(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに(G)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーを、(A)成分100質量部に対して0.01〜5質量部含む、請求項1に記載の織物被覆用シリコーンゴム組成物。
【背景技術】
【0002】
織物にシリコーンゴム組成物を塗工し、該組成物を硬化させて作製したシリコーンゴム被覆織物は、車両用エアバッグ等に使用されている。このシリコーンゴムには、エアバッグ用の基布である織物に対する良好な接着性と、エアバッグ展開時の追随性が要求され、特に、エアバッグの内圧保持性が要求されている。
【0003】
シリコーンゴム組成物としては、例えば、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンレジン、比表面積50m
2/g以上のシリカ微粉末、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、付加反応触媒、接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物、有機チタン化合物および/または有機ジルコニウム化合物からなるシリコーンゴム組成物(特許文献1参照)、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサン、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有する直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサン、付加反応触媒、比表面積が50m
2/g以上の微粉末シリカ、一分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、チタニウム化合物および/またはジルコニウム化合物からなるシリコーンゴム組成物(特許文献2参照)、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、付加反応触媒、比表面積が50m
2/g以上の微粉末シリカ、一分子中にエポキシ基とケイ素原子結合アルコキシ基とを有する有機ケイ素化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物及び有機アルミニウム化合物から選ばれる有機金属化合物、一分子中に1個のシラノール基を含有するシラン又はシロキサン化合物からなるシリコーンゴム組成物(特許文献3参照)が提案されている。
【0004】
このようなシリコーンゴム組成物において、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、一般に、直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが使用されている。これは、レジン状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いると、得られるシリコーンゴムが硬く、伸びが小さくなり、シリコーンゴム被覆織物をエアバッグに用いた場合に、その折りたたみ性が低下したり、エアバッグ展開時の追随性が低下すると考えられているからである。
【0005】
近年、インフレータから供給されるガス圧が大きくなり、エアバッグの基布である織物に大きな張力がかかり、目開きを生じてしまい、内圧を十分に保持できないという課題がある。
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを架橋剤として用いるシリコーンゴム組成物によれば、目開きが生じ難くなることを見出し、本発明に到達した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<織物被覆用シリコーンゴム組成物>
(A)成分は本組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基が例示され、好ましくは、ビニル基である。また、(A)成分中のアルケニル基以外のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。また、本発明の目的を損なわない範囲で、(A)成分中のケイ素原子に、少量の水酸基、あるいはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を結合してもよい。
【0015】
(A)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状、網目状、樹脂状が例示され、好ましくは、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状である。(A)成分は、これらの分子構造を有する少なくとも二種の混合物であってもよい。(A)成分の25℃における粘度は限定されず、好ましくは、100〜1,000,000mPa・sの範囲内、あるいは、300〜100,000mPa・sの範囲内である。
【0016】
このような(A)成分としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体;これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等のメチル基以外のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン;これらのオルガノポリシロキサンのビニル基の一部または全部をアリル基、プロペニル基等のビニル基以外のアルケニル基で置換したオルガノポリシロキサン;およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。特に、(A)成分は、本組成物を低粘度することができ、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの機械的特性をコントロールしやすいことから、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
【0017】
(B)成分は、本組成物の架橋剤であり、平均単位式:
(R
13SiO
1/2)
a(R
12SiO
2/2)
b(R
2SiO
3/2)
c(SiO
4/2)
d
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0018】
式中、R
1は、それぞれ独立に、脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくはハロゲン置換の一価炭化水素基または水素原子である。このようなR
1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。なお、(B)成分は、一分子中の少なくとも2個のR
1が水素原子であることが必要である。
【0019】
また、式中、R
2は脂肪族不飽和結合を含まない非置換もしくはハロゲン置換の一価炭化水素基であり、前記R
1と同様の一価炭化水素基が例示され、好ましくは、メチル基、フェニル基である。
【0020】
また、式中、a、b、c、およびdは、0≦a<1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、a+b+c+d=1を満たす0または正数である。但し、aとbが共に0となることはなく、cとdが共に0となることはない。すなわち、(B)成分は、式:R
2SiO
3/2で表されるシロキサン単位あるいは式:SiO
4/2で表されるシロキサン単位を有するレジン状のオルガノポリシロキサンである。
【0021】
このような(B)成分としては、式:HMe
2SiO
1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:HMe
2SiO
1/2で表されるシロキサン単位と式:Me
3SiO
1/2で表されるシロキサン単位と式:SiO
4/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:Me
2SiO
2/2で表されるシロキサン単位と式:HMeSiO
2/2で表されるシロキサン単位と式:MeSiO
3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、式:Me
3SiO
1/2で表されるシロキサン単位と式:Me
2SiO
2/2で表されるシロキサン単位と式:HMeSiO
2/2で表されるシロキサン単位と式:MeSiO
3/2で表されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンが例示され、具体的には、平均単位式:
(R
13SiO
1/2)
a’(SiO
4/2)
d’
で表されるオルガノポリシロキサン、および、平均単位式:
(R
13SiO
1/2)
a(R
12SiO
2/2)
b(R
2SiO
3/2)
c’
で表されるオルガノポリシロキサンが例示される。
【0022】
平均単位式:
(R
13SiO
1/2)
a’(SiO
4/2)
d’
で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、式中、a’およびd’は、それぞれ、0<a’<1、0<d’<1、a’+d’=1を満たす正数である。目開きの抑制効果が著しく優れることから、a’およびd’は、1.5≦a’/d’≦4、あるいは2≦a’/d’≦4を満たす正数であることが好ましい。
【0023】
また、平均単位式:
(R
13SiO
1/2)
a(R
12SiO
2/2)
b(R
2SiO
3/2)
c’
で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、式中、a、b、およびc’は、それぞれ、0≦a<1、0≦b<1、0<c’<1、a+b+c’=1を満たす0または正数である。目開きの抑制効果が著しく優れることから、aおよびc’は、1≦a/c’≦3、あるいは1.5≦a/c’≦3を満たす数であることが好ましい。
【0024】
(B)成分の含有量は、(A)成分中のアルケニル基1モル数に対して、本成分中のケイ素原子結合水素原子が1〜5モルの範囲内となる量であり、好ましくは、1〜4モルの範囲内となる量である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物が十分に硬化し、織物に十分に接着するからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの伸び等の機械的特性が良好であるからである。
【0025】
(C)成分は、本組成物の硬化を促進するためのヒドロシリル化反応触媒である。(C)成分としては、白金触媒、ロジウム触媒、ルテニウム触媒、イリジウム触媒、パラジウム触媒等の白金族金属系触媒が例示され、好ましくは、白金触媒である。この白金触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサン錯体、白金のジケトン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のオレフィン錯体;その他、シリカ、アルミナ、カーボン等に担持された金属白金;これらの白金触媒を含有する熱可塑性樹脂粉末が例示される。また、白金触媒以外の白金族金属系触媒としては、RhCl(PPh
3)
3、RhCl(CO)(PPh
3)
2、Ru
3(CO)
12、IrCl(CO)(PPh
3)
2、Pd(PPh
3)
4が例示される。なお、式中、Phはフェニル基である。
【0026】
(C)成分の含有量は本組成物の硬化を促進する量であれば限定されない。一般に、(A)成分100万質量部に対して、(C)成分中の白金族金属が0.1〜500質量部の範囲内、あるいは1〜50質量部の範囲内であることが好ましい。これは(C)成分の含有量が上記範囲内であれば、本組成物の硬化が十分に促進されるからである。
【0027】
(D)成分は、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムに機械的強度を付与するための補強性シリカ微粉末である。このような(D)成分としては、乾式法シリカ、沈降法シリカ、これらの補強性シリカ微粉末表面を、オルガノクロロシラン、オルガノシラザン、オルガノアルコキシシラン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン等の有機ケイ素化合物で処理した疎水性シリカが例示される。特に、(D)成分は、比表面積が50m
2/g以上であることが好ましい。
【0028】
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜50質量部の範囲内であり、好ましくは、5〜40質量部の範囲内である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの機械的強度が優れ、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の塗工性が良好であるからである。
【0029】
(E)成分の有機チタン化合物および/または有機ジルコニウム化合物は、本組成物を塗工し、硬化してなるシリコーンゴム被覆織物を高温・高湿度の条件下で長期間保存した後も、該織物に対してシリコーンゴムの接着性を維持するための成分である。
【0030】
(E)成分の有機チタン化合物としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等の有機チタン酸エステル類;酢酸チタン等の有機酸チタン塩;ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセテート)チタン等のチタンキレート化合物が例示される。
【0031】
また、(E)成分の有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウムトリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンジオネート)、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6−テトラメチル−ヘプタンジオネート)ジルコニウム等のβ−ジケトン(アルキル基置換体やフッ素原子置換体も含む)を配位子とするジルコニウム錯体が例示される。特に、有機ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムのアセチルアセトネート錯体(アセチルアセトネートのアルキル基置換体やフッ素原子置換体も含む)が好ましい。
【0032】
本組成物において、(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内であり、好ましくは、0.01〜1質量部の範囲内、あるいは0.01〜0.5質量部の範囲内である。これは、(E)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、袋織り織物のような難接着性の織物に対しても良好な接着性を付与することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の貯蔵安定性が向上するからである。
【0033】
また、(F)成分は、(E)成分と共同して、本組成物に袋織り織物のような難接着性の織物上への良好な接着性を向上させるためのエポキシ基を含有するアルコキシシランおよび/またはメタクリル基もしくはアクリル基を含有するアルコキシシランである。
【0034】
(F)成分のエポキシ基を含有するアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが例示される。
【0035】
また、(F)成分のメタクリル基またはアクリル基を含有するアルコキシシランしては、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが例示される。
【0036】
本組成物において、(F)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部の範囲内であり、好ましくは、0.05〜5質量部の範囲内、あるいは0.1〜5質量部の範囲内である。これは、(F)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、袋織り織物のような難接着性の織物に対しても良好な接着性を付与することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の貯蔵安定性が向上するからである。
【0037】
本組成物には、さらに(G)シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマーを含むことが好ましい。(G)成分中のケイ素原子に結合する基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が例示され、好ましくは、メチル基、ビニル基である。(G)成分の分子構造は限定されず、直鎖状、一部分岐を有する直鎖状、環状、分岐鎖状が例示され、好ましくは、直鎖状である。また、(G)成分の25℃における粘度は限定されないが、好ましくは、100mPa・s未満、あるいは1〜50mPa・sの範囲内である。
【0038】
このような(G)成分としては、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体が例示される。
【0039】
本組成物において、(G)成分の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲内であり、好ましくは、0.01〜1質量部の範囲内、あるいは0.01〜0.5質量部の範囲内である。これは、(G)成分の含有量が上記範囲の下限以上であると、袋織り織物のような難接着性の織物に対しても良好な接着性を付与することができるからであり、一方、上記範囲の上限以下であると、本組成物の貯蔵安定性が向上するからである。
【0040】
また、本組成物には、貯蔵安定性を向上したり、取扱作業性を向上するために、硬化抑制剤を含有することが好ましい。この硬化抑制剤としては、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール等のアセチレン系化合物;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン等のエンイン化合物;ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;その他、フォスフィン類、メルカプタン類、ヒドラジン類が例示される。硬化抑制剤の含有量は限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.001〜5質量部の範囲内、あるいは0.01〜10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0041】
また、本組成物を硬化して得られるシリコーンゴムの機械的特性を向上するために、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等の一分子中にビニル基を5質量%以上有するシロキサンオリゴマーを含有してもよい。このシロキサンオリゴマーの25℃における粘度は限定されないが、0.5〜50mm
2/sの範囲内であることが好ましい。このようなシロキサンオリゴマーの含有量は限定されず、例えば、(A)成分100質量部に対して0.1〜1質量部の範囲内であることが好ましい。
【0042】
本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、(B)成分以外に、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサンを含有してもよい。このようなオルガノポリシロキサンとしては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルフェニルシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン;これらのオルガノポリシロキサンのメチル基の一部または全部をエチル基、プロピル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基で置換したオルガノポリシロキサン;およびこれらのオルガノポリシロキサンの二種以上の混合物が例示される。
【0043】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、(D)成分以外の無機充填剤を含有してもよい。このような無機充填剤としては、石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の増量充填剤;酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化鉄等の耐熱剤;ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料;その他、難燃剤が例示される。
【0044】
本組成物を調製する方法は限定されず、(A)成分〜(F)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより、本組成物を調製することができるが、予め(A)成分の一部と(D)成分を加熱混合して調製したシリカマスターバッチに、残余の(A)成分と(B)成分、(C)成分、(E)成分、(F)成分を配合することが好ましい。なお、その他任意の成分を配合する必要がある場合、シリカマスターバッチを調製する際に配合してもよく、また、これが加熱混合により変質する場合には、残余の(A)成分と(B)成分、(C)成分、(E)成分、(F)成分を配合する際に配合することが好ましい。また、このシリカマスターバッチを調製する際、前記の有機ケイ素化合物を配合して、(D)成分の表面をin−situ処理してもよい。本組成物を調製する際、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。
【0045】
また、本組成物は、貯蔵安定性を向上させるため、(A)成分、(C)成分、および(D)成分を含み、(B)成分を含まない組成物(I)と、(A)成分、(B)成分、および(D)成分を含み、(C)成分を含まない組成物(II)とからなる2液型の織物被覆用シリコーンゴム組成物であることが好ましい。なお、(E)成分および(F)成分は組成物(I)、組成物(II)のいずれか一方または両方に含まれてもよい。
【0046】
本組成物の25℃における性状は限定されず、好ましくは、液状である。本組成物が25℃で液状である場合、その粘度は限定されないが、好ましくは、10〜500Pa・sの範囲内、あるいは50〜500Pa・sの範囲内である。このような粘度を有する本組成物は、粘度調整のための溶剤を含まない無溶剤の組成物として、織物に被覆することができ、取扱作業性や被覆作業性が優れ、シリコーンゴム被覆層に欠陥を生じ難いという特徴がある。
【0047】
<シリコーンゴム被覆織物>
本発明のシリコーンゴム被覆織物は、織物の表面に前記の織物被覆用シリコーンゴム組成物を塗工し、該組成物を硬化してなるものである。本被覆織物における織物としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド繊維織物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル繊維織物;その他、ポリアクリル繊維織物、ポリアクリロニトリル繊維織物、アラミド繊維織物、ポリエーテルイミド繊維織物、ポリサルフォン系繊維織物、炭素繊維織物、レーヨン繊維織物、ポリプロピレン繊維織物、ポリエチレン繊維織物あるいはこれらの繊維からなる不織物が例示される。特に、エアバッグの基布として、耐熱性や機械的特性が優れることから、ポリアミド繊維織物またはポリエステル繊維織物であることが好ましい。
【0048】
本被覆織物における織物組織は限定されず、生産性や厚みの点から平織物であることが一般的である。また、難接着性の袋織り織物上にも良好な接着性を有する被覆皮膜を形成することができるので、織物構造の中央部に袋状の空間を有する袋織り織物であってもよい。
【0049】
本被覆織物を製造する方法は限定されず、例えば、織物上に織物被覆用シリコーンゴム組成物を、スプレー、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフコーティング、パッティング、スクリーン印刷、ディッピング等の公知の方法で塗工することができる。その際、織物被覆用シリコーンゴム組成物の塗布量は、25〜150g/m
2の範囲内であることが一般的である。また、シリコーンゴム組成物を塗工後、これを150〜200℃で1〜2分間加熱することにより前記組成物を硬化させることができる。
【0050】
本被覆織物はシリコーンゴム被覆層が1層であっても、また、2層以上の多層であってもよい。さらに、本被覆織物は、必要に応じて任意の追加的被覆層を有していてもよい。このような追加的な被覆層は、被覆織物の表面の感触を改善したり、表面の磨耗性をさらに向上したり、被覆織物の強度を向上したりすることを目的とする層であることが一般的であり、具体的には、プラスチックフィルム、織物、不織布、他の弾性被覆剤からなる被覆層が例示される。
【実施例】
【0051】
本発明の織物被覆用シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム被覆織物を実施例により詳細に説明する。
【0052】
<オルガノポリシロキサンおよびシリコーンゴム組成物の粘度>
オルガノポリシロキサンおよび織物被覆用シリコーンゴム組成物の25℃における粘度(mPa・s)を、JIS K7117−1に準拠したB型粘度計によって測定し、その動粘度(mm
2/s)を、JIS Z8803に準拠したウベローデ型粘度計によって測定した。
【0053】
<シリコーンゴムの特性>
織物被覆用シリコーンゴム組成物を20MPaの圧力下、150℃で5分間プレス加硫して、厚さ2mmのシリコーンゴムシートを作製した。このシリコーンゴムシートの硬さをJIS K 6253に規定のタイプAデュロメータにより測定した。また、シリコーンゴムの引張強さおよび伸びをJIS K 6251に規定の方法により測定した。
【0054】
<シリコーンゴム被覆織物の作製>
ポリエチレンテレフタレート製カーテンシールドエアバッグ用袋織り織物から、袋部と閉部を境界を挟んで袋部側100mm、閉部側70mm、幅70mmの長方形に切り出し、片面にベーカー式アプリケーターを用いて織物被覆用シリコーンゴム組成物を塗布量60〜100g/m
2となるように塗工した。次いで、200℃のオーブンで90秒間加熱することにより、シリコーンゴム組成物を硬化させた。同様に、もう片方の面にも織物被覆用シリコーンゴム組成物を塗工してシリコーンゴム被覆織物を作製した。
【0055】
<シリコーンゴム被覆織物の引張強さ>
上記のように作製したシリコーンゴム被覆織物から、幅50mm、袋部の長さが80mm、閉部の長さが50mmの長方形の試験体を切り出した。この試験体を開き両端を引っ張り試験機に備えた間隙を100mmとした二つのエアーチャックで張るようにして掴み、200mm/分の速度で引張り、その際の最大の引張り強さを測定した。
【0056】
<シリコーンゴム被覆織物の目開き>
上記のように作製したシリコーンゴム被覆織物から、幅50mm、袋部の長さが80mm、閉部の長さが50mmの長方形の試験体を切り出した。この試験体を開き両端を引っ張り試験機に備えた間隙を100mmとした二つのエアーチャックで張るようにして掴み、200mm/分の速度で引張り、200N/cmにおける目開きの程度を、同条件で測定したシリコーンゴムを被覆していないノンコート織物の目開きとの差(mm)で示した。
【0057】
<調製例1>
ロスミキサーに、粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=約0.09質量%) 100質量部、BET比表面積225m
2/gのフュームドシリカ 40質量部、ヘキサメチルジシラザン 7質量部、水 2質量部、および粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=約10.9質量%) 0.2質量部を投入し、室温で均一になるまで混合した。その後、減圧下、200℃で2時間加熱処理して、流動性のあるシリカマスターバッチを調製した。
【0058】
<実施例1〜4、比較例1、2>
表1に示した組成となるよう下記の成分を均一に混合して織物被覆用シリコーンゴム組成物を調製した。得られた織物被覆用シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴム被覆織物の特性を表1に示した。なお、表1中の[SiH/Vi]は、(A)成分中のアルケニル基1モルに対する(B)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル数である。
【0059】
(A)成分として、次の成分を用いた。
(a−1):粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=約0.09質量%)
【0060】
(B)成分として、次の成分を用いた。なお、式中、Meはメチル基を示す。
(b−1):動粘度18mm
2/sで、平均単位式:
(HMe
2SiO
1/2)
0.67(SiO
4/2)
0.33
で表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.97質量%)
(b−2):動粘度15mm
2/sで、平均単位式:
(Me
3SiO
1/2)
0.09(Me
2SiO
2/2)
0.32(HMeSiO
2/2)
0.54(MeSiO
3/2)
0.05
で表されるオルガノポリシロキサン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.83質量%)
(b−3):動粘度5.5mm
2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.73質量%)
(b−4):動粘度50mm
2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子の含有量=約0.30質量%)
【0061】
(C)成分として、次の成分を用いた。
(c−1):白金の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm)
【0062】
(D)成分として、次の成分を用いた。
(d−1):調製例1で調製したシリカマスターバッチ
【0063】
(E)成分として、次の成分を用いた。
(e−1):ジルコニウムテトラアセチルアセトネート(松本製薬工業株式会社の商品名:オルガチックスZC−150)
【0064】
(F)成分として、次の成分を用いた。
(f−1):3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0065】
(G)成分として、次の成分を用いた。
(g−1):シラノール基含有オルガノシロキサンオリゴマー:粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基の含有量=約10.9質量%)
【0066】
その他の成分として、次の成分を用いた。
硬化遅延剤:1−エチルシクロヘキサン−1−オール
シロキサンオリゴマー:粘度3.5mm
2/sの環状メチルビニルポリシロキサン(ビニル基の含有量=約30.7質量%)
【0067】
【表1】