特許第6838949号(P6838949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838949
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】酸素除去方法及び酸素除去装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/04 20060101AFI20210222BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210222BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20210222BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C01B21/04 D
   B01J20/28 Z
   B01J20/34 F
   B01D53/04 230
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-232298(P2016-232298)
(22)【出願日】2016年11月30日
(65)【公開番号】特開2018-87119(P2018-87119A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】飛弾野 龍也
【審査官】 中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−029045(JP,A)
【文献】 特開平11−137943(JP,A)
【文献】 特開2005−103335(JP,A)
【文献】 特開昭62−072504(JP,A)
【文献】 特開平04−161219(JP,A)
【文献】 米国特許第6059858(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013223233(DE,A1)
【文献】 特開2006−169070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/02;21/04
B01D 53/02−53/12
B01J 20/00−20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を選択的に吸蔵及び脱離する酸素選択型吸蔵材が内部に設けられた充填塔を用いて、原料ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去方法であって、
前記原料ガスを前記充填塔に導入し、前記原料ガス中に含まれる酸素を前記酸素選択型吸蔵材に吸蔵して除去する除去工程と、
前記充填塔に再生ガスを導入し、前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度まで加熱することによって、前記酸素選択型吸蔵材に吸蔵した酸素を脱離して、前記酸素選択型吸蔵材を再生する再生工程と、
前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度よりも低い温度の前記再生ガスを前記充填塔に導入し、前記酸素選択型吸蔵材を冷却する冷却工程とを含み、
前記原料ガスとして、除去対象となるppmレベルの微量な酸素を含むガスを用い、
前記再生ガスとして、酸素及び水素を含まないガスを用い
前記酸素選択型吸蔵材として、酸素不定比性を有し、且つ、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)、CaAlMnO5+δ(0≦δ≦0.5)、LaBa(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、LaSr(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、YBaCu7−δ(0≦δ≦1.0)の中から選択される何れかのペロブスカイト構造を有する金属酸化物を用いることを特徴とする酸素除去方法。
【請求項2】
前記充填塔を一対で用いて、一方の充填塔と他方の充填塔との間で、前記除去工程と、前記再生工程及び前記冷却工程とを交互に切り替えて行うことを特徴とする請求項1に記載の酸素除去方法。
【請求項3】
前記除去工程において、前記充填塔に導入される前記原料ガスの上限温度を300℃とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素除去方法。
【請求項4】
前記再生工程において、前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度の下限温度を400℃とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の酸素除去方法。
【請求項5】
酸素を選択的に吸蔵及び脱離する酸素選択型吸蔵材が内部に設けられた充填塔を備え、原料ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去装置であって、
前記原料ガスを前記充填塔に導入する原料ガス導入部と、
前記酸素選択型吸蔵材を再生する再生ガスを前記充填塔に導入する再生ガス導入部と、
前記酸素選択型吸蔵材又は前記充填塔に導入される前記再生ガスを加熱する加熱部と、
前記酸素選択型吸蔵材の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部により測定された前記酸素選択型吸蔵材の温度に基づいて、前記再生ガスを加熱する制御を行う制御部とを備え、
前記原料ガスは除去対象となるppmレベルの微量な酸素を含むガスであり、
前記再生ガスは、酸素及び水素を含まないガスであり、
前記酸素選択型吸蔵材は、酸素不定比性を有し、且つ、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)、CaAlMnO5+δ(0≦δ≦0.5)、LaBa(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、LaSr(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、YBaCu7−δ(0≦δ≦1.0)の中から選択される何れかのペロブスカイト構造を有する金属酸化物であることを特徴とする酸素除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素除去方法及び酸素除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原料ガス中に含まれるppmレベルの微量な酸素を除去する方法として、触媒反応法と、吸着除去法とがある。このうち、触媒反応法は、原料ガス中に含まれる酸素を脱酸素触媒により水素と反応させ、水に変化させた後に、その水を除去する方法である。
【0003】
一方、吸着除去法は、原料ガス中に含まれる酸素をNi触媒に吸着させる方法である。また、酸素が吸着したNi触媒を200℃程度に加熱しながら、水素を含む再生ガスと接触させると、Ni触媒に吸着した酸素が脱離し、水素と反応して水となる。これにより、Ni触媒を再生することができる(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5232686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の触媒反応法では、酸素を除去する際に可燃性ガスである水素を使用するため、水素を供給するためのユーティリティーが必要となることに加えて、安全性を確保する必要があった。また、発生した水を除去するため、触媒反応の後段に水分除去装置を設置する必要があった。
【0006】
一方、上述した従来の吸着除去法では、Ni触媒にて酸素を除去する場合、高温では酸素の吸着性能が低下するという課題があった。さらに、吸着除去法でも、Ni触媒の再生時に可燃性ガスである水素を使用するため、水素を供給するためのユーティリティーが必要となることに加えて、安全性を確保する必要があった。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、可燃性ガスである水素を使用する必要がなく、なお且つ、常温から300℃までの広い温度域で、原料ガス中に含まれる酸素を除去できる酸素除去方法及び酸素除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 酸素を選択的に吸蔵及び脱離する酸素選択型吸蔵材が内部に設けられた充填塔を用いて、原料ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去方法であって、
前記原料ガスを前記充填塔に導入し、前記原料ガス中に含まれる酸素を前記酸素選択型吸蔵材に吸蔵して除去する除去工程と、
前記充填塔に再生ガスを導入し、前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度まで加熱することによって、前記酸素選択型吸蔵材に吸蔵した酸素を脱離して、前記酸素選択型吸蔵材を再生する再生工程と、
前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度よりも低い温度の前記再生ガスを前記充填塔に導入し、前記酸素選択型吸蔵材を冷却する冷却工程とを含み、
前記原料ガスとして、除去対象となるppmレベルの微量な酸素を含むガスを用い、
前記再生ガスとして、酸素及び水素を含まないガスを用い
前記酸素選択型吸蔵材として、酸素不定比性を有し、且つ、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)、CaAlMnO5+δ(0≦δ≦0.5)、LaBa(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、LaSr(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、YBaCu7−δ(0≦δ≦1.0)の中から選択される何れかのペロブスカイト構造を有する金属酸化物を用いることを特徴とする酸素除去方法。
〔2〕 前記充填塔を一対で用いて、一方の充填塔と他方の充填塔との間で、前記除去工程と、前記再生工程及び前記冷却工程とを交互に切り替えて行うことを特徴とする前記〔1〕に記載の酸素除去方法。
〔3〕 前記除去工程において、前記充填塔に導入される前記原料ガスの上限温度を300℃とすることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の酸素除去方法。
〔4〕 前記再生工程において、前記酸素選択型吸蔵材を再生する温度の下限温度を400℃とすることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の酸素除去方法
〕 酸素を選択的に吸蔵及び脱離する酸素選択型吸蔵材が内部に設けられた充填塔を備え、原料ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去装置であって、
前記原料ガスを前記充填塔に導入する原料ガス導入部と、
前記酸素選択型吸蔵材を再生する再生ガスを前記充填塔に導入する再生ガス導入部と、
前記酸素選択型吸蔵材又は前記充填塔に導入される前記再生ガスを加熱する加熱部と、
前記酸素選択型吸蔵材の温度を測定する温度測定部と、
前記温度測定部により測定された前記酸素選択型吸蔵材の温度に基づいて、前記再生ガスを加熱する制御を行う制御部とを備え、
前記原料ガスは除去対象となるppmレベルの微量な酸素を含むガスであり、
前記再生ガスは、酸素及び水素を含まないガスであり、
前記酸素選択型吸蔵材は、酸素不定比性を有し、且つ、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)、CaAlMnO5+δ(0≦δ≦0.5)、LaBa(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、LaSr(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、YBaCu7−δ(0≦δ≦1.0)の中から選択される何れかのペロブスカイト構造を有する金属酸化物であることを特徴とする酸素除去装置
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、可燃性ガスである水素を使用する必要がなく、なお且つ、常温から300℃までの広い温度域で、原料ガス中に含まれる酸素を除去できる酸素除去方法及び酸素除去装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る酸素除去装置を用いた酸素除去方法を説明するための図であり、除去工程時の状態を示す系統図である。
図2図1に示す酸素除去装置を用いた酸素除去方法を説明するための図であり、再生工程及び冷却工程時の状態を示す系統図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る酸素除去装置を用いた酸素除去方法を説明するための図であり、一方の充填塔が除去工程、他方の充填塔が再生工程及び冷却工程を行う状態を示す系統図である。
図4図3に示す酸素除去装置を用いた酸素除去方法を説明するための図であり、一方の充填塔が再生工程及び冷却工程、他方の充填塔が除去工程を行う状態を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した酸素除去方法及び酸素除去装置について、図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1及び図2に示す酸素除去装置1Aを用いた酸素除去方法について説明する。なお、図1は、酸素除去装置1Aを用いた酸素除去方法を説明するための図であり、除去工程時の状態を示す系統図である。図2は、酸素除去装置1Aを用いた酸素除去方法を説明するための図であり、再生工程及び冷却工程時の状態を示す系統図である。
【0012】
本実施形態の酸素除去装置1Aは、原料ガスG中に含まれるppmレベルの微量な酸素を除去するものである。具体的に、この酸素除去装置1Aは、酸素を選択的に吸蔵及び脱離する酸素選択型吸蔵材Sが内部に設けられた充填塔2を備えている。
【0013】
充填塔2は、中空円筒状に形成されて、その上下両端に上部側配管2a及び下部側配管2bが接続された構成を有している。酸素選択型吸蔵材Sは、この充填塔2の内部に充填されている。なお、本実施形態の充填塔2及び上部側配管2a及び下部側配管2bには、例えばステンレス(SUS304)などの金属が用いられているが、原料ガスGや再生ガスRと反応せず、高温及び高圧に耐え得ることができる材質のものであればよく、これに必ずしも限定されるものではない。また、充填塔2の内径は16.6mmであり、上部側配管2a及び下部側配管2bの外径は1/4インチであるが、これらの寸法を適宜変更することも可能である。
【0014】
酸素選択型吸蔵材Sは、酸素を選択的に吸蔵及び脱離することが可能な物質を用いている。また、酸素選択型吸蔵材Sは、酸素を連続的に吸蔵できる量に限度がある。一方、酸素選択型吸蔵材Sは、酸素を吸蔵する能力が低下しても、再生ガスRを用いて酸素を脱離することで、酸素を吸蔵する能力を回復(再生)することができる。
【0015】
本実施形態では、酸素選択型吸蔵材Sとして、酸素不定比性を有し、且つ、ペロブスカイト構造を有する金属酸化物を用いることができ、例えば、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)、CaAlMnO5+δ(0≦δ≦0.5)、Laa(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、LaSr(1−X)CoO3−δ(0.1≦X≦0.5)、YBaCu7−δ(0≦δ≦1.0)などを挙げることができる。
【0016】
なお、本実施形態の酸素選択型吸蔵材Sは、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)であり、充填塔2の内部に200mmの高さで、43mL(55g)充填されている。
【0017】
酸素除去装置1Aは、原料ガスGを充填塔2に導入する原料ガス導入部3と、酸素選択型吸蔵材Sを再生する再生ガスRを充填塔2に導入する再生ガス導入部4と、充填塔2に導入される再生ガスRを加熱する加熱部5と、充填塔2に導入される少なくとも再生ガスRの温度を測定する温度測定部6と、原料ガス導入部3、再生ガス導入部4、及び加熱部5を制御する制御部7とを概略備えている。
【0018】
原料ガス導入部3は、充填塔2の上部側配管2aから分岐された原料ガス導入配管3aを通して充填塔2に原料ガスGを導入する。一方、原料ガス導入部3は、充填塔2の下部側配管2bから分岐された原料ガス導出配管3bを通して充填塔2から原料ガスGを導出する。また、原料ガス導入部3は、原料ガス導入配管3aを開閉する第1の開閉弁8aと、原料ガス導出配管3bを開閉する第2の開閉弁8bとを有している。
【0019】
再生ガス導入部4は、充填塔2の下部側配管2bから分岐された再生ガス導入配管4aを通して充填塔2に再生ガスRを導入する。一方、再生ガス導入部4は、充填塔2の上部側配管2aから分岐された再生ガス導出配管4bを通して充填塔2から再生ガスRを導出する。また、再生ガス導入部4は、再生ガス導入配管4aを開閉する第3の開閉弁8cと、再生ガス導出配管4bを開閉する第4の開閉弁8dとを有している。また、再生ガス導入配管4aには、流量調節弁9を介してガス容器Bが接続されている。再生ガス導入部4では、流量調節弁9によってガス容器Bに充填された再生ガスRの流量を調節することができる。
【0020】
本実施形態では、原料ガス導入配管3a及び原料ガス導出配管3b、再生ガス導入配管4a及び再生ガス導出配管4bには、例えばステンレス(SUS304)などの金属が用いられているが、原料ガスGや再生ガスRと反応せず、高温及び高圧に耐え得ることができる材質のものであればよく、これに必ずしも限定されるものではない。
【0021】
また、本実施形態では、第1〜第4の開閉弁8a〜8dとして、ダイヤフラム弁を用いているが、原料ガスGや再生ガスRと反応せず、高温及び高圧に耐え得ることができるものであればよく、例えば、ボール弁などの様々な方式の開閉弁を用いることが可能である。
【0022】
加熱部5は、再生ガス導入配管4aに設けられて、充填塔2に導入される再生ガスRを加熱する。本実施形態では、加熱部5として、電気ヒータを用いているが、再生ガスRを400℃以上に加熱できるものであればよく、これ以外にも様々な方式のヒータを用いることが可能である。
【0023】
また、加熱部5は、上述した再生ガスRを加熱する構成に限らず、酸素選択型吸蔵材Sを加熱するヒータを充填塔2の周囲に設けた構成としてもよい。
【0024】
温度測定部6は、充填塔2に設けられて、この充填塔2の表面温度を測定する。温度測定部6では、充填塔2の表面温度を測定することで、後述する再生工程時に、この充填塔2に充填された酸素選択型吸蔵材Sの温度を測定することができる。また、温度測定部6が測定した結果(温度情報)は、後述する制御部7の温度調節器へと供給される。
【0025】
本実施形態では、温度測定部6として、K型熱電対を備えた温度測定器を用いているが、上述した酸素選択型吸蔵材Sの温度を400℃以上まで測定できるものであればよく、これ以外にも様々な方式の温度測定器を用いることが可能である。
【0026】
制御部7は、第1〜第4の開閉弁8a〜8dと電気的に接続されており、これら第1〜第4の開閉弁8a〜8dの開閉を制御する。これにより、制御部7は、後述する除去工程時に、充填塔2に導入される原料ガスGの供給及び停止と、後述する再生工程及び冷却工程時に、充填塔2に導入される再生ガスRの供給及び停止をそれぞれ制御している。なお、第1〜第4の開閉弁8a〜8dの開閉については、上述した制御部7により自動で制御する場合に限らず、手動で制御することも可能である。
【0027】
制御部7は、加熱部5及び温度測定部6と電気的に接続された温度調節器を有し、温度測定部6により測定された温度情報に基づいて、加熱部5の駆動を制御する。具体的には、加熱部5の駆動(ON/OFF)を切り替えながら、加熱された再生ガスRによって、酸素選択型吸蔵材Sを再生する温度(以下、再生温度という。)まで加熱する制御を行う。
【0028】
なお、本実施形態では、上述した温度調節器を用いて、再生ガスRの加熱温度を調節しているが、温度測定部6により測定された温度情報に基づいて、加熱部5の駆動(ON/OFF)を制御できるものであればよく、これに必ずしも限定されるものではない。
【0029】
以上のような構成を有する酸素除去装置1Aを用いた酸素除去方法では、上記充填塔2を用いて、原料ガスG中に含まれるppmレベルの微量な酸素を除去する。なお、本実施形態では、原料ガスGとして、10ppmの酸素を含む300℃の窒素ガスを用い、再生ガスRとして、酸素を含まない窒素ガスを用いている。
【0030】
具体的に、この酸素除去装置1Aを用いた本実施形態の酸素除去方法では、図1に示すように、原料ガスGを充填塔2に導入し、原料ガスG中に含まれる酸素を酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵して除去する(以下、除去工程という。)。
【0031】
このとき、酸素除去装置1Aでは、第1及び第2の開閉弁8a,8bを開放し、第3及び第4の開閉弁8c,8dを閉塞する。これにより、原料ガス導入配管3aを通して充填塔2の上部側配管2a側から原料ガスGが導入される。充填塔2に導入された原料ガスGは、充填塔2内を通過する間に酸素選択型吸蔵材Sによって、この原料ガスG中に含まれる酸素が吸蔵されて除去される。酸素が除去された原料ガス(以下、処理ガスという。)Gは、充填塔2の下部側配管2b側から原料ガス導出配管3bを通して導出される。
【0032】
本実施形態の酸素除去装置1Aでは、酸素選択型吸蔵材Sとして、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)を用いることによって、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能である。
【0033】
本実施形態の酸素除去方法では、酸素選択型吸蔵材Sの酸素を吸蔵する能力が低下したときに、図2に示すように、再生ガスRを加熱して充填塔2に導入し、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度(本実施形態では400℃)まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵した酸素を脱離して、酸素選択型吸蔵材Sを再生する(以下、再生工程という。)。
【0034】
このとき、酸素除去装置1Aでは、第1及び第2の開閉弁8a,8bを閉塞し、第3及び第4の開閉弁8c,8dを開放する。また、加熱部5により再生ガスRを加熱する。これにより、加熱された再生ガスRが、再生ガス導入配管4aを通して充填塔2の下部側配管2b側から導入される。充填塔2に導入された再生ガスRは、充填塔2内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱する。また、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵された酸素が脱離する。脱離された酸素を含む再生ガス(以下、排ガスという。)Rは、充填塔2の上部側配管2a側から再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0035】
本実施形態の酸素除去方法では、再生工程の後に、再生温度よりも低い温度の再生ガスRを充填塔2に導入し、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する(以下、冷却工程という。)。
【0036】
このとき、加熱部5による再生ガスRの加熱を停止する。これにより、再生温度よりも低い温度の再生ガスRが、再生ガス導入配管4aを通して充填塔2の下部側配管2b側から導入される。充填塔2に導入された再生ガスRは、充填塔2内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する。冷却後の再生ガスRは、充填塔2の上部側配管2a側から再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0037】
本実施形態の酸素除去方法では、上述した再生工程の後に、再生温度よりも低い温度の再生ガスRにより酸素選択型吸蔵材Sを冷却する冷却工程を設けることで、酸素選択型吸蔵材Sの酸素を吸蔵する能力を効率良く回復(再生)することができる。したがって、再び冷却工程から除去工程に切り替えることによって、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能となる。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、原料ガスGや再生ガスRに可燃性ガスである水素を使用する必要がなく、なお且つ、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能である。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として図3及び図4に示す酸素除去装置1Bを用いた酸素除去方法について説明する。なお、図3は、酸素除去装置1Bを用いた酸素除去方法を説明するための図であり、一方の充填塔2Aが除去工程、他方の充填塔2Bが再生工程及び冷却工程を行う状態を示す系統図である。図4は、酸素除去装置1Bを用いた酸素除去方法を説明するための図であり、一方の充填塔2Aが再生工程及び冷却工程、他方の充填塔2Bが除去工程を行う状態を示す系統図である。また、以下の説明では、上記酸素除去装置1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0040】
本実施形態の酸素除去装置1Bは、一対の充填塔2A,2Bを備え、一方の充填塔2Aと他方の充填塔2Bとの間で、除去工程と、再生工程及び冷却工程とを交互に切り替えて行う構成となっている。なお、一対の充填塔2A,2Bは、上記第1の実施形態の充填塔2と基本的に同じであり、それぞれの内部に酸素選択型吸蔵材Sが充填された構成となっている。
【0041】
具体的に、この酸素除去装置1Bは、原料ガスGを一対の充填塔2A,2Bに導入する原料ガス導入部3Aと、酸素選択型吸蔵材Sを再生する再生ガスRとして、酸素が除去された原料ガス(処理ガス)Gの一部を一対の充填塔2A,2Bに導入する再生ガス導入部4Aと、一対の充填塔2A,2Bに導入される再生ガスRを加熱する加熱部5と、一対の充填塔2A,2Bに導入される少なくとも再生ガスRの温度を測定する一対の温度測定部6A,6Bと、原料ガス導入部3A、再生ガス導入部4A、及び加熱部5を制御する制御部7とを概略備えている。
【0042】
原料ガス導入部3Aは、一方の充填塔2Aの上部側配管2aから分岐された一方の原料ガス導入配管3cを通して一方の充填塔2Aに原料ガスGを導入する。一方、原料ガス導入部3Aは、一方の充填塔2Aの下部側配管2bから分岐された一方の原料ガス導出配管3dを通して一方の充填塔2Aから原料ガスGを導出する。
【0043】
同様に、原料ガス導入部3Aは、他方の充填塔2Bの上部側配管2aから分岐された他方の原料ガス導入配管3eを通して他方の充填塔2Bに原料ガスGを導入する。一方、原料ガス導入部3Aは、他方の充填塔2Bの下部側配管2bから分岐された他方の原料ガス導出配管3fを通して他方の充填塔2Bから原料ガスGを導出する。
【0044】
また、原料ガス導入部3Aは、一方の原料ガス導入配管3cを開閉する第1の開閉弁10aと、一方の原料ガス導出配管3dを開閉する第2の開閉弁10bと、他方の原料ガス導入配管3eを開閉する第3の開閉弁10cと、他方の原料ガス導出配管3fを開閉する第4の開閉弁10dとを有している。
【0045】
さらに、一方の原料ガス導入配管3cと他方の原料ガス導入配管3eとは、互いの入側で連結されて共通の原料ガス導入配管3aを構成している。これに対して、一方の原料ガス導出配管3dと他方の原料ガス導出配管3fとは、互いの出側で連結されて共通の原料ガス導出配管3bを構成している。
【0046】
再生ガス導入部4Aは、一方の充填塔2Aの下部側配管2bから分岐された一方の再生ガス導入配管4cを通して一方の充填塔2Aに再生ガスRを導入する。一方、再生ガス導入部4Aは、一方の充填塔2Aの上部側配管2aから分岐された一方の再生ガス導出配管4dを通して一方の充填塔2Aから再生ガスRを導出する。
【0047】
同様に、再生ガス導入部4Aは、他方の充填塔2Bの下部側配管2bから分岐された他方の再生ガス導入配管4eを通して他方の充填塔2Bに再生ガスRを導入する。一方、再生ガス導入部4Aは、他方の充填塔2Bの上部側配管2aから分岐された他方の再生ガス導出配管4fを通して他方の充填塔2Bから再生ガスRを導出する。
【0048】
また、再生ガス導入部4Aは、一方の再生ガス導入配管4cを開閉する第5の開閉弁10eと、一方の再生ガス導出配管4dを開閉する第6の開閉弁10fと、他方の再生ガス導入配管4eを開閉する第7の開閉弁10gと、他方の再生ガス導出配管4fを開閉する第8の開閉弁10hとを有している。
【0049】
さらに、一方の再生ガス導入配管4cと他方の再生ガス導入配管4eとは、互いの入側で連結されて共通の再生ガス導入配管4aを構成している。これに対して、一方の再生ガス導出配管4dと他方の再生ガス導出配管4fとは、互いの出側で連結されて共通の再生ガス導出配管4bを構成している。また、再生ガス導入配管4aは、原料ガス導出配管3bから分岐して設けられている。
【0050】
なお、本実施形態の一方及び他方の原料ガス導入配管3c,3e、一方及び他方の原料ガス導出配管3d,3f、一方及び他方の再生ガス導入配管4c,4e、一方及び他方の再生ガス導出配管4d,4fには、上記第1の実施形態の原料ガス導入配管3a及び原料ガス導出配管3b、再生ガス導入配管4a及び再生ガス導出配管4bと基本的に同じものを用いることができる。また、本実施形態の第1〜第8の開閉弁10a〜10hには、上記第1の実施形態の第1〜第4の開閉弁8a〜8dと基本的に同じものを用いることができる。
【0051】
加熱部5は、再生ガス導入配管4aに設けられて、一対の充填塔2A,2Bに導入される再生ガスRを加熱する。なお、本実施形態の加熱部5には、上記第1の実施形態の加熱部5と同じものを用いている。
【0052】
一対の温度測定部6A,6Bのうち、一方の温度測定部6Aは、一方の充填塔2Aに設けられて、この充填塔2Aの表面温度を測定し、他方の温度測定部6Bは、他方の充填塔2Bに設けられて、この充填塔2Bの表面温度を測定する。一対の温度測定部6A,6Bでは、一対の充填塔2A,2Bの表面温度をそれぞれ測定することで、後述する再生工程時に、これらの充填塔2A,2Bに充填された酸素選択型吸蔵材Sの温度を測定することができる。また、一対の温度測定部6A,6Bが測定した結果(温度情報)は、後述する制御部7の温度調節器へと供給される。なお、本実施形態の温度測定部6A,6Bは、上記第1の実施形態の温度測定部6と基本的に同じものを用いることができる。
【0053】
制御部7は、第1〜第8の開閉弁10a〜10hと電気的に接続されており、これら第1〜第8の開閉弁10a〜10hの開閉を制御する。これにより、制御部7は、後述する除去工程時に、一対の充填塔2A,2Bに導入される原料ガスGの供給及び停止と、後述する再生工程及び冷却工程時に、一対の充填塔2A,2Bに導入される再生ガスRの供給及び停止をそれぞれ制御している。なお、第1〜第8の開閉弁10a〜10hの開閉については、上述した制御部7により自動で制御する場合に限らず、手動で制御することも可能である。
【0054】
制御部7は、加熱部5及び一対の温度測定部6A,6Bと電気的に接続された温度調節器を有し、一対の温度測定部6A,6Bにより測定された温度情報に基づいて、加熱部5の駆動を制御する。具体的には、加熱部5の駆動(ON/OFF)を切り替えながら、加熱された再生ガスRによって、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱する制御を行う。なお、本実施形態の制御部7には、上記第1の実施形態の制御部7と基本的に同じものを用いることができる。
【0055】
以上のような構成を有する酸素除去装置1Bを用いた酸素除去方法では、上記一対の充填塔2A,2Bを用いて、原料ガスG中に含まれるppmレベルの微量な酸素を除去する。なお、本実施形態では、原料ガスGとして、10ppmの酸素を含む300℃の窒素ガスを用い、再生ガスRとして、酸素が除去された原料ガス(処理ガス)Gの一部を用いている。
【0056】
具体的に、この酸素除去装置1Bを用いた本実施形態の酸素除去方法では、図3に示すように、一方の充填塔2Aが除去工程を行っている間、他方の充填塔2Bが再生工程及び冷却工程を行う。
【0057】
すなわち、本実施形態の酸素除去方法では、一方の充填塔2Aの除去工程として、原料ガスGを一方の充填塔2Aに導入し、原料ガスG中に含まれる酸素を酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵して除去する。このとき、酸素除去装置1Bでは、第1及び第2の開閉弁10a,10bを開放し、第5及び第6の開閉弁10e,10fを閉塞する。
【0058】
これにより、原料ガス導入配管3a及び一方の原料ガス導入配管3cを通して一方の充填塔2Aの上部側配管2a側から原料ガスGが導入される。一方の充填塔2Aに導入された原料ガスGは、一方の充填塔2A内を通過する間に酸素選択型吸蔵材Sによって、この原料ガスG中に含まれる酸素が吸蔵されて除去される。酸素が除去された原料ガス(処理ガス)Gは、一方の充填塔2Aの下部側配管2b側から一方の原料ガス導出配管3d及び原料ガス導出配管3bを通して導出される。
【0059】
本実施形態の酸素除去装置1Bでは、酸素選択型吸蔵材Sとして、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)を用いることによって、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能である。
【0060】
これに対して、本実施形態の酸素除去方法では、他方の充填塔2Bの再生工程として、再生ガスRを加熱して他方の充填塔2Bに導入し、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度(本実施形態では400℃)まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵した酸素を脱離して、酸素選択型吸蔵材Sを再生する。このとき、酸素除去装置1Bでは、第7及び第8の開閉弁10g,10hを開放し、第3及び第4の開閉弁10c,10dを閉塞する。また、加熱部5により再生ガスRを加熱する。
【0061】
これにより、加熱された再生ガスRが、再生ガス導入配管4a及び他方の再生ガス導入配管4eを通して他方の充填塔2Bの下部側配管2b側から導入される。他方の充填塔2Bに導入された再生ガスRは、他方の充填塔2B内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱する。また、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵された酸素が脱離する。脱離された酸素を含む再生ガス(排ガス)Rは、他方の充填塔2Bの上部側配管2a側から他方の再生ガス導出配管4f及び再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0062】
本実施形態の酸素除去方法では、他方の充填塔2Bの再生工程の後に、冷却工程として、再生温度よりも低い温度の再生ガスRを他方の充填塔2Bに導入し、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する。このとき、加熱部5による再生ガスRの加熱を停止する。
【0063】
これにより、再生温度よりも低い温度の再生ガスRが、再生ガス導入配管4a及び他方の再生ガス導入配管4eを通して他方の充填塔2Bの下部側配管2b側から導入される。他方の充填塔2Bに導入された再生ガスRは、他方の充填塔2B内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する。冷却後の再生ガスRは、他方の充填塔2Bの上部側配管2a側から他方の再生ガス導出配管4f及び再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0064】
本実施形態の酸素除去方法では、上述した他方の充填塔2Bの再生工程の後に、再生温度よりも低い温度の再生ガスRにより酸素選択型吸蔵材Sを冷却する冷却工程を設けることで、酸素選択型吸蔵材Sの酸素を吸蔵する能力を効率良く回復(再生)することができる。
【0065】
本実施形態の酸素除去方法では、一方の充填塔2Aにおいて、酸素選択型吸蔵材Sの酸素を吸蔵する能力が低下したときに、図4に示すように、他方の充填塔2Bが除去工程、一方の充填塔2Aが再生工程及び冷却工程を行うように切り替える。そして、他方の充填塔2Bが除去工程を行っている間、一方の充填塔2Aが再生工程及び冷却工程を行う。
【0066】
すなわち、本実施形態の酸素除去方法では、他方の充填塔2Bの除去工程として、原料ガスGを他方の充填塔2Bに導入し、原料ガスG中に含まれる酸素を酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵して除去する。このとき、酸素除去装置1Bでは、第3及び第4の開閉弁10c,10dを開放し、第7及び第8の開閉弁10g,10hを閉塞する。
【0067】
これにより、原料ガス導入配管3a及び他方の原料ガス導入配管3eを通して他方の充填塔2Bの上部側配管2a側から原料ガスGが導入される。他方の充填塔2Bに導入された原料ガスGは、他方の充填塔2B内を通過する間に酸素選択型吸蔵材Sによって、この原料ガスG中に含まれる酸素が吸蔵されて除去される。酸素が除去された原料ガス(処理ガス)Gは、他方の充填塔2Bの下部側配管2b側から他方の原料ガス導出配管3f及び原料ガス導出配管3bを通して導出される。
【0068】
本実施形態の酸素除去装置1Bでは、酸素選択型吸蔵材Sとして、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)を用いることによって、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能である。
【0069】
これに対して、本実施形態の酸素除去方法では、一方の充填塔2Aの再生工程として、再生ガスRを加熱して一方の充填塔2Aに導入し、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度(本実施形態では400℃)まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵した酸素を脱離して、酸素選択型吸蔵材Sを再生する。このとき、酸素除去装置1Bでは、第5及び第6の開閉弁10e,10fを開放し、第1及び第2の開閉弁10a,10bを閉塞する。また、加熱部5により再生ガスRを加熱する。
【0070】
これにより、加熱された再生ガスRが、再生ガス導入配管4a及び一方の再生ガス導入配管4cを通して一方の充填塔2Aの下部側配管2b側から導入される。一方の充填塔2Aに導入された再生ガスRは、一方の充填塔2A内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱する。また、酸素選択型吸蔵材Sを再生温度まで加熱することによって、酸素選択型吸蔵材Sに吸蔵された酸素が脱離する。脱離された酸素を含む再生ガス(排ガス)Rは、一方の充填塔2Aの上部側配管2a側から一方の再生ガス導出配管4d及び再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0071】
本実施形態の酸素除去方法では、一方の充填塔2Aの再生工程の後に、冷却工程として、再生温度よりも低い温度の再生ガスRを一方の充填塔2Aに導入し、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する。このとき、加熱部5による再生ガスRの加熱を停止する。
【0072】
これにより、再生温度よりも低い温度の再生ガスRが、再生ガス導入配管4a及び一方の再生ガス導入配管4cを通して一方の充填塔2Aの下部側配管2b側から導入される。一方の充填塔2Aに導入された再生ガスRは、一方の充填塔2A内を通過する間に、酸素選択型吸蔵材Sを冷却する。冷却後の再生ガスRは、一方の充填塔2Aの上部側配管2a側から一方の再生ガス導出配管4d及び再生ガス導出配管4bを通して導出される。
【0073】
本実施形態の酸素除去方法では、上述した一方の充填塔2Aの再生工程の後に、再生温度よりも低い温度の再生ガスRにより酸素選択型吸蔵材Sを冷却する冷却工程を設けることで、酸素選択型吸蔵材Sの酸素を吸蔵する能力を効率良く回復(再生)することができる。
【0074】
したがって、本実施形態の酸素除去方法では、上述した一方の充填塔2Aと他方の充填塔2Bとの間で、除去工程と、再生工程及び冷却工程とを交互に切り替える操作を繰り返すことで、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を連続して除去することが可能となる。
【0075】
以上のように、本実施形態によれば、再生ガスRに可燃性ガスである水素を使用する必要がなく、なお且つ、常温(例えば15℃)から300℃までの広い温度域で、原料ガスG中に含まれる酸素を除去することが可能である。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記原料ガスGについては、除去対象となるppmレベルの微量な酸素を含むガスであればよく、再生ガスRについては、酸素を含まないガスであればよく、上述した窒素ガス以外のガスを用いることも可能である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0078】
本実施例では、酸素選択型吸蔵材として、YBaCo7+δ(1.0≦δ≦1.5)を用い、原料ガスの温度を15℃から300℃まで変化させて、酸素の除去性能を確認した。なお、本実施例では、原料ガスとして、10ppmの酸素を含む300℃の窒素ガスを用いている。
【0079】
酸素選択型吸蔵材の形状は、直径5mm、長さ2〜3mmの円柱状である。これを内径16.6mmのステンレス製の充填塔に200mmの高さで、43mL(55g)充填した。また、処理ガス中の酸素濃度の測定には、東レエンジニアリング製のジルコニア式酸素濃度計LC−850KSを使用した。
【0080】
先ず、酸素選択型吸蔵材を再生するために、再生ガスとして、400℃に加熱した窒素ガスを大気圧で充填塔に導入し、酸素選択型吸蔵材に吸蔵している酸素を離脱させた。その後、再生ガスの加熱を停止し、充填塔を25℃まで冷却した。
【0081】
この充填塔に原料ガスGとして、それぞれの温度を15℃、100℃、200℃、300℃に調節した10ppmの酸素を含む窒素ガスを導入し、充填塔から導出される処理ガスの酸素濃度を測定した。その結果、全ての温度において、導出される処理ガス中の酸素濃度は、検出限界以下となった。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B…酸素除去装置 2…充填塔 2A…一方の充填塔 2B…他方の充填塔 3,3A…原料ガス導入部 3a…原料ガス導入配管 3b…原料ガス導出配管 3c…一方の原料ガス導入配管 3d…一方の原料ガス導出配管 3e…他方の原料ガス導入配管 3f…他方の原料ガス導出配管 4,4A…再生ガス導入部 4a…再生ガス導入配管 4b…再生ガス導出配管 4c…一方の再生ガス導入配管 4d…一方の再生ガス導出配管 4e…他方の再生ガス導入配管 4f…他方の再生ガス導出配管 5…加熱部 6,6A,6B…温度測定部 6A…一方の温度測定部 6B…他方の温度測定部 7…制御部 8a〜8d…第1〜第4の開閉弁 9…流量調節弁 10a〜10h…第1〜第8の開閉弁 S…酸素選択型吸蔵材 G…原料ガス(処理ガス) R…再生ガス(排ガス) B…ガス容器
図1
図2
図3
図4