特許第6837859号(P6837859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000002
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000003
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000004
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000005
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000006
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000007
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000008
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000009
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000010
  • 特許6837859-ウエーハの加工方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6837859
(24)【登録日】2021年2月15日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20210222BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20210222BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20210222BHJP
   B24B 57/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
   B24B55/06
   B24B57/02
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-24829(P2017-24829)
(22)【出願日】2017年2月14日
(65)【公開番号】特開2018-133387(P2018-133387A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
(72)【発明者】
【氏名】原田 成規
(72)【発明者】
【氏名】石川 泉季
(72)【発明者】
【氏名】井上 高明
【審査官】 三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−123738(JP,A)
【文献】 特開2015−082646(JP,A)
【文献】 特開平02−215505(JP,A)
【文献】 特開2006−187834(JP,A)
【文献】 特開2016−159376(JP,A)
【文献】 特開2015−139860(JP,A)
【文献】 特開平11−300184(JP,A)
【文献】 特開2001−030170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 55/06
B24B 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、切削ブレードを用いて該分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法であって、
該切削ブレードは、ブレードカバーによって覆われ、
該ブレードカバーは、底部に該切削ブレードの先端を突出させるスリット状の開口部と、切削水を該切削ブレードに供給する切削水噴出口と、該切削水を排出する排出手段と、を少なくとも備え、
切削装置に備えるチャックテーブルにダイシングテープを介してウエーハを保持する保持ステップと、
該切削ブレードでウエーハを該分割予定ラインに沿って切削する分割ステップと、を備え、
該分割ステップでは、該開口部から該切削ブレードの先端を突出させ、ウエーハの表面には純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水を供給し、切削ブレードには該純水または該洗浄水よりも低い濃度の二酸化炭素を混合させた純水からなる切削水を供給し、該排出手段によって該切削水を該ブレードカバーの外側に排出し、ウエーハの表面に供給された該洗浄水により該切削水がウエーハの表面に接触するのを遮るとともに該切削ブレードに供給された切削水により該洗浄水が該切削ブレードに接触するのを遮る
ことを特徴とするウエーハの加工方法。
【請求項2】
前記洗浄水は、前記チャックテーブルの移動経路に交差する方向に配設されるノズルによってウエーハの表面に供給されることを特徴とする請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを個々のデバイスに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置において、切削ブレードによってウエーハを切削する際に使用される切削水、洗浄水として純水を用いると、抵抗率(比抵抗値)が高くウエーハに静電気が生じやすいことから、通常は、純水と二酸化炭素とを混合させて純水よりも抵抗率を小さくした混合水が用いられる。この混合水は、適宜の混合装置を用いて純水と二酸化炭素との流量を制御して混合比率が調整されて生成されるもので、静電気が生じない程度の抵抗率の混合水を生成してウエーハと切削ブレードとの接触部位に供給することによって、分割時にウエーハに静電気が生ずるのを防止することができる(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−300184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような混合装置を用いて、二酸化炭素を純水に混合させ静電気が生じない程度の抵抗率の混合水を生成し、これを切削水、洗浄水として使用する場合、混合水中の二酸化炭素の濃度が高くなり、混合水の酸性が強くなって切削ブレードの基台部分(金属)を腐食させたり、切削ブレードが溶けて摩耗量が多くなったりするという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、切削ブレードの腐食することや摩耗することを防ぐとともに、デバイ
スの静電破壊の発生を防止することができるウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された複数の領域にデバイスが形成されたウエーハを、切削ブレードを用いて該分割予定ラインに沿って分割するウエーハの加工方法であって、該切削ブレードは、ブレードカバーによって覆われ、該ブレードカバーは、底部に該切削ブレードの先端を突出させるスリット状の開口部と、切削水を該切削ブレードに供給する切削水噴出口と、該切削水を排出する排出手段と、を少なくとも備え、切削装置に備えるチャックテーブルにダイシングテープを介してウエーハを保持する保持ステップと、切削ブレードでウエーハを該分割予定ラインに沿って切削する分割ステップと、を備え、該分割ステップでは、該開口部から該切削ブレードの先端を突出させ、ウエーハの表面には純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水を供給し、切削ブレードには該純水または該洗浄水よりも低い濃度で二酸化炭素を混合させた純水からなる切削水を供給し、該排出手段によって該切削水を該ブレードカバーの外側に排出し、ウエーハの表面に供給された該洗浄水により該切削水がウエーハの表面に接触するのを遮るとともに該切削ブレードに供給された切削水により該洗浄水が該切削ブレードに接触するのを遮ることを特徴とする。
【0007】
上記洗浄水は、上記チャックテーブルの移動経路に交差する方向に配設されるノズルによってウエーハの表面に供給されることが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウエーハの加工方法は、切削装置に備えるチャックテーブルにダイシングテープを介してウエーハを保持する保持ステップと、切削ブレードでウエーハを該分割予定ラインに沿って切削する分割ステップとを備え、分割ステップでは、ウエーハの表面には純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水を供給し、切削ブレードには該純水または該洗浄水よりも低い濃度の二酸化炭素を混合させた純水からなる切削水を供給するように構成したため、ウエーハの表面に供給された洗浄水により切削水がウエーハの表面に接触するのを遮るとともに切削ブレードに供給された切削水により洗浄水が切削ブレードに接触するのを遮って、ウエーハの切削中は常に洗浄水と混合水とが互いに遮断し合う状態となる。これにより、洗浄水が切削ブレードに接触して切削ブレードが腐食したり過度に摩耗したりするのを防止することができるとともに、切削水がウエーハの表面に接触してデバイスの静電破壊を起こすことを防止することができる。
【0009】
上記切削ブレードは、ブレードカバーによって覆われ、ブレードカバーは、底部に切削ブレードの先端を突出させるスリット状の開口部と、上記切削水を切削ブレードに供給する切削水噴出口と、切削水を排出する排出手段と、を少なくとも備えているため、上記分割ステップを実施する際に、切削ブレードに向けて供給された切削水がブレードカバーの外側へ排出され切削水がウエーハの表面に接触するのを極力防ぐことができる。また、切削ブレードは、開口部のみから先端を突出させて切削ブレードを挟み込むようにブレードカバーで覆われていることから、切削ブレードの露出部分が小さくなり、ウエーハに供給された洗浄水が切削ブレードに接触するのを極力防ぐことができる。
【0010】
上記洗浄水は、上記分割ステップを実施する際に、上記チャックテーブルの移動経路に交差する方向に配設されるノズルによってウエーハの表面に供給されるため、コンタミなどの切削屑が混入した切削水をウエーハの全面から効率よく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】切削装置の一例の構成を示す斜視図である。
図2】洗浄水供給手段の構成を示す斜視図である。
図3】切削手段の構成を示す斜視図である。
図4】ブレードカバーの構成を示す斜視図である。
図5】ブレードカバーの構成を示す底面図である。
図6】ブレードカバーの構成を示す図5のA−A線断面図である。
図7】ブレードカバーの構成を示す図5のB−B線断面図である。
図8】ブレードカバーの構成を示す図5のC−C線断面図である。
図9】混合水生成装置の構成の一例を示す説明図である。
図10】ウエーハの切削加工の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1 切削装置
図1に示す切削装置1は、被加工物であるウエーハWに切削を施す切削装置の一例である。切削装置1は、装置ベース2を有しており、装置ベース2の前部には、複数の被加工物であるウエーハWを収容するカセット3が配設されている。装置ベース2の上面2aには、カセット3から切削前のウエーハWを搬出するとともにカセット3に切削後のウエーハWを搬入する搬入出手段4と、ウエーハWが仮置きされる仮置き領域5と、ウエーハWを保持するチャックテーブル7とが配設されている。カセット3の近傍には、仮置き領域5とチャックテーブル7との間でウエーハWを搬送する第1の搬送手段6aが配設されている。
【0013】
チャックテーブル7の上面は、ウエーハWを吸引保持する保持面7aとなっている。チャックテーブル7には、図示しない吸引源に接続され保持面7aでウエーハWを吸引保持することができる。また、チャックテーブル7には、環状のフレームFを保持する複数(図示の例では4つ)のクランプ部7bが配設されている。チャックテーブル7の周囲は、移動基台8によってカバーされており、チャックテーブル7は、移動基台8とともに装置ベース2の内部に配設された切削送り手段9によって駆動されて切削送り方向(X軸方向)に移動することができる。図1に示すチャックテーブル7が位置している領域は、チャックテーブル7に対するウエーハWの搬入または搬出が行われる搬入出領域P1となっている。
【0014】
切削装置1は、チャックテーブル7の移動経路の方向である切削送り方向(X軸方向)と交差する方向(Y軸方向)に配設されウエーハWに洗浄水を供給する洗浄水供給手段10と、チャックテーブル7の保持面7aに保持されたウエーハWに切削加工を行う切削手段20とが配設されている。図1に示す切削手段20が配設された領域は、ウエーハWに対して切削を行う切削領域P2となっている。
【0015】
装置ベース2の中央には、搬入出領域P1に位置づけられたチャックテーブル7から切削後のウエーハWの洗浄を行う洗浄領域P3に切削後のウエーハWを搬送する第2の搬送手段6bが配設されている。
【0016】
洗浄水供給手段10は、装置ベース2から立設された一対の支持片11と、支持片11によって回転可能に支持されたノズル12とを備えている。ノズル12は、チャックテーブル7の移動方向と交差する交差方向(Y軸方向)を長手方向としており、図2に示すように、その一端部にはツマミ13が形成され、他端部には固定接続部14が連結されている。
【0017】
各支持片11にはY軸方向に貫通する貫通孔16が形成されており、一方の支持片11の貫通孔16にはノズル12の一端側が回転可能に挿通され、他方の支持片11の貫通孔16には固定接続部14が固定されて挿通されている。ノズル12は、固定接続部14に対して回転可能に連結されており、ツマミ13を回すことにより、Y軸方向の回転軸を中心としてノズル12を回転させることができる。
【0018】
ノズル12には、例えば混合水生成装置50において純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水をチャックテーブル7に保持されたウエーハWに向けて噴出させる複数の洗浄水噴出口17が形成されている。複数の洗浄水噴出口17は、ノズル12の長手方向に沿って整列している。洗浄水噴出口17は、固定接続部14に形成された流体供給孔15を介して混合水生成装置50に接続されている。ツマミ13を回してノズル12を回転させることにより、洗浄水噴出口17を所望の方向に向かせることができる。なお、洗浄水噴出口17が形成される位置や数は、本実施形態に示す構成に限られない。したがって、切削対象となるウエーハWのサイズ(直径)に応じて、ノズル12の周面において複数形成されていればよい。
【0019】
図3に示すように、切削手段20は、ウエーハWを切削する切削ブレード21と、切削ブレード21を回転可能に支持するスピンドルユニット22とを少なくとも備えている。スピンドルユニット22は、切削ブレード21が装着され回転可能なスピンドル220と、スピンドル220を回転可能に囲繞するスピンドルハウジング221とを少なくとも有しており、図示しないモータによってスピンドル220を回転させることにより、切削ブレード21を所定の回転速度で回転させることができる。切削ブレード21の構成は特に限定されないが、例えば砥粒をニッケルメッキで固めた電鋳ブレードによって構成される。
【0020】
切削ブレード21は、中央に開口部を有するハブ基台ボス部210とこれに連接したハブ基台テーパー部211の外周部212に切り刃213が装着されて構成されている。この切削ブレード21は、マウント固定ナット214によってスピンドル220と一体化した状態で固定される。
【0021】
切削ブレード21は、図4に示すブレードカバー30によって回転可能に覆われている。ブレードカバー30は、切削ブレード21を覆う箱状のカバー本体300を有している。図4の例におけるカバー本体300は、スピンドルハウジング221に取り付けられる後部側カバー300aと、後部側カバー300aに対面して取り付けられる前部側カバー300bとから構成されている。ブレードカバー30には、切削ブレード21に対して切削水を供給する切削水供給手段40が配設され、切削水供給手段40は混合水生成装置50に接続されている。
【0022】
ブレードカバー30の具体的な構成について説明する。図5に示すように、カバー本体300の底部301には、図3で示した切削ブレード21の切り刃213の厚さ方向に所定の幅Lを有し、切削ブレード21の先端を突出させるスリット状の開口部31が形成されている。カバー本体300の内部に切削ブレード21を収容すると、開口部31から切り刃213の刃先213aが僅かに突出するようになっている。開口部31の幅Lは、切り刃213の先端形状よりも僅かに大きい幅を有してればよく、例えば1mm以下の幅となっている。
【0023】
カバー本体300の底部301には、開口部31に連通してエアー取り込み路32が形成されている。エアー取り込み路32は、切削ブレード21の回転方向と逆方向側(上流側)にブレードカバー30の外側にむけて伸張しており、図4で示したカバー本体300の底部301の一端に至るまで形成されている。すなわち、エアー取り込み路32は、底部301の一端において開口している。
【0024】
図6に示すように、カバー本体300の内部には、一端が開口部31に連通するとともに他端が排出口35を介して吸引源37に連通する排出路34が形成されている。排出路34は、カバー本体300の底部301に対して傾斜を設けて図3で示した切削ブレード21の回転方向における先頭側に形成されている。排出路34の吸引源37側の先端には
パイプからなる排出手段36が挿入されており、その排出手段36の露出部分がカバー本体300の外側に突出している。排出路34に排出手段36が挿入されていることにより、図4に示した後部側カバー300aと前部側カバー300bとの合わせ面からエアーが漏れて吸引圧力が低下するのを防止している。
【0025】
開口部31の一端で、かつ排出路34の延長線上には吸引開口部33が形成されている。吸引開口部33は、図5に示す開口部31の幅Lよりも広い幅を有している。図5の例における吸引開口部33は楕円形に形成されているが、この形状には限定されない。このように、開口部31の一端に幅広の吸引開口部33を形成することにより、切削時に使用される切削水を排出路34に効率よく取り込むことができる。
【0026】
図7に示すように、切削手段20を構成するスピンドル220の先端にはマウントフランジ215が連結されている。切削ブレード21は、マウントフランジ215に装着されるとともに、マウントフランジ215とマウントフランジ215の先端に螺着したマウント固定ナット214とによって挟持されている。一方、カバー本体300の中央には、スピンドル220をカバー本体300の内部に挿入させるスピンドル用挿入孔38が形成されている。また、カバー本体300には、スピンドル用挿入孔38に連通してマウントフランジ収容部39が形成されている。マウントフランジ収容部39は、スピンドル220の先端に連結されたマウントフランジ215と、マウント固定ナット214によってマウントフランジ215に固定された切削ブレード21とを収容できるスペースを有している。このようにブレードカバー30は、カバー本体300の内部において、ウエーハWに接触する切削ブレード21の切り刃213の一部分だけを開口部31から突出させ、突出部分以外の切削ブレード21を覆うようにして収容できる構成となっている。
【0027】
図8に示すように、切削水供給手段40は、カバー本体300の側部に取り付けられた供給部41と、カバー本体300の底部301に形成された複数の切削水噴出口42と、一端が切削水噴出口42に接続されるとともに他端が供給部41を介して混合水生成装置50に接続された切削水供給路43とを備えている。
【0028】
複数の切削水噴出口42は、図5に示す開口部31の伸張方向と平行に一直線上に整列し、当該一直線上に複数の切削水噴出口42が整列した部分が切削水供給領域45a、45bとして構成されている。この切削水供給領域45a、45bは、カバー本体300の底部301において開口部31を挟んで少なくとも2つ形成されている。なお、切削水噴出口42の個数や形状は特に限定されるものではない。また、切削水供給領域45a,45bは、2組以上配設されていてもよい。
【0029】
切削水供給路43には、カバー本体300の内部を紙面垂直方向にのびるとともに、図5に示すカバー本体300の底部301に形成された2つの切削水供給領域45a、45bのそれぞれに向けて切削水を供給するための接続供給路44が接続されている。図4で示されているように、供給部41を後部側カバー300aに配設して、混合水生成装置50からブレードカバー30への外配管を1箇所とすることで、例えば切削ブレード21を交換するにあたって前部側カバー300bを取り外す際に前部側カバー300bには外配管がないため、切削ブレード21の交換の作業性が良好となる。
【0030】
次に、混合水生成装置50の具体的な構成について説明する。図9に示すように、混合水生成装置50は、純水が蓄えられた純水供給源51と、純水供給源51から2本に分岐した第一の供給経路52と第二の供給経路53とを備えている。第一の供給経路52には、純水供給源51から送出される純水と二酸化炭素(炭酸ガス)とを混合させる第一の混合手段54が配設されており、純水供給源51と第一の混合手段54との間には、所望の濃度に混合した洗浄水の逆流を防止するためのキャッチ弁55が介在している。
【0031】
第一の混合手段54において混合する二酸化炭素は、タンク56に蓄えられており、タンク56は、ストップ弁57、ガス流量調整弁58、キャッチ弁59を介して第一の混合手段54に接続されている。ガス流量調整弁58により二酸化炭素の流量を調整しながら二酸化炭素を第一の混合手段54に供給することで、第一の混合手段54において所望の濃度の二酸化炭素が純水に混合された混合水を生成することができる。
【0032】
第一の混合手段54は、フィルタ60、第一の濃度測定手段61、貯水タンク62、第一の流量調整弁63を介して洗浄水噴出口17に接続されている。第一の混合手段54において混合された混合水は、フィルタ60によってゴミ等が取り除かれてから第一の濃度測定手段61によって二酸化炭素の濃度が測定される。測定された混合水が所望の濃度に達していると確認されたら、貯水タンク62に貯水される。そして、第一の流量調整弁63は、混合水を所望の流量に調整して、洗浄水として洗浄水噴出口17へ送出することができる。
【0033】
第二の供給経路53には、純水供給源51から送出される純水と貯水タンク62に貯水された混合水とを混同させる第二の混合手段64が配設されている。純水供給源51と第二の混合手段64との間には、純水の逆流を防止するためのキャッチ弁65、純水の流量を調整する第二の流量調整弁66が介在している。また、貯水タンク62と第二の混合手段64との間には、混合水の流量を調整する第三の流量調整弁67が介在している。
【0034】
第二の混合手段64は、第二の濃度測定手段68、第四の流量調整弁69を介して切削水噴出口42に接続されている。第二の混合手段64では、第二の供給経路53を通じて第二の混合手段64に送出される純水と、貯水タンク62から第二の混合手段64に送出される混合水とを混合させることにより、純水または上記洗浄水よりも二酸化炭素の濃度が低い混合水を生成することができる。第二の混合手段64おいて混合された混合水は、第二の濃度測定手段68によって二酸化炭素の濃度が測定され、所望の濃度に達していたら、第四の流量調整弁69は混合水を所望の流量に調整して、切削水として切削水噴出口42へ送出することができる。
【0035】
2 ウエーハの加工方法
次に、切削装置1を用いて、図1に示すウエーハWを切削して個々のデバイスDに分割するウエーハの加工方法について説明する。ウエーハWは、円形板状の被加工物の一例であって、例えばシリコンウエーハである。ウエーハWの表面Waには、格子状に形成された複数の分割予定ラインSによって区画された複数の領域にデバイスDが形成されている。ウエーハWの表面Waと反対側にある裏面Wbは、例えばダイシングテープTに貼着される。そして、ウエーハWは、ダイシングテープTを介して環状のフレームFと一体となっており、この状態でカセット3に複数収容されている。
【0036】
(1)保持ステップ
まず、搬入出手段4は、ダイシングテープTを介してフレームFと一体となったウエーハWをカセット3から引き出して仮置き領域5に仮置きする。次いで、第1の搬送手段6aが、仮置き領域5に仮置きされたウエーハWを搬出し、ダイシングテープT側から搬入出領域P1で待機するチャックテーブル7の保持面7aに載置する。そして、図示しない吸引源の吸引力の作用を受けた保持面7aにおいてウエーハWを吸引保持するとともに、クランプ部7bによってフレームFを固定する。
【0037】
(2)分割ステップ
次に、切削送り手段9によってチャックテーブル7を切削領域P2に向けて移動させる。ブレードカバー30が装着された切削手段20の下方にチャックテーブル7が移動して
きたら、図3で示したスピンドル220が回転し、切削ブレード21を所定の回転速度で回転させるとともに、切削手段20をZ軸方向に下降させ、切削ブレード21の切り刃213によってウエーハWの表面Waに対して切削を行う。
【0038】
図10は、切削ブレード21によってウエーハWを切削加工している状態を示している。分割ステップでは、図9で示した混合水生成装置50で所望の混合水(洗浄水及び切削水)を生成しておき、洗浄水供給手段10によってウエーハWの表面Waには純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水70を供給し、図8で示した切削水供給手段40によって切削ブレード21には純水または洗浄水70よりも低い濃度の二酸化炭素を混合させた純水からなる切削水71を供給する。
【0039】
混合水生成装置50において、所望の混合水を生成する流れについて説明する。本実施形態では、純水供給源51に蓄えられている純水の抵抗率としては、例えば1〜18MΩ・cmとなっているものとする。第一の混合手段54では、純水供給源51から第一の混合手段54に送出された純水と、タンク56からガス流量調整弁58によって所望の流量に調整され第一の混合手段54に送出された二酸化炭素とを混合させることにより、所望の混合水を生成する。ここで、混合水の抵抗率を小さくするほど導電性が高くなるとともに二酸化炭素の濃度が高くなる。つまり、二酸化炭素が混合された洗浄水70によってウエーハWに静電気を生じさせないためには、洗浄水70の抵抗率を純水よりも小さくすることが好ましく、例えば0.1MΩ・cmに設定される。第一の混合手段54によって生成された混同水は、フィルタ60を通過する際に不純物が取り除かれた後、第一の濃度測定手段61によって二酸化炭素の濃度が測定され所望の値に達していたら、混合水は貯水タンク62に貯水されて洗浄水70として利用することが可能となる。
【0040】
一方、第二の混合手段64では、純水供給源51から第二の混合手段64に送出された純水と、貯水タンク62から第二の混合手段64に送出された混合水とを所定の割合で混合することにより、洗浄水70よりも二酸化炭素の濃度が低い混合水を生成する。ここで、混合水の抵抗率を大きくするほど導電性が低くなるとともに二酸化炭素の濃度が低くなる。つまり、二酸化炭素が混合された切削水71の酸性が増すのを抑えるためには、切削水71の抵抗率を少なくとも洗浄水70よりも大きくすることが好ましく、例えば0.6MΩ・cmに設定される。第二の混合手段64によって混合された混合水は、第二の濃度測定手段68によって二酸化炭素の濃度が測定され所望の値に達していたら、切削水71として利用することが可能となる。また、純水供給源51から送出される純水を切削水71として用いてもよい。
【0041】
上記した第一の濃度測定手段61及び第二の濃度測定手段68の構成は特に限定されないが、例えば比抵抗値測定器を用いて、所望の抵抗率に基づき、切削中に使用される洗浄水70や切削水71の二酸化炭素の濃度を管理することが好ましい。もっとも、加工対象となるウエーハWの材質や使用される切削ブレード21の材質に応じて、洗浄水70や切削水71の抵抗率を適宜変更して、最適な濃度の二酸化炭素を混合させた混合水を生成するとよい。
【0042】
図8で示した切削水供給手段40は、回転する切削ブレード21に向けて切削水71を直接供給しないが、図5で示した複数の切削水噴出口42から構成される一対の切削水供給領域45a、45bにおいて切削水71をウエーハWの表面Waに供給するとともに、図10に示す吸引源37の吸引力が排出路34及び吸引開口部33で作用することにより、切削水71が開口部31及び吸引開口部33に向けて流れるため、切削ブレード21とウエーハWとが接触する部分(加工点)に切削水71を集め、その部分を冷却することができる。そして、吸引源37の吸引力によって、吸引開口部33に集まった切削水71を排出路34に吸引し、排出口35からブレードカバー30の外側に排出することができる
【0043】
切削手段20に対してウエーハWをX軸方向に相対移動させながら切り刃213によってウエーハWの表面Waを切削する際、ウエーハWの表面Waに供給され溜まった切削水71は、ブレードカバー30の内部で回転する切り刃213の回転に伴って連れ回り、その回転方向に流れやすくなる。そのため、切削時に発生する切削屑46を含んだ切削水71は、開口部31及び吸引開口部33を介して排出路34に取り込まれやすい。このとき、エアー取り込み路32からブレードカバー30の内部において回転する切り刃213に向けてエアーが取り込まれるため、吸引源37の吸引力が排出路34で安定して作用し、切削水71を排出路34に確実に吸引することができる。
【0044】
さらに、ウエーハWの表面Waに供給される切削水71の流量が多くなっても、吸引開口部33で効率よく吸引することができる。また、切削屑46が図5に示す開口部31の幅Lよりも大きい場合であっても、吸引開口部33を通過できる大きさであれば、開口部31にコンタミなどの切削屑46が挟まってしまうことを防止できる。このようにして、切削中に発生する切削屑46は切削水71とともに排出口35を通じてブレードカバー30の外部へ排出される。洗浄水70は、図1に示したチャックテーブル7の移動経路に交差する方向(Y軸方向)に配設されたノズル12からウエーハWの表面Waに供給されるため、切削屑46が混入した切削水71をウエーハWの表面Wa全面から効率よく除去することができる。
【0045】
ウエーハWの切削中は、図10に示すように、ノズル12の洗浄水噴出口17から洗浄水70をウエーハWの表面Waに供給し続けるとともに、切削水噴出口42から切削水71を上記加工点に供給し続けることが望ましい。洗浄水噴出口17から噴出された洗浄水70は、ウエーハWの表面Waにおいて流動し、切削水71がウエーハWの表面Waに接触するのを遮ることができる。一方、切削水噴出口42から噴出された切削水71は、開口部31から突出した切り刃213の周囲を覆いつつ上記加工点に流れていくため、たとえ洗浄水70がブレードカバー30の内側に浸入してきても、切削水71によって洗浄水70が切削ブレード21に接触するのを遮ることができる。その結果、ウエーハWの表面Waにおいて静電気が発生するのを防止しつつ、切削ブレード21が溶けるのを防止して切削ブレード21の状態を良好に保つことができる。
【0046】
このようにして、切削ブレード21によって図1に示すウエーハWを分割予定ラインSに沿って切削することにより、ウエーハWを個々のデバイスDに分割する。その後、第2の搬送手段6bによって切削後のウエーハWが洗浄領域P3に搬送されて洗浄された後、第1の搬送手段6aによって仮置き領域5にウエーハWが仮置きされ、洗浄後のウエーハWは搬入出手段4によってカセット3に収容される。
【0047】
以上のとおり、本発明に係るウエーハの加工方法では、分割ステップを実施するときに、ウエーハWの表面Waには純水に二酸化炭素を混合させた洗浄水70を供給し、切削ブレード21には純水または洗浄水70よりも低い濃度の二酸化炭素を混合させた純水からなる切削水71を供給するため、ウエーハWの表面Waを流動する洗浄水70によって切削水71が表面Waに接触するのを遮るとともに切削水71によって切削ブレード21に洗浄水70が接触するのを遮って、ウエーハWの切削中は常に洗浄水70と切削水71とが互いに遮断し合う状態となる。これにより、洗浄水70により切削ブレード21が腐食したり過度に摩耗したりするのを防ぐことができるとともに、切削水71がウエーハWの表面Waに接触してデバイスDの静電破壊を起こすことを防ぐことができる。
【0048】
また、本発明に係る切削ブレード21は、排出機能を有するブレードカバー30によって全体が覆われているため、上記分割ステップを実施する際に、切削ブレード21とウエ
ーハWとの接触する部分に供給された切削水71がブレードカバー30の外側へ排出され切削水71がウエーハWの表面Waに接触するのを極力防ぐことができる。また、切削ブレード21は、開口部31のみから先端を突出させて切削ブレード21を挟み込むようにブレードカバー30で覆われていることから、切削ブレード21の露出部分が小さくなり、ウエーハWに供給された洗浄水70が切削ブレード21に接触するのを極力防ぐことができる。
【符号の説明】
【0049】
1:切削装置 2:装置ベース 2a:上面 3:カセット 4:搬入出手段
5:仮置き領域 6a:第1の搬送手段 6b:第2の搬送手段
7:チャックテーブル 7a:保持面 7b:クランプ部 8:移動基台
9:切削送り手段 10:洗浄水供給手段 11:支持片 12:ノズル 13:ツマミ
14:固定接続部 15:流体供給孔 16:貫通孔 17:洗浄水噴出口
20:切削手段 21:切削ブレード 210:ハブ基台ボス部
211:ハブ基台テーパー部 212:外周部 213:切り刃
213a:刃先 214:マウント固定ナット 215:マウントフランジ
22:スピンドルユニット 220:スピンドル 221:スピンドルハウジング
30:ブレードカバー 300:カバー本体 300a:後部側カバー
300b:前部側カバー 301:底部 31:開口部
32:エアー取り込み路 33:吸引開口部 34:排出路 35:排出口
36:排出手段 37:吸引源 38:スピンドル用挿入孔
39:マウントフランジ収容部
40:切削水供給手段 41:供給部 42:切削水供給口 43:切削水供給路
44:接続供給路 45a,45b:切削水供給領域 46:切削屑
50:混合水生成装置 51:純水供給源 52:第一の供給経路
53:第二の供給経路 54:第一の混合手段 55:キャッチ弁 56:タンク
57:ストップ弁 58:ガス流量調整弁 59:キャッチ弁
60:フィルタ 61:第1の濃度測定手段 62:貯水タンク
63:第一の流量調整弁 64:第二の混合手段 65:キャッチ弁
66:第二の流量調整弁 67:第三の水流量調整弁 68:第二の濃度測定手段
69:第四の流量調整弁 70:洗浄水 71:切削水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10