(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コーティング層の可視光透過率を45%以上55%以下の範囲に設定した場合に、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値が1.5%以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の赤外線遮蔽透明基材。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
(赤外線遮蔽透明基材、赤外線遮蔽光学部材)
本実施形態ではまず、赤外線遮蔽透明基材の一構成例について説明する。
【0019】
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、透明基材の少なくとも一方の面上にコーティング層を有し、コーティング層は赤外線遮蔽粒子とバインダーとを含むことができる。
そして、赤外線遮蔽粒子は、一般式XB
m(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選ばれる1種類以上の金属元素、mは一般式におけるホウ素量を示す数字)で表され、燃焼−赤外線吸収法で測定したときの炭素量が0.2質量%以下であるホウ化物粒子を用いることができる。
【0020】
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、上述のように、透明基材と、透明基材の少なくとも一方の面上に配置されたコーティング層とを有することができる。そして、コーティング層は赤外線遮蔽粒子と、バインダーとを含むことができる。
【0021】
そこでまず、赤外線遮蔽粒子、及びその製造方法について説明する。
(1)赤外線遮蔽粒子、及びその製造方法について
赤外線遮蔽粒子としては、上述のように一般式XB
m(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選ばれる1種類以上の金属元素、mは一般式におけるホウ素量を示す数字)で表され、燃焼−赤外線吸収法で測定したときの炭素量が0.2質量%以下であるホウ化物粒子を用いることができる。
【0022】
本発明の発明者らは、容易に微粉砕、すなわち微細な粒子に粉砕することができるホウ化物粒子について、鋭意検討を行った。そして、ホウ化物粒子の炭素量(炭素濃度)を所定値以下にすることで、容易に微粉砕できるホウ化物粒子にできることを見出し、本発明を完成させた。
【0023】
本実施形態のホウ化物粒子は、上述のように一般式XB
mで表されるホウ化物の粒子とすることができる。
【0024】
上述の一般式XB
mで表される本実施形態のホウ化物粒子において、金属元素(X)に対するホウ素(B)の元素比(モル比)(B/X)であるmは、特に限定されるものではないが、3.0以上20.0以下であることが好ましい。
【0025】
一般式XB
mで表されるホウ化物粒子を構成するホウ化物としては、例えばXB
4、XB
6、XB
12等が挙げられる。しかし、波長1000nm付近における近赤外領域の光の透過率を選択的に効率よく低下させる観点から、本実施形態のホウ化物粒子は、XB
4、またはXB
6が主体となっていることが好ましく、一部にXB
12を含んでいてもよい。
【0026】
このため、上記一般式XB
mにおける、金属元素(X)に対するホウ素(B)の元素比(B/X)であるmは、4.0以上6.2以下であることがより好ましい。
【0027】
なお、上記(B/X)が4.0以上の場合、XBや、XB
2等の生成を抑制することができ、理由は明らかではないが、日射遮蔽特性を向上させることができる。また、上記(B/X)が6.2以下の場合には、特に日射遮蔽特性に優れた六ホウ化物の含有割合を増加させることができ、日射遮蔽特性が向上するため好ましい。
【0028】
特に、ホウ化物の中で近赤外線の吸収能が高いことから、本実施形態のホウ化物粒子はXB
6が主体になっていることが好ましい。
【0029】
このため、一般式XB
mで表される本実施形態のホウ化物粒子において、金属元素(X)に対するホウ素(B)の元素比(B/X)であるmは、5.8以上6.2以下であることがさらに好ましい。
【0030】
なお、ホウ化物粒子を製造した場合、得られるホウ化物粒子を含む粉体は、単一の組成のホウ化物の粒子のみから構成されるものではなく、複数の組成のホウ化物を含む粒子とすることができる。具体的には例えばXB
4、XB
6、XB
12等のホウ化物の混合物の粒子とすることができる。
【0031】
従って、例えば、代表的なホウ化物粒子である六ホウ化物の粒子について、X線回折の測定を行った場合に、X線回折の分析上、単一相であっても、実際には微量に他相を含んでいると考えられる。
【0032】
そこで、本実施形態のホウ化物粒子の一般式XB
mにおけるmは、例えば得られたホウ化物粒子を含む粉体をICP発光分光分析法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)等により化学分析した場合の、X元素1原子に対するホウ素(B)の原子数比とすることができる。
【0033】
本実施形態のホウ化物粒子の金属元素(X)は上記一般式に示したように特に限定されるものではなく、例えばY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選ばれる1種類以上の金属元素とすることができる。
【0034】
ただし、ランタンの六ホウ化物である、六ホウ化ランタンは特に近赤外線の吸収能が高いことから、本実施形態のホウ化物粒子は、六ホウ化ランタン粒子を含むことが好ましい。
【0035】
そして、既述のように、本発明の発明者らの検討によれば、ホウ化物粒子中の炭素量(炭素濃度)を所定値以下とすることで、容易に微粉砕できるホウ化物粒子とすることができる。この理由について以下に説明する。
【0036】
本発明の発明者らの検討によれば、ホウ化物粒子中に含まれる炭素が、ホウ化物粒子の成分と炭素化合物を形成する、あるいは原料に含まれる炭素化合物が残留することがある。
【0037】
このような、炭素化合物としては、例えばLaB
2C
2、LaB
2C
4、B
4C、B
4.5C、B
5.6C、B
6.5C、B
7.7C、B
9Cなどが挙げられる。
【0038】
非特許文献1によると、上述の炭素化合物のうち、B
4C、B
4.5C、B
5.6C、B
6.5C、B
7.7C、B
9Cは、硬さの指標となるヤング率はそれぞれ472GPa、463GPa、462GPa、446GPa、352GPa、348GPaと高硬度の炭素化合物となっている。
【0039】
一方、非特許文献2には、例えば六ホウ化ランタンのヤング率は、194GPaと報告されている。また、その他のホウ化物粒子についても同程度のヤング率を有するものと推認される。
【0040】
このように、目的とするホウ化物粒子と比較して、不純物として混入する炭素化合物の方がヤング率が高い場合がある。このため、容易に微粉砕できるホウ化物粒子とするためには、これらの炭素化合物の混入を抑制することが求められる。
【0041】
そして、これらの炭素化合物の混入量(含有量)は、ホウ化物粒子中の炭素量と相関があるため、既述のように、ホウ化物粒子中の炭素量を所定値以下とすることで、容易に微粉砕できるホウ化物粒子とすることができると考えられる。
【0042】
本実施形態のホウ化物粒子中に含まれる炭素量は、燃焼−赤外線吸収法により測定することができる。そして、燃焼−赤外線吸収法により測定した、本実施形態のホウ化物粒子に含まれる炭素量は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
【0043】
また、特にホウ化物粒子中には、上述の炭素化合物のうちB
4C(炭化ホウ素)が生成し易いことから、本実施形態のホウ化物粒子は含有するB
4C量についても抑制することが好ましい。例えば、本実施形態のホウ化物粒子のB
4Cの含有量(含有割合)は1.0質量%以下であることが好ましい。
【0044】
本実施形態のホウ化物粒子に含まれるB
4Cの量、すなわちB
4Cの含有割合を1.0質量%以下とすることで、他の炭素化合物の含有量も抑制でき、特に容易に微粉砕できるホウ化物粒子とすることができ、好ましい。
【0045】
本実施形態のホウ化物粒子中に含まれるB
4C量は、硝酸溶解と濾過分離の前処理を施すことでICP分析によって測定することができる。
【0046】
B
4Cは硝酸にはほとんど溶解しないことが知られている。一方、ホウ化物粒子は硝酸に溶解することが知られている。
【0047】
よって、ホウ化物粒子中のB
4C量を評価する場合、ホウ化物粒子を硝酸に添加し、ホウ化物粒子を溶解させた後、未溶解残渣を濾過分離することで、ホウ化物粒子中のB
4C粒子のみを取り出すことができる。そして、分離したB
4C粒子を炭酸ナトリウムにより溶解し、ICP分析によってホウ素濃度を測定することで、B
4C濃度を算出することができる。
【0048】
このとき、濾過分離後に得られた未溶解残渣がB
4Cであることを確認するため、並行して濾過分離までを同様に処理を施した試料を用意し、濾過分離後に得られた試料の未溶解残渣をXRD測定してB
4C単相であることを確認することが望ましい。
【0049】
ところで、六ホウ化物粒子等のホウ化物粒子は暗い青紫等に着色した粉末であるが、粒径が可視光波長に比べて十分小さくなるように粉砕し、膜中に分散した状態においては膜に可視光透過性が生じる。同時に、赤外線遮蔽機能が発現する。
【0050】
この理由については詳細に解明されていないが、これらのホウ化物材料は自由電子を比較的多く保有し、4f−5d間のバンド間遷移や電子−電子、電子−フォノン相互作用による吸収が近赤外領域に存在することに由来すると考えられる。
【0051】
実験によれば、これらのホウ化物粒子を十分細かくかつ均一に分散した膜では、膜の透過率が、波長400nm以上700nm以下の領域内に極大値をもち、かつ波長700nm以上1800nm以下の領域に極小値をもつことが確認される。可視光波長が380nm以上780nm以下であり、視感度が550nm付近をピークとする釣鐘型であることを考慮すると、このような膜では可視光を有効に透過し、それ以外の日射光を有効に吸収・反射することが理解できる。
【0052】
本実施形態のホウ化物粒子の平均分散粒子径は100nm以下であることが好ましく、85nm以下であることがより好ましい。
【0053】
ホウ化物粒子の平均分散粒子径の下限値は特に限定されないが、例えば1nm以上であることが好ましい。これは、ホウ化物粒子の平均分散粒子径を1nm未満とするのは工業的に困難だからである。
【0054】
なお、ここでいう平均分散粒子径とは動的光散乱法に基づく粒径測定装置により測定することができる。
【0055】
以上に説明した本実施形態のホウ化物粒子は、炭素の含有量が所定値以下であるため、容易に例えば平均分散粒子径が100nm以下、特に85nm以下となるように微粉砕することができる。このため、本実施形態のホウ化物粒子が分散された赤外線遮蔽光学部材は、太陽光やスポットライト等の強い光が照射された場合でもブルーヘイズが生じることを抑制できる。
【0056】
次に、本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の一構成例について説明する。
【0057】
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法としては、得られるホウ化物粒子が一般式XB
m(但し、Xは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sr、Caから選ばれる1種類以上の金属元素)で表され、該ホウ化物粒子を燃焼−赤外線吸収法で測定した時の上記ホウ化物粒子に含まれる炭素量(炭素濃度)が0.2質量%以下であれば特に限定されない。
【0058】
本実施形態のホウ化物粒子の製造方法の一構成例として、例えば、炭素又は炭化ホウ素を還元剤として用いた固相反応法が挙げられる。以下、金属元素としてランタンを用いたホウ化物粒子を製造する場合を例に説明する。
【0059】
例えば、金属元素としてランタンを用いたホウ化物粒子は、ホウ素源と、還元剤と、ランタン源との混合物を焼成することによって製造できる。
【0060】
具体的には、例えばホウ素源及び還元剤として炭化ホウ素を、ランタン源として酸化ランタンを用いて、ホウ化ランタン粒子を製造する場合、まず炭化ホウ素と、酸化ランタンとの原料混合物を調製する。次いで、該原料混合物を不活性雰囲気中で1500℃以上の温度で焼成することにより、炭化ホウ素中の炭素によってランタン酸化物が還元され、一酸化炭素および二酸化炭素が発生して炭素は除去される。さらに、残ったランタンとホウ素からホウ化ランタンが得られる。
【0061】
なお、炭化ホウ素由来の炭素は、一酸化炭素及び二酸化炭素として完全に除去されるのではなく、一部がホウ化ランタン粒子中に残留して不純物炭素となる。そのため、原料中の炭化ホウ素の割合を増加させると得られるホウ化ランタン粒子中の不純物炭素濃度が増大する。
【0062】
既述のように、得られるホウ化物粒子を含む粉体は、単一の組成のホウ化物の粒子のみから構成されるものではなく、LaB
4、LaB
6、LaB
12等との混合物の粒子となる。従って、得られるホウ化物粒子を含む粉体について、X線回折の測定を行った場合に、X線回折の分析上、ホウ化物について単一相であっても、実際には微量に他相を含んでいると考えられる。
【0063】
ここで、上述のように金属元素としてランタンを用いたホウ化物粒子を製造する場合、原料のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタンの元素比B/Laは、特に限定されるものではないが、3.0以上20.0以下であることが好ましい。
【0064】
特に、原料のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタン元素の元素比B/Laが4.0以上の場合、LaB、LaB
2等の生成を抑制できる。また、理由は明らかではないが、日射遮蔽特性を向上することができる。
【0065】
一方、原料のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタンの元素比B/Laが6.2以下の場合、ホウ化物粒子以外に酸化ホウ素粒子が生成することが抑制される。酸化ホウ素粒子は吸湿性があるため、ホウ化物粒子を含む粉体中に酸化ホウ素粒子が混入するとホウ化物粒子を含む粉体の耐湿性が低下し、日射遮蔽特性の経時劣化が大きくなってしまう。
【0066】
このため、原料のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタンの元素比B/Laを6.2以下として酸化ホウ素粒子の生成を抑制することが好ましい。また、元素比B/Laが6.2以下の場合には、特に日射遮蔽特性に優れた六ホウ化物の含有割合を増加させることができ、日射遮蔽特性が向上するため好ましい。
【0067】
さらに不純物炭素濃度を低減するためには、可能な限り原料中の炭化ホウ素の割合を低下させることが有効である。そこで、例えばB/Laを6.2以下としてホウ化ランタンの粒子を生成することで、より確実に不純物炭素濃度が0.2質量%以下のホウ化ランタンの粒子を含む粉体が得られる。
【0068】
以上に説明したように、金属元素としてランタンを用いたホウ化物粒子を製造する場合、ホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタンの元素比(モル比)B/Laは4.0以上6.2以下とすることがより好ましい。原料の組成を上記範囲とすることで、得られるホウ化ランタンの粒子を含む粉体中の、不純物炭素濃度を低く抑制すると同時に高い日射遮蔽特性を示すホウ化ランタン粒子を含有する粉体を得ることができる。
【0069】
また、特に、得られるホウ化ランタンの粒子は、LaB
6が主体になっていることが好ましい。これは、LaB
6は特に近赤外線の吸収能が高いからである。
【0070】
このため、原料のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタン元素の元素比B/Laは、5.8以上6.2以下であることがさらに好ましい。
【0071】
なお、ここでは、ホウ素源及び還元剤として炭化ホウ素を、ランタン源として酸化ランタンを用いて、ホウ化ランタン粒子を製造する場合を例に説明したが、係る形態に限定されるものではない。例えばホウ素源としてホウ素や、酸化ホウ素を、還元剤として炭素を、ランタン源として酸化ランタンをそれぞれ用いることもできる。この場合、生成物中に、余剰の炭素や、酸素が残留しないように、予備試験等を行い、各成分の混合比率を選択することが好ましい。
【0072】
また、例えば、製造するホウ化物粒子が含有する金属元素Xに応じて、酸化ランタンに替えて金属元素Xを含む化合物を用いることもできる。金属元素Xを含む化合物としては例えば、金属元素Xの水酸化物、金属元素Xの水和物、金属元素Xの酸化物から選択された1種類以上が挙げられる。該金属元素Xを含む化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば金属元素Xを含む化合物を含有する溶液と、アルカリ溶液とを撹拌しながら反応させて沈殿物を生成し、該沈殿物から得ることができる。
【0073】
上述のように、酸化ランタンに替えて金属元素Xを含む化合物を用いる場合においても、生成物中に、余剰の炭素や、酸素が残留しないように、予備試験等を行い、各成分の混合比率を選択することが好ましい。例えば、ホウ素源中のホウ素、及び金属元素X源中の金属元素Xの元素比を、既述のホウ素源中のホウ素、及びランタン源中のランタン元素の元素比と同様の比とすることもできる。
【0074】
得られたホウ化物粒子は、例えば湿式粉砕等を行うことで、所望の平均分散粒子径を有するホウ化物粒子とすることができる。
(2)バインダー
既述のようにコーティング層はバインダーを含有することができるため、次にバインダーについて説明する。
【0075】
バインダーとしては、例えば、紫外線(UV)硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂等が目的に応じて選定可能である。特に、バインダーとしては、紫外線(UV)硬化樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、常温硬化樹脂から選択された1種類以上を含むことが好ましい。
【0076】
バインダーとしては、具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。
【0077】
バインダーとしては、例えば上述樹脂群の中から、選択された1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。ただし、上述のコーティング層用のバインダーとしては、上述の樹脂群の中でも、生産性や装置コストなどの観点からUV硬化樹脂を用いることが特に好ましい。
【0078】
また、上記樹脂系のバインダーに替えて、金属アルコキシドを用いた無機バインダーを用いることもできる。金属アルコキシドとしては、Si、Ti、Al、Zr等のアルコキシドを代表的な材料として挙げることができる。これら金属アルコキシドを用いた無機バインダーは、加熱等により加水分解・縮重合させることで、酸化物膜のコーティング層を形成することが可能である。
【0079】
さらに、上記樹脂系のバインダーと上記無機バインダーとは、混合して用いてもよい。
(3)透明基材
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、透明基材の少なくとも一方の面上にコーティング層を有することができる。そこで、次に透明基材の構成例について説明する。
【0080】
透明基材としては、例えば透明フィルム基材、または透明ガラス基材を好ましく用いることができる。
【0081】
透明フィルム基材は、フィルム形状に限定されることはなく、例えば、ボード状でもシート状でも良い。透明フィルム基材の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ふっ素樹脂等から選択された1種類以上を用いることができる。透明フィルム基材としては、ポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましい。
【0082】
また、透明ガラス基材についても特に限定されるものではなく、シリカガラス、ソーダガラス等の透明ガラス基材を用いることができる。
【0083】
また、透明基材の表面は赤外線遮蔽粒子分散液の塗布性や、コーティング層との密着性を改善するため、表面処理がなされていることが好ましい。また、透明基材とコーティング層との接着性を向上させるために、透明基材上に中間層を形成し、中間層上にコーティング層を形成することもできる。中間層の構成は特に限定されるものではなく、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等により構成することができる。
【0084】
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、既述のように、透明基材の少なくとも一方の面上にコーティング層を有し、コーティング層は赤外線遮蔽粒子とバインダーとを含むことができる。
【0085】
コーティング層は、赤外線遮蔽粒子とバインダーとのみから構成されていてもよいが、他の成分を含有することもできる。例えば、後述のようにコーティング層は赤外線遮蔽粒子分散液を用いて製造することができるところ、赤外線遮蔽粒子分散液中には、溶媒や、分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を添加することができる。このため、コーティング層には、赤外線遮蔽粒子分散液への添加成分や、該添加成分に由来する成分が含有されていてもよい。
【0086】
また、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材へさらに紫外線遮蔽機能を付与させるため、コーティング層に無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの粒子、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾール等から選択される少なくとも1種類以上の紫外線遮蔽材を添加してもよい。
【0087】
なお、上記紫外線遮蔽材は、コーティング層に添加する形態に限定されるものではなく、別途紫外線遮蔽材を含有する層を形成することもできる。紫外線遮蔽材を含有する層を形成する場合、その層の配置は特に限定されるものではないが、例えばコーティング層上に形成することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る赤外線遮蔽透明基材の可視光透過率を向上させるために、コーティング層へATO、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、インジウム錫複合酸化物から選択された1種類以上の粒子を、さらに混合してもよい。これらの透明粒子がコーティング層へ添加されることで、波長750nm付近の透過率が増加する一方、1200nmより長波長の赤外光を遮蔽するため、近赤外光の透過率が高く、且つ熱線遮蔽特性の高い熱線遮蔽体が得られる。なお、上記ATO等から選択される1種類以上の粒子についても、コーティング層に添加する形態に限定されるものではなく、コーティング層とは別に、係る粒子を含有する層を形成することもできる。
【0089】
透明基材上のコーティング層の厚さは、特に限定されないが、実用上は20μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。これはコーティング層の厚さが20μm以下であれば、十分な鉛筆硬度を発揮して耐擦過性を有することに加えて、コーティング層における溶媒の揮散およびバインダーの硬化の際に、基板フィルムの反り発生等の工程異常発生を回避できるからである。
【0090】
なお、コーティング層の厚さの下限値は特に限定されないが、例えば10nm以上であることが好ましく、50nm以上であることがより好ましい。
【0091】
コーティング層に含まれる赤外線遮蔽粒子の含有量は、特に限定されないが、透明基材/コーティング層の投影面積あたりの含有量は、0.01g/m
2以上1.0g/m
2以下であることが好ましい。これは、含有量が0.01g/m
2以上であれば赤外線遮蔽粒子を含有しない場合と比較して有意に熱線遮蔽特性を発揮でき、含有量が1.0g/m
2以下であれば赤外線遮蔽透明基材が可視光の透過性を十分に保つことができるからである。
【0092】
また、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、コーティング層の可視光(波長400nm以上780nm以下)透過率を45%以上55%以下となるように設定した場合の、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値が1.5%以下となっていることが好ましい。
【0093】
なお、十分な可視光透過率を有する透明基材を用い、透明基材が赤外線遮蔽透明基材の可視光透過率にほとんど影響を与えない場合、すなわち、例えば90%以上の可視光透過率を有する透明基材を用いている場合、上記コーティング層の可視光透過率は、赤外線遮蔽透明基材の可視光透過率と読み替えてもよい。
【0094】
ここで、ブルーヘイズの評価方法について説明する。
【0095】
ブルーヘイズを、直接測定する方法は知られていない。しかし、本発明の出願人は、試料である赤外線遮蔽粒子分散体に光を当てたときの透過光の成分として直線入射光と散乱光とに着目し、波長毎の拡散透過率を求めることにより「ブルーヘイズ」を評価する方法を既に提案している(特開2009−150979号公報を参照)。以下、波長毎の拡散透過率、すなわち、拡散透過プロファイルを測定する原理を
図1および
図2を用いて説明する。
【0096】
まず、拡散透過プロファイルを測定する測定装置について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0097】
図1、
図2に示すように該測定装置10は、積分球14を備えている。そして、積分球14は、球状本体内面が拡散反射性を有し、かつ測定試料12(
図2参照)が取り付けられる第一開口部141、標準反射板15またはライトトラップ部品16が取り付けられる第二開口部142、及び受光器13が取り付けられる第三開口部143を有している。
【0098】
また、第一開口部141を介して球状空間内に入射される直線光を出射する光源11と、上記受光器13に取り付けられかつ受光された反射光または散乱光を分光する図示しない分光器と、上記分光器に接続されかつ分光された反射光または散乱光の分光データを保存する図示しないデータ保存手段と、保存されたブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データから拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を得る図示しない演算手段を具備している。
【0099】
ここで、積分球14は、球状本体内面に硫酸バリウム若しくはスペクトラロン(SPECTRALON:登録商標)等が塗布されて拡散反射性を有するもので、標準反射板15への入射角は、標準側、対照側とも例えば10°とすることができる。また、上記受光器13としては、例えば、光電子倍増管(紫外・可視領域)や、冷却硫化鉛(近赤外領域)を使用したものを用いることができる。また、受光器13に取り付けられる図示しない分光器については、紫外・可視領域の波長測定範囲、測光正確さ(±0.002Abs)が必要である。
【0100】
次に、球状空間内に入射される直線光を出射する光源11としては、例えば、紫外領域は重水素ランプ、可視・近赤外領域は50Wハロゲンランプを適用できる。
【0101】
また、標準反射板15には、例えば材質がスペクトラロン(SPECTRALON)の白板を用いることができ、上記ライトトラップ部品16には、入射された直線光を反射させずにトラップする機能が必要で、例えば、入射された直線光をほぼ完全に吸収するダークボックスが用いられる。
【0102】
そして、上記拡散透過プロファイルの測定装置を用いて、測定試料である赤外線遮蔽透明基材等の拡散透過プロファイルの極大値を、ブランク透過光強度測定工程と、拡散透過光強度測定工程と、拡散透過率演算工程との各工程により評価できる。
【0103】
まず、ブランク透過光強度測定工程においては、
図1に示すように積分球14の第二開口部142に標準反射板15を取り付け、第一開口部141に測定試料を取り付けない状態で光源11からの直線光を第一開口部141を介し球状空間内に入射させる。そして、標準反射板15で反射された反射光を受光器13で受光し、かつ、受光器13に取り付けられた図示しない分光器により分光して反射光の分光データを得る。この際の分光データが、ブランク透過光強度となる。
【0104】
次に、上記拡散透過光強度測定工程においては、
図2に示すように積分球14の第二開口部142にライトトラップ部品16を取り付ける。そして、第一開口部141に測定試料12を取り付けた状態で光源11からの直線光を測定試料12と第一開口部141を介し、球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品16でトラップされた光以外の散乱光を受光器13で受光する。この際、受光器13に取り付けられた図示しない分光器により分光して散乱光の分光データを得る。この際の分光データが、拡散透過光強度となる。
【0105】
そして、上記拡散透過率演算工程において、図示しないデータ保存手段(図示せず)により保存されたブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データに基づき、図示しない演算手段により拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の拡散透過率を求めると共に、得られた波長毎の拡散透過率から、測定試料12の拡散透過プロファイルにおける波長360nm〜500nm領域の極大値を求めることができる。
【0106】
ここで、拡散透過プロファイルを測定する測定装置においては、上記光源11と測定試料12との間に光線調整用の光学系を設けてもよい。そして、この光学系では、例えば複数枚のレンズを組み合わせて平行光を調整し、絞りにより光量の調整を行う。場合によっては、フィルターによって特定波長のカットを行ってもよい。
【0107】
そして、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、既述のようにコーティング層の可視光(波長400nm以上780nm以下)透過率を45%以上55%以下のいずれかに設定した場合の、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値が1.5%以下となっていることが好ましい。これは、上記条件を満たす赤外線遮蔽透明基材ではブルーヘイズがほとんど観測されないことが確認されているからである。
【0108】
なお、コーティング層の可視光透過率が45%以上55%以下に設定されているのは、拡散透過率(拡散透過プロファイル)の測定条件を特定するためであり、拡散透過率が可視光透過率に比例するため範囲が設定されている。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過率(拡散透過プロファイル)を測定するのは、その領域での散乱がまさしくブルーヘイズの原因であるからである。上記範囲での拡散透過率の極大値が1.5%以下であれば実験的に目視でブルーヘイズは観測されない。
【0109】
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、例えば各種光学部材に用いることができ、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材を含む赤外線遮蔽光学部材とすることができる。
【0110】
ここでいう赤外線遮蔽光学部材としては、例えば建物の窓や、自動車の窓等が挙げられる。
【0111】
以上に説明した、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材、及び該赤外線遮蔽透明基材を含む赤外線遮蔽光学部材によれば、容易に微粉砕することができるホウ化物粒子を用いた赤外線遮蔽透明基材とすることができる。このため、コーティング層に含まれる赤外線遮蔽粒子の平均分散粒子径を十分に小さくすることができ、ブルーヘイズの発生を抑制できる。
(赤外線遮蔽透明基材の製造方法)
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、例えば赤外線遮蔽粒子分散液を用いて製造することができる。このため、ここではまず赤外線遮蔽粒子分散液、及びその製造方法について説明する。
(1)赤外線遮蔽粒子分散液、及びその製造方法
上述のように、本実施形態赤外線遮蔽透明基材は、ここまで説明した赤外線遮蔽粒子であるホウ化物粒子を含有する赤外線遮蔽粒子分散液を用いて製造できる。このため、ここでは赤外線遮蔽粒子分散液、及びその製造方法の一構成例について説明する。
【0112】
赤外線遮蔽粒子分散液は、既述の赤外線遮蔽粒子を溶媒中に分散させたものである。赤外線遮蔽粒子分散液は、既述の赤外線遮蔽粒子、すなわちホウ化物粒子と、所望により適量の分散剤と、カップリング剤と、界面活性剤等とを、溶媒へ添加し分散処理を行い、当該赤外線遮蔽粒子を溶媒へ分散することで得られる。
【0113】
赤外線遮蔽粒子分散液の溶媒には、赤外線遮蔽粒子の分散性を保つための機能と、分散液を塗布する際に塗布欠陥を生じさせないための機能が要求される。
【0114】
具体的には、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶媒、3−メチル−メトキシ−プロピオネート(MMP)等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができ、これらの中から選択した1種類、または2種類以上を組みあわせて用いることができる。
【0115】
上記した中でも、溶媒としては、特にMIBK、MEK等のケトン類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、PGMEA、PE−AC等のグリコールエーテルアセテート類等、疎水性の高いものがより好ましい。このため、これらの中から選択した1種類または2種類以上を組みあわせて用いることがより好ましい。
【0116】
また、透明フィルム基材や透明ガラス基材等の透明基材上にコーティング層を形成するためには、溶媒として低沸点の有機溶媒を選択することが好ましい。これは、溶媒が低沸点の有機溶媒であると、コーティング後の乾燥工程で溶媒を容易に取り除くことができ、コーティング層の特性、例えば硬度や透明性などを損なうことがないからである。
【0117】
具体的には、例えばメチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類から選択した1種類、または2種類以上を組みあわせて用いることが好ましい。
【0118】
分散剤、カップリング剤、界面活性剤は、用途に合わせて選定可能であるが、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を、官能基として有しているものであることが好ましい。これらの官能基は赤外線遮蔽粒子の表面に吸着し、当該赤外線遮蔽粒子の凝集を防ぐことで、透明基材上にコーティング層を形成した場合に、該コーティング層中において、赤外線遮蔽粒子を均一に分散させる効果を発揮する。
【0119】
分散剤、カップリング剤、界面活性剤としては、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等を好適に用いることができる。
【0120】
なお、高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。
【0121】
ただし、分散剤、カップリング剤、界面活性剤としては、これらに限定されるものではなく、各種分散剤、カップリング剤、界面活性剤を用いることができる。
【0122】
赤外線遮蔽粒子分散液への分散剤、カップリング剤、界面活性剤から選択された1種類以上の材料の添加量は、赤外線遮蔽粒子である、ホウ化物粒子100重量部に対し10重量部以上1000重量部以下の範囲であることが好ましく、20重量部以上200重量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0123】
分散剤等の添加量が上記範囲にあれば、赤外線遮蔽粒子が分散液中で凝集を起こすことがなく、分散安定性が保たれる。
【0124】
液状媒体中に、赤外線遮蔽粒子であるホウ化物粒子を分散する方法は特に限定されるものではない。例えば赤外線遮蔽粒子分散液の原料混合物を、ビーズミル、ボールミル、サンドミルなどの湿式媒体ミルを用いて分散処理する方法が挙げられる。特に、本実施形態の赤外線遮蔽粒子分散液は、平均分散粒子径が100nm以下の赤外線遮蔽粒子を液状媒体中に分散させた状態を有することが好ましく、該赤外線遮蔽粒子の平均分散粒子径は85nm以下であることがより好ましい。このためビーズミル等の媒体撹拌ミルを用いた湿式粉砕法により、ホウ化物粒子を分散して分散液を調製することが好ましい。
【0125】
均一な赤外線遮蔽粒子分散液を得るために、各種添加剤や分散剤を添加したり、pH調整したりしても良い。
【0126】
上述した赤外線遮蔽粒子分散液中における赤外線遮蔽粒子の含有量は、0.01質量%以上30質量%以下であることが好ましい。赤外線遮蔽粒子の含有量が0.01質量%以上であれば、透明基材上に赤外線遮蔽能を有するコーティング層を形成することができるからである。また、赤外線遮蔽粒子の含有量が30質量%以下であれば、透明基材上に赤外線遮蔽分散液の塗布を容易に行うことができ、コーティング層の生産性を高めることができるからである。
【0127】
また、赤外線遮蔽粒子分散液中の赤外線遮蔽粒子は、平均分散粒子径が100nm以下で分散していることが好ましく、85nm以下で分散していることがより好ましい。赤外線遮蔽粒子の平均分散粒子径が100nm以下であれば、本実施形態に係る赤外線遮蔽粒子分散液を用いて製造された赤外線遮蔽透明基材におけるブルーヘイズの発生を抑制し、光学特性を向上させることができるからである。また、該平均分散粒子径が85nm以下の場合、赤外線遮蔽透明基材におけるブルーヘイズの発生を特に抑制できるからである。
【0128】
なお、既述のホウ化物粒子を用いて赤外線遮蔽粒子分散液を作製した場合に、赤外線遮蔽粒子分散液(スラリー)のゲル化等の問題が発生することなく効率的に平均分散粒子径が100nm以下、特に85nm以下まで粉砕が可能になる理由について、本発明の発明者らは以下のように推察している。
【0129】
ホウ化物粒子は硬質なために、湿式媒体撹拌ミルを用いて粉砕する際に、メディアビーズが摩耗した微粉やメディアビーズが破砕した細かなビーズ片などの摩耗カスがスラリー中に混入してしまう。このとき、炭素濃度の増大に伴いホウ化物粒子の硬度が増大するため、含有する炭素濃度が0.2質量%よりも高いホウ化物粒子を原料とした場合、大量のメディアビーズの摩耗カスがスラリー中へ混入してしまう。係るメディアビーズの摩耗カス混入がスラリーの粘度を上昇させる原因となっている。
【0130】
これに対して、含有する炭素濃度が0.2質量%以下のホウ化物粒子を原料として用いることで、平均分散粒子径が100nm以下、特に85nm以下まで粉砕する場合、メディアビーズの摩耗カスの混入量が大きく減少するので、スラリーの粘度が悪化することなく効率的に粉砕が可能であると推察している。但し、スラリーの粘度上昇化については未解明な点も多く、上記以外の作用が働いている可能性もあるため、上記作用に限定されるわけではない。
(2)赤外線遮蔽透明基材の製造方法
次に、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材の製造方法の一構成例について説明する。
【0131】
本実施形態の赤外線遮蔽透明基材は、上述した赤外線遮蔽粒子分散液を用いて、透明基材上へ、赤外線遮蔽粒子を含有するコーティング層を形成することで、製造することができる。以下に具体的な手順の例について説明する。
【0132】
上述した赤外線遮蔽粒子分散液にバインダーを添加し、塗布液を得る。
【0133】
得られた塗布液を透明基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させ所定の方法でバインダーを硬化させれば、当該赤外線遮蔽粒子が媒体中に分散したコーティング層を形成できる。
【0134】
また、赤外線遮蔽粒子分散液にバインダーを添加せず、濃度調整した塗布液を作製し、透明基材上にコーティングした後、溶媒を蒸発させ、その後、バインダーを含む塗布液をオーバーコートして、溶媒を蒸発させすることによりコーティング層を形成してもよい。
【0135】
コーティング層に好適に用いることができるバインダーや、透明基材については既述のため、ここでは説明を省略する。
【0136】
なお、透明基材の表面は赤外線遮蔽粒子分散液の塗布性や、コーティング層との密着性を改善するため、表面処理がなされていることが好ましい。また、透明基材とコーティング層との接着性を向上させるために、透明基材上に中間層を形成し、中間層上にコーティング層を形成することもできる。中間層の構成は特に限定されるものではなく、例えばポリマフィルム、金属層、無機層(例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機酸化物層)、有機/無機複合層等により構成することができる。
【0137】
透明基材上にコーティング層を設ける方法は、透明基材表面へ赤外線遮蔽粒子分散液が均一に塗布できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等を挙げることができる。
【0138】
例えば赤外線遮蔽粒子に含まれるバインダーとしてUV硬化樹脂を用い、バーコート法を用いてコーティング層を形成する場合、赤外線遮蔽粒子分散液について、適度なレベリング性をもつよう液濃度及び添加剤を適宜調整しておくことが好ましい。そして、コーティング層の厚み、及び赤外線遮蔽粒子の含有量が、得られる赤外線遮蔽透明基材の目的を達成できるように、バー番号のワイヤーバーを選択し、透明基材上に塗膜を形成することができる。
【0139】
次いで、塗膜中に含まれる有機溶媒を乾燥により除去した後、紫外線を照射し硬化させることで、透明基材上にコーティング層を形成することができる。このとき、塗膜の乾燥条件としては、各成分、溶媒の種類や使用割合によっても異なるが、例えば60℃〜140℃の温度で20秒〜10分間程度加熱することで実施できる。紫外線の照射方法は特に制限はなく、例えば超高圧水銀灯などのUV露光機を好適に用いることができる。
【0140】
その他、コーティング層の形成の前後工程により、透明基材とコーティング層との密着性、コーティング時の塗膜の平滑性、有機溶媒の乾燥性などを操作することもできる。前記前後工程としては、例えば透明基材の表面処理工程、プリベーク(基板の前加熱)工程、ポストベーク(基板の後加熱)工程などが挙げられ、適宜選択することができる。プリベーク工程および/あるいはポストベーク工程における加熱温度は80℃以上200℃以下、加熱時間は30秒以上240秒以下であることが好ましい。
【0141】
形成するコーティング層の厚さや、コーティング層中の赤外線遮蔽粒子の含有量の好適な範囲については既述のため、ここでは説明を省略する。
【0142】
なお、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材へさらに紫外線遮蔽機能を付与させるため、コーティング層に無機系の酸化チタンや酸化亜鉛、酸化セリウムなどの粒子、有機系のベンゾフェノンやベンゾトリアゾールなどの少なくとも1種類以上を添加してもよい。
【0143】
また、本実施形態に係る赤外線遮蔽透明基材の可視光透過率を向上させるために、コーティング層へATO、ITO、アルミニウム添加酸化亜鉛、インジウム錫複合酸化物から選択された1種類以上の粒子を、さらに混合してもよい。これらの透明粒子がコーティング層へ添加されることで、波長750nm付近の透過率が増加する一方、1200nmより長波長の赤外光を遮蔽するため、近赤外光の透過率が高く、且つ熱線遮蔽特性の高い熱線遮蔽体が得られる。
【0144】
以上に説明した、本実施形態の赤外線遮蔽透明基材の製造方法によれば、容易に微粉砕することができるホウ化物粒子を用いた赤外線遮蔽透明基材を製造することができる。係る赤外線遮蔽透明基材によれば、コーティング層に含まれる赤外線遮蔽粒子の平均分散粒子径を十分に小さくすることができ、ブルーヘイズの発生を抑制できる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0146】
ここでまず以下の実施例、比較例における試料の評価方法について説明する。
(ホウ化物粒子の組成)
以下の実施例、比較例で得られたホウ化物粒子について、ICP(島津製作所製 型式:ICPE9000)を用いて分析を行い、一般式XB
mで表した場合の金属元素Xに対するホウ素(B)の元素比すなわちホウ化物粒子中のホウ素(B)と金属元素Xとの元素比(B/X)であるmの値を算出した。
(ホウ化物粒子中の炭素濃度)
以下の実施例、比較例で作製したホウ化物粒子中の炭素量(炭素濃度)は、燃焼−赤外線吸収法で測定した。
(ホウ化物粒子中のB
4C濃度)
得られたホウ化物粒子のうち、B
4C濃度測定用の試料を2つに分け、それぞれ白金坩堝中に計り取り、7N硝酸を添加して50℃まで加温してホウ化物粒子を溶解した。放冷後、純水を加えてから、孔径0.2μmのセルロースアセテート製メンブランフィルターにより未溶解残渣(B
4C)を濾過分離した。
【0147】
得られた一方の未溶解残渣を、元の白金坩堝に入れ、ホウ素の揮散を防止するために水酸化カルシウム飽和水溶液で湿らせた後に約80℃の乾燥機中で乾燥した。乾燥後は炭酸ナトリウムを加えて十分に混和してから加熱融解した。放冷後,坩堝内の溶融塩を温水で溶解しテフロン(登録商標)ビーカーに移した。硝酸を添加後、加熱沸騰させて炭酸ガスを除去してからICP用の試料溶液とした。得られた試料溶液中のホウ素濃度をICPにより分析した。
【0148】
また、得られたもう一方の未溶解残渣についてXRD測定を行い、未溶解残渣がB
4C単相であるかを確認した。B
4C単相であった場合、ICPにより分析したホウ素濃度からB
4C濃度を算出した。
(可視光透過率)
以下の実施例、比較例中の可視光透過率とは、試料に垂直入射する昼光の光束について透過光束の入射光束に対する比である。ここで、上記昼光とは、国際照明委員会が定めたCIE昼光を意味する。このCIE昼光では、観測データに基づき黒体放射の色温度と同じ色温度の昼光の分光照度分布を波長560nmの値に対する相対値で示している。また、上記光束とは、放射の波長ごとの放射束と視感度(人の目の光に対する感度)の値の積の数値を波長について積分したものである。つまり、可視光透過率とは、波長380nm以上780nm以下の領域の光透過量を人の目の視感度で規格化した透過光量の積算値で人の目の感じる明るさを意味する値である。
【0149】
透過率測定は、分光光度計(日立製作所製 型式:U−4100)を使用して、波長300nm以上2600nm以下の範囲において1nmの間隔で測定している。
(拡散透過プロファイルの極大値)
以下の実施例、比較例で作製した赤外線遮蔽透明基材について、分光器として、分光光度計(日立製作所製 型式:U−4100)を使用し、
図1、
図2を用いて説明した方法により波長300nm以上800nm以下の範囲で1nmの間隔で拡散透過率を測定した。そして、得られた拡散透過プロファイルから極大値を求めた。
(ヘイズ)
赤外線遮蔽透明基材のヘイズ値はヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 型式:HM−150)を用い、JIS K 7105−1981に基づき測定を行なった。
(平均分散粒子径)
平均分散粒子径は動的光散乱法に基づく粒径測定装置(大塚電子(株)製 型式:ELS−8000)により測定した。粒子屈折率は1.81とし、粒子形状は非球形を用いた。バックグラウンドはトルエンで測定し、溶媒屈折率は1.50とした。
(ブルーヘイズ)
ブルーヘイズは、以下の実施例、比較例で作製した赤外線遮蔽透明基材に人口太陽光ランプ[セリック(株)社製 XC-100]を照射し目視で確認した。
【0150】
以下に各実施例、比較例での試料の作製条件、及び評価結果について説明する。
[実施例1]
ホウ素源及び還元剤として炭化ホウ素、ランタン源として酸化ランタンを用い、これらをランタンとホウ素の元素比であるB/Laが5.90となるように秤量、混合した。その後、アルゴン雰囲気中、1600±50℃の温度条件で6時間焼成し、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0151】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.05質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、5.8であることが確認できた。
【0152】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.2質量%であった。
【0153】
次に、作製した六ホウ化ランタン粒子含有粉末(赤外線遮蔽材料)を10重量部、トルエン80重量部、分散剤(アミノ基を有するアクリル系高分子分散剤)10重量部の割合となるように秤量、混合し、3kgのスラリーを調製した。このスラリーをビーズと共に媒体撹拌ミルに投入し、スラリーを循環させて、20時間粉砕分散処理を行った。
【0154】
使用した媒体撹拌ミルは横型円筒形のアニュラータイプ(アシザワ株式会社製)であり、ベッセル内壁とローター(回転撹拌部)の材質はZrO
2とした。また、上記ビーズには、直径0.3mmのYSZ(Yttria−Stabilized Zirconia:イットリア安定化ジルコニア)製のビーズを使用した。ローターの回転速度は13m/秒とし、スラリー流量1kg/分にて粉砕した。得られた分散液中のホウ化物粒子の平均分散粒子径を測定したところ70nmであった。
【0155】
さらに、得られた分散液、紫外線硬化樹脂、及びトルエンを、重量比で分散液:紫外線硬化樹脂:トルエン=2:1:1の割合で混合して塗布液を作製した。これを透明ガラス基材上にバーコーターで塗布して塗布膜を形成した。このとき、得られるコーティング層の可視光透過率が50%程度となるようにコーティングに用いるバーを選択した。なお、バーコーターとしては井元製作所製IMC−700を用いており、得られるコーティング層の厚さは約10μmとなった。
【0156】
次に、70℃において1分間保持することでこの塗布膜から溶媒を蒸発させた後、紫外線照射して塗布膜を硬化させた。そして、得られた赤外線遮蔽透明基材の光学特性を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
【0157】
得られた赤外線遮蔽透明基材のヘイズは0.2%であり、透明性が極めて高いことが確認された。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値は0.6%であり、また、人口太陽光を照射したときのブルーヘイズは観測されなかった。
[実施例2]
ランタンとホウ素の元素比B/Laが5.95となるように炭化ホウ素、及び酸化ランタンを秤量、混合した点以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0158】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.1質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、5.9であることが確認できた。
【0159】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.5質量%であった。
【0160】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0161】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.00となるように炭化ホウ素、及び酸化ランタンを秤量、混合した点以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0162】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.2質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、5.9であることが確認できた。
【0163】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.9質量%であった。
【0164】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0165】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.10となるように炭化ホウ素、及び酸化ランタンを秤量、混合した点以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0166】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.2質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0167】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.9質量%であった。
【0168】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0169】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.20となるように炭化ホウ素、及び酸化ランタンを秤量、混合し、1650±50℃の温度条件で焼成した点以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0170】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.2質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0171】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.9質量%であった。
【0172】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0173】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
ホウ素源として酸化ホウ素、ランタン源として酸化ランタン、還元剤として炭素(黒鉛)を用い、ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.10となるように秤量・混合したこと以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。ただし、酸化ホウ素100重量部に対して、炭素60重量部を秤量・混合した。
【0174】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.1質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0175】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.4質量%であった。
【0176】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0177】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
セリウムとホウ素の元素比B/Ceが6.10となるように、さらに酸化ランタンの代わりに酸化セリウムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、六ホウ化セリウム粒子含有粉末を得た。
【0178】
得られた六ホウ化セリウム粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.2質量%であった。また、得られた六ホウ化セリウム粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式CeB
mにおける、セリウム元素(Ce)に対するホウ素(B)の元素比(B/Ce)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0179】
さらに、得られた六ホウ化セリウム粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化セリウム粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、0.9質量%であった。
【0180】
そして、係る六ホウ化セリウム粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて赤外線遮蔽透明基材を作製した。
【0181】
得られた分散液、及び赤外線遮蔽透明基材について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
ホウ素源及び還元剤として炭化ホウ素、ランタン源として酸化ランタンを用い、これらをランタンとホウ素の元素比B/Laが6.10となるように秤量、混合した。その後、アルゴン雰囲気中、1480±50℃の温度条件で6時間焼成し、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0182】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.6質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0183】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、2.6質量%であった。
【0184】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。
【0185】
得られた分散液について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0186】
なお、分散液を調製するため、20時間粉砕処理を行った時点で平均分散粒子径が105nmであり100nmより大きかったが、スラリー粘度上昇のため粉砕効率が著しく低下したことから、これ以上粉砕処理を続けても100nm以下の粒子径を得ることは難しいと判断した。
【0187】
得られた分散液を用いて実施例1の場合と同様にして透明ガラス基材上にコーティング層を形成し、赤外線遮蔽透明基材とした。そして、得られた赤外線遮蔽透明基材の光学特性を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
【0188】
得られた赤外線遮蔽透明基材のヘイズは1.6%であり、透明性が非常に低いことが確認された。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値は1.9%であり、また、人口太陽光を照射したときに目視ではっきりとブルーヘイズが確認された。
[比較例2]
ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.20となるように炭化ホウ素及び酸化ランタンを秤量、混合した点以外は、比較例1と同様の条件にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。
【0189】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.8質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.1であることが確認できた。
【0190】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、3.7質量%であった。
【0191】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて実施例1の場合と同様にしてガラス基板上にコーティング層を形成した。そして、得られた赤外線遮蔽透明基材の光学特性を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
【0192】
得られた赤外線遮蔽透明基材のヘイズは1.8%であり、透明性が非常に低いことが確認された。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値は2.4%であり、また、人口太陽光を照射したときに、比較例1の場合と同様に目視ではっきりとブルーヘイズが確認された。
[比較例3]
ホウ素源として酸化ホウ素、ランタン源として酸化ランタンを、還元剤として炭素(黒鉛)を用い、ランタンとホウ素の元素比B/Laが6.10となるように秤量・混合したこと以外は、比較例1と同様にして、六ホウ化ランタン粒子含有粉末を得た。ただし、酸化ホウ素100重量部に対して、炭素60重量部を秤量・混合した。
【0193】
得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.7質量%であった。また、得られた六ホウ化ランタン粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式LaB
mにおける、ランタン元素(La)に対するホウ素(B)の元素比(B/La)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0194】
さらに、得られた六ホウ化ランタン粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化ランタン粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、3.4質量%であった。
【0195】
そして、係る六ホウ化ランタン粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて実施例1の場合と同様にしてガラス基板上にコーティング層を形成した。そして、得られた赤外線遮蔽透明基材の光学特性を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
【0196】
得られた赤外線遮蔽透明基材のヘイズは1.7%であり、透明性が非常に低いことが確認された。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値は2.2%であり、また、人口太陽光を照射したときに、比較例1の場合と同様に目視ではっきりとブルーヘイズが確認された。
[比較例4]
セリウムとホウ素の元素比B/Ceが6.10となるように、さらに酸化ランタンの代わりに酸化セリウムを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、六ホウ化セリウム粒子含有粉末を得た。
【0197】
得られた六ホウ化セリウム粒子含有粉末の含有炭素濃度を燃焼−赤外線吸収法で測定したところ、炭素量は0.9質量%であった。また、得られた六ホウ化セリウム粒子の組成についてICPにより評価を行ったところ、一般式CeB
mにおける、セリウム元素(Ce)に対するホウ素(B)の元素比(B/Ce)であるmは、6.0であることが確認できた。
【0198】
さらに、得られた六ホウ化セリウム粒子含有粉末について、既述のホウ化物粒子中のB
4C濃度の評価方法により、六ホウ化セリウム粒子含有粉末のB
4C濃度を測定したところ、4.4質量%であった。
【0199】
そして、係る六ホウ化セリウム粒子含有粉末を用いた点以外は、実施例1と同様にして、ホウ化物粒子分散液を調製した。また、得られた分散液を用いて実施例1の場合と同様にしてガラス基板上にコーティング層を形成した。そして、得られた赤外線遮蔽透明基材の光学特性を測定した。測定結果を以下の表1に示す。
【0200】
得られた赤外線遮蔽透明基材のヘイズは1.9%であり、透明性が非常に低いことが確認された。また、波長360nm以上500nm以下の領域における拡散透過プロファイルの極大値は2.5%であり、また、人口太陽光を照射したときに、比較例1の場合と同様に目視ではっきりとブルーヘイズが確認された。
【0201】
【表1】
実施例1〜実施例7では、固相反応等により得られたホウ化物粒子を、比較的簡単かつ経済的に、平均分散粒子径を100nm以下、特に85nm以下にまで粉砕して微細化することができることが確認できた。また、実施例1〜実施例7では、得られるホウ化物粒子は平均分散粒子径が100nm以下、特に85nm以下となるため、その粒子または分散液を用いて作製したコーティング層を備えた赤外線遮蔽透明基材に人口太陽光を照射しても青白色に着色しない、すなわち、ブルーヘイズが抑制できることが確認される。
【0202】
従って、実施例1〜実施例7の赤外線遮蔽透明基材を有する赤外線遮蔽光学部材は、建材用の窓ガラスや車の窓ガラス等に適用できることが分かる。
【0203】
なお、実施例1〜実施例7では、いずれもコーティング層の厚さは10μm程度であり、20μm以下となっている。
【0204】
一方、含有する炭素濃度が0.2質量%より高いホウ化物粒子を原料として用いた比較例1〜比較例4は、粉砕処理20時間では平均分散粒子径が100nmより大きく、拡散透過プロファイルの極大値も1.5%よりも高くなっている。そのため、ブルーヘイズが見られるなど、建材用の窓ガラスや車の窓ガラス等に適用するには問題があった。