特許第6838906号(P6838906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838906
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】液体用バッグの急速凍結用容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20210222BHJP
   A61J 1/00 20060101ALI20210222BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   A61J3/00 301
   A61J1/00 430
   A61J1/10
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-185120(P2016-185120)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-47085(P2018-47085A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2019年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕貴
【審査官】 菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−209995(JP,A)
【文献】 特表2002−511826(JP,A)
【文献】 特開2012−194141(JP,A)
【文献】 特開2004−047907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と該本体部にチューブ接続部が設けられて液体を封入した液体用バッグを収容し、低温液化ガスを容器外面に噴霧又は滴下して前記液体用バックを急速凍結させるための液体用バッグの急速凍結用容器であって、
前記液体用バッグを収容するバッグ収容部が、金属板と、該金属板に対向配置された対向板と、前記金属板と前記対向板を所定の間隔を離した状態で連結する側壁部とを備えてなり、
前記金属板の外面は、噴霧又は滴下した低温液化ガスを貯留できる貯留部を有し、貯留された低温液化ガスと接触して冷却され、
前記金属板の内面は、前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で前記液体用バッグの本体部に当接することを特徴とする液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項2】
本体部と該本体部にチューブ接続部が設けられて液体を封入した液体用バッグを収容し、低温液化ガスを用いて急速凍結させるための液体用バッグの急速凍結用容器であって、
前記液体用バッグを収容するバッグ収容部が、金属板と、該金属板に対向配置された対向板と、前記金属板と前記対向板を所定の間隔を離した状態で連結する側壁部とを備えてなり、
前記金属板の外面は、前記低温液化ガスと接触して冷却され、
前記金属板の内面は、前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で前記液体用バッグの本体部に当接し、
前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で、前記金属板の内面における前記液体用バッグのチューブ接続部に対向する部位に、前記金属板よりも熱伝導性の低い材質をコーティングしたことを特徴とする液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項3】
前記金属板の外面に低温液化ガスを貯留できる貯留部を有することを特徴とする請求項2に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項4】
前記金属板と前記対向板が共に平板からなり、両者が互いに平行になるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項5】
前記対向板は、金属製であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項6】
前記金属板及び前記対向板は、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることを特徴とする請求項5記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項7】
前記対向板及び前記側壁部は、前記金属板と同じ材質の金属で形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項8】
前記側壁部は、前記金属板側と前記対向板側に分割され、当該分割される部位において嵌合可能になっていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【請求項9】
前記金属板の内面側における前記液体用バッグの本体部が当接する部位に温度測定手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体用バッグの急速凍結用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製剤等の液体を封入した液体用バッグを収容して急速凍結させるための液体用バッグの急速凍結用容器に関し、特に、収容した液体用バッグを低温液化ガスを用い急速凍結させ、冷凍保存することができる液体用バッグの急速凍結用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液体製剤は、通常、菌の混入を防ぐ目的でケース内に密閉されている。液体製剤を密閉するためのケースとしては、一般に、図2に示すような2D(2次元、平面)状の樹脂フィルム製の液体用バッグが用いられる。
また、液体製剤は、その有効性と安全性を保持するため、所定の温度で冷蔵または冷凍保存されているのが一般的である。
【0003】
液体製剤を冷凍保存する場合においては、液体製剤中の抗原の残存率を高くすることが望まれており、液体製剤を冷却して凍結する際の冷却速度が高いほど、液体製剤中の抗原の残存率は高くなることが知られている。
液体製剤中の抗原の残存率と冷却速度との具体的な関係の一例を挙げると、抗原の残存率を90%以上とするためには、常温から冷却開始30分以内で−50℃、かつ常温から冷却開始50分以内で−90℃が目標冷却速度として要求されている。
【0004】
特許文献1には、密閉した容器に封入させた液体製剤を凍結させ、その後滅菌させる技術が開示されている。特許文献1では、凍結には一般的なフリーザーを用いてもよいし、液体窒素などの冷却冷媒を用いてもよい、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−169250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体製剤の保存期間を長期化するため、液体製剤を冷凍保存することが求められているが、特許文献1に開示されている一般的なフリーザーによる凍結方法では、前述の目標冷却速度を満たして液体製剤の凍結を行うことができず、液体製剤中の抗原の残存率が低くなるという問題があった。
【0007】
また、液体窒素を噴霧する凍結方法は、十分な冷却速度を得ることができるものの、液体用バッグにおいて噴霧された液体窒素が直接触れた位置が極低温となり、樹脂フィルム製の液体用バッグ自体が破損する問題があった。さらに、液体用バッグ内に密閉された液体は凍結すると膨張するため、凍結に偏りがあると液体用バッグが破損してしまう問題があった。
【0008】
さらに、凍結した液体用バッグの保存方法として、従来は、凍結した液体用バッグを冷凍庫などでまとめて冷凍保存するのが一般的であったが、これにより樹脂フィルム製の液体用バッグ本体が破損したり、液体用バッグに設けられているチューブ接続部(図2参照)が折れたりする問題があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、液体製剤等の液体が封入された液体用バッグを急速冷凍するに際し、液体用バッグを破損させることなく、該液体用バッグに封入された液体を短時間で一律に凍結させることが可能であり、かつ凍結したバッグが破損することなく冷凍保存が可能な液体用バッグの急速凍結用容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る液体用バッグの急速凍結用容器は、本体部と該本体部にチューブ接続部が設けられて液体を封入した液体用バッグを収容し、低温液化ガスを用いて急速凍結させるためのものであって、前記液体用バッグを収容するバッグ収容部が、金属板と、該金属板に対向配置された対向板と、前記金属板と前記対向板を所定の間隔を離した状態で連結する側壁部とを備えてなり、前記金属板の外面は、前記低温液化ガスと接触して冷却され、前記金属板の内面は、前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で前記液体用バッグの本体部に当接することを特徴とするものである。
【0011】
(2)上記(1)に記載のものにおいて、前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で、前記金属板の内面における前記液体用バッグのチューブ接続部に対向する部位に、前記金属板よりも熱伝導性の低い材質をコーティングしたことを特徴とするものである。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記金属板と前記対向板が共に平板からなり、両者が互いに平行になるように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
(4)上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のものにおいて、前記対向板は、金属製であることを特徴とするものである。
【0014】
(5)上記(4)に記載のものにおいて、前記金属板及び前記対向板は、アルミニウム又はアルミニウム合金製であることを特徴とするものである。
【0015】
(6)上記(4)又は(5)に記載のものにおいて、
前記対向板及び前記側壁部は、前記金属板と同じ材質の金属で形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
(7)上記(1)乃至(6)のいずれかに記載のものにおいて、前記側壁部は、前記金属板側と前記対向板側に分割され、当該分割される部位において嵌合可能になっていることを特徴とするものである。
【0017】
(8)上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のものにおいて、前記金属板の外面に低温液化ガスを貯留できる貯留部を有することを特徴とするものである。
【0018】
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載のものにおいて、前記金属板の内面側における前記液体用バッグの本体部が当接する部位に温度測定手段を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の液体用バッグの急速凍結用容器は、前記液体用バッグを収容するバッグ収容部が、金属板と、該金属板に対向配置された対向板と、前記金属板と前記対向板を所定の間隔を離した状態で連結する側壁部とを備えてなり、前記金属板の外面は、前記低温液化ガスと接触して冷却され、前記金属板の内面は、前記バッグ収容部に前記液体用バッグを収容した状態で前記液体用バッグの本体部に当接するようにしたので、前記液体用バッグを収容して冷却する際に、前記液体用バッグの本体部の表面に均一に低温液化ガスの冷熱が伝わり、前記液体用バッグを破損させることなく前記液体用バッグに封入された液体を短時間で均一に凍結することができる。さらに、凍結した液体用バッグを収容した状態のまま冷凍庫などで冷凍保存することができ、液体用バッグの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る液体用バッグの急速凍結用容器の概略構成を示す図である。
図2】本発明において急速凍結させる対象である液体を封入する液体用バッグを説明する説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る液体用バッグの急速凍結用容器の他の態様の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態に係る液体用バッグの急速凍結用容器1(以下、単に「急速凍結用容器1」という)は、図1に一例として示すように、本体部33と本体部33にチューブ接続部35が設けられて液体製剤を封入した液体用バッグ31を収容し、液体窒素を用いて急速凍結させるためのものであって、液体用バッグ31を収容するバッグ収容部3が、第1金属平板5と、第2金属平板7と、側壁部9とを備えてなるものである。以下、液体用バッグ31について説明した後に、急速凍結用容器1の各構成要素を詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施の形態に係る構成の特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、図示される各構成要素の大きさ、厚さ、寸法などは、実際の寸法比率などと同じであるとは限らない。
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能を有する要素については、同一の符号を付することにより、重複説明を省略する。
【0023】
液体用バッグ31は、図2に示すように、2D(二次元、平面)状のものであり、チューブ接続部35には、チューブ37が接続されている。液体用バッグ31は、樹脂フィルム製である。
液体用バッグ31は、被凍結物として液体製剤を封入したものであるが、被凍結物として液体用バッグ31に封入するものとしては液体製剤に限るものではない。
【0024】
第1金属平板5は、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容した状態でその内面5aが液体用バッグ31の本体部33と当接し、また、外面5bには上方から噴霧された液体窒素が接触して冷却される。
【0025】
第2金属平板7は、第1金属平板5に対向配置される対向板として設けられたものであり、第1金属平板5と第2金属平板7の両者が互いに平行になるように配置されている。
そして、第1金属平板5と同様に、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容した状態でその内面7aが液体用バッグ31の本体部33と当接する。
対向板として金属製の第2金属平板7を設けることにより、液体用バッグ31の本体部33を均一に冷却するのに好ましい。
【0026】
側壁部9は、第1金属平板5と第2金属平板7を所定の間隔を離した状態で連結するものであり、図1においては、側壁部9の上端部には蝶番11を介して第1金属平板5が開閉可能に接続され、第1金属平板5を上方に開くことで、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容することができる。
【0027】
また、第2金属平板7と側壁部9は、第1金属平板5と第2金属平板7との間で熱が伝わるように、第1金属平板5と同じ材質の金属で形成されることが好ましく、アルミニウム製又はアルミニウム合金製が特に好ましい。
本実施の形態では、第1金属平板5、第2金属平板7および側壁部9として板厚2mmのアルミニウム製の平板を用いている。
【0028】
図1においては、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容した状態で、第1金属平板5および第2金属平板7それぞれの内面5aおよび7aは、液体用バッグ31の本体部33の表面と接触している。
【0029】
一方、液体用バッグ31のチューブ接続部35や、チューブ接続部35に接続されたチューブ37などは、急速凍結させると破損しやすいことから、これらの部分は急速凍結しないように、少なくとも第1金属平板5と接触しないように第1金属平板5との間に空間が設けられている。
【0030】
そして、第1金属平板5の外面5bに液体窒素を噴霧すると、液体窒素の冷熱が瞬時に第1金属平板5と、側壁部9を介して第2金属平板7に均等に広がり、チューブ接続部35やチューブ37などには冷熱を伝えず、液体用バッグ31の本体部33の上下両面に効率よく冷熱を伝えることができ、チューブ接続部35など破損しやすい部分が急速凍結しないように液体用バッグ31を平面的かつ均等に冷やすことができる。
【0031】
液体用バッグ31に液体窒素などの低温液化ガスを直接噴霧すると、低温液化ガスが直接触れた位置が局所的に極低温となることで樹脂フィルム製の液体用バッグ31自体が破損したり、液体用バッグ31内に封入された液体製剤が部分的に凍結したりすることで液体用バッグ31が局部的に膨張して破損したりするといった問題があったが、本実施の形態に係る急速凍結用容器1においては、液体用バッグ31に液体窒素を直接接触させずに第1金属平板5を介して液体製剤を冷却するため、液体用バッグ31の破損を防ぐことができる。
また、第1金属平板5と第2金属平板7とが平行であるため、多数の急速凍結用容器1をフリーザーなどに収容する際に収納効率が良く、また、取り出しを容易にできる。
【0032】
また、凍結した液体用バッグ31をフリーザーなどで冷凍保存する際においては、チューブ接続部35やチューブ37が破損しやすいが、凍結した液体用バッグ31を収容した状態で急速凍結用容器1をフリーザーなどに冷凍保存する場合、バッグ収容部3においてはチューブ接続部35およびチューブ37と第1金属平板5および第2金属平板7との間に空間が設けられていることで、チューブ接続部35およびチューブ37の破損を防ぐことができる。
【0033】
上記のように、急速凍結用容器1においてはチューブ接続部35やチューブ37が第1金属平板5と接触しないように空間が設けられているが、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容した状態で、第1金属平板5の内面5aにおける液体用バッグ31のチューブ接続部35に対向する部位に第1金属平板5よりも熱伝導性の低い材質(例えば、樹脂など)をコーティングすることによって、チューブ接続部35およびチューブ37の急速凍結をさらに防止することができる。
【0034】
同様に、第2金属平板7の内面7aにおいても、バッグ収容部3に液体用バッグ31を収容した状態で、液体用バッグ31のチューブ接続部35に対向する部位に、熱伝導性の低い材質をコーティングすることが望ましい。
【0035】
さらに、図1に示すように、第1金属平板5の外面5bに低温液化ガスを貯留する貯留部13を設け、外面5bに向けて噴霧された液体窒素を貯留することにより、噴霧された液体窒素の冷熱を使用することができ、液体窒素の消費量を低減することや、液体製剤の凍結時間を短縮することができる。
【0036】
図1に示す急速凍結用容器1においては、第1金属平板5の内面5aと液体用バッグ31とが接触する部位に温度測定手段として温度測定器15が設けられている。
温度測定器15は、液体用バッグ31の表面温度を測定し、該測定した表面温度に基づいて急速凍結用容器1に噴霧する液体窒素の量を制御することができる。
本実施の形態では、温度測定器15として熱電対を用いたが、これに限定されることではなく、常温から極低温までの温度範囲で測定できるものであれば良い。
【0037】
本発明に係る液体用バッグの急速凍結用容器の他の態様として、図3に示すように、側壁部23が第1金属平板5側と第2金属平板7側に分割され、第1金属平板5側の蓋部25と、第2金属平板7側の容器部27とが嵌合可能な急速凍結用容器21が挙げられる。
【0038】
急速凍結用容器21においても、バッグ収容部3に収容した液体用バッグ31の本体部33の表面に均一に低温液化ガスの冷熱が伝わり、液体用バッグ31に封入された液体を短時間で均一に凍結することができ、また、凍結した液体用バッグ31を収容した状態のまま冷凍庫などで冷凍保存する場合においても、液体用バッグ31の破損を防ぐことができる。
【0039】
さらに、急速凍結用容器21においては、急速凍結用容器21内に収容される液体用バッグ31の厚さに合わせて、第1金属平板5と、第2金属平板7との間隔を容易に調整することができる。
【0040】
また、凍結中に液体用バッグ31に封入された液体製剤が膨張して本体部33の厚さが増加した場合においても、蓋部25と容器部27とが嵌合した状態のままずれて第1金属平板5と第2金属平板7との間隔が増加し、液体用バッグ31に過大な圧力がかからず、液体用バッグ31の破損などを防止できる。
換言すれば、蓋部25と容器部27との嵌合は、分割する側壁部23において蓋部25と容器部27とが接触したままずれることができる程度の強さであることが好ましい。
【0041】
なお、急速凍結用容器21は、蓋部25が容器部27に嵌合し、側壁部23における蓋部25と容器部27とが重なる部位で冷熱が伝わるように接触するものであったが、側壁部23における蓋部25と容器部27との重なる部位はインロー構造であっても良い。
【0042】
また、急速凍結用容器21においては、前述の急速凍結用容器1と同様に、第1金属平板5の内面5aと液体用バッグ31との間に温度測定手段を設けたものであっても良く、該温度測定手段により測定した温度に基づいて、第1金属平板5の外面5bに噴霧する液体窒素の量を制御することができる。
【0043】
上記の急速凍結用容器1および急速凍結用容器21に係る説明において、第1金属平板5と第2金属平板7は、互いに平行になるように配置された平板であるが、本発明に係る金属板および対向板はこれに限るものではなく、金属板と対向板とを備えてなるバッグ収容部が図2に示すような液体用バッグ31を収容することができ、かつ少なくとも金属板の内面が液体用バッグ31の本体部33に当接するものであれば良い。
【0044】
また、上記の説明では、第1金属平板5、第2金属平板7および側壁部9は全てアルミニウム又はアルミニウム合金製、若しくは、金属製であることが好ましいものとしていたが、第1金属平板5、第2金属平板7および側壁部9の材質はこれに限定されるものではなく、強度を有し、低温に耐えるものであれば適宜使用することができ、熱伝導性の良い材質であることが望ましい。
さらに、本発明に係る急速凍結容器は、第1金属平板5に対応する「金属板」のみが金属製であり、他の対向板および側壁部が金属製でないものを含む。
【0045】
なお、上記の説明において、低温液化ガスとして液体窒素を噴霧して冷却していたが、例えば液体窒素を滴下して冷却するものであってもよく、液体窒素が液体用バッグに直接接触しないものであれば、急速凍結用容器と液体窒素との接触方法には特に限定はない。
【実施例】
【0046】
本発明に係る液体用バッグの急速凍結用容器の効果を確認するための具体的な実験を行ったので、その結果について以下に説明する。
【0047】
実験は、図1に示す急速凍結用容器1に液体用バッグ31を収容した状態で急速凍結用容器1を冷却し、液体用バッグ31に封入した液体を凍結させた。
【0048】
液体用バッグ31には、2D(二次元、平面)状の医療用バッグ(ポール社製、容量:3L、材質:LDPE+PE+EVOHの積層構造)を用いた。
液体用バッグ31に封入して凍結させる液体として、ワクチン模擬液2.5Lを用いた。また、液体用バッグ31のチューブ接続部35には、チューブ37(材質:PE)を接続した。
【0049】
本実施例では、発明例として、液体用バッグ31を収容した急速凍結用容器1の第1金属平板5の外面5bに液体窒素を噴霧して冷却し、液体用バッグ31中の液体を凍結させた。このとき、温度測定器15による温度測定値を基に外面5bに噴霧する液体窒素の噴霧量を制御しつつ、液体用バッグ31に封入した液体を凍結させた。
【0050】
さらに、比較例として、液体用バッグ31を予め設定温度(-120℃)に冷やされた液体窒素式フリーザーの冷凍室内に直接収納し、液体用バッグ31中の液体を凍結させた。比較例において、液体用バッグ31の材質、液体用バッグ31に封入した液体、および、チューブ37には、上記の発明例と同一のものを使用した。液体窒素式フリーザーは、常に冷凍室内が設定温度-120℃で一定となるように液体窒素を噴霧した。このとき、液体窒素が液体用バッグ31およびチューブ37に直接噴霧されないようにした。
【0051】
発明例および比較例ともに、液体用バッグ31を所定の温度(-50℃および-90℃)まで冷却するのに要する所要時間を計測し、液体を凍結させた液体用バッグ31およびチューブ37の破損状況を観察した。
【0052】
本実施例における結果は以下のとおりであった。
まず、発明例においては、液体用バッグ31およびチューブ37に破損を生じさせずに、液体用バッグ31に封入した液体を凍結させることができた。
そして、所定の常温(+5℃)から-50℃まで冷却するのに要した所要時間は18分、常温から-90℃までの所要時間は27分であった。
【0053】
前述のとおり、液体製剤を冷凍保存する場合において、液体製剤中の抗原の残存率を90%以上とするための目標冷却速度として、常温から-50℃まで30分以内、かつ常温から-90℃まで50分以内で冷却することが要求されている。発明例で得られた結果は、当該目標冷却速度を達成するものであった。
【0054】
一方、比較例においても、液体窒素が液体用バッグ31およびチューブ37に直接噴霧されなかったことで、液体用バッグ31およびチューブ37に破損を生じさせずに液体用バッグ31に封入した液体を凍結させることができた。しかしながら、常温(+5℃)から-50℃まで冷却するのに要した所要時間は66分、常温から-90℃までの所要時間は81分であり、前述の目標冷却速度を達成することができなかった。
【0055】
以上、本発明に係る液体用バッグの急速凍結用容器によれば、液体用バッグを破損させずに該液体用バッグに封入した液体を急速凍結できることが実証された。
【符号の説明】
【0056】
1 急速凍結用容器
3 バッグ収容部
5 第1金属平板
5a 内面
5b 外面
7 第2金属平板
7a 内面
9 側壁部
11 蝶番
13 貯留部
15 温度測定器
21 急速凍結用容器
23 側壁部
25 蓋部
27 容器部
31 液体用バッグ
33 本体部
35 チューブ接続部
37 チューブ
図1
図2
図3