特許第6838369号(P6838369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6838369ネガ型感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物及び電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838369
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20210222BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20210222BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20210222BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   G03F7/038 601
   G03F7/004 501
   G03F7/004 503A
   G03F7/20 521
   H01L21/90 S
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-230561(P2016-230561)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-87877(P2018-87877A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】398008295
【氏名又は名称】HDマイクロシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】特許業務法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松川 大作
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 篤太郎
(72)【発明者】
【氏名】榎本 哲也
【審査官】 福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526493(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/087238(WO,A1)
【文献】 特開2008−081680(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102064(WO,A1)
【文献】 特開2008−281961(JP,A)
【文献】 特開2004−133435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)成分を含むネガ型感光性樹脂組成物。
(a)下記式(I)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体
(b)酸の作用により前記(a)成分と架橋する架橋剤
(c)365〜700nmの波長領域の活性光線を照射することにより酸を発生する化合物
(d)前記(a)成分と異なるアルカリ可溶性化合物
【化31】
(式(I)中、U及びVは、各々独立に2価の有機基を表す。Vは、炭素数7〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である。
【請求項2】
前記式(I)のVが炭素数〜30の脂肪族鎖状構造である請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(I)のU及びVの少なくとも一方が、下記式(UV1)又は(UV2)で表される構造を含む請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化32】
(式(UV1)中、R、Rは各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基である。aは1〜30の整数を示す。)
【化33】
(式(UV2)中、R〜Rは各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、b、c、dは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。Aは、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NHCO−、−C(CF−、−C≡C−、又は−RC=CR10−であり、R及びR10は各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【請求項4】
前記(a)成分が、アルカリ水溶液に可溶である請求項1〜3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(d)成分が、フェノール性ヒドロキシル基、アルコール性ヒドロキシル基、アクリル基、及びメタクリル基から選択される1以上の官能基を含有する化合物である請求項1〜4のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(d)成分が、フェノール性ヒドロキシル基を含有する化合物である請求項1〜5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(d)成分が、1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンである請求項1〜6のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(a)成分100質量部に対して、前記(b)成分を0.01〜50質量部、前記(c)成分を0.1〜10質量部、及び前記(d)成分を0.01〜30質量部含有する請求項1〜7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程、
前記感光性樹脂膜を露光し加熱する工程、
前記露光及び加熱によって得られた樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び
前記現像によって得られた樹脂パターンを加熱処理する工程
を含む硬化パターンの製造方法。
【請求項10】
前記現像によって得られた樹脂パターンを加熱処理する工程における加熱処理温度が220℃以下である請求項9に記載の硬化パターンの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物からなる層を、層間絶縁膜又は表面保護膜として含む電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、硬化パターンの製造方法、硬化物及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜等には、優れた耐熱性、電気特性、機械特性等を併せ持つ樹脂が用いられている。その中でも、ポリイミド樹脂は耐熱性及び機械特性に優れている。近年、ポリイミド樹脂自身に感光特性を付与した感光性ポリイミドが用いられており、これを用いるとパターン作製工程が簡略化でき、煩雑な製造工程を短縮することができる。
【0003】
感光性ポリイミドは、現像の際にN−メチルピロリドン等の有機溶剤を必要とするが、最近では、アルカリ水溶液で現像ができるポジ型感光性ポリイミドが提案されている。ポジ型感光性ポリイミドとしては、ポリイミド又はポリイミド前駆体に感光剤としてナフトキノンジアジド化合物を混合する方法(例えば、特許文献1、2参照)が提案されている。
【0004】
また、最近では、アルカリ水溶液で現像できるポジ型感光性樹脂として、ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体が提案されている。ポリベンゾオキサゾール又はポリベンゾオキサゾール前駆体は、ポリイミド又はポリイミド前駆体よりも露光部と未露光部の溶解速度のコントラストが大きいため、より精密なパターンを形成することが可能である(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
しかし、ポジ型感光性ポリベンゾオキサゾールは、露光部分が現像液に溶解するというポジ型感光性樹脂特有の性質上、膜が厚くなると残渣が残るため、感度及び解像度が低かった。そこで、厚膜でも良好な感度、解像度を示し、アルカリ水溶液で現像可能なネガ型感光性ポリベンゾオキサゾールが提案されているが(例えば、特許文献4、5参照)、近年の多種多様な半導体装置の開発により、より優れた解像度を示す感光性樹脂が求められている。
【0006】
ネガ型感光性樹脂を用いると、得られるパターンが矩形ではなくすそ引きを有する形状となる場合が多い。パターン間の距離が短い高解像度のパターニングを行う場合、隣接するパターンのすそ同士が繋がって開口部に残渣が残るため解像度が低くなる。そのため、ネガ型感光性樹脂の解像度を高くするために、すそ引きを改善することが技術的課題となっている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
ネガ型感光性樹脂の解像度を高めることを目的として、現像を長時間行うことが提案されている。この方法によって確かに解像度は高くなるものの、従来は90%以上あった現像後の樹脂残膜率が50%程度まで下がってしまい、膜厚が小さくなってしまうという問題があった(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭64−60630号公報
【特許文献2】米国特許第4395482号明細書
【特許文献3】特開2009−265520号公報
【特許文献4】特開2008−281961号公報
【特許文献5】特開2012−203359号公報
【特許文献6】特表2007−526493号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】フォトポリマー懇話会ニュースレター、No.63、p.7(2013年7月16日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、パターンのすそ引きの発生を低減することができ、それにより優れた解像度を有するネガ型感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、パターンのすそ引きの原因について検討した結果、以下の知見が得られた。即ち、ネガ型感光性樹脂は感度が高いため、基板からの反射によって露光部から未露光部へ進入した微量の光によって、未露光部の底部付近の樹脂が反応する場合がある。その結果、得られるパターンが矩形ではなくなり、すそ引きを有する形状となる。
本発明者らは、パターンのすそ引きを低減することができ、解像度に優れるネガ型感光性樹脂組成物について鋭意検討した結果、特定の成分を含むネガ型感光性樹脂組成物を用いることでこの要求を満足できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明によれば、以下のネガ型感光性樹脂組成物等が提供される。
1.下記(a)〜(d)成分を含むネガ型感光性樹脂組成物。
(a)下記式(I)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体
(b)酸の作用により前記(a)成分と架橋又は重合し得る化合物
(c)365〜700nmの波長領域の活性光線を照射することにより酸を発生する化合物
(d)前記(a)成分と異なるアルカリ可溶性化合物
【化1】
(式(I)中、U及びVは、各々独立に2価の有機基を表す。)
2.前記式(I)のVが炭素数1〜30の脂肪族鎖状構造を含む基である1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
3.前記式(I)のU及びVの少なくとも一方が、下記式(UV1)又は(UV2)で表される構造を含む1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式(UV1)中、R、Rは各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基である。aは1〜30の整数を示す。)
【化3】
(式(UV2)中、R〜Rは各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、b、c、dは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。Aは、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NHCO−、−C(CF−、−C≡C−、又は−RC=CR10−であり、R及びR10は各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
4.前記(a)成分が、アルカリ水溶液に可溶である1〜3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
5.前記(d)成分が、フェノール性ヒドロキシル基、アルコール性ヒドロキシル基、アクリル基、及びメタクリル基から選択される1以上の官能基を含有する化合物である1〜4のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
6.前記(d)成分が、フェノール性ヒドロキシル基を含有する化合物である1〜5のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
7.前記(d)成分が、1−[α−メチル−α−(4−ヒドロキシフェニル)エチル]−4−[α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼンである1〜6のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
8.前記(a)成分100質量部に対して、前記(b)成分を0.01〜50質量部、前記(c)成分を0.1〜10質量部、及び前記(d)成分を0.01〜30質量部含有する1〜7のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
9.1〜8のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程、
前記感光性樹脂膜を露光し加熱する工程、
前記露光及び加熱によって得られた樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び
前記現像によって得られた樹脂パターンを加熱処理する工程
を含む硬化パターンの製造方法。
10.前記現像によって得られた樹脂パターンを加熱処理する工程における加熱処理温度が220℃以下である9に記載の硬化パターンの製造方法。
11.1〜8のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物の硬化物。
12.11に記載の硬化物からなる層を、層間絶縁膜又は表面保護膜として含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターンのすそ引きの発生を低減することができ、それにより優れた解像度を有するネガ型感光性樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
図2】多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
図3】多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
図4】多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
図5】多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において「A又はB」とは、AとBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書においてネガ型感光性樹脂組成物中の各成分の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、ネガ型感光性樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに、例示材料は特に断らない限り単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(a)下記式(I)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体(以下、「(a)成分」とする)、(b)酸の作用により前記(a)成分と架橋又は重合し得る化合物(以下、「(b)成分」とする)、(c)365〜700nmの波長領域の活性光線を照射することにより酸を発生する化合物(以下、「(c)成分」とする)、及び(d)(a)成分と異なるアルカリ可溶性化合物(以下、「(d)成分」とする)を含む。
【化4】
(式(I)中、U及びVは、各々独立に2価の有機基を表す。)
【0017】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、パターンのすそ引きを起こさないか、又は低減することができ、解像度に優れるため、良好な形状と特性を有するパターンを得ることができる。本発明の電子デバイスは当該パターン(硬化物)を有するため、信頼性が高い。
また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化パターンは耐熱性、薬品耐性及び機械特性に優れ、さらに220℃以下の低温で硬化した場合であってもこれらの特性に優れる。
以下、各成分について説明する。
【0018】
〔(a)成分〕
(a)成分は、上記式(I)で示される構造単位を有するポリベンゾオキサゾール前駆体であって、通常、酸の存在下で(b)成分と架橋反応し得る。
なお、架橋反応には加熱を伴うものも含む。
【0019】
(a)成分は、アルカリ水溶液に可溶であることが、現像液の環境負荷低減の観点で好ましい。アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の水溶液等が挙げられる。一般には、濃度が2.38重量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が用いられるので、(a)成分は、この水溶液に対して可溶性であることがより好ましい。
【0020】
(a)成分がアルカリ水溶液に可溶であることの1つの基準を以下に説明する。(a)成分単独、又は以下に順を追って説明する(b)成分、(c)成分、(d)成分と共に任意の溶剤に溶解して得られたネガ型感光性樹脂組成物を、シリコンウエハ等の基板上にスピン塗布して膜厚5μm程度の塗膜を形成する。これをテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液のいずれか1つに20〜25℃において浸漬する。この結果、均一な溶液として溶解し得るとき、用いた(a)成分はアルカリ水溶液に可溶であると判断する。
【0021】
(a)成分は式(I)で表される構造単位を有していればよいが、下記式(II)で表される共重合体として用いることもできる。
ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミド)のアルカリ水溶液に対する可溶性はフェノール性水酸基に由来するため、ヒドロキシ基を含有する構造単位が一定以上含まれていることが好ましい。
【0022】
【化5】
(式中、U,V,W,Xは各々独立に2価の有機基を表す。j及びkはA構造単位とB構造単位のモル分率を示し、j及びkの和は100モル%である。)
【0023】
式(II)において、jとkのモル分率は、j=5〜85モル%、k=15〜95モル%であることが、解像度、機械特性、耐熱性、耐薬品性の点でより好ましい。
【0024】
式(I)、(II)において、U、Vは各々独立に2価の有機基である。少なくともUが、主鎖を構成する炭素数が1〜30(例えば、2〜30)の脂肪族構造を含む基であるか、又はVが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であると好ましい。
Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であるとき、Uは任意の2価の有機基でよい。Uが、主鎖を構成する炭素数が1〜30の脂肪族構造を含む基であるとき、Vは任意の2価の有機基でよい。また、Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基であり、かつ、Uが、主鎖を構成する炭素数が1〜30の脂肪族構造を含む基であってもよい。
【0025】
U及びVの少なくとも一方が、下記式(UV1)又は(UV2)で表される構造であるか、又は、(UV1)又は(UV2)で表される構造を含む構造であると、280℃以下での脱水閉環率が高い点で望ましい。さらに、炭素数7〜30の脂肪族構造を含む基であると弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
【化6】
(式中、R、Rは各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、aは1〜30の整数である。)
【化7】
(式中、R〜Rは各々独立に水素原子、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のフッ化アルキル基であり、b、c、dは各々独立に1〜6の整数を表し、eは0〜3の整数である。Aは、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−NHCO−、−C(CF−、−C≡C−、又は−RC=CR10−であり、R及びR10は各々独立に水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
【0026】
式(I)で表される構造単位を有するポリヒドロキシアミドは、一般的にジカルボン酸誘導体とヒドロキシ基含有ジアミン類から合成できる。具体的には、ジカルボン酸誘導体をジハライド誘導体に変換後、上記ジアミン類との反応を行うことにより合成できる。
【0027】
ジハライド誘導体としては、ジクロリド誘導体が好ましい。ジクロリド誘導体は、ジカルボン酸誘導体にハロゲン化剤を作用させて合成することができる。ハロゲン化剤としては通常のカルボン酸の酸クロリド化反応に使用される、塩化チオニル、塩化ホスホリル、オキシ塩化リン、五塩化リン等が使用できる。
【0028】
ジクロリド誘導体を合成する方法としては、ジカルボン酸誘導体と上記ハロゲン化剤とを溶媒中で反応させるか、過剰のハロゲン化剤中で反応を行った後、過剰分を留去する方法で合成できる。反応溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、ベンゼン等が使用できる。
【0029】
ハロゲン化剤の使用量は、溶媒中で反応させる場合は、ジカルボン酸誘導体に対して、1.5〜3.0モルが好ましく、1.7〜2.5モルがより好ましい。ハロゲン化剤中で反応させる場合は、4.0〜50モルが好ましく、5.0〜20モルがより好ましい。反応温度は、−10〜70℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0030】
ジクロリド誘導体とジアミン類との反応は、脱ハロゲン化水素剤の存在下に、有機溶媒中で行うことが好ましい。脱ハロゲン化水素剤としては、通常、ピリジン、トリエチルアミン等の有機塩基が使用される。また、有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等が使用できる。反応温度は、−10〜30℃が好ましく、0〜20℃がより好ましい。
【0031】
上記ジアミン類としては、例えば下記式で表される化合物が挙げられる。
【化8】
(式中、nは1〜6の整数である。)
【0032】
その他、U(Vが炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基である場合)又はWで表される有機基を有するジアミン類としては、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0033】
これらの中でもジアミン類としては露光光線の透過性と現像性の観点から、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパンを用いることが好ましい。
【0034】
式(I)、(II)においてVで表される2価の有機基は、一般に、ジアミンと反応してポリアミド構造を形成するジカルボン酸の残基である。
【0035】
Vが、炭素数1〜30の脂肪族構造を含む基として、上記(UV1)又は(UV2)で表される構造であると、耐熱性、紫外及び可視光量域での高い透明性を有し、280℃の以下での脱水閉環率が高い点で優れる。さらに炭素数7〜30の脂肪族構造を含む基であると、そのポリマーはN−メチル−2−ピロリドン以外にもγ−ブチロラクトンやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートといった溶剤にも易溶となり、保存安定性も高い。さらに弾性率が低くかつ破断伸びが高く、より好ましい。
【0036】
以上のようなジカルボン酸類としては、例えばマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、イソプロピルマロン酸、ジ−n−ブチルマロン酸、スクシン酸、テトラフルオロスクシン酸、メチルスクシン酸、2,2−ジメチルスクシン酸、2,3−ジメチルスクシン酸、ジメチルメチルスクシン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−エチル−3−メチルグルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、3−メチルアジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、ピメリン酸、2,2,6,6−テトラメチルピメリン酸、スベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、1,9−ノナン二酸、ドデカンニ酸、トリデカンニ酸、テトラデカンニ酸、ペンタデカンニ酸、ヘキサデカンニ酸、ヘプタデカンニ酸、オクタデカン二酸、ノナデカンニ酸、エイコサンニ酸、ヘンエイコサンニ酸、ドコサンニ酸、トリコサンニ酸、テトラコサンニ酸、ペンタコサンニ酸、ヘキサコサンニ酸、ヘプタコサンニ酸、オクタコサンニ酸、ノナコサンニ酸、トリアコンタンニ酸、ヘントリアコンタンニ酸、ドトリアコンタンニ酸、ジグリコール酸等が挙げられる。
【0037】
また、下記式で示される化合物も含まれる。
【化9】
(式中、Tは炭素数1〜6の炭化水素基、nは1〜6の整数である。)
【0038】
これらの中でも、機械特性の観点からカルボキシル基を除く炭素数が6以上のものを用いることが好ましく、炭素数6〜20のものを用いることがより好ましく、さらに炭素数8〜14のものを用いることが好ましい。
炭素数が6以上である場合、良好な機械特性が得られる傾向にあり、炭素数が20以下である場合、他の成分との相溶性や感光特性の低下が抑制される傾向にある。
【0039】
式(I)、(II)におけるその他のV(Uが、主鎖を構成する炭素数が2〜30の脂肪族構造を含む基である場合)、又はXで表される有機基を有するジカルボン酸類として、イソフタル酸、テレフタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−ブロモイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、5−クロロイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系ジカルボン酸等を併用することができる。
【0040】
また(a)成分として、U、Wで表される有機基を有するアミノフェノール以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、下記のジアミンを併せて使用することもできる。このようなジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、ベンジシン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、ビス(4−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノフェノキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン等の芳香族ジアミン化合物を挙げることができる。
【0041】
この他にもシリコーンに由来する基を有するジアミンとして、LP−7100、X−22−161AS、X−22−161A、X−22−161B、X−22−161C及びX−22−161E(いずれも信越化学工業(株)製、商品名)等を挙げることができる。
このようなジアミン類は、U、Wで表される有機基を有するアミノフェノールとのモル比率で、全アミノフェノールの25%以下として用いることが、式(I)又は(II)で表されるポリマーの感光特性を低下させないために好ましい。さらに好ましくは15%以下である。
【0042】
(a)成分は、通常、(b)成分と架橋する官能基を有する。(a)成分の官能基と(b)成分の官能基の組み合わせに特に制限はないが、酸の存在下で熱により(a)成分の官能基と(b)成分の官能基との間に、共有結合、イオン結合及び水素結合のいずれか1以上の結合が生じる組み合わせがよい。
【0043】
パターン形成時の感光特性や硬化膜の機械特性の観点から、(a)成分が下記A群から選ばれる官能基を有し、(b)成分が下記B群から選ばれる官能基を有することが好ましい。また、(a)成分がB群から選ばれる官能基を有し、(b)成分がA群から選ばれる官能基を有することも好ましい。
【0044】
〔A群〕第一級アルコールに由来する基、第二級アルコールに由来する基、フェノールに由来する基、カルボキシル基、アミノ基、チオールに由来する基、芳香環に由来する基
〔B群〕メチロール基、アルコキシアルキル基、第三級アルコールに由来する基、シクロアルキル基、オレフィンに由来する基、三重結合を有する基、ハロゲン化アルキル基、エポキシ基等の環状エーテルに由来する基、エステル結合を有する基、カーボネート結合を有する基、イソシアナート基
【0045】
(a)成分の官能基と(b)成分の官能基の組み合わせとしては、上に示したものの他に、カルボキシル基又はエステル結合を有する基とアミノ基の組み合わせ、カルボキシル基又はエステル結合を有する基と、第一級アルコールに由来する基又は第二級アルコールに由来する基の組み合わせ、シクロアルキル基同士の組み合わせ、カルボキシル基同士の組み合わせ、アルコールに由来する基同士の組み合わせ、エポキシ基同士の組み合わせ、オレフィン結合を有する基又は三重結合を有する基同士の組み合わせ、メチロール基同士の組み合わせ等が、反応性の高い好ましい組み合わせとして挙げることができる。
【0046】
良好な感光特性に加えて硬化膜特性を向上させるという観点から、(a)成分にフェノールに由来する基又は芳香環に由来する基を導入し、(b)成分にメチロール基、アルコキシアルキル基、第三級アルコールに由来する基、又はビニルエーテルに由来する基を導入する組み合わせが特に好ましい。
【0047】
例えば、フェノールに由来する基からなる末端基を(a)成分に導入する場合、(a)成分の構造単位を構成する材料の他に、ヒドロキシ置換アニリン誘導体やヒドロキシ安息香酸誘導体を用いる方法が挙げられる。また、芳香環からなる末端基を(a)成分に導入する場合、(a)成分の構造単位を構成する材料の他に、アニリン誘導体、安息香酸誘導体、又はジカルボン酸無水物を用いる方法が挙げられる。
【0048】
上述した(a)成分の官能基と(b)成分の官能基との間には、ネガ型感光性樹脂組成物の塗布時には、結合(架橋)が生じないことが好ましい。架橋反応は、酸の存在下、150℃以上の温度で行うことが好ましい。従って、上記の各官能基を保護基で保護した誘導体として潜在化させることが好ましい。この場合、これらの誘導体を、露光による光化学反応又はその後の露光後加熱工程の際の熱による化学変化等で所望の官能基に変換させることができる。例えば、イソシアナートは150℃以下の低温でも反応してしまうため、アミノ基をアルコキシカルボニル基等でブロック化した前駆体の状態で、(a)成分の末端基や(b)成分に導入することができる。
【0049】
(a)成分における末端基と構造単位との割合は、モル比率で、末端基2に対して構造単位が1〜100であることが好ましく、末端基2に対して構造単位が2〜50であることがより好ましい。構造単位とは、式(I)又は式(II)の括弧内で書き表される構造を指す。末端基2に対して構造単位が1以上であると架橋反応が十分に進行し、感光特性も良好となる傾向にある。一方、末端基2に対して構造単位が100以下であると、十分な膜物性が得られる傾向にある。
構造単位と末端基の比率は、H−NMRによって測定することができる。
【0050】
(a)成分の末端基がカルボキシル基及びアミノ基である場合、それら末端基は(a)成分の合成時に用いられるジカルボン酸(又はジカルボン酸ハライド)及びジアミン由来のものであってもよい。
末端カルボキシル基がアミノ基よりもモル比率で5倍以上あるものを「カルボキシル基末端である(a)成分」とし、末端アミノ基がカルボキシル基よりもモル比率で5倍以上あるものを「アミノ基末端である(a)成分」とする。カルボキシル基末端である(a)成分は、合成時のジカルボン酸/ジアミン(ビスアミノフェノール)の比率を50/49より大きくすることによって得ることができ、アミノ基末端である(a)成分は合成時のジアミン(ビスアミノフェノール)/ジカルボン酸の比率を50/49よりも大きくすることによって得ることができる。ジカルボン酸及びジアミンを当量用いて(a)の合成を行った場合、カルボキシル基末端である(a)成分とアミノ基末端である(a)成分が合成され、末端基同士が反応してしまうため、安定性が低下し、さらに耐薬品性、耐熱性及び機械特性が低下する傾向がある。(a)成分中のアミノ基の存在はH−NMRの積分値により容易に定量することができる。
【0051】
(a)成分の末端基がヒドロキシ基置換アニリン及びその誘導体に由来するフェノール末端の場合は、ジカルボン酸残基がアミン残基より1つ多く、モル比で100:99〜2:1の範囲であることが好ましく、50:49〜3:2の範囲であることがより好ましい。末端基がヒドロキシ安息香酸誘導体に由来するフェノール末端の場合は、ジカルボン酸残基がアミン残基より1つ少なく、モル比で99:100〜1:2の範囲とすることが好ましく、49:50〜2:3の範囲とすることがより好ましい。
これらの定量はH−NMRの測定により行うことができる。
【0052】
(a)成分の分子量は、重量平均分子量で3,000〜200,000が好ましく、5,000〜100,000がより好ましい。重量平均分子量が3,000以上であると、機械特性が良好な硬化膜が得られる傾向にある。また、200,000以下であると、現像液への溶解性や解像性の低下が抑制される傾向にある。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得た値である。
【0053】
〔(b)成分〕
本発明で使用する(b)成分(以下、「架橋剤」ともいう)は、酸の作用により前記(a)成分と架橋又は重合し得る化合物であれば特に制限はないが、(a)成分と反応する官能基を分子内に少なくとも1つ以上有する化合物であることが好ましい。
(b)成分と(a)成分とが架橋反応する温度は150℃以上であることが好ましく、150℃以上で架橋反応を起こすような官能基を有することが好ましい。150℃以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物を塗布、乾燥、露光、現像する各工程で当該成分が架橋反応を起こすことを抑制することができる。
(b)成分は、(a)成分と架橋又は重合し得る化合物であるが、加えて(b)成分同士の分子間で重合するような化合物であってもよい。
【0054】
このような(b)成分として、メチロール基、アルコキシメチル基(アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜6)、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基、オレフィンに由来する基、アルキニル基、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル結合を含む基、シクロアルキル基、アミノ基、及びイソシアナート基から選択される1以上の基((a)成分と反応し得る官能基)を有することが好ましい。また、同種の基を分子内に2個以上有することが好ましい。
【0055】
これら置換基が芳香環上に置換した化合物、即ちフェノール、ビスフェノール、ポリフェノール、ノボラック樹脂及びレゾール樹脂等の化合物、及びこれらの置換基でN位を置換したメラミン、ベンゾグアナミン、グリコールウリル及び尿素化合物等が好ましい。
これらの化合物は下記式(V)、(VI)で表される化合物として挙げられるが、これらに限定されない。
【化10】
(式(V)中、Xは単結合又は1〜4価の有機基を示し、Zは(a)成分と反応する官能基を示し、R11は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示し、fは1〜4の整数であり、p及びqは各々独立に1〜4の整数である。)
【0056】
式(V)において、Xで示される有機基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基;エチリデン基等の炭素数が2〜10のアルキリデン基;フェニレン基等の炭素数が6〜30のアリーレン基;これら炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子で置換した基;スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド結合等が挙げられる。
また、下記式(VII)で示される2価の有機基が好ましいものとして挙げられる。
【化11】
(式(VII)中、X’は、各々独立に、単結合、アルキレン基(例えば炭素原子数が1〜10のもの)、アルキリデン基(例えば炭素数が2〜10のもの)、それらの水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換した基、スルホン基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、又はアミド結合であり、R13は、各々独立に、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基又はハロアルキル基であり、gは1〜10の整数である。)
【0057】
式(V)で表される化合物のうち、下記式(VIII)で表される化合物は、感度及び解像度に優れるため好ましい。
【化12】
(式(VIII)中、Yは、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、酸素原子又はフッ素原子を含んでいてもよく、Zは、各々独立に(a)成分と反応する官能基を示し、R14〜R15は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を示し、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、r及びsは各々独立に1〜4の整数である。)
【化13】
(式(VI)中、Zは各々独立に(a)成分と反応する官能基を示し、R12は各々独立に水素原子又は1価の有機基を示し、2つのR12が互いに結合することで環構造となっていてもよい。)
【0058】
(b)成分は、特に薬液耐性の観点から、下記構造を有するものが好ましい。
【化14】
(式中、Zは、各々独立に炭素数1〜10のアルキル基を表し、Rは、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0059】
これらの中でも、解像度の観点、及び現像後のパターンはがれの改善による解像度向上の観点から、下記構造を有する化合物が好ましい。
【化15】
【0060】
また、下記式で表される化合物も好ましいものとして挙げることができる。
【化16】
(式中、Bは水素原子又は1価の有機基を示し、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい。Aは、アルキレン、エステル結合及びエーテル結合から選択される2価の有機基を示す。Aはこれら2価の有機基のうち2種以上が結合した構造であってもよい。nは0〜5の整数であり、mは1〜6の整数である。nが2以上の場合、複数のBはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。mが2以上の場合、mに係る複数の基はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0061】
Bの1価の有機基としてアミノ基を挙げることができ、例えば、1つ又は2つのグリシジル基が置換したアミノ基である。Aとしては、例えば、エーテル結合とアルキレンが結合した2価の基を挙げることができる。
【0062】
(b)成分の含有量は、感光時の感度及び解像度の観点、及び硬化時のパターン溶融を抑止する観点から、(a)成分100質量部に対して0.1〜50質量部とすることが好ましく、0.5〜30質量部とすることがより好ましい。
【0063】
〔(c)成分〕
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(c)成分として、365〜700nmの波長領域の活性光線を照射することにより酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を用いる。
【0064】
(c)成分は、365〜700nmの波長領域の活性光線の照射によって酸性を呈し、通常、(b)成分と(a)成分の官能基とを架橋する作用、又は(b)成分同士を重合する作用を有する。
(c)成分としては、例えば、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物等が挙げられる。
【0065】
ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩としては、下記式(C1)で表される化合物が好ましい。
【化17】
(式(C1)中、nは2〜3の整数であり、mは0〜1の整数であり、n+m=3である。Rはアルキル基(炭素数は好ましくは1〜6)である。Zは芳香環(炭素数は好ましくは6〜20)である。Xは発生する酸の共役塩基である。
【0066】
また、ジアリールヨードニウム塩としては、下記式(C2)又は(C3)で表される化合物が好ましい。
【化18】
(式(C2)、(C3)中、nは0又は1である。R及びRは各々独立にアルキル基(炭素数は好ましくは1〜6)であり、Rは各々独立にアリール基(炭素数は好ましくは6〜20)である。)
【0067】
芳香族スルホン酸エステルとしては、ニトロベンジルエステル化合物、又は下記式(C4)又は(C5)で表される化合物が好ましい。
【化19】
(式(C4)、(C5)中、Rは炭素数6〜10のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基、又はこれらを組み合わせた基である。Rはアリール基(炭素数は好ましくは6〜20)又はアルキル基(炭素数は好ましくは1〜6)であり、これらの基はヘテロ原子(例えば酸素原子)を介してベンゼン環に置換していてもよい。Rはアルキル基(炭素数は好ましくは1〜6)又はシアノ基である。)
【0068】
上記化合物は必要に応じて他の増感剤と組み合せて使用してもよい。上記の化合物のうち、ネガ型感光性樹脂組成物の安定性、イオンマイグレーションを抑止する観点から塩構造を有さないものが好ましい。
式(C4)又は(C5)で表される芳香族オキシムスルホン酸エステルを用いると感度を高くすることができるため好ましい。
【0069】
光酸発生剤の他の例として、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニルp−トルエンスルホニルジアゾメタン、1−シクロ−ヘキシルスルホニル−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、1−p−トルエンスルホニル−1−シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−メタンスルホニル−2−メチル−(4−メチルチオプロピオフェノン、2,4−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタ−3−オン、1−ジアゾ−1−メチルスルホニル−4−フェニル−2−ブタノン、2−(シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、1−シクロヘキシルスルホニル−1シクロヘキシルカルボニルジアゾメタン、1−ジアゾ−1−シクロヘキシルスルホニル−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−(1,1−ジメチルエチルスルホニル)−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−アセチル−1−(1−メチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、1−ジアゾ−1−(p−トルエンスルホニル)−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−ベンゼンスルホニル−3,3−ジメチル−2−ブタノン、1−ジアゾ−1−(p−トルエンスルホニル)−3−メチル−2−ブタノン、シクロヘキシル2−ジアゾ−2−(p−トルエンスルホニル)アセテート、tert−ブチル2−ジアゾ−2−ベンゼンスルホニルアセテート、イソプロピル−2−ジアゾ−2−メタンスルホニルアセテート、シクロヘキシル2−ジアゾ−2−ベンゼンスルホニルアセテート、tert−ブチル2ジアゾ−2−(p−トルエンスルホニル)アセテート、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホネート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホネート、及び2,4−ジニトロベンジルp−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート等が挙げられる。
【0070】
(c)成分の含有量は、感光時の感度、解像度を良好とするために、(a)成分100質量部に対して0.01〜15質量部とすることが好ましく、0.01〜10質量部とすることがより好ましく、0.5〜5質量部とすることがさらに好ましい。
(c)成分の量が15質量部以下であると、(c)成分由来の吸収帯による光の吸収が抑制され、露光した光が底部まで十分に到達するため、良好なパターン形状が得られる傾向にある。また、(c)成分の量が0.01質量部以上であると、良好な感度が得られる傾向にある。
【0071】
〔(d)成分〕
本発明で用いる(d)成分のアルカリ可溶性化合物は、アルカリ現像液に対して溶解するものであれば特に制限はないが、樹脂の未露光領域での溶解速度を増加させる一方で、露光領域での溶解速度を増加させすぎない化合物であることが好ましい。露光領域の溶解速度を高めすぎた場合、樹脂が過度に溶解しやすくなり、残膜率が低くなってしまうという問題が生じる場合がある。一方、未露光領域の溶解速度を高め、かつ、露光領域の溶解速度が適度に高められた場合は、未露光領域に侵入してきた反射光による樹脂の不溶化に起因するすそ引きを低減し、高解像度化が期待できる。
尚、(d)成分は(b)成分とは異なる成分である。
【0072】
このような化合物の例として、フェノール性ヒドロキシル基を含む化合物、アルコール性ヒドロキシル基を含む化合物、アクリル基を含む化合物、及びメタクリル基から選択される1以上を含む化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの化合物であると、すそ引きの低減に伴う高解像度化に加え、高い残膜率を維持することも可能となる。
【0073】
(d)成分のうち、アクリル基を含む化合物、メタクリル基を含む化合物として、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等の化合物を挙げることができる。
【0074】
(d)成分のうち、フェノール性ヒドロキシル基を含む化合物、アルコール性ヒドロキシル基を含む化合物として、下記式(7)及び(8)の化合物を挙げることができる。溶解速度向上の観点から、芳香環上にヒドロキシル基が置換した化合物、即ちフェノール誘導体又はビスフェノール誘導体が好ましい。
【化20】
(式(7)中、Xは単結合又は1〜4価の有機基を示し、R10は水素原子又は1価の有機基を示し、R11は1価の有機基を示し、nは1〜4の整数であり、pは1〜4の整数であり、qは0〜3の整数である。)
【化21】
(式(8)中、Yは各々独立に水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフルオロアルキル基(炭素数は好ましくは1〜10)、水素原子の一部がヒドロキシル基で置換されたヒドロキシアルキル基(炭素数は好ましくは1〜10)、又は炭素数1〜10のアルコキシ基であり、R12及びR13は1価の有機基を示し、R14及びR15は水素原子又は1価の有機基を示し、m及びnは各々独立に1〜3の整数であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数である。)
【0075】
(d)成分として、例えば以下のような化合物が挙げられる。
【化22】
【0076】
これらのうち、最も好ましい化合物は下記の化合物である。
【化23】
【0077】
(d)成分の含有量は、(a)成分100質量部に対して、0.1〜50質量部とすることが好ましく、1〜30質量部とすることがより好ましい。(d)成分の含有量が上記範囲内であると、すそ引き低減による高解像度化の効果が十分に発現し、また、良好な残膜率が得られる傾向にある。
【0078】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の溶媒以外の成分の、例えば70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は99.5質量%以上が(a)〜(d)成分であってもよい。本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、溶媒以外の成分が本質的に(a)〜(d)成分からなってもよい。この場合、不可避不純物を含んでもよい。また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は(a)〜(d)成分及び溶媒のみからなってもよい。
【0079】
〔その他の成分〕
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、上記(a)〜(d)成分に加えて、通常、溶媒を含み、その他、(1)接着性付与剤、(2)界面活性剤又はレベリング剤等を含有してもよい。
【0080】
〔溶剤〕
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、通常、上記の各成分を溶剤に溶解し、ワニス状にして使用する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル−1,3−ブチレングリコールアセテート、1,3−ブチレングリコールアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0081】
〔接着性付与剤〕
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等の接着性付与剤を含んでもよい。
【0082】
有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0083】
接着性付与剤を用いる場合、(a)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部含有させることが好ましく、0.5〜10質量部含有させることがより好ましい。
【0084】
〔界面活性剤又はレベリング剤〕
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだり、現像性を向上させるために、界面活性剤又はレベリング剤を含んでもよい。界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
【0085】
市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製、商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0086】
[硬化パターンの製造方法]
本発明の硬化パターンの製造方法は、上述したネガ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成する工程、感光性樹脂膜を露光する工程、露光後の樹脂膜を加熱する工程、加熱後の樹脂膜を、アルカリ水溶液を用いて現像する工程、及び現像後の樹脂パターンを加熱処理する工程を経て、所望の耐熱性高分子からなる硬化パターンを製造することができる。
以下、各工程について説明する。
【0087】
〔塗布・乾燥工程(成膜工程)〕
ネガ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO、SiO等)、窒化ケイ素等の支持基板上に、上述したネガ型感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布する。その後、ホットプレート、オーブン等を用いて乾燥することにより、支持基板上にネガ型感光性樹脂組成物の被膜である感光性樹脂膜を形成する。
【0088】
〔露光工程〕
次に、支持基板上で被膜となったネガ型感光性樹脂組成物(感光性樹脂膜)に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。
【0089】
〔露光後加熱工程〕
続いて、露光後加熱工程では、露光後の樹脂膜を、ホットプレート等を用いて加熱する。露光後加熱は、(c)成分から発生した酸を用いて(a)成分と(b)成分の架橋を促進するために行うものである。露光後加熱温度が低すぎると、(a)成分と(b)成分の架橋が十分に起こらず解像度が悪化する可能性があり、露光後加熱温度が高すぎると、露光領域において(c)成分から発生した酸が未露光領域にも拡散し、すそ引きの形成を促進して解像度を悪化させる可能性、もしくは、未露光領域における(a)成分と(b)成分の熱架橋反応を促進してしまい解像度を悪化させる可能性があるので、適切な露光後加熱温度を選択することが重要である。露光後加熱温度は、100℃以上が好ましい。
【0090】
〔現像工程〕
続いて、現像工程では、未露光部を現像液で除去することにより樹脂パターンが得られる。
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。
これらの水溶液の塩基濃度は、0.1〜10質量%とすることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で配合することができる。
【0091】
〔加熱処理工程〕
次いで、加熱処理工程では、例えば種々の熱拡散炉、加熱炉や硬化炉を使用して、得られた樹脂パターンについて、好ましくは150〜450℃の加熱処理を施すことにより耐熱性高分子からなる硬化パターンとする。本発明においては、加熱処理を220℃以下、好ましくは150〜200℃で行っても十分な膜特性を得ることができる。
【0092】
また、加熱処理には、熱拡散炉等に限らず、マイクロ波を用いることもできる。周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。さらに、基板として電子部品のように金属配線を含む場合は、周波数を変化させながらマイクロ波をパルス状に照射すると、金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。照射するマイクロ波の周波数は0.5〜20GHzの範囲であるが、実用的には1〜10GHzの範囲が好ましく、さらに2〜9GHzの範囲がより好ましい。
【0093】
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが好ましいが、通常、周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0094】
照射するマイクロ波の出力は、装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10〜2000Wの範囲であり、実用上は100〜1000Wがより好ましく、100〜700Wがさらに好ましく、100〜500Wが最も好ましい。出力が10W以上であると被加熱体を短時間で加熱することができる傾向にあり、2000W以下であると急激な温度上昇が抑制される傾向にある。
【0095】
マイクロ波はパルス状に(「入」と「切」を切り替えて)照射させることが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は、条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
【0096】
熱硬化させる時間は、残存溶剤や揮発成分の飛散が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、熱処理の雰囲気は、大気中、又は窒素等の不活性雰囲気中のいずれかを選択することもできる。
【0097】
〔半導体装置の製造工程〕
次に、本発明の硬化パターンの製造方法の一例として、半導体装置(電子部品)の製造工程の一例を図面に基づいて説明する。図1〜5は、多層配線構造を有する半導体装置の製造工程を説明する概略断面図である。図1〜5において、回路素子(図示しない)を有するSi基板等の半導体基板1は、回路素子の所定部分を除いてシリコン酸化膜等の保護膜2で被覆され、露出した回路素子上に第1導体層3が形成されている。この半導体基板1上に、スピンコート法等で層間絶縁膜としてのネガ型感光性樹脂組成物の層間絶縁膜4が形成される(図1)。
【0098】
次に、塩化ゴム系又はフェノールノボラック系の感光性樹脂層5が、層間絶縁膜4上にスピンコート法で形成され、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁膜4が露出するように窓6Aが設けられる(図2)。窓6Aにより露出した層間絶縁膜4は、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段によって選択的にエッチングされ、窓6Bが空けられている。次いで、窓6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5が完全に除去される(図3)。
【0099】
さらに、公知の写真食刻技術を用いて、第2導体層7を形成させ、第1導体層3との電気的接続が完全に行われる(図4)。3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上記の工程を繰り返して行い各層を形成することができる。
【0100】
次に、表面保護膜8を形成する。図1〜5の例では、この表面保護膜8を、ネガ型感光性樹脂組成物をスピンコート法にて塗布、乾燥し、所定部分に窓6Cを形成するパターンを描いたマスク上から光を照射した後、アルカリ水溶液にて現像してパターンを形成し、加熱して耐熱性高分子膜とする(図5)。この表面保護膜8としての耐熱性高分子膜は、導体層を外部からの応力、アルファ線等から保護するものであり、得られる半導体装置は信頼性に優れる。尚、上記例において、表面保護膜8だけでなく、層間絶縁膜4を本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成することも可能である。
【0101】
[電子部品]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、半導体装置や多層配線板等の電子部品に使用することができる。具体的には、半導体装置の表面保護膜や層間絶縁膜、多層配線板の層間絶縁膜等の形成に使用することができる。本発明の電子部品は、良好な形状と特性のパターンを有するため信頼性が高い。
【実施例】
【0102】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0103】
実施例1〜14、比較例1〜4
[ポリベンゾオキサゾール前駆体(a−1)の合成]
撹拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン60gを仕込み、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン13.92g(38mmol)を添加し、撹拌溶解した。続いて、温度を0〜5℃に保ちながら、ドデカン二酸ジクロリド7.48g(28mmol)及び4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロリド3.56g(12mmol)を10分間で滴下した後、フラスコ中の溶液を60分間撹拌した。上記溶液を3リットルの水に投入し、析出物を回収し、これを純水で3回洗浄した後、減圧して式(I)で表される構造を有する化合物を含むポリベンゾオキサゾール前駆体を得た(以下、ポリマー(a−1)とする)。ポリマー(a−1)の重量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法にて標準ポリスチレン換算により求めたところ42,000であり、分散度は2.0であった。
【0104】
GPC法による重量平均分子量の測定条件は以下の通りである。ポリマー0.5mgに対して溶剤[テトラヒドロフラン(THF)/ジメチルホルムアミド(DMF)=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。用いた測定装置及び測定条件は、以下の通りである。
<測定装置>
検出器:株式会社日立製作所社製L4000
UVポンプ:株式会社日立製作所社製L6000
株式会社島津製作所社製C−R4A Chromatopac
カラム:日立化成株式会社製Gelpack GL−S300MDT−5×2本
<測定条件>
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/l)、HPO(0.06mol/l)
流速:1.0ml/min
検出器:UV270nm
【0105】
[ネガ型感光性樹脂組成物の調製]
(a)成分としてのポリマー(a−1)100質量部に対し、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を表1に示す所定量(質量部)にて配合した。溶剤としてγ−ブチロラクトンを用いた。溶剤の使用量は、(a)成分100質量部に対し160質量部とした。
用いた各成分は以下の通りである。
【0106】
〔(b)成分:酸の作用により(a)成分と架橋又は重合し得る化合物〕
・(b−1):下記構造式で表される化合物(株式会社三和ケミカル製、商品名:ニカラックMW−390)
【化24】
・(b−2):下記構造式で表される化合物(株式会社ADEKA製、商品名:EP−3950S)
【化25】
・(b−3):下記構造式で表される化合物(株式会社三和ケミカル製、商品名:ニカラックMX−270)
【化26】
【0107】
〔(c)成分:365〜700nmの波長領域の活性光線照射により酸を発生する化合物〕
・(c−1):下記構造式で表される化合物(BASF株式会社製、商品名:PAG−103)
【化27】
・(c−2):下記構造式で表される化合物(BASF株式会社製、商品名:CGI−725)
【化28】
【0108】
〔(d)成分:アルカリ可溶性化合物〕
・(d−1):下記構造式で表される化合物(本州化学工業株式会社製、商品名:トリスPPA)
【化29】
・(d−2):下記構造式で表される化合物(日本化薬株式会社製、商品名:PET−30)
【化30】
・(d−3):m−ベンゼンジカルボン酸(ナカライテスク株式会社製、商品名:イソフタル酸)
【0109】
[ネガ型感光性樹脂組成物の評価]
実施例1〜14及び比較例1〜4で得られたネガ型感光性樹脂組成物について、解像度、すそ引き及び残膜率を以下に示す方法でそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
【0110】
<解像度の評価>
後述する<残膜率の評価>と同様の方法にて得られた樹脂パターンについて、ラインアンドスペース部のパターンが、はがれ及び残渣なくパターニングできている最小の線幅を解像度とした。解像度が4μm未満のものをA、4μm以上10μm未満のものをB、10μm以上100μm未満のものをC、開口部が得られなかったものをDと評価した。
【0111】
<すそ引きの評価>
後述する<残膜率の評価>と同様の方法にて得られた樹脂パターンについて、縦型拡散炉μ−TF(光洋サーモシステム株式会社製)を用いて窒素雰囲気下200℃で1時間加熱し、硬化パターン(硬化後膜厚10μm)を得た。得られた硬化膜の20μm幅の孤立パターンの断面形状観察を卓上顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:TM−3030)にて行い、パターン底部のすそ引きが見られないものをA、すそ引き長さが0μm以上0.5μm未満のものをB、すそ引き長さが0.5μm以上のものをCと評価した。比較例3はパターン形成ができず、比較例4ではネガ型パターンが得られなかったため、すそ引きの評価を行わなかった。
【0112】
<残膜率の評価>
塗布装置(東京エレクトロン株式会社製、商品名:CLEAN TRACK ACT8)を用いて、それぞれのネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、110℃で3分間乾燥して乾燥後膜厚が12μmの樹脂膜を形成した。得られた樹脂膜に、i線ステッパ(キヤノン株式会社製、商品名:FPA−3000iW)を用いて露光を行った。露光後、ホットプレートにて110℃で3分間加熱を行い、続いて、TMAHの2.38質量%水溶液にて23℃で現像した後、水でリンスして樹脂パターンを得た。現像時間は、露光後加熱した樹脂膜の未露光部が完全に溶解するまでの時間の1.3倍とした。
現像後の露光部膜厚を現像前の膜厚で除することで残膜率を算出し、残膜率が97%以上のものをA、90%以上97%未満のものをB、60%以上90%未満のものをC、60%未満のものをDと評価した。比較例3はパターン形成ができず、比較例4ではネガ型パターンが得られなかったため、残膜率の評価を行わなかった。
【0113】
【表1】
【0114】
表1より、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いることによって、未露光領域におけるすそ引きを消失又は低減させることができ、それにより、高い解像度を有するパターン形成が可能となることが分かる。また、特定の(d)成分を用いることによって高い残膜率を達成できることも分かる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られるパターン硬化膜は、半導体装置や多層配線板等の電子部品に用いることができる。
【符号の説明】
【0116】
1 半導体基板
2 保護膜
3 第1導体層
4 層間絶縁膜
5 感光性樹脂膜
6A、6B、6C、6D 窓
7 第2導体層
8 表面保護膜
図1
図2
図3
図4
図5