特許第6836772号(P6836772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6836772
(24)【登録日】2021年2月10日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ビニールハウス換気装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/24 20060101AFI20210222BHJP
【FI】
   A01G9/24 F
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-209102(P2016-209102)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-68148(P2018-68148A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100196391
【弁理士】
【氏名又は名称】萩森 学
(72)【発明者】
【氏名】由比 進
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 信行
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光浩
(72)【発明者】
【氏名】松橋 克也
(72)【発明者】
【氏名】小館 洋一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 佳行
(72)【発明者】
【氏名】管 正
(72)【発明者】
【氏名】本城 正憲
【審査官】 中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−502155(JP,A)
【文献】 特開2004−019258(JP,A)
【文献】 実開平05−076254(JP,U)
【文献】 実開平05−004855(JP,U)
【文献】 実公平07−043434(JP,Y2)
【文献】 米国特許第02349368(US,A)
【文献】 米国特許第03279528(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/24 − 9/26
E06B 9/56 − 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニールハウスの側窓を開閉する開閉シートと、該開閉シートを巻き取る巻き取り棒とを備え、当該ビニールハウスの側窓が上記開閉シートで閉じられた状態において、開閉シートは地表面の折り返し箇所で折り返されてビニールハウスの内側上方に向う余剰部分を有し、上記折り返し箇所に開閉シートを下方に引き寄せる錘を有し、上記開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を地表面から一定の高さに支持する巻き取り棒支持手段を備えているビニールハウスの換気装置において、巻き取り棒支持手段が上下方向に移動可能であることを特徴とするビニールハウスの換気装置。
【請求項2】
ビニールハウスの側窓を開閉する開閉シートと、該開閉シートを巻き取る巻き取り棒とを備え、当該ビニールハウスの側窓が上記開閉シートで閉じられた状態において、開閉シートは地表面の折り返し箇所で折り返されてビニールハウスの内側上方に向う余剰部分を有し、上記折り返し箇所に開閉シートを下方に引き寄せる錘を有し、上記開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を地表面から一定の高さに支持する巻き取り棒支持手段を備えているビニールハウスの換気装置において、
巻き取り棒支持手段が、ビニールハウスの側面の延長線上に設置された、巻き取り棒支持部を有する巻き取り棒支持柱であって、少なくとも2本の巻き取り棒支持柱の巻き取り棒支持部で開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を支持することを特徴とするビニールハウスの換気装置
【請求項3】
巻き取り棒支持手段がビニールハウスの構造物に固定された巻き取り棒支持具であって、当該巻き取り棒支持具がローラーを有することを特徴とする請求項1に記載のビニールハウスの換気装置。
【請求項4】
ビニールハウスの側窓を開閉する開閉シートと、該開閉シートを巻き取る巻き取り棒とを備え、当該ビニールハウスの側窓が上記開閉シートで閉じられた状態において、開閉シートは地表面の折り返し箇所で折り返されてビニールハウスの内側上方に向う余剰部分を有し、上記折り返し箇所に開閉シートを下方に引き寄せる錘を有し、上記開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を地表面から一定の高さに支持する巻き取り棒支持手段を備えているビニールハウスの換気装置において、
巻き取り棒支持手段が巻き取り棒と錘を支持するための直方体状の固定具であって、巻き取り棒を支持する巻き取り棒支持ベルトを有し、少なくとも2本の固定具で上記巻き取り棒と錘を支持し、上記巻き取り棒支持ベルトの一端側は巻き取り棒に固定され、巻き取り棒支持ベルトの他端側はビニールハウスの構造物に固定されていることを特徴とするビニールハウスの換気装置
【請求項5】
開閉シートは防虫ネットと透明フィルムが連結されたものからなり、上記防虫ネットの端部がビニールハウスの側窓の上端に固定されており、上記透明フィルムの端部が巻き取り棒に固定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のビニールハウスの換気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業用ビニールハウスの側面に設けた窓(以下、側窓という)の開閉により換気をするためのビニールハウス換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業用ビニールハウス(以下、ハウスともいう)は、野菜や花きなどの作物をその内部で栽培するためのものであり、保温と、作物を降雨から保護することを主な目的とする。しかし、常にビニールで密閉した状態にあると、冬季でも晴天時には作物に悪影響が出るほど高温になる場合がしばしば生ずる。そのため、ハウスの側面に開閉可能な窓を設け、高温時は開放することにより外気と換気してハウス内の温度を外気温と同程度まで下げることが行われている。
【0003】
ハウス側面の開閉方式として最も広く行われている方法は以下の通りである。非特許文献1には従来のハウス側面の開閉方式の代表例が開示されているので、図面を用いて以下に説明する。図13は従来のビニールハウス換気装置を備えたビニールハウスの側窓を半開にしたときの斜視図であり、図14は従来のビニールハウス換気装置を備えたビニールハウスの側窓を全閉にしたときの斜視図である。ビニールハウスの側窓とはビニールハウス側面の開放部分をいい、図13では、ハウス側面の上部に位置する開閉シート固定用蟻溝フレーム7と左側の側面端部被覆フィルム15aと右側の側面端部被覆フィルム15bとハウス側面の下部に位置する裾部フィルム固定用蟻溝フレーム14とで囲まれた部分が側窓である。この側窓を開閉シート2で覆い、開閉シート2を巻き取り棒3に巻き取ったり、巻き取り棒3から開閉シート2を巻き戻すことによって側窓を開閉することができる。図13および図14に示すように、開閉シート2の上辺はハウス肩部に水平に設置した蟻溝フレーム7に弾性の系止線条(図示せず)によって固定されており、開閉シート2の下辺は円筒または円柱状の巻き取り棒3に固定されている。巻き取り棒3には、巻き取りハンドル8(あるいは回転駆動装置)が連結され回転自在となっている。巻き取り棒3を巻き取りハンドル8を用いて回転することにより開閉シート2は巻き取り棒3に巻き取られ、巻き取り棒3を逆回転すれば、開閉シート2は巻き戻される。図13に示すように、ハウスの側窓を半開にした状態では、巻き取り棒3より下の部分が開放されている。ハウス側窓の下部には、地上30cm程度の高さまで裾部フィルム13が設置されている。図14に示すように、ハウスの側窓を全閉にした状態では、開閉シート2は巻き戻されており、巻き取り棒3は地表付近に位置する。側窓を開放するときは、巻き取り棒3を回転して開閉シート2を巻き取り棒3に巻き取っていく。側窓の全開時は、開閉シート2はほぼ全て巻き取り棒3に巻き取られ、巻き取り棒3は蟻溝フレーム7の約30cm下方に位置する。
【0004】
しかし、この方式の場合、図14に示すように、側窓の全閉時に巻き取り棒3が地表付近に位置するため、東北地方など冬季に積雪が多く寒冷な地域では、巻き取り棒3や巻き取りハンドルが雪に埋もれ、あるいは雪解け水で凍結し、開放することが必要になった時に迅速に開放できないという事態がしばしば生ずる。
【0005】
さらに、図14に示すように、側窓の全閉時に巻き取り棒3が地表付近に位置するため、巻き取り棒3と開閉シート2の結合部位などに雨水や雪、枯れ葉等のゴミが付着し、巻き取り時にこれらを巻き込んでしまうため、開閉が困難になる上、開閉シート2が汚れ損傷するという問題がある。
【0006】
別の方法として、開閉シートの下辺をハウスの側窓の下辺に固定し、開閉シートの上辺を上下可動のフレームに固定し、このフレームを上昇させることによって側窓を閉鎖し、上記フレームを下降させることによって側窓を開放する装置が提案されている(特許文献1)。この方式では全閉時に上記可動フレームはハウス肩部に位置しているので、積雪時に可動フレームが雪に埋もれ凍結する事態はほとんど生じないと考えられる。しかしこの装置では側窓の開放時に開閉シートは自重により弛んで折りたたまれた状態になり、折りたたまれたシートの間に雨水が溜まり、そこに藻が発生することや、枯れ葉などのゴミが付着し、開閉シートが汚れることが考えられる。また、この上下可動フレーム方式では可動フレームを昇降させ、任意の開度で固定する仕組みが必要であり、部品数が多く複雑である。
【0007】
さらに又別の方法として、開閉シートの下辺をハウスの側窓の下辺に固定し、開閉シートの上辺を巻き取り棒に固定し、側窓の全閉時に巻き取り棒はハウスの側窓の上辺に位置し、開閉シートを巻き取り棒に巻き取ることによりハウス側窓の上辺から開放する装置が提案されている(特許文献2)。この装置においては、巻き取り棒が自重と巻き取った開閉シートの重さにより自然落下することを防ぐため、巻き取り棒を上に引っ張り支持するため、延出体、ローラー支持ポスト、ローラーおよび錘で構成される仕組みを備えている。この装置でも、側窓の全閉時に巻き取り棒はハウス側面の上辺に位置するため、積雪時にも巻き取り棒が雪に埋もれる恐れは少ない。しかし、巻き取り棒を上に引っ張る仕組みが複雑であり、普及を妨げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−27843号公報
【特許文献2】特開2005−318824号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「グリーンハウスの基本が正しく分かるハウス丸わかり読本Vol1」、渡辺パイプ株式会社、2011年、68頁−69頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、通常の積雪量において開閉装置が雪に埋もれたり、あるいは凍結することによって必要な時に迅速に開放できなくなるという恐れがなく、巻き取り部分に水、雪氷、ゴミなどが付着して巻き込まれることがないビニールハウス換気装置であって、仕組みができるだけ単純なビニールハウス換気装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明に係るビニールハウスの換気装置は、ビニールハウスの側窓を開閉する開閉シートと、該開閉シートを巻き取る巻き取り棒とを備え、当該ビニールハウスの側窓が上記開閉シートで閉じられた状態において、開閉シートは地表面の折り返し箇所で折り返されてビニールハウスの内側上方に向う余剰部分を有し、上記折り返し箇所に開閉シートを下方に引き寄せる錘を有し、上記開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を地表面から一定の高さに支持する巻き取り棒支持手段を備えていることを特徴とするものである。
【0012】
第二の発明に係るビニールハウスの換気装置は、第一の発明において、巻き取り棒支持手段が、ビニールハウスの側面の延長線上に設置された、巻き取り棒支持部を有する巻き取り棒支持柱であって、少なくとも2本の巻き取り棒支持柱の巻き取り棒支持部で開閉シートの余剰部分を巻き取った巻き取り棒を支持することを特徴とするものである。
【0013】
第三の発明に係るビニールハウスの換気装置は、第一の発明において、巻き取り棒支持手段がビニールハウスの構造物に固定された巻き取り棒支持具であって、当該巻き取り棒支持具がローラーを有することを特徴とするものである。
【0014】
第四の発明に係るビニールハウスの換気装置は、第一の発明において、巻き取り棒支持手段が巻き取り棒と錘を支持するための直方体状の固定具であって、巻き取り棒を支持する巻き取り棒支持ベルトを有し、少なくとも2本の固定具で上記巻き取り棒と錘を支持し、上記巻き取り棒支持ベルトの一端側は巻き取り棒に固定され、巻き取り棒支持ベルトの他端側はビニールハウスの構造物に固定されていることを特徴とするものである。
【0015】
第五の発明に係るビニールハウスの換気装置は、第一ないし第三の発明において、開閉シートは防虫ネットと透明フィルムが連結されたものからなり、上記防虫ネットの端部がビニールハウスの側窓の上端部に固定されており、上記透明フィルムの端部が巻き取り棒に固定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るビニールハウスの換気装置においては、側窓の全閉時に巻き取り棒を地表面から一定の高さに支持する巻き取り棒支持手段を備えているので、多少の積雪量では巻き取り部が雪に埋もれることがない。また、地表面の折り返し箇所で折り返された開閉シートの余剰部分はビニールハウスの内側に位置するので、ビニールハウス内気温が上昇して換気が必要になる際に、この開閉シートの余剰部分が凍結していることはなく、水や雪氷、ゴミの付着や巻き込みが無い。
【0017】
側辺の長さが長いビニールハウスでは、巻き取り棒を両端の2箇所のみで支えた場合、巻き取り棒の中央部が自重により下へ撓みやすい。巻き取り棒が撓むと開閉シートの巻き取りや巻き戻しが困難になる。本発明に係るビニールハウスの換気装置は、巻き取り棒の中間部の1箇所ないし必要に応じて数カ所に、巻き取り棒支持具または巻き取り棒支持ベルトを備えているので、巻き取り棒が撓むことを防いでいる。
【0018】
第一ないし第三の発明において、巻き取り棒支持手段による巻き取り棒を支持する高さをビニールハウスの側窓の上端とほぼ同じ高さにすることによって、全閉時に側窓を二重に覆うことができ、厳寒時の保温性を高くすることができる。
【0019】
第五の発明においては、低温期にはビニールハウスの側窓を透明フィルムで閉鎖してビニールハウスを保温し、害虫の多い高温期にはビニールハウスの側窓を防虫ネットで被覆してビニールハウス内の温度を外気温と同程度に保ちつつ、害虫のビニールハウス内への侵入を防ぐことができる。
【0020】
本発明に係るビニールハウスの換気装置は仕組みが比較的単純であり、製造コストが比較的安価であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明のビニールハウス換気装置の一実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。
図2図2は本発明のビニールハウス換気装置の一実施例において、ビニールハウスの側窓を半開したときの斜視図である。
図3図3は本発明のビニールハウス換気装置の一実施例において、ビニールハウスの側窓を半閉したときの、巻き取り棒、巻き取り棒支持具、錘および開閉シートの関係を示す部分端面図である。
図4図4は本発明のビニールハウス換気装置の一実施例における巻き取り棒支持具の正面図である。
図5図5は本発明のビニールハウス換気装置の一実施例における巻き取り棒支持具の平面図である。
図6図6は本発明のビニールハウス換気装置の別の実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。
図7図7は本発明のビニールハウス換気装置の別の実施例において、ビニールハウスの側窓を半開したときの斜視図である。
図8図8は本発明のビニールハウス換気装置の別の実施例において、ビニールハウスの側窓を半開したときの、巻き取り棒、錘、巻き取り棒支持ベルトおよび開閉シートの関係を示す部分端面図である。
図9図9は本発明のビニールハウス換気装置のさらに別の実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。
図10図10は本発明のビニールハウス換気装置のさらに別の実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。
図11図11は本発明のビニールハウス換気装置のさらに別の実施例において、開閉シートを構成する防虫ネットのみでビニールハウスの側窓を覆ったときの斜視図である。
図12図12は本発明のビニールハウス換気装置において、巻き取り棒に連結された巻き取りハンドルと巻き取りハンドルガイド柱の一実施例を示す斜視図である。
図13図13は従来のビニールハウスの換気装置を備えたビニールハウスの側窓を半開したときの斜視図である。
図14図14は従来のビニールハウスの換気装置を備えたビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において様々な変更や修正が可能であることは言うまでもない。
【実施例1】
【0023】
図1および図2は本発明に係るビニールハウス1の換気装置の実施例1の斜視図である。図1はビニールハウスの側窓を全閉にした状態を示し、図2はビニールハウスの側窓を半開にした状態を示す。本発明における側窓は、図2において、ビニールハウス1の側面の上部に位置する開閉シート固定用蟻溝フレーム7とビニールハウス1の側面の下部に位置する裾部フィルム固定用蟻溝フレーム14で挟まれた部分である。図1に示すように、開閉シート2の一端部はビニールハウス1の骨組みに固定された蟻溝フレーム7に弾性系止線条(図示せず)などにより固定され、開閉シート2の他端部は巻き取り棒3にビニールハウス用パッカー(図示せず)などにより固定されている。開閉シート2の材質は、農業用ビニールハウスの被覆に一般的に用いられる塩化ビニール系樹脂シートやポリオレフィン系樹脂シートが適しているが、ビニールハウスの屋根や妻面など開口部以外の被覆に使用しているシートと同じ材質のものでもよい。ビニールハウス1の側面の下部には裾部フィルム13が張設されており、裾部フィルム13の上端は裾部フィルム固定用蟻溝フレーム14に固定されており、裾部フィルム13の下端は地面に埋め込まれている。図1には、ビニールハウス1の一方の側窓の開閉シート2しか示されていないが、ビニールハウス1の反対側の他方の側窓にも図1に示すものと同じ構成の開閉シートが配置されている。また、ビニールハウス1の反対側の他方の側窓に配置されている開閉シートも、以下の段落[0024]〜[0046]で説明するものと同じ構成の開閉機構を備えている。
【0024】
巻き取り棒3は、直径20mm程度、長さはビニールハウス1の側窓の長さより50cm程度長い円柱又は円筒で、材質は鉄、アルミニウムなどの金属や塩化ビニールなどの合成樹脂などが好適である。巻き取り棒3の一端は巻き取りハンドル8に連結されている。ビニールハウス1の側面の延長線上であって、ビニールハウス1から50cm程度離れた位置に巻き取りハンドルガイド柱9が垂直に立てられている。図12に示すように、巻き取りハンドル8は上下に貫通する穴を有し、この穴を通して巻き取りハンドル8は巻き取りハンドルガイド柱9に嵌合している。巻き取り棒3の一端は巻き取りハンドル8に連結されており、巻き取りハンドル8で巻き取り棒3を回転させつつ、巻き取りハンドル8は巻き取りハンドルガイド柱9にガイドされて上下方向に自在に移動することができる。
【0025】
巻き取りハンドル8および巻き取りハンドルガイド柱9は巻き取り棒3を容易に回転させるための装置であるが、巻き取り棒3を容易に回転させるための装置はこれに限定されるものではなく、回転駆動装置を連結するタイプなど種々の公知技術が適用できる。
【0026】
図1および図2に示すように、巻き取り棒支持柱5は、ビニールハウス1の側面の左右の延長線上に1本ずつ、合計で4本設置されている。なお、図1および図2には、巻き取り棒支持柱5は3本しか示されていないが、もう1本の巻き取り棒支持柱5は隠れている。また、各巻き取り棒支持柱5の一端部に巻き取り棒3を載せるための巻き取り棒支持部5−1を備えている。巻き取り棒支持柱5の一端部の巻き取り棒支持部5−1の高さは50cm程度が適切な場合が多いが、積雪量の多い地域に設置する場合など、必要に応じ、より高くする。ビニールハウス1の側窓を全閉にした状態から上記巻き取り棒支持柱5の高さまでビニールハウス1の側窓を開放した状態に至るまでは、巻き取り棒3は巻き取り棒支持柱5の巻き取り棒支持部5−1に載せられている。
【0027】
図1図2および図3に示すように、ビニールハウス1の骨組み10には巻き取り棒支持柱5の巻き取り棒支持部5−1と同じ高さに巻き取り棒支持具6が固定されている。図4および図5に示すように、巻き取り棒支持具6は、2個の自由に回転するローラー(6-1)と、ハウスの骨組みを挟む挟持部(6−2)と、挟持部を締め付ける固定用ネジ(6−3)を有している。開閉シート2を巻き取った巻き取り棒3は、図4図5に示す支持具6の2個のローラー部6−1の上に載せられる。ローラー6−1が自由回転するため巻き取り棒3も円滑に回転する。
【0028】
側辺の長さが長いビニールハウスでは、巻き取り棒を両端の2箇所のみで支えた場合、巻き取り棒の中央部が自重により下へ撓みやすい。実施例1に係るビニールハウス換気装置では、巻き取り棒支持具6が巻き取り棒3の中間部分を支えているので、巻き取り棒3が撓むことはない。側辺の長さがより長いビニールハウスでは、必要に応じて巻き取り棒支持具6の設置数を増すことにより巻き取り棒3の撓みを防ぐことができる。
【0029】
開閉シート2の上端から下端までの長さは、蟻溝フレーム7の高さと、巻き取り棒支持柱5を設置したときの巻き取り棒支持部5−1の高さとの合計の長さと同じ、あるいはその合計よりやや長くするのが望ましい。ビニールハウス1の側窓を全閉にしたときは、開閉シート2は地表面の折り返し箇所でビニールハウス1の内側に折り返され、内側上方に向う開閉シート2の余剰部分は巻き取り棒支持柱5の上に載せられた巻き取り棒3に至る。そして、図1に示すように、開閉シート2の折り返し部分の上に円柱状の錘4が載せられている。開閉シート2は錘4の重さにより下方に引っ張られ、ピンと張った状態が維持される。図2および図3に示すように、巻き取りハンドル8を回すことにより巻き取り棒3を回転して開閉シート2を巻き取ると、錘4は巻き取り棒支持柱5上の巻き取り棒3の直下まで上昇してくる。
【0030】
錘4は直径10〜20mm程度、長さは開閉シートの幅と同じあるいはそれよりやや長い円柱状であるが、円筒状でもよく、錘4の材質は鉄、アルミニウムなどの金属や塩化ビニールなどの合成樹脂などが好適である。
【0031】
図3は巻き取り棒支持具6を取り付けた位置でのビニールハウスの部分端面図である。錘4を経て巻き取り棒3に巻き取られた開閉シートの巻き取り部分は、錘4に至るまでの展張状態にある開閉シート2より内側に位置しており、ビニールハウス1の内部に位置しているので、この開閉シートの巻き取り部分が、換気が必要になる日中に凍結していることはなく、この部分に雪氷やゴミが付着することもない。
【0032】
図2において、夏季など高温期は、ビニールハウス1の側窓を巻き取り棒支持柱5の高さ以上に開放する必要がある。この場合は錘4を除去することにより、蟻溝フレーム7の約30cm下方まで側窓を開放することができる。冬季など低温期は、日中の晴天時でも外気温は夏季ほど高くないので、巻き取り棒支持柱5の巻き取り棒支持部5−1の直下の高さまで側窓を開放できれば、開度としては十分であると考えられる。
【実施例2】
【0033】
本発明のビニールハウスの換気装置の別の実施例である。実施例2のビニールハウスの換気装置が実施例1のビニールハウスの換気装置と異なる点は、巻き取り棒支持手段が複数の巻き取り棒支持具からなることである。巻き取り棒支持具6が複数の骨組み10に巻き取り棒3を支持するに足る数だけ複数個取り付けられており、巻き取り棒支持柱5は備えていても備えていなくてもよい。
【0034】
上記の巻き取り棒支持柱5あるいは巻き取り棒支持具6は、ビニールハウス1の側窓を全閉したときに巻き取り棒3を一定の高さに支持するための手段の例であるが、巻き取り棒支持手段はこれらに限定されるものではなく、ハウスの骨組みから懸垂させた輪状のベルトあるいはフックに巻き取り棒を掛けるというような手段でも代替できる。
【実施例3】
【0035】
図6および図7は本発明のビニールハウスの換気装置のさらに別の実施例の斜視図である。図6は側窓全閉時、図7は側窓半開時を示す。本実施例において側窓は、図7において、ビニールハウス1の側面の上部に位置する開閉シート固定用蟻溝フレーム7とビニールハウス1の側面の下部に位置する裾部フィルム固定用蟻溝フレーム14で挟まれた部分である。開閉シート2の一端部はビニールハウス1の骨組みに固定された蟻溝フレーム7に弾性系止線条(図示せず)により固定され、開閉シート2の他端部は巻き取り棒3にビニールハウス用パッカー(図示せず)により固定されている。
【0036】
図6および図7に示すように、本実施例は、巻き取り棒3および錘4の両端部の各々に、巻き取り棒支持手段として固定具11を備えている。固定具11は略直方体の板状で上側と下側に円柱状の穴が設けられており、上側の穴には巻き取り棒3が、下側の穴には錘4がそれぞれ回転可能に貫通している。
【0037】
固定具11の長手方向の長さは通常40cm程度が適切であるが、より積雪量の多い地域向けには必要に応じてより長くする。固定具11の厚さは材質の強度に合わせ調節するが、1cm〜10cm程度が好適である。固定具11の材質は、鉄、アルミニウムなどの金属、木材、フェノール樹脂などの合成樹脂などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
開閉シート2の上端から下端までの長さは、蟻溝フレーム7の高さと、上記固定具11で固定される巻き取り棒3と錘4の間隔の長さとの合計の長さと同じ、あるいはその合計よりやや長くするのが望ましい。図6図7および図8に示すように、開閉シート2は錘4を周回してビニールハウス1の内側に折り返されて巻き取り棒3に至る。
【0039】
図6および図7に示すように、ビニールハウス1の側面の中間部に巻き取り棒支持ベルト12を備えている。巻き取り棒支持ベルト12の上端部はビニールハウス1の骨組み10に固定され、巻き取り棒支持ベルト12の下端部は巻き取り棒3に固定されている。巻き取り棒支持ベルト12の上端固定部と下端固定部の間の長さは、図6に示す側窓の全閉時におけるビニールハウス1の骨組み10と巻き取り棒3の距離に等しいことが望ましい。図8は巻き取り棒支持ベルト12を設置した位置でのハウスの部分端面図である。図8において、巻き取り棒3を時計回りに回転させると巻き取り棒支持ベルト12は開閉シート2とともに巻き取り棒3に巻き取られ、巻き取り棒3を反時計回りに回転させると、巻き取り棒支持ベルト12及び開閉シート2は巻き戻される。巻き取り棒支持ベルト12は巻き取り棒3の長手方向中間部を支え、巻き取り棒3が自重により撓むことを防ぐ。側辺の長さが長いビニールハウスの場合は、必要に応じて巻き取り棒支持ベルト12の設置箇所数を増す。
【0040】
図6および図7に示すように、本実施例においても、巻き取り棒3を容易に回転させるために、巻き取りハンドル8および巻き取りハンドルガイド柱9を備えているが、巻き取り棒3を容易に回転させるための装置はこれに限定されるものではなく、回転駆動装置を連結するタイプなど種々の公知技術が適用できる。
【0041】
図6に示す側窓の全閉時において、巻き取り棒3は、固定具11の上側の穴の高さに位置する。そのため、多少の積雪量では巻き取り部3が雪に埋もれることがない。図8に示すように、巻き取り棒3に巻き取られた開閉シート2の巻き取り部分は、常にビニールハウス1の内側にあるので、換気が必要になる日中に凍結していることはなく、水や雪氷、ゴミの付着や巻き込みも無い。
【0042】
図6において、巻き取りハンドル8を回して巻き取り棒3を回転させることにより開閉シート2及び巻き取り棒支持ベルト12が巻き取り棒3に巻き取られ、図7に示すように、巻き取り棒3,固定具11および錘4が一体となって上昇し、ビニールハウス1の側窓が開放される。実施例1のビニールハウスの換気装置では、ビニールハウス1の側窓を支持柱5の高さ以上に開放する場合、錘4を除去しなければならないが、実施例3のビニールハウスの換気装置では、巻き取り棒3を回転するだけで全閉から全開まで自由に開度を設定できる。
【実施例4】
【0043】
図9は本発明のビニールハウスの換気装置のさらに別の実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。本実施例は実施例1とほぼ同じであり、実施例1と異なる点は、巻き取り棒支持柱5が長く、巻き取り棒支持部5−1の高さが開閉シート固定用蟻溝フレーム7の約20cm下方に位置することのみである。本実施例では、全閉時に側窓が、蟻溝フレーム7から錘4に至る開放シート2の部分と、錘4の下面で折り返されて巻き取り棒3に至る開放シート2の部分とで二重に被覆されることになる。そのため、実施例1の効果に加えて、全閉時の保温性に優れているという効果も有する。
【実施例5】
【0044】
図10は本発明のビニールハウスの換気装置のさらに別の実施例において、ビニールハウスの側窓を全閉したときの斜視図である。本実施例は実施例4とほぼ同じであるが、開閉シート2は防虫ネット2−1と透明フィルム2−2とが連結されたものからなる点が異なっている。防虫ネット2−1の端部が蟻溝フレーム7に固定されており、透明フィルム部分2−2の端部が巻き取り棒3に固定されている。防虫ネット2−1の長さと透明フィルム2−2の長さは、ともに蟻溝フレーム7と地面との距離に相当する長さである。すなわち防虫ネット2−1と透明フィルム2−2はともに側窓を被覆するに足る長さを有している。図10に示すように、側窓の全閉時は、蟻溝フレーム7から地表付近に位置する錘4までは防虫ネット2−1が展開し、錘4の下面で内側に折り返したところから巻き取り棒3までは透明フィルム2−2が展開している。従って、ビニールハウス1の側窓は透明フィルム2−2により閉鎖されており、ビニールハウス1は保温されている。この時、防虫ネット2−1は特段の効果を発揮しない。晩秋から早春に至る低温期は上記のように使用する。
【0045】
図11は実施例5において、ビニールハウス1の側窓を防虫ネット2−1で被覆した時の斜視図を示す。図11に示すように、巻き取り棒支持柱5と錘4を除き、透明フィルム2−2を巻き取った巻き取り棒3を地上部付近に位置することにより、防虫ネット2−1のみが側窓を被覆した状態にすることができる。害虫が多く発生する高温期には、防虫ネット2−1のみで側窓を被覆することによって、ビニールハウス1内に外気が防虫ネット2−1の網目を通過して入ってくることによりビニールハウス内の温度を外気温程度に低下させることができると同時に、防虫ネット2−1によって害虫のビニールハウス1内への侵入を防ぐことができる。このように、透明フィルム2−2で側窓を閉鎖した状態と防虫ネットで側窓を被覆した状態を簡単に切り替えることができる。
【0046】
防虫ネット2−1の材質はポリエチレンなどの合成樹脂が適している。防虫ネット2−1の目合いは0.2mm〜4mmが適しており、ビニールハウス1内で栽培する作物の種類や、発生する害虫の種類によって適切な目合いの防虫ネットを選択する。透明フィルム2−2の材質は、農業用ビニールハウスの被覆に一般的に用いられる塩化ビニール系樹脂シートやポリオレフィン系樹脂シートが適しているが、ビニールハウス1の屋根や妻面など開口部以外の被覆に使用しているシートと同じ材質のものでもよい。防虫ネット2−1と透明フィルム2−2を連結する方法としては、のり付け、ボンド付け、熱溶融圧着、縫い付け、ホチキス止めなどが採用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 ビニールハウス
2 開閉シート
2−1 防虫ネット
2−2 透明フィルム
3 巻き取り棒
4 錘
5 巻き取り棒支持柱
5−1巻き取り棒支持部
6 巻き取り棒支持具
6−1 支持具ローラー
6−2 挟持部
6−3 支持具固定用ネジ
7 開閉シート固定用蟻溝フレーム
8 巻き取りハンドル
9 巻き取りハンドルガイド柱
10 ビニールハウスの骨組み
11 固定具
12 巻き取り棒支持ベルト
13 裾部フィルム
14 裾部フィルム固定用蟻溝フレーム
15a 側面端部被覆フィルム
15b 側面端部被覆フィルム
図1
図2
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