(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837712
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20210222BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20210222BHJP
B24B 19/02 20060101ALI20210222BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20210222BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20210222BHJP
B26F 3/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
H01L21/78 V
H01L21/78 B
H01L21/78 F
B23K26/53
B24B19/02
H01L21/304 601Z
B28D5/00 Z
B26F3/02
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-239244(P2016-239244)
(22)【出願日】2016年12月9日
(65)【公開番号】特開2018-98285(P2018-98285A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】山田 成珠
【審査官】
宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−187608(JP,A)
【文献】
特開2013−237097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B24B 19/02
B26F 3/02
B28D 5/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、外周に面取り部が形成されたウェーハの加工方法であって、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点をウェーハの内部に位置付け、該ストリートに沿ってウェーハに該レーザビームを照射してウェーハ内部に該ストリートに沿った改質層を形成するレーザビーム照射ステップと、
該ストリートの延長線上の少なくとも該面取り部を切削ブレードで切削して切削溝を形成する切削ステップと、
該レーザビーム照射ステップ及び該切削ステップを実施した後、ウェーハに外力を付与して該改質層及び該切削溝を分割起点にウェーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、
を備えたことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面の平坦部に有し、外周に面取り部が形成されたウェーハの加工方法であって、
ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点をウェーハの内部に位置付け、該ストリートに沿ってウェーハに該レーザビームを照射してウェーハ内部に該ストリートに沿った改質層を形成するレーザビーム照射ステップと、
該ストリートの延長線上の少なくとも該面取り部を切削ブレードで切削して切削溝を形成する切削ステップと、
該レーザビーム照射ステップ及び該切削ステップを実施した後、ウェーハに外力を付与して該改質層及び該切削溝を分割起点にウェーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、
を備えたことを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項3】
該切削ステップは、該レーザビーム照射ステップを実施した後に実施する請求項1又は2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該切削溝は、該面取り部の上方に位置付けた該切削ブレードを下降させて該面取り部に接触させることで形成される請求項1乃至3のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを有し、外周に面取り部が形成されたウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが表面に複数形成され外周に面取り部を有する半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと略称することがある)は、裏面が研削されて所望の厚さに薄化された後、ストリートと呼ばれる分割予定ラインに沿って切削されて個々のチップに分割され、分割されたチップは各種電子機器に利用されている。
【0003】
ウェーハを個々のチップに分割する方法としては、厚さが20〜40μm程度の切り刃を有する切削ブレードにてウェーハをストリートに沿って切削するダイシング方法や、ウェーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザビームを用いる方法が一般的である。
【0004】
ウェーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザビームを用いる方法では、ウェーハ内部に集光点を合わせてストリートに沿ってパルスレーザビームを照射することで、ウェーハ内部に改質層を連続的に形成し、改質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、ウェーハの個々のチップに分割する(例えば、特許第3408805号公報参照)。この加工方法は、SD(Stealth Dicing)方法と称されることがある。
【0005】
このSD方法では、外周面取り部にレーザビームが照射されることによりアブレーション加工が発生するのを防止するために、外周面取り部を除いてパルスレーザビームを照射する所謂SD内−内カット方法が特開2013−237097号公報で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3408805号公報
【特許文献2】特開2013−237097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
然し、特許文献2に記載されたSD内−内カット方法では、外周部分の改質層が形成されていない領域でクラックがストリートに沿って伸長せず、ウェーハがきれいに分割されないという問題がある。例えば、チップサイズが1mm角以下と小さい場合に、この問題は特に顕著に発生する。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハの分割性を従来に比べて向上することのできるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、交差する複数のストリートで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とを表面に有し、外周に面取り部が形成されたウェーハの加工方法であって、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームの集光点をウェーハの内部に位置付け、該ストリートに沿ってウェーハに該レーザビームを照射してウェーハ内部に該ストリートに沿った改質層を形成するレーザビーム照射ステップと、該ストリートの延長線上の少なくとも該面取り部を切削ブレードで切削して切削溝を形成する切削ステップと、該レーザビーム照射ステップ及び該切削ステップを実施した後、ウェーハに外力を付与して該改質層及び該切削溝を分割起点にウェーハを個々のチップへと分割する分割ステップと、を備えたことを特徴とするウェーハの加工方法が提供される。
【0010】
好ましくは、切削ステップはレーザビーム照射ステップを実施した後に実施する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加工方法によると、分割する前に、外周面取り部に切削ブレードで分割起点となる切削溝を形成するため、チップサイズが小さくても従来のSD内−内カット方法に比べて分割性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】レーザビーム照射ステップを示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、半導体ウェーハ(以下、単にウェーハと略称することがある)11の表面側斜視図が示されている。ウェーハ11は例えば厚さが100μmのシリコンウェーハからなっており、表面11aに複数のストリート(分割予定ライン)13が格子状に形成されていると共に、複数のストリート13によって区画された各領域にIC、LSI等のデバイス15が形成されている。
【0014】
このように構成されたウェーハ11は、複数のデバイス15が形成されているデバイス領域17と、デバイス領域17を囲繞する外周余剰領域19をその表面11aの平坦部に備えている。ウェーハ11の外周部には円弧状の面取り部11eが形成されている。21はシリコンウェーハの結晶方位を示すマークとしてのノッチである。
【0015】
本発明のウェーハの加工方法を実施するのに当たり、
図2に示すように、ウェーハ11の裏面11bが外周部が環状フレームFに装着されたダイシングテープTに貼着され、ウェーハ11はダイシングテープTを介して環状フレームFで支持されるウェーハユニット23の形態としてレーザ加工装置及び切削装置に投入される。
【0016】
本発明実施形態のウェーハの加工方法では、まず
図3に示すように、レーザ加工装置のチャックテーブル12でダイシングテープTを介してウェーハ11の裏面11b側を吸引保持し、表面11aを露出させる。そして、ウェーハユニット23の環状フレームFをチャックテーブル12に配設されているクランプ14でクランプし固定する(保持ステップ)。
【0017】
このようにウェーハ11をチャックテーブル12で吸引保持した後、レーザ加工すべきウェーハ11のストリート13を検出する従来公知のアライメントステップを実施する。アライメントステップを実施した後、
図3に示すように、ウェーハ11に対して透過性を有する波長のパルスレーザビームLBの集光点を集光器16でストリート13に沿ったウェーハ11の内部に位置付け、チャックテーブル12を矢印X1方向に加工送りすることにより、ストリート13に沿ってウェーハ11にパルスレーザビームLBを照射してウェーハ11の内部に改質層25を形成するレーザビーム照射ステップを実施する。
【0018】
このレーザビーム照射ステップでは、少なくともデバイス領域17においてストリート13に沿って改質層25が形成されるとともに、外周余剰領域19において面取り部11eを含む改質層非形成領域27ではウェーハ11がレーザ加工されない値にレーザビームの照射条件が設定されるのが好ましい。
【0019】
然し、本発明のレーザビーム照射ステップはこれに限定されるものではなく、特に割れ難い光デバイスウェーハ等の被加工物の場合には、ストリート13の一端から他端までレーザビームを照射して内部に改質層25を形成するようにしてもよい。
【0020】
チャックテーブル12を矢印X1で示す加工送り方向に直交する方向にストリート13のピッチずつ割り出し送りしながら、第1の方向に伸長する全てのストリート13に沿ってウェーハ11の内部に同様な改質層25を形成する。
【0021】
次いで、チャックテーブル12を90°回転してから、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する全てのストリート13に沿ってウェーハ11の内部に同様な改質層25を形成する。
【0022】
レーザビーム照射ステップのレーザ加工条件は、例えば次のように設定されている。
【0023】
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4パルスレーザー
波長 :1064nm
繰り返し周波数 :100kHz
パルス出力 :10μJ
集光スポット径 :1μm
加工送り速度 :100mm/s
【0024】
レーザビーム照射ステップを実施した後又はレーザビーム照射ステップを実施する前に、少なくともストリート13の延長線上の面取り部11eを切削ブレードで切削して分割起点となる切削溝を形成する切削ステップを実施する。
【0025】
この切削ステップはレーザビーム照射ステップを実施する前に実施してもよいが、レーザビーム照射ステップを実施した後の方が改質層形成時に切削溝が邪魔にならないので好ましい。
【0026】
この切削ステップでは、
図4に示すように、切削装置のチャックテーブル18でダイシングテープTを介してウェーハ11を吸引保持し、チャックテーブル18に配設されたクランプ22でウェーハユニット23の環状フレームFをクランプして固定する。
【0027】
次いで、切削すべきストリート13を検出する従来公知のアライメントステップを実施した後、矢印A方向に高速回転する切削ブレード20を矢印Z1方向に移動して改質層25が形成されている延長線上の改質層非形成領域27に切り込み、ハーフカットのチョッパーカットで分割起点となる切削溝29を形成する。改質層非形成領域27をフルカットしてもよいし、改質層非形成領域27をチョッパートラバースカットで切削溝29を形成してもよい。
【0028】
この切削ステップを第1の方向に伸長する全ての分割予定ライン13に対応する改質層25の両端の改質層非形成領域27について実施する。次いで、チャックテーブル18を90°回転してから、第1の方向に直交する第2の方向ンに伸長する全てのストリート13に対応する改質層25の両端の改質層非形成領域27に実施して、
図5に示すような切削溝29を形成する。
【0029】
レーザビーム照射ステップ及び切削ステップを実施した後、ウェーハ11に外力を付与して改質層25を分割起点によりウェーハ11を個々のチップへと分割する分割ステップを実施する。
【0030】
この分割ステップについて
図6を参照して詳細に説明する。
図6(A)に示すように、ウェーハユニット23の環状フレームFを分割装置30のフレーム保持手段32のフレーム保持部材36の載置面36a上に載置し、クランプ38によってフレーム保持部材36をクランプして固定する。この時、フレーム保持部材36はその載置面36aが拡張ドラム40の上端と略同一高さとなる基準位置に位置付けられる。
【0031】
次いで、駆動手段44を構成するエアシリンダ46を駆動して、ピストンロッド48に連結されているフレーム保持部材36を
図6(B)に示す拡張位置に引き落とす。これにより、フレーム保持部材36の載置面36a上に固定されている環状フレームFも引き落とされるため、環状フレームFに装着されたダイシングテープTは拡張ドラム40の上端縁に当接して主に半径方向に拡張される。
【0032】
その結果、ダイシングテープTに貼着されているウェーハ11には放射状に引っ張り力が作用する。このようにウェーハ11に放射状に引っ張り力が作用すると、ストリート13に沿って形成された改質層25及び切削溝29を分割起点にウェーハ11はストリート13に沿って破断され、個々のチップ31に分割される。
【0033】
本実施形態のウェーハの加工方法では、ウェーハ11の各ストリート13に沿ってウェーハ11の内部に改質層25が形成されていると共に、改質層非形成領域27には切削溝29が形成されているので、分割ステップを実施すると、ウェーハ11は確実に個々のチップ31に分割される。
【0034】
また、改質層25はウェーハ11の外周余剰領域19において面取り部11eを含む改質層非形成領域27には形成されていないので、レーザビーム照射ステップ実施後ウェーハユニット23をレーザ加工装置から切削装置に移す際に、改質層非形成領域27はある程度の補強部となるため、ウェーハユニット23のハンドリング性が良好で、ハンドリング時にウェーハ11が改質層25を起点に割れることが防止される。
【符号の説明】
【0035】
11 半導体ウェーハ(ウェーハ)
11e 面取り部
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
16 集光器
17 デバイス領域
19 外周余剰領域
20 切削ブレード
23 ウェーハユニット
25 改質層
27 改質層非形成領域
29 切削溝
30 分割装置
31 チップ