特許第6837274号(P6837274)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837274
(24)【登録日】2021年2月12日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】半導体製造装置及び基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20210222BHJP
   G01N 5/02 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01L21/02 Z
   G01N5/02 A
   H01L21/68 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-131502(P2015-131502)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-17154(P2017-17154A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年2月15日
【審判番号】不服2019-15651(P2019-15651/J1)
【審判請求日】2019年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長池 宏史
(72)【発明者】
【氏名】高山 貴光
【合議体】
【審判長】 加藤 浩一
【審判官】 ▲吉▼澤 雅博
【審判官】 小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−338967(JP,A)
【文献】 特開2004−14981(JP,A)
【文献】 特開平10−340874(JP,A)
【文献】 特開平9−171992(JP,A)
【文献】 特開平4−186860(JP,A)
【文献】 特開平5−275519(JP,A)
【文献】 特表2008−515232(JP,A)
【文献】 特開2007−3069(JP,A)
【文献】 特開2003−100838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G01N 5/02
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に処理を施す処理室と、
前記処理室に隣接し接続する真空搬送室と、
前記真空搬送室に設けられた複数の汚染モニタと、を有し、
前記複数の汚染モニタは、前記真空搬送室の内部において前記処理室での基板処理に用いられるガスにより生じた反応生成物の前記複数の汚染モニタへの付着量を検出し、
前記複数の汚染モニタの少なくとも1つは、前記真空搬送室の内部に設けられたゲートバルブ、該真空搬送室の天井、又は該真空搬送室に設けられた搬送装置の可動部のいずれかに配置される、
半導体製造装置
【請求項2】
前記複数の汚染モニタの少なくとも1つは、水晶振動子である、
請求項1に記載の半導体製造装置
【請求項3】
前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室は、排気ポート及び該真空搬送室のコーナー部のいずれかに前記汚染モニタをさらに有する
請求項1又は2に記載の半導体製造装置
【請求項4】
前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室を第1の真空搬送室とし、前記第1の真空搬送室に隣接し接続する第2の真空搬送室を有し、
前記第2の真空搬送室は、内部に、前記汚染モニタを少なくとも1つ有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体製造装置
【請求項5】
前記複数の汚染モニタの少なくとも1つが検出した前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室の内部における前記付着量を示す情報に基づき、前記処理室に隣接し接続する真空搬送室における基板の搬送条件を制御し、該搬送条件に基づき前記基板を搬送させる制御部を有する、
請求項1〜のいずれか一項に記載の半導体製造装置
【請求項6】
前記制御部は、前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室の圧力、前記真空搬送室の不活性ガスの流量、前記処理室の圧力、及び前記処理室の不活性ガスの流量の少なくともいずれかについての前記搬送条件を制御する、
請求項に記載の半導体製造装置
【請求項7】
前記制御部は、前記複数の汚染モニタの少なくとも1つが検出した前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室の内部における前記付着量を示す情報に基づき、該真空搬送室内のクリーニングを制御する、
請求項又はに記載の半導体製造装置
【請求項8】
前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室内をクリーニングする間に前記複数の汚染モニタの少なくとも1つが検出した前記処理室に隣接し接続する前記真空搬送室における前記付着量を示す情報に基づき、該処理室に隣接し接続する真空搬送室内のクリーニングの終点を制御する、
請求項に記載の半導体製造装置
【請求項9】
処理室にて処理された基板を、前記処理室に隣接し接続する真空搬送室を通って搬送する基板搬送方法であって、
前記真空搬送室に複数の汚染モニタを設け、該複数の汚染モニタの少なくとも1つにより該真空搬送室の内部において前記処理室での基板処理に用いられるガスにより生じた反応生成物の前記複数の汚染モニタへの付着量を検出し、
前記汚染モニタが検出した前記真空搬送室の内部における前記付着量を示す情報に基づき、前記真空搬送室における基板の搬送条件を制御し、
前記搬送条件に基づき基板を搬送する、
基板搬送方法であ
前記複数の汚染モニタの少なくとも1つを、前記真空搬送室の内部に設けられたゲートバルブ、該真空搬送室の天井、又は該真空搬送室に設けられた搬送装置の可動部のいずれかに配置する、
基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置では、ガスの作用により基板に所定の処理が施される。基板の処理中、反応生成物が生成され、処理室の壁面等に付着し、堆積する。その反応生成物が壁面等から剥がれ、基板上に飛来すると、パーティクルとなって製品不良の要因となる。
【0003】
そこで、水晶振動子を用いて微量な付着物を感知するセンサを処理室内に設置することで、反応生成物の堆積量を測定することが提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。これによれば、測定結果に基づき、リアルタイムに処理室内部の雰囲気の変化を捉えることができる。また、処理室内部の状態が悪化して製品不良を引き起こす前に処理室内部の条件を最適化し、処理室内部の雰囲気を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−57658号公報
【特許文献2】特開平9−171992号公報
【特許文献3】特開2006−5118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
処理済の基板を搬送する際、処理室内部のガスが隣接する搬送室へ向けて拡散される。これにより、反応生成物が徐々に搬送室内部に堆積される。また、搬送中の基板から放出されるガスによっても反応生成物が生成され、その反応生成物が搬送室内部に堆積される。しかしながら、上記特許文献では、センサが処理室内部に設置されているため、搬送室内部の反応生成物の堆積量を測定することは困難である。
【0006】
これに対して、搬送室内部の反応生成物の堆積量を目視で判定することが考えられる。しかしながら、搬送室では、処理室と比較して微量の反応生成物が時間をかけて徐々に搬送室に堆積していくため、短時間で反応生成物の堆積量を目視することは困難であり、目視により判定できるまでに少なくとも1〜2週間程度を要する。このため、目視による短時間の判定では誤判定が生じる可能性があり、判定に時間をかけると判定までに搬送室内部の状態が悪化して、基板の搬送中に製品不良を引き起こす可能性がある。
【0007】
上記課題に対して、一側面では、本発明は、基板搬送装置の雰囲気を良好にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板に処理を施す処理室と、前記処理室に隣接し接続する真空搬送室と、前記真空搬送室に設けられた複数の汚染モニタと、を有し、前記複数の汚染モニタは、前記真空搬送室の内部において前記処理室での基板処理に用いられるガスにより生じた反応生成物の前記複数の汚染モニタへの付着量を検出し、前記複数の汚染モニタの少なくとも1つは、前記真空搬送室の内部に設けられたゲートバルブ、該真空搬送室の天井、又は該真空搬送室に設けられた搬送装置の可動部のいずれかに配置される、半導体製造装置が提供される。

【発明の効果】
【0009】
一の側面によれば、基板搬送装置の雰囲気を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる半導体製造装置の概略構成の一例を示す図。
図2】一実施形態にかかる基板搬送装置の内部構成の一例を示す図。
図3】一実施形態にかかる基板搬送処理の一例を示すフローチャート。
図4】一実施形態にかかるQCMの測定結果の一例を示す図。
図5】一実施形態にかかるQCMの測定結果に応じた搬送条件の変更の一例を示す図。
図6】一実施形態にかかるQCMの測定結果に応じた搬送条件の変更の一例を示す図。
図7】一実施形態にかかるクリーニングの終点検出処理の一例を示すフローチャート。
図8】一実施形態にかかる汚染モニタの他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0012】
[半導体製造装置の全体構成]
まず、本発明の一実施形態に係る半導体製造装置10の全体構成の一例について、図1を参照しながら説明する。図1に示す半導体製造装置10は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムである。
【0013】
図1の半導体製造装置10は、処理室PM(Process Module)1〜4、搬送室VTM(Vacuum Transfer Module)、ロードロック室LLM(Load Lock Module)1,2、ローダーモジュールLM(Loader Module)、ロードポートLP(Load Port)1〜3及び制御部100を有する。処理室PMでは、半導体ウェハW(以下、「ウェハW」ともいう。)に所望の処理が施される。
【0014】
処理室PM1〜4は、搬送室VTMに隣接して配置される。処理室PM1〜4と搬送室VTMとは、ゲートバルブGVの開閉により連通する。処理室PM1〜4は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にてウェハWにエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理、アッシング処理等の処理が施される。
【0015】
搬送室VTMの内部には、図2に示すように、ウェハWを搬送する搬送装置ARMが配置されている。搬送装置ARMは、屈伸及び回転自在な2つのロボットアームを有する。各ロボットアームの先端部のピックは、ウェハWを保持可能である。搬送装置ARMは、ゲートバルブGVの開閉に応じて処理室PM1〜4と搬送室VTMとのウェハWの搬入及び搬出を行う。また、搬送装置ARMは、ロードロック室LLM1,2へのウェハWの搬入及び搬出を行う。
【0016】
図1に戻り、ロードロック室LLM1,2は、搬送室VTMとローダーモジュールLMとの間に設けられている。ロードロック室LLM1,2は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えてウェハWを大気側のローダーモジュールLMから真空側の搬送室VTMへ搬送したり、真空側の搬送室VTMから大気側のローダーモジュールLMへ搬送したりする。
【0017】
ローダーモジュールLMの長辺の側壁にはロードポートLP1〜3が設けられている。ロードポートLP1〜3には、例えば25枚のウェハWが収容されたFOUP(Front Opening Unified Pod)又は空のFOUPが取り付けられる。ローダーモジュールLMは、ロードポートLP1〜3内のFOUPから搬出されたウェハWをロードロック室LLM1,2のいずれかに搬入する。また、ローダーモジュールLMは、ロードロック室LLM1,2のいずれかから搬出されたウェハWをFOUPに搬入する。
【0018】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103及びHDD(Hard Disk Drive)104を有する。制御部100は、HDD104に限らずSSD(Solid State Drive)等の他の記憶領域を有してもよい。HDD104、RAM103等の記憶領域には、プロセスの手順、プロセスの条件、搬送条件が設定されたレシピが格納されている。
【0019】
CPU101は、レシピに従って各処理室PMにおけるウェハWの処理を制御し、ウェハWの搬送を制御する。HDD104やRAM103には、後述される基板搬送処理やクリーニング処理を実行するためのプログラムが記憶されてもよい。基板搬送処理やクリーニング処理を実行するためのプログラムは、記憶媒体に格納して提供されてもよいし、ネットワークを通じて外部装置から提供されてもよい。
【0020】
処理室PM、搬送室VTM、ロードロック室LLM、ローダーモジュールLM及びロードポートLPの個数は、本実施形態で示す個数に限らず、いくつであってもよい。搬送室VTM、ロードロック室LLM及びローダーモジュールLMは、基板搬送装置の一例である。特に、搬送室VTMは、処理室PM1〜4に隣接する第1の搬送室の一例である。ロードロック室LLM、ローダーモジュールLMは、処理室PM1〜4に隣接しない第2の搬送室の一例である。次に述べるように、搬送室VTMには、汚染モニタが設置される。汚染モニタは、搬送室VTMに一つ以上設置される。
【0021】
[ウェハWの搬送]
次に、ウェハWの搬送とガスの拡散について説明する。まず、ウェハWは、ロードポートLP1〜3のいずれかから搬出され、処理室PM1〜4のいずれかに搬入される。具体的には、ウェハWは、ロードポートLP1〜3のいずれかから搬出され、ローダーモジュールLMを介してロードロック室LLM1、2のいずれかへ搬送される。ウェハWが搬入されたロードロック室LLM1、2のいずれかでは、排気処理(真空引き)が行われ、室内が大気雰囲気から真空雰囲気へと切り替えられる。この状態でウェハWは搬送装置ARMによりロードロック室LLM1、2のいずれかから搬出され、処理室PM1〜4のいずれかに搬入され、処理室PM1〜4のいずれかにてウェハWの処理が開始される。ウェハWが搬出されたロードロック室LLM1、2のいずれかの内部は真空雰囲気から大気雰囲気へと切り替えられる。
【0022】
例えば、処理室PM1にウェハWが供給され、プラズマエッチング処理が実行される場合の一例を説明する。このときのプロセス条件の一例は以下である。
【0023】
<プロセス条件>
・ガス CF(四フッ化炭素)、C(パーフルオロシクロブタン)、Ar(アルゴン)、N(窒素)、H(水素)、O(酸素)、CO(二酸化窒素)
・圧力 10mT(1.333Pa)〜50mT(6.666Pa)
・処理時間 一枚のウェハを処理する毎に約5分
処理室PM1にてガスからプラズマが生成され、そのプラズマの作用により処理室PM1の載置台20に載置されたウェハWがプラズマ処理される。処理後、図1の(1)に示すように、処理室PM1内部はNガスによりパージされる。Nガスは、排気口30から排気される。
【0024】
その後、図1の(2)に示すように、ゲートバルブGVが開き、処理済のウェハWが搬出され、搬送室VTMに搬入される。また、未処理ウェハWが処理室PM1に搬入される。ウェハWの搬送中、処理室PM1内部のガスが、処理室PM1に隣接する搬送室VTM側に向かって拡散される。また、搬送室VTMに搬送されたウェハWからもガスが放出される。
【0025】
図1の(3)に示すように、ゲートバルブGVが閉まった後、搬送室VTM内部はNガスによりパージされる。Nガスは、排気ポート40から排気される。これに応じて、処理室PM1から拡散されたガスとウェハWからのアウトガスとは、排気ポート40から排気される。しかし、搬送室VTMの内部にはガスの一部が残留する。このため、徐々に搬送室VTM内部に反応生成物が堆積される。
【0026】
このとき、搬送室VTMでは、処理室PM1と比較して微量の反応生成物が時間をかけて徐々に搬送室VTMに堆積する。このため、搬送室VTMでは、短時間に反応生成物の堆積量を目視することは困難である。
【0027】
これに対して、本実施形態にかかる基板搬送方法では、短時間に搬送室VTMにおける反応生成物の堆積状態を判定できる。例えば、本実施形態にかかる基板搬送方法では、処理室PMにてウェハWを5枚程度処理する間に発生する搬送室VTMの反応生成物の堆積状態を搬送室VTMに設けられたQCM50により測定し、測定結果に応じて搬送条件の最適化を図ることができる。これにより、ウェハWの搬送中に搬送室VTM内の反応生成物がウェハWに付着し、パーティクルとなって製品不良の要因となることを防ぐことができる。
【0028】
処理後のウェハWは、搬送装置ARMに保持され、ロードロック室LLM1,2のいずれかへ搬送される。ロードロック室LLM1,2のいずれかでは、給気処理が行われ、室内が真空雰囲気から大気雰囲気へと切り替えられる。この状態で、ロードロック室LLMのいずれかからウェハWが取り出され、ロードポートLPへ搬送される。
【0029】
[搬送室VTMの内部]
次に、搬送室VTMの内部に配置された汚染モニタについて、図2を参照しながら説明する。搬送室VTMの内部にはQCM(Quartz Crystal Microbalance)50が設けられている。QCM50は、搬送室VTMの汚染状態を検出する汚染モニタの一例である。
【0030】
QCM50は、搬送室VTMに設けられたゲートバルブGV(図2のA参照)に設けられてもよい。QCM50は、搬送室VTMの天井部(図2のB参照)に設けられてもよい。QCM50は、搬送室VTMに設けられた搬送装置ARMの可動部(例えば、搬送装置ARMがスライドするスライドカバー60の付近:図2のC参照)に設けられてもよい。QCM50は、搬送室VTMに設けられた排気ポート(図2のD参照)の付近に設けられてもよい。QCM50は、搬送室VTMのコーナー部(図2のE参照)に設けられてもよい。
【0031】
QCM50は、搬送室内に設けられた上記部分の少なくとも何れかに一つ以上配置されていればよい。ただし、QCM50は、上記部分に複数設けることが好ましい。QCM50を複数配置することで、搬送室VTM内部のどこが汚染されているか、何が原因で反応生成物が蓄積しているかの把握を容易にすることができる。
【0032】
以下に、QCM50の原理について簡単に説明する。QCM50は、水晶板51を2枚の電極52で挟んだ水晶振動子を支持体53で支持した構成を有する。QCM50の水晶振動子の表面に反応生成物が付着すると、その質量に応じて、以下の式に示すQCM50の共振周波数fが変動する。
f=1/2t(√C/ρ) t:水晶板の厚み C:弾性定数 ρ:密度
この現象を利用し、共振周波数fの変化量により微量な付着物を定量的に測定することができる。共振周波数fの変化は、水晶振動子に付着した物質による弾性定数の変化と物質の付着厚みを水晶密度に換算したときの厚み寸法で決まる。これにより、共振周波数fの変化を付着物の重量に換算することができる。
【0033】
このような原理を利用して、QCM50は、共振周波数fを示す検出値を出力する。制御部100は、QCM50から出力された検出値を入力し、周波数の変化を付着物の重量に換算することにより、膜厚又は成膜速度を算出する。制御部100は、算出された膜厚又は成膜速度に応じて搬送室VTMにおけるウェハWの搬送条件を制御し、その搬送条件に基づきウェハWを搬送させる。また、制御部100は、算出された膜厚又は成膜速度に応じて適宜クリーニング処理を制御する。なお、制御部100が算出した膜厚又は成膜速度は、搬送室VTMの汚染状態を示す情報の一例である。
【0034】
QCM50は、搬送室VTMに配置されるだけでなく、ロードロック室LLM1,2及びローダーモジュールLMの少なくともいずれかに設けられてもよい。ウェハWからのアウトガスがロードロック室LLM1,2及びローダーモジュールLM内に反応生成物として堆積するためである。このとき、制御部100は、ロードロック室LLM1,2やローダーモジュールLMのQCMが検出した膜厚又は成膜速度等の汚染状態を示す情報に応じてロードロック室LLM1,2やローダーモジュールLMにおけるウェハWの搬送条件等を制御してもよい。
【0035】
ロードロック室LLM1,2の場合、ロードロック室LLM1,2に設けられた排気ポートの近くにQCM50を配置することが好ましい。また、ローダーモジュールLM、ロードロック室LLM1,2及び搬送室VTM内部のウェハWの滞在時間が長い位置にQCM50を配置することが好ましい。
【0036】
[基板搬送処理]
次に、一実施形態にかかる基板搬送処理の一例について、図3のフローチャートを用いて説明する。本処理は、制御部100により制御される。本処理が開始されると、制御部100は、搬送室VTMに配置されたQCM50(水晶振動子)によるモニタリングを開始する(ステップS10)。搬送室VTMに複数のQCM50が配置されている場合、複数のQCM50のそれぞれによりモニタリングが開始される。
【0037】
次に、制御部100は、所定枚数のウェハ処理時間に対する水晶振動子の周波数の変化量を算出する(ステップS12)。所定枚数のウェハ処理時間としては、5枚〜10枚のウェハWを処理する毎であってもよい。
【0038】
次に、制御部100は、水晶振動子の周波数の変化量が予め定められた第1の閾値よりも大きいかを判定する(ステップS14)。制御部100は、水晶振動子の周波数の変化量が第1の閾値以下であると判定した場合、ステップS10に戻り、ステップS10〜S14の処理を繰り返す。
【0039】
制御部100は、水晶振動子の周波数の変化量が予め定められた第1の閾値よりも大きいと判定した場合、水晶振動子の周波数の変化量が予め定められた第2の閾値よりも大きいかを判定する(ステップS16)。第2の閾値は、第1の閾値よりも大きい値に設定されている。
【0040】
制御部100は、水晶振動子の周波数の変化量が第2の閾値以下であると判定した場合、ウェハWの搬送条件を変更する(ステップS18)。制御部100は、例えば、ウェハWの搬送条件として、搬送室VTMの圧力、搬送室VTMの不活性ガス(N,Ar等)の流量、処理室PM1〜4の圧力及び処理室PM1〜4の不活性ガス(N,Ar等)の流量の少なくともいずれかの条件を制御する。
【0041】
そして、制御部100は、変更後の搬送条件に基づき搬送室VTM内の状態を整え、次ロットのウェハを搬送するようにフィードバック制御し(ステップS20)、本処理を終了する。
【0042】
他方、ステップS16にて、制御部100は、水晶振動子の周波数の変化量が第2の閾値よりも大きいと判定した場合、搬送室VTMのクリーニング処理を実行し(ステップS22)、本処理を終了する。
【0043】
以上に説明したように、本実施形態にかかる基板搬送処理によれば、水晶振動子の周波数の変化量が第1の閾値よりも大きく第2の閾値以下であれば、ウェハWの搬送条件が変更される。水晶振動子の周波数の一例を図4に示す。各グラフの縦軸はQCM50の周波数を示し、横軸は時間を示す。
【0044】
図4(a)は、処理室PMの排気ポート40に取付けられた自動圧力調整バルブAPCの開度を20°に固定した場合の搬送室VTMのQCM50の周波数の一例である。図4(b)は、処理室PMの排気ポート40に取付けられた自動圧力調整バルブAPCの開度を90°に固定した場合の搬送室VTMのQCM50の周波数の一例である。
【0045】
図4(a)のグラフの傾き「−0.47Hz/hour」及び図4(b)のグラフの傾き「−0.37Hz/hour」は、周波数の変化量の一例であり、反応生成物の蓄積速度を示す。周波数の変化量が大きい程、単位時間あたりに水晶振動子に付着する反応生成物の量が多いことを示す。図4(b)に示す自動圧力調整バルブAPCの開度が大きい場合、図4(a)に示す自動圧力調整バルブAPCの開度が小さい場合よりも、グラフの傾きが小さくなり、搬送室内から反応生成物を効果的に除去できることがわかる。
【0046】
よって、グラフの傾きで示される周波数の変化量により、搬送条件の良否を判定できる。つまり、周波数の変化量が第1の閾値以下の場合、制御部100は、搬送室VTMの搬送条件は良好であると判定する。一方、周波数の変化量が第1の閾値よりも大きく第2の閾値以下である場合、制御部100は、搬送室VTMの搬送条件を改善する必要があると判定する。この場合、制御部100は、搬送条件を変えることで、反応生成物の蓄積速度を低下させることができる。他方、周波数の変化量が第2の閾値よりも大きい場合、制御部100は、搬送室VTM内部の雰囲気が悪化し、搬送条件を変えただけでは搬送室VTM内部の改善は難しく、搬送室VTMをクリーニングする必要があると判定する。クリーニング処理については後述される。
【0047】
(搬送条件)
制御部100は、搬送室VTMの圧力、搬送室VTMの不活性ガスの流量、処理室PM1〜4の圧力及び処理室PM1〜4の不活性ガスの流量の少なくともいずれかの搬送条件のレシピの設定値を変更する。
【0048】
例えば、図5(a)は、搬送室の不活性ガス(N)によるパージを制御したときの搬送室内の反応生成物の量を測定した結果の一例を示す。これによれば、搬送室に不活性ガス(N)を供給したとき、改善前の搬送室に不活性ガス(N)を供給しないときと比べて搬送室内の反応生成物の量が減り、搬送室内の環境が改善されている。
【0049】
図5(b)は、搬送室の圧力を制御したときの搬送室内の反応生成物の量を測定した結果の一例を示す。これによれば、搬送室の圧力を200mT(26.66Pa)に制御したとき、改善前の70mT(9.33Pa)及び100mT(13.33Pa)のときと比べて搬送室内の反応生成物の量が減り、搬送室内の環境が改善されている。
【0050】
図5(c)は、処理室の不活性ガス(Ar)によるパージを制御したときの搬送室内の反応生成物の量を測定した結果の一例を示す。これによれば、処理室に100sccmの不活性ガス(Ar)を供給した場合、改善前の処理室に1200sccmの不活性ガス(Ar)を供給した場合よりも搬送室内の反応生成物の量が減り、搬送室内の環境が改善されている。
【0051】
図5(d)は、処理室の圧力を制御したときの搬送室内の反応生成物の量を測定した結果の一例を示す。これによれば、処理室の圧力を60mT(8.00Pa)に制御したとき、改善前の処理室の圧力を90mT(12.00Pa)に制御したときと比べて搬送室内の反応生成物の量が減り、搬送室内の環境が改善されている。
【0052】
制御部100は、上記の搬送条件の少なくともいずれかを変更する。図6(a)には、変更前の搬送条件(1)〜(4)と搬送室内の反応生成物の量を示す。
【0053】
変更前の搬送条件は、以下である。
(1)搬送室VTMの圧力 100mT(13.33Pa)
(2)自動圧力調整バルブAPCの開度 20°(固定)
(3)処理室PMへの不活性ガス(Ar)の供給 1200sccm
(4)搬送室VTMへの不活性ガス(N)の供給 なし
図6(b)には、搬送条件の一つである(4)の搬送室VTMの不活性ガス(N)の供給を制御したとき、つまり、搬送室VTMのNパージを開始したときの反応生成物の量を示す。
【0054】
すなわち、このときの搬送条件は、以下である。
(1)搬送室VTMの圧力 100mT(13.33Pa)
(2)自動圧力調整バルブAPCの開度 20°(固定)
(3)処理室PMへの不活性ガス(Ar)の供給 1200sccm
(4)搬送室VTMへの不活性ガス(N)の供給 あり
搬送室VTMへの不活性ガス(N)の供給を開始するように搬送条件が変更されたことで、搬送室VTMへ不活性ガス(N)を供給しない搬送条件と比べて、搬送室VTM内の反応生成物の蓄積量を図6(a)の状態から−25.5%減らすことができる。
【0055】
図6(c)には、搬送条件(1)〜(4)のすべてを変更したときの反応生成物の量を示す。
【0056】
すなわち、このときの搬送条件は、以下である。
(1)搬送室VTMの圧力 200mT(26.66Pa)
(2)自動圧力調整バルブAPCの開度 全開(40°に固定)
(3)処理室PMへの不活性ガス(Ar)の供給 500sccm
(4)搬送室VTMへの不活性ガス(N)の供給 あり
このように、搬送条件(1)〜(4)のすべてが変更されたことで、搬送室VTM内の反応生成物の蓄積量を図6(a)の状態から−68.6%減らすことができる。
【0057】
(クリーニング)
図3のステップS16にて、QCM50の周波数の変化量が第2の閾値よりも大きい場合、制御部100はステップS22のクリーニング処理を実行する。
【0058】
搬送室内のクリーニング処理の一例について、図7のフローチャートを参照して説明する。図7のクリーニング処理が開始されると、制御部100は、搬送室VTM内にクリーニングガスを導入する(ステップS30)。
【0059】
次に、制御部100は、搬送室VTMに配置されたQCM50の水晶振動子によるモニタリングを開始する(ステップS32)。搬送室VTMに複数のQCM50が配置されている場合、複数のQCM50のそれぞれの水晶振動子によりモニタリングを行う。
【0060】
次に、制御部100は、水晶振動子の周波数が予め定められた第3の閾値に達したかどうかを判定する(ステップS34)。制御部100は、水晶振動子の周波数が第3の閾値に達していないと判定した場合、ステップS30に戻り、ステップS30〜ステップS34の処理を繰り返す。
【0061】
他方、ステップS34において、制御部100は、水晶振動子の周波数が第3の閾値に達したと判定した場合、クリーニングを終了し(ステップS36)、本処理を終了する。ここで第3の閾値を、例えば、反応生成物が搬送室内に堆積していないクリーンな状態での水晶振動子の周波数に設定することができる。
【0062】
このようにクリーニング時、水晶振動子の周波数を使ってクリーニングの終了検出EPD(End Point Detection)を行うことができる。これにより、クリーニングにかかる時間を最適化し、スループットの向上を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、搬送室VTMの基板搬送処理を例に挙げて説明したが、ロードロック室LLM1,2やローダーモジュールLMの基板搬送処理も同様にして行うことができる。
【0064】
以上に説明したように、本実施形態の基板搬送方法によれば、制御部100による2段階の自動制御によって搬送室VTMの雰囲気を良好にすることができる。例えば、水晶振動子の周波数の変化量が第2の閾値(第2の閾値>第1の閾値)よりも大きくなった場合、搬送条件の変化のみでは搬送室VTM内の雰囲気を正常状態にすることは困難であると判定し、クリーニング処理を実行する。これにより、搬送室VTM内部の反応生成物を除去することができる。
【0065】
クリーニング処理の結果、周波数の変化量が第2の閾値以下であって、第1の閾値よりも大きい場合、制御部100は、搬送条件を変更させて、搬送室VTM内部の反応生成物の量を軽減する。周波数の変化量が第1の閾値以下になった場合、制御部100は、現状の搬送条件のままウェハWを搬送させる。
【0066】
本実施形態の基板搬送方法では、制御部100は、反応生成物の量を低減させるだけでなく、できるだけスループットを低下させず、できればスループットを向上させるように搬送条件を自動制御してもよい。例えば、例えばアッシングとも呼ばれるOプラズマ等によるプラズマ処理や、ウェハ残留電荷を除去するためのArガス等によるプラズマ処理のような処理後のウェハWの後処理や処理室PM及び搬送室内部のパージガスの供給時間を長くすることが考えられる。この場合、搬送室の雰囲気を良好にする効果は向上するが、スループットは低下する。そこで、周波数が変化する速度が遅い(図4のグラフの傾きが小さい)条件下では、スループットが低下し難い又はスループットが向上する搬送条件に変更させるようにしてもよい。また、周波数が変化する速度が速い(図4のグラフの傾きが大きい)条件下では、スループットが低下しても、ガスの置換を進行させる搬送条件に変更させるようにしてもよい。これにより、スループットを考慮した最適な搬送条件でウェハWを搬送することができる。
【0067】
以上、基板搬送装置及び基板搬送方法を上記実施形態により説明したが、本発明にかかる基板搬送装置及び基板搬送方法は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0068】
例えば、搬送室に設置する汚染モニタは、QCMに限らず、QCM以外のセンサを用いてもよい。汚染モニタの他の例としては、図8に示すように、静電容量式のセンサ70を用いてもよい。静電容量式のセンサ70では、静電容量を計測することで、反応生成物の堆積量を測定できる。静電容量式のセンサ70は、下部電極として機能する導体73の直上に高分子薄膜や酸化アルミニウム等の不導体72が配置され、その上に、パターン化された導体71が形成される。導体71は、上部電極として機能する。これによれば、不導体72部分への物質の付着及び吸着による静電容量の変化をモニタリングすることで、反応生成物の堆積量を測定できる。
【0069】
また、本発明にかかる半導体製造装置の処理室には、容量結合型プラズマ(CCP:Capacitively Coupled Plasma)装置だけでなく、その他の装置を適用することができる。その他の装置としては、誘導結合型プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)、ラジアルラインスロットアンテナを用いたプラズマ処理装置、ヘリコン波励起型プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)装置、電子サイクロトロン共鳴プラズマ(ECR:Electron Cyclotron Resonance Plasma)装置等であってもよい。また、反応性ガスと熱によりエッチングや成膜処理を行うプラズマレスの装置であってもよい。
【0070】
また、本明細書では、半導体ウェハWについて説明したが、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)等に用いられる各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
10:半導体製造装置
20:載置台
30:排気口
40:排気ポート
50:QCM
100:制御部
PM:処理室
VTM:搬送室
LLM:ロードロック室
LM:ローダーモジュール
LP:ロードポート
GV:ゲートバルブ
ARM:搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8