(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
基板上に金属酸化物半導体層を形成した半導体電極は、有機EL素子、トランジスタ素子、及び各種の太陽電池素子の電極として有用である。太陽電池素子の一種である色素増感型太陽電池においては、一般に、インジウム−酸化スズ(ITO)等の透明電極上にTiO
2等の金属酸化物半導体粉末を焼結したものを負極に用いる。対極としてはPtやカーボンを用い、これら両極間をI
−/I
3−等の酸化還元対を含む電解液で満たすことで電池が構成される。電解液が金属酸化物半導体層に浸潤し基板に接触すると、半導体電極から電解液への好ましくない漏れ電流が生じ、電池の性能が低下する。
【0003】
非特許文献1には、TiO
2を金属酸化物半導体層として有する半導体電極を、TiCl
4溶液で処理することにより、該半導体電極を用いた色素増感型太陽電池の性能が向上する旨、開示されている。また、非特許文献2には同様に半導体電極を塩酸水溶液で処理する方法が開示されている。しかし、これらはいずれも金属酸化物半導体層の塩化物イオンによる汚染を引き起こすため、好ましくない。さらにいずれの処理方法も簡便であるとはいい難い。また、特許文献1には、同様に半導体電極をAl
2O
3又はSiO
2で処理する方法が開示されているが、この方法には高真空のスパッタ装置が必須であり、経済的観点から好ましいとはいえない。
【0004】
一方、基板をあらかじめ緻密な酸化物膜で被覆し、その上部に金属酸化物半導体層を形成することで、電解液の接触を防ぐ方法があるが、例えば、一般的なTi(O
iPr)
4を用いて基板表面を被覆し、その上部にTiO
2層を形成した半導体電極を用いた色素増感型太陽電池では、半導体電極の電気抵抗が増し、変換効率は低下した(比較例参照)。特許文献2には、金属酸化物クラスター化合物を用いて基板表面を良好な酸化物膜で被覆する方法が開示されているが、これを利用した半導体電極、及び該電極を用いた色素増感型太陽電池に関しては一切触れられていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電解液中での使用に際して、漏れ電流を低減する半導体電極、及び該半導体電極を用いることで、高い光電変換効率を達成する有用な色素増感型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、金属酸化物クラスター化合物を用いて基板を酸化物膜で被覆し、その上部に金属酸化物半導体層を形成することで、半導体電極が得られることを見出した。さらにこの半導体電極を用いて色素増感型太陽電池を作製すると、電気抵抗が増加することなく大きな短絡電流密度が得られ、高い光電変換効率が得られることも併せて見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、
(i)一般式(1)
M
xO
y(OR)
z (1)
(式中、Mは金属原子を表す。x及びzは2以上の整数を表す。yは、1以上の整数を表す。ただし、x、y及びzはm×x=2y+zを満たすものとする。mはMで表される金属原子の酸化数を表す。Rは同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又はベンジル基を表す。)
で示される金属酸化物クラスター化合物及び有機溶媒から成る製膜溶液を塗布して焼成した酸化物膜を有する基板、並びに金属酸化物半導体から成る半導体電極;
(ii)一般式(1)中、Mが第4族又は第5族金属原子である前記(i)に記載の半導体電極;
(iii)一般式(1)中、MがTi又はNbである前記(i)又は(ii)に記載の半導体電極;
(iv)一般式(1)中、xが5〜15の整数であり、Rがイソプロピル基又はtert−ブチル基である、前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の半導体電極;
(v)製膜溶液における金属酸化物クラスター化合物の含有量が0.1〜30wt%の範囲にある前記(i)〜(iv)のいずれかに記載の半導体電極;
(vi)製膜溶液における有機溶媒がエーテルアルコール又は芳香族炭化水素である前記(i)〜(v)のいずれかに記載の半導体電極;
(vii)焼成する際の温度が、100〜500℃である前記(i)〜(vi)のいずれかに記載の半導体電極;
(viii)金属酸化物半導体がTiO
2である前記(i)〜(vii)のいずれかに記載の半導体電極;
に関するものである。
【0010】
また本発明は、
(ix)下記の三工程を経ることを特徴とする、前記(i)〜(viii)のいずれかのいずれかに記載の半導体電極の製造方法に関するものである。
工程1:金属酸化物クラスター化合物及び有機溶媒から成る製膜溶液を調製する工程。
工程2:工程1で調製した製膜溶液を用いて基板上に酸化物膜を形成する工程。
工程3:工程2で形成した酸化物膜上に金属酸化物半導体層を形成する工程。
【0011】
さらに本発明は、
(x)前記(i)〜(viii)のいずれかに記載の半導体電極を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体電極は、漏れ電流の防止効果と低い電気抵抗を持つことから有用であり、本発明の半導体電極を有する色素増感太陽電池の短絡電流密度及び光電変換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の半導体電極に用いる金属酸化物クラスター化合物は、一般式(1)
M
xO
y(OR)
z (1)
(式中、Mは金属原子を表す。x及びzは2以上の整数を表す。yは、1以上の整数を表す。ただし、x、y及びzはm×x=2y+zを満たすものとする。mはMで表される金属原子の酸化数を表す。Rは同一又は相異なって、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又はベンジル基を表す。)で示される化合物である。ただし、一般式(1)中のオキソ配位子、ヒドロキソ配位子、アルコキソ配位子は、一つの金属原子のみと結合していてもよく、また複数の金属原子と架橋結合していてもよい。
【0015】
本発明の半導体電極に用いる金属酸化物クラスター化合物は、例えば、特許文献2、国際特許公開2013/035672A1号、国際特許公開2014/104358A1号、Russian Chemical Reviews、第73巻、第11号、1041ページ(2004年)、Chemical Society Reviews、第40巻、1006ページ(2011年)、Chemical Reviews、第114巻、第19号、9645ページ(2014年)、New Journal of Chemistry、第23巻、1079ページ(1999年)、又はD.C.Bradleyら著、「Alkoxo and Aryloxo Derivatives of Metals」、第1版、ACADEMIC PRESS、4−51ページ(2001年)などに開示されている方法に従い製造することができる。
【0016】
Mで表される金属原子としては、Sc、Y等の第3族金属原子、Ti、Zr、Hf等の第4族金属原子、V、Nb、Ta等の第5族金属原子、Cr、Mo、W等の第6族金属原子、Mn、Re等の第7族金属原子、Fe、Ru、Os等の第8族金属原子、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Er、Yb等のランタノイド金属原子、Al、Ga、In、Sn、Sb、Bi、Pb等の典型金属原子を例示することができ、焼成により得られる酸化物膜の性能が良い点で、第3族〜第8族の遷移金属原子が好ましく、第3族〜第6族の前周期遷移金属原子がさらに好ましく、第4族又は第5族金属原子が殊更好ましく、Ti又はNbがとりわけ好ましい。
【0017】
Rで表される炭素数1〜5のアルキル基は、直鎖状、分岐状又は環状アルキル基のいずれでもよく、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基などを例示することができ、金属酸化物クラスター化合物が安定である点で、イソプロピル基又はtert−ブチル基が好ましい。
【0018】
xは2以上の整数を表し、金属酸化物クラスター化合物が適切な分子サイズを有する点で、5〜15の整数であることが好ましい。
【0019】
zは2以上の整数を表し、yは1以上の整数を表し、次式(2)に従って決定される。
m×x=2y+z (2)
(式中、x、y及びzは、前記と同じ意味を表す。mは、一般式(1)中、Mで表される金属原子の酸化数を表す。)
mで表される金属原子Mの酸化数は、Mが第3族、第8族、第13族、第15族又はCeを除くランタノイド金属原子である場合には3であり、Mが第4族金属原子である場合には4であり、Mが第5族金属原子である場合には5であり、Mが第6族金属原子である場合には3、4、5又は6であり、Mが第7族金属原子である場合には5又は6であり、Mが第14族金属原子である場合には2又は4であり、MがCeである場合には3又は4である。
【0020】
本発明の半導体電極に用いる金属酸化物クラスター化合物は、具体的には、Sc
5O(O
iPr)
13、Y
5O(O
iPr)
13、Ti
3O(OMe)(O
iPr)
9、Ti
7O
4(OEt)
20、Ti
8O
6(OCH
2Ph)
20、Ti
10O
8(OEt)
24、Ti
11O
13(O
iPr)
18、Ti
11O
13(OEt)
5(O
iPr)
13(EtOH)、Ti
12O
16(O
iPr)
16、Ti
12O
16(OEt)
6(O
iPr)
10、Ti
12O
16(OEt)
4(O
tBu)
12(
tBuOH)
2、Ti
12O
16(OCH
2tBu)
16、Ti
15O
14(OEt)
32、Ti
16O
16(OEt)
32、Ti
16O
16(OEt)
28(O
nPr)
4、Ti
16O
16(OEt)
24(O
nPr)
8、Ti
17O
24(O
iPr)
20、Ti
18O
28(O
tBu)
16(
tBuOH)、Ti
28O
34(OEt)
44、Ti
34O
50(O
iPr)
36、Zr
3O(O
nPr)
10、Zr
3O(O
tBu)
10、Zr
3O(OCH
2tBu)
10、Zr
3O(OH)(O
tBu)
9、Zr
13O
8(OMe)
36、Zr
13O
8(OH)
12(OMe)
24、Hf
3O(OCH
2tBu)
10、Hf
6O
2(OEt)
20(EtOH)
2、V
2O
2(OMe)
6、Nb
5O
7(O
tBu)
11、Nb
8O
10(OEt)
20、Nb
8O
10(OCH
2Ph)
20、Nb
9O
15(O
tBu)
15、Nb
10O
17(O
tBu)
16、Ta
2O(O
iPr)
8(
iPrOH)、Ta
5O
7(O
tBu)
11、Ta
7O
4(OEt)
20、Ta
8O
10(OEt)
20、Ta
8O
10(OCH
2Ph)
20、Ta
9O
15(O
tBu)
15、Ta
10O
17(O
tBu)
16、Mo
2O
2(OMe)
8、Mo
3O(O
iPr)
10、Mo
3O(OCH
2tBu)
10、W
2O
2(OMe)
8、W
2O(OCH
2tBu)
8、W
3O(O
iPr)
10、W
3O(OCH
2tBu)
10、W
3O
2(O
tBu)
8、W
4O(O
iPr)
10、W
4O
2(O
iPr)
12、W
8O
4(O
iPr)
16、Fe
5O(OEt)
13、Fe
9O
3(OEt)
21(EtOH)、Fe
19O
13(OH)(OEt)
30、Fe
19O
14(OEt)
29(EtOH)、Ce
4O(O
iPr)
14、Pr
5O(O
iPr)
13、Nd
2O(OCH
2tBu)
4、Nd
5O(O
iPr)
13(
iPrOH)
2、Gd
5O(O
iPr)
13、Er
5O(O
iPr)
13、Yb
5O(O
iPr)
13、Al
4O(O
iBu)
10(
iBuOH)、Al
5O(O
iBu)
13、Al
5O(O
iBu)
12(O
iBu)、Al
8O
2(OH)
2(O
iBu)
18、Al
10O
4(OEt)
22、Al
11O
6(O
nPr)
21、Al
11O
6(O
iPr)
21、In
5O(O
iPr)
13、Sn
3O(O
iBu)
10(
iBuOH)
2、Sn
6O
4(OMe)
4、Sn
6O
4(O
iPr)
4、Bi
4O
2(O
tBu)
8、Pb
4O(O
tBu)
6、Pb
6O
4(O
iPr)
4、Pb
6O
4(O
tBu)
4、Pb
7O
2(O
iPr)
10等を例示することができ、焼成により得られる酸化物膜の性能が良い点で、Ti
3O(OMe)(O
iPr)
9、Ti
7O
4(OEt)
20、Ti
8O
6(OCH
2Ph)
20、Ti
10O
8(OEt)
24、Ti
11O
13(O
iPr)
18、Ti
11O
13(OEt)
5(O
iPr)
13(EtOH)、Ti
12O
16(O
iPr)
16、Ti
12O
16(OEt)
6(O
iPr)
10、Ti
12O
16(OEt)
4(O
tBu)
12(
tBuOH)
2、Ti
12O
16(OCH
2tBu)
16、Ti
15O
14(OEt)
32、Ti
16O
16(OEt)
32、Ti
16O
16(OEt)
28(O
nPr)
4、Ti
16O
16(OEt)
24(O
nPr)
8、Ti
17O
24(O
iPr)
20、Ti
18O
28(O
tBu)
16(
tBuOH)、Ti
28O
34(OEt)
44、Ti
34O
50(O
iPr)
36、Nb
5O
7(O
tBu)
11、Nb
8O
10(OEt)
20、Nb
8O
10(OCH
2Ph)
20、Nb
9O
15(O
tBu)
15及びNb
10O
17(O
tBu)
16が好ましく、Ti
11O
13(O
iPr)
18及びNb
10O
17(O
tBu)
16が更に好ましい。ただし、Me、Et、
nPr、
iPr、
nBu、
iBu、
sBu、
tBuおよびPhは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基およびフェニル基を示す。なお、金属酸化物クラスター化合物は、金属原子に一般式(3)
ROH (3)
(式中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基、又はベンジル基を表す。)で示されるアルコールが配位していてもよい。
【0021】
次に、本発明の半導体電極の製造方法について説明する。
【0022】
本発明の半導体電極は、金属酸化物クラスター化合物及び有機溶媒から製膜溶液を調製する工程1、該製膜溶液を用いて基板上に酸化物膜を形成する工程2、工程2で形成した酸化物膜上に金属酸化物半導体層を形成する工程3を経ることにより得られる。
【0023】
なお、本発明の請求項1において、酸化物膜は金属酸化物クラスター化合物及び有機溶媒から成る製膜溶液を塗布して焼成した酸化物膜と記載せざるを得ない理由を説明する。
【0024】
製膜溶液の成分として、金属酸化物クラスター化合物を用いた場合、及び金属酸化物クラスター化合物ではない化合物を用いた場合のいずれにおいても、酸化物膜の組成について大差はない。例えば、実施例に記載の金属酸化物クラスターであるTi
11O
13(O
iPr)
18を用いた場合、及び比較例に記載の金属酸化物クラスターではないTi(O
iPr)
4を用いた場合のいずれにおいても焼成した後の酸化物膜の組成はTiO
2である。しかしながら、実施例比較例より金属酸化物クラスター化合物を用いた場合と金属酸化物クラスター化合物ではないTi(O
iPr)
4を用いた場合とでは、得られる酸化物膜(TiO
2膜)を半導体電極に用いると特性に差が生じる。
【0025】
この特性の違いは出発原料の金属酸化物クラスター化合物と金属酸化物クラスター化合物でないTi(O
iPr)
4との違いであり、出発原料の違いにより得られる酸化物膜(TiO
2膜)を用いた半導体電極の特性に差が出る。
【0026】
このように半導体電極に用いる酸化物膜の特性に差が出ることから、組成に大差はないものの酸化物膜自体が異なることが予想される。ただし、酸化物膜自体を規定するとなると、本願発明の金属酸化物クラスター化合物を用いた酸化物膜以外の多様な酸化物膜を包含することになるため、酸化物膜自体による規定は本願発明の対象物である酸化物膜を的確に表すことが困難であり、酸化物膜自体による規定は実際的でない。
【0027】
工程1は、金属酸化物クラスター化合物を有機溶媒に溶解し、製膜溶液を得る工程であり、例えば、特許文献2に開示されている方法を用いることができる。
【0028】
工程1を行う際の作業雰囲気に特に制限はなく、反応を阻害することのないヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素などの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0029】
工程1に用いる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のモノアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−ペンチルオキシエタノール、2−ヘキシルオキシエタノール、2−オクチルオキシエタノール、2−デシルオキシエタノール、2−ウンデシルオキシエタノール、2−ドデシルオキシエタノール、2−ペンタデシルオキシエタノール、2−ヘキサデシルオキシエタノール、2−ステアリルオキシエタノール、2−ウンステアリルオキシエタノール、2−ドステアリルオキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−プロポキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−ペンチルオキシ−2−プロパノール、1−ヘキシルオキシ−2−プロパノール、1−オクチルオキシ−2−プロパノール、1−デシルオキシ−2−プロパノール、1−ウンデシルオキシ−2−プロパノール、1−ドデシルオキシ−2−プロパノール、1−ペンタデシルオキシ−2−プロパノール、1−ヘキサデシルオキシ−2−プロパノール、1−ステアリルオキシ−2−プロパノール、1−ウンステアリルオキシ−2−プロパノール、1−ドステアリルオキシ−2−プロパノール、バチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノデシルエーテル、ジエチレングリコールモノブタデシルエーテル、ジエチレングリコールモノドデシルエーテル、ジエチレングリコールモノペンタデシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル、ジエチレングリコールモノウンステアリルエーテル、ジエチレングリコールモノドステアリルエーテル等のエーテルアルコール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、デカリン等の炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ニトロベンゼン、テトラリン、アニソール等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−フルオロエチレンカーボネート等の炭酸エステル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、γ−ラクトン等のエステル、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア(TMU)、N,N’−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)等のウレアを例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。金属酸化物クラスター化合物の溶解性が良い点で、エーテルアルコール、エーテル、炭化水素、芳香族炭化水素、エステル及びこれらの混合溶媒が好ましく、エーテルアルコール及び芳香族炭化水素がさらに好ましい。有機溶媒の使用量に特に制限は無く、製膜溶液における金属酸化物クラスター化合物の含有量が、好ましくは0.01〜50重量%、さらに好ましくは0.1〜30重量%から適宜選ばれた含有量となる量を用いることができる。
【0030】
工程1の終了後、製膜溶液は必要に応じて加熱やろ過などの処理を行ってもよい。製膜性が良い点で、製膜溶液をメンブレンフィルター、ろ紙、ガラスフィルター等でろ過することが好ましい。
【0031】
工程2は、工程1にて調製した製膜溶液を基板上に塗布した後、焼成し、基板上に酸化物膜を形成する工程であり、例えば、特許文献2に開示されている方法を用いることができる。
【0032】
工程2に用いる基板としては、導電性及び光透過性を持つものであれば特に制限はなく、例えば、ITO、フッ素でドープされた酸化スズ(FTO)、又はアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(AZO)等の導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラス又はプラスチック基板等が挙げられる。これらのうち、耐薬品性が高く電気抵抗が低い点から、FTOコートガラスが好ましい。
【0033】
工程2にて、工程1にて調製した製膜溶液を基板上に塗布する方法としては、湿式法による薄膜作製プロセスにおいて一般的な方法を用いることができる。具体的には、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法、ロールコーティング法、カーテンコーティング法、バーコーティング法、超音波コーティング法、スクリーン印刷法、刷毛塗り、スポンジ塗りなどを例示することができる。安価であり、平滑な膜を作製することができる点で、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、及びバーコーティング法が好ましい。
【0034】
工程2における焼成温度は、工程1にて調製した製膜溶液の塗膜から酸化物膜が形成される温度であればよく、好ましくは100〜500℃、さらに好ましくは250〜350℃の範囲から適宜選択した温度で焼成を行う。
【0035】
工程2における焼成時間は、工程1にて調製した製膜溶液の塗膜から酸化物膜が形成される時間であればよく、好ましくは1分〜5時間、さらに好ましくは1〜30分の範囲から適宜選択した時間で焼成を行う。
【0036】
工程2の終了後、所望の膜厚の酸化物膜を得るために工程2を繰り返して行ってもよい。
【0037】
工程3は、工程2にて基板上に形成した酸化物膜に金属酸化物半導ペーストを塗布した後、焼結し、金属酸化物半導体層を形成し、本発明の半導体電極を得る工程である。
【0038】
工程3に用いる金属酸化物半導体ペーストは、市販品を用いてよいが、金属酸化物半導体粉末を溶媒、ポリマー及び界面活性剤等と混練することでも得られる。金属酸化物半導体粉末としては、例えば、TiO
2、ZnO、In
2O
3、SnO
2、ZrO
2、Ta
2O
5、Nb
2O
5、Fe
2O
3、Ga
2O
3、WO
3、SrTiO
3等を例示することができ、入手容易である点でTiO
2、ZnO、SnO
2等の金属酸化物半導体粉末が好ましく、半導体電極としての性能が良い点でTiO
2がさらに好ましい。金属酸化物半導体粉末の形状は、金属酸化物半導体ペーストを作成できれば特に制限はないが、焼結後に表面積の大きな多孔質構造を形成できる点で微粒子状が好ましい。この際、微粒子の粒子径は、1nm〜10μmが好ましく、さらに好ましくは5〜1000nmである。溶媒としては、水の他、塩酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液等の酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液等の塩基性水溶液、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、DMF、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。極性が高く金属酸化物半導体粉末の分散が良い点で水、酸性水溶液又はアルコールが好ましく、中でも水、硝酸水溶液、メタノール、又はエタノールがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、金属酸化物半導体粉末に対し好ましくは1〜200重量%、さらに好ましくは15〜50重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。ポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメタクリル酸エステル等を例示することができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。金属酸化物半導体粉末の分散が良い点でPEGが好ましい。ポリマーの使用量に特に制限は無く、金属酸化物半導体粉末に対し好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硝酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、第四級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤、多価アルコール等の非イオン界面活性剤を挙げることができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。これらのうち、金属酸化物半導体粉末の分散が良い点で非イオン界面活性剤が好ましく、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(商品名:Toriton X−100)がさらに好ましい。界面活性剤の使用量に特に制限はなく、金属酸化物半導体粉末に対し、好ましくは1〜95重量%、さらに好ましくは1〜10重量%から適宜選ばれた量を加えることができる。混練方法としては、例えば、撹拌、振盪、ボールミル等、一般的な手法を用いることができる。
【0039】
工程3にて金属酸化物半導体ペーストを塗布する方法としては、工程2にて例示した方法と同様のものを例示することができる。これらのうち、簡便に平坦な膜を得られる点でバーコーティング法又はスクリーン印刷法が好ましい。
【0040】
工程3における焼結条件は、用いる金属酸化物半導体の焼結体が生成する条件であれば特に制限はない。TiO
2を金属酸化物半導体に用いる場合には、好ましくは200〜1000℃にて5分から10時間、さらに好ましくは400〜600℃にて15分から1時間の条件から適宜選ばれた条件で焼結することにより、良好な金属酸化物半導体層を形成することができる。
【0041】
次に、本発明の半導体電極を含むことを特徴とする色素増感型太陽電池(以下、「本発明の太陽電池」と称する)の製造方法について説明する。
【0042】
本発明の太陽電池は、本発明の半導体電極に増感色素を担持する工程4、及び増感色素を担持した本発明の半導体電極、対極、スペーサー等の部材を張り合わせ、電池を作製する工程5により製造される。
【0043】
工程4は、増感色素を含む溶液を調製し、ここに本発明の半導体電極を浸漬させることにより、金属酸化物半導体層に増感色素を担持する工程である。
【0044】
工程4に用いる増感色素としては、例えば、Chemical Review,2010年,110巻,6595−6693頁に記載されている増感色素を例示することができ、中でも本発明の太陽電池の性能が良い点で、Ruを中心金属とする金属錯体色素が好ましく、シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(N3色素)、ビス(テトラブチルアンモニウム)シス−ビス(イソチオシアナト)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシラト)ルテニウム(N719色素)、トリス(テトラブチルアンモニウム)トリス(イソチオシアナト)(2,2’:6’、2’’−ターピリジル−4,4’,4’’−トリカルボキシラト)ルテニウム(N749色素)がさらに好ましい。
【0045】
工程4にて、増感色素を含む溶液の調製に用いる溶媒に特に制限はなく、増感色素が溶解すればよい。このような溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ジエチルエーテル、THF、1,4−ジオキサン等のエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等のエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、DMF、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを任意の比で混合して用いてもよい。これらのうち、増感色素の金属酸化物半導体層に対する吸着性が良い点で、アルコール、ハロゲン化炭化水素、トルエン、又はアセトニトリルが好ましく、アセトニトリルがさらに好ましい。溶媒の使用量に特に制限は無く、得られる溶液の濃度が好ましくは1×10
−6〜1×10
−2M、吸着が良好な点でさらに好ましくは5×10
−5〜9×10
−4Mの範囲から適宜選ばれた濃度となる量の溶媒を用いることができる。
【0046】
工程4にて、増感色素を含む溶液に本発明の半導体電極を浸漬させる際の温度に制限はなく、好ましくは−50〜150℃、さらに好ましくは0〜60℃の範囲から適宜選ばれた温度にて浸漬させることができる。
【0047】
工程4にて、増感色素を含む溶液に本発明の半導体電極を浸漬させる際の時間に制限はなく、好ましくは30分〜100時間、さらに好ましくは2〜24時間の範囲から適宜選ばれた時間にて浸漬させることができる。
【0048】
工程4にて、増感色素を含む溶液に本発明の半導体電極を浸漬させた後は、当業者における通常の技術手段に従って後処理を施しても良い。該後処理としては、例えば、アセトニトリル等の有機溶媒を用いて金属半導体薄膜を洗浄し、乾燥させる処理等を挙げることができる。
【0049】
工程5は、スペーサーを介して増感色素を担持した本発明の半導体電極と対極を張り合わせ、空隙に電解液を注入し、本発明の太陽電池を製造する工程である。
【0050】
工程5に用いるスペ−サ−の材質としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、又は熱あるいは光可塑性樹脂などのポリマーフィルムが好ましい。スペーサーの膜厚は、好ましくは1μm〜1mm、さらに好ましくは15〜100μmの範囲から適宜選択することができる。
【0051】
工程5に用いる対極としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体例としては、Fe、Al、Cu、Ti等の卑金属、Ag、Au、Pt、Rh、Ru等の貴金属、又はカーボンを例示することができる。これらのうち、耐薬品性が高い点で、貴金属が好ましく、導電性の点でPtがさらに好ましい。また、これらの卑金属、貴金属及びカーボンは、工程2に例示した導電性透明酸化物半導体薄膜をコートしたガラス又はプラスチック基板にコートして用いることもできる。
【0052】
工程5に用いる電解液としては、当業者が通常用いるものであれば特に制限はなく、具体的には、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化イミダゾウリウム、チオシアン酸グアジニウム及び4−tert−ブチルピリジン等をアセトニトリル等に溶解したものを用いることができる(例えば、Chem.Commun.,2198−2200,2009年参照)。
【実施例】
【0053】
以下、実施例、比較例及び参考例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
実施例−1
FTOガラス基板上に、Ti
11O
13(O
iPr)
18のトルエン溶液(5wt%,500μL)を取り、スピンコート法(2000rpm,30秒)により塗布した。これを風乾後、電気炉にて焼成し(300℃,30分)、チタン酸化物膜(膜厚=60nm)を形成した。
【0054】
該基板上にTiO
2ペースト(Solaronix社製、Ti−Nanoxide D,0.5mL)を取り、50μm程度の厚みに塗布した。これを室温で1時間乾燥させた後、電気炉にて焼成した(300℃,1時間)。放冷後、この基板を、N3色素のアセトニトリル溶液(0.5mM)に浸し、室温で16時間浸漬させた。基板をアセトニトリルで洗浄後、乾燥し、半導体電極を得た。
【0055】
該半導体電極及びPt板を、高分子製スペーサーを介して張り合わせ、間隙に参考例−1にて調製した電解液を20μL注入し、色素増感太陽電池素子を得た。色素増感太陽電池素子の電流密度−電圧特性はソーラーシミュレータ(AM1.5,100mW/cm
2)を用いて測定した。得られた短絡電流密度(J
sc)、開放電圧(V
oc)、フィルファクター(ff)及び光電変換効率(η)を表1に示した。
実施例−2
実施例−1と同様にFTOガラス基板上にチタン酸化物膜を形成した後、該基板上にTiO
2ペースト(日揮触媒化成工業社製、PST−18NR D,0.5mL)を取り、50μm程度の厚みに塗布した。これを室温で1時間乾燥させた後、電気炉にて焼成した(450℃,30分,次いで300℃,1時間)。放冷後、この基板を大気下にて24時間放置した。
【0056】
この基板をN3色素のアセトニトリル溶液(0.5mM)に浸し、室温で16時間浸漬させた。基板をアセトニトリルで洗浄後、乾燥し、半導体電極を得た。
【0057】
該半導体電極を用いて実施例−1と同様の操作で色素増感太陽電池素子を作成し、そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
実施例−3
チタン酸化物膜の形成時の焼成温度を450℃にした以外は実施例−2と同様の操作を行い、色素増感太陽電池素子を作成した。そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
実施例−4
TiO
2ペーストを塗布・焼成した後、大気下に放置することなく速やかにN3色素のアセトニトリル溶液に浸した以外は実施例−2と同様の操作を行い、色素増感太陽電池素子を作成した。そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
実施例−5
チタン酸化物膜の形成時の焼成温度を450℃にした以外は実施例−4と同様の操作を行い、色素増感太陽電池素子を作成した。そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
実施例−6
FTOガラス基板上に、Nb
10O
17(O
tBu)
16のトルエン溶液(5wt%,500μL)を取り、スピンコート法(200rpm,5秒の後、続いて2000rpm,30秒)により塗布した。これを風乾後、電気炉にて焼成し(200℃,30分)、ニオブ酸化物膜(膜厚=60nm)を形成した。
【0058】
該基板を用いて、以下の操作は実施例−4と同様の操作で色素増感太陽電池素子を作成し、そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
比較例−1
Ti
11O
13(O
iPr)
18の塗布を行わなかった以外は実施例−1と同様の操作で色素増感太陽電池素子を作成し、そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
比較例−2
Ti
11O
13(O
iPr)
18の塗布を行わなかった以外は実施例−2と同様の操作で色素増感太陽電池素子を作成し、そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
比較例−3
Ti
11O
13(O
iPr)
18の塗布を行わなかった以外は実施例−4と同様の操作で色素増感太陽電池素子を作成し、そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
比較例−4
Ti
11O
13(O
iPr)
18のトルエン溶液に代え、Ti(O
iPr)
4のトルエン溶液(5wt%)を用いた以外は実施例−4と同様の操作を行い、色素増感太陽電池素子を作成した。そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
比較例−5
Ti(O
iPr)
4のトルエン溶液のスピンコート法による塗布の際、回転数を2000rpmから1000rpmに代えた以外は比較例−3と同様の操作を行い、色素増感太陽電池素子を作成した。そのJ
sc、V
oc、ff及びηを表1に示した。
参考例−1
アルゴン雰囲気下、ヨウ化1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウム(2.66g,10.0mmol)、ヨウ化リチウム(67mg,0.50mmol)、4−tert−ブチルピリジン(676mg,5.0mmol)、ヨウ素(76mg,0.05mmol)及びグアニジンチオシアナート(118mg,1.0mmol)を取り、無水アセトニトリル及びバレロニトリルの混合溶液(MeCN:BuCN=85:15,10mL)を加え、電解液を調製した。
【0059】
【表1】
【0060】
表1中、Entry1では、本発明の太陽電池(実施例−1)と、金属酸化物クラスター化合物を含む製膜溶液の塗布を行わなかった以外は同様の製造方法を用いて作製した太陽電池(比較例−1)の性能を比較したが、本発明の太陽電池は比較例−1に比べJ
scが増加し、その結果として大幅に光電変換効率が向上することがわかった。このJ
scの増加は、本発明の半導体電極により電解液の接触による漏れ電流が低減されたことを示すものである。また、素子の内部抵抗を示すff値は、本発明の半導体電極を用いても全く増加しておらず、これは本発明の半導体電極の電気抵抗が十分に低いことを示すものである。
【0061】
Entry2では、Entry1とは異なる種類の酸化物半導体ペーストを用いた本発明の太陽電池(実施例−2,3)と、金属酸化物クラスター化合物を含む製膜溶液の塗布を行わなかった以外は同様の製造方法を用いて作製した太陽電池(比較例−2)の性能を比較した。Entry1と同様に本発明の太陽電池は高いJ
sc、並びに光電変換効率を示し、ff値の増加もみられなかった。
【0062】
Entry3では、Entry2とは異なる温度で酸化物半導体層の焼成を行った本発明の太陽電池(実施例−4,5)と、製膜溶液の塗布を行わなかった以外は同様の製造方法を用いて作製した太陽電池(比較例−3)、及び金属酸化物クラスター化合物に代え、Ti(O
iPr)
4を含む製膜溶液を用いた以外は同様の製造方法を用いて作製した太陽電池(比較例−4,5)の性能を比較した。ここでも本発明の太陽電池は、比較例−3〜5に比して高いJ
sc、並びに光電変換効率を示した。
【0063】
Entry4では、金属酸化物クラスター化合物としてNb
10O
17(O
tBu)
16を用いた本発明の太陽電池を作製したが、これも良好なJ
sc、並びに光電変換効率を示した。