(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(1)中のGが、炭素原子数2〜6の直鎖状の脂肪族多価アルコールの残基または炭素原子数2〜6の分岐状の脂肪族多価アルコールの残基である請求項1記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記式(1)中のGが、エチレングリコールの残基、プロピレングリコールの残基、1,3−プロパンジオールの残基、2−メチル−1,3−プロパンジオールの残基、3−メチル−1,5−ペンタンジオールの残基からなる群から選ばれる一種以上の残基である請求項2または3記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記式(1)中のAが、芳香環上の水素原子の一つが水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸の残基である請求項1記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記エステル化合物(X1)が、水酸基の価数が2〜6の炭素原子数2〜10の多価アルコール(g)と、芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(a)とを反応させて得られるものである請求項1記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記炭素原子数2〜10の多価アルコール(g)が、炭素原子数2〜6の直鎖状の脂肪族多価アルコールまたは炭素原子数2〜6の分岐状の脂肪族多価アルコールである請求項7記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記炭素原子数2〜10の多価アルコール(g)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールである請求項7記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(a)が、芳香環上の水素原子の一つが水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸である請求項7記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
前記前記芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(a)が、パラヒドロキシ安息香酸である請求項7記載のセルロースエステル樹脂用改質剤。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、下記式(1)
【0018】
【化2】
(式中Gは、炭素原子数2〜10の多価アルコール残基である。Aは芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸残基である。nは2〜6の整数である。)
で表されるエステル化合物(X1)と、主鎖骨格中に炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン残基または炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸残基と、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコール残基とを有し、数平均分子量が300〜1,500であり、水酸基価が50〜350であるポリエステルポリオール(X2)とを含有することを特徴とする。
【0019】
前記「多価アルコール残基」、「アルキレングリコール残基」、「オキシアルキレングリコール残基」とは、多価アルコール、アルキレングリコール、または、オキシアルキレングリコールが有する水酸基を除いた有機基を表す。また、「芳香族モノカルボン酸残基」、「アルキレンジカルボン酸残基」、「芳香族ジカルボン酸残基」とは、芳香族モノカルボン酸、アルキレンジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸が有するカルボキシル基を除いた有機基を表す。また、後述する「鎖状」とは、環を含まないことを表し、鎖状の中には、直鎖状と分岐状が含まれる。
【0020】
以下に本発明で用いるエステル化合物(X1)について詳述する。エステル化合物(X1)中のGは、炭素原子数2〜10の多価アルコール残基である。炭素原子数2〜10の多価アルコール残基としては、例えば、炭素原子数2〜10の脂肪族多価アルコール残基や、炭素原子数2〜10の芳香族多価アルコール残基等が挙げられる。尚、本発明において「炭素原子数」とは、カルボニル炭素を含まない炭素原子数を言う。
【0021】
前記炭素原子数2〜10の脂肪族多価アルコール残基としては、例えば、炭素原子数2〜10の鎖状の脂肪族多価アルコール残基や炭素原子数2〜10の環式脂肪族多価アルコール残基等が挙げられる。前記炭素原子数2〜10の鎖状の脂肪族多価アルコール残基としては、例えば、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−プロパンジオール残基、2−メチル−1,3−プロパンジオール残基、1,2−ブタンジオール残基、1,3−ブタンジオール残基、1,4−ブタンジオール残基、2,3−ブタンジオール残基、1,5−ペンタンジオール残基、3−メチル−1,5−ペンタンジオール残基、1,6−ヘキサンジオール残基、1,7−ヘプタンジオール残基、1,8−オクタンジオール残基、1,9−ノナンジオール残基、1,10−デカンジオール残基等の2価の脂肪族アルコール残基;グリセリン残基、1,2,3−ブタントリオール残基、1,2,4−ブタントリオール残基、1,2,3−ヘプタトリオール残基、1,2,4−ヘプタトリオール残基、1,2,5−ヘプタトリオール残基、2,3,4−ヘプタトリオール残基、トリメチロールプロパン残基等の3価の脂肪族アルコール残基;ペンタエリトリトール残基、エリトリトール残基等の4価の脂肪族アルコール残基;キシリトール残基等の5価の脂肪族アルコール残基;ソルビトール残基等の6価の脂肪族アルコール残基等が挙げられる。
【0022】
前記炭素原子数2〜10の環式脂肪族多価アルコール残基としては、例えば、シクロペンタンジオール残基、シクロペンタンジメタノール残基、シクロヘキサンジオール残基、シクロヘキサンジメタノール残基、シクロヘプタンジオール残基、シクロヘプタンジメタノール残基等が挙げられる。
【0023】
本発明において、前記「脂肪族多価アルコール残基」には、脂肪族構造中にエーテル基(−O−)を有する構造を含む。この場合、炭素原子数は、エーテル基を介して存在する脂肪族基の合計の炭素原子数を言う。脂肪族構造中にエーテル基(−O−)を有する構造を含む残基としては、例えば、ジエチレングリコール残基、トリエチレングリコール残基、ジプロピレングリコール残基、トリプロピレングリコール残基、ジペンタエリトリトール残基等が挙げられる。
【0024】
前記炭素原子数2〜10の芳香族多価アルコール残基としては、例えば、1,2−ベンゼンジメタノール残基、1,3−ベンゼンジメタノール残基、1,4−ベンゼンジメタノール残基等が挙げられる。
【0025】
エステル化合物(X1)中のGの中でも、炭素原子数2〜8の鎖状の脂肪族多価アルコール残基が、フィルムに優れた耐透湿性を付与できることから好ましく、炭素原子数2〜6の直鎖状の脂肪族多価アルコール残基または炭素原子数2〜6の分岐状の脂肪族多価アルコール残基がより好ましく、エチレングリコール残基、プロピレングリコール残基、1,3−プロパンジオール残基、2−メチル−1,3−プロパンジオール残基及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール残基からなる群から選ばれる一種以上の残基が更に好ましい。
【0026】
前記nは、2〜6の整数である。nは、優れた耐透湿性をフィルムに付与できることから2〜3の整数が好ましい。ここで、nは後述する炭素原子数2〜10の多価アルコールの価数に相当する。
【0027】
エステル化合物(X1)中のAは芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸残基である。芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸残基としては、例えば、モノヒドロキシ安息香酸残基、ジヒドロキシ安息香酸残基、トリヒドロキシ安息香酸残基、モノヒドロキシナフタレンカルボン酸残基等が挙げられる。
【0028】
前記モノヒドロキシ安息香酸の残基としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)残基、3−ヒドロキシ安息香酸残基、4−ヒドロキシ安息香酸(パラヒドロキシ安息香酸)残基、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸残基等が挙げられる。
【0029】
前記ジヒドロキシ安息香酸残基としては、例えば、2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2−ピロカテク酸)残基、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(β−レゾルシン酸)残基、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)残基、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γ−レゾルシン酸)残基、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)残基、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レゾルシン酸)残基等が挙げられる。
【0030】
前記トリヒドロキシ安息香酸残基としては、例えば、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸残基、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸残基等が挙げられる。
【0031】
前記モノヒドロキシナフタレンカルボン酸残基としては、例えば、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸残基、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸残基、3−ヒドロキシー2−ナフトエ酸残基、6−ヒドロキシー2−ナフトエ酸残基等が挙げられる。
【0032】
前記Aの中でも、芳香環上の水素原子の一つが水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸残基(モノヒドロキシ安息香酸残基)が優れた耐透湿性、耐水性をフィルムに付与できることから好ましく、4−ヒドロキシ安息香酸(パラヒドロキシ安息香酸)残基がより好ましい。
【0033】
本発明において、一般式(1)中のnは2〜6の整数である。nで表される整数により一般式(1)中の「−OCO−A」の数が変化する。一般式(1)中に複数個存在する「−OCO−A」中の「−A」は同一であっても良いし、異なっていても良い。また、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤は、一般式(1)で表される化合物の他に、他の化合物、具体的には、一般式(1)において、多価アルコールの水酸基の一部が残存している化合物等の化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含んでいても良い。
【0034】
本発明で用いるエステル化合物(X1)としては、例えば、水酸基の価数が2〜6の炭素原子数2〜10の多価アルコール(g)と、芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(a)との反応物である。このような反応物は、例えば、水酸基の価数が2〜6の炭素原子数2〜10の多価アルコール(g)と、芳香環上の水素原子の一部乃至全部が水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(a)とを反応させることにより得ることが出来る。
【0035】
前記多価アルコール(g)としては、炭素原子数2〜10の脂肪族多価アルコールや、炭素原子数2〜10の芳香族多価アルコール等が挙げられる。前記炭素原子数2〜10の脂肪族多価アルコールとしては、例えば、炭素原子数2〜10の鎖状の脂肪族多価アルコールや炭素原子数2〜10の環式脂肪族多価アルコール等が挙げられる。
【0036】
前記炭素原子数2〜10の鎖状の脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等の2価の脂肪族アルコール;グリセリン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ヘプタトリオール、1,2,4−ヘプタトリオール、1,2,5−ヘプタトリオール、2,3,4−ヘプタトリオール、トリメチロールプロパン等の3価の脂肪族アルコール;ペンタエリスリトール、エリトリトール等の4価の脂肪族アルコール;キシリトール等の5価の脂肪族アルコール;ソルビトール等の6価の脂肪族アルコール等が挙げられる。前記脂肪族多価アルコール(g)は1種類を用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0037】
炭素原子数2〜10の環式脂肪族多価アルコールとしては、例えば、シクロペンタンジオール、シクロペンタンジメタノール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオール、シクロヘプタンジメタノール等が挙げられる。
【0038】
本発明において、脂肪族多価アルコール(g)として、脂肪族構造中にエーテル基(−O−)を有する多価アルコールも使用する事ができる。このようなアルコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0039】
前記炭素原子数2〜10の芳香族多価アルコールとしては、例えば、1,2−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、1,4−ベンゼンジメタノール等が挙げられる。
【0040】
前記多価アルコール(g)の中でも、炭素原子数2〜8の鎖状の脂肪族多価アルコールが、フィルムに優れた耐透湿性、耐水性を付与できることから好ましく、炭素原子数2〜6の直鎖状の脂肪族多価アルコールまたは炭素原子数2〜6の分岐状の脂肪族多価アルコールがより好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選ばれる一種以上のアルコールが更に好ましい。
【0041】
前記芳香族モノカルボン酸(a)としては、例えば、2−ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸(パラヒドロキシ安息香酸)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸等のモノヒドロキシ安息香酸;2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2−ピロカテク酸)、2,4−ジヒドロキシ安息香酸(β−レゾルシン酸)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(ゲンチジン酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸(γ−レゾルシン酸)、3,4−ジヒドロキシ安息香酸(プロトカテク酸)、3,5−ジヒドロキシ安息香酸(α−レゾルシン酸)等のジヒドロキシ安息香酸;3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸等のトリヒドロキシ安息香酸;2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシー2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシー2−ナフトエ酸等のモノヒドロキシナフタレンカルボン酸等が挙げられる。
【0042】
前記芳香族モノカルボン酸(a)の中でも、芳香環上の水素原子の一つが水酸基に置換された構造を有する芳香族モノカルボン酸(モノヒドロキシ安息香酸)が、フィルムに優れた耐透湿性を与えることから好ましく、パラヒドロキシ安息香酸がより好ましい。
【0043】
本発明で用いるエステル化合物(X1)は、例えば、前記多価アルコール(g)と芳香族モノカルボン酸(a)とを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、100〜250℃の温度範囲内で2〜25時間、エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。
【0044】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0045】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、原料の全量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0046】
本発明で用いるエステル化合物(X1)を得る際には、本発明の効果を損なわない範囲で前記芳香族モノカルボン酸(a)以外のカルボン酸や多価アルコール(g)以外のアルコールを使用しても良い。
【0047】
前記芳香族モノカルボン酸(a)以外のカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、水酸基を有さない芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
【0048】
前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等やこれらの脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物等が挙げられる。
【0049】
前記脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキシル酸、ノナン酸等や、これらの脂肪族モノカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物及び酸無水物等が挙げられる。
【0050】
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸やこれらの芳香族ジカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物及び酸無水物等が挙げられる。
【0051】
前記水酸基を有さない芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、ジメチル安息香酸、トリメチル安息香酸、テトラメチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、クミン酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、ナフトエ酸、ニコチン酸、フロ酸、アニス酸等やこれらの芳香族モノカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物及び酸無水物等が挙げられる。
【0052】
前記多価アルコール(g)以外のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソノニルアルコール、1−ノニルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール、乳酸メチル、乳酸エチル等のモノアルコール;水添ビスフェノールA、ダイマージオール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール等が挙げられる。
【0053】
上記の前記芳香族モノカルボン酸(a)以外のカルボン酸や多価アルコール(g)以外のアルコールを使用する場合、その使用量は、本発明の効果を損なわないエステル化合物(X1)が得やすいことから、本発明で用いるエステル化合物(X1)の原料100質量部中、合計で0.1〜50質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましい。
【0054】
本発明で用いるエステル化合物(X1)の数平均分子量(Mn)は、フィルムに優れた耐透湿性、耐水性を与えることから200〜1,000の範囲が好ましく、250〜700の範囲がより好ましい。
【0055】
ここで、数平均分子量(Mn)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定に基づきポリスチレン換算した値である。なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
【0056】
[GPC測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製高速GPC装置「HLC−8320GPC」
カラム:東ソー株式会社製「TSK GURDCOLUMN SuperHZ−L」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZM−M」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」+東ソー株式会社製「TSK gel SuperHZ−2000」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「EcoSEC Data Analysis バージョン1.07」
カラム温度:40℃
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
測定試料:試料15mgを10mlのテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液をマイクロフィルターでろ過したものを測定試料とした。
試料注入量:20μl
標準試料:前記「HLC−8320GPC」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
【0057】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−300」
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−288」
【0058】
本発明で用いるエステル化合物(X1)の性状は、前記数平均分子量(Mn)や組成などにより異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0059】
本発明で用いるポリエステルポリオール(X2)について、以下に詳述する。ポリエステルポリオール(X2)は、前記の通り、主鎖骨格中に炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボン残基または炭素原子数6〜12の芳香族ジカルボン酸残基と、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール残基または炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコール残基とを有し、数平均分子量が300〜1,500であり、水酸基価が50〜350である。
【0060】
前記数平均分子量が300より小さいと揮発性が大きくなり、その結果、透湿度が小さい光学フィルムが得にくくなることから好ましくない。また、数平均分子量が1,500を超えるとセルロースエステル樹脂との相溶性が良好でなくなり、その結果、湿度の変化に伴う寸法の変化が少ない光学フィルムが得にくくなることから好ましくない。数平均分子量は350〜1,300が好ましく、400〜1,200がより好ましい。
【0061】
前記水酸基価が50よりも小さいと、セルロースエステル樹脂との相溶性が良好でなくなり、その結果、湿度の変化に伴う寸法の変化が少ない光学フィルムが得にくくなることから好ましくない。また、水酸基価が350を超えると揮発性が大きくなり、その結果、透湿度が小さい光学フィルムが得にくくなることから好ましくない。水酸基価は85〜320が好ましく、90〜280がより好ましい。
【0062】
尚、本発明において、水酸基価はJIS K 0070−1992に準じた方法で測定した。また、酸価はJIS K 0070−1992に準じた方法で測定した。
【0063】
ポリエステルポリオール(X2)の中でも、主鎖骨格中に炭素原子数2〜4のアルキレンジカルボン残基または炭素原子数6〜8の芳香族ジカルボン酸残基と、炭素原子数2〜4のアルキレングリコール残基とを有するポリエステルポリオールが、湿度の変化に伴う寸法安定性がより優れる光学フィルムが得られることから好ましく、主鎖骨格中にフタル酸残基、アジピン酸残基及びコハク酸残基からなる群から選ばれる1種以上の残基と、エチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を有するポリエステルポリオールがより好ましい。
【0064】
本発明で用いるポリエステルポリオール(X2)は、例えば、各残基を構成するジカルボン酸及びグリコールとを、水酸基の当量がカルボキシル基の当量よりも多くなる条件下で反応させることにより得ることができる。
【0065】
前記ジカルボン酸としては、例えば、炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボンや炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸残基等が挙げられる。炭素原子数2〜8のアルキレンジカルボンとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、フマル酸等やこれらの脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物等が挙げられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0066】
前記炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸やこれらの芳香族ジカルボン酸のメチルエステル、酸塩化物及び酸無水物等が挙げられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0067】
前記ジカルボン酸の中でも、炭素原子数2〜4のアルキレンジカルボンまたは炭素原子数6〜8の芳香族ジカルボン酸が、湿度の変化に伴う寸法安定性がより優れる光学フィルムが得られることから好ましく、フタル酸、アジピン酸及びコハク酸からなる群から選ばれる1種以上ジカルボン酸がより好ましい。
【0068】
前記グリコールとしては、例えば、炭素原子数2〜6のアルキレングリコールや炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコール等が挙げられる。前記炭素原子数2〜6のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール等が挙げられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0069】
前記炭素原子数4〜6のオキシアルキレングリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0070】
前記グリコールの中でも、炭素原子数2〜4のアルキレングリコールが、湿度の変化に伴う寸法安定性がより優れる光学フィルムが得られることから好ましく、エチレングリコールまたはプロピレングリコールがより好ましい。
【0071】
本発明で用いるポリエステルポリオール(X2)は、例えば、前記の原料を、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、例えば、180〜250℃の温度範囲内で10〜25時間、エステル化反応させることにより製造することができる。尚、エステル化反応の温度、時間などの条件は特に限定せず、適宜設定してよい。
【0072】
前記エステル化触媒としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒;ジブチル錫オキサイド等のスズ系触媒;p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸系触媒などが挙げられる。
【0073】
前記エステル化触媒の使用量は、適宜設定すればよいが、通常、原料の全量100質量部に対して、0.001〜0.1質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0074】
本発明で用いるポリエステルポリオール(X2)の性状は、前記(Mn)や組成などにより異なるが、通常、常温にて液体、固体、ペースト状などである。
【0075】
前記エステル化合物(X1)とポリエステルポリオール(X2)の混合比〔(X1)/(X2)〕としては、耐透湿性に優れ、耐揮発性に優れる効果が得られることからが、質量比で5/95〜95/5であることが好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。
【0076】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物は、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤とセルロースエステル樹脂とを含有することを特徴とする。
【0077】
前記セルロースエステル樹脂は、綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等から得られるセルロースの有する水酸基の一部、又は全部がエステル化されたものである。これらの中でも、綿花リンターから得られるセルロースをエステル化して得られるセルロースエステル樹脂を使用して得られるフィルムは、フィルムの製造装置を構成する金属支持体から剥離しやすく、フィルムの生産効率を向上させることが可能となるため好ましい。
【0078】
前記セルロースエステル樹脂の具体例としては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロース等のセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート及び硝酸セルロース等が挙げられる。これらのセルロースエステル樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。本発明のセルロースエステル樹脂組成物からなるフィルムを光学フィルム、特に偏光板保護フィルムとして使用する場合には、セルロースアセテートを使用することが、機械的物性及び透明性に優れたフィルムを得ることができるため好ましい。
【0079】
前記セルロースアセテートとしては、平均酢化度(結合酢酸量)が50.0〜62.5質量%の範囲のものであると、得られるセルロースエステル樹脂組成物からなる光学フィルムは機械的物性及び透明性に優れたフィルムとなるため好ましい。
【0080】
また、光学フィルムの耐透湿性を向上させるためには、セルロースアセテートの平均酢化度が54〜61.5質量%の範囲であることが好ましい。平均酢化度がより高いトリアセチルセルロースを用いることで、耐透湿性に優れるセルロースエステル樹脂フィルムを得ることが出来る。また、光学フィルムを高い位相差値に調整するためには、セルロースアセテートの平均酢化度が50.0〜58質量%の範囲であることが好ましい。
【0081】
なお、平均酢化度は、セルロースアセテートの質量を基準として、該セルロースアセテートをケン化することによって生成する酢酸の質量割合である。
【0082】
前記セルロースエステル樹脂は、数平均分子量が30,000〜300,000の範囲のものであると、フィルムの機械的物性を向上することができるため好ましい。また、より高い機械的物性が必要な場合は、50,000〜200,000の範囲のものを用いるとより好ましい。
【0083】
本発明のセルロースエステル樹脂組成物中のセルロースエステル樹脂用改質剤の含有量としては、セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.5〜50質量部の範囲が好ましく、0.5〜30質量部の範囲がより好ましく、5〜15質量部の範囲がより好ましい。前記セルロースエステル樹脂用改質剤をかかる範囲で用いる事で、耐透湿性、透明性に優れ、光学用途に好適に使用できるフィルムが得られる組成物となる。
【0084】
本発明の光学フィルムは、本発明のセルロースエステル樹脂組成物を含有するフィルムである。本発明のセルロースエステルフィルムの膜厚は使用される用途により異なるが、一般に10〜200μmの範囲が好ましい。
【0085】
本発明の光学フィルムは、光学異方性あるいは光学等方性等の特性を有していてもよいが、前記光学フィルムを偏光板用保護フィルムに使用する場合には、光の透過を阻害しない光学等方性のフィルムを使用することが好ましい。
【0086】
本発明の光学フィルムは、種々の用途で用いることができる。最も有効な用途としては、例えば、液晶表示装置の光学等方性を必要とする偏光板用保護フィルムがあるが、光学補償機能を必要とする偏光板用保護フィルムの支持体にも使用することができる。
【0087】
本発明の光学フィルムは、種々の表示モードの液晶セルに用いることができる。例えばIPS(In−Plane Switching)、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、OCB(Optically Compensatory Bend)等が例示できる。
【0088】
本発明の光学フィルムは、例えば、溶融押出法により製造することができる。具体的には、前記セルロースエステル樹脂、セルロースエステル樹脂用改質剤、及び必要に応じてその他の各種添加剤等を含有してなるセルロースエステル樹脂組成物を、例えば、押出機等で溶融混練し、Tダイ等を用いてフィルム状に成形することにより得ることができる。
【0089】
また、本発明の光学フィルムは、前記成形方法の他に、例えば、前記セルロースエステル樹脂と前記セルロースエステル樹脂用改質剤とを有機溶剤中に溶解して得られた樹脂溶液を、金属支持体上に流延させ、次いで、前記有機溶剤を留去し乾燥させる、いわゆる溶液流延法(ソルベントキャスト法)で成形することによって得ることもできる。
【0090】
前記溶液流延法によれば、表面に凹凸が形成されにくく、表面平滑性に優れるフィルムが得られる。その為、該溶液流延法により得られるフィルムは光学用途に好ましく用いることが出来、特に偏光板用保護フィルム用途として好ましく使用できる。
【0091】
前記溶液流延法は、一般に、前記セルロースエステル樹脂と前記セルロースエステル樹脂用改質剤とを有機溶剤中に溶解させ、得られた樹脂溶液を金属支持体上に流延させる第1工程と、流延させた前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤を留去し乾燥させてフィルムを形成する第2工程、それに続く、金属支持体上に形成されたフィルムを金属支持体から剥離し加熱乾燥させる第3工程からなる。
【0092】
前記第1工程で使用する金属支持体としては、無端ベルト状又はドラム状の金属製のものなどを例示でき、例えば、ステンレス製でその表面が鏡面仕上げの施されたものを使用することができる。
【0093】
前記金属支持体上に樹脂溶液を流延させる際には、得られるフィルムに異物が混入することを防止するために、フィルターで濾過した樹脂溶液を使用することが好ましい。
【0094】
前記第2工程の乾燥方法としては、特に限定しないが、例えば30〜50℃の温度範囲の風を前記金属支持体の上面及び/又は下面に当てることで、流延した前記樹脂溶液中に含まれる有機溶剤の50〜80質量%を蒸発させ、前記金属支持体上にフィルムを形成させる方法が挙げられる。
【0095】
次いで、前記第3工程は、前記第2工程で形成されたフィルムを金属支持体上から剥離し、前記第2工程よりも高い温度条件下で加熱乾燥させる工程である。前記加熱乾燥方法としては、例えば100〜160℃の温度条件にて段階的に温度を上昇させる方法が、良好な寸法安定性を有するフィルムを得ることができるため、好ましい。前記温度条件にて加熱乾燥することにより、前記第2工程後のフィルム中に残存する有機溶剤をほぼ完全に除去することができる。
【0096】
尚、前記第1工程〜第3工程で、有機溶媒は回収し再使用することも可能である。
【0097】
前記セルロースエステル樹脂と前記セルロースエステル樹脂用改質剤を有機溶剤に混合させ溶解する際に使用できる有機溶剤としては、それらを溶解可能なものであれば特に限定しないが、例えばセルロースエステル樹脂としてセルロースアセテートを使用する場合は、良溶媒として、例えばメチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類を使用することが好ましい。
【0098】
また、前記良溶媒と共に、例えばメタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の貧溶媒を併用することが、フィルムの生産効率を向上させるうえで好ましい。
【0099】
前記良溶媒と貧溶媒との混合割合は、質量比で良溶媒/貧溶媒=75/25〜95/5の範囲が好ましい。
【0100】
前記樹脂溶液中のセルロースエステル樹脂の濃度は、10〜50質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0101】
前記溶液流延法において、第3工程で加熱乾燥させたフィルムを得た後、更にこのフィルムを加熱延伸する第4工程を設けることができる。
【0102】
第4工程では、第1工程〜第3工程により本発明のセルロースエステル樹脂組成物を用いて製膜後、得られたフィルムを加熱延伸する。延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施しても良い。また、二軸延伸を行う場合には、同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
【0103】
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方向については張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時二軸延伸の好ましい延伸倍率は、例えば、幅方向に×1.05〜×1.5倍で長手方向(流延方向)に×0.8〜×1.3倍であり、特に幅方向に×1.1〜×2.5倍、長手方向に×0.8〜×0.99倍とすることが好ましい。特に好ましくは幅方向に×1.1〜×2.0倍、長手方向に×0.9〜×0.99倍である。
【0104】
前記必要に応じて添加する事ができるその他の各種添加剤としては、例えば、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤以外の改質剤、熱可塑性樹脂、紫外線吸収剤、マット剤、染料等が挙げられる。
【0105】
前記本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤以外の改質剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル;トリメチロールプロパントリベンゾエート、ペンタエリスリトールテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチル等の多価アルコールのエステル化合物;末端が酢酸等の脂肪族モノカルボン酸で封止されたポリエステル化合物、スクロースオクタアセテート、スクロースベンゾエート等のフラノース構造もしくはピラノース構造を有する糖エステル化合物;バルビツール酸構造を有する化合物;イミダゾール、トリアゾール、ピラゾール等の5員の芳香族複素環と6員の芳香族炭化水素環とが連結された構造を有する化合物等が挙げられる。
【0106】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、トルエンスルホンアミド樹脂等が挙げられる。
【0107】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられる。前記紫外線吸収剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.01〜2質量部の範囲が好ましい。
【0108】
前記マット剤としては、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク等が挙げられる。前記マット剤は、前記セルロースエステル樹脂100質量部に対して、0.1〜0.3質量部の範囲が好ましい。
【0109】
前記染料としては、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、種類や配合量など特に限定しない。
【0110】
本発明の光学フィルムの膜厚は、5〜120μmの範囲が好ましく、8〜100μmの範囲がより好ましく、10〜80μmの範囲が特に好ましい。前記光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合には、膜厚が10〜80μmの範囲であれば、液晶表示装置の薄型化を図る際に好適であり、且つ充分なフィルム強度、耐透湿性などの優れた性能を維持することができる。
【0111】
本発明の光学フィルムは、耐透湿性が良好なことから、偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム、カラーフィルター等の液晶表示装置の部材として好適に使用する事ができる。
【実施例】
【0112】
以下、本発明を実施例に基づき更に具体的に説明する。例中の部及び%は断りがない限り質量基準である。
【0113】
合成例1〔エステル化合物(X1)〕
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸221.0g、2−メチル−1,3−プロパンジオール46.7gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計12.5時間反応させた。反応後、180℃で未反応の2−メチル−1,3−プロパンジオールを減圧除去し、本発明で用いるエステル化合物(X1−1)を得た。エステル化合物(X1−1)は常温では固体であった。GPCによる分析の結果、数平均分子量は460、重量平均分子量は490であった。
【0114】
合成例2(同上)
温度計、撹拌器及び水分離器を備えた1リットルの四つ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸138g、エチレングリコール39g、キシレン200g、p−トルエンスルホン酸・1水和物1.9gを加えた。キシレンとの共沸脱水条件下にエステル化反応を行う為に、140℃まで1.5時間かけて昇温し、140℃で3時間反応させた。反応後、室温まで冷却し、析出した内容物を濾過して、固体を得た。得られた固体にイオン交換水500gを加え、30分撹拌した後、濾過して、120℃で4時間乾燥した。このときの得られた固体にメタノール300gを加え、15分撹拌した後、未溶解分を濾過して、120℃で1時間乾燥させることで本発明で用いるエステル化合物(X1−2)を得た。エステル化合物(X1−2)は常温では固体であった。GPCによる分析の結果、数平均分子量は390、重量平均分子量は393であった。
【0115】
合成例3(同上)
温度計、撹拌器及び還流冷却器を備えた0.5リットルの四つ口フラスコに、p−ヒドロキシ安息香酸221g、3−メチル‐1,5−ペンタンジオール75.6gを加えた。窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温して、合計12.5時間反応させた。反応後、180℃で未反応の3−メチル−1,5−ペンタンジオールを減圧除去し、本発明で用いるエステル化合物(X1−3)を得た。エステル化合物(X1−3)は常温では高粘度液体であった。GPCによる分析の結果、数平均分子量は440、重量平均分子量は450であった。
【0116】
合成例4〔ポリエステルポリオール(X2)〕
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積3リットルの四つ口フラスコに、無水フタル酸944g、アジピン酸311g、プロピレングリコール923g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.131gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、210℃になるまで段階的に昇温し、合計17時間縮合反応させた。反応後にろ過することで、常温高粘度液体であるポリエステルポリオール(X2−1)を得た。GPCによる分析の結果、ポリエステルポリオール(X2−1)の数平均分子量は760で、水酸基価は183で、酸価は0.8であった。
【0117】
合成例5(同上)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、無水フタル酸393g、コハク酸314g、プロピレングリコール250g、エチレングリコール204g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.03gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、210℃になるまで段階的に昇温し、合計17時間縮合反応させた。反応後にろ過することで、常温高粘度液体であるポリエステルポリオール(X2−2)を得た。GPCによる分析の結果、ポリエステルポリオール(X2−2)の数平均分子量は1,190で、水酸基価は112で、酸価は0.6であった。
【0118】
合成例6(同上)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸700g、プロピレングリコール219g、エチレングリコール179g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.03gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温し、合計17時間縮合反応させた。反応後にろ過することで、常温高粘度液体であるポリエステルポリオール(X2−3)を得た。GPCによる分析の結果、ポリエステルポリオール(X2−3)の数平均分子量は980で、水酸基価は115で、酸価は0.5であった。
【0119】
合成例7(同上)
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積2リットルの四つ口フラスコに、ヘキサヒドロ無水フタル酸348g、コハク酸267g、プロピレングリコール213g、エチレングリコール173g及びエステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.03gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温し、合計17時間縮合反応させた。反応後にろ過することで、常温高粘度液体であるポリエステルポリオール(X2−4)を得た。GPCによる分析の結果、ポリエステルポリオール(X2−4)の数平均分子量は1,210で、水酸基価は114で、酸価は0.5であった。
【0120】
合成例8〔エステル化合物(X1)、ポリエステルポリオール(X2)以外のエステル化合物(X3)〕
温度計、攪拌器、及び還流冷却器を付した内容積0.5リットルの四つ口フラスコに、トリメチロールプロパン132g、安息香酸366g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.03gを仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、220℃になるまで段階的に昇温することで、合計17時間縮合反応させた。反応後にろ過することで、常温高粘度液体であるエステル化合物(X3−2)を得た。GPCによる分析の結果、エステル化合物(X3−2)の数平均分子量は380で、水酸基価は10で、酸価は0.3であった。
【0121】
実施例1(セルロースエステル樹脂用改質剤、セルロースエステル樹脂組成物及び光学フィルム)
トリアセチルセルロース(製品名LT−35、酢化度61%、ダイセル化学工業製)100部、メチレンクロライド810部、メタノール90部、エステル化合物(X1−1)7.5部、ポリエステル化合物(X2−1)2.5を加えて溶解し、本発明のセルロースエステル樹脂用改質剤を含むドープ液を得た。ドープ液をガラス板上に厚み約0.8mmとなるように流延し、室温で一晩放置後、50℃で30分、120℃で30分乾燥し、膜厚60μmのセルロースエステルフィルムを得た。得られたセルロースエステルフィルムの耐透湿性及び湿度の変化に伴う寸法安定性を下記方法に従って評価した。評価結果を第1表に示す。
【0122】
<耐透湿性の評価方法>
JIS Z 0208に記載の方法に従い、セルロースエステルフィルムの透湿度を測定した。測定条件は、温度40℃、相対湿度90%で行なった。以下の基準に従い耐透湿性を評価した。
○:透湿度が580g/m
2・24h以下である。
×:透湿度が580g/m
2・24hを超える。
【0123】
<湿度の変化に伴う寸法安定性の評価方法>
セルロースエステルフィルム(1)の寸法安定性の評価は、相対湿度を20%RHから80%RHに変化させることで発生する膨張率にて評価した。具体的には、以下の方法に従った。
高温高湿度対応湿度制御ユニットを取り付けたTMA−SS6100(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、膜厚60μm、幅3mmの試料を引張モードにて荷重50mN、チャック間距離20mmの条件で固定、炉内の試料温度を40℃一定に保ちながら、湿度0%RHから1分あたり2%RHの湿度上昇速度にて80%RHまで加湿したときの湿度変化によるチャック間距離の伸びを湿度差(80−0=80)で除して湿度変化に対する膨張率(%/%RH)で求めた。以下の基準に従い寸法安定性を評価した。
○:吸湿寸法変化率が0.50%以下である。
×:吸湿寸法変化率が0.50%を超える。
【0124】
実施例2〜13及び比較例1〜6
第1表〜第5表に示す配合とした以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。実施例と同様にして評価を行った。評価結果を第1〜5表に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
第5表の脚注
X3−1:スクロースベンゾエート