(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の溶液と前記第2の溶液とが混合された溶液に含まれる過酸化水素の濃度が所定の値となるように、前記第1の液体供給系及び前記第2の液体供給系の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部、をさらに有する請求項1記載の基板処理装置。
前記貯留タンクに貯留される前記第1の溶液と前記第2の溶液とが混合された溶液に含まれる過酸化水素の濃度が所定の値となるように、前記第1の液体供給系及び前記第2の液体供給系の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部、をさらに有する請求項5記載の基板処理装置。
前記気化ガスに含まれる過酸化水素と水の濃度の比率が所定の値となるように、前記第1の液体供給系及び前記第2の液体供給系の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部、を有する請求項2記載の基板処理装置。
前記気化ガスに含まれる過酸化水素の濃度が所定の値となるように、前記第1の液体供給系及び前記第2の液体供給系の少なくとも一方を制御するよう構成された制御部、を有する請求項1記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について、
図1〜
図5を用いて説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は反応管203を備えている。反応管203は、例えば石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端にガス供給ポート203pを有し、下端に炉口(開口)を有する円筒部材として構成されている。反応管203の筒中空部には、処理室201が形成される。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0010】
反応管203の下方には、反応管203の下端開口を気密に閉塞可能な蓋部としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えば石英等の非金属材料により構成されている。シールキャップ219の上面には、Oリング220が設けられている。シールキャップ219の下方には、回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、ボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。回転軸255に開設された回転軸255の軸受部219sは、磁気シール等の流体シールとして構成されている。シールキャップ219は、昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。
【0011】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成され、上下に天板217a、底板217bを備えている。ボート217の下部に水平姿勢で多段に支持された断熱体218は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成されている。
【0012】
反応管203の外側には、加熱部としてのヒータ207が設けられている。ヒータ207は、ウエハ収容領域に収容されたウエハ200を所定の温度に加熱する他、処理室201内へ供給されたガスに熱エネルギーを付与してその液化を抑制する液化抑制機構として機能したり、このガスを熱で活性化させる励起機構として機能したりする。処理室201内には、反応管203の内壁に沿って、温度検出部としての温度センサ263が設けられている。
【0013】
反応管203の上端に設けられたガス供給ポート203pには、ガス供給管232aが接続されている。ガス供給管232aには、上流側から順に、気化器としてのガス発生器250a、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a、開閉弁であるバルブ243a、ガス濃度計300aが設けられている。
【0014】
ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側であって、ガス濃度計300よりも上流側には、キャリアガス(希釈用ガス)を供給するガス供給管232bが接続されている。ガス供給管232bには、MFC241bおよびバルブ243bが設けられている。キャリアガスとしては、酸素(O
2)ガス等の酸素(O)含有ガスや、窒素(N
2)ガスや希ガス等の不活性ガス、或いは、これらの混合ガスを用いることができる。
【0015】
ガス発生器250aには、第1の溶液である液体原料を供給する第1の供給管としての液体供給管232cが接続されている。第1の溶液である液体原料としては、過酸化水素(H
2O
2)の含有濃度が第1の濃度以上の過酸化水素水を用いる。ここでは、第1の濃度の例は30%とし、第1の濃度以上の所定濃度の典型例として、本実施形態における液体原料の濃度は31%とする。ここで、過酸化水素水とは、常温で液体であるH2O2を、溶媒としての水(H2O)中に溶解させることで得られる水溶液のことである。液体供給管232cには、液体原料を貯留する貯留タンク(リザーバタンク)としての原料タンク250t、液体MFC(LMFC)241c、バルブ243cが設けられている。
【0016】
液体供給管232cのバルブ243cよりも下流側であって、ガス発生器250aよりも上流側には、第2の溶液である希釈用液体原料を供給する第2の供給管としての液体供給管232dが接続されている。第2の溶液である希釈用液体原料としては、H
2O
2の含有濃度が第1の濃度(ここでは30%)より低い第2の濃度以下の過酸化水素水を用いる。ここでは、第2の濃度の例は2%とし、第2の濃度以下の所定濃度の典型例として、本実施形態における希釈用液体原料の濃度は0%とする(即ち純水を用いる。)。なお、H
2O
2の含有濃度が0%の純水も、H
2O
2の含有濃度が第1の濃度より低い水溶液に含まれる。液体供給管232dには、LMFC241d、バルブ243dが設けられている。
【0017】
すなわち、ガス発生器250aの上流側において液体供給管232dが液体供給管232cに接続されることにより、ガス発生器250aには、液体原料と希釈用液体原料とが混合された溶液が供給されうる構成となっている。つまり、ガス発生器250aには、H
2O
2の含有濃度が30%以上の過酸化水素水と純水とが混合された溶液である、例えばH
2O
2の含有濃度が5%程度に希釈された過酸化水素水が供給されうる。
【0018】
ここで、純水で希釈される液体原料として用いる過酸化水素水の第1の濃度(30%)以上の所定のH
2O
2の濃度とは、特に、工業的に用いられる過酸化水素水の濃度として一般的な約31%が想定され、一般的に溶液中のH
2O
2が化学的に安定状態を維持できる上限濃度である35%以下が望ましい。
【0019】
原料タンク250tには、原料タンク250t内へ圧送ガスを供給する圧送ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232fには、MFC241f、バルブ243fが設けられている。圧送ガスは、原料タンク250t内の液体原料を液体供給管232cへ押し出すために用いられるもので、例えばキャリアガスと同様のガスを用いることができる。また、原料タンク250tには、その内部から液体原料を排出するドレイン管232gが設けられている。ドレイン管232gにはバルブ243gが設けられている。
【0020】
ガス発生器250aには、その内部へ気化用キャリアガスを供給するガス供給管232eが接続されている。ガス供給管232eには、MFC241e、バルブ243eが設けられている。気化用キャリアガスは、液体供給管232c,232dからガス発生器250aに供給された溶液を霧化して気化させ易くするために用いられるもので、例えばキャリアガスと同様のガスを用いることができる。
【0021】
ガス濃度計300aは、ガス供給管232aを流れる処理ガス中に含まれるH
2O
2やH
2Oの含有濃度を測定(検出)する。ガス濃度計300aは、セル内を流れる処理ガス中を通過した赤外線の分光スペクトルを解析することによって、処理ガス中のH
2O
2やH
2Oの含有濃度を測定する。
【0022】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243a、ガス濃度計300aにより、気化ガス供給系(第1供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、キャリアガス供給系(第2供給系)が構成される。主に、原料タンク250t、液体供給管232c、LMFC241c、バルブ243cにより、第1の液体供給系(第3供給系)が構成される。主に、液体供給管232d、LMFC241d、バルブ243dにより、第2の液体供給系(第4供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、気化用キャリアガス供給系(第5供給系)が構成される。主に、ガス供給管232f、MFC241f、バルブ243fにより、圧送ガス供給系(第6供給系)が構成される。
【0023】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ245および圧力調整器としてのAPCバルブ244を介して、排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
図2に、ガス発生器250aの構成を示す。ガス発生器250aは、液体原料と希釈用液体原料の混合溶液を例えば略大気圧下で120〜200℃の範囲内の所定の温度(気化温度)に加熱する等し、これを気化或いはミスト化させることによって気化ガスを発生させるように構成されている。本実施形態では、希釈された過酸化水素水を気化或いはミスト化する際に、気化用キャリアガスを希釈された過酸化水素水と共にガス発生器250aに供給することで、希釈された過酸化水素水を霧化している。
【0025】
ガス発生器250aは、気化容器101と、気化容器101で構成される気化空間102と、気化容器101を加熱する気化器ヒータ103と、過酸化水素水を気化させて生じた気化ガスをガス供給管232aへ排気(供給)する排気口104と、気化容器101の温度を測定する熱電対105と、熱電対105により測定された温度に基づいて、気化器ヒータ103の温度を制御する温度制御コントローラと、過酸化水素水を霧状にして気化容器101内に供給する霧化器107と、キャリアガス供給管232eから供給されるキャリアガスを気化容器101内に供給するキャリアガス導入口108と、断熱材109とで構成されている。
【0026】
気化容器101は、霧状にして供給された希釈された過酸化水素水が気化容器101内で気化するように気化器ヒータ103により加熱されている。気化容器101は石英やSiCなどで構成されている。
【0027】
過酸化水素水を気化させることで得られたガス中には、H2O2およびH2Oがそれぞれ所定の濃度で含まれる。以下、このガスを、H2O2含有ガスとも称する。処理ガス中に含まれるH2O2は、活性酸素の一種であり、不安定であって酸素(O)を放出しやすく、非常に強い酸化力を持つヒドロキシラジカル(OHラジカル)を生成させる。そのため、H2O2含有ガスは、後述する基板処理工程において、強力な酸化剤として作用する。
【0028】
図3に示すように、制御部であるコントローラ121は、CPU121a、RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介してCPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、タッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0029】
記憶装置121cはフラッシュメモリやHDD等により構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域として構成されている。
【0030】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a,241b,241e,241f、LMFC241c,241d、バルブ243a〜243g、ガス発生器250a、ガス濃度計300a、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0031】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、ガス発生器250aによるガス生成動作、ガス濃度計300aに基づくMFC241a,241b,241e,241f、LMFC241c,241dによる流量調整動作、バルブ243a〜243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0032】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0033】
(2)事前処理工程
ここで、ウエハ200に対して基板処理工程を実施する前に行われる事前処理工程について、
図4を用いて説明する。
【0034】
図4に示すように、本工程では、ウエハ200に対して、ポリシラザン(PHPS)塗布工程(S10)、プリベーク工程(S11)を順に実施する。PHPS塗布工程(S10)では、ウエハ200の表面上に、ポリシラザンを含む塗布液(ポリシラザン溶液)をスピンコーティング法等の手法を用いて塗布する。プリベーク工程(S11)では、塗膜が形成されたウエハ200を加熱処理することにより、この膜から溶剤を除去する。塗膜が形成されたウエハ200を、例えば70〜250℃の範囲内の処理温度(プリベーク温度)で加熱処理することにより、塗膜中から溶剤を揮発させることができる。この加熱処理は、好ましくは150℃程度で行われる。
【0035】
ウエハ200の表面に形成された塗膜は、プリベーク工程(S11)を経ることで、シリコン含有膜としてのシラザン結合(−Si−N−)を有する膜(ポリシラザン膜)となる。この膜には、シリコン(Si)の他、窒素(N)、水素(H)が含まれ、さらに、炭素(C)や他の不純物が混ざっている場合がある。後述する基板処理工程では、ウエハ200上に形成されたポリシラザン膜に対して改質(酸化)処理を行う。
【0036】
(3)基板処理工程
続いて、上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程の一例について、
図5を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0037】
(基板搬入工程、S20)
表面にポリシラザン膜が形成された複数枚のウエハ200が、ボート217に装填される。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入される。この状態で、シールキャップ219は反応管203の下端をシールした状態となる。
【0038】
(圧力・温度調整工程、S21)
真空ポンプ246によって、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間を所定の時間、真空排気(真空パージ)した後、バルブ243bを開き、処理室201内へのO
2ガス(キャリアガス)の供給を行う。この際、所定の圧力(改質圧力)となるように、真空ポンプ246によって処理室201内が継続的に排気される。処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。またこの際、ウエハ200が所定の温度となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づいてヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。真空ポンプ246の稼働、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、ウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0039】
(改質工程、S22)
続いて、バルブ243c,243d,243eを開き、LMFC241c,241d、MFC241eにより流量制御しながら、ガス発生器250aへ混合溶液である希釈された過酸化水素水と気化用キャリアガスの供給を開始し、ガス発生器250aによりH
2O
2ガスおよびH
2Oガスを含む気化ガスを発生させる。このとき、ガス発生器250aへ供給される混合溶液に含まれるH
2O
2の濃度が所定の値であって、例えば5%程度となるように、液体原料と希釈用液体原料の流量(特に流量比)が調整される。これにより、気化ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの濃度の比率が所望の値に調整される。具体的には、コントローラ121によりLMFC241c及びLMFC241dの少なくとも一方を、ガス発生器250aに供給される混合溶液の濃度が所定の値となるように制御する。また、混合溶液の流量を調整することにより気化ガスに含まれるH
2O
2の濃度を調整することもできる。なお、液体原料である過酸化水素水は、バルブ243fを開き、MFC241fにより流量制御しながら、原料タンク250tへ圧送ガスを供給することにより、原料タンク250t内から液体供給管232cへと押し出される。
【0040】
気化ガスの発生量や濃度等が安定したら、バルブ243aを開き、MFC241aにより流量制御しながら、ガス供給ポート203pを介した処理室201内への処理ガスとしての供給を開始する。このとき、ウエハ200に対して処理ガスが供給される。その結果、ウエハ200の表面で酸化反応が生じ、ウエハ200上のポリシラザン膜は、シリコン酸化膜(SiO膜)へと改質される。
【0041】
なお、処理室201内へ処理ガスを供給する際、MFC241bにより流量調整しながら、ガス供給管232aから処理室201内へのO
2ガスの供給が継続的に行われる。本明細書では、O
2ガスにより希釈された処理ガスを、便宜上、単に処理ガスと称する場合がある。O
2ガスの流量を調整することによって、処理ガス中のH
2O
2の含有濃度が所定の値となるように調整することもできる。
【0042】
ここで本実施形態では、ガス濃度計300aにより処理ガス中に含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度を測定し、測定された含有濃度の値に基づいて、第1の液体供給系及び第2の液体供給系の少なくとも一方を制御することもできる。具体的には、ガス濃度計300aにより取得される処理ガス中に含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率を測定し、その値が所望の値(例えば5:95程度)となるような液体原料と希釈用液体原料の流量比を予め決定する。そして、液体原料と希釈用液体原料の流量比が予め決定された比率となるように、コントローラ121によりLMFC241c及びLMFC241dの少なくとも一方を制御して、ガス発生器250aに供給される希釈された液体原料の濃度を調整する。また、ガス濃度計300aにより取得される処理ガス中の含有濃度の比率に基づいて、測定される比率が所定の比率になるように、液体原料と希釈用液体原料の流量比を随時フィードバック制御してもよい。
【0043】
また同様に本実施形態では、ガス濃度計300aにより処理ガス中に含まれるH
2O
2の含有濃度が測定され、測定された含有濃度の値に基づいて、第1の液体供給系、第2の液体供給系及びキャリアガス供給系の少なくとも一つを制御することもできる。具体的には、ガス濃度計300aにより取得される処理ガス中に含まれるH
2O
2の含有濃度を測定し、その濃度が所望の値(例えば1.5〜18.5モル%、好ましくは2.1〜13.5モル%)となるような液体原料、希釈用液体原料及びO
2ガスの流量を予め決定する。そして、それらの流量が予め決定された流量となるように、コントローラ121によりLMFC241c、LMFC241d、MFC241b及びMFC241eの少なくとも一つを制御する。そして、所望のH
2O
2の含有濃度の処理ガスをウエハに対して供給することができる。また、ガス濃度計300aにより取得される処理ガス中の含有濃度値に基づいて、測定値が所定の値になるように、液体原料、希釈用液体原料及びO
2ガスの流量の少なくともいずれかを随時フィードバック制御してもよい。
【0044】
所定時間が経過し、ポリシラザン膜のSiO膜への改質が終了したら、バルブ243aを閉じ、処理室201内への処理ガスの供給を停止する。
【0045】
改質工程の処理条件としては、以下が例示される。
処理温度:250℃以下、好ましくは100℃以下
処理圧力:1100hPa以下
希釈された過酸化水素水(混合溶液)のH
2O
2濃度:30%未満、好ましくは5%以下
希釈された過酸化水素水(混合溶液)の供給流量:3ccm
O
2ガス(気化用キャリアガス)の供給流量:15000ccm
ガス供給時間:180分以下、好ましくは15分以下
【0046】
ここで、気化ガスに含まれるH
2O
2は、上述したように非常に強い酸化力を有する。そのため、ポリシラザン膜に対する酸化処理を、H
2O
2の含有濃度が30%以上の過酸化水素水を気化させて生成された気化ガスを処理ガスとして供給して行うと、酸化膜へ改質する速度が比較的速いため、低温で短時間に緻密な酸化膜に改質してしまい、膜密度や膜特性の制御が困難であった。一方、ポリシラザン膜に対する酸化処理を、水蒸気を用いて行うと、低温での酸化膜へ改質する速度がH
2O
2を用いる場合と比較すると非常に遅く、H
2O
2を用いた場合より高温若しくは長い時間で処理をする必要があるため、膜収縮量が増加してしまうという課題があった。
【0047】
本実施形態では、液体原料としてH
2O
2の含有濃度が31%の過酸化水素水とH
2O
2の含有濃度が0%の純水を混合して、5%程度に希釈された過酸化水素水を生成し、これを気化してポリシラザン膜に対して酸化処理を行う。これにより、酸化膜の改質速度を遅くして、膜中にシラザン結合が残留するように酸化膜を形成することができる。すなわち、膜特性の制御を可能とし、緻密な酸化膜に改質することができる。例えば、ポリシラザン膜に対する膜密度を低減させ、酸化処理の対象となるポリシラザン膜の熱収縮を防いだり、この膜に加わるストレスを低減させたりすることが可能となる。
【0048】
<本実施形態の変形例>
なお、上述した実施形態では、H
2O
2の含有濃度が5%程度に希釈された過酸化水素水をガス発生器250aに供給して気化し、気化された処理ガスとしての過酸化水素ガスを処理室201内へ供給する構成について説明したが、H
2O
2の含有濃度が高濃度(例えば第1の濃度以上)の液体原料をガス発生器250aに供給する工程と、H
2O
2の含有濃度が低濃度(例えば第2の濃度以下)の希釈用液体原料をガス発生器250aに供給する工程と、を交互に所定回数行うように、第1の液体供給系と第2の液体供給系を制御してもよい。つまり、H
2O
2の含有濃度が高濃度の液体原料の気化ガスを処理室201内に供給する工程と、H
2O
2の含有濃度が低濃度の希釈用液体原料の気化ガスを処理室201内に供給する工程と、を交互に所定回数行うようにしてもよい。このとき、高濃度の液体原料の気化ガスを処理室201内に供給する工程を、低濃度の希釈用液体原料の気化ガスを処理室201内に供給する工程よりも短くすることにより、ポリシラザン膜の酸化度合を微調整するとよい。例えば、50μmのポリシラザン膜に対して、H
2O
2の含有濃度が31%の過酸化水素水の気化ガス(過酸化水素ガス)を5分供給し、純水の気化ガス(水蒸気)の供給を10分としてそれぞれ交互に供給するようにしてもよい。
【0049】
(乾燥工程、S23)
改質工程が終了したら、ヒータ207を制御し、ウエハ200をプリベーク温度以下の所定の温度(乾燥温度)に加熱する。乾燥温度は、例えば120〜160℃の範囲内の温度とすることができる。昇温後、この温度を保持することにより、ウエハ200と処理室201内とを緩やかに乾燥させる。乾燥工程の処理圧力は、例えば改質工程の処理圧力と同様とする。乾燥処理を行うことで、ポリシラザン膜から離脱した副生成物等を、SiO膜やその表面から除去することができる。
【0050】
(降温・大気圧復帰工程、S24)
乾燥工程が終了した後、処理室201内を真空排気する。その後、処理室201内へN
2ガス等の不活性ガスを供給してその内部を大気圧に復帰させる。所定時間経過した後、処理室201内を所定の搬出可能温度に降温させる。
【0051】
(基板搬出工程、S25)
ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、反応管203の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態で、反応管203の下端から反応管203の外部に搬出される。
【0052】
(4)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)処理ガス中に含まれるH
2O
2の含有濃度、特にH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率を所望の値となるように容易に調整できるため、ポリシラザン膜に対する酸化処理の改質度合を制御して、膜中にシラザン結合が残留するように酸化膜を形成することができる。つまり、膜特性の制御が可能となり、用途に応じた膜を形成することが可能となる。
(b)例えば膜密度を下げて熱伝導率を低減するように、NやHのような不純物が膜中に残存した膜を形成したり、膜の密度や収縮率を所望の範囲にしたりして、用途に応じた膜を形成することができる。
(c)特に、酸化処理されたポリシラザン膜の膜密度を低減させることで、酸化処理の対象となるポリシラザン膜の熱収縮を防いで熱伝導率を低くしたり、この膜に加わるストレスを低減させたりすることが可能となる。
【0053】
<本発明の第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態について
図6に基づいて説明する。以下において、上述の実施形態と同様の構成及び工程については、詳細な説明を省略する。
【0054】
本実施形態の基板処理装置では、希釈用液体原料を供給する第2の液体供給系(液体供給管232d、LMFC241d、バルブ243d)が原料タンク250tに接続されている。つまり、液体供給管232dから供給される希釈用液体原料が、原料タンク250t内で液体原料に混合される。
【0055】
また、原料タンク250tには、LMFC241k及びバルブ243kが設けられた液体供給管232kが接続されている。外部の液体原料供給源から送出される希釈されていない液体原料は、液体供給管232kを介して原料タンク250t内に供給される。本実施形態では、液体供給管232k、LMFC241k及びバルブ243kにより第1の液体供給系が構成される。
【0056】
ここで、第1の実施形態では、液体供給管232cと液体供給管232dの接続部において液体原料と希釈用液体原料が混合され、その混合溶液に含まれるH
2O
2の濃度が所定の値となるように各液体供給系が制御されたのに対し、本実施形態では、原料タンク250t内に貯留された混合溶液である希釈された過酸化水素水に含まれるH
2O
2の含有濃度が同じく所定の値となるように各液体供給系が制御される。具体的には、コントローラ121により、LMFC241d及びLMFC241kの少なくとも一方を、原料タンク250t内に貯留された混合溶液に含まれるH
2O
2の含有濃度が所定の値(例えば5%程度)となるように制御する。原料タンク250t内における混合溶液の濃度調整は、ガス発生器250aに混合溶液の供給を開始する前に予め行われる。
【0057】
この濃度調整では、例えば、バルブ243gを開けて原料タンク250t内の溶液を全て排出した後、LMFC241d及びLMFC241kをそれぞれ制御して、液体原料及び希釈用液体原料をそれぞれ所定量だけ(所定比率で)原料タンク250tに供給することにより、所定の濃度の混合溶液を貯留させることができる。液体原料及び希釈用液体原料のどちらか一方を先に原料タンク250t内に供給しておいてから混合させてもよい。
【0058】
また、原料タンク250t内の溶液のH
2O
2の含有濃度を測定する濃度センサを更に設けてもよい。当該濃度センサで測定された濃度に基づいて、原料タンク250t内の溶液の濃度が所定の値となるように、LMFC241d及びLMFC241kの少なくとも一方を流量制御して、液体原料及び希釈用液体原料の少なくとも一方を原料タンク250t内に供給することにより、所定の濃度の混合溶液を貯留させることができる。
【0059】
そして改質工程(S22)では、原料タンク250t内の混合溶液に含まれるH
2O
2の含有濃度が所定値になっている状態で、バルブ243fを開き、原料タンク250tへ圧送ガスを供給することにより、混合溶液が原料タンク250t内から液体供給管232cへと押し出され、LMFC241c、バルブ243cを介して、ガス発生部250aに供給される。つまり、一定のH
2O
2の含有濃度の混合溶液を安定してガス発生器250aに供給することが可能となる。そして、気化ガスの発生量や濃度等が安定したら、バルブ243aを開き、MFC241aにより流量制御しながら、処理室201内への処理ガスとしての供給を開始する。
【0060】
<本発明の第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態について
図7に基づいて説明する。
【0061】
本実施形態の基板処理装置は、液体原料を気化する第1の気化器としてのガス発生器250aと、希釈用液体原料を気化する第2の気化器としてのガス発生器250bの2つを備える。そして、ガス発生器250aにより生成された第1の気化ガスと、ガス発生器250bにより生成された第2の気化ガスをそれぞれガス供給ポート203p,203qを介して処理室201内に供給する。
【0062】
具体的には、反応管203の上端に設けられたガス供給ポート203qには、ガス供給管232jが接続されている。ガス供給管232jには、ガス発生器250b、MFC241j、バルブ243j、ガス濃度計300bが設けられている。
【0063】
ガス発生器250bには、その内部へ気化用キャリアガスを供給するガス供給管232iが接続されている。ガス供給管232iには、MFC241i、バルブ243iが設けられている。ガス供給管232jには、キャリアガスを供給するガス供給管232hが接続されている。ガス供給管232hには、MFC241hおよびバルブ243hが設けられている。ガス濃度計300bは、ガス供給管232jを流れる第2の気化ガス中に含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度を測定(検出)する。
【0064】
本実施形態では、主に、ガス供給管232h、MFC241h、バルブ243hにより、第2のキャリアガス供給系(第7供給系)が構成される。主に、ガス供給管232i、MFC241i、バルブ243iにより、第2の気化用キャリアガス供給系(第8供給系)が構成される。主に、ガス供給管232j、MFC241j、バルブ243j、ガス発生器250b、ガス濃度計300bにより、第2の気化ガス供給系(第9供給系)が構成される。
【0065】
本実施形態における改質工程(S22)では、ガス濃度計300a及びガス濃度計300bそれぞれによって測定されたH
2O
2とH
2Oの含有濃度に基づいて、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系の少なくとも一方を制御する。
【0066】
具体的には、処理室201内に供給される処理ガス、すなわち、ガス供給ポート203p、203qからそれぞれ供給される処理ガスの混合ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率が所定の比率となるように、コントローラ121により、MFC241a及びMFC241jの少なくとも一方を流量制御する。つまり、一定のH
2O
2とH
2Oの濃度比率を有する液体原料の気化ガスと、一定のH
2O
2とH
2Oの濃度比率を有する希釈用液体原料の気化ガスとをそれぞれ処理ガスとしてガス供給ポート203p,203qを介して処理室201内に供給する。
【0067】
また、LMFC241c及びLMFC241dの少なくとも一方を流量制御することにより、ガス発生器250aに供給される液体原料及びガス発生器250bに供給される希釈用液体原料の少なくとも一方の供給量を調整する。そして、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系から供給される処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度をそれぞれ調整するようにしてもよい。
【0068】
なお、ガス濃度計300a及びガス濃度計300bに替えて、処理室201内又は排気管231に設けられた図示しないガス濃度計によって測定された処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度に基づいて、処理室201内の混合ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率が所定の比率となるように、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系を制御してもよい。
【0069】
また、ガス濃度計300a,300bを用いずに、ガス発生器250a,250bそれぞれに供給される液体原料、希釈用液体原料、希釈用キャリアガスの各流量が予め設定された値となるようにLMFC241c、LMFC241d、MFC241e、MFC241i等を制御することで、処理室201内の処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率やH
2O
2の含有濃度を所望の値となるようにしてもよい。この場合、各流量の設定値は、例えば事前の実験等に基づいて決定することができる。
【0070】
<本発明の第4の実施形態>
続いて、本発明の第4の実施形態について
図8に基づいて説明する。
【0071】
上述の第3の実施形態では、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系が、それぞれ独立して処理室201に接続される例について説明したが、本実施形態の基板処理装置では、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系が、処理室201の上流において接続(合流)されている点が異なる。すなわち、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系のそれぞれから供給される処理ガスが、ガス供給管232a内で混合されて処理室201内に供給される。
【0072】
具体的には、第1の気化ガス供給系のガス濃度計300aの下流側に、第2の気化ガス供給系が接続されている。そして、第1の気化ガス供給系と第2の気化ガス供給系の接続部の下流側に第1のキャリアガス供給系(ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243b)が接続されている。そして、第1の気化ガス供給系と第1のキャリアガス供給系との接続部の下流側に、ガス濃度計300cが設けられている。ガス濃度計300cは、第1の気化ガスと第2の気化ガスの混合ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度を測定する。
【0073】
そして、本実施形態に係る改質工程(S22)では、ガス濃度計300cによって測定されたH
2O
2とH
2Oの含有濃度に基づいて、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系の少なくとも一方を制御する。具体的には、ガス濃度計300cで測定される混合ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率が所定の比率となるように、コントローラ121により、MFC241a及びMFC241jの少なくとも一方を流量制御する。
【0074】
また、LMFC241c及びLMFC241dの少なくとも一方を流量制御することにより、ガス発生器250aに供給される液体原料及びガス発生器250bに供給される希釈用液体原料の少なくとも一方の供給量を調整し、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系からそれぞれ供給される処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度を調整するようにしてもよい。
【0075】
なお、ガス濃度計300cを設けずに、ガス濃度計300a及びガス濃度計300bでそれぞれ測定された処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度に基づいて、処理室201内に供給される混合ガスに含まれるH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率が所定の比率となるように、第1の気化ガス供給系及び第2の気化ガス供給系を制御してもよい。
【0076】
また、第3の実施形態と同様、ガス濃度計300a,300b,300cのいずれも用いずに、ガス発生器250a,250bそれぞれに供給される液体原料、希釈用液体原料、希釈用キャリアガスの各流量が予め設定された値となるようにLMFC241c、LMFC241d、MFC241e、MFC241i等を制御することで、処理室201内の処理ガス中のH
2O
2とH
2Oの含有濃度の比率やH
2O
2の含有濃度を所望の値となるようにしてもよい。
【0077】
なお、上述した第3の実施形態及び第4の実施形態では、液体原料を気化した第1の気化ガスと希釈用液体原料を気化した第2の気化ガスとを同時に供給する構成について説明したが、第1の実施形態の変形例と同様、第1の気化ガスを供給する工程と、第2の気化ガスを供給する工程と、を交互に所定回数行うようにしてもよい。このとき、第1の気化ガスを供給する工程を、第2の気化ガスを供給する工程よりも短くするとよい。第3の実施形態及び第4の実施形態では、ガス発生器250a,250bがそれぞれ設けられるため、工程ごとに液体原料と希釈用液体原料の供給切替やガス発生器における気化温度の変更等を行う必要がなく、本変形例の実施により好適である。
【0078】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0079】
上述の実施形態では、ポリシラザン膜が形成された基板を処理する例を示したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、処理対象の膜がポリシラザン膜でなくとも、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0080】
上述の実施形態では、PHPS塗布工程とプリベーク工程とを施すことで形成されたポリシラザン膜を処理する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、Flowable CVD法で形成され、プリベークされてないポリシラザン膜等のシリコン含有膜を処理する場合においても、上述の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
上述の実施形態では、希釈用液体原料を供給する液体供給系が原料タンクを備えない構成について説明したが、希釈用液体原料を供給する液体供給系も原料タンクを備える構成としてもよい。特に希釈用液体原料として過酸化水素を含有する溶液を用いる場合には、原料タンクを備えることが望ましい。
【0082】
上述の実施形態や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。また、このときの処理手順、処理条件は、例えば上述の実施形態と同様な処理手順、処理条件とすることができる。
【0083】
<実施例>
以下、本発明の実施例を説明する。
【0084】
本実施例では、ウエハ上に塗布された200nmの厚さのポリシラザン膜に対して、
図1に示す基板処理装置を用いてそれぞれの条件により酸化処理を行ってウエハ上にシリコン酸化膜を形成した。以下に示す点以外については、第1の実施形態に示す処理工程と同じ工程及び条件の下で処理を行った。
【0085】
上述の実施形態における改質工程(S22)において、比較例1として、H
2O
2の含有濃度30%の過酸化水素水を気化した過酸化水素ガスを100℃で15分間供給して酸化処理を行った。また、比較例2として、純水を気化した水蒸気を200℃で60分間供給して酸化処理を行った。また、比較例3として、純水を気化した水蒸気を250℃で60分間供給して酸化処理を行った。また、本実施例として、ガス発生器250aの上流においてH
2O
2の含有濃度5%に希釈された過酸化水素水を気化した過酸化水素ガスを100℃で15分間供給して酸化処理を行った。
【0086】
図9は、比較例1〜比較例3及び実施例によりそれぞれ形成されたシリコン酸化膜の膜密度と膜収縮率の比較結果を示す図である。
図9の縦軸は膜密度(g/cm
3)を、横軸は膜収縮率(%)をそれぞれ示している。なお、膜密度は、XRR(X線反射率法)を用いて測定した。
図9によれば、本実施例により形成された膜は、比較例1〜比較例3により形成された膜よりも膜密度が低く、かつ膜収縮率も低くすることができたことが分かる。すなわち、H
2O
2を処理ガスとして用いることで膜収縮率を低減することができ、H
2O
2の含有濃度を30%よりも少なくすることにより、膜密度を低減することができたと言える。
【0087】
図10は、比較例1及び実施例によりそれぞれ形成されたシリコン酸化膜のFT−IRの測定結果を示す図である。
図10の縦軸は吸光度を、横軸は波数をそれぞれ示している。
図10に示されているように、本実施例により形成された酸化膜は、Si−OH、Si−N、N−Hの存在を示すピークが残存しており、膜中にOH基やN,O等が有意な濃度で残留していることが分かる。一方、比較例1により形成された酸化膜は、ほぼ完全なSi−O構造になっていることが分かる。つまり、H
2O
2の含有濃度を調整することにより、膜中のOH基やN,O等の成分の量を制御し、膜特性の制御ができたと言える。