(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱による粘度変化率をΔ粘度/Δ 温度(Pa・s/℃)とするとき、Δ粘度/Δ温度が0.2(Pa・s/℃)以上となる温度が70〜95℃である、請求項1に記載のダイボンディング剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のダイボンディング剤は、以下に示す(A)〜(D)成分を必須成分として含有する。
【0019】
(A)液状エポキシ樹脂
(A)成分の液状エポキシ樹脂は、本発明のダイボンディング剤の主剤をなす成分である。
本発明において、液状エポキシ樹脂とは常温で液状のエポキシ樹脂を意味する。
本発明における液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の平均分子量が約400以下のもの;p−グリシジルオキシフェニルジメチルトリスビスフェノールAジグリシジルエーテルのような分岐状多官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂の平均分子量が約570以下のもの;ビニル(3,4−シクロヘキセン)ジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルカルボン酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)5,1−スピロ(3,4−エポキシシクロヘキシル)−m−ジオキサンのような脂環式エポキシ樹脂;3,3´,5,5´−テトラメチル−4,4´−ジグリシジルオキシビフェニルのようなビフェニル型エポキシ樹脂;ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロテレフタル酸ジグリシジルのようなグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、テトラグリシジルビス(アミノメチル)シクロヘキサンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ならびに1,3−ジグリシジル−5−メチル−5−エチルヒダントインのようなヒダントイン型エポキシ樹脂;ナフタレン環含有エポキシ樹脂が例示される。また、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのようなシリコーン骨格をもつエポキシ樹脂も使用することができる。さらに、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグルシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのようなジエポキシド化合物;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテルのようなトリエポキシド化合物等も例示される。
中でも好ましくは、液状ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状アミノフェノール型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂である。さらに好ましくは液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサンである。
(A)成分としての液状エポキシ樹脂は、単独でも、2種以上併用してもよい。
また、常温で固体のエポキシ樹脂であっても、液状のエポキシ樹脂と併用することにより、混合物として液状を示す場合は用いることができる。
【0020】
(B)硬化剤
(B)成分の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤であれば、特に限定されず、公知のものを使用することができ、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、および、フェノール系硬化剤のいずれも使用できる。
【0021】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物等のアルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が例示される。
【0022】
アミン系硬化剤の具体例としては、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−p−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類が挙げられる。また、市販品として、T−12(商品名、三洋化成工業製)(アミン当量116)が挙げられる。
【0023】
フェノール系硬化剤の具体例としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えば、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、フェノール系硬化剤、特に、フェノール系ノボラック樹脂(およびそのアルキル化物またはアリル化物)が、吸湿性やダイボンディング剤の硬化物の低Tg化(応力緩和性)という点で、酸無水物系硬化剤やアミン系硬化剤と比較して優れていることから好ましく、中でも、ジェットディスペンスによる塗布性の観点から、フェノール樹脂が液状であることが、ダイボンディング剤の低粘度化に寄与するため好ましい。
【0025】
(B)成分の硬化剤は、単独でも、2種以上併用してもよい。
【0026】
本発明のダイボンディング剤において、(B)成分の硬化剤の配合割合は特に限定されないが、(A)成分の液状エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.5〜1.6当量であることが好ましく、0.6〜1.3当量であることがより好ましい。
【0027】
(C)硬化触媒
(C)成分の硬化触媒としては、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度が95℃以上であるものを用いる。本明細書において、DSCピークエリアにおけるD90、およびその開始温度を以下の通り定義する。
硬化触媒について、DSC(示差走査熱量計)測定を実施すると、発熱ピークを有するDSC曲線が得られる。10℃/minの昇温でのDSC(示差走査熱量計)測定で得られたDSC曲線における面積をDSCエリアとするとき、低温側DSCエリアの5%及び高温側のDSCエリアの5%を除いた部分をDSCピークエリアにおけるD90とする。
DSCピークエリアにおけるD90の開始温度とは、DSCエリアに対し全体の5%となる温度を指す。
(C)成分の硬化触媒として、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度が95℃以上のものを用いると、後述する実施例に示すように、50℃1h後における増粘倍率が抑制される。詳しくは後述するが、本明細書では、ジェットディスペンス実施時の温度域における粘度上昇の指標として、50℃1h後における増粘倍率を用いる。
(C)成分の硬化触媒は、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度が100℃以上であることが好ましい。
(C)成分の硬化触媒について、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度の上限は特に限定されないが、本硬化時に加熱温度よりも低いことが好ましい。本硬化時の加熱温度としては、150℃が一般的である。そのため、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度は150℃以下であることが好ましい。
【0028】
上記を満たす(C)成分の硬化触媒は、潜在性を有することが好ましい。(C)成分の硬化触媒の具体例としては、ノバキュアHX3088,ノバキュアHXA3932HP,ノバキュアHXA4921HP,ノバキュアHX3792,ノバキュアHX3941HP,ノバキュアHXA3922HP(いずれも旭化成ケミカルズ社製、商品名)が挙げられる。
【0029】
(C)成分の硬化触媒の含有量は、(A)成分の液状エポキシ樹脂100質量部に対して、3.5〜80質量部であることが好ましく、10〜70質量部であることがより好ましく、15〜65質量部であることがさらに好ましい。
【0030】
(D)プレゲル化剤
(D)成分のプレゲル化剤は加熱により、ダイボンディング剤の主剤をなす(A)成分の液状エポキシ樹脂中に溶解し、均一に分散するものの、特有の温度域において急激に増粘する(
図1参照)。上記の温度域を、本明細書において、プレゲル化温度という。
(D)成分のプレゲル化剤のプレゲル化温度は、(D)成分のプレゲル化剤と(A)成分の液状エポキシ樹脂との混合物を加熱した際の粘度挙動を、レオメータ等を用いて測定することによって求めることができる。具体的には、加熱による粘度変化率をΔ粘度/Δ 温度(Pa・s/℃)とするとき、Δ粘度/Δ温度が0.2(Pa・s/℃)以上となる温度を(D)成分のプレゲル化剤のプレゲル化温度とする。
(D)成分のプレゲル化剤は、プレゲル化温度が70〜95℃であることが好ましい。
(D)成分のプレゲル化剤のプレゲル化温度が上記範囲であれば、後述する実施例において、100℃時粘度が60Pa・s以上となる。詳しくは後述するが、本明細書では、仮固定性発現の指標として、100℃時粘度を用いる。
【0031】
(D)成分のプレゲル化剤は室温から加熱時の低温域で容易に溶解し、ダイボンディング剤の他の成分、すなわち、(A)成分の液状エポキシ樹脂、(B)成分の硬化剤、(C)成分の硬化触媒、必要に応じて添加する(E)成分のシリカフィラー、その他の添加剤との相溶性がよいことが好ましい。(D)成分のプレゲル化剤は、熱可塑性樹脂もしくはこれを主とするものであることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、常温で固体のもの、さらには粉体として使用できるものが好ましい。また、その分子構造として、分子鎖が複雑に絡み合った構造のものが好ましい。熱可塑性樹脂としては、たとえば(メタ)アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂などがあげられる。
【0032】
プレゲル化剤は、例えば、コアシェル構造の重合体微粒子であり、コア重合体からなる
層(コア層)が、シェル重合体からなる層(シェル層)に包含された複層構造をなしている。このコアシェル構造の重合体微粒子は、外層をなすシェル層を構成するシェル重合体
が、(A)成分の液状エポキシ樹脂に対する溶解性が低いため、常温下においては、増粘剤としての作用を発揮することはない。ダイボンディング剤を加熱した際には、(A)成分の液状エポキシ樹脂に対するシェル重合体の溶解性が上昇するので、コア層の成分、すなわち、コア重合体がダイボンディング剤中に放出されるようになる。コア重合体は、(A)成分の液状エポキシ樹脂に対する溶解性が高いため、ダイボンディング剤中に放出されると短時間でゲル化し、増粘効果を発揮する。
【0033】
上述した条件を満たすプレゲル化剤の具体例としては、ゼフィアックF303、ゼフィアックF320(いずれもガンツ化成社製、商品名)が挙げられる。
【0034】
本発明のダイボンディング剤において、(D)成分のプレゲル化剤の含有量は、ダイボンディング剤の構成成分中の液状成分100質量部に対して6〜25質量部である。
上記の液状成分には、(A)成分の液状エポキシ樹脂、(B)成分の硬化剤としての液状フェノール樹脂、(C)成分の硬化触媒に含まれる液状エポキシ樹脂成分が該当する。
(D)成分のプレゲル化剤の含有量が6質量部以上であることにより、後述する実施例に示すように、100℃時粘度が60Pa・s以上になる。上述したように、100℃時粘度は、本発明において、仮固定性発現の指標である。
一方、(D)成分のプレゲル化剤の含有量が25質量部以下であることにより、後述する実施例に示すように、150℃1時間加熱後のダイシェア強度が60MPa以上になる。詳しくは後述するが、本硬化後の接合強度の指標として、150℃1時間加熱後のダイシェア強度を用いる。
(D)成分のプレゲル化剤の含有量は、8〜15質量部であることがより好ましい。
【0035】
本発明のダイボンディング剤は、さらに以下の成分を任意成分として含有してもよい。
【0036】
(E)シリカフィラー
本発明のダイボンディング剤は、ダイボンディング剤の粘度調節、ダイボンディング剤の信頼性の向上(ダイボンディング剤の硬化物の耐吸湿性および耐熱性の向上)の目的で(E)成分としてシリカフィラーを含有してもよい。
(E)成分のシリカフィラーは、最大粒径が4μm以下であることが、ダイボンディング剤の粘度調整および液状成分中での分散性の観点から好ましく、平均粒径の範囲が0.1〜3μmであることがより好ましい。
【0037】
(E)成分のシリカフィラーとして、シランカップリング剤等で表面処理が施されたものを使用してもよい。表面処理が施されたシリカフィラーを使用した場合、シリカフィラーの凝集を防止する効果が期待される。
【0038】
(E)成分としてシリカフィラーを含有させる場合、本発明のダイボンディング剤の各成分の合計質量100質量部中、25〜400質量部であることが好ましく、40〜150質量部であることがより好ましい。
【0039】
(その他の配合剤)
本発明のダイボンディング剤は、上記(A)〜(E)成分以外の成分を必要に応じてさらに含有してもよい。このような成分の具体例としては、カップリング剤、レオロジー調整剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤等が挙げられる。
また、本発明のダイボンディング剤の弾性率や応力を調整する目的でエラストマー類を含有させてもよく、本発明のダイボンディング剤の粘度、靭性等を調整する目的でその他固形樹脂を含有させてもよい。上記の固形樹脂としては、固形のエポキシ樹脂を用いてもよい。
各配合剤の種類、配合量は常法通りである。
【0040】
本発明のダイボンディング剤は、上記の(A)〜(D)成分、ならびに、場合により、上記(E)成分およびカップリング剤等の任意成分を混合し、撹拌して調製される。混合撹拌は、ロールミルを用いて行うことができるが、これに限定されない。(B)成分としての硬化剤が固形の場合には、加熱などにより液状化ないし流動化し混合することが好ましい。
各成分を同時に混合しても、一部成分を先に混合し、残り成分を後から混合するなど、適宜変更しても差支えない。
【0041】
本発明のダイボンディング剤は、以下に示す好ましい特性を有する。
【0042】
本発明のダイボンディング剤は、50℃1h後における、粘度について、増粘倍率が3倍以下である。50℃1h後における増粘倍率は下記式で求められる。
50℃1h後における増粘倍率 = 50℃1h後粘度(Pa・s)/50℃初期粘度(Pa・s)
なお、50℃初期粘度および50℃1h後粘度は、レオメータ等を用いて測定することができる。
上述したように、50℃1h後における増粘倍率は、本発明において、ジェットディスペンス実施時の温度域における粘度上昇の指標である。50℃1h後における増粘倍率が3倍以下であれば、ジェットディスペンス実施時の温度域における粘度上昇が少なく、ジェットディスペンス実施時において、ディスペンサのノズル内でダイボンディング剤が閉塞するおそれがない。
本発明のダイボンディング剤は、50℃1h後における増粘倍率が2倍以下であることが好ましい。
ジェットディスペンス実施時におけるダイボンディングによる閉塞防止の観点からは、本発明のダイボンディング剤は、50℃初期粘度も低いことが好ましく、20Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましい。
【0043】
本発明のダイボンディング剤は、100℃時の粘度が60Pa・s以上である。100℃時の粘度は、レオメータによる昇温測定により求めることができる。
上述したように、100℃時の粘度は、本発明において、仮固定性発現の指標である。100℃時の粘度が60Pa・s以上であれば、上記(3)の手順において、仮固定性が発現する。
但し、100℃時の粘度が高すぎると、仮固定としては過剰な固定となり、仮固定後の手順を実施するうえで不都合が生じる。そのため、100℃時の粘度は5000Pa・s以下であることが好ましく、3000Pa・s以下であることがより好ましく、2000Pa・s以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明のダイボンディング剤は、100℃1分加熱後ダイシェア強度が100KPa以上であることが好ましい。本明細書において、100℃1分加熱後ダイシェア強度もまた、仮固定性発現の指標として用いる。
100℃1分加熱後ダイシェア強度が100KPa以上であれば、上記(3)の手順において、仮固定性が発現するため好ましい。
但し、100℃1分加熱後ダイシェア強度が高すぎると、仮固定としては過剰な固定となり、仮固定後の手順を実施するうえで不都合が生じる。そのため、100℃1分加熱後ダイシェア強度は10000KPa以下であることが好ましく、5000KPa以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明のダイボンディング剤は、150℃1時間加熱後ダイシェア強度が60MPa以上であることが好ましい。上述したように、150℃1時間加熱後ダイシェア強度は、本硬化後の接合強度の指標である。150℃1時間加熱後ダイシェア強度が60MPa以上であれば、本硬化後において、十分な接合強度を有している。
本発明のダイボンディング剤は、150℃1時間加熱後ダイシェア強度が65MPa以上であることがより好ましい。
【0046】
上記の特性により、本発明のダイボンディング剤は、ジェットディスペンスにより塗布するダイボンディング剤に好適である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
(実施例1〜12、比較例1〜4)
下記表に示す配合割合となるように、ロールミルを用いて原料を混練して実施例1〜12、比較例1〜6のダイボンディング剤を調製した。なお、表中の各組成に関する数値は質量部を表している。
【0049】
(A)液状エポキシ樹脂
エポキシ樹脂A−1:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂、製品名YDF8170、新日鐵化学株式会社製、エポキシ当量158g/eq
エポキシ樹脂A−2:ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂、製品名HP4032D、DIC株式会社製、エポキシ当量142g/eq
(A´)
アクリル樹脂A´−1:ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、製品名BP−4EAL、共栄社化学社製
アクリル樹脂A´−2:ビスフェノールAジアクリレート、製品名BP−2EM、共栄社化学社製
(B)硬化剤
硬化剤B−1:フェノール系硬化剤、製品名MEH8005、明和化成株式会社製
(C)硬化触媒
硬化触媒C−1:潜在性硬化触媒、製品名ノバキュアHX3088、旭化成ケミカルズ社製
硬化触媒C´−1:イミダゾール型硬化触媒、製品名2E4MZ、四国化成工業株式会社製
硬化触媒C−2:潜在性硬化触媒、製品名ノバキュアHXA3932HP、旭化成ケミカルズ社製
硬化触媒C−3:潜在性硬化触媒、製品名ノバキュアHXA4921HP、旭化成ケミカルズ社製
(D)プレゲル化剤
プレゲル化剤D−1:製品名ゼフィアックF303、ガンツ化成社製
プレゲル化剤D−2:製品名ゼフィアックF320、ガンツ化成社製
(その他)
光開始剤:製品名イルガキュア184、BASF社製
シランカップリング剤:エポキシ系シランカップリング剤(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、製品名KBM403(信越化学工業株式会社製)
シリカフィラー:製品名SE2200−SME(シランカップリング剤(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)表面処理シリカフィラー、平均粒径0.5μm、製品名株式会社アドマテックス製
【0050】
得られたダイボンディング剤を用いて、以下に示す評価を実施した。
【0051】
(DSCピークエリアにおけるD90開始温度)
DSC(示差走査熱量計) (DSC F1 Phoenix,NETZCH社製) を用いて、25℃〜250℃まで測定し、解析ソフト(NETZCH Proteus−Thermal Analysis)を用いDSCピークエリアにおけるD90開始温度を求めた。
【0052】
(50℃時粘度、50℃1h後の増粘倍率)
レオメータ(VAR−100, レオロジカ社製)を用いて50℃における粘度を測定した。具体的には直径25mmのパラレルプレートを用い、間隙0.5mm、測定周波数1Hzの条件で測定した。50℃で5min後の粘度を初期粘度とし、1h後粘度(Pa・s) / 初期粘度(Pa・s)= 増粘倍率として求めた。
【0053】
(100℃時粘度)
レオメータ(VAR−100, レオロジカ社製)を用い、直径25mmのパラレルプレートで、間隙0.5mm、測定周波数1Hzの条件で測定した。常温から10℃/minで昇温し、100℃到達時点での粘度を100℃時粘度とした。
【0054】
(100℃1min加熱後ダイシェア強度)
ダイボンディング剤を接着強度(ダイシェア強度)を以下の手順で測定した。
(1)ダイボンディング剤をガラスエポキシ基板上に塗布量が0.2〜0.3mgになるように塗布する。
(2)ダイボンディング剤上に5×5mmのSiチップをのせ試験片とした。これを送風乾燥機を用いて、100℃1min間加熱する。
(3)ボンドテスタ(DAGE−SERIES−4000PXY,DAGE社製)を用いてダイシェア強度を測定する。
(4)測定後試験片について接着面積を測定顕微鏡(STM6−F21−3,オリンパス社製)用いて測定し、
シェア強度(N)/接着面積(mm
2)×1000=
100℃1min加熱後ダイシェア強度(KPa)として求めた。
【0055】
(150℃1h加熱後ダイシェア強度)
段落0054と同様の方法で試験片を作製し、これを送風乾燥機を用いて、150℃1h加熱する。段落0054と同様の方法でダイシェア強度および接着面積を求め
シェア強度(N)/接着面積(mm
2)=150℃1h加熱後ダイシェア強度(MPa)
とした。
【0056】
結果を下記表に示す。
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
実施例1〜12のダイボンディング剤は、いずれも50℃1h後の増粘倍率が3倍以下であり、100℃時の粘度が60Pa・s以上であり、100℃1分加熱後のダイシェア強度が100KPa以上であった。なお、実施例2〜4、10は、実施例1に対しプレゲル化剤D−1の配合割合を変えた実施例である。酸化防止剤D−1の配合割合がダイボンディング剤の構成成分中の液状成分100質量部に対して15.8質量部と高い実施例10は、150℃1時間加熱後のダイシェア強度が58MPaと低かったが、残りの実施例はいずれも150℃1時間加熱後のダイシェア強度が60MPa以上であった。酸化防止剤D−1の配合割合がダイボンディング剤の構成成分中の液状成分100質量部に対して6質量部未満の比較例1は100℃時の粘度が60Pa・s未満であった。実施例5,6は、実施例1に対し、(D)成分のプレゲル化剤を変えた実施例であり、実施例7はさらに(A)成分の液状エポキシ樹脂を変えた実施例である。実施例8,9は、実施例1に対し、(B)成分の硬化剤を変えた実施例である。実施例11,12は、実施例1に対し、(B)成分の硬化剤のエポキシ当量を変えた実施例で変えた実施例である。比較例2は、(C)成分の硬化触媒として、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度が95℃未満のものを使用した例である。この例は、50℃1h後の増粘倍率が3倍超であった。また、測定前にダイボンディング剤が硬化してしまい、100℃時粘度は測定できなかった。(A)成分の液状エポキシ樹脂の代わりにアクリル樹脂を使用し、光開始剤を配合した比較例3は光が当たらないため、硬化反応が進行しなかった。(D)成分のプレゲル化剤を配合しなかった比較例4〜6は、固定できず100℃1分加熱後のダイシェア強度が測定できなかった。
図2は、硬化触媒のD90開始温度と、50℃1時間後における増粘倍率との関係を示したグラフである。
図2から、(C)成分の硬化触媒として、DSCピークエリアにおけるD90の開始温度が95℃以上のものを用いることにより、50℃1h後の増粘倍率が低下し、3倍以下となることが確認できる。
図3は、プレゲル化剤配合量と、100℃時粘度と、の関係を示したグラフである。
図3から、ダイボンディング剤の構成成分中の液状成分100質量部に対して、プレゲル化剤を6質量部以上配合することで、100℃時粘度が上昇して、60Pa・s以上となることが確認できる。
図4は、プレゲル化剤配合量と、150℃1時間加熱後のダイシェア強度と、の関係を示したグラフである。
図4から、ダイボンディング剤の構成成分中の液状成分100質量部に対して、プレゲル化剤を25質量部以下配合することで、150℃1時間加熱後のダイシェア強度が60MPa以上となることが確認できる。
図5は、100℃時粘度と、100℃1分加熱後のダイシェア強度と、の関係を示したグラフであり、
図6は、
図5の原点付近の拡大図である。
図5,6から、100℃時粘度と、100℃1分加熱後のダイシェア強度に相関性があり、100℃時粘度が60Pa・s以上であると、100℃1分加熱後のダイシェア強度が100KPa以上となることが確認できた。