特許第6836735号(P6836735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836735
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】合成皮革
(51)【国際特許分類】
   D06N 3/14 20060101AFI20210222BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20210222BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210222BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20210222BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   D06N3/14
   B32B5/18
   B32B27/40
   C08G18/10
   C08G18/00 H
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-544302(P2020-544302)
(86)(22)【出願日】2019年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2019046534
(87)【国際公開番号】WO2020116304
(87)【国際公開日】20200611
【審査請求日】2020年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-227267(P2018-227267)
(32)【優先日】2018年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
(72)【発明者】
【氏名】金川 善典
(72)【発明者】
【氏名】大旗 亮平
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 英史
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/038195(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/027489(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/110105(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103710995(CN,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0122765(US,A1)
【文献】 特開2005−154721(JP,A)
【文献】 特許第6669324(JP,B2)
【文献】 特許第6610837(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N 1/00− 7/06
B32B 1/00−43/00
C08G 18/00−18/87
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基布(i)、中間層(ii)、及び、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、
前記中間層(ii)が、
イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、及び尿素を含有する発泡剤組成物(A2)とを含有する湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物により形成されたものであり、
前記表皮層(iii)が、アニオン性基の濃度が0.15mmol/g以下であり、かつ、重量平均分子量が70,000〜250,000の範囲である、脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(x1)、ポリオール(x2)、及び、鎖伸長剤(x3)を原料とするアニオン性ウレタン樹脂(X)(イソシアネート基と反応する官能基を有する反応性シリコーンを原料とするものを除く。)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物により形成されたものであり、
前記脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート(x1)が、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、及び、ノルボルネンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のものであり、
前記ポリオール(x2)が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマージオール、アクリルポリオール、及び、ポリブタジエンポリオールからなる群より選ばれる1種以上のものであることを特徴とする合成皮革。
【請求項2】
前記アニオン性ウレタン樹脂(X)のアニオン性基が、スルホニル基である請求項1記載の合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、その機械的強度や風合いの良さから、合成皮革(人工皮革含む。)の製造に広く利用されている。この用途においては、これまでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含有する溶剤系ウレタン樹脂が主流であった。しかしながら、欧州でのDMF規制、中国や台湾でのVOC排出規制の強化、大手アパレルメーカーでのDMF規制などを背景に、合成皮革を構成する各層用のウレタン樹脂の脱DMF化が求められている。
【0003】
このような環境対応化のため、ウレタン樹脂が水に分散等した水性ウレタン樹脂組成物や無溶剤である湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂の活用が広く検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、中間層及び表皮層ともに環境対応型の材料を用いて、耐加水分解性、耐薬品性、及び、風合いを全て兼ね備える合成皮革は、未だ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−119749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐加水分解性、耐薬品性、及び、風合いに優れる合成皮革を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくとも、基布(i)、中間層(ii)、及び、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、前記中間層(ii)が、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と、発泡剤組成物(A2)とを含有する湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物により形成されたものであり、前記表皮層(iii)が、アニオン性基の濃度が0.15mmol/g以下であるアニオン性ウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物により形成されたものであることを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の合成皮革は、中間層を無溶剤である湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物、及び、表皮層を水を含有するウレタン樹脂組成物により形成されるため、環境対応に優れるものであり、耐加水分解性、耐薬品性、及び、風合いに優れるものである。
【0008】
よって、本発明の合成皮革は、溶剤系から水系・無溶剤系への置換が困難とされてきた自動車内装材、家具、スポーツシューズ等の高耐久性を要する用途への使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の合成皮革は、少なくとも、基布(i)、中間層(ii)、及び、表皮層(iii)を有する合成皮革であって、前記中間層(ii)が、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と、発泡剤組成物(A2)とを含有する湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物により形成されたものであり、前記表皮層(iii)が、アニオン性基の濃度が0.15mmol/g以下であるアニオン性ウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物により形成されたものである。
【0010】
前記基布(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物などを用いることができる。また、前記基布(i)としては、これらのものに、ポリウレタン樹脂が含浸された公知の含浸基布も用いることができる。
【0011】
前記中間層(ii)は、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と、発泡剤組成物(A2)とを含有する湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物により形成されるものである。この発泡剤組成物(A2)により、発泡構造を中間層(ii)に簡便に形成できるため、優れた風合いを得ることができる。
【0012】
前記発泡剤組成物(A2)としては、例えば、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、尿素、アゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、炭酸水素ナトリウム等の熱分解性発泡剤;ホウ酸を用いることができる。これらの中でも、良好な発泡状態を形成でき、優れた風合いが得られる点から、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、及び、尿素を含有することが好ましい。
【0013】
前記N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンの使用量としては、良好な発泡状態を形成でき、中間層(ii)の機械的物性への悪影響が少ない点から、前記発泡剤組成物(A2)中3〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0014】
前記尿素は前記N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンの発泡助剤として機能するものであるため、併用することが好ましく、前記尿素の使用量としては、薄膜においても良好な発泡状態を形成できる点から、前記発泡剤組成物(A2)中3〜50質量%の範囲であることが好ましく、8〜40質量%の範囲であることがより好ましい。
【0015】
前記N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンと尿素との質量比[(N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン)/(尿素)]としては、薄膜においても良好な発泡状態を形成できる点から、10/90〜90/10の範囲であることが好ましく、30/70〜70/30の範囲であることがより好ましい。
【0016】
また、前記発泡剤組成物(A2)としては、前記した発泡剤をホットメルトウレタンプレポリマー(A1)に均一に混合するため、ポリオール(p−a)を更に含有することが好ましい。
【0017】
前記ポリオール(p−a)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油ポリオール、多価アルコール等;これらの共重合物などを用いることができる。これらのポリオールは、発泡硬化物が使用される用途に応じて適宜決定することができ、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0018】
前記ポリオール(p−a)の数平均分子量としては、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)に混合しやすい点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、700〜5,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(p−a)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0019】
前記ポリオール(p−a)の使用量としては、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)への混合のしやすさの点、及び発泡硬化物の機械的物性の点から、前記発泡剤組成物(A2)中30〜90質量%の範囲であることが好ましく、40〜80質量%の範囲であることがより好ましい。
【0020】
また、前記発泡剤組成物(A2)としては、より一層優れた発泡構造を形成できる点から、更にホウ酸を含有してもよい。
【0021】
前記ホウ酸を用いる場合の使用量としては、前記尿素100質量部に対して、5〜150質量部の範囲であることが好ましく、10〜120質量部の範囲であることがより好ましい。
【0022】
前記発泡剤組成物(A2)の使用量としては、中間層(ii)の機械的物性の低下を引き起こすことなく、良好な風合いを有する合成皮革が得られ、薄膜でも良好な発泡状態を保持することができる点から、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)100質量部に対して、1〜30質量部の範囲であることが好ましく、5〜25質量部の範囲であることがより好ましい。
【0023】
前記イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A1)は、常温では固体であり、好ましくは80〜120℃の温度で溶融するものである。前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)は、好ましくはコーンプレート粘度計により測定した100℃における溶融粘度が100〜100,000mPa・sの範囲であるものであり、より好ましくは500〜70,000mPa・sの範囲のものである。なお、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)の溶融粘度は、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)を100℃で1時間溶融した後、コーンプレート粘度計を使用して測定した値を示す。
【0024】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)としては公知のものを用いることができ、例えば、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物を用いることができる。
【0025】
前記ポリオール(a1)としては、前記ポリオール(p−a)と同様のものを用いることができ、これらのポリオールは使用される用途に応じて適宜決定でき、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、本発明の合成皮革が、優れた耐屈曲性、及び耐加水分解性が求められる用途で使用される場合には、ポリオキシテトラメチレングリコールをポリオール(a1)中50質量%以上用いることが好ましく、60〜90質量%の範囲で用いることがより好ましい。また、本発明の合成皮革が、優れた耐久性が求められる用途で使用される場合には、ポリカーボネートポリオールをポリオール(a1)中50質量%以上用いることが好ましく、60〜90質量%の範囲で用いることがより好ましい。
【0026】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、機械的物性の点から、500〜7,000の範囲であることが好ましく、700〜4,000の範囲であることがより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0027】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、良好な反応性及び機械的物性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネート及び/又はキシリレンジイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0028】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(a2)の入った反応容器に、前記ポリオール(a1)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(a2)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a1)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0029】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(a1)が有する水酸基の当量比([NCO/OH])としては、機械的強度の点から、1.1〜5の範囲であることが好ましく、1.5〜3.5の範囲であることがより好ましい。
【0030】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、機械的強度の点から、1.1〜5質量%の範囲が好ましく、1.5〜4質量%の範囲がより好ましい。なお、前記前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0031】
本発明の湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物は、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)及び前記発泡剤組成物(B)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0032】
前記その他の添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、チキソ性付与剤、酸化防止剤、可塑剤、充填材、染料、顔料、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記表皮層(iii)は、アニオン性基の濃度が0.15mmol/g以下であるアニオン性ウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物を用いることが必須である。アニオン性基の濃度が係る範囲であれば、親水性基の導入量が少ないため、エタノール等の高極性を有する薬品に対しても優れた耐性、及び、耐加水分解性を得ることができる。前記ウレタン樹脂(X)のアニオン性基の濃度としては、より一層優れた耐薬品性が得られる点から、0.005mmol/g以上であることが好ましく、0.01mmol/g以上がより好ましく、0.1mmol/g以下が好ましく、0.07mmol/g以下がより好ましく、0.005〜0.1mmol/g以下であることが好ましく、0.01〜0.07mmol/gの範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)のアニオン性基の濃度は、前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料由来のアニオン性基のモル数を、ウレタン樹脂(X)を構成する各原料の合計質量で除した値を示す。
【0034】
前記ウレタン樹脂(X)におけるアニオン性基の導入方法は、前記ウレタン樹脂(A)と同様である。それらの中でも、前記ウレタン樹脂(X)としては、少ないアニオン性基の量で乳化でき、水(Y)への分散性に優れ、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性が得られる点から、スルホニル基を有する化合物を原料とした、スルホニル基を有するウレタン樹脂であることが好ましい。
【0035】
前記ウレタン樹脂(X)としては、具体的には、例えば、前記したアニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、ポリイソシアネート(x1)、ポリオール(x2)、及び、伸長剤(x3)の反応物を用いることができる。
【0036】
前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料の使用量としては、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性が得られる点から、ポリオール(x2)中0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上が特に好ましく、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、2質量%以下が特に好ましく、0.05〜10質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜7質量%の範囲がより好ましく、0.3〜3質量%の範囲が更に好ましく、0.5〜2質量%の範囲が特に好ましい。
【0037】
前記ポリイソシアネート(x1)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネート;フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性が得られる点から、脂肪族及び/又は脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及び、ヘキサメチレンジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のポリイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0038】
前記ポリオール(x2)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマージオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性得られる点から、ポリカーボネートポリオール、及び/又は、ポリエステルポリオールを用いることが好ましく、好ましいポリオールの使用量は、前記ポリオール(x2)中20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0039】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性が得られる点から、ヘキサンジオール及び/又はε−カプロラクトンを原料とするポリカーボネートポリオールを用いることが好ましい。
【0040】
前記ポリエステルポリオールとしては、より一層優れた耐薬品性、及び耐加水分解性が得られる点から、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、及び、ネオペンチルグリコールからなる群より選ばれる1種以上の化合物を原料とするポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0041】
前記ポリオール(x2)の数平均分子量としては、より一層優れた耐薬品性、耐加水分解性、及び、機械的強度が得られる点から、500〜100,000の範囲であることが好ましく、800〜10,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(x2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0042】
前記鎖伸長剤(x3)としては、例えば、分子量が50以上500未満の水酸基を有する鎖伸長剤、アミノ基を有する鎖伸長剤等を用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
前記水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0044】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、アジピン酸ジヒドラジド等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記鎖伸長剤(x3)としては、より一層優れた耐薬品性、耐加水分解性、及び耐光性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましく、イソホロンジアミン、ヒドラジン、及び、アジピン酸ジヒドラジドからなる群より選ばれる1種以上の鎖伸長剤を用いることが好ましい。これらの好ましい鎖伸長剤の使用量は、鎖伸長剤(x3)中30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
【0046】
前記鎖伸長剤(x3)の使用量としては、皮膜の耐久性、耐薬品性、耐加水分解性、及び、耐光性をより一層向上できる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中0.5〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0047】
前記ウレタン樹脂(X)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(x1)、及び、ポリオール(x2)を反応してイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得、次いで鎖伸長剤(x3)、及び、前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料を反応させ、その後に水(Y)を加える方法が挙げられる。これらの反応は、例えば、50〜100℃の温度で3〜10時間行うことが好ましい。
【0048】
また、前記鎖伸長剤(x3)として、水酸基を有する鎖伸長剤とアミノ基を有する鎖伸長剤とを併用する場合には、前記ポリイソシアネート(x1)、ポリオール(x2)、及び、水酸基を有する鎖伸長剤を反応してイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得、次いでアミノ基を有する鎖伸長剤、及び、前記アニオン性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料を反応させ、その後に水(Y)を加える方法が好ましい。
れる。これらの反応は、例えば、50〜100℃の温度で3〜10時間行うことが好ましい。
【0049】
前記親水性基を有するウレタン樹脂を製造するために用いる原料、前記ポリオール(x2)、及び、前記鎖伸長剤(x3)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(x1)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲がより好ましい。
【0050】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得る際の、前記モル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、1.1〜3.5の範囲であることが好ましく、1.3〜2.5の範囲がより好ましい。また、その後の鎖伸長工程では、前記ウレタンプレポリマーの遊離イソシアネート基に対する、鎖伸長剤のイソシアネート基反応性基の当量比が、好ましくは40〜100%の範囲、より好ましくは70〜100%の範囲となるように反応させることができる。
【0051】
前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量としては、皮膜の耐久性、耐薬品性、耐加水分解性、及び、耐光性をより一層向上できる点から、50,000以上であることが好ましく、70,000以上がより好ましく、250,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、50,000〜250,000の範囲であることが好ましく、70,000〜200,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0052】
また、前記ウレタン樹脂(X)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記有機溶剤としては、アセトン、及び/又は、メチルエチルケトンを用いることが好ましく、アセトンがより好ましい。なお、前記有機溶剤は、ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0053】
前記水(Y)としては、前記水(B)と同様のものを用いることができる。前記水(Y)の含有量としては、作業性、塗工性、及び保存安定性の点から、ウレタン樹脂組成物中30〜80質量%の範囲であることが好ましく、35〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
前記ウレタン樹脂組成物としては、前記ウレタン樹脂(X)、及び、前記水(Y)以外にも必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
【0055】
前記その他の添加剤としては、例えば、乳化剤、凝固剤、ウレタン化触媒、シランカップリング剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0056】
次に、本発明の合成皮革の製造方法について説明する。
【0057】
前記合成皮革の製造方法としては、例えば、離型処理された基材上に、前記表皮層形成用のウレタン樹脂組成物を塗工し、乾燥・工程することにより、表皮層(iii)を得、次いで、
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)を加熱溶融した後に、発泡剤組成物(A2)を混合して、この表皮層(iii)上に混合物を塗布し、次いで、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)の加熱溶融温度以上の温度で加熱処理をすることにより中間層(ii)を形成し、次いで前記中間層(ii)上に基布(i)を貼り合せる方法が挙げられる。
【0058】
前記表皮層形成用のウレタン樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0059】
前記ウレタン樹脂組成物の乾燥方法としては、例えば、40〜130℃で1〜10分行う方法が挙げられる。得られる表皮層(iii)の厚さとしては、合成皮革が使用される用途に応じて適宜決定されるが、それぞれ例えば0.5〜100μmの範囲である。
【0060】
前記発泡剤組成物(A2)を、加熱溶融されたホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と混合する方法としては、例えば、バッチ式の攪拌機、スタティックミキサー、ローターステーター、2液混合装置等の混合装置等を使用する方法が挙げられる。
【0061】
前記湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物を、離型紙に形成した表皮層(iii)上に塗布する方法としては、例えば、アプリケーター、ロールコーター、スプレーコーター、T−ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用した方法が挙げられる。
【0062】
なお、前記湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物の塗布物は、後述する後加熱により発泡し厚さが増大するため、後述する発泡度等を考慮した上で前記塗布時の厚さを決定することが好ましい。
【0063】
次に、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A1)の加熱溶融温度以上の温度で加熱処理することで、前記発泡剤組成物(A2)(特に、前記(A2−1))の発泡・硬化を促進して、中間層(ii)を製造する。この際の前記加熱処理としては、例えば、100〜150℃の範囲であり、基材への悪影響や熱履歴による合成皮革の物性低下を抑制しやすい点から、110〜140℃の範囲であることがより好ましい。前記加熱処理の時間としては、例えば、1〜10分間であることが好ましい。
【0064】
前記中間層(ii)を形成した後には、前記中間層(ii)上に基布(i)を貼り合せることで合成皮革を得ることできるが、前記基布(i)を貼り合せる前、及び/又は後においては、中間層(ii)の熟成を目的に、例えば、20〜80℃の温度で、1〜7日間アフタキュアを行ってもよい。
【0065】
以上の方法により得られた合成皮革の中間層(ii)の厚さとしては、例えば、10〜500μmの範囲であり、この範囲内で良好な発泡状態を形成することができる。前記厚さは、本発明の合成皮革が使用される用途に応じて適宜決定することができる。また、本発明においては、薄膜においても良好な発泡状態を保持することができ、その厚さとしては、例えば100μm未満、好ましくは20〜90μmの範囲、より好ましくは30〜80μmの範囲であり、特に好ましくは50〜70μmの範囲である。
【0066】
前記中間層(ii)中に残存する泡としては、前記(A2−1)の後加熱による発泡が主であるが、前記中間層(ii)の発泡度としては、1.2以上であることが好ましく、1.5〜3の範囲であることがより好ましく、1.7〜2.8の範囲であることが更に好ましい。なお、前記中間層(ii)の発泡度は、前記湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物の発泡前の体積(V)と、発泡後の体積(V)との比(V/V)から算出した値を示す。
【0067】
前記合成皮革を製造した後は、必要に応じて、例えば、30〜100℃で1〜10日エージングしてもよい。
【0068】
前記合成皮革には、必要に応じて、多孔層、表面処理層等を用いてもよい。これらの層を形成する材料としては、公知のものを用いることができる。
【0069】
以上、本発明の合成皮革は、中間層を無溶剤である湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物、及び、表皮層を水性ウレタン樹脂組成物により形成されるため、環境対応に優れるものであり、耐摩耗性、耐加水分解性、及び風合いに優れるものである。
【実施例】
【0070】
[合成例1]
<湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物(中間層用RHM−1)の調製>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた反応容器に、ポリオキシテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下「PTMG」と略記する。)を70質量部、ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物、数平均分子量;2,000、以下「PEs(1)」と略記する。)を30質量部、を仕込み、減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を25質量部を加え、100℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、NCO%;3.3のイソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマーを得た。
これとは別に、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学株式会社製「MN−3050」、数平均分子量;3,000)を5質量部、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを2.5質量部、尿素を2.5質量部を混合して発泡剤組成物を用意した。これらを中間層用RHM−1とした。
【0071】
[合成例2]
<湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物(中間層用RHM−2)の調製>
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口、及び還流冷却器を備えた反応容器に、ポリカーボネートポリオール(日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン980R」、数平均分子量;2,600、以下「PC」と略記する。)を70質量部、を30質量部、PEs(1)を仕込み、減圧条件下で水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートを25質量部を加え、100℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、NCO%;3.2のイソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマーを得た。
これとは別に、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学株式会社製「MN−3050」、数平均分子量;3,000)を5質量部、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを2.5質量部、尿素を2.5質量部を混合して発泡剤組成物を用意した。これらを中間層用RHM−2とした。
【0072】
[合成例3]
<湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物(中間層用RHM−3)の調製>
合成例1と同様にしてイソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマーを得た。
これとは別に、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学株式会社製「MN−3050」、数平均分子量;3,000)を5質量部、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを3.5質量部、尿素を1.5質量部を混合して発泡剤組成物を用意した。これらを中間層用RHM−3とした。
【0073】
[合成例4]
<湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物(中間層用RHM−4)の調製>
合成例1と同様にしてイソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマーを得た。
これとは別に、ポリオキシプロピレントリオール(三井化学株式会社製「MN−3050」、数平均分子量;3,000)を5質量部、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンを2.5質量部、尿素を2.5質量部、ホウ酸を0.5質量部を混合して発泡剤組成物を用意した。これらを中間層用RHM−4とした。
【0074】
[合成例4]表皮層形成用ウレタン樹脂(X−1)組成物の調製
攪拌機、還流冷却管、温度計、及び、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH−200、数平均分子量;2,000」)120質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)280質量部を70℃で均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート100質量部を加え、100℃で6時間反応させることで、イソシアネートを有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、このウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、アセトン928質量部を加え、均一に溶解した。このウレタンプレポリマー溶液に、イオン交換水191質量部、イソホロンジアミン30質量部、及び、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸ナトリウム6質量部の混合液を加えた。次いで、イオン交換水155質量部を加えた。反応終了後、アセトンを減圧下留去することで、ウレタン樹脂(X−1)組成物(不揮発分;60質量%、アニオン性基の濃度;0.059mmol/g)を得た。
【0075】
[合成例5]表皮層形成用ウレタン樹脂(X−2)組成物の調製
攪拌機、還流冷却管、温度計、及び、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH−200、数平均分子量;2,000」)120質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)280質量部、日油株式会社製「ユニルーブ50MB−72」(数平均分子量;3,000)12質量部を70℃で均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート101質量部を加え、100℃で6時間反応させることで、イソシアネートを有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、このウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、アセトン953質量部を加え、均一に溶解した。このウレタンプレポリマー溶液に、イオン交換水193質量部、イソホロンジアミン30質量部、及び、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸ナトリウム4質量部の混合液を加えた。次いで、イオン交換水172質量部を加えた。反応終了後、アセトンを減圧下留去することで、ウレタン樹脂(X−2)組成物(不揮発分;60質量%、アニオン性基の濃度;0.039mmol/g)を得た。
【0076】
[合成例6]表皮層形成用ウレタン樹脂(X−3)組成物の調製
攪拌機、還流冷却管、温度計、及び、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH−200、数平均分子量;2,000」)280質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)120質量部を70℃で均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート50質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート38質量部を加え、100℃で6時間反応させることで、イソシアネートを有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、このウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、アセトン906質量部を加え、均一に溶解した。このウレタンプレポリマー溶液に、イオン交換水90質量部、80質量%水加ヒドラジン11質量部、及び、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸ナトリウム5質量部の混合液を加えた。次いで、イオン交換水246質量部を加えた。反応終了後、アセトンを減圧下留去することで、ウレタン樹脂(X−3)組成物(不揮発分;60質量%、アニオン性基の濃度;0.053mmol/g)を得た。
【0077】
[比較合成例1]
<水性ウレタン樹脂組成物(中間層用RHM’−1)の調製>
発泡剤組成物を用意しなかった以外は、合成例1と同様にして中間層用RHM’−1を得た。
【0078】
[比較合成例2]表皮層形成用ウレタン樹脂(XR−1)組成物の調製
攪拌機、還流冷却管、温度計、及び、窒素導入管を備えた四つ口フラスコに、窒素気流下、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「ETERNACOLL UH−200、数平均分子量;2,000」)100質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000)186質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸24質量部を70℃で均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート143質量部を加え、100℃で6時間反応させることで、イソシアネートを有するウレタンプレポリマーを得た。次いで、このウレタンプレポリマーを60℃まで冷却し、アセトン910質量部を加え、均一に溶解した。このウレタンプレポリマー溶液に、トリエチルアミン18質量部を加え、カルボキシル基を中和した後、イオン交換水922質量部を加え、イソホロンジアミン44質量部を加え反応した。反応終了後、アセトンを減圧下留去することで、ウレタン樹脂(XR−1)組成物(不揮発分;35質量%、アニオン性基の濃度;0.36mmol/g)を得た。
【0079】
[実施例1]
表皮層用形成用ウレタン樹脂(X−1)組成物を100質量部、水分散性黒色顔料(DIC株式会社製「ダイラックHS−9530」)を10質量部、会合型増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)を1質量部からなる配合液をフラット離型紙(味の素株式会社製「DN−TP−155T」)上に乾燥後の膜厚が30μmとなる様に塗布し、70℃で2分間、さらに120℃で2分間乾燥させることで表皮層を得た。
次いで、合成例1で得られたホットメルトウレタンプレポリマー100質量部を100℃に加熱して溶融した。これに合成例1で得られた発泡剤組成物10質量部を入れ混合し、得られた湿気硬化型ホットメルトウレタン組成物を、前記表皮層上に、コンマコーターを使用して厚さ30μmとなるように塗布して、120℃で5分間加熱処理した後に、不織布を貼り合せ、その後、温度23℃、相対湿度65%の条件下で3日間放置し、中間層(ii)の厚さが45μmである合成皮革を得た。
【0080】
[実施例2〜8、比較例1〜2]
用いる中間層用RHM、表皮層用PUD、及び加工条件を表1〜2に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして合成皮革を得た。
【0081】
[数平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0082】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0083】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0084】
[溶融粘度の測定方法]
合成例で得られたホットメルトウレタンプレポリマーをそれぞれ100℃で1時間溶融した後に、1mlをサンプリングし、コーンプレート粘度計(M・S・Tエンジニアリング株式会社製デジタルコーンビスメーター「CV−1S RTタイプ」、40Pコーン、ローター回転数;50rpm)にて100℃における溶融粘度を測定した。
【0085】
[中間層(ii)の発泡度の測定方法]
実施例及び比較例において、溶融したホットメルトウレタンプレポリマー(A1)と発泡剤組成物(A2)を添加した直後の体積(V)と、発泡後の中間層の体積(V)とを測定し、その比(V/V)から発泡度を算出した。
【0086】
[発泡状態の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革の中間層を、日立ハイテクテクノロジー株式会社製走査型電子顕微鏡「SU3500」(倍率200倍)を使用して観察し、以下のように評価した。
「T」:良好な発泡状態が確認できる。
「F」:良好な発泡状態が確認できない。
【0087】
[風合いの評価方法]
実施例及び比較例で得られた発泡硬化物及び硬化物の風合いを触感により評価した。
「A」:極めて柔軟性に富み、凹凸が確認されない。
「B」:良好な柔軟性を有し、凹凸が確認されない。
「C」:硬い、又は、凹凸が確認される。
【0088】
[耐薬品性の評価]
実施例及び比較例で得られた合成皮革の表皮層上に、エタノールを10滴滴下し、24時間放置した後の外観を観察し、以下のように評価した。
「A」;外観に異常なし。
「B」;外観に軽度の白化が生じていた。
「C」;外観に大きな黄変が生じていた。
【0089】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を70℃、湿度95%の条件下で5週間放置した。その後の外観観察および指触により、以下のように評価した。
「A」;外観・指触に異常なし。
「B」;外観に艶変化が生じたが、指触では異常は確認されなかった。
「C」;外観に艶変化が生じ、かつ、ベタツキが確認された。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
本発明の合成皮革である実施例1〜8は、耐加水分解性、耐薬品性、及び、風合いに優れることが分かった。
【0093】
一方、比較例1は、中間層を、発泡剤組成物を用いない湿気硬化型ホットメルトウレタン樹脂組成物により形成した態様であるが、風合いが著しく不良であった。
【0094】
比較例2は、表皮層を、アニオン性基の濃度が本発明で規定するより高いアニオン性ウレタン樹脂を用いた態様であるが、耐加水分解性、及び、耐薬品性が不良であった。