(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該剥離ステップでは、該保護部材付きウェーハを減圧チャンバに投入し、該保護フィルムと該ウェーハの該表面との間に存在する該液体を減圧して気化させることを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
該保護フィルム密着ステップでは、該保護フィルムの該ウェーハに対面する面とは反対側の面に気体を噴射することで該ウェーハの該表面側に該保護フィルムを押し当てることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか記載のウェーハの加工方法。
該保護フィルム密着ステップでは、押圧ローラーを用いて該ウェーハの該表面側に該保護フィルムを押し当てることを特徴とする該請求項1から請求項4のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
該保護部材付きウェーハ形成ステップでは、平坦なシートに塗布された該液状樹脂に該保護フィルムを介して該ウェーハを押し当てた後、該液状樹脂を外的刺激で硬化させて該ウェーハに該液状樹脂からなる該保護部材を固定することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のウェーハの加工方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るウェーハの加工方法は、液体供給ステップ、保護フィルム密着ステップ(
図1(A)、
図1(B)、
図2(A)、
図2(B)、
図3(A)、
図3(B)参照)、保護部材付きウェーハ形成ステップ(
図4(A)、
図4(B)、
図4(C)参照)、研削ステップ(
図5(A)、
図5(B)参照)、及び剥離ステップ(
図6参照)を含む。
【0020】
液体供給ステップでは、表面に凹凸が設けられているウェーハの表面側に液体を供給する。保護フィルム密着ステップでは、ウェーハの表面側に設けられている凹凸に合わせて(倣って)、接着剤(糊)による接着力がない保護フィルムをウェーハの表面側に密着させる。保護部材付きウェーハ形成ステップでは、液状樹脂からなる保護部材で保護フィルムを被覆し、ウェーハの表面側が保護部材で覆われた保護部材付きウェーハを形成する。
【0021】
研削ステップでは、チャックテーブルの保持面で保護部材付きウェーハの保護部材側を保持した状態で、ウェーハの裏面を研削する。剥離ステップでは、薄くなったウェーハから保護部材及び保護フィルムを剥離する。以下、本実施形態に係るウェーハの加工方法について詳述する。
【0022】
本実施形態に係るウェーハの加工方法では、まず、表面に凹凸が設けられているウェーハの表面側に液体を供給する液体供給ステップを行い、次に、この凹凸に合わせて、接着剤による接着力がない保護フィルムをウェーハの表面側に密着させる保護フィルム密着ステップを行う。すなわち、液体を介して保護フィルムをウェーハの表面側に押し当て、密着させる。
【0023】
図1(A)は、保護フィルムをウェーハの表面側に対面させる様子を模式的に示す斜視図であり、
図1(B)は、保護フィルムをウェーハの表面側に密着させた状態を模式的に示す斜視図である。
図2(A)は、保護フィルムをウェーハの表面側に対面させた状態を模式的に示す断面図であり、
図2(B)は、保護フィルムをウェーハの表面側に密着させる様子を模式的に示す断面図である。
【0024】
また、
図3(A)は、保護フィルムをウェーハの表面側に密着させた状態を模式的に示す断面図であり、
図3(B)は、保護フィルムが密着した状態のウェーハの一部を模式的に示す断面図である。なお、
図2(A)、
図2(B)及び
図3(A)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0025】
図1(A)等に示すように、本実施形態で使用されるウェーハ11は、例えば、シリコン(Si)等の材料を用いて、表面11a及び裏面11bを有する円盤状に形成されている。このウェーハ11の外周縁11cの表面11a側及び裏面11b側は、面取りされている。
【0026】
また、このウェーハ11の表面11a側は、中央のデバイス領域11dと、デバイス領域11dを囲む外周余剰領域11eとに分けられている。デバイス領域11dは、格子状に配列された分割予定ライン(ストリート)13で更に複数の領域に区画されており、各領域には、IC(Integrated Circuit)等のデバイス15が形成されている。各デバイス15の表面には、電極として機能する複数のバンプ(凹凸)17が設けられている。このバンプ17は、例えば、半田等の材料で形成されている。
【0027】
なお、本実施形態では、シリコン等の材料でなる円盤状のウェーハ11を用いるが、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。他の半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなるウェーハ11を用いることもできる。同様に、デバイス15やバンプ17の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。バンプ17の代わりに、他の機能を持つ構造(凹凸)が形成されていても良い。すなわち、ウェーハ11の表面11a側には、バンプ17が形成されていなくても良い。
【0028】
液体供給ステップでは、このように構成されるウェーハ11の表面11a側に液体23(
図2(A)等参照)を供給する。ウェーハ11に供給される液体23の種類に特段の制限はないが、常温(20℃)で気化し難く、且つ、沸点が高すぎないもの(例えば、沸点が100℃以下のもの)を用いることが望ましい。
【0029】
このような液体23としては、例えば、水が挙げられる。なお、本実施形態では、ウェーハ11の表面11a側の中心部に液体23を供給する。もちろん、ウェーハ11の表面11a側の別の一部(すなわち、中心部以外の一部)、又は、ウェーハ11の表面11a側の全部(全体)に液体23を供給しても良い。
【0030】
液体供給ステップの後には、液体23を介して保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に密着させる保護フィルム密着ステップを行う。保護フィルム21は、例えば、樹脂等の材料でなる柔軟なフィルムであり、ウェーハ11と同等の径(直径)を持つ円盤状に形成されている。また、この保護フィルム21には、接着剤が設けられていない。保護フィルム21の厚みに特段の制限はないが、例えば、30μm〜150μm程度の厚みの保護フィルム21を用いると良い。
【0031】
保護フィルム密着ステップは、例えば、
図2(A)に示すような保護フィルム密着装置2を用いて行われる。保護フィルム密着装置2は、ウェーハ11を支持するための支持テーブル4を備えている。支持テーブル4の上面は、概ね平坦に形成されており、ウェーハ11を支持するための支持面4aとして機能する。支持面4aには、ウェーハ11の位置を規定するための凸状のガイド部4bが設けられている。
【0032】
支持テーブル4の上方には、保護フィルム21を吸引、保持してウェーハ11に密着させるための保護フィルム保持ユニット6が配置されている。保護フィルム保持ユニット6の下面は、概ね平坦に形成されており、保護フィルム21を吸引、保持するための保持面6aとして機能する。保護フィルム保持ユニット6は、移動機構(不図示)によって支持されており、保護フィルム21を吸引、保持しながら鉛直方向に移動できる。
【0033】
保護フィルム21の外周部を保持する保持面6aの一部の領域には、第1流路6bの一端側が開口している。第1流路6bの他端側は、複数に分岐されている。第1流路6bの第1分岐には、バルブ8等を介して吸引源10が接続されており、第1流路6bの第2分岐には、バルブ12等を介して圧縮エアー供給源14が接続されている。
【0034】
一方で、保護フィルム21の中央部を保持する保持面6aの別の一部の領域には、第2流路6cの一端側が開口している。第2流路6cの他端側も、複数に分岐されている。第2流路6cの第1分岐は、バルブ16等を介して第1流路6bの第3分岐に接続されている。第2流路6cの第2分岐には、バルブ18等を介して圧縮エアー供給源14が接続されている。また、保護フィルム保持ユニット6の内部には、保持面6aを加熱するためのヒーター20が設けられている。
【0035】
保護フィルム密着ステップでは、
図2(A)に示すように、まず、ウェーハ11の裏面11bが支持テーブル4の支持面4aに接触するように、ウェーハ11を支持テーブル4に載せる。これにより、ウェーハ11は、表面11a側が上方に露出した状態で支持テーブル4に支持される。また、このウェーハ11の位置に合わせて、保護フィルム21を保護フィルム保持ユニット6の保持面6aに接触させる。具体的には、ウェーハ11の外周縁11cの直上に保護フィルム21の外周縁の位置を合わせる。
【0036】
そして、バルブ8,16を開いて、吸引源10の負圧を保護フィルム21に作用させる。これにより、保護フィルム21は、保護フィルム保持ユニット6によって吸引、保持され、ウェーハ11の表面11a側に保護フィルム21が対面した状態になる。なお、バルブ8,16を開く前には、バルブ12,18を閉じて、第1流路6b及び第2流路6cに圧縮されたエアー(気体)が供給されないようにしておく。また、保護フィルム保持ユニット6の鉛直方向の位置は、例えば、ウェーハ11の表面11aと保護フィルム21との間隔が0.1mm〜10mm程度になるように調整される。
【0037】
ウェーハ11の表面11a側に保護フィルム21を対面させた後には、保持面6aをヒーター20で加熱し、保護フィルム21を熱によって軟化させる。そして、
図2(B)に示すように、バルブ16を閉じ、第2流路6cに対する吸引源10の負圧を遮断した上で、バルブ18を開き、圧縮エアー供給源14から圧縮されたエアーを第2流路6cへと供給する。
【0038】
これにより、保護フィルム21の保持面6aに接触している上面(ウェーハ11に対面する面とは反対側の面)の中央部にエアーが噴射され、
図2(B)に示すように、保護フィルム21の中央部は、下向きに膨らんでウェーハ11の表面11a側に押し当てられる。本実施形態では、液体供給ステップでウェーハ11の表面11a側に液体23を供給しているので、保護フィルム21は、僅かな液体23を間に挟んで(液体23越しに)ウェーハ11の表面11a側に押し当てられる。
【0039】
更にエアーの噴射を続けると、保護フィルム21は、ウェーハ11の中心部から径方向外側に向かって順にウェーハ11の表面11a側に押し当てられる。保護フィルム21の外周部を除く領域がウェーハ11の表面11a側に押し当てられた後には、
図3(A)に示すように、バルブ8を閉じ、第1流路6bに対する吸引源10の負圧を遮断した上で、バルブ12を開き、圧縮エアー供給源14から圧縮されたエアーを第1流路6bへと供給する。これにより、保護フィルム21の外周部の上面側にエアーが噴射され、保護フィルム21の外周部もウェーハ11の表面11a側に押し当てられる。
【0040】
その結果、
図1(B)、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、ウェーハ11の表面11a側に設けられているバンプ17等の形状に合わせて(倣って)、保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に密着させることができる。本実施形態では、ヒーター20で保護フィルム21を加熱し軟化させているので、バンプ17等の形状に合わせて保護フィルム21を適切に密着させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に押し当てる際に液体23が移動してエアーを押し出すので、ウェーハ11と保護フィルム21との間にエアーが残留するのを防いで、保護フィルム21を確実に密着させることができる。そして、保護フィルム21とウェーハ11との間には、僅かな液体23が残留することになる。すなわち、僅かな液体23を間に挟んで保護フィルム21とウェーハ11の表面11a側とが密着する。
【0042】
保護フィルム密着ステップの後には、液状樹脂からなる保護部材で保護フィルム21を被覆し、ウェーハ11の表面11a側が保護部材で覆われた保護部材付きウェーハを形成する保護部材付きウェーハ形成ステップを行う。
【0043】
図4(A)は、シートに塗布された液状樹脂に保護フィルム21を介してウェーハ11を押し当てる様子を模式的に示す断面図であり、
図4(B)は、液状樹脂を硬化させてウェーハ11に液状樹脂からなる保護部材を固定する様子を模式的に示す断面図であり、
図4(C)は、完成した保護部材付きウェーハを模式的に示す断面図である。なお、
図4(A)及び
図4(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0044】
本実施形態に係る保護部材付きウェーハ形成ステップは、例えば、
図4(A)及び
図4(B)に示すような保護部材固定装置22を用いて行われる。保護部材固定装置22は、樹脂等でなる概ね平坦なシート(キャリアシート)25を保持するための保持テーブル24を備えている。保持テーブル24の上面側には、ウェーハ11より径の大きい円形の凹部24aが形成されている。
【0045】
凹部24aの内側には、紫外線光源26が配置されている。この凹部24aの上端は、紫外線光源26から放射される紫外線の少なくとも一部を透過させるプレート28で覆われており、シート25の中央側の一部は、プレート28によって支持される。保持テーブル24の上面の凹部24aを囲む領域には、シート25の外周側の一部を吸引するための吸気路24bの一端側が開口している。
【0046】
吸気路24bの他端側は、バルブ30等を介して吸引源32に接続されている。吸気路24bを介してシート25の外周側の一部に吸引源32の負圧を作用させることで、シート25は、保持テーブル24に保持される。この保持テーブル24の上方には、ウェーハ11を吸引、保持するためのウェーハ保持ユニット34が配置されている。
【0047】
ウェーハ保持ユニット34は、移動機構(不図示)によって支持されており、その下面34a側でウェーハ11を吸引、保持しながら、鉛直方向に移動する。なお、このウェーハ保持ユニット34としては、例えば、負圧を利用してウェーハ11を吸引、保持する真空吸引型のウェーハ保持ユニットや、静電気の力を利用してウェーハ11を吸引、保持する静電吸着型のウェーハ保持ユニット等が用いられる。
【0048】
保護部材付きウェーハ形成ステップでは、
図4(A)に示すように、液状樹脂27が上面に塗布されたシート25の下面側を保持テーブル24によって保持する。また、ウェーハ保持ユニット34の下面34a側でウェーハ11の裏面11b側を保持する。これにより、ウェーハ11の表面11a側に密着している保護フィルム21がシート25上の液状樹脂27に対面する。
【0049】
この液状樹脂27としては、例えば、紫外線光源26から放射される紫外線によって硬化する硬化型の液状樹脂が用いられる。具体的には、例えば、デンカ株式会社製のTEMPLOC(登録商標)等を用いることができる。なお、本実施形態では、液状樹脂27が上面に塗布された状態のシート25を保持テーブル24によって保持しているが、シート25を保持テーブル24によって保持してから、シート25の上面に液状樹脂27を塗布しても良い。また、液状樹脂27は、完全に平坦ではなく、中央部が僅かに盛り上がった形状に塗布されることが望ましい。
【0050】
次に、ウェーハ保持ユニット34を下降させ、
図4(B)に示すように、保護フィルム21を介してウェーハ11の表面11a側を液状樹脂27に押し当てる。これにより、液状樹脂27は、ウェーハ11の径方向に広がるとともに、保護フィルム21を被覆する。なお、本実施形態では、ウェーハ11の表面11a側の全体が液状樹脂27によって覆われるように、液状樹脂27の塗布量やウェーハ保持ユニット34の下降量等を調整する。
【0051】
その後、紫外線光源26から紫外線を放射させて、液状樹脂27を硬化させる。これにより、
図4(C)に示すように、液状樹脂27からなり保護フィルム21を被覆する保護部材29をウェーハ11の表面11a側に固定し、ウェーハ11の表面11a側が保護部材29によって覆われた保護部材付きウェーハを形成できる。
【0052】
保護部材付きウェーハ形成ステップの後には、ウェーハ11の裏面11bを研削する研削ステップを行う。
図5(A)は、ウェーハ11の裏面11bが研削される様子を模式的に示す断面図であり、
図5(B)は、研削された後のウェーハ11を模式的に示す断面図である。
【0053】
研削ステップは、例えば、
図5(A)に示す研削装置42を用いて行われる。研削装置42は、ウェーハ11を吸引、保持するための保持テーブル(チャックテーブル)44を備えている。保持テーブル44は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。また、保持テーブル44の下方には、移動機構(不図示)が設けられており、保持テーブル44は、この移動機構によって水平方向に移動する。
【0054】
保持テーブル44の上面の一部は、保護部材29を介してウェーハ11に固定されたシート25を吸引、保持する保持面44aになっている。保持面44aは、保持テーブル44の内部に形成された吸気路(不図示)等を介して吸引源(不図示)に接続されている。吸引源の負圧を保持面44aに作用させることで、ウェーハ11は、シート25及び保護部材29を介して保持テーブル44に保持される。
【0055】
保持テーブル44の上方には、研削ユニット46が配置されている。研削ユニット46は、昇降機構(不図示)によって支持されたスピンドルハウジング(不図示)を備えている。スピンドルハウジングには、スピンドル48が収容されており、スピンドル48の下端部には、円盤状のマウント50が固定されている。
【0056】
マウント50の下面には、マウント50と概ね同径の研削ホイール52が装着されている。研削ホイール52は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成されたホイール基台54を備えている。ホイール基台54の下面には、複数の研削砥石56が環状に配列されている。
【0057】
スピンドル48の上端側(基端側)には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、研削ホイール52は、この回転駆動源から発生する力によって、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りに回転する。研削ユニット46の内部又は近傍には、純水等の研削液をウェーハ11等に対して供給するためのノズル(不図示)が設けられている。
【0058】
研削ステップでは、まず、ウェーハ11を、研削装置42の保持テーブル44に吸引、保持させる。具体的には、保護部材29を介してウェーハ11に固定されているシート25を保持テーブル44の保持面44aに接触させて、吸引源の負圧を作用させる。これにより、ウェーハ11は、裏面11b側が上方に露出した状態で保持テーブル44に保持される。
【0059】
次に、保持テーブル44を研削ユニット46の下方に移動させる。そして、
図5(A)に示すように、保持テーブル44と研削ホイール52とをそれぞれ回転させて、研削液をウェーハ11の裏面11b等に供給しながらスピンドルハウジング(スピンドル48、研削ホイール52)を下降させる。
【0060】
スピンドルハウジングの下降速度(下降量)は、研削砥石56の下面が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調整される。これにより、裏面11b側を研削してウェーハ11を薄くできる。
図5(B)に示すように、ウェーハ11が所定の厚み(仕上げ厚み)まで薄くなると、研削ステップは終了する。
【0061】
なお、本実施形態では、1組の研削ユニット46を用いてウェーハ11の裏面11b側を研削しているが、2組以上の研削ユニットを用いてウェーハ11を研削しても良い。この場合には、例えば、径が大きい砥粒で構成された研削砥石を用いて粗い研削を行い、径が小さい砥粒で構成された研削砥石を用いて仕上げの研削を行うことで、研削に要する時間を大幅に長くすることなく裏面11bの平坦性を高められる。
【0062】
研削ステップの後には、薄くなったウェーハ11から保護フィルム21や保護部材29等を剥離する剥離ステップを行う。
図6は、ウェーハ11から保護フィルム21や保護部材29等が剥離される様子を模式的に示す断面図である。
【0063】
この剥離ステップでは、まず、ウェーハ保持ユニット62の保持面62aでウェーハ11の裏面11b側を吸引、保持する。ウェーハ保持ユニット62としては、例えば、負圧を利用してウェーハ11を吸引、保持する真空吸引型のウェーハ保持ユニットや、静電気の力を利用してウェーハ11を吸引、保持する静電吸着型のウェーハ保持ユニット等を用いることができる。
【0064】
ウェーハ保持ユニット62でウェーハ11を吸引、保持した後には、剥離ユニット64でシート25の端部を把持する。そして、シート25の端部側をウェーハ11から引き剥がすように、ウェーハ保持ユニット62と剥離ユニット64とを相対的に移動させる。これにより、
図6に示すように、ウェーハ11から、保護フィルム21、シート25及び保護部材29をまとめて剥離できる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、バンプ(凹凸)17のあるデバイス15が形成されたウェーハ11の表面11a側に、このバンプ17の形状に合わせて(倣って)保護フィルム21を密着させた後に、紫外線(外的刺激)によって硬化する硬化型の液状樹脂27からなる保護部材29で保護フィルム21を被覆し、ウェーハ11の表面11a側が保護部材29で覆われた保護部材付きウェーハを形成するので、保護部材29を適切な厚みに形成することで、表面11a側のバンプ17による凹凸を十分に緩和できる。
【0066】
また、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、保護フィルム21がデバイス領域11dに密着しているだけで接着されていないので、溶液への浸漬や高温の加熱といった剥離のためだけの大掛かりな作業を行わなくても、ウェーハ11から保護部材29及び保護フィルム21を剥離できる。このように、本実施形態によれば、ウェーハ11の裏面11b側を研削する際に、表面11a側に存在するバンプ17による凹凸の影響を十分に抑制でき、研削後の処理も簡単なウェーハの加工方法が提供される。
【0067】
更に、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、ウェーハ11の表面11aに供給された液体23を介して保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に押し当てるので、ウェーハ11と保護フィルム21との間にエアーが残留するのを防いで、保護フィルム21を確実に密着させることができる。よって、接着剤(糊)による接着力がない保護フィルム21を用いても、研削等の際にウェーハ11から保護フィルム21及び保護部材29が剥離してしまうことはない。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、液状樹脂27として、紫外線によって硬化する硬化型の樹脂を用いているが、紫外線以外の外的な刺激(例えば、熱等)によって硬化する硬化型の液状樹脂を用いることもできる。
【0069】
また、上記実施形態では、ウェーハ11と同等の径(直径)を持つ円盤状の保護フィルム21を用いているが、保護フィルム21の径は、ウェーハ11の径より小さくても良い。例えば、保護フィルム21は、デバイス領域11dに対応した径を持つ円盤状に形成されていても良い。この場合には、ウェーハ11の外周余剰領域11eに液状樹脂27からなる保護部材29が密着するので、接着剤(糊)による接着力がない保護フィルム21を用いても、保護フィルム21及び保護部材29をウェーハ11に強く固定できる。
【0070】
また、上記実施形態では、シート25に塗布された液状樹脂27に保護フィルム21を介してウェーハ11を押し当てる方法で保護部材29をウェーハ11に固定しているが、シート25を使用せずにウェーハや保護フィルムに対して液状樹脂を滴下する方法で保護部材をウェーハに固定しても良い。この場合には、サーフェースプレーナー等を用いて保護部材の表面を平坦化することが望ましい。このように、ウェーハを研削する際に保持される保護部材の表面を平坦化することで、被研削面であるウェーハの裏面を研削して平坦にできる。
【0071】
また、上記実施形態では、保護フィルム21を熱によって軟化させた状態でウェーハ11に密着させているが、必ずしも保護フィルム21を軟化させた状態でウェーハ11に密着させる必要はない。また、ヒーター20による加熱とは別の方法で保護フィルム21を軟化させても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、シート25の端部を把持してウェーハ11から単純に引き剥がす方法で、保護フィルム21、シート25及び保護部材29を剥離しているが、別の方法で、保護フィルム21、シート25及び保護部材29を剥離しても良い。
図7は、第1変形例に係るウェーハの加工方法の剥離ステップでウェーハ11から保護フィルム21や保護部材29等が剥離される様子を模式的に示す断面図である。なお、剥離ステップ以外の各ステップは、上記実施形態と同じで良い。
【0073】
第1変形例に係る剥離ステップでは、
図7に示すように、まず、ウェーハ保持ユニット62の保持面62aでウェーハ11の裏面11b側を吸引、保持する。ウェーハ保持ユニット62としては、例えば、負圧を利用してウェーハ11を吸引、保持する真空吸引型のウェーハ保持ユニットや、静電気の力を利用してウェーハ11を吸引、保持する静電吸着型のウェーハ保持ユニット等を用いることができる。なお、この第1変形例に係る剥離ステップでは、内部にヒーター66を備えるウェーハ保持ユニット62が用いられる。
【0074】
ウェーハ保持ユニット62でウェーハ11を吸引、保持した後には、剥離ユニット64でシート25の端部を把持する。そして、シート25の端部側をウェーハ11から引き剥がすように、ウェーハ保持ユニット62と剥離ユニット64とを相対的に移動させる。この時、保護フィルム21とウェーハ11との間に残留する液体23をヒーター66で加熱して気化させる。これにより、
図7に示すように、ウェーハ11から、保護フィルム21、シート25及び保護部材29をまとめて剥離できる。
【0075】
この第1変形例に係るウェーハの加工方法では、保護フィルム21とウェーハ11との間に残留する液体23をヒーター66で加熱して気化させるので、保護フィルム21を剥離し易くなる。
【0076】
図8は、第2変形例に係るウェーハの加工方法の剥離ステップでウェーハ11から保護フィルム21や保護部材29等が剥離される様子を模式的に示す断面図である。なお、剥離ステップ以外の各ステップは、上記実施形態と同じで良い。
【0077】
第2変形例に係る剥離ステップは、例えば、
図8に示すような減圧チャンバ72を用いて行われる。減圧チャンバ72は、例えば、ウェーハ11を通過させることのできる大きさの開口を有する箱体72aと、箱体72aの開口を閉じるための扉体72bとを備えている。箱体72aには、排気管74やバルブ76等を介して吸引源(不図示)が接続されている。また、箱体72aには、エアー(大気)を吸引するための吸気管78やバルブ80が接続されている。
【0078】
扉体72bには、上下に貫通する開口部72cが形成されている。この開口部72cには、気密性の高い軸受82等を介してウェーハ保持ユニット84が挿入、支持されている。ウェーハ保持ユニット84は、ウェーハ11よりも径が大きく概ね平坦な下面84aを有している。
【0079】
ウェーハ保持ユニット84としては、例えば、静電気の力を利用してウェーハ11を吸引、保持する静電吸着型のウェーハ保持ユニットを用いることができる。また、このウェーハ保持ユニット84の内部には、ヒーター86が設けられている。ウェーハ保持ユニット84の近傍には、剥離ユニット88が配置されている。
【0080】
第2変形例に係る剥離ステップでは、まず、ウェーハ保持ユニット84の保持面84aでウェーハ11の裏面11b側を吸引、保持する。そして、
図8に示すように、扉体72bを閉めてバルブ80を閉じ、更に、バルブ76を開くことで、減圧チャンバ72の内側の空間を減圧する。
【0081】
減圧チャンバ72の内側の空間を減圧した後には、剥離ユニット88でシート25の端部を把持する。そして、シート25の端部側をウェーハ11から引き剥がすように、ウェーハ保持ユニット84と剥離ユニット88とを相対的に移動させる。この時、保護フィルム21とウェーハ11との間に残留する液体23をヒーター86で加熱して気化させても良い。これにより、
図8に示すように、ウェーハ11から、保護フィルム21、シート25及び保護部材29をまとめて剥離できる。
【0082】
この第2変形例に係るウェーハの加工方法では、保護フィルム21を減圧下でウェーハ11から剥離するので、保護フィルム21とウェーハ11との間に残留する液体23が気化して保護フィルム21を剥離し易くなる。
【0083】
また、上記実施形態では、エアーを噴射する方法で、保護フィルム21をウェーハ11に密着させているが、別の方法で、保護フィルム21をウェーハ11に密着させても良い。
図9(A)及び
図9(B)は、第3変形例に係るウェーハの加工方法の保護フィルム密着ステップについて説明するための模式的な断面図である。
【0084】
この第3変形例に係るウェーハの加工方法の液体供給ステップでは、少なくとも、保護フィルム21とウェーハ11との密着を開始させる領域に液体23を供給しておくことが望ましい。これにより、ウェーハ11と保護フィルム21との間にエアーが残留するのを防いで、保護フィルム21を確実に密着させることができるようになる。なお、液体供給ステップ及び保護フィルム密着ステップ以外の各ステップは、上記実施形態や変形例と同じで良い。
【0085】
第3変形例に係る保護フィルム密着ステップでは、まず、ウェーハ11の裏面11b側を保持テーブル92の保持面92aで保持する。保持テーブル92の基本的な構成は、保持テーブル44等の構成と同じで良い。ただし、この保持テーブル92の内部には、加熱用のヒーター94が設けられている。
【0086】
次に、シート(離型シート)31の下面側で保持された状態の保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に対面させて、ローラー96で離型シート31の上面側を下方に向けて押す。この時、ヒーター94で保護フィルム21を加熱し、軟化させると良い。これにより、液体23を介して保護フィルム21をウェーハ11の表面11a側に重ねて、密着させることができる。なお、このローラー96を用いる保護フィルム密着ステップは、減圧チャンバ内で行われても良い。
【0087】
その他、上記実施形態及び変形例に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。