(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、以下の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0010】
本発明に係る実施形態の化粧板は、意匠性を有する脆性の板状体と、板状体に積層された樹脂層とを有する。板状体の意匠性は、板状体自体が模様や色彩等を有することで意匠性を発現してもよく、意匠性が板状体と樹脂層との間に介在された意匠層によって付与されてもよい。この意匠層は、板状体と一体化されていてもよく、また、板状体と一体化されていなくともよい。また、板状体と樹脂層との間に介在された意匠層は、板状体の表面に直接形成された意匠層及び樹脂層の表面に直接形成された意匠層の形態も含む。
【0011】
また本実施形態の樹脂層は、板状体の表面の80%以上に積層されるのが好ましい。より好ましくは、樹脂層が板状体の表面の90%以上に積層される。板状体の大部分に樹脂層を積層させることにより、大きな衝撃が加えられても割れ難く、割れたとしても飛散しない化粧板となる。
【0012】
板状体としては、脆性材料であれば、本発明の効果を享受できる。例えば、ガラス板、樹脂板やセラミック板が挙げられる。以下では、ガラス板を用いたガラス化粧板の例について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態を示す模式的断面図である。本実施形態における化粧板1は、ガラス板2と、ガラス板2に積層された樹脂層3と、ガラス板2と樹脂層3との間に介在された意匠層4とを有している。
【0014】
本実施形態の化粧板1は、壁、天井等の建材や収納家具等の各種用途に適用できる。ガラス板2を樹脂層3と積層させることによってガラス板2を補強して割れ難くし、万が一割れた時にも、ガラス板2と樹脂層3とが接着されていることによりガラス片が飛散しないため、従来のガラス化粧板にない高い安全性を有する。一方、従来のガラス化粧板と同様に、ガラス板2に意匠層4が密着されるため、高級感のある美観を演出できる。
【0015】
ガラス板2は、ガラスの種類は、特に限定されないが、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラスやアルミノシリケートガラス等が挙げられる。化学強化処理を施す場合には、酸化物基準の質量%でAl
2O
3を3%以上含有するアルミノシリケートガラスが好ましい。ガラス板2の板厚は、0.5mm以上が好ましい。ガラス板2の板厚が0.5mm以上であると、樹脂層と積層することにより充分な強度が得られる。1.0mm以上がより好ましく、1.5mm以上がさらに好ましい。また、板厚が8.0mm以下であると、従来のガラス化粧板の板厚と同等であるため、壁面への施工も従来と同様に特別な作業を要さないため好ましい。また、6.0mm以下がさらに好ましい。
【0016】
ところで、ガラス板は、比重が大きく、壁面へ施工するガラス化粧板ではガラス板が大面積となるため、重量が非常に重くなる。そのためガラス化粧板の壁面への施工は、作業員が数名で施工する必要があるなど容易ではなかった。本実施形態では、樹脂層3と積層して強度が確保できるため、ガラス板の薄板化が可能となる。すなわち、従来のガラス化粧板よりも重量が軽くなるため、ガラス板の板厚は、5.0mm以下が好ましい。また、4.0mm以下がさらに好ましく、3.0mm以下が特に好ましい。2.5mm以下であってもよい。
【0017】
一方、強度を確保するため、ガラス板の板厚は、0.5mm以上が好ましい。このようにガラス化粧板の薄板化が可能となるため、本実施形態のガラス化粧板の面積は、特に限定されないが、1m
2以上であるときに従来のガラス化粧板と比較して軽量化できるため効果的である。さらに2m
2以上のときに効果的である。また、ガラス化粧板を軽量化できることにより、従来は脱落防止のために接着材により強固に下地材に貼り付けていたが、下地材に留め具を準備して接着材を使用しない嵌め込みによる施工も可能となる。
【0018】
ガラス板2は、意匠層4と密着していることが好ましい。密着することによってガラス板を通して意匠層4を見た時のガラス化粧板は、奥行き感、高級感が増し美観上優れる。また、ガラス板2の標準A光源に基づく可視光透過率(JIS R3106に準拠して求められる)は、60%以上であることが美観上好ましく、より好ましくは70%以上である。
【0019】
なお、ガラス板2は、ガラス板2の表面にテクスチャーを設けるために、表面にフロスト加工等の後加工によってテクスチャー処理を施してもよい。
ガラス板2は、公知の方法で製造できる。すなわち、フロート法、フュージョン法、ダウンドロー法、ロールアウト法等によりリボン状に成形されたガラスを切断して製造される。
【0020】
ガラス板2は、表層に圧縮応力層を有していてもよい。ガラス板2が強化処理を施されると、ガラス板2は、強化ガラス板となる。強化処理が施された強化ガラス板は、強化処理が施されていない場合と比較して割れ難くなり好ましい。強化ガラス板は、表層に圧縮応力層、すなわち、残留圧縮応力を有する表面層及び裏面層、並びに表面層と裏面層との間に形成され、残留引張応力を有する中間層を含む。強化ガラス板の板厚方向両端から内部に向かうほど残留圧縮応力が小さくなり、強化ガラス板の内部には残留引張応力が生じている。
【0021】
強化ガラス板の端面は、表面層及び裏面層に連続して残留圧縮応力で覆われていてもよい。強化ガラス板の端面が残留圧縮応力で覆われることで、衝撃に対して割れ難くなり好ましい。なお、強化ガラス板の端面は、残留圧縮応力で覆われておらず、強化ガラス板の端面に中間層の端面が露出していてもよい。その場合は、樹脂などのカバー材料で覆われていることが好ましい。
【0022】
強化ガラス板は、強化処理を施すことでガラス板の表面や裏面に残留圧縮応力を生じさせて、作製される。強化ガラス板は、イオン交換法等の化学強化処理によって得られる化学強化ガラス、風冷強化法等の物理強化処理によって得られる物理強化ガラスのいずれでもよい。化学強化処理であれば、より板厚の薄いガラス板であっても表面層や裏面層の残留圧縮応力の値を大きくできる。例えば、表層の残留圧縮応力の値は、300MPa以上が好ましく、400MPa以上がより好ましい。化学強化ガラスの場合、圧縮応力層の厚さは、50μm以下であってよく、40μm以下であってもよい。
【0023】
イオン交換法は、ガラス板の表面や裏面をイオン交換し、ガラスに含まれる小さなイオン半径のイオン(例えば、Liイオン、Naイオン)を大きなイオン半径のイオン(例えば、Kイオン)に置換する。これにより、ガラス板の表面や裏面に残留圧縮応力を生じさせることができる。イオン交換法では、ガラス板を高温の処理液に浸漬してイオン交換を行う。
【0024】
風冷強化法は、軟化点付近の温度のガラス板を両側から急冷し、ガラス板の表面や裏面と、ガラス板の内部との間に温度差をつけることで、ガラス板の表面や裏面に残留圧縮応力を生じさせることができる。風冷強化法等の物理強化法は、強化処理に要する時間が数秒から数十秒であるため、イオン交換法等による化学強化法よりも生産性が非常に優れている。
【0025】
ガラス板2と樹脂層3との間には意匠層4が形成されている。意匠層4は、例えば、着色顔料を含む塗料をガラス板2の表面に塗布して乾燥、硬化させることによって形成できる。塗料は、例えば、アクリル樹脂系塗料が挙げられる。アクリル樹脂系塗料は、付着力が大きく、耐候性、耐食性にも優れている。また、仕上げが美麗である点で好ましい。なお、意匠層4は、意匠性を付与できるものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料であってもよく、着色顔料も様々な色であってよい。また、意匠層4は、金属を蒸着させた鏡であってもよい。
塗料の塗布方法としては、特に限定されないが、例えばロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法、フローコート法、スクリーン印刷法、スピンコート法等が用いられる。
【0026】
また、意匠層4は、シート状に成形された意匠層4をガラス板2に接着剤などによって貼着させてもよい。その場合、シート状に成形された意匠層4は、単色であっても複数色であってもよいし、天然石調やレンガ調等の模様が形成されていてもよい。
【0027】
樹脂層3は、厚さが1.5mm以上である。樹脂層3の厚さが1.5mm以上であると、ガラス板2と積層させた際に充分な強度が得られる。また、樹脂層3の厚さが2.0mm以上であると、剛性があるため施工時の取り扱いが容易となる。さらに好ましくは3.0mm以上である。また、樹脂層3の厚さが8mm以下であると、従来のガラス化粧板の板厚と同等であるため、壁面への施工も従来と同様に特別な作業を要さないため好ましい。また、6mm以下がさらに好ましい。また、樹脂層3の形状は、平面視でガラス板2と同じであることが好ましい。
【0028】
さらに、樹脂層3は、衝撃や火災によるガラス板2の割れを抑制し、万が一ガラス板2が破損したときにガラス破片の飛散を防止することができる。
また、樹脂層3は独立気泡体である。樹脂層3が独立気泡体であるため、軽量である。また樹脂層3が緩衝層となって、壁面への施工時に、壁面の凹凸を吸収できる。
【0029】
樹脂層3は、板状の部材であってもよいし、ガラス板2に射出成型や押出成型で一体成形されてもよい。樹脂層3が板状の部材であった場合、ガラス板2と板状の樹脂層3とを意匠層4がガラス板2と樹脂層3の間に介在するように接着剤、粘着剤(以下、粘着剤を含め、接着剤という。)等で貼着される。接着剤は、樹脂層3の全面に塗布されてもよいし、一部でもよい。接着剤を全面に塗布する方が、ガラス板が割れ難くなるため有利である。また、ガラス板2の意匠層4に接着剤を塗布してもよい。接着剤としては、一般的な建築用シーリング材が使用でき、例えば変成シリコーン系シーリング材、アクリル系粘着剤や合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。接着剤は、両面テープのようなシート状であってもよい。また、接着剤は、不燃性が高くなるよう材料や塗布量を選定することが建築材料として好適である。
【0030】
樹脂層3をガラス板2に一体成形させる場合は、意匠層4が形成されたガラス板2を成形型内に設置して意匠層4上に樹脂が射出されて一体成形される。押出成形の場合は、ガラス板2の意匠層4上に樹脂が押出型より供給され硬化されることで一体成形される。なお、必要に応じて、ガラス板2側に接着剤や下塗り剤(プライマー)、例えばシランカップリング剤等を塗布した後に樹脂層3を一体成型してもよい。
【0031】
ガラス板2と樹脂層3とを合わせた総厚は、2.5mm以上、10mm以下が好ましい。2.5mm以上であると、充分な強度が得られ、ガラス板2が割れ難い。また、ガラス化粧板は、大面積となることが多く、剛性があることで施工性が高くなる。該総厚は、2.5mm以上であることで充分な剛性が得られ、施工性が良く、好ましくは、3.0mm以上であり、より好ましくは4.0mm以上である。また、該総厚は、好ましくは10mm以下であり、さらに好ましくは8.0mm以下であることで、従来のガラス化粧板の板厚と同等であるため、壁面への施工も従来と同様に特別な作業を要さないため好ましい。
【0032】
樹脂層3のショアA硬度は、10以上、60以下である。なお、本発明願でいうショアA硬度は、デュロメータ(アスカー社製アスカーゴム硬度計A型)の測定値による。被測定物の表面に圧子(押針)を押し込み変形させ、その変形量(押込み深さ)を測定し、少なくとも4か所の平均値とする。樹脂層3が薄く軟い場合には、厚さが6〜12mmになるように樹脂層を重ね合わせて計測する。ショアA硬度が10以上であれば、充分な剛性を有するため施工性が良く、また、樹脂層3が変形しにくいため、ガラス板2が変形しにくく割れにくい。ショアA硬度は、好ましくは20以上であり、より好ましくは30以上である。また、ショアA硬度が60以下であれば充分な衝撃吸収性を有するため、ガラス板2が強い衝撃を受けたとしても割れ難い。ショアA硬度は好ましくは50以下である。
【0033】
本実施形態の樹脂層3は、例えば、ガラス板2に物体が衝突した場合に衝撃を吸収するために所定の弾性を有する弾性体であることが好ましい。しかしながら、弾性が大き過ぎるとガラス板2が強い衝撃を受けた時に局所的に曲がって破損することがある。すなわち、樹脂層3は、充分な衝撃吸収ができ、かつガラス板2の変形量が大きくならない程度のショアA硬度が必要であり、樹脂層3が上記ショアA硬度を有することによりこれが達成できる。
【0034】
樹脂層3は、独立気泡体であり、樹脂層3を上記のショアA硬度にすることが容易に制御できる。すなわち、発泡倍率を変化させることによって、ショアA硬度の制御が容易となり、本実施形態の化粧板1を使用する場所に合わせて、樹脂層3を必要とされるショアA硬度にすることが容易に可能となる。また、独立気泡体の樹脂層は、連続気泡体の樹脂層と比べてゴム弾性的な反発性を有するためにショアA硬度を高くすることができる。さらに、独立気泡体の樹脂層は、水分が浸透しにくいため、劣化しにくく、樹脂層3に接する材料の止水層の役割がある。
【0035】
樹脂層3は、発泡ポリエチレン樹脂または発泡ゴムであってもよい。これらの樹脂であれば燃えにくいため、建築材料として不燃材の認定が得られやすくなるため好ましい。また発泡させることができるため、上記したようなショアA硬度にすることが容易に制御できるので製造上好ましい。
樹脂層3が発泡ポリエチレン樹脂であれば、耐熱性、寒暖の変化への耐久性(以下、耐冷熱サイクル性という)、耐湿性、耐水性、塩酸、水酸化ナトリウム等の耐薬品性、紫外線により劣化しにくい耐光性に優れる。
一方、樹脂層3が発泡ポリウレタン樹脂であると、独立気泡体であってもショアA硬度は10未満であり、樹脂層3が変形しやすいため、ガラス板2が変形しやすく割れやすい。
【0036】
ガラス板2の板厚Tと樹脂層3のショアA硬度Hの積T×Hは、8以上、250以下が好ましい。板厚Tが薄いガラス板2の化粧板は、ショアA硬度Hが大きい樹脂層3であることが好ましい。T×Hが8以上であれば、ガラス板2が変形しにくく割れにくい。T×Hは、13以上がより好ましく、17以上がさらに好ましく、20以上が特に好ましく、25以上が最も好ましい。また、T×Hが250以下であれば、軽量であり、ガラス板2が強い衝撃を受けたとしても割れ難い。T×Hは、100以下がより好ましく、75以下がさらに好ましい。
【0037】
ガラス板2は、樹脂層3とは反対側の表面に、化粧板に特別な機能を付加する機能層を有してもよい。機能層の一例としては、防汚膜、抗菌膜または防曇膜が挙げられる。
防汚膜は、指紋の付着を低減させたり、汚れを付き難くしたりする効果を有する。特に、化粧板1を手で直接触れると、ガラス板2に指紋が付着し意匠性を損なうため、指紋の付着を低減させるAFP(Anti−Finger Print)機能を有することが好ましい。AFP機能は、AFP剤をガラス板2に付着させて、AFP膜をガラス板に形成する。
AFP剤としては、フッ素含有有機ケイ素化合物が挙げられる。フッ素含有有機ケイ素化合物としては、防汚性、撥水性および撥油性を付与するものであれば特に限定されず使用できる。AFP剤の分子量は、3,000〜10,000が好ましく、3,000〜8,000がより好ましく、3,000〜6,000がさらに好ましい。AFP剤の分子量が3,000以上であることにより、分子構造に柔軟性が付与され、耐スクラッチ性、表面滑り性を得ることができる。また、10,000以下であることにより、AFP剤1分子あたりの反応基を十分確保でき、ガラス板の表面との密着性を確保できる。
【0038】
抗菌膜は、抗菌性を発現させる抗菌剤をガラス板2に付着させて形成させる。抗菌剤としては、わさびをはじめとする天然抗菌剤、銅や銀をはじめとする金属系抗菌剤、および酸化チタンをはじめとする酸化物系抗菌剤などが挙げられる。特に、銀を含有する溶液をガラス板に塗布し銀膜を形成させ、銀膜が形成されたガラス板を加熱処理することにより、ガラス板の表面から内部に銀イオンを拡散させることが効果の持続性の点で好ましい。
【0039】
防曇膜は、ガラス板2の表面に吸水性樹脂層を設け、ガラス板表面に形成された微小水滴を吸水して除去することで、ガラス板2の表面が曇ることを防止し、意匠性を維持する効果を有する。防曇膜は、例えば、下地層と吸水層とを含む。下地層は、ガラス板から吸水層を剥がれ難くするための層であり、例えば、シラン系カップリング剤を含む組成物をガラス板に塗布して反応させることで得られる。吸水層は、硬化エポキシ樹脂、ウレタン樹脂および架橋アクリル樹脂から選ばれる硬化樹脂の原料成分を含有する組成物を下地層上に塗布して反応させることで得られる。
【0040】
ガラス板2と樹脂層3の周囲が補強材で覆われていてもよい。
図2は、化粧板1の端面に補強材5を装着させた模式的断面図である。補強材5は、化粧板1の周囲に額縁状に形成されている。補強材5は、額縁状にシームレスに形成されている必要はなく、各辺毎に分離されていてよい。補強材5は、化粧板1のすべての辺を覆う必要はなく、少なくとも1辺を覆うことでよい。補強材5は、例えば塩化ビニル樹脂で形成されている。化粧板1が補強材5で覆われることにより、施工時にガラス化粧板の端面を保護するため、割れ難くなり、施工性の点で好ましい。
【0041】
補強材5は、アンカー6を有しており、アンカー6が樹脂層3に差し込まれることにより補強材5が化粧板1に固定されていてもよい。化粧板1が矩形である場合、各辺に1か所以上、好ましくは複数個所にアンカー6が設けられる。アンカー6は、例えば
図2に示すように化粧板1の樹脂層3に貫入されて係合される。アンカー6が樹脂層3と係合されることにより補強材5が化粧板1に固定される。なお、接着剤によって補強材5を化粧板1の端面に固定させてもよい。アンカー6によって補強材5を化粧板1に固定する方が、接着剤を硬化させる時間を不要とすることができるため好ましい。また、アンカー6と接着剤とを併用することでもよい。その場合、アンカー6が仮止めとして機能し、接着剤の硬化前の補強材5の位置ずれを防止できる。
【0042】
以上は、板状体としてガラス板を用いた例について説明したが、ガラス板の代わりに脆性を有する樹脂板やセラミック板であってもよい。脆性を有する樹脂板としては、例えば、メラミン系樹脂板、アクリル系樹脂板、ポリカーボネート系樹脂板、塩化ビニル系樹脂板等が挙げられる。セラミック板としては、タイルなどの陶製の部材が挙げられる。板状体は石材で構成されていてもよい。これらの脆性の板状体も同様に本発明の化粧板に好適に用いることができる。
また、意匠層は、板状体の表面に凹凸などで型模様を設けた、例えば、板状体自体が型板ガラスであることによって意匠性を付与されていてもよい。
【実施例】
【0043】
(衝撃試験)
以下の表1に示す実施例、比較例では、ガラス板として、縦300mm、横300mmのソーダライムガラス(旭硝子社製AS)を使用した。また、樹脂層として独立気泡体である化学架橋ポリエチレン発泡樹脂(三和化工社製、商品名:SUNPELICA)の発泡倍率を変えて所望のショアA硬度に調整した発泡ポリエチレン樹脂板を使用した。ガラス板に接着剤(セメダイン社製、商品名:POSシールマルチ)を全面に塗布して樹脂層を貼り合わせた。ガラス板の板厚と樹脂層の厚さおよびショアA剛度を表1に記載のとおり変化させて各種ガラス化粧板を作製した。
【0044】
ショアA硬度が65〜70の樹脂層には独立気泡体ではない汎用シリコーンゴム板(ミスミ社製シリコンゴムシート)、ショアA硬度が80〜85の樹脂層には独立気泡体ではない汎用アクリル樹脂板(三菱レイヨン社製、商品名:アクリライトE)、ショアA硬度が0〜3の樹脂層には独立気泡体である発泡ポリウレタン樹脂板(アキレス社製アキレスボード(登録商標))、ショアA硬度が0の樹脂層には独立気泡体ではなく連続気泡体である発泡ポリウレタン樹脂板(イノアック社製:カラーフォーム(登録商標))を用いた。また別の比較例として、樹脂層のないガラス板を評価した。なお、衝撃試験のため意匠層は、省略してガラス化粧板を作製した。
【0045】
衝撃試験は、建築用ボード類の曲げ及び衝撃試験方法(JIS A1408)において、砂上に石膏ボードを設置し、石膏ボード上に載置したガラス化粧板に対して、重量が225gの鋼球を、75cmおよび100cmの高さから落下させることで実施した。その結果を表1に示す。
表1では、75cmの高さから鋼球を落下させたときにガラス化粧板が破損しなかった確率が50%以上の場合を「△」とし、50%未満の場合を「×」とした。また、100cmの高さから鋼球を落下させたときにガラス化粧板が破損しなかった確率が80%以上の場合を「○」とした。各例の確率は、2〜5のサンプル数で試験した結果から算出し、「○」、「△」または「×」の評価を実施した。なお、表1において空欄の部分は、該当する作製サンプル無しを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の結果から、樹脂層が独立気泡体であり、樹脂層の厚さが1.5mm以上であり、ショアA硬度が、10以上、60以下である化粧板は、耐衝撃性に優れており、割れにくい。特にガラス板の板厚が0.5mm以上であり、樹脂層の厚さが1.5mm以上であり、樹脂層のショアA硬度が10以上、60以下である場合に、板厚が4.0mmのガラス板のみのガラス化粧板と同等以上の強度を有することがわかった。また、樹脂層のショアA硬度が10未満である化粧板、特に樹脂層のショアA硬度が3以下である化粧板は、樹脂層の厚さが1.5mm以上であっても、耐衝撃性が悪く、割れやすいことがわかった。
【0048】
(発熱性試験)
ガラス板としてソーダライムガラス(旭硝子社製AS、縦300mm、横300mm、板厚は1.1mmのものと2.0mmのもの2種類)に、接着剤(セメダイン社製、商品名:POSシールマルチ)を全面に塗布して、樹脂層として化学架橋ポリエチレン発泡樹脂(三和化工社製、商品名:SUNPELICA)、厚さは3mm、ショアA硬度は30〜32のものと25〜27のもの2種類。)を貼り合わせて、ガラス板の板厚と樹脂層のショアA硬度それぞれの条件を変更して4種類のガラス化粧板を5枚ずつ作製した。発熱性試験は、ガラス化粧板を不燃材料である石膏ボードの下地材(厚さ12.5mm)に接着剤(セメダイン社製、商品名:POSシールマルチ)を全面に塗布して固定した状態で行った。
【0049】
作製したガラス化粧板の表面に対向して電気ヒーターを設置し、電気ヒーターから50kW/m
2の輻射熱をガラス化粧板に照射し、ガラス化粧板の近くに点火プラグをスパークさせたまま設置してガラス化粧板の発熱量を測定する、発熱性試験を行なった。
発熱性試験においては、加熱開始後20分間において、(1)総発熱量が8MJ/m
2以下であること、(2)最大発熱速度が10秒以上継続して200kW/m
2を超えないこと、および(3)防火上有害な裏面まで貫通する亀裂及び穴がないこと、の3つの評価を実施した。上記した実施形態のすべてのガラス化粧板は、以上の3つの評価項目をクリアした。この結果、本実施例のガラス化粧板は、不燃性の高い建築材料であることがわかった。
【0050】
(自重試験)
以下の表2に示す実施例、比較例では、衝撃試験と同様のガラス板、樹脂板、接着剤を使用して各種ガラス化粧板を作製した。ここで使用したガラス板の厚さは3mmであり、ガラス板の一方の主表面に着色顔料を含む塗料が塗装されている。
図3は、自重試験を実施したガラス化粧板の模式図である。
【0051】
まず、
図3(a)に示すように、幅25mmの両面テープ7(3M社製、商品名:ATX1003)をAが62.5mm、Bが125mm、Cが62.5mmとなるように樹脂層3に貼り付け、ガラス化粧板を
図3(b)及び
図3(c)に示すように、石膏ボード8に貼付した。
図3(b)は石膏ボードに貼付されたガラス化粧板の模式的平面図であり、
図3(c)は模式的側面図である。温度80℃湿度30%RHの環境下で石膏ボードに貼付したガラス化粧板をガラス板の主表面が鉛直方向になるように保持し、5日後、10日後、及び15日後に、ガラス化粧板の保持直後からの
図3(d)の模式的側面図に示すガラス板2の鉛直方向の変位量Dを測定した。
【0052】
また、石膏ボードに貼付した別のガラス化粧板を60℃湿度95%RHの環境下で同様に保持した後に、保持直後からのガラス板2の鉛直方向の変位量Dを測定した。さらに、石膏ボードに貼付した別のガラス化粧板を湿度95%RHの環境下で温度を−10℃〜60℃の範囲で1日2周期変化させ、同様に保持した後に、保持直後からのガラス板2の鉛直方向の変位量Dを測定した。以上の結果を表2に示す。
表2では、鉛直方向の変位量Dが1mm未満の場合を「○」とし、1mm以上の場合を「▲」とし、ガラス化粧板が石膏ボードから剥がれた場合を「×」とした。各例の変位量Dは、2〜5のサンプル数で試験した結果から算出し、「○」、「▲」または「×」の評価を実施した。
【0053】
【表2】
【0054】
表2の結果から、樹脂層が独立気泡体であり、樹脂層の厚さが1.5mm以上であり、ショアA硬度が、10以上、60以下である化粧板は、ガラス板の変位量Dがいずれにおいても1mm未満であり、耐熱性、耐湿性に優れていた。また、樹脂層が独立気泡体ではなく連続気泡体であり、ショアA硬度が10未満である化粧板は、ガラス化粧板の変位量Dがいずれにおいても1mm以上であった。
【0055】
(耐久性試験)
以下の表3に示す実施例、比較例では、ガラス板として縦65mm、横25mm、厚さ5mmのソーダライムガラス(旭硝子社製AS)を使用し、ガラス板の一方の主表面に着色顔料を含む塗料が塗装されている。また、樹脂層として独立気泡体である化学架橋ポリエチレン発泡樹脂(三和化工社製、商品名:SUNPELICA)の発泡倍率を変えて所望のショアA硬度に調整した縦25mm、横25mm、厚さ3mmの発泡ポリエチレン樹脂板を使用した。
【0056】
図4は、耐久性試験を実施した試験体の模式的斜視図である。
図4に示すように、2枚のガラス板2の塗料が塗装されている主表面を、樹脂層3を介して十字の形状になるようにアクリル樹脂系の両面テープ(3M社製、商品名:ATX1003により貼り合わせた試験体9を作製した。
【0057】
作製した試験体9を後述する環境下に10日間置いた後、温度23℃で24時間置き、外観観察を行い、接着強度を測定した。接着強度(単位:kgf/cm
2)は、温度23℃で2枚のガラス板が離れる方向に引張速度5mm/分で2枚のガラス板に荷重をかけたときの最大応力である。試験体9を10日間置いた環境は次の5種類(1)〜(5)である。
(1)耐光性を調べるために、Xe−WOMにより150W/m
2、BPT63℃の条件で光をガラス板と垂直方向に照射し続けた。本環境に限り、ガラス板に着色顔料を含む塗料が塗装されていない試験体においても、接着強度を評価した。
(2)耐湿性を調べるために、温度60℃湿度95%RHとした。
(3)耐熱性を調べるために、温度80℃湿度30%RHとした。
(4)耐水性を調べるために、温度60℃の水に試験体を浸漬させた。
(5)耐冷熱サイクル性を調べるために、試験体を湿度95%RHの環境下で温度を−10℃〜60℃の範囲で1日2周期変化させた。
【0058】
外観観察と接着強度の結果を表3に示す。上記環境下で10日間置いた後の試験結果の他に、試験体をこれらの環境下に置かずに接着強度を測定した結果を(6)として示す。表3では、接着強度が2.0kgf/cm
2以上の場合を「○」とし、1.0kgf/cm
2以上2.0kgf/cm
2未満の場合を「△」とし、1.0kgf/cm
2未満の場合を「×」とし、上記(1)〜(5)の環境下に置いているときにガラス板と樹脂層とが剥離した場合を「××」とした。また、ガラス板に塗装した塗料が変色していた場合に「変色」と示した。各例の接着強度は、2〜5のサンプル数で試験した結果から算出し、「○」、「△」、「×」、または「××」の評価を実施した。
【0059】
【表3】
【0060】
表3の結果から、樹脂層が独立気泡体であり、樹脂層の厚さが1.5mm以上であり、ショアA硬度が、10以上、60以下である試験体は、試験体の接着強度がいずれにおいても2.0kgf/cm
2以上であり、耐光性、耐湿性、耐熱性、耐水性、耐冷熱サイクル性に優れていた。独立気泡体であれば、樹脂層に水分が浸透しにくく、樹脂層が変形しにくい。連続気泡体の試験体は、樹脂層に水分が浸透しやすいため、樹脂層が変形しやすく、ガラス板に塗装した塗料が変色しやすい。