特許第6837715号(P6837715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837715
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】切削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20210222BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20210222BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20210222BHJP
   B28D 1/24 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   B24B53/00 K
   B24B53/12 Z
   H01L21/78 F
   B28D5/02 A
   B28D1/24
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-6713(P2017-6713)
(22)【出願日】2017年1月18日
(65)【公開番号】特開2018-114588(P2018-114588A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】由見 晃生
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−207591(JP,A)
【文献】 特開2015−213969(JP,A)
【文献】 特開2014−024135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 − 53/14
B24B 27/06
B28D 1/24
B28D 5/02
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒を結合材で固定した切削ブレードで被加工物を切削する被加工物の切削方法であって、
該被加工物に貼着される保護部材の貼着面に、該切削ブレードをドレッシングするためのドレッシング砥粒を散布して付着させるドレッシング砥粒付着ステップと、
該貼着面に該ドレッシング砥粒が付着した該保護部材を該被加工物に貼着する貼着ステップと、
該切削ブレードを該保護部材に切り込ませつつ該被加工物を切削することで該被加工物を分割する分割ステップと、を備えることを特徴とする被加工物の切削方法。
【請求項2】
該ドレッシング砥粒付着ステップでは、該切削ブレードに含まれる該砥粒の大きさ、該結合材の種類、及び、被加工物の種類に基づいて該ドレッシング砥粒の種類及び散布条件を選定し、該保護部材の該貼着面に該ドレッシング砥粒を該散布条件で散布して付着させることを特徴とする請求項1に記載の被加工物の切削方法。
【請求項3】
該保護部材は、環状フレームの開口に該被加工物を支持する粘着テープであり、
該ドレッシング砥粒付着ステップでは、該被加工物と、該環状フレームと、の間の領域の該保護部材の貼着面に該ドレッシング砥粒を付着させることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の被加工物の切削方法。
【請求項4】
該ドレッシング砥粒付着ステップでは、開口を有するマスクの該開口を通過させて該ドレッシング砥粒を該保護部材の該貼着面に散布して付着させ、
該貼着ステップでは、該保護部材を該被加工物に貼着した後、該貼着面とは反対側の面側から押圧ローラで該保護部材を押圧することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の被加工物の切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやパッケージ基板、ガラス基板やセラミックス基板等の板状の被加工物を切削加工する切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスにおいては、シリコンや化合物半導体からなるウェーハの表面にストリートと呼ばれる格子状の分割予定ラインが設定され、該分割予定ラインによって区画される各領域にIC、LSI等のデバイスが形成される。これらのウェーハは分割予定ラインに沿って切削され、個々のデバイスチップに分割される。
【0003】
切削は、例えば、切削ブレードを備える切削装置により実施される。切削ブレードは、中央に孔を有する円環形状であり、被加工物の種別や加工内容によって適切なものが選択され切削ユニットに装着される。切削ユニットは、回転の軸となる円柱状のスピンドルを有し、切削ブレードは、該孔に該スピンドルを挿入されて該スピンドルに装着される。
【0004】
切削ブレードの切り刃は、砥粒と、該砥粒を保持する結合材と、からなる。該結合材から適度に砥粒が露出している状態では、被加工物に砥粒が接触するので、適切に被加工物を切削できる。そして、被加工物の切削加工を実施すると、刃先が消耗することで次々に該結合材から新たな砥粒が露出される自生発刃の作用により、切削ブレードの切削能力は一定以上に保たれる。
【0005】
しかしながら、切削加工の加工条件次第では、該自生発刃が活発に行われにくく切削ブレードの切削能力が低下しやすい場合がある。その場合、切削加工を所定の回数実施した後に、切削ブレードをドレッシングして自生発刃を促す。ドレッシングは、対象となる切削ブレードにドレッシングボードを切削させて実施する。ドレッシングボードを切削すると切削ブレードは適切に消耗し、砥粒が結合材から適度に露出され、再び切削加工に適した状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−218571号公報
【特許文献2】特開平8−88202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、切削ブレードをドレッシングしている間は該切削ブレードにより被加工物を切削することができない。また、ドレッシングのためにドレッシングボードを準備しなければならない。そのため、切削ブレードによる切削加工のコストが増大し、また、加工の効率が低下してしまう。
【0008】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、切削ブレードによる切削加工を行いながら自生発刃の作用を促進できる被加工物の切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、砥粒を結合材で固定した切削ブレードで被加工物を切削する被加工物の切削方法であって、該被加工物に貼着される保護部材の貼着面に、該切削ブレードをドレッシングするためのドレッシング砥粒を散布して付着させるドレッシング砥粒付着ステップと、該貼着面に該ドレッシング砥粒が付着した該保護部材を該被加工物に貼着する貼着ステップと、該切削ブレードを該保護部材に切り込ませつつ該被加工物を切削することで該被加工物を分割する分割ステップと、を備えることを特徴とする被加工物の切削方法が提供される。
【0010】
本発明の一態様において、該ドレッシング砥粒付着ステップでは、該切削ブレードに含まれる該砥粒の大きさ、該結合材の種類、及び、被加工物の種類に基づいて該ドレッシング砥粒の種類及び散布条件を選定し、該保護部材の該貼着面に該ドレッシング砥粒を該散布条件で散布して付着させてもよい。また、該保護部材は、環状フレームの開口に該被加工物を支持する粘着テープであり、該ドレッシング砥粒付着ステップでは、該被加工物と、該環状フレームと、の間の領域の該保護部材の貼着面に該ドレッシング砥粒を付着させてもよい。さらに、該ドレッシング砥粒付着ステップでは、開口を有するマスクの該開口を通過させて該ドレッシング砥粒を該保護部材の該貼着面に散布して付着させ、該貼着ステップでは、該保護部材を該被加工物に貼着した後、該貼着面とは反対側の面側から押圧ローラで該保護部材を押圧してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る切削方法では、被加工物に貼着される保護部材の貼着面に、切削ブレードをドレッシングするためのドレッシング砥粒を付着させる。被加工物を切削ブレードにより切削して被加工物を分断する際は、切削ブレードを該保護部材に切り込ませつつ該被加工物を切削する。
【0012】
すると、被加工物の切削加工中に、切削ブレードの刃先が該貼着面に付着した該ドレッシング砥粒に当たり、切削ブレードがドレッシングされ切削ブレードの自生発刃が促進される。よって、切削ブレードのドレッシングを実施するためにドレッシングボードを準備する必要がなく、また、ドレッシングを実施するために切削装置による切削加工を中止する必要がないため、切削加工の効率を向上できる。
【0013】
さらに、本発明の一態様に係る切削方法では、被加工物の種別や切削ブレードの種別、必要とされるドレッシングの程度等に応じて保護部材に付着させるドレッシング砥粒の種類や砥粒を選択できる。そのため、状況に応じてドレッシングの内容を詳細に決定でき、かつ、状況の変化に応じてドレッシングの内容を容易に切り替えられるため、切削ブレードを適切にドレッシングできる。
【0014】
以上のように、本発明により切削ブレードによる切削加工を行いながら自生発刃の作用を促進できる被加工物の切削方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ドレッシング砥粒付着ステップ及び貼着ステップを説明する模式図である。
図2図2(A)は、貼着ステップ後の被加工物及び保護部材を模式的に示す斜視図であり、図2(B)は、貼着ステップ後の被加工物及び保護部材を模式的に示す部分断面図である。
図3】分割ステップを模式的に示す部分断面図である。
図4図4(A)は、貼着ステップ後の被加工物及び保護部材を模式的に示す斜視図であり、図4(B)は、分割ステップを模式的に示す部分断面図である。
図5図5(A)は、保護部材準備ステップを模式的に説明する部分断面図であり、図5(B)は、砥粒付着ステップを模式的に説明する部分断面図であり、図5(C)は、貼着ステップを模式的に説明する部分断面図である。
図6図6(A)は、フレーム貼着ステップを模式的に説明する部分断面図であり、図6(B)は、分割ステップを模式的に説明する部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る切削方法における、ドレッシング砥粒付着ステップと、貼着ステップと、が実施される保護部材貼着装置について図1を用いて説明する。
【0017】
図1は、該ドレッシング砥粒付着ステップ及び該貼着ステップが実施される保護部材貼着装置2を説明する模式図である。該保護部材貼着装置2は、フィルム状の保護部材(ダイシングテープ)14を供給するための供給ローラと、該供給ローラに対して平行に配置され該保護部材14を巻き取る巻き取りローラと、を有している。
【0018】
該供給ローラには、保護部材14が円筒状に巻かれてなる保護部材ロール(ダイシングテープロール)4が装着される。該供給ローラから供給された保護部材14は、巻き取りローラによって巻き取られて巻き取りロール6となる。
【0019】
供給ローラと、巻き取りローラと、の間には、供給ローラから供給された保護部材14にドレッシング砥粒12を供給する砥粒噴射ユニット8が設けられている。砥粒噴射ユニット8の巻き取りローラ側には、保護部材14を巻き取りローラ側へと送る送りローラ16と、保護部材14を上向きに押圧する押圧ローラ18と、が順に配置されている。砥粒噴射ユニット8の下方には、砥粒噴射ユニット8によるドレッシング砥粒12の噴射範囲を画定するマスク10が配設されている。
【0020】
砥粒噴射ユニット8は、開口10aを有する該マスク10と協働してドレッシング砥粒12を保護部材14の所定の領域(被散布領域)に散布する機能を有する。砥粒噴射ユニット8は、マスク10によって画定される該所定の領域内で分布が均一となるように所定の量のドレッシング砥粒12を散布する。例えば、ドレッシング砥粒12は高圧ガス等により飛ばされ、保護部材14の該所定の領域に均一に散布される。
【0021】
散布されるドレッシング砥粒12の種類や大きさ、散布量等は、予定されるドレッシングの内容に応じて選択できる。例えば、切削ブレードに含まれる砥粒の大きさや種類、結合材の種類、及び、被加工物の種類等に基づいて選定でき、切削ブレードや切削加工の実情に即した選択が可能である。
【0022】
例えば、切削ブレードを積極的に消耗させたい場合、アルミナ(Al)からなるホワイトアランダム(WA)砥粒や、切削ブレードの砥粒径よりも大きな、例えば、20μm〜50μmの粒径のドレッシング砥粒を用いる。
【0023】
また、切削ブレードを軽度に消耗させたい場合、シリコンカーバイド砥粒や、切削ブレードの砥粒径と同程度の粒径のドレッシング砥粒を用いる。例えば、ガラスを切削する切削ブレードには、粒径が30μm程度の砥粒が用いられる場合がある。また、シリコンウェーハを切削する切削ブレードには、粒径が5μm程度の砥粒が用いられる場合がある。
【0024】
保護部材14は、例えば、帯状に形成された可塑性のダイシングテープであり、円筒状に巻かれた状態で径方向の外側に配置される基材と、該基材の内側の面に設けられた粘着材層と、を有している。保護部材ロール4は、供給ローラから供給される保護部材14の粘着材層が上方を向くように供給ローラに装着される。該粘着材層の表面(上面)が被加工物に貼着される貼着面となる。
【0025】
保護部材14は該保護部材ロール4から引き出されて使用され、後述のフレーム9の形状に合わせて切り取られた後に、不要分が巻き取りローラによって巻き取られて巻き取りロール6になる。保護部材14は、保護部材ロール4と、巻き取りロール6と、の間の送りローラ16により弛まないように送られる。
【0026】
次に、本実施形態に係る切削方法の被加工物(被切削物)について説明する。図2(A)の斜視図には、該被加工物1が模式的に示されている。該被加工物1の表面1aには、格子状に複数の分割予定ライン(ストリート)3が設定され、該複数の分割予定ライン3により区画される各領域には、ICやLSI等のデバイス5が形成されている。
【0027】
該被加工物1が最終的に該分割予定ライン3に沿って分割されると、個々のデバイスチップが形成される。被加工物1は、例えば、シリコン、サファイア、SiC(シリコンカーバイド)等のウェーハやガラス、石英等の基板である。
【0028】
次に、本実施形態に係る切削方法について説明する。該切削方法では、該被加工物1に貼着される保護部材14の貼着面に、該切削ブレードをドレッシングするためのドレッシング砥粒12を付着させるドレッシング砥粒付着ステップを実施する。次に、該保護部材14を該被加工物1に貼着する貼着ステップを実施する。そして、裏面1bに保護部材14が貼着された被加工物1を切削装置に移し、該切削ブレードを該保護部材1に切り込ませつつ該被加工物1を切削することで該被加工物1を分割する分割ステップを実施する。
【0029】
まず、ドレッシング砥粒付着ステップについて説明する。該ドレッシング砥粒付着ステップは、上述の保護部材貼着装置2において実施される。貼着面を上方に向けた状態で保護部材ロール4から保護部材14が送り出される。そして、保護部材14の所定の領域(被散布領域)が砥粒噴射ユニット8の下方に配され、砥粒噴射ユニット8からドレッシング砥粒12が噴射される。
【0030】
砥粒噴射ユニット8から噴射されたドレッシング砥粒12の一部はマスク10に遮られて保護部材14に到達しないが、別の一部はマスク10の開口10aを通過し、保護部材14の貼着面に到達する。すると、被散布領域にドレッシング砥粒が付着される。該被散布領域はドレッシングの内容に応じて変形させてもよく、例えば、被加工部1の平面形状に対応する大きさに形成され、または、被加工物1の平面形状よりも大きく形成される。
【0031】
次に、該保護部材14を該被加工物1に貼着する貼着ステップについて説明する。貼着ステップは、ドレッシング砥粒付着ステップに続いて保護部材貼着装置2において実施される。送りローラ16を作動させ、保護部材14を巻き取りローラにより巻き取らせると、保護部材14に付着したドレッシング砥粒11は、巻き取りロール6の方向に移される。そして、保護部材14の貼着面の該被散布領域に、裏面1bを下方に向けた被加工物1を貼着させる。
【0032】
次に、被加工物1の外周径よりも大きな内周径の開口9aを有する環状のフレーム9を用意し、被加工物1を該開口9aの内側に収めるように保護部材14の貼着面にフレーム9を貼着する。そして、押圧ローラ18を図1の矢印18aの方向に回転させつつ、図1の矢印18bの方向に移動させて、保護部材14の貼着面とは反対側の面側(基材側)から保護部材14を押圧する。すると、該保護部材14の被加工物1及びフレーム9に対する貼着力を高めることができる。
【0033】
そして、該保護部材14を該フレーム9の開口9aと、該フレーム9の外周縁と、の間で該フレーム9に沿って1周に渡って切断する。すると、図2(A)に示す通り環状のフレーム9に張られた保護部材7を介して被加工物1を該フレーム9に装着できる。図2(A)は、該フレーム9に装着された被加工物1を模式的に示す斜視図である。また、図2(B)は、該フレーム9に装着された被加工物1を模式的に示す断面図である。
【0034】
図2(A)及び図2(B)に示す通り、被加工物1と、該フレーム9に張られた保護部材7と、の間には該保護部材7の粘着材層7b上に付着したドレッシング砥粒11が配される。
【0035】
次に、裏面1bに保護部材7が貼着された被加工物1を切削装置に移し、切削ブレードを該保護部材7に切り込ませつつ該被加工物1を切削することで該被加工物1を分割する分割ステップを実施する。図3は、切削装置20で実施される分割ステップを模式的に説明する部分断面図である。
【0036】
切削装置20は、切削ユニット22と、チャックテーブル24と、クランプ26と、を有する。チャックテーブル24の表面(上面)は、被加工物1を吸引保持する保持面24aとなっている。この保持面24aは、チャックテーブル24の内部に形成された流路(不図示)を通じて吸引源(不図示)に接続されている。チャックテーブル24の周囲には、被加工物1を固定するためのクランプ26が設けられている。
【0037】
チャックテーブル24は、チャックテーブル移動機構(不図示)に支えられ、該チャックテーブル移動機構の作用により保持面24aと平行な方向に移動できる。該チャックテーブル24が切削ユニット22に対して相対的に移動することで、該チャックテーブル24に保持された被加工物1が加工送り、または、割り出し送りされる。さらに、チャックテーブル24は、保持面24aに垂直な軸の周りに回転可能であり、加工送り方向を変えることができる。
【0038】
切削ユニット22は、スピンドル22aと、該スピンドル22aの一端側に装着された円環状の切削ブレード22bと、を備えている。スピンドル22aの他端側にはモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、該回転駆動源はスピンドル22aを回転させる。そして、スピンドル22aが回転すると切削ブレード22bが回転される。
【0039】
切削ブレード22bは、円盤状の基台を有しており、該基台の中央部には該基台を貫通する略円形の装着穴が設けられている。切削ブレード22bは、該装着穴にスピンドル22aが通されてスピンドル22aの一端に固定される。基台の外周部には、被加工物1に切り込ませるための環状の切り刃が固定されている。
【0040】
切削ブレード22bの該切り刃は、砥粒と、該砥粒を保持する結合材と、からなる。該結合材から適度に砥粒が露出している状態では、被加工物1に該砥粒が接触するので、適切に被加工物1を切削できる。そして、被加工物1の切削加工を実施すると、刃先が消耗することで次々に該結合材から新たな砥粒が露出される自生発刃の作用により、切削ブレードの切削能力が保たれる。ただし、切削ブレード22bが長時間使用される等して消耗する場合、十分な切削能力を保つためにはドレッシングが必要となる。
【0041】
なお、切削ブレード22bの使用を開始する際には、最初にドレッシングボードを切削させて、切刃の結合材から適度に砥粒を露出させ、また、切削ブレード22bがスピンドル22aに対して真円となるようにすることが望ましい。
【0042】
分割ステップでは、まず、表面1aが上方に向けられた被加工物1が保護部材7を介して切削装置20のチャックテーブル24の保持面24a上に載せ置かれる。そして、クランプ26によりフレーム9が固定され、チャックテーブル24から負圧を作用させて、被加工物1をチャックテーブル24に吸引保持させる。
【0043】
次に、チャックテーブル移動機構(不図示)を作動させて、分割予定ライン3に沿って被加工物1を切削できるように切削ブレード22bと、被加工物1と、の相対位置を合わせる。そして、スピンドル22aを回転させることで切削ブレード22bを回転させ、該切削ブレード22bの刃先が被加工物1の裏面1b側の保護部材7に切り込む高さ位置まで該切削ブレード22bを下降させる。次に、被加工物1を加工送りして切削加工を進行させる。すると、被加工物1が分割予定ライン3に沿って分割される。
【0044】
切削ブレード22bによる切削加工により、回転する切削ブレード22bの刃先が保護部材7に達するとき、該保護部材7に付着したドレッシング砥粒11に該切削ブレード22bの刃先が接触する。すると、切削ブレード22bがドレッシングされる。
【0045】
本実施形態に係る切削方法によると、被加工物1を切削ブレード22bで切削加工しながらドレッシング砥粒11により該切削ブレード22bがドレッシングされる。そのため、切削ブレード22bの切削性能が維持され、別途切削ブレード22bにドレッシングを実施する必要がなくなる。つまり、切削ブレード22bのドレッシングを実施するために切削装置20を停止させる必要がなく、また、ドレッシングを実施するためのドレッシングボードを用意する必要がなくなるため、切削加工の効率を高めることができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る切削方法によると、切削ブレード22に含まれる砥粒の種類や大きさ、切削ブレード22に使用される結合材の種類、被加工物1の種類等に基づいてドレッシング砥粒11を選択できる。そのため、状況に応じてドレッシングの内容を詳細に決定でき、かつ、状況の変化に応じてドレッシングの内容を容易に切り替えられるため、切削ブレードを適切にドレッシングできる。
【0047】
例えば、予めドレッシング砥粒11を原料に混ぜて保護部材7を形成しても切削加工中にドレッシングを実施できる。しかし、この場合切削ブレード22の状況に応じて細かくドレッシング条件を選択するためには、各ドレッシング条件に対応した多種の保護部材7を用意していなければならず、コストがかかる。また、実施されるべきドレッシング条件に応じて適宜保護部材7を切り替えなければならず、手間がかかる。
【0048】
一方で、本実施形態に係る切削方法によると、ドレッシング砥粒11の種類や散布条件等を決定することで、切削ブレードの状態に応じて様々な条件でドレッシングを実施できる。該散布条件次第で様々な条件のドレッシングを実現できるため、保護部材7をドレッシングの条件の数だけ用意する必要はなく、用意するべきドレッシング砥粒11の種類は比較的少なくて済む。また、ドレッシング砥粒11の散布条件の変更は、保護部材7の切り替えよりも手間がかからない。したがって、切削加工の効率が上がる。
【0049】
被加工物1を一つの分割予定ライン3に沿って切削加工した後、被加工物1を割り出し送りして次々に被加工物1を切削加工する。そして、平行に並ぶ分割予定ライン3に沿って切削加工を実施した後、チャックテーブル24を4分の1回転させて、加工送り方向を変える。そして、すべての分割予定ライン3に沿って切削加工を実施すると、被加工物が個々のデバイスチップに分割される。
【0050】
なお、本発明は、上記の実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記の実施形態においては、被加工物1の裏面1bの全面に渡って、ドレッシング砥粒11が散布される場合について説明したが、保護部材7のドレッシング砥粒11の被散布領域はこれに限らない。
【0051】
例えば、図4(A)及び図4(B)に示す通り、被加工物1と、保護部材7と、の間にはドレッシング砥粒11を配設せず、被加工物1の外周縁を囲うようにドレッシング砥粒11を散布してもよい。被加工物1の外周縁を囲う領域をドレッシング砥粒11の被散布領域とするには、保護部材貼着装置2の砥粒噴射ユニット8の下方に配されるマスク10をその開口10aの形状を変更して用いればよい。
【0052】
図4(A)は、被加工物1の外周縁を囲うようにドレッシング砥粒11が散布された保護部材を被加工物に貼着する貼着ステップ後の被加工物及び保護部材を模式的に示す斜視図である。ドレッシング砥粒11をこのように散布すると、被加工物1と、保護部材7と、の間にドレッシング砥粒11が存在しないため、被加工物1は保護部材7の貼着面に強力に貼着される。
【0053】
図4(B)は、分割ステップを模式的に示す断面図である。図4(B)に示す通り、切削装置20が備える切削ブレード22bは、被加工物1の切削と同時にはドレッシングされない。しかし、必要に応じて被加工物1の外側の保護部材7を切削させることによりドレッシング砥粒11に接触させることができ、切削ブレード22bをドレッシングできる。被加工物1を切削加工する分割ステップを停止することなく切削ブレード22bをドレッシングできるため、この場合においても加工効率は高く生産性が良い。
【0054】
さらに、上記の実施形態においては、ダイシングテープ等の粘着テープでなる保護部材7を用いたが、該保護部材7は、これに限られない。例えば、液状樹脂を平坦な台上に吐出して形成する保護部材により被加工物1を支持してもよく、その場合、台上に吐出した液状樹脂上にドレッシング砥粒11を散布させてもよい。
【0055】
図5(A)は、液状樹脂でなる保護部材(液状樹脂)7cを形成する保護部材準備ステップを模式的に示す断面図である。該保護部材準備ステップでは、保護部材7cの材料となる液状樹脂をノズル30から吐出させ、該液状樹脂を台28の上に吐出させて保護部材7cを形成する。このとき、保護部材7cの平面形状を、後に保護部材7cの上に載せ置く被加工物1の平面形状と略同一とする。
【0056】
保護部材準備ステップの後に、砥粒付着ステップを実施する。図5(B)は、該砥粒付着ステップを模式的に説明する断面図である。該砥粒付着ステップでは、保護部材準備ステップで形成した保護部材7cの上面にドレッシング砥粒12aを散布する。ドレッシング砥粒12aの散布には、上述の保護部材貼着装置2が備える砥粒噴射ユニット8と同様の砥粒噴射ユニット8aが用いられる。
【0057】
砥粒付着ステップの後に、貼着ステップを実施する。図5(C)は、貼着ステップを模式的に説明する断面図である。該貼着ステップでは、上面にドレッシング砥粒11が付着した保護部材7cの上に、被加工物1を貼着する。被加工物1は、台28の上面と平行な方向に向けられたまま保護部材7cの上方から該保護部材7cに向けて押圧される。
【0058】
すると、ドレッシング砥粒12aが保護部材7cにめり込み、被加工物1の裏面1bと、該保護部材7cと、の接触面積が増して、被加工物1は該保護部材7cに強く貼着される。その後、紫外線が照射されることにより該保護部材7cが固化される。
【0059】
貼着ステップの後に、フレーム貼着ステップを実施する。図6(A)は、フレーム貼着ステップを模式的に説明する断面図である。該フレーム貼着ステップでは、環状のフレーム9bに張られたテープ7dの粘着材層7fの上に、被加工物1が貼着された保護部材7cを貼着する。すると、被加工物1は、保護部材7cと、テープ7dと、を介して環状のフレーム9bに装着される。なお、環状の該フレーム9bは、上述のフレーム9と同様に構成される。また、テープ7dは、基材7eと、粘着材層7fと、を有する。
【0060】
フレーム貼着ステップの後に、分割ステップを実施する。図6(B)は、分割ステップを模式的に説明する断面図である。該分割ステップでは、上述の切削装置20が使用される。まず、切削装置20のチャックテーブル24の保持面24a上にフレーム9bに装着された被加工物1が載せ置かれ、フレーム9bがクランプ26に挟持され、チャックテーブル24から負圧が作用されて、被加工物1がチャックテーブル24に吸引保持される。
【0061】
被加工物1の分割予定ラインに沿って被加工物1が分割されるように、チャックテーブル24と、切削ユニット22と、を相対移動させる。次に、スピンドル22aを回転させることで切削ブレード22bを回転させ、回転する該切削ブレード22bが保護部材7cに切り込む高さ位置となるように切削ブレード22bを降下させる。そして、チャックテーブル24を移動させて被加工物1を加工送りすることで、被加工物1を切削して被加工物を分割する。
【0062】
被加工物1を切削する際、回転する切削ブレード22bの刃先が保護部材7cに切り込む。すると、該保護部材7cの上面に配設されたドレッシング砥粒11に接触するため、切削ブレード22bはドレッシングされる。
【0063】
このように、分割ステップを実施すると、切削装置20を停止して別にドレッシングを実施する必要がなく、また、ドレッシングのためのドレッシングボード等を準備する必要がない。そのため、切削加工の効率を向上できる。さらに、切削ブレード22bの種別や必要とされるドレッシングの程度に応じて保護部材7cに付着させるドレッシング砥粒11の種類や砥粒を選択できる。そのため、ドレッシングの内容を詳細に決定でき、切削ブレード22bを適切にドレッシングできる。
【0064】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0065】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 分割予定ライン
5 デバイス
7,14 保護部材(ダイシングテープ)
7a,7e 基材
7b,7f 粘着材層
7c 保護部材(液状樹脂)
7d テープ
9,9b フレーム
9a 開口
11,12,12a ドレッシング砥粒
2 保護部材貼着装置
4 保護部材ロール(ダイシングテープロール)
6 巻き取りロール
8,8a 砥粒噴射ユニット
10 マスク
10a 開口
16 送りローラ
18 押圧ローラ
18a,18b 矢印
20 切削装置
22 切削ユニット
22a スピンドル
22b 切削ブレード
24 チャックテーブル
24a 保持面
26 クランプ
28 台
30 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6