【実施例】
【0039】
(第1のパラジウムコロイドの調製)
先ず、イオン交換水(950mL)に塩化ナトリウム(2.5mmol)、塩化パラジウム(II)(0.5mmol)、デキストラン(100mg)及びグルコース(1g)を溶解させた後、常温下で撹拌しながら40mmol/L水素化ホウ素ナトリウム水溶液(50mL)を加えて混合液を調製した。
次いで、この混合液を80℃で1日間撹拌して第1のパラジウムコロイドを調製した。
【0040】
(第2のパラジウムコロイドの調製)
前記デキストラン(100mg)及び前記グルコース(1g)に代えて、前記イオン交換水に蔗糖(10g)を溶解させたこと、前記混合液に対し80℃で1日間撹拌することに代えて、25℃で30日間静置すること以外は、第1のパラジウムコロイドの調製と同様にして、第2のパラジウムコロイドの調製を行った。
【0041】
(金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造)
<実施例1>
先ず、130℃硬化型のシート状炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグ(三菱レイヨン社製、TR3110 381GMX(PPG381))を10cm×16cmの大きさで切り出し、片面にテフロン(登録商標)テープを貼ることでマスキングを行った。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを25℃の70質量%メタノール水溶液中に15分間浸漬させた後、水洗した。更に、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを25℃の0.3質量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液中に3分間浸漬させた後、水洗した(前処理工程)。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを前記第1のパラジウムコロイド中に5分間浸漬させて、前記エポキシ樹脂プリプレグにパラジウム触媒を付与した後、水洗した(触媒付与工程)。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを32℃に温度調整された3Lの無電解銅めっき液(奥野製薬工業社製、ATSアドカッパーIW)中に15分間浸漬させて無電解銅めっきを行い(無電解めっき工程)、前記エポキシ樹脂プリプレグの片面が厚み252nmの銅めっき膜で被覆された実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造した。
なお、前記銅めっき膜の厚みは、前記エポキシ樹脂プリプレグに対する前記無電解めっき工程前後の重量差から求めることとした。
【0042】
<実施例2>
前記エポキシ樹脂プリプレグを2cm×4cmの大きさで切り出し、片面にテフロンテープを貼ることでマスキングを行った。このエポキシ樹脂プリプレグに対し、25℃の70質量%メタノール水溶液中に15分間浸漬後、水洗すること、及び、25℃の0.3質量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液中に3分間浸漬後、水洗することに代えて、0.01質量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液中に30分間浸漬後、水洗及び風乾して、前記前処理工程を行ったこと、並びに、前記触媒付与工程後の前記エポキシ樹脂プリプレグを
32℃に温度調整された
3Lの前記無電解銅めっき液中に15分間浸漬させることに代えて、25℃に温度調整された5mLの前記無電解銅めっき液中に15分間浸漬させて前記無電解めっき工程を行ったこと以外は、実施例1と同様にして、前記銅めっき膜の厚みが98nmの実施例2に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造した。
【0043】
<実施例3>
実施例2における前記エポキシ樹脂プリプレグ(2cm×4cm)に対し、25℃の70質量%メタノール水溶液中に15分間浸漬後、水洗すること、及び、25℃の0.3質量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液中に3分間浸漬後、水洗することに代えて、25℃の70質量%メタノール水溶液中に5分間浸漬後、水洗することのみで前記前処理工程を行ったこと、並びに、前記エポキシ樹脂プリプレグを前記第1のパラジウムコロイド中に30分間浸漬させて、前記エポキシ樹脂プリプレグに前記パラジウム触媒を付与した後、水洗することに代えて、途中、水洗しながら上村工業社製のスルカップ・プレディップPED−104中に3分間、同社製のスルカップ・アクチベーターPED−104&AT−105中に10分間、同社製のスルカップ・アクセレレーターAL−106中に5分間、順次浸漬して前記触媒付与工程を行ったこと以外は、実施例2と同様にして、前記銅めっき膜の厚みが294nmの実施例3に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造した。
【0044】
<実施例4>
先ず、150℃硬化型のシート状ガラスエポキシ樹脂プリプレグ(寺岡製作所社製、5100 0.2、G−EP−PPG)を2cm×4cmの大きさで切り出し、片面にテフロンテープを貼ることでマスキングを行った。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを25℃の0.01質量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム水溶液中に1日間浸漬させた後、水洗した(前処理工程)。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを前記第2のパラジウムコロイド中に30分間浸漬させて、前記エポキシ樹脂プリプレグにパラジウム触媒を付与した後、水洗した(触媒付与工程)。
次いで、この状態の前記エポキシ樹脂プリプレグを30℃に温度調整された5mLの無電解ニッケルめっき液中に15分間浸漬させて無電解ニッケルめっきを行い(無電解めっき工程)、前記エポキシ樹脂プリプレグの片面が厚み112nmのニッケルめっき膜で被覆された実施例4に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造した。
なお、前記無電解ニッケルめっき液は、0.1mol/L塩化ニッケル(II)、2mol/Lアンモニア及び0.1mol/L次亜リン酸ナトリウムの溶液に塩酸を加えてpHが8.9となるように調整したものである。
【0045】
<比較例1>
前記前処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造を試みた。
しかしながら、めっきは全く起らず、前記エポキシ樹脂プリプレグ上に前記銅めっき膜の存在を確認することができなかった。
【0046】
(柔軟性)
実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグと同様に製造した金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに対し、柔軟性の評価を目的として、JIS L 1096:2010 織物及び編物の生地試験方法 8.21剛軟度 A法(45°カンチレバー法)に準じた剛軟性の測定を行った。
具体的には、試料の剛性を考慮して、20mm×約250mmの大きさで長尺帯状に切り出した前記炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグ(三菱レイヨン社製、TR3110 381GMX(PPG381))を用いて、実施例1と同様の金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造したものを試験片とした。
この試験片を45°カンチレバー試験機の水平台上に取り付けた後、水平面から鉛直方向に45°傾斜した前記カンチレバー試験機の斜面台に向けて、前記試験片を前記水平台上で緩やかに滑らせて、前記試験片の移動先の先端の中央点が前記斜面台と接したときの前記水平台上の前記試験片の基端の位置をスケールを用いて読み取った。前記剛軟性は、前記スケールで読み取られた前記試験片の前記水平台上での移動距離(mm)で示される。なお、測定温度は、室温23℃とした。
また、比較のため、20mm×約250mmの大きさで長尺帯状に切り出した前記炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグ自身(未処理)と、特許文献1に基づく予備的な加熱として、130℃、5分間の条件で加熱した前記炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグとのそれぞれを試験片として、前記剛軟性の測定を同様に行った。
また、実施例4に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグと同様に製造した金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに対して、同様の前記剛軟性の測定を行った。
具体的には、試料の剛性を考慮して、20mm×約250mmの大きさで長尺帯状に切り出した前記ガラスエポキシ樹脂プリプレグ(寺岡製作所社製、5100 0.2、G−EP−PPG)を用いて、実施例4と同様の金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを製造したものを試験片として、前記剛軟性の測定を同様に行った。
また、比較のため、20mm×約250mmの大きさで長尺帯状に切り出した前記ガラスエポキシ樹脂プリプレグ自身(未処理)と、特許文献1に基づく予備的な加熱として、130℃、5分間の条件で加熱した前記ガラスエポキシ樹脂プリプレグとのそれぞれを試験片として、前記剛軟性の測定を同様に行った。
前記剛軟性の各測定結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
前掲表1に示すように、実施例1と同様に製造した前記金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグ(炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグ使用)は、硬化前であるため、未処理の前記炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグと同等の柔軟性を有している。
一方、特許文献1に基づく加熱を行った前記炭素繊維エポキシ樹脂プリプレグでは、加熱による硬化のため、前記水平台上の前記試験片が前記斜面台上に垂れ下がらず、前記剛軟性を測定できない結果(柔軟性なし)となった。
また、実施例4と同様に製造した前記金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグ(ガラスエポキシ樹脂プリプレグ使用)は、硬化前であるため、未処理の前記ガラスエポキシ樹脂プリプレグと同等の柔軟性を有している。
一方、特許文献1に基づく加熱を行った前記ガラスエポキシ樹脂プリプレグでは、加熱による硬化のため、前記水平台上の前記試験片が前記斜面台上に垂れ下がらず、前記剛軟性を測定できない結果(柔軟性なし)となった。
【0049】
(金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体の製造)
<実施例5>
実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを電気めっき用の治具にセットし、厚付けを目的とした電気銅めっきを行った。
具体的には、めっき液として、銅めっき液(JCU社製、光沢硫酸銅めっき液、EP−30)を用い、アノードとして、含燐銅板(10cm×20cm)を用い、液温25℃、電流密度3.0A/dm
2の条件で、実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグをカソード(めっき対象)とする電気銅めっきを行った。
ここで、前記電気銅めっきでは、めっき時間を約80分間とし、前記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を50μmの厚みで形成した。なお、前記電気銅めっき膜の厚みは、前記電気銅めっき前後の重量差から求めることとした。
次いで、水洗後の実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを、25℃、1分間の条件で、変色防止剤(メルテックス社製、エンテックCU−56)に浸漬させた後、水洗のうえ風乾した。
以上により、前記電気銅めっきが厚付けされた金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを調製した。
【0050】
実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造に用いた、前記エポキシ樹脂プリプレグ(10cm×16cm)を更に12枚用意した。
次いで、これら12枚の前記エポキシ樹脂プリプレグを下地として、前記電気銅めっきが厚付けされた金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを最上面に配し、積層体を作製した。
前記積層体を縦160mm、横100mm、深さ3mmの穴部が形成されたステンレス製金型内に設置し、ホットプレス機により140℃、30分間加熱することにより、エポキシ樹脂を硬化させ、厚み約3mmの板状体として、実施例5に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0051】
<実施例6>
電気銅めっきにおいて、めっき時間を約80分間とし、前記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を50μmの厚みで形成することに代えて、めっき時間を約160分間とし、前記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を100μmの厚みで形成したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0052】
<実施例7>
実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに代えて、実施例2に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例7に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0053】
<実施例8>
実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに代えて、実施例3に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグを用いたこと以外は、実施例5と同様にして、実施例8に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0054】
<参考例1>
前記電気銅めっきが厚付けされた金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに代えて、実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造に用いた、前記エポキシ樹脂プリプレグ(10cm×16cm)を用いて、合計13枚の前記エポキシ樹脂プリプレグを重ねた状態とし、更に、これらの最上面に厚み50μmの銅箔を配し、積層体を作製したこと以外は、実施例5と同様にして、参考例1に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0055】
<参考例2>
前記電気銅めっきが厚付けされた金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに代えて、実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造に用いた、前記エポキシ樹脂プリプレグ(10cm×16cm)を用いて、合計13枚の前記エポキシ樹脂プリプレグを重ねた状態とし、更に、これらの最上面に厚み100μmの銅箔を配し、積層体を作製したこと以外は、実施例5と同様にして、参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0056】
<比較例2>
前記電気銅めっきが厚付けされた金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグに代えて、実施例1に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの製造に用いた、前記エポキシ樹脂プリプレグ(10cm×16cm)を用いて、合計13枚の前記エポキシ樹脂プリプレグで積層体を作製して前記積層体の硬化体を製造したこと、及び、前記積層体の硬化体に対し、実施例6と同様の電気めっきを行い、厚みが100μmの電気銅めっき膜を形成したこと以外は、実施例6と同様にして、比較例2に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を製造した。
【0057】
(密着性)
前記金属めっき膜及び前記金属箔の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体に対する密着性を確認するため、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体及び参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体に対し、JIS K6854−1による90度はく離試験を行った。
前記90度はく離試験の結果、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、前記金属めっき膜の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体に対する、はく離強度が0.57kN/mであった。
また、参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、前記金属箔の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体に対する、はく離強度が0.69kN/mであった。
これら試験結果から、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体は、参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体と比較して、やや低いものの、0.50kN/mを超える前記はく離強度を有しており、実用上、十分な密着性を有していると評価することができる。
一方、参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体は、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体と比較して、やや高い前記はく離強度を有しているものの、加熱硬化前の前記積層体において、前記金属箔と前記エポキシ樹脂プリプレグとが別体とされるため、前記金属箔と前記エポキシ樹脂プリプレグとの位置合わせが必要となるほか、位置合わせした状態で加熱硬化を行うための専用の金型が必要であり、前記エポキシ樹脂プリプレグの柔軟性を利用した自由な加工性を持たない。
【0058】
また、前記エポキシ樹脂プリプレグの柔軟性を利用した自由な加工性を得る目的で、一旦、加熱により前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体を得た(自由加工)後、この硬化体に前記無電解銅めっき膜を形成した、比較例2に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、前記90度はく離試験で確認される前記はく離強度が、0.1kN/m以下であり、実用に耐え得る密着性が得られない。
実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、加熱硬化前の前記柔軟性を有する前記エポキシ樹脂プリプレグに対して、前記無電解銅めっき膜を形成するため、一般に硬化体に対して無電解めっきを行う場合に前処理として行うエッチング処理を行わない条件下で前記無電解めっきを行った場合でも、十分な密着性が得られるものと考えられる。
なお、実施例5,7,8に係る各金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体についても、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体と同様、十分な密着性が得られている。
【0059】
実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した電子顕微鏡像を
図2に示す。
該
図2に示すように、銅めっき膜と前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化層との界面にボイドが確認されず、良好な密着性を確認することができる。
また、収束イオンビーム(FIB)加工により約100nmに薄膜化することで、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察した電子顕微鏡像を
図3に示す。
該
図3に示すように、高倍率観察において、炭素繊維と前記銅めっき膜との間に前記エポキシ樹脂成分が存在し、良好な密着性が得られていることが確認される。
【0060】
(コート層)
また、実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、
図2に示すように、エポキシ樹脂プリプレグの硬化体(図中の「CFRP」)上に銅めっき膜の形成が確認されるとともに、前記銅めっき膜上にコート層(図中の「銅めっき膜」上の層)の形成が確認される。
ここで、前記エポキシ樹脂プリプレグは、繊維間に未硬化のエポキシ樹脂が入り込んだ部材であり、前記前処理工程時において、前記表面近傍における2量体、3量体のエポキシ樹脂を含む幾分かが前処理液に溶出することから、前記無電解めっき工程(及び前記電気めっき工程)時において、表面に前記繊維の網目形状に基づく凹凸形状が現れた状態とされる。
したがって、前記エポキシ樹脂プリプレグ上に形成される金属めっき膜は、前記無電解めっき工程(及び前記電気めっき工程)時に、前記凹凸形状に追従して被膜されることとなる。
そのため、前記金属めっき膜は、前記エポキシ樹脂プリプレグの前記凹凸形状と同様の凹凸形状を持った膜として形成されるとともに、微視的に見ると、前記エポキシ樹脂プリプレグの前記凹凸形状の起伏に追従し切れない部分において貫通孔を有した状態とされる。
このような金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグでは、加熱硬化前及び加熱硬化時において、前記エポキシ樹脂プリプレグ表面側の一部のエポキシ樹脂成分が前記貫通孔を通じて前記金属めっき膜上に流れ出し、このエポキシ樹脂成分が加熱硬化されて、前記コート層が形成されることとなる。
【0061】
(耐雷性)
前記コート層の有用性を確認するため、実施例5,6に係る各金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体及び参考例1,2に係る各金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体に対して、耐雷性試験を行った。
前記耐雷性試験は、インパルス電流発生装置(スイス、Haefely社製)を用い、接地した各硬化体に対し、上方3mmに設置したステンレス製放電電極から、直撃雷インパルス電流(10/350μ秒、30kA)を印加することで行った。
【0062】
前記耐雷性試験の試験結果について、説明する。
参考例1に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、放電による電圧が印加された表面において、直径約30mmの円状の範囲で、銅箔(厚み50μm)に欠損が生じ、目視により、下地の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体が露出した状態が確認された。
また、参考例2に係る金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、放電による電圧が印加された表面において、直径約20mmの円状の範囲で、銅箔(厚み100μm)に欠損が生じ、目視により、下地の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体が露出した状態が確認された。
実施例5に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、放電による電圧が印加された表面において、直径約10mmの円状の範囲で、銅めっき膜(電気めっき膜の厚み50μm)に欠損が生じ、目視により、下地の前記エポキシ樹脂プリプレグの硬化体が露出した状態が確認された。また、直径約20mmの円状の範囲で前記銅めっき膜に斑状の変容が確認された。
実施例6に係る金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、放電による電圧が印加された表面において、前記銅めっき膜(電気めっき膜の厚み100μm)に欠損は確認されず、直径約20mmの円状の範囲で前記銅めっき膜に斑状の変容が確認されるに止まった。
【0063】
以上のように、実施例5,6に係る各金属めっき膜被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体では、参考例1,2に係る各金属箔被覆エポキシ樹脂プリプレグの硬化体と比べ、放電による電圧が印加されたときの欠損を抑制することができ、耐雷性に優れると評価することができる。