特許第6838962号(P6838962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6838962
(24)【登録日】2021年2月16日
(45)【発行日】2021年3月3日
(54)【発明の名称】コーティング組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20210222BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20210222BHJP
   C09D 183/02 20060101ALI20210222BHJP
【FI】
   C09D4/02
   C09D183/04
   C09D183/02
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-254887(P2016-254887)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-104618(P2018-104618A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 憲
【審査官】 上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−059167(JP,A)
【文献】 特開2013−035918(JP,A)
【文献】 特開2001−098221(JP,A)
【文献】 特表2014−518315(JP,A)
【文献】 特開2003−253209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分〜(D)成分を含有し、(A)成分と(B)成分は、シロキサン樹脂成分であって、両成分の少なくとも一方が加水分解縮合物であり、平均分子量(Mn)が700〜2000であることを特徴とするコーティング組成物:
(A)成分;下記一般式(i)で表されるアルコキシシラン又はその加水分解縮合物、
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜15の有機基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6の有機基を示し、aは0〜2の数を示し、Xは独立に水素原子、炭素数1〜15の有機基又は式(ii)で表される基を示す。
【化2】
(式中、R〜R及びaは、上記式(i)と同意である。)
(B)成分;下記式(iii)で表されるアクリル基を有するアルコキシシラン又はその加水分解縮合物、
Si(OR4−b-c (iii)
(式中、R、Rはいずれも直接Siに結合し、Rはアクリル基を含む炭素数1〜10の有機基を示し、Rはアクリル基を含まない炭素数1〜10の有機基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、b、cはそれぞれ0<b≦1、0≦c≦2の数を示し、b+cは0<b+c≦2の数を示す。)
(C)成分;光重合開始剤、及び
(D)成分;溶剤。
【請求項2】
シロキサン樹脂成分として、(A)成分及び(B)成分と共に、更に、下記(E)成分を含有し、(E)成分が、(A)成分及び/又は(B)成分との加水分解縮合物あってもよい請求項1に記載のコーティング組成物:
(E)成分;下記式(iv)で表される鎖状、分岐状または環状のアルキルシリケート。
Si(n−1)(OR(2n+2) (iv)
(式中、nは1〜20の整数を示し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコーティング組成物の紫外線硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐摩耗性及び耐候性等に優れた紫外線硬化性を有するコーティング組成物に関する。この組成物およびその硬化物は、例えば、車両用の窓、建築部材等に適する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス代替として、透明樹脂材料を使用することが増えている。特にポリカーボネート樹脂等は、耐熱性、耐衝撃性、透明性に優れることから、広く用いられている。しかし、ポリカーボネート樹脂等は、ガラスに比べて、耐擦傷性および耐候性等に劣ることから、その表面を保護するハードコート材が提案されている。
【0003】
一般的に、耐摩耗性を向上させる手段として、ハードコート層には高い硬度が必要であり、オルガノシロキサン組成物を用いたコーティング材が多く提案されている。しかし、硬度を高くすると、得られる膜は脆く、更に樹脂基材との付着性低下と樹脂基材との環境寸法変化挙動差が大きくなりクラックが発生しやすいという課題がある。そこで、脆さと付着性の改善を目的に、アクリレート化合物やウレタン化合物を配合する手法が提案されているが、耐摩耗性が低下する欠点があり、特に視認性が求められる自動車窓向けハードコート付樹脂基板(樹脂グレージング)のようなガラス同等の耐摩耗性と付着性および耐候性を満足するには不十分である。これを改善するため、樹脂基材とハードコート層の間に、両層と付着性が良好なプライマー層を設け、ハードコート層では耐摩耗性と耐候性、プライマー層では耐候性と付着性という機能を分けた手法が提案されている。
【0004】
例えば、ポリカーボネート基材の表面にアクリル樹脂熱硬化膜、オルガノシロキサン系樹脂の熱硬化膜、有機ケイ素化合物を原料としたプラズマ誘起の化学気相成長法(CVD法)によりケイ素酸化膜を堆積した構成が提案されている。しかし、この積層体は、耐候性ならびに耐摩耗性が向上するものの、ケイ素酸化膜を堆積する真空チャンバー等のドライプロセス工程を必要とするためプロセスコストが高く、汎用的な普及への負荷が大きいと言える。また、熱硬化シリコーン樹脂を塗布・硬化する方法も提案されている。この方法は、ウェットプロセスで成膜可能なため、プロセスコストは低いが、硬化に高温かつ長時間を要するため生産性に乏しく、また、耐摩耗性も十分満足できるものではない。
【0005】
オルガノシロキサン化合物からなるハードコート層の耐候性を向上する手段として、例えば有機系紫外線吸収剤を添加する方法がある。しかし、マトリクスと架橋しない化合物をコーティング組成物に添加した場合には、塗膜後の長期曝露後に紫外線吸収剤が表面からブリードし、持続性に乏しい。そのため、ハードコート層と化学結合が形成できるような、シリル変性した有機系紫外線吸収剤を用いる方法もこれまで開示されている(特許文献1、2)。これは、紫外線吸収剤がマトリクスと結合しているため、持続性は向上するが、結合点が少ないためにハードコート層の耐摩耗性が低下するという課題がある。
【0006】
そのため、自動車窓向けハードコート付樹脂基板(樹脂グレージング)のようなガラス同等の耐摩耗性と耐候性および付着性、生産性を有する材料が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平3-45094号公報
【特許文献2】特許第4462421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ウェットプロセスが可能であり、熱硬化と比較して短時間での硬化が可能な紫外線硬化性樹脂組成物を用いて、透明性と優れた耐摩耗性ならびに耐候性を有するコーティング組成物およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、先に、ウェットプロセスで成膜可能であり、紫外線硬化により短時間での生産を可能にする有機樹脂基板の表面を保護するコーティング剤としてオルガノシロキサン化合物からなる組成物を、所定弾性率および厚みを有するプライマー層の表面に設けることにより、耐候性と耐摩耗性を両立する手段を提案したが(特願2016-073535)、更なる耐候性の改善が望まれる。
そこで、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアルコキシシランを含む配合処方により上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記(A)成分〜(D)成分を含有し、(A)成分と(B)成分は、両成分の部分加水分解縮合物であってもよいことを特徴とするコーティング組成物である:
(A)成分;下記一般式(i)で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
【化1】
(式中、Rは炭素数1〜15の有機基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6の有機基を示し、aは0〜2の数を示し、Xは独立に水素原子、炭素数1〜15の有機基又は式(ii)で表される基を示す。
【化2】
(式中、R〜R及びaは、上記式(i)と同意である。)
(B)成分;下記式(iii)で表されるアクリル基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物、
Si(OR4−b―c (iii)
(式中、R、Rはいずれも直接Siに結合し、Rはアクリル基を含む炭素数1〜10の有機基を示し、Rはアクリル基を含まない炭素数1〜10の有機基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示し、b、cはそれぞれ0<b≦1、0≦c≦2の数を示し、b+cは0<b+c≦2の数を示す。)
(C)成分;光重合開始剤、及び
(D)成分;溶剤。
【0011】
また、本発明は、更に下記(E)成分を含有し、(E)成分が、(A)成分及び/又は(B)成分との部分加水分解縮合物あってもよい上記コーティング組成物である:
(E)成分;下記式(iv)で表される鎖状、分岐状または環状のアルキルシリケート。
Si(n−1)(OR(2n+2) (iv)
(式中、nは1〜20の整数を示し、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を示す。)
【0012】
さらに、本発明は、上記コーティング組成物の紫外線硬化物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコーティング組成物は、耐摩耗性や耐候性に優れるので自動車等の輸送機器や建造物等の窓材など、ガラス代替用途の樹脂コーティング材として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のコーティング組成物は、(A)成分としてのイソシアヌル環構造を含有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物、(B)成分としてのアクリル基を含有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物、(C)成分としての光重合開始剤、及び(D)成分としての溶剤を含有する。さらに、(E)成分としてのアルキルシリケートを含んでもよい。
(A)成分と(B)成分とは、混合物であってもよいし、部分加水分解縮合物(シロキサン樹脂)であってもよい。さらに、(E)成分も、(A)成分及び/又は(B)成分との混合物であってもよいし、部分加水分解縮合物(シロキサン樹脂)であってもよい。
以下、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)成分について、順次、説明する。
【0015】
(A)成分は、上記構造式(i)で表されるアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物である。
一般式(i)において、Rは炭素数1〜15の有機基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜6の有機基を示し、aは0〜2の数を示し、Xは独立に水素原子、炭素数1〜15の有機基R又は式ii)で表されるシリルアルキル基を示す。式(i)と式(ii)において、共通する記号は同じ意味を有する。
、R、Rにおいて、これらが有機基である場合は、好ましくは炭化水素基であり、より好ましくはアルキル基、アルキレン基、環状オレフィン基である。なお、炭素数が6以上の場合は芳香族炭化水素基であることもよい。
Xとしては、好ましくは少なくとも一つが式(ii)で表されるシリルアルキル基であり、より好ましくはXの二つがいずれも式(ii)で表されるシリルアルキル基である。aは好ましくは0又は1である。
【0016】
ここで、上記部分加水分解縮合物とは、2量体以上であって、アルコキシシラン基の一部が加水分解して部分的に縮合し、アルコキシシラン基又は水酸基を有する縮合物を意味する。なお、完全加水分解縮合物はアルコキシシラン基及び水酸基が縮合反応によってほぼ消費され、これ以上縮合反応が進行しない状態であり、これと区別する。
【0017】
一般式(i)で表されるアルコキシシランの例としては、1,3,5‐トリス(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルエチル)イソシアヌレート、1,3‐(ジ‐2-プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1‐(2-プロペン-1-イル)-3,5-ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3,5-ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3-ビス(グリシジルメチル)-5-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1-グリシジルメチル-3-(2−プロペン-1-イル)-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3‐ジメチル-5-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。好ましくは、1,3,5‐トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートである。
【0018】
上記(B)成分は、上記式(iii)で表されるアクリル基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解縮合物である。ここで、アクリル基は、CH2=CR-CO-又は-CH=CR-CO- (Rはメチル基又は水素である。)で表される基をいう。
【0019】
式(iii)において、Rはアクリル基を含む炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4の有機基である。Rはアクリル基を含まない炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜4の有機基である。Rは水素または炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基を示す。R、Rにおける有機基としてはアルキル基が好ましく、Rにおける有機基としては末端にアクリロキシ基を有するアルキレン基が好ましい。Rにおける有機基の炭素数の計算には、アクリル基が有する炭素数は含まない。アクリル基が有する炭素数を含む場合は、上記炭素数に3又は4が加えられる。
【0020】
式(iii)において、b、cはそれぞれ0<b≦1、0≦c≦2の数(平均値)を示し、b+cは0<b+c≦2を満足する。4−b−cは2又は3の数であることが好ましい。
【0021】
式(iii)で表されるアルコキシシランとしては、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリルを有するシラン化合物が挙げられる。
【0022】
式(i)または式(iii)のアルコキシシランの部分加水分解縮合物は、これらアルコキシシランを部分加水分解して得られる。部分加水分解する方法は、後記する条件が採用できる。
【0023】
上記(C)成分は、光重合開始剤である。光重合開始剤としては、アルキルフェノン系、ベンゾイル系、アシルフォスフィンオキサイド系、オキシムエステル系などが挙げられる。例えば、アセトフェノン、4,4'-ジメトキシベンジル、ジベンゾイル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等が挙げられる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。
【0024】
この添加量は、(A)、(B)、(E)成分及びその部分加水分解縮合物に相当するシロキサン樹脂(これらを総称して「シロキサン樹脂成分」という。)の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。
この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、所望する表面高度が得られない。この範囲を超えて添加しても更なる反応率の向上は望めない。
【0025】
(D)成分は、溶剤である。溶剤としては、後記する加水分解時に混合する溶媒と同じものが例示でき、加水分解時に混合する溶媒と同じでも異なっていてもよい。溶剤の使用量も加水分解時に混合する溶媒も同じであることができる。(D)成分の配合量は、シロキサン樹脂成分の合計100重量部に対して、10重量部〜5000重量部であることが好ましく、100〜1000重量部がより好ましい。
【0026】
(E)成分は、上記式(iv)で表される鎖状、分岐状または環状のアルキルシリケートである。式(iv)において、nは1〜20、好ましくは1〜10の数を示し、Rは水素または炭素数1〜5、好ましくは1〜2アルキル基を示す。
【0027】
式(iv)で表されるアルキルシリケートとしては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、イソブチルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等のアルキルシリケートまたはその部分加水分解物が挙げられる。より好ましくは、加水分解・縮合の反応が速い点で、メチルシリケートあるいはエチルシリケートまたはその部分加水分解物が好ましい。
【0028】
(A)成分、(B)成分、(E)成分を含む混合物中には、本発明の目的を阻害しない限り、その他のシラン化合物または加水分解物を含むことができ、これは混合後に加水分解しても良い。
その他のシラン化合物として、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランなどが挙げられる。これらのオルガノシランは単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0029】
上記(A)、(B)、(E)成分は、加水分解(部分加水分解を含む)されて縮合する。(A)、(B)、(E)成分を単独で加水分解してもよく、これらの2種または3種を混合して加水分解してもよい。
これらの加水分解縮合物はシロキサン樹脂であり、その平均分子量(Mn)が、例えば500〜5000、好ましくは700〜2000である。
【0030】
加水分解する方法は、溶液をpH1〜7、好ましくはpH2〜5の酸性水で加水分解させることがよい。このpH調整には、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、クエン酸、マレイン酸、安息香酸、マロン酸、グルタル酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸及び無機酸を用いることができる。また、表面にカルボン酸基やスルホン酸基を有する陽イオン交換樹脂等の固体酸触媒を触媒に用いてもよい。上記酸又は酸触媒の使用量は、生成物に対して0.0001〜20重量%であることが好ましい。
【0031】
加水分解反応においては水の存在が必要である。水の量は、上記シラン化合物やシリケート化合物における加水分解性基(の一部)を加水分解するのに十分な量以上であればよく、加水分解性基の数の理論量(モル)の0.5〜2.0倍モルに相当する量であることが好ましい。また、酸性触媒が水溶液として加えられる場合は、その水を計算に加える。水が少ない場合は、十分な加水分解が進行せず、多い場合には、残存する水により塗工性や乾燥効率が低下する。
【0032】
加水分解と同時に生成したシラノール基の脱水縮合反応が生じて、シロキサン樹脂となる。この縮合を行う温度は、常温または120℃以下の加熱下であり、より好ましくは30℃以上100℃以下である。温度が低い場合には、加水分解および縮合反応の時間が長く、生産性が低くなり、温度が範囲を超えて高い場合には、不溶化する恐れがある。
【0033】
上記加水分解及び縮合の反応速度および生成する樹脂の分子量を調整する目的で有機溶媒を混合することが好ましい。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル系としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エーテル類としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエステル系としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、グリコールエーテル系としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、炭酸水素系としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0034】
溶剤の混合量は、加水分解する成分の全体量を100重量部とした場合、10重量部〜700重量部であることが好ましい。
【0035】
本発明のコーティング組成物は、上記(A)成分〜(D)成分を必須成分とする。(A)成分と(B)成分の加水分解縮合物は、(A)成分と(B)成分の合計と見ることができる。
本発明のコーティング組成物は、更に(E)成分を含有できる。(A)成分と(B)成分の1種又は2種と(E)成分の加水分解縮合物は、(A)成分または/および(B)成分と、(E)成分の合計と見ることができる。
なお、(A)成分、(B)成分、及び(E)成分は、樹脂を形成する成分であるので、これらをシロキサン樹脂成分という。
【0036】
上記樹脂成分の合計を100重量部とし、それに対する各成分の好ましい配合割合(重量部)を以下に示す。
(A)成分:5〜60、好ましくは15〜50
(B)成分:40〜95、好ましくは50〜85
(E)成分:0〜30、好ましくは0〜15
また、モル比率で言えば、(B)成分1モルに対して、(A)成分0.05〜0.50モルが好ましく、0.07〜0.30モルがより好ましい。また、(E)成分を使用する場合、(B)成分1モルに対して、(E)成分は0.01〜0.30モルが好ましく、0.05〜0.20モルがより好ましい。
【0037】
ハードコート層の形成は、基材上にプライマー層を設け、その上に上記各成分を含むコーティング組成物(樹脂組成物ともいう。)を、塗布してから、乾燥後、これを紫外線照射により光硬化させることが望ましい。この硬化は、アクリル基が重合して起こる他、シラノール基の縮合による架橋反応も寄与する。
【0038】
プライマー層は、特に限定するものではないが、分子量500以下の多官能アクリルモノマーを含むアクリル組成物を硬化してなる硬化樹脂が好ましい。多官能アクリルモノマーとしては、多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば分子内に2個または3個の(メタ)アクリル基を有する多官能アクリレートが好ましく、脂肪族アクリレート、脂環式アクリレート、エポキシアクリレート等が挙げられる。官能基が多い場合には、体積収縮が大きいため付着性の低下、靱性が低下するため、耐候性の低下の恐れがある。また、多官能アクリルモノマーを含むアクリル組成物中には、エポキシ基を有する化合物を含むことが望ましく、エポキシアクリレート等のエポキシ基含有多官能アクリルモノマーであることがより望ましい。なお、シリコン含有アクリレートは望ましくない。
【0040】
上記多官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジシクロペンタニルジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール型エポキシアクリレート、トリメチロールプロパン型エポキシアクリレート、イソシアネートと水酸基を有するアクリレートを反応させたウレタンアクリレート等が挙げられる。これ
らの(メタ)アクリレートは単独でも、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0041】
上記アクリル組成物を硬化する際には、重合開始剤としての光重合開始剤を添加することが好ましく、この添加量は樹脂組成物の合計100重量部に対して0.1〜10重量部の範囲であることが好ましい。この範囲に満たないと架橋が不十分になって弾性率が低下し、所望する表面硬度が得られない。反対にこの範囲を超えて含有しても更なる反応率の向上は望めない。
【0042】
上記アクリル組成物は、溶剤に溶解して、溶液として基材等に塗布して層を形成してから、硬化させることが望ましい。
溶剤としては、固形分濃度調整、分散安定性向上、塗布性向上、基材への密着性向上等を目的として、有機溶媒が挙げられる。例えば、アルコール類としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、t−ブタノール、sec−ブタノール、ベンジルアルコール、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エステル系としては、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エーテル類としては、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリコールエステル系としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、グリコールエーテル系としては、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルジグリコール、メチルトリグリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、炭酸水素系としては、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は2種以上を併用して使用できる。
【0043】
ハードコート層及びプライマー層、又はこれらを形成する前の樹脂組成物には、必要により、耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤や紫外線安定剤を配合することが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤としては、有機系や無機系のものを用いることができる。有機系として、主骨格がヒドロキシベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系である化合物誘導体が好ましい。無機系としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛など無機系の酸化物微粒子やチタン、亜鉛、ジルコニウムなどの金属キレート化合物などが挙げられる。
【0045】
更に、ブリードアウトを抑制する目的で、分子内に一つ以上の反応性官能基を有する紫外線吸収剤、または側鎖に紫外線吸収性基を有する重合体を用いてもよい。具体的には、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-[5-クロロ-(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(t-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)6-(1-メチル-1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2'-エチル)へキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン)、2-ヒドロキシ-4-(2-アクリロキシエトキシ)ベンゾフェノンの(共)重合体、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールの(共)重合体などが挙げられる。これらの紫外線吸収剤は2種以上を併用してもよい。
【0046】
紫外線安定剤としては、分子内に1個以上の環状ヒンダードアミン構造を有するものが好ましい。更に、ブリードアウトを抑制する目的で、分子内に一つ以上の反応性官能基を有する紫外線安定剤、または側鎖に紫外線安定性基を有する重合体を用いてもよい。具体的には、ビス(2,2,6,6―テトラメチル-1−(オクチロキシ)−4−ピペリジル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルー4−ピペリジニル)−[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチルブチルマロネート、セバシン酸ビス(2,2,6,6− テトラメチル−4−ピペリジル)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4− ピペリジル)、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−メチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、N−アセチル−3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)ピロリジン−2,5−ジオン、テトラキス(2,2, 6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)等が挙げられ、これらの紫外線安定剤は2種以上併用してもよい。
【0047】
更に、ハードコート層及びプライマー層、又はこれらを形成する前の樹脂組成物には必要により、本発明の効果を阻害しない範囲で、その他の各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、他の樹脂成分等を例示することができる。
【0048】
樹脂基材としては、透明性の観点からポリカーボネート等の透明基板が好ましい。
【0049】
ハードコート層を形成する方法として、例えば、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、フローコート法、カーテンコート法およびディッピング法が挙げられる。なお、塗工膜厚は、乾燥・活性エネルギー線の照射による硬化後の形成膜厚を考慮して、固形分濃度により調整する。
【0050】
塗布後は、溶剤を乾燥等により除去することが好ましい。乾燥温度は、用いる基材が変形しない条件とし、乾燥時間は、生産性の観点から1時間以下が好ましい。
【0051】
耐摩耗性および耐候試験環境下でのクラック発生の観点から、ハードコート層の厚みは0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmであり、プライマー層の厚みは、5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。
【0052】
硬化処理に使用される活性エネルギー線の波長は特に制限されるものではないが、特に波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光重合開始剤の種類に応じて選定さ
れる。
【0053】
プライマー層形成工程では、活性エネルギー線の照度が100〜500mW/cmで、積算光量が100〜1000mJ/cmの条件で照射することが好ましい。照射量が低い場合には、十分な硬化膜が得られず、次のハードコート成膜工程での溶剤により白化や厚みむらが生じる恐れがある。また、照射量が多い場合には、ハードコート層との付着性が低下する。
【0054】
ハードコート層形成工程では、活性エネルギー線は照度が100mW/cm以上で、積算光量が1000mJ/cm以上の条件で照射することが好ましい。照射量が低い場合は、架橋形成が不十分であり、所望の耐摩耗性および耐候性等の性能が得られない。
【0055】
また、活性エネルギー線の照射による硬化の後、加熱処理を施してもよいが、用いる基材が変形しない条件とし、乾燥時間は、生産性の観点から1時間以下が好ましい。
【0056】
上記はハードコート層について説明したが、本発明のコーティング組成物はこれに限らずその他の塗料用途等に使用可能である。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
合成例1
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にイソシアヌレート基含有トリアルコキシシラン(信越化学製:KBM9659)5.5g(8.9ミリモル)と3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製:XIAMETER OFS−6030 SILANE)25.0g(0.1モル)とプロピレングリコールモノメチルエーテル13.0gを入れ撹拌し、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液7.0gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル200.0gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂A1)を得た。得られた反応物のGPCを測定した結果、分子量Mnは1000であった。
【0059】
合成例2
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にKBM9659 8.3g(0.013モル)とOFS−6030 20.0g(0.08モル)、メチルシリケート53A 4.8g(6ミリモル)、プロピレングリコールモノメチルエーテル42.0gを入れ撹拌し、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液8.4gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル164.0gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂A2)を得た。得られた反応物のGPCを測定した結果、分子量Mnは1000であった。
【0060】
合成例3
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にOFS−6030 20.0g(0.08モル)、メチルシリケート53A 4.8g(6ミリモル)、プロピレングリコールモノメチルエーテル4.8gを入れ撹拌し、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液8.4gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。6.2g滴下後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、KBM9659 8.3g(0.013モル)と0.05%塩酸水溶液2.2gを加え、更に30分撹拌後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル164.0gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂A3)を得た。得られた反応物のGPCを測定した結果、分子量Mnは1500であった。
【0061】
合成例4
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にOFS−6030 20.0g(0.08モル)、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液4.4gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル9.0gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂A4)を得た。得られた反応物のGPCを測定した結果、分子量Mnは1000であった。
【0062】
合成例5(比較)
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器にOFS−6030 20.0g(0.08モル)、メチルシリケート53A 4.8g(6ミリモル)、滴下ロートに0.05%塩酸水溶液6.2gを投入し、室温で撹拌しながら加えた。滴下終了後、60℃に昇温して1時間撹拌した後、冷却しプロピレングリコールモノメチルエーテル36.0gを加え、目的物であるシロキサン縮合物(シロキサン樹脂A5)を得た。得られた反応物のGPCを測定した結果、分子量Mnは1100であった。
【0063】
実施例1〜4及び比較例1
シロキサン樹脂、重合開始剤及び溶剤を表1に示す割合(重量部)で配合し、ハードコート組成物H1〜H5を得た。ここで、重合開始剤はビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製;Irgaqure819)であり、溶剤はプロピレングリコールモノメチルエーテルである。
【0064】
【表1】
【0065】
(プライマー組成物の調製)
ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート(共栄社化学社製:ライトアクリレートDCP−A)30重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー(共栄社化学社製:UA-306H)70重量部、重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)―フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製;Irgaqure819)3重量部、UVA(紫外線吸収剤)としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製;TINUVIN384−2)5重量部、光安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製;TINUVIN5100)1重量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル333重量部を配合し、プライマー組成物を得た。
【0066】
実施例5
プライマー組成物をポリカーボネート樹脂板(厚さ3mm、長さ15cm、幅15cm)にフローコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、窒素雰囲気下、2kW/cmの高圧水銀ランプを用い、400mJ/cm積算露光量(365nm換算)で成膜した。
次いで、ハードコート組成物H1をフローコート法により塗布し、80℃で6分乾燥させた後、室温下5分冷却した。その後、窒素雰囲気下、3kW/cmの高圧水銀ランプを用い、4000mJ/cm積算露光量(365nm換算)で硬化させ、ハードコート層2um、プライマー層15umの積層体を得た。
【0067】
実施例6〜8、比較例2
ハードコート組成物を表2に示す組成とした他は、実施例1と同様にして目的の積層体を得た。
【0068】
積層体の評価
[初期ヘイズ]
ヘイズ(%)はJIS K7136に準拠、全光線透過率(%)はJIS K7361に準拠して濁度計NDH−2000(日本電色工業製)を用いて測定し、ヘイズ1以下を〇とし、1を超えたときを×とした。
【0069】
[耐摩耗性]
積層体の試験片を、JISK7204に準拠したテーバー摩耗試験における摩耗輪CS−10Fを用いて、荷重500g下で500回転試験を行い、濁度計(NDH2000)を用いて測定し、試験前後のヘイズ値差をΔHとした。判定基準は下記に示す。
〇:ΔHが0以上5未満
△:ΔHが5以上9未満
×:ΔHが9以上
【0070】
[付着性]
積層体の試験片を、カミソリ刃を用いて、塗膜に2mm間隔で縦、横11本ずつ切れ目を入れて100個の碁盤目を作成し、セロハンテープを付着させた後、60度の角度で勢いよく剥がした時の剥離の有無を目視で観察し、剥離マス目数/100マスで評価した。
〇:0/100
×:1/100〜100/100
【0071】
[耐熱性]
積層体の試験片を、熱風循環オーブンを用いて130℃1時間加熱保持し、室温まで放置し、冷却後の外観(クラック有無)を目視で評価した。
○:クラック無し
×:クラック有り
【0072】
[耐候性試験]
積層体の試験片を、メタルハライドランプ式促進耐候性試験機(ダイプラウィンテス社;フィルターKF−1(295〜780nm)、放射照度800W/cm、L/R/D=4時間/4時間/4時間)を用いて以下の条件で試験し、目視で評価した。なお、BPはブラックパネルをいう。
L:照射、R:休止、D:湿潤
L条件:BP 63℃、40%(湿度)
R条件:BP 60℃、80%(〃)
D条件:BP 30℃、98%(〃)
水噴霧 D条件の直前 10秒
でL−R−Dを1サイクルとして所定試験サイクル数毎に試験片を取り出し、目視でクラックや剥離の有無について評価し異常が見られないサイクル数を耐候性の評価とした。
<クラック>
〇:60サイクル後クラック無し
×:50サイクル後クラック有り
【0073】
【表2】