく、0.78以上が特に好ましい。また、初回充放電効率がより高いリチウム二次電池を得る意味で1.0未満が好ましく、0.99以下がより好ましく、0.95以下が特に好ましい。
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0018】
また、電池抵抗が低いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるyは0を超えることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましい。また、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味で、yは0.20以下であることが好ましく、0.19以下であることがより好ましく、0.18以下であることがさらに好ましい。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0019】
また、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるzは0以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましい。また、高温(例えば60℃環境下)での保存特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるzは0.20以下であることが好ましく、0.19以下であることがより好ましく、0.18以下であることがさらに好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0020】
また、電池抵抗が低いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるwは0以上であることが好ましく、0.0001以上であることがより好ましく、0.0005以上であることがさらに好ましい。また、高い電流レートにおいて放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるwは0.1以下であることが好ましく、0.09以下であることがより好ましく、0.08以下であることがさらに好ましい。
wの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0021】
前記組成式(I)におけるMはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。
【0022】
また、サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、組成式(I)におけるMは、Ti、Mg、Al、W、B、Zr及びSnからなる群より選択される、1種以上であることが好ましく、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味では、Al、W、B、Zr及びSnからなる群より選択される、1種以上であることが好ましい。
【0023】
(平均粒子径)
本実施形態において、前駆体の平均粒子径は7μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましく、9μm以上であることがさらに好ましい。また、13μm以下であることが好ましく、12μm以下であることがより好ましく、11μm以下であることがさらに好ましい。
平均粒子径の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
本発明において、前駆体の「平均粒子径」とは、以下の方法(レーザー回折散乱法)によって測定される値を指す。
【0024】
レーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所製、型番:LA−950)を用い、前駆体粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液について粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D50)の値を、前駆体粉末の平均粒子径とした。
【0025】
(BET比表面積)
本実施形態において、前駆体のBET比表面積は、5m/g以上が好ましく、10m/g以上がより好ましく、15m/g以上が特に好ましい。
さらに、50m/g以下が好ましく、45m/g以下がより好ましく、40m/g以下が特に好ましい。
BET比表面積の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
【0026】
(前駆体のタップかさ密度)
本実施形態において、前駆体のタップかさ密度は、電極密度が高いリチウム二次電池を得る意味で、1.0g/cm3以上が好ましく、1.2g/cm3以上がより好ましく、1.4g/cm3以上が特に好ましい。また、前駆体とリチウム化合物とを混合して得た混合物を焼成する際の、焼成時の反応性を高める意味で、2.1g/cm3以下であることが好ましく、2.0g/cm3以下がより好ましく、1.9g/cm3以下が特に好ましい。
タップかさ密度の上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
タップかさ密度はJIS R 1628−1997に基づいて測定することができる。
なお、本明細書において、「重装密度」とは上記JIS R 1628−1997におけるタップかさ密度に該当する。
【0027】
<リチウム二次電池用正極活物質の製造方法>
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は以下の(2)および(3)の工程を必須工程とし、以下の(1)、(2)、(3)をこの順で含む製造方法であることが好ましい。
(1)リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造工程。
(2)前記前駆体とリチウム化合物とを混合し、混合物を得る混合工程。
(3)前記混合物を焼成する焼成工程。
【0028】
[リチウム二次電池用正極活物質前駆体の製造工程]
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法において、まず、リチウム以外の金属、すなわち、必須金属であるニッケルと、コバルト、マンガン、アルミニウムといった任意金属とを含むニッケル含有金属複合化合物を調製し、当該ニッケル含有金属複合化合物を適当なリチウム塩と焼成することが好ましい。前駆体であるニッケル含有金属複合化合物は、上記本発明のリチウム二次電池用正極活物質前駆体であれば特に限定されず、ニッケル含有金属複合水酸化物又はニッケル含有金属複合酸化物を用いることができる。
前駆体は、通常公知のバッチ式共沈殿法又は連続式共沈殿法により製造することが可能である。以下、金属として、ニッケル、コバルト、マンガン及びアルミニウムを含むニッケル含有金属複合水酸化物(以下、「金属複合水酸化物」と記載することがある。)を例に、その製造方法を詳述する。
【0029】
まず、特開2002−201028号公報に記載された連続式共沈殿法により、ニッケル塩溶液、コバルト塩溶液、マンガン塩溶液、アルミニウム塩溶液及び錯化剤を反応させ、NiCoMnAl(OH)(式中、s+t+u+v=1)で表される金属複合水酸化物を製造する。
【0030】
上記ニッケル塩溶液の溶質であるニッケル塩としては、特に限定されないが、例えば硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの何れかを使用することができる。
上記コバルト塩溶液の溶質であるコバルト塩としては、例えば硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト及び酢酸コバルトのうちの何れかを使用することができる。
上記マンガン塩溶液の溶質であるマンガン塩としては、例えば硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン及び酢酸マンガンのうちの何れかを使用することができる。
上記アルミニウム塩溶液の溶質であるアルミニウム塩としては、例えば硫酸アルミニウムが使用できる。
以上の金属塩は、上記NiCoMnAl(OH)の組成比に対応する割合で用いられる。また、溶媒として水が使用される。
【0031】
錯化剤としては、水溶液中で、ニッケル、コバルト及びマンガンのイオンと錯体を形成可能なものであり、例えばアンモニウムイオン供給体(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸及びグリシンが挙げられる。
【0032】
沈殿に際しては、水溶液のpH値を調整するため、必要ならばアルカリ水溶液(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を添加する。本実施形態においては、水溶液のpH値を調整することにより、前駆体の半値幅比を本発明の特定の範囲に制御することができる。
【0033】
反応槽内は不活性雰囲気であってもよい。不活性雰囲気であると、ニッケルよりも酸化されやすい元素が凝集してしまうことを抑制し、均一な金属複合水酸化物を得ることができる。
【0034】
また、反応槽内は、不活性雰囲気を保ちつつも、適度な酸素含有雰囲気または酸化剤存在下であってもよい。これは遷移金属を適度に酸化させることで、金属複合水酸化物の形態を制御しやすくなるためである。酸素含有ガス中の酸素や酸化剤は、遷移金属を酸化させるために十分な酸素原子があればよい。多量の酸素原子を導入しなければ、反応槽内の不活性雰囲気を保つことができる。なお、反応槽内の雰囲気制御をガス種で行う場合、所定のガス種を反応槽内に通気するか、反応液を直接バブリングすれば良い。
【0035】
以上の反応後、得られた反応沈殿物を洗浄した後、乾燥し、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合化合物としてのニッケルコバルトマンガンアルミニウム水酸化物を単離する。
【0036】
前記単離には、反応沈殿物を含むスラリー(共沈物スラリー)を遠心分離や吸引ろ過などで脱水する方法が好ましく用いられる。
【0037】
前記脱水により得た共沈物は、水またはアルカリが含まれる洗浄液で洗浄することが好ましい。本実施形態においては、アルカリが含まれる洗浄液で洗浄することが好ましく、水酸化ナトリウム溶液で洗浄することがより好ましい。また、硫黄元素を含有する洗浄液を用いて洗浄してもよい。
【0038】
なお、上記の例では、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物を製造しているが、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物を調製してもよい。
【0039】
本実施形態においては、反応槽に供給する金属塩の濃度、錯化剤添加量、攪拌速度、反応温度、反応pH、酸素含有ガスの導入量、酸化剤添加量及び後述する焼成条件等の反応条件により、前駆体の半値幅を本発明の特定の範囲に制御することができる。
より具体的には、反応pHを調整することにより、粒径を制御し、前駆体の半値幅比を本発明の特定の範囲にすることができる。反応pHを下げると、半値幅が小さくなる傾向にある。また、反応pHの調整に加えて、酸素含有ガスの導入量を調整することにより、前駆体の半値幅比を本発明の特定の範囲にすることができる。
【0040】
[混合工程]
本工程は、リチウム化合物と、前駆体とを混合し、混合物を得る工程である。
【0041】
・リチウム化合物
本発明に用いるリチウム化合物は、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウム、酸化リチウム、塩化リチウム、フッ化リチウムのうち何れか一つ、又は、二つ以上を混合して使用することができる。これらの中では、水酸化リチウム及び炭酸リチウムのいずれか一方又は両方が好ましい。
また、リチウム化合物が不純物として炭酸リチウムを含む場合には、水酸化リチウム中の炭酸リチウムの含有量は5質量%以下であることが好ましい。
【0042】
前記前駆体と、前記リチウム化合物との混合方法について説明する。
前記前駆体を乾燥した後、リチウム化合物と混合する。乾燥条件は、特に制限されないが、例えば、前駆体が酸化・還元されない条件(具体的には、酸化物同士、又は水酸化物同士で乾燥する条件)、前駆体が酸化される条件(具体的には、水酸化物から酸化物へ酸化する乾燥条件)、前駆体が還元される条件(具体的には、酸化物から水酸化物へ還元する乾燥条件)のいずれの条件でもよい。
酸化・還元がされない条件のためには、窒素、ヘリウム及びアルゴン等の不活性ガスを使用すればよく、水酸化物が酸化される条件では、酸素又は空気を使用して行えばよい。また、前駆体が還元される条件としては、不活性ガス雰囲気下、ヒドラジン、亜硫酸ナトリウム等の還元剤を使用すればよい。
【0043】
前駆体の乾燥後に、適宜分級を行ってもよい。
【0044】
以上のリチウム化合物と前駆体とを、最終目的物の組成比を勘案して混合する。例えば、ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合水酸化物を用いる場合、リチウム化合物と当該複合金属水酸化物は、Li[Li(NiCoMnAl1−r]O(式中、s+t+u+v=1)の組成比に対応する割合で混合する。ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合金属水酸化物及びリチウム化合物の混合物を後の焼成工程において焼成することによって、リチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる。
均一なリチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる意味で、rは0を超えることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましい。また、純度の高いリチウム−ニッケルコバルトマンガンアルミニウム複合酸化物が得られる意味で、rは0.1以下であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。
上記のrの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0045】
[焼成工程]
上記リチウム化合物と、前駆体との混合物の焼成温度としては、特に制限はないが、充電容量を高める観点から、600℃以上であることが好ましく、650℃以上であることがより好ましい。また、焼成温度としては、特に制限はないが、Liの揮発を防止でき、目標とする組成のリチウムニッケル複合酸化物を得る意味で、1000℃以下であることが好ましく、950℃以下であることがより好ましい。
焼成温度の上記上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0046】
焼成温度を650℃以上950℃以下の範囲とすることによって、特に高い充放電効率を示し、サイクル特性に優れたリチウムニッケル複合酸化物を作製できる。焼成時間は、昇温開始から達温して温度保持が終了するまでの合計時間を1時間以上30時間以下とすることが好ましい。合計時間が30時間以下であると、Liの揮発を防止でき、電池性能の劣化を防止できる。
合計時間が1時間以上であると、結晶の発達が良好に進行し、電池性能を向上させることができる。
【0047】
なお、上記の焼成の前に、仮焼成を行うことも有効である。この様な仮焼成の温度は、300〜900℃の範囲で、0.5〜10時間行うことが好ましい。仮焼成を行うことにより、焼成時間を短縮することができることもある。
また、焼成には、所望の組成に応じて大気、乾燥空気、酸素雰囲気、不活性雰囲気等が用いられ、必要ならば複数の加熱工程が実施される。
本発明において、「昇温開始」とは、仮焼成をする場合には仮焼成の昇温開始時点を、複数の加熱工程を含む場合には、最初の加熱工程の昇温開始時点を意味する。
【0048】
焼成によって得たリチウムニッケル複合酸化物は、粉砕後に適宜分級され、リチウム二次電池に適用可能なリチウム二次電池用正極活物質とされる。
【0049】
<リチウム二次電池用正極活物質>
上記本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法により製造される、リチウム二次電池用正極活物質は、下記一般式(II)で表されるものであることが好ましい。
Li[Li(NiCoMn1−a]O・・・(II)
(‐0.1≦a≦0.1、0.7≦x<1.0、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦w≦0.1、x+y+z+w=1を満たし、MはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。)
【0050】
初回充放電効率がより高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(II)におけるaは0を超えることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.02以上であることがさらに好ましい。また、aは0.1未満であることが好ましく、0.08以下であることがより好ましく、0.06以下であることがさらに好ましい。
aの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0051】
可逆容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(II)におけるxは0.7以上が好ましく、0.74以上がより好ましく、0.78以上が特に好ましい。また、初回充放電効率がより高いリチウム二次電池を得る意味で1.0未満が好ましく、0.99以下がより好ましく、0.95以下が特に好ましい。
xの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0052】
電池抵抗が低いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(II)におけるyは0を超えることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましい。また、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味で、yは0.20以下であることが好ましく、0.19以下であることがより好ましく、0.18以下であることがさらに好ましい。
yの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0053】
熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(II)におけるzは0以上であることが好ましく、0.01以上であることがより好ましく、0.05以上であることがさらに好ましい。また、高温(例えば60℃環境下)での保存特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるzは0.20以下であることが好ましく、0.19以下であることがより好ましく、0.18以下であることがさらに好ましい。
zの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0054】
電池抵抗が低いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(II)におけるwは0以上であることが好ましく、0.0001以上であることがより好ましく、0.0005以上であることがさらに好ましい。また、高い電流レートにおいて放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、前記組成式(I)におけるwは0.1以下であることが好ましく、0.09以下であることがより好ましく、0.08以下であることがさらに好ましい。
wの上限値と下限値は任意に組み合わせることができる。
【0055】
前記組成式(II)におけるMはMg、Ca、Sr、Ba,Ti、Zr、V、Nb、Cr、Mo、W、Fe、Ru、Cu、Zn、B、Al、Ga、Si、Sn、P及びBiからなる群より選択される、1種以上である。
【0056】
また、サイクル特性が高いリチウム二次電池を得る意味で、組成式(II)におけるMは、Ti、Mg、Al、W、B、Zr及びSnからなる群より選択される、1種以上であることが好ましく、熱的安定性が高いリチウム二次電池を得る意味では、Al、W、B、Zr及びSnからなる群より選択される、1種以上であることが好ましい。
【0057】
(層状構造)
リチウム二次電池用正極活物質の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
【0058】
六方晶型の結晶構造は、P3、P3、P3、R3、P−3、R−3、P312、P321、P312、P321、P312、P321、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P−31m、P−31c、P−3m1、P−3c1、R−3m、R−3c、P6、P6、P6、P6、P6、P6、P−6、P6/m、P6/m、P622、P622、P622、P622、P622、P622、P6mm、P6cc、P6cm、P6mc、P−6m2、P−6c2、P−62m、P−62c、P6/mmm、P6/mcc、P6/mcm、P6/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0059】
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P2、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P2/m、C2/m、P2/c、P2/c、C2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0060】
これらのうち、放電容量が高いリチウム二次電池を得る意味で、結晶構造は、空間群R−3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることが特に好ましい。
【0061】
<リチウム二次電池>
次いで、リチウム二次電池の構成を説明しながら、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を、リチウム二次電池の正極活物質として用いた正極、およびこの正極を有するリチウム二次電池について説明する。
【0062】
本実施形態のリチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0063】
図1は、本実施形態のリチウム二次電池の一例を示す模式図である。本実施形態の円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
【0064】
まず、図1(a)に示すように、帯状を呈する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、および一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
【0065】
次いで、図1(b)に示すように、電池缶5に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
【0066】
電極群4の形状としては、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角を丸めた長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
【0067】
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、又はJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。例えば、円筒型、角型などの形状を挙げることができる。
【0068】
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(又はシート型)電池を例示することができる。
【0069】
以下、各構成について順に説明する。
(正極)
本実施形態の正極は、まず正極活物質、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調整し、正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
【0070】
(導電材)
本実施形態の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
【0071】
正極合剤中の導電材の割合は、正極活物質100質量部に対して1質量部以上20質量部以下であると好ましい。導電材として黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
【0072】
(バインダー)
本実施形態の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。この熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。
【0073】
これらの熱可塑性樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合剤全体に対するフッ素樹脂の割合を1質量%以上10質量%以下、ポリオレフィン樹脂の割合を0.1質量%以上2質量%以下とすることによって、正極集電体との密着力および正極合剤内部の結合力がいずれも高い正極合剤を得ることができる。
【0074】
(正極集電体)
本実施形態の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。なかでも、加工しやすく、安価であるという点でAlを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0075】
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、正極合剤を正極集電体上で加圧成型する方法が挙げられる。また、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体に正極合剤を担持させてもよい。
【0076】
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。
【0077】
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法および静電スプレー法が挙げられる。
【0078】
以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
(負極)
本実施形態のリチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、および負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
【0079】
(負極活物質)
負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属又は合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
【0080】
負極活物質として使用可能な炭素材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体を挙げることができる。
【0081】
負極活物質として使用可能な酸化物としては、SiO、SiOなど式SiO(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO、TiOなど式TiO(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V、VOなど式VO(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe、Fe、FeOなど式FeO(ここで、xは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO、SnOなど式SnO(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO、WOなど一般式WO(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;LiTi12、LiVOなどのリチウムとチタン又はバナジウムとを含有する複合金属酸化物;を挙げることができる。
【0082】
負極活物質として使用可能な硫化物としては、Ti、TiS、TiSなど式TiS(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V、VS2、VSなど式VS(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe、FeS、FeSなど式FeS(ここで、xは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo、MoSなど式MoS(ここで、xは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS2、SnSなど式SnS(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WSなど式WS(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sbなど式SbS(ここで、xは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se、SeS、SeSなど式SeS(ここで、xは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0083】
負極活物質として使用可能な窒化物としては、LiN、Li3−xN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方又は両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0084】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用して用いてもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質又は非晶質のいずれでもよい。
【0085】
また、負極活物質として使用可能な金属としては、リチウム金属、シリコン金属およびスズ金属などを挙げることができる。
【0086】
負極活物質として使用可能な合金としては、Li−Al、Li−Ni、Li−Si、Li−Sn、Li−Sn−Niなどのリチウム合金;Si−Znなどのシリコン合金;Sn−Mn、Sn−Co、Sn−Ni、Sn−Cu、Sn−Laなどのスズ合金;CuSb、LaNiSnなどの合金;を挙げることもできる。
【0087】
これらの金属や合金は、例えば箔状に加工された後、主に単独で電極として用いられる。
【0088】
上記負極活物質の中では、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい)などの理由から、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を主成分とする炭素材料が好ましく用いられる。炭素材料の形状としては、例えば天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、又は微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
【0089】
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、具体的には、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンおよびポリプロピレンを挙げることができる。
【0090】
(負極集電体)
負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。なかでも、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0091】
このような負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様に、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
【0092】
(セパレータ)
本実施形態のリチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
【0093】
本実施形態において、セパレータは、電池使用時(充放電時)に電解質を良好に透過させるため、JIS P 8117で定められるガーレー法による透気抵抗度が、50秒/100cm3以上、300秒/100cm3以下であることが好ましく、50秒/100cm3以上、200秒/100cm3以下であることがより好ましい。
【0094】
また、セパレータの空孔率は、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。セパレータは空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
【0095】
(電解液)
本実施形態のリチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
【0096】
電解液に含まれる電解質としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(COCF)、Li(CSO)、LiC(SOCF、Li10Cl10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、LiFSI(ここで、FSIはbis(fluorosulfonyl)imideのことである)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlClなどのリチウム塩が挙げられ、これらの2種以上の混合物を使用してもよい。なかでも電解質としては、フッ素を含むLiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LiCFSO、LiN(SOCFおよびLiC(SOCFからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0097】
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、又はこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。
【0098】
有機溶媒としては、これらのうちの2種以上を混合して用いることが好ましい。中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒および環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという多くの特長を有する。
【0099】
また、電解液としては、得られるリチウム二次電池の安全性が高まるため、LiPFなどのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電流レートにおける充放電を行っても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0100】
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖又はポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またLiS−SiS、LiS−GeS、LiS−P、LiS−B、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiSO、LiS−GeS−Pなどの硫化物を含む無機系固体電解質が挙げられ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。これら固体電解質を用いることで、リチウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
【0101】
また、本実施形態のリチウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0102】
以上のような構成の正極活物質は、上述した本実施形態のリチウム含有複合金属酸化物を用いているため、正極活物質を用いたリチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。
【0103】
また、以上のような構成の正極は、上述した本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質を有するため、リチウム二次電池の寿命を延ばすことができる。
【0104】
さらに、以上のような構成のリチウム二次電池は、上述した正極を有するため、従来よりも寿命の長いリチウム二次電池となる。
【実施例】
【0105】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0106】
本実施例においては、リチウム二次電池用正極活物質前駆体の評価、リチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池の作製評価を、次のようにして行った。
【0107】
<回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=44.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅β>
リチウム含有複合金属酸化物の粉末X線回折測定は、X線回折装置(X‘Prt PRO、PANalytical社)を用いて行った。
リチウム二次電池用正極活物質前駆体を専用の基板に充填し、CuKα線源を用いて、回折角2θ=10°〜90°の範囲にて測定を行うことで、粉末X線回折図形を得た。粉末X線回折パターン総合解析ソフトウェアJADE5を用い、該粉末X線回折図形からピークAに対応するピークの半値幅を得て、Scherrer式により、回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αと、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βを算出した。
【0108】
<前駆体の観察>
測定する前駆体の粒子を、サンプルステージの上に貼った導電性シート上に載せ、日本電子株式会社製JSM−5510を用いて、加速電圧が20kVの電子線を照射してSEM観察を行った。SEM観察により得られた画像(SEM写真)から、前駆体の表面を観察した。
【0109】
<リチウム二次電池用正極活物質前駆体の重装密度(以下、「タップかさ密度」と記載することがある)の測定>
重装密度はJIS R 1628−1997に基づいて測定した。
【0110】
<リチウム二次電池用正極活物質前駆体の平均粒子径の測定>
平均粒子径の測定は、レーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA−950)を用い、リチウム二次電池用正極活物質前駆体粉末0.1gを、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粉末を分散させた分散液を得た。得られた分散液について粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得る。得られた累積粒度分布曲線において、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D50)の値を、リチウム二次電池用正極活物質前駆体の平均粒子径とした。
【0111】
<リチウム二次電池用正極活物質前駆体のBET比表面積>
リチウム二次電池用正極活物質前駆体粉末1gを窒素雰囲気中、105℃で30分間乾燥させた後、マウンテック社製Macsorb(登録商標)を用いて測定した。
【0112】
<組成分析>
後述の方法で製造されるリチウム二次電池用正極活物質前駆体粉末およびリチウム二次電池用正極活物質粉末の組成分析は、各々得られた前記粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS3000)を用いて行った。
【0113】
<リチウム二次電池用正極の作製>
後述する製造方法で得られるリチウム二次電池用正極活物質と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、リチウム二次電池用正極活物質:導電材:バインダー=92:5:3(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
【0114】
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ40μmのAl箔に塗布して150℃で8時間真空乾燥を行い、リチウム二次電池用正極を得た。このリチウム二次電池用正極の電極面積は1.65cmとした。
【0115】
<リチウム二次電池(コイン型ハーフセル)の作製>
以下の操作を、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
<リチウム二次電池用正極の作製>で作製したリチウム二次電池用正極を、コイン型電池R2032用のパーツ(宝泉株式会社製)の下蓋にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置いた。ここに電解液を300μl注入した。電解液は、エチレンカーボネート(以下、ECと称することがある。)とジメチルカーボネート(以下、DMCと称することがある。)とエチルメチルカーボネート(以下、EMCと称することがある。)の30:35:35(体積比)混合液に、LiPF6を1.0mol/lとなるように溶解したもの(以下、LiPF6/EC+DMC+EMCと表すことがある。)を用いた。
次に、負極として金属リチウムを用いて、前記負極を積層フィルムセパレータの上側に置き、ガスケットを介して上蓋をし、かしめ機でかしめてリチウム二次電池(コイン型ハーフセルR2032。以下、「ハーフセル」と称することがある。)を作製した。
【0116】
<放電試験>
<リチウム二次電池(コイン型ハーフセル)の作製>で作製したハーフセルを用いて、以下に示す条件で初回充放電試験を実施した。
【0117】
<充放電試験条件>
試験温度:25℃
充電最大電圧4.45V、充電時間6時間、充電電流0.2CA、定電流定電圧充電
放電最小電圧2.50V、放電時間5時間、放電電流0.2CA、定電流放電
【0118】
(実施例1)
1.リチウム二次電池用正極活物質1の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
【0119】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が87.5:9.5:2.0となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0120】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が87.5:9.5:2.0:1.0となるように流量を調整した。また酸素濃度が5.0%となるように窒素ガスに空気を混合して得た酸素含有ガスを連続通気させた。
【0121】
反応槽内の溶液のpHが12.2になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.60であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.48であった。これをもとに算出した「α/β」は1.25であった。
【0122】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物1の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.875、y=0.095、z=0.02、w=0.01であった。
【0123】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガンアルミ複合水酸化物1を大気雰囲気化650℃で5時間焼成しニッケルコバルトマンガンアルミ複合酸化物1を得た。
【0124】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガンアルミ複合酸化物1と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.00となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下760℃で5時間焼成し、さらに、酸素雰囲気下760℃で5時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質1を得た。
【0125】
2.リチウム二次電池用正極活物質1の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質1の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=−0.01 x=0.876、y=0.094、z=0.018、w=0.012であった。
【0126】
(実施例2)
1.リチウム二次電池用正極活物質2の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
【0127】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比90:7:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0128】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が90:7:2:1となるように流量を調整した。また酸素濃度が12.0%となるように窒素ガスに空気を混合して得た酸素含有ガスを連続通気させた。
【0129】
反応槽内の溶液のpHが11.4になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物2を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物2の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.95であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.82であった。これをもとに算出した「α/β」は1.16であった。
【0130】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物2の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0131】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物2と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.10となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下600℃で3時間焼成し、さらに、酸素雰囲気下750℃で3時間焼成し、目的のリチウム二次電池用正極活物質2を得た。
【0132】
2.リチウム二次電池用正極活物質2の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質2の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.046、x=0.897、y=0.070、z=0.022、w=0.011であった。
【0133】
(実施例3)
1.リチウム二次電池用正極活物質3の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を75℃に保持した。
【0134】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が90:7:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0135】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が90:7:2:1となるように流量を調整した。また窒素ガスを連続通気させた。
【0136】
反応槽内の溶液のpHが11.1になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物3を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物3の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.83であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.76であった。これをもとに算出した「α/β」は1.10であった。
【0137】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物3の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0138】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物3と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.02となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下750℃で5時間焼成し、さらに、680℃で5時間焼成して目的のリチウム二次電池用正極活物質3を得た。
【0139】
2.リチウム二次電池用正極活物質3の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質3の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.008、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0140】
(実施例4)
1.リチウム二次電池用正極活物質4の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を45℃に保持した。
【0141】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が70:20:10となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0142】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、窒素ガスを連続通気させた。反応槽内の溶液のpHが10.5になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物4を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物4の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.51であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.56であった。これをもとに算出した「α/β」は0.91であった。
【0143】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物4の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.70、y=0.20、z=0.10、w=0であった。
【0144】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物4と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.03となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下700℃で5時間焼成し、さらに、850℃で10時間焼成し、目的のリチウム二次電池用正極活物質4を得た。
【0145】
2.リチウム二次電池用正極活物質4の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質4の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、a=0.015、x=0.70、y=0.20、z=0.10、w=0であった。
【0146】
(実施例5)
1.リチウム二次電池用正極活物質5の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
【0147】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が90:7:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0148】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が90:7:2:1となるように流量を調整した。また酸素濃度が5.0%となるように窒素ガスに空気を混合して得た酸素含有ガスを連続通気させた。
【0149】
反応槽内の溶液のpHが12.3になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物5を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物5の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.49であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.42であった。これをもとに算出した「α/β」は1.15であった。
【0150】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物5の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0151】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガンアルミ複合水酸化物5を空気雰囲気化650℃で5時間焼成しニッケルコバルトマンガンアルミ複合酸化物5を得た。
【0152】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガンアルミ複合酸化物5と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.00となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下760℃で5時間焼成し、さらに、酸素雰囲気下760℃で5時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質5を得た。
【0153】
2.リチウム二次電池用正極活物質5の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質5の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=−0.004、x=0.88、y=0.09、z=0.02、w=0.01であった。
【0154】
(実施例6)
1.リチウム二次電池用正極活物質6の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
【0155】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子との原子比が85:13となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0156】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とアルミニウム原子との原子比が85:13:2となるように流量を調整した。また酸素濃度が8.3%となるように窒素ガスに空気を混合して得た酸素含有ガスを連続通気させた。
【0157】
反応槽内の溶液のpHが11.2になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物1を得た。得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物1の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.62であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.48であった。これをもとに算出した「α/β」は1.29であった。
【0158】
得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物1の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.85、y=0.13、z=0、w=0.02であった。
【0159】
以上のようにして得られたニッケルコバルトアルミニウム複合水酸化物1を空気雰囲気化650℃で5時間焼成しニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物1を得た。
【0160】
以上のようにして得られたニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物1と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Al)=1.01となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下760℃で5時間焼成し、さらに、酸素雰囲気下720℃で10時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質6を得た。
【0161】
2.リチウム二次電池用正極活物質6の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質6の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.014、x=0.855、y=0.128、z=0、w=0.017であった。
【0162】
(比較例1)
1.リチウム二次電池用正極活物質7の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を55℃に保持した。
【0163】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が90:7:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0164】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が90:7:2:1となるように流量を調整した。また窒素ガスを連続通気させた。
【0165】
反応槽内の溶液のpHが11.7になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物7を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物7の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.84であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは1.08であった。これをもとに算出した「α/β」は0.78であった。
【0166】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物7の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0167】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物7と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.00となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下600℃で5時間焼成し、さらに、750℃で10時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質7を得た。
【0168】
2.リチウム二次電池用正極活物質7の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質7の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.002、 x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0169】
(比較例2)
1.リチウム二次電池用正極活物質8の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を45℃に保持した。
【0170】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が85.5:9.5:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0171】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が85.5:9.5:2:3となるように流量を調整した。また窒素ガスを連続通気させた。
【0172】
反応槽内の溶液のpHが11.9になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物8を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物8の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは1.02であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは1.22であった。これをもとに算出した「α/β」は0.84であった。
【0173】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物8の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.855、y=0.095、z=0.02、w=0.03であった。
【0174】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物8と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.00となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下750℃で5時間焼成し、さらに、770℃で10時間焼成し、目的のリチウム二次電池用正極活物質8を得た。
【0175】
2.リチウム二次電池用正極活物質8の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質8の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.002、x=0.857、y=0.094、z=0.02、w=0.03であった。
【0176】
(比較例3)
1.リチウム二次電池用正極活物質9の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を55℃に保持した。
【0177】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が85.5:12.5:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0178】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、窒素ガスを連続通気させた。反応槽内の溶液のpHが13.1になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物9を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物9の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.56であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.76であった。これをもとに算出した「α/β」は0.74であった。
【0179】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物9の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.855、y=0.125、z=0.02、w=0であった。
【0180】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物9と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.00となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下600℃で5時間焼成し、さらに、750℃で10時間焼成し、目的のリチウム二次電池用正極活物質9を得た。
【0181】
2.リチウム二次電池用正極活物質9の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質9の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.001、x=0.855、y=0.124、z=0.021、w=0であった。
【0182】
(比較例4)
1.リチウム二次電池用正極活物質10の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を60℃に保持した。
【0183】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が90:7:2となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0184】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と10.8質量%の硫酸アルミ水溶液、硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加した。硫酸アルミ水溶液はニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子とアルミニウム原子との原子比が90:7:2:1となるように流量を調整した。また窒素ガスを連続通気させた。
【0185】
反応槽内の溶液のpHが11.4になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物10を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物10の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.90であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは1.02であった。これをもとに算出した「α/β」は0.88であった。
【0186】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物10の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.90、y=0.07、z=0.02、w=0.01であった。
【0187】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物10と炭酸リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn+Al)=1.02となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下600℃で5時間焼成し、さらに、750℃で10時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質10を得た。
【0188】
2.リチウム二次電池用正極活物質10の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質10の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.01、x=0.900、y=0.069、z=0.020、w=0.010であった。
【0189】
(比較例5)
1.リチウム二次電池用正極活物質11の製造
攪拌器およびオーバーフローパイプを備えた反応槽内に水を入れた後、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、液温を55℃に保持した。
【0190】
硫酸ニッケル水溶液と硫酸コバルト水溶液と硫酸マンガン水溶液とを、ニッケル原子とコバルト原子とマンガン原子との原子比が70:20:10となるように混合して、混合原料液を調整した。
【0191】
次に、反応槽内に、攪拌下、この混合原料溶液と硫酸アンモニウム水溶液を錯化剤として連続的に添加し、窒素ガスを連続通気させた。反応槽内の溶液のpHが11.9になるよう水酸化ナトリウム水溶液を適時滴下し、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物粒子を得て、水酸化ナトリウム溶液で洗浄した後、遠心分離機で脱水、単離し、105℃で乾燥することにより、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物11を得た。得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物11の回折角2θ=19.2±1゜の範囲に存在するピークの半値幅αは0.65であり、2θ=38.5±1°の範囲に存在するピークの半値幅βは0.81であった。これをもとに算出した「α/β」は0.80であった。
【0192】
得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物11の組成分析を行い、組成式(I)に対応させたところ、x=0.70、y=0.20、z=0.10、w=0であった。
【0193】
以上のようにして得られたニッケルコバルトマンガン複合水酸化物11と水酸化リチウム粉末とをLi/(Ni+Co+Mn)=1.03となるように秤量して混合した後、酸素雰囲気下700℃で5時間焼成し、さらに、850℃で10時間焼成し目的のリチウム二次電池用正極活物質11を得た。
【0194】
2.リチウム二次電池用正極活物質11の評価
得られたリチウム二次電池用正極活物質11の組成分析を行い、組成式(II)に対応させたところ、a=0.01、x=0.696、y=0.201、z=0.103、w=0であった。
【0195】
下記表1に、実施例1〜6、比較例1〜5の前駆体半値幅α、前駆体半値幅β、α/β、初回充放電効率を記載する。
【0196】
【表1】
【0197】
上記結果に示した通り、本発明を適用した実施例1〜6は、初回充放電効率が88%以上と高かった。
これに対し、本発明を適用しない比較例1〜5は初回充放電効率がいずれも88%を下回る結果であった。
【0198】
≪前駆体のSEM観察≫
実施例5の前駆体の粒子のSEM画像を図2(b)に、該粒子表面のSEM画像を図2(a)に示す。
比較例2の前駆体の粒子のSEM画像を図3(b)に、該粒子表面のSEM画像を図3(a)に示す。図2(a)と、図3(a)とを比較すると、本発明を適用した場合に、結晶が規則的に成長していることが確認できる。このため、本発明の前駆体を用いて製造したリチウム二次電池用正極活物質は、結晶が規則的に成長することが十分に推察される。
【符号の説明】
【0199】
1…セパレータ、2…正極、3…負極、4…電極群、5…電池缶、6…電解液、7…トップインシュレーター、8…封口体、10…リチウム二次電池、21…正極リード、31…負極リード
図1
図2
図3