特許第6839924号(P6839924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6839924
(24)【登録日】2021年2月18日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20210301BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20210301BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20210301BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   B65D65/40 D
   B32B27/00 H
   B32B27/32 E
   B65D77/20 H
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-50972(P2016-50972)
(22)【出願日】2016年3月15日
(65)【公開番号】特開2017-165432(P2017-165432A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月25日
【審判番号】不服2020-6445(P2020-6445/J1)
【審判請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】松原 弘明
(72)【発明者】
【氏名】小橋 一範
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 石井 孝明
【審判官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/080679(WO,A1)
【文献】 特開2013−248742(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/054866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/40
B65D77/20
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を含有する被シール面を有する容器に使用する蓋材であって、
シーラントフィルムと基材フィルムとの積層体からなり、
前記シーラントフィルムが、環状オレフィン系樹脂を含有するラミネート層(A)、オレフィン系樹脂を含有する中間層(B)、環状オレフィン系樹脂を含有する中間層(C)及び、オレフィン系樹脂を含有するシール層(D)が積層されたシーラントフィルムであり、
ラミネート層(A)が、ガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)と、ガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)とを含有し、
ラミネート層(A)に含まれる樹脂成分中の環状オレフィン系樹脂の含有量が80質量%以上であり、前記環状オレフィン系樹脂中のガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)とガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)との含有量の質量比(a1)/(a2)が、15/85〜85/15であり、
シール層(D)が、オレフィン系樹脂としてメタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)を含有し、
シール層(D)に含まれる樹脂成分中のメタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)の含有量が80質量%以上であり、
前記シーラントフィルムの総厚みが35μm以下であり、ラミネート層(A)及び中間層(C)の合計の厚みのシーラントフィルムの総厚みに対する厚み比率が30〜60%であることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記直鎖状ポリエチレン(d1)が、メタロセン触媒を用いて重合された直鎖状ポリエチレンである請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記シーラントフィルムのラミネート層(A)側表面にアルミニウム蒸着層を有する請求項1又は2に記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の容器の開口部を密封する蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種食品容器の開口部を密封、封止する蓋材として、各種の樹脂積層フィルムが用いられている。このような蓋材による食品容器の密封形態としては、食品容器の開口部と同等の大きさの蓋材により、食品容器から蓋材がはみ出さないように密封された形態や、開口部より大きな蓋材により開口部が密封され、開口部よりはみ出した蓋材を開口部端部に沿って折り曲げ、開口部端部を覆うように密封された形態が使用されている。後者の形態は、高級感のある意匠性を得やすいことから、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで販売されるプリン、ゼリー、ヨーグルト等の乳製品やパフェ等の多量に流通する食品包装容器においても、当該形態で使用可能な蓋材の要請が高まっている。
【0003】
開口部端部に沿って折り曲げて密封する蓋材においては、折り曲げた後に折り曲げ部が持ち上がると箱詰め、輸送効率の悪化や展示スペースの占有化率の増大および意匠性を損なうため、良好なデッドホールド性が求められる。良好なデッドホールド性を有する蓋材としては、従来、アルミ箔等の金属箔を層構成中に有する蓋材が使用されていたが、アルミ箔を含む蓋材は、分別処理が困難であるという廃棄時の問題や、金属探知機による異物混入検査が困難となる問題があり、アルミ箔を使用しない蓋材が求められていた。
【0004】
このような要請から、アルミ箔を使用せず、デッドホールド性の良好な蓋材として、紙基材を中間層に配置しその片面に二軸延伸ポリプロピレン、もう片面にポリエチレンテレフタレート、さらにシーラント層を設けたラミネート構成の多層蓋材(特許文献1参照)や、環状ポリオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂を積層した蓋材などが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−136918号公報
【特許文献2】特開2012−153420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、紙基材を使用した蓋材は、防湿性がない紙を主体とするため透湿性を抑制するための複雑な構成であり、当該構成を形成するためには層数が複雑になる結果、生産工程数も増え、又最終的なフィルムの厚みも大きくなる傾向があり、易貫通性やデッドホールド性についてはアルミ箔を用いる蓋材と比較して悪化し、実用性に劣るものであった。
【0007】
環状ポリオレフィン系樹脂を使用した蓋材は、好適なデッドホールド性を有するものであるが、ストロー等により内容物の飲食を行うことを想定した蓋材であり、易開封性を有するものではなかった。
【0008】
また、食品用途においては開封面の荒れが生じにくい界面剥離型の易開封性が好まれるが、上記デッドホールド性と共にプロピレン系樹脂を使用した包装容器に対する易開封性を実現するためには各々の機能を有する構成を多層化することが考慮されるが、食品用の蓋材においては減容化による低コスト化の要請が高く、薄型でデッドホールド性や易開封性を有する蓋材の実現が望まれていた。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、薄型であっても、好適なデッドホールド性及び易開封性を有する蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂を含有する被シール面を有する容器に使用する蓋材であって、シーラントフィルムと基材フィルムとの積層体からなり、前記シーラントフィルムが、環状オレフィン系樹脂を含有するラミネート層(A)、オレフィン系樹脂を含有する中間層(B)、環状オレフィン系樹脂を含有する中間層(C)及び、オレフィン系樹脂を含有するシール層(D)が積層されたシーラントフィルムであり、ラミネート層(A)が、ガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)と、ガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)とを含有し、ラミネート層(A)に含まれる樹脂成分中の環状オレフィン系樹脂の含有量が80質量%であり、前記環状オレフィン系樹脂中のガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)とガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)との含有量の質量比(a1)/(a2)が、40/60〜60/40であり、シール層(D)が、オレフィン系樹脂としてメタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)を含有し、シール層(D)に含まれる樹脂成分中のメタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)の含有量が80質量%以上であり、前記シーラントフィルムの総厚みが35μm以下であり、ラミネート層(A)及び中間層(C)の合計の厚みのシーラントフィルムの総厚みに対する厚み比率が30〜60%である蓋材により、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蓋材は、薄型であっても好適なデッドホールド性を有することから、容器の開口部端部に沿って折り曲げて密封する場合にも、蓋材端部の反りや折り曲げ部の巻き込み不良が生じにくく、好適な意匠性を実現できる。また、本発明の蓋材は、開封時にもシール層の脱落が生じにくく、好適に容器/蓋材界面で剥離が可能であり、容器への糊残りが生じないため、開封後の接着面の外観も良好である。
【0012】
また、本発明の蓋材は、上記易開封性と共に、ヒートシール時に包装内容物の付着等の異物が付着した際にも密着不良が生じにくい好適な夾雑物シール性を実現できる。さらに、本発明の蓋材は、食品等の包装容器の蓋材として使用した際に、内容物の風味の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の蓋材は、ポリプロピレン系樹脂を含有する被シール面を有する容器に使用する蓋材であり、環状オレフィン系樹脂を含有するラミネート層(A)、オレフィン系樹脂を含有する中間層(B)、環状オレフィン系樹脂を含有する中間層(C)及び、オレフィン系樹脂を含有するシール層(D)が積層されたシーラントフィルムと基材フィルムとの積層体からなる蓋材である。
そして、前記ラミネート層(A)は、環状オレフィン系樹脂を樹脂成分中の80質量%以上含有し、かつ、ガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)と、ガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)とを(a1)/(a2)で表される質量比が15/85〜15/85の割合で含有し、前記シール層(D)は、オレフィン系樹脂としてメタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)を樹脂成分中80質量%以上含有する。
さらに、シーラントフィルムの総厚みが35μm以下であり、ラミネート層(A)及び中間層(C)の合計の厚みのシーラントフィルムの総厚みに対する厚み比率が30〜60%である。
【0014】
[ラミネート層(A)]
本発明に使用するシーラントフィルムのラミネート層(A)は、基材フィルムを積層する層であり、環状オレフィン系樹脂を含有する層である。当該環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
【0015】
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0016】
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。
【0017】
ラミネート層(A)中の環状オレフィン系樹脂の含有量は、ラミネート層(A)を構成する樹脂成分中の80質量%以上、好ましくは90質量%以上とすることで、薄型であっても好適なデッドホールド性を実現できる。
【0018】
また、ラミネート層(A)中には、環状オレフィン系樹脂として、ガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)と、ガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)とを、環状オレフィン系樹脂中のガラス転移温度が100℃以下の環状オレフィン系樹脂(a1)とガラス転移温度が100℃を越える環状ポリオレフィン系樹脂(a2)との含有量の比(a1)/(a2)が15/85〜85/15の質量比にて含有する。ガラス転移温度の異なる環状オレフィン系樹脂を当該質量比で含有することで、好適なデッドホールド性と夾雑物シール性を有する蓋材を実現できる。また、蓋材の耐熱性や剛性と共に、成膜時やスリット時の引き取り適性、及び、落下等に対する耐破袋性等の性能を好適に兼備しやすくなる。当該質量比(a1)/(a2)は、好ましくは20/80〜80/20、より好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40である。なお、ガラス転移温度(Tg)は、DSCにより測定して得られる値である。
【0019】
本発明に使用する環状オレフィン系樹脂として使用できる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0020】
[中間層(B)]
本発明に使用するシーラントフィルムの中間層(B)は、オレフィン系樹脂を含有する。当該中間層(B)を使用することで、前記ラミネート層(A)や後述する中間層(C)との層間での剥離を抑制できる。当該オレフィン系樹脂の含有量は、中間層(B)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0021】
当該オレフィン系樹脂としては、各種のポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂を使用でき、上記環状オレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂を好ましく使用できる。ポリエチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE),中密度ポリエチレン(MDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも好適なデッドホールド性や耐カール性等を得やすいことから、VLDPE、LDPE、LLDPE、LMDPEが好ましく、LMDPEが特に好ましい。
【0022】
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
【0023】
LLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
【0024】
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
【0025】
ポリエチレン系樹脂の密度は0.880〜0.940g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜120℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性(デッドホールド性)や環状オレフィン系樹脂との共押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
【0026】
このようなポリエチレン系樹脂は環状オレフィン系樹脂との相溶性も良いため、積層した際の透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、ラミネート層(A)や中間層(C)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はVLDPE、LLDPEを用いることが好ましい。
【0027】
また開口部を有する液体充填容器の材質がポリスチレンやポリエステル系樹脂の場合は、接着性を有するポリエチレン系樹脂として、適度なシール強度を維持するためには、エチレン−酢酸ビニル系共重合体(EVA)の単独、このEVAをベースレジンとして、ロジン、水添ロジン、ロジンエステル誘導体、重合ロジン、テルペン、変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、スチレン系樹脂等の1種以上を混合変性してなる変性EVA等を用いることが好ましく、なかでも変性EVAが特に好ましい。この変性EVAの具体例としては、例えば、三菱化学株式会社製変性ポリエチレンVMX等が挙げられる。
【0028】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を中間層(B)として用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性にも優れた蓋材として好適に用いることが出来る。
【0029】
また、これらのポリプロピレン系樹脂は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、樹脂層(B)をヒートシール層としたときの蓋材の収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。尚、融点については、前記ポリエチレン系樹脂について記載したように、環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度Tgとの関係において、選択することはもちろんである。
【0030】
[中間層(C)]
本発明に使用するシーラントフィルムは、さらに環状オレフィン系樹脂を含有する中間層(C)を有する。当該中間層(C)を有することで、優れた耐カール性やデッドホールド性を実現でき、また好適な易開封性を実現しやすくなる。
【0031】
当該中間層(C)に使用する環状オレフィン系樹脂としては、上記ラミネート層(A)において使用される環状オレフィン系樹脂を好ましく使用でき、中間層(C)中の環状オレフィン系樹脂の含有量も上記ラミネート層と同様の範囲を好ましく使用できる。シーラントフィルムを構成する際にラミネート層(A)と中間層(C)は、同一配合としてもよく、異なる配合としてもよい。
【0032】
[シール層(D)]
本発明に使用するシーラントフィルムは、上記ラミネート層(A)の他方の表層として、オレフィン系樹脂を含有するシール層(D)を有する。当該シール層(D)においては、当該オレフィン系樹脂として、メタロセン触媒で重合された直鎖状ポリエチレン(d1)をシール層(D)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上使用することで、上記環状オレフィン系樹脂を複数層有する多層フィルムにおいても、ポリプロピレン系樹脂を容器に好適なシール性を発現し、易剥離性を実現できる。
【0033】
直鎖状ポリエチレンとしては、上記樹脂層(B)で例示したメタロセン触媒により重合されたLLDPEを特に好ましく使用でき、メタロセン触媒を用いて重合されたLMDPEであることが特に好ましい。なかでも、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であらわす分子量分布(Mw/Mn)が3以下のポリエチレン樹脂が好ましい。
【0034】
シール層(D)に使用するLLDPEの密度は、0.900g/cm以上であることが好ましく、0.905〜0.920g/cmであることがより好ましい。LLDPEの密度を当該範囲とすることで、好適な易開封性と夾雑物シール性とを実現できる。
【0035】
[シーラントフィルム]
本発明に使用するシーラントフィルムは、上記ラミネート層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)を有する多層構成のフィルムであり、その総厚みは35μm以下である。各層間には他の任意の層を有していてもよいが、当該4層構成のフィルムを特に好ましく使用できる。本発明においては、当該シーラントフィルムを使用することで、総厚みが35μm以下の薄厚でありながら、好適なデッドホールド性や夾雑物シール性、優れた易開封性を有する。また、耐カール性にも優れる。
【0036】
各層の厚みとしては、ラミネート層(A)の厚みはデッドホールド性や耐カール性のため、3〜9μmであることが好ましく、5〜8μmであることがより好ましい。中間層(B)の厚みは剛性維持や夾雑物シールを改善する9〜18μmであることが好ましく、10〜16μmであることがより好ましい。中間層(C)の厚みはデッドホールド性や耐カール性のため、3〜9μmであることが好ましく、5〜8μmであることがより好ましい。シール層(D)の厚みはデッドホールド性や耐カール性や開封性のため、2〜10μmであることが好ましく、2〜7μmであることがより好ましい。
【0037】
また、本発明においては、ラミネート層(A)及び中間層(C)の合計の厚みのシーラントフィルムの総厚みに対する厚み比率が30〜60%である。当該厚み比率とすることで、好適なデッドホールド性を実現でき、また好適な耐カール性を得やすくなる。
【0038】
シーラントフィルムを構成する各層には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、成形時の加工適性を付与するため、ラミネート層(A)及びシール層(D)の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、蓋材の表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
【0039】
また、ラミネート層(A)の表面を処理し、シーラントフィルムの表面の表面張力を40dyne/cm以上、好ましくは42dyne/cm以上とすることが好ましい。この様な処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。この様な表面処理を行なうことにより、当該表層に基材フィルムを積層しやすくなる。
【0040】
シーラントフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態で積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた多層フィルムが得られるので好ましい。なかでも、共押出加工時のフィルム外観の劣化を抑制しやすく、また、均一な層構成を形成しやすいことから、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0041】
[蓋材]
本発明の蓋材は、上記シーラントフィルムの表層に、基材フィルムをラミネートした積層体からなる蓋材である。基材フィルムとしては、シール性やデッドホールド性を損なわないものであれば特に制限はないが、例えば、二軸延伸ポリエステル(PET)、易裂け性二軸延伸ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)を中心層とした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)をコートした共押出二軸延伸ポリプロピレン、二軸延伸ナイロン等が挙げられる。接着方法としては、ドライラミネーション、ウェットラミネーション、ノンソルベントラミネーション、押出ラミネーション等の方法が挙げられる。
【0042】
前記ドライラミネーションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の蓋材は、開口部を有する容器への、ヒートシールにより密着させて密閉するための蓋材として使用するものであるが、この開口部を有する容器の素材として、その最表面層の素材(蓋材をヒートシールする部分)がポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂層であることが、ヒートシールによる密閉が容易である点から好ましい。又、容器を形成する素材も樹脂からなるものである場合は、内容物を取り出した後、容器ごと樹脂廃棄物として処理することが可能である点からも好ましいものである。
【実施例】
【0044】
(実施例1)
環状オレフィンを含有するラミネート層(A)、オレフィン樹脂層を含有する中間層(B)、環状オレフィン樹脂を含有する中間層の樹脂層(C)及びヒートシール性のシール層(D)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂及び樹脂混合物を調整した。
<ラミネート層(A)>
ノルボルネン系モノマーの開環重合体(ポリプラスチックス株式会社製「トパス8007F」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:70℃;以下、「COC(1)」という。)50質量部、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:145℃;以下、「COC(2)」という。)50質量部
<中間層(B)>
メタロセン触媒により重合された直鎖状中密度ポリエチレン(密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、分子量分布(Mw/Mn)2.5;以下、「LMDPE」という。)100質量部
<中間層(C)>
COC(1)50質量部、COC(2)50質量部
<シール層(D)>
メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm、融点110℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、分子量分布(Mw/Mn)2.5;以下、「LLDPE(1)」という。)100質量部
【0045】
これらの樹脂をそれぞれ、ラミネート層(A)用押出機(口径50mm)、中間層(B)用押出機(口径50mm)、中間層(C)用押出機(口径50mm)、シール層(D)用押出機(口径40mm)に供給して200〜270℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)/(C)/(D)の4層構成で、各層の厚さが6μm/15μm/6μm/3μm(合計30μm)である共押出多層フィルムを得た後、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は42dyne/cmであった。
【0046】
コロナ処理面側にウレタン系接着剤を3.5g/mになるよう塗工後、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ12μm、融点260℃、東洋紡製)をドライラミネートし、ラミネートフィルを得た。
【0047】
(実施例2)
ラミネート層(A)、中間層(B)、(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は42dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)50質量部、COC(2)47質量部、直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.920g/cm、融点120℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LLDPE(2)」という。)3質量部
<中間層(B)>
LMDPE95質量部、COC(1)5質量部
【0048】
(実施例3)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)60質量部、COC(2)37質量部、LLDPE(2)3質量部
【0049】
(実施例4)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)40質量部、COC(2)57質量部、LLDPE(2)3質量部
【0050】
(実施例5)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分及び中間層(B)を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)50質量部、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:125℃;以下、「COC(3)」という。)47質量部、LLDPE(2)3質量部
<中間層(B)>
LLDPE(2)100質量部
【0051】
(実施例6)
ラミネート層(A)及び中間層(B)、(C)に使用する樹脂成分及びシール層(D)を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)50質量部、COC(2)47質量部、LLDPE(2)3質量部
<中間層(B)>
LMDPE95質量部、COC(1)5質量部
<シール層(D)>
LLDPE(1)90質量部、COC(1)10質量部
【0052】
(実施例7)
実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、アルミ蒸着二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
【0053】
(実施例8)
実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリアミドフィルム(ONY)をドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
【0054】
(実施例9)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)80質量部、COC(2)17質量部、LLDPE(2)3質量部
【0055】
(実施例10)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)20質量部、COC(2)77質量部、LLDPE(2)3質量部
【0056】
(実施例11)
ラミネート層(A)及び中間層(C)、シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)50質量部、COC(2)50質量部
<シール層(D)>
メタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm、融点95℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、分子量分布(Mw/Mn)2.6;以下、「LLDPE(3)」という。)100質量部
【0057】
(実施例12)
ラミネート層(A)及び中間層(C)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)30質量部、COC(2)30質量部、LLDPE(2)40質量部
【0058】
(実施例13)
ラミネート層(A)及び中間層(C)、シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。更にラミネート層側に厚さ500Åの真空アルミ蒸着を施した。実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)50質量部、COC(2)47質量部、LLDPE(2)3質量部
<シール層(D)>
LLDPE(1)70質量部、COC(1)30質量部
【0059】
(比較例1)
ラミネート層(A)、シール層(D)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂及び樹脂混合物を調整した。
<ラミネート層(A)>
COC(2)100質量部
<シール層(D)>
LMDPE 100質量部
【0060】
これらの樹脂をそれぞれ、ラミネート層(A)用押出機(口径50mm)、シール層(D)用押出機(口径40mm)に供給して200〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(D)の2層構成で、各層の厚さが6μm/24μm(合計30μm)である共押出多層フィルムを得た後、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は42dyne/cmであった。
【0061】
コロナ処理面側にウレタン系接着剤を3.5g/mになるよう塗工後、二軸延伸ポリエステルフィルム(厚さ12μm、融点260℃、東洋紡製)をドライラミネートし、ラミネートフィルを得た。
【0062】
(比較例2)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さが5μm/25μm(合計30μm)である共押出多層フィルムを得た後、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。比較例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<シール層(D)>
チーグラナッター触媒で重合された低密度ポリエチレン(密度:0.895g/cm、融点85℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、分子量分布(Mw/Mn)が5;以下、「LLDPE(4)」という。)100質量部
【0063】
(比較例3)
ラミネート層(A)に使用する樹脂成分を下記とした比較例2と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さが24μm/6μm(合計30μm)である共押出多層フィルムを得た後、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。比較例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)>
COC(1)40質量部、COC(2)20質量部、LLDPE(2)40質量部
【0064】
(比較例4)
ラミネート層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さ5μm/6μm/5μm/14μm(合計30μm)であるフィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(1)40質量部、COC(2)20質量部、LLDPE(2)40質量部
<中間層(B)>
LLDPE(2)100質量部
<シール層(D)>
低密度ポリエチレン〔密度:0.92g/cm3、融点120℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N)、;以下、「LDPE」という。〕を100質量部
【0065】
(比較例5)
ラミネート層(A)、中間層(B)、中間層(C)及びシール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さ6μm/13μm/6μm/5μm(合計30μm)であるフィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<ラミネート層(A)、中間層(C)>
COC(2)100質量部
<中間層(B)>
LMDPE100質量部
<シール層(D)>
LLDPE(4) 100質量部
【0066】
(比較例6)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さ6μm/15μm/6μm/3μm(合計30μm)であるフィルムを作製し、表面層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<シール層(D)>
LLDPE(4) 100質量部
【0067】
(比較例7)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は実施例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さ2μm/12μm/2μm/14μm(合計30μm)であるフィルムを作製し、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。処理面側に実施例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<シール層(D)>
メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N);以下、「MRCP」という。)100質量部
【0068】
(比較例8)
シール層(D)に使用する樹脂成分を下記とした以外は比較例1と同様にして共押出多層フィルムの各層の厚さが6μm/24μm(合計30μm)である共押出多層フィルムを得た後、ラミネート層(A)表面にコロナ処理を施した。コロナ処理面の濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。比較例1と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルムをドライラミネートし、ラミネートフィルムを得た。
<シール層(D)>
接着性酸変性ポリエチレン〔東ソー株式会社製、密度:0.940g/cm3、MFR:28g/10分(190℃、21.18N)「MX28」;以下、「EVA」100質量部
【0069】
上記実施例及び比較例にて得られたフィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示した。
【0070】
[デッドホールド性試験、易開封性試験]
上記で得られたフィルムを、タブ部(13mm)を有する80mmφで打ち抜いた蓋材として、PP容器(外径70mmφ 厚み700μm、フランジ幅 5mm)に、140℃から170℃で最適ヒートシール強度になるよう調整シールした。90度以上折り曲げた状態を確保するため、蓋材の上から二軸延伸ポリスチレンシートを成形したオーバーキャップ用の蓋を勘合し、0℃冷蔵下で、5時間放置した。その後オーバーキャップ蓋を外し、蓋材タブの戻り角を測定し、下記により評価した。
タブの戻り角 0° 戻らない ◎
0〜20° 戻る ○
20〜45° 戻る △
45°以上 戻る ×
【0071】
又、ヒートシールした後の開封強度については、下記により評価を行なった。タブ部を、チャックではさみ、引っ張り試験機で強度を測定した。
○:5N/1カップ以上25N/1カップ以下
×:5N/1カップ未満、または、25N/1カップより大きい(開封できない)かフィルムが裂ける
【0072】
[夾雑物シール性(1)]
突起フランジ付の円形PP容器(90mm径、フランジ幅7mm、突起幅1mm、突起高さ0.7mm、厚さ600μm)上に、市販のプリン0.5gを4隅に載せた。その後作成したラミネートフィルムを180℃、1秒、0.2MPaでシールし、封緘強度を測定した。
◎:20MPa以上
○:12MPa以上20MPa未満
×:12MPa未満
【0073】
[カール性試験]
各多層フィルムを、縦横10cm四方に切り出し、40℃湿度90%下に24時間保存した。平面にフィルムを広げ両端面が捲り上がった高さを測定し下記の基準によって評価した。
〇:5cm未満
×:5cm以上
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
上記表から明らかなとおり、実施例1〜13の本発明の蓋材は、好適なデッドホールド性、易開封性及び夾雑物シール性を有し、耐カール性にも優れるものであった。一方、比較例1〜8の蓋材は、これら特性を兼備できなかった。