(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カップ体内に設けられた基板保持部に水平に保持した基板に塗布液を供給し、基板の回転により振り切られた塗布液を、カップ体の内周面と内側部材との間にカップ体の周方向に沿って形成された環状の排気路を介して排出するように構成された塗布装置に用いられ、前記排気路を覆うように設けられる塗布液捕集部材であって、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載された塗布処理装置に用いられることを特徴とする塗布液捕集部材。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の一つであるフォトレジスト工程においては、半導体ウエハ(以下「ウエハ」という)の表面にレジストなどの各塗布液をウエハに供給し、ウエハを回転させて、ウエハの表面全体に塗布液を塗布するスピンコーティングを行う装置が知られている。このような塗布処理装置としては、スピンチャックに保持したウエハを囲むようにカップ体を設け、ウエハから飛散する塗布液を受け止めると共に、カップ体の周方向に沿って環状の排気路を設け排気路を介して、ウエハの周囲の雰囲気を排気するようにしている。
【0003】
近年では、半導体回路の高集積化に伴い、より複雑な3次元構造を持つデバイスが検討されている。このようなデバイスを製造する場合、エッチング耐性を高める観点から、レジスト膜を厚い膜とする要請があり、レジスト液として例えば200cP以上もの高粘度のものを用いる必要がある。高粘度の材料をスピンコーティングにより塗布すると、ウエハに塗布した塗布液を広げる際にウエハの周縁から振り切られる塗布液が糸状になることがある。そしてこのような糸状の塗布液が排気路内に詰まると排気圧が下がってしまう問題があるため、定期的にメンテナンスを行って糸状の塗布液を除去する必要があった。
【0004】
このような糸状の塗布液の対策としては、特許文献1に記載されているようなウエハを囲む環状の排気路に糸状の塗布液を捕集する環状の塗布液捕集部材を設けた構成が知られている。このような塗布液捕集部材を設けることで、カップ体の下流側の例えば排気ダクトに流れ込もうとする塗布液を捕集することができる。しかしながらこのような塗布処理装置においては、塗布液捕集部材に捕集された糸状の塗布液を除去する必要がある。
【0005】
特許文献1には、ウエハの裏面を洗浄する裏面側リンスを用い、ウエハから振り切られる裏面側リンスにより、塗布液捕集部材を洗浄する技術が記載されている。しかしながらウエハの回転数は、ウエハの処理レシピにより異なる、あるいは変動する。そのためウエハの処理中は、塗布液捕集部材に向けて安定して液を供給することが難しい。従ってウエハを処理する工程に加えて、塗布液捕集部材に向けて裏面側リンスを供給して、塗布液捕集部材を洗浄する工程を行う必要があり、スループットが悪くなる問題があった。
また特許文献2には、回転するウエハの周縁にて発生する糸状(綿状)の塗布液に向けて溶剤を吐出して除去する技術が記載されている。しかしながら糸状の塗布液は飛散しやすく、排気に捕捉された塗布液を十分に抑制できない懸念がある。またレジスト塗布処理中に溶剤の供給を継続する必要があるため、薬液の使用量が多くなるおそれがある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る塗布処理装置を直径300mmウエハWに対して塗布液であるレジスト液を塗布するレジスト塗布装置に適用した実施の形態について説明する。本実施の形態に係るレジスト塗布装置は、
図1に示すように、ウエハWの裏面中央部を真空吸着することにより、当該ウエハWを水平に保持する基板保持部であるスピンチャック11を備えている。このスピンチャック11は、下方より軸部12を介して回転機構13に接続されており、当該回転機構13により、鉛直軸回りに上方から見て時計回り方向に回転する。
【0013】
スピンチャック11の下方側には、軸部12を隙間を介して取り囲むように円形板14が設けられる。また円形板14には、周方向等間隔に3か所の貫通孔17が形成され、各貫通孔17には各々昇降ピン15が設けられている。これら昇降ピン15の下方には、共通の昇降板18が設けられ、昇降ピン15は昇降板18の下方に設けられた昇降機構16により昇降自在に構成されている。
【0014】
またレジスト塗布装置は、ウエハWにレジスト液を供給するための塗布液供給部であるレジスト液ノズル4を備えている。レジスト液ノズル4は、レジスト液供給管41を介して、レジスト液供給源42に接続されている。レジスト液供給源42には、例えば粘度5000cPのレジスト液が貯留されている。また、レジスト塗布装置は、ウエハWにレジスト液を希釈するための溶剤、例えばシクロヘキサノン(CHN)を供給する溶剤ノズル43を備えている。溶剤ノズル43は、溶剤供給管44を介して、溶剤供給源45に接続されている。なお
図1中のM41及びV41は、夫々レジスト液供給管41に介設された流量調整部及びバルブであり、M44及びV44は、夫々溶剤供給管44に介設された流量調整部及びバルブである。
【0015】
またレジスト塗布装置は、スピンチャック11を取り囲むようにカップ体2を備えている。カップ体2は、回転するウエハWより飛散したり、こぼれ落ちた排液を受け止め、当該排液をレジスト塗布装置外に排出する。カップ体2は、前記円形板14の周囲に断面形状が山型のリング状に設けられた山型ガイド部21を備え、山型ガイド部21の外周端には、下方に伸びるように環状の整流板23が設けられている。山型ガイド部21は、ウエハWよりこぼれ落ちた液を、ウエハWの外側下方へとガイドする。
【0016】
また、山型ガイド部21の外側を取り囲むように上側カップ体19を備えている。上側カップ体19は、垂直な筒状部22を備え、この筒状部22の上端には、内側上方へ向けて斜めに伸びる上側ガイド部24が設けられている。内側部材に相当する山型ガイド部21の上面及び整流板23と、上側カップ体19の筒状部22との間には、カップ体2の周方向に沿って、環状の隙間が形成され、この隙間がスピンチャック11に保持されたウエハWの周囲の雰囲気を排気する排気路25になる。またカップ体2は、山型ガイド部21及び整流板23の下方に、山型ガイド部21及び整流板23を伝って流れるレジスト液及び溶剤を受け止める液受け部20を備えている。
【0017】
液受け部20は、例えばステンレス(SUS)により、内壁32及び外壁31に囲まれた断面が凹部型となるリング状に形成され、液受け部20は環状の内壁32が、山型ガイド部21を下方から支持すると共に環状の外壁31が上側カップ体19の筒状部22の周囲を囲むように配置される。液受け部20における整流板23よりも内周側には、液受け部20の中心部を挟むように配置された2本の排気管28が液受け部20の底面を貫通するように設けられ、排気管28の上端は、液受け部20の底面26よりも高い位置に開口している。
【0018】
排気管28の他端側は、排気ダクト8に接続されており排気ダクト8は工場排気に接続されている。これによりカップ体2内の雰囲気が排気ダクト8を介して排気される。また排気ダクト8は、開度によりカップ体2の排気圧を切り替えるための図示しないダンパを備えている。また液受け部20の底面26における排気管28よりも外周側には、排液口27が開口し、排液口27には排液管33の一端が接続されている。
【0019】
また排気路25の上端には、ウエハWから振り切られ、糸状になった塗布液を捕集する塗布液捕集部材6が着脱自在に設けられる。塗布液捕集部材6は、排気路25の開口部に沿った環状に構成されている。なお塗布液捕集部材6には、後述のように環状流路65や溶剤貯留部64などが形成されているが、
図1では、記載が繁雑になるのを避けるため塗布液捕集部材6を平板状に記載している
【0020】
塗布液捕集部材6は、
図2及び
図3に示すように互いにカップ体2の中心部Cを中心とした同心円となるように配置された内環61と外環62とを備えている。塗布液捕集部材6は、内環61が山型ガイド部21の上面の周縁に設置され、外環62が上側カップ体19の内面に固定される。内環61におけるカップ体2の中心側の面は、山型ガイド部21の傾斜に沿って下面側が切り欠かれており、山型ガイド部21を外周側に向かって、流れ落ちる溶剤が、内環61の上面に流れ込むように構成されている。
【0021】
内環61と外環61との間にはカップ体2の中心部Cを中心とした円の径方向に向かって水平に伸びる複数の梁部63が、塗布液捕集部材6の周方向に等間隔に隙間を開けて例えば24本配置され、隣り合う梁部63の間の隙間は、塗布液捕集部材6を厚さ方向に貫通し、排気流の流れる方向においてウエハW側を上流側、排気ダクト8側を下流とすると、塗布液捕集部材6の上流側の雰囲気を下流側に流すための開口部60になっている。また各梁部63の上面には、例えば長さ15mm、深さ4mm、幅10mmの溝状の溶剤貯留部64が形成されている。また内環61には、上面に内環の周方向に沿って環状の環状流路65が形成されており、各溶剤貯留部64におけるカップ体2の中心側には、溶剤貯留部64と、環状流路65とを互いに連通させる流路66が各々形成されている。環状流路65は、溶剤貯留部64を互いに連通させており、連通路に相当する。
なお
図2は、実機として構成した場合に想定される例を示したものではなく、技術の理解のために示した便宜上の図である。また
図2中における溶剤の貯留される領域、ここでは溶剤貯留部64、流路66及び環状流路65に、ドットを付して示した。
【0022】
また
図1に戻って、円形板14の上面には、スピンチャック11に保持されたウエハWの裏面に向けて、ウエハWの裏面側へのレジストの回り込みを防ぐための溶剤を吐出する裏面側溶剤供給部である裏面側溶剤ノズル7が設けられている。なおこの実施の形態では、裏面側溶剤ノズル7が溶剤供給部に相当する。裏面側溶剤ノズル7には、溶剤供給路70の一端が接続され、溶剤供給路70の他端には、溶剤供給源71が接続されている。なお
図1中のM70、V70は夫々溶剤供給路70に介設された流量調整部及びバルブである。
【0023】
また
図1に示すようにレジスト塗布装置は、制御部10を備えている。制御部10には、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)及びメモリーカードなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムは、レジスト塗布装置の各部に制御信号を送信してその動作を制御するように命令(各ステップ)が組み込まれている。
【0024】
上述のレジスト塗布装置の作用について説明する。先ず処理基板であるウエハWがスピンチャック11に載置される。さらに溶剤ノズル43をウエハWの中心部上方に移動させる。次いでウエハWを回転させ、例えば75Paの排気圧でカップ体2の排気を開始し、さらに溶剤ノズル43からウエハWに向けてプリウェット用の溶剤を供給する。この時溶剤は、ウエハWの表面を広がり、振り切られる。
【0025】
次いで溶剤ノズル43をウエハWの外に退避させると共に、レジスト液ノズル4をウエハWの中心部の上方に位置させる。さらに
図4に示すように例えば800〜1500rpmの回転数で回転するウエハWに向けてレジスト液を供給する。さらにウエハWを例えば500〜1200rpmの回転数で回転させ、レジスト液をウエハWの表面に塗り広げ、振り切る。ウエハWから振り切られたレジスト液は、上側カップ体19の筒状部22の内面を伝って下方に流れ、排液口27から排液されるが、レジスト液の粘度が高いと、例えば50cP以上での粘度であると、ウエハWの周縁から振り切られるレジスト液の一部が、高粘度の糸状の塗布液となることがある。カップ体2は、カップ体2と山型ガイド部21の隙間の排気路25を介して排気しているため、
図4中破線で示すように排気流が形成されている。そのため
図5に示すように発生した糸状の塗布液100は、この排気流に乗って流され、排気流が排気路25の上端に設けられた塗布液捕集部材6の開口部60を通過するときに、梁部63に引っかかり捕集される。
【0026】
続いて塗布液捕集部材6の貯留部64に溶剤を供給する工程を説明すると、レジスト液ノズル4をカップ体2外に退避させると共に、
図6に示すように、例えばウエハWを100rpmの回転数で、回転させた状態で、裏面側溶剤ノズル7からウエハWの裏面周縁に向けて、溶剤を100mL/秒の流量で10秒間供給する。この時ウエハWの裏面側に供給された溶剤は、ウエハWの回転により振り切られ、
図6及び
図7に示すように振り切られた溶剤が、山型ガイド部21の上面に沿って、カップ体2の周縁方向に流れ、塗布液捕集部材6における環状流路65に流れ込み、流路66を介して溶剤貯留部64に流れ込む。またウエハWから振り切られ飛散する溶剤が、溶剤貯留部64に流れ込む。この時
図5に示した塗布液捕集部材6に捕集されている糸状の塗布液100が溶剤により溶解し、溶剤貯留部64中の溶剤に溶け込む。あるいは粘度の下がった塗布液が、液化し、カップ体2の内面に沿って流れ、カップ体2の下部の排液口27から排液されて除去される。なお
図7、
図8中の斜線で示す領域は、溶剤の流れ、拡散のイメージを記載したものであり、実際にウエハWから振り切られた溶剤の流れる領域を示したものではない。
【0027】
また
図8に示すように環状流路65に流れ込んだ溶剤は、環状流路65に沿って、カップ体2の全周に拡がる。そしてウエハWから振り切られた溶剤の降りかかる量の少ない溶剤貯留部64、例えばカップ体の中心部Cから見て、裏面側溶剤ノズル7の設置された位置とは、反対側の位置に設けられた溶剤貯留部64に流路66を介して流れ込み貯留される。これにより裏面側溶剤ノズル7の設置された位置とは、反対側の位置にて塗布液捕集部材6に捕集されている糸状の塗布液100にも溶剤が供給され、糸状の塗布液100が溶解除去される。このようにウエハWから振り切られた溶剤はカップ体2の全周に亘る環状流路65を拡がり、各溶剤貯留部64に流れ込む。これにより各溶剤貯留部64には、凡そ均等な量の溶剤が各々貯留される。
【0028】
次いでレジスト塗布処理が終了したウエハWを図示しない外部の搬送アームにより取り出すと共に、続いて処理を行うウエハWがスピンチャックに受け渡される。さらに既述のように溶剤ノズル43をウエハの中心部上方に位置させて、溶剤を吐出してプリウェットを行う。
さらに溶剤ノズル43をカップ体2の外部に退避させ、レジスト液ノズル4をウエハWの中心部上方に位置させる。次いで既述の例と同様にウエハWを回転させると共にレジスト液ノズル4からレジスト液を吐出する。この時同様にウエハWから振り切られたレジスト液の一部が糸状の塗布液100になる。
【0029】
発生した糸状の塗布液100は、排気路25に流れ込む排気によって捕捉されて流され、塗布液捕集部材6に捕集される。この時既述のようにカップ体2の全周に亘って設けられた各溶剤貯留部64、各流路66及び環状流路65は、溶剤が貯留された状態になっている。そのため
図9に示すように塗布液捕集部材6に捕集された糸状の塗布液100は、速やかに各溶剤貯留部64、流路66及び環状流路65を満たす溶剤に接触し、溶解される。このように塗布液捕集部材6における塗布液を捕集する部位を溶剤が貯留された状態をしておくことで、ウエハWの塗布処理中においても、捕集された糸状の塗布液100が次々に溶剤に接し溶解除去される。なお
図9のハッチングは、各溶剤貯留部64、流路66及び環状流路65を満たす溶剤を示している。そしてその後ウエハWに表面におけるレジストを広げる間においても、塗布液100の溶解除去が継続される。またウエハWの入れ替えを行う間においても、各溶剤貯留部64、流路66及び環状流路65に溶剤が貯留された状態となっているため、除去されきっていない糸状の塗布液100が残っている場合にも溶解除去が継続して行われる。
【0030】
このように塗布液捕集部材6に捕集された糸状の塗布液100をウエハWに塗布処理を行っている間にも塗布液100を溶剤に接しさせることができ、速やかに溶解除去でき、塗布液捕集部材6における糸状の塗布液100の蓄積を抑えることができる。従って、ウエハWへのレジスト液の塗布処理に加えて行う、塗布液捕集部材6の洗浄メンテナンスの頻度を少なくすることができ、スループットの低下を抑えることができる。
【0031】
上述の実施の形態によれば、レジスト液を供給したウエハWを回転させて塗布処理を行うレジスト塗布装置において、カップ体2の周方向に沿って設けた排気路25にウエハWの回転に発生する糸状の塗布液100を捕集する塗布液捕集部材6を設け、塗布液捕集部材6に溶剤貯留部64を設けている。そのためウエハWに裏面側溶剤供給処理を行った時にウエハWから振り切られる溶剤が、塗布液捕集部材6に降りかかり、溶剤貯留部64に貯留される。そして溶剤貯留部64に溶剤が貯留された状態とすることで、続くウエハWにレジスト塗布処理を行った時に発生し、塗布液捕集部材6に捕集される糸状の塗布液100をレジスト塗布処理の間にも溶解除去することができる。従って、ウエハWへのレジスト液の塗布処理に加えて行う、塗布液捕集部材6の洗浄メンテナンスの頻度を少なくすることができ、スループットの低下を抑えることができる。
【0032】
また本発明の実施の形態の他の例に係る塗布液捕集部材6について説明する。例えば
図10のように溶剤貯留部64を設置する梁部63aは、カップ体2の径方向に対して斜めに伸びるように構成されていてもよい。
またカップ体2内に溶剤貯留部64に向けて溶剤を供給する溶剤供給部9を設けてもよい。
図11及び
図12に示すように例えばカップ体2における山型ガイド部21の上面に塗布液捕集部材600に向けて溶剤を吐出する溶剤供給部601を設ける。溶剤供給部601は、例えば環状の溶剤供給管602で構成され、外周側の側面に各溶剤貯留部64に対応するように複数の溶剤吐出孔603が設けられている。
【0033】
また溶剤供給部601と各溶剤貯留部64との間には、溶剤吐出孔603から吐出された溶剤を各溶剤貯留部64に向けてガイドするガイド部材604が設けられている。またカップ体2の中心部Cを中心として、各溶剤貯留部64の中心部を通過する円上に梁部605を設け、梁部605の上面に各溶剤貯留部64を連結させる連通路606を設けている。
図11では、各溶剤貯留部64及び連通路606にハッチングを付して示した。
【0034】
このような構成の塗布処理装置においては、例えばウエハWに塗布液の塗布処理を行を行う前に溶剤供給部601から溶剤を供給し、各溶剤貯留部64及び連通路606に溶剤を満たすようにしておけばよい。このように構成することで、塗布処理において発生する糸状の塗布液を捕集後、速やかに溶解除去することができる。従ってウエハWへの塗布処理と併せて、糸状の塗布液の分解除去をすることができ、塗布液捕集部材600の洗浄メンテナンスの頻度を少なくすることができ、装置のスループットを改善することができる。
また例えば内環61を管状の溶剤供給管602で構成し、各梁部63に向けて、溶剤を吐出するように構成してもよい。このような構成の場合にも梁部63に形成した溶剤貯留部64に溶剤を貯留することができるため同様の効果を得ることができる。
【0035】
また溶剤貯留部64は、例えば梁部63の上面にメッシュ状の部材を設け、メッシュ状の部材に溶剤をしみこませて貯留するように構成されていてもよい。メッシュ状の部材を設けるにあたっては、例えば
図2に示した塗布液捕集部材6に設けられた溶剤貯留部64に貯留される程度の量の溶剤を保持できる吸水性があれば、糸状の塗布液100捕集されたときに速やかに溶解除去を行うことができる状態にしておくことができ、洗浄処理の回数を少なくすることができると言える。
また上述の実施例においては、溶剤貯留部64をカップ体2の全周に亘って等間隔に複数設けている。そのため、塗布液捕集部材6の部位に寄らず、カップ体2の全周で捕集された糸状の塗布液100を溶解除去できる。従って、塗布液捕集部材6において、局所的な糸状の塗布液100の蓄積が起こりにくく、メンテナンスの高頻度化が抑制される。
【0036】
さらに各溶剤貯留部64を、環状流路65を介して互いに連通するように構成している。そのため溶剤供給部の位置によらず、カップ体2の全周に亘る溶剤貯留部64溶剤を供給することができる。従ってカップ体2の周方向に全周に亘って設けられた溶剤貯留部64に溶剤を均一に供給することができ、糸状の塗布液100の溶解除去の効率が、カップ体2の周方向において、均一になる。また連通路は、カップ体2の周方向配置された溶剤貯留部64を互いに連通させることが、できればよいため円弧形状であってもよい。あるいは円弧形状の複数の連通路をカップ体の周方向に並べ、各溶剤貯留部64が互いに連通するように構成されていてもよい。
【0037】
また
図2に示すように上述の実施の形態に示したレジスト塗布装置においては、塗布液捕集部材6の環状流路65を開口部60よりもカップ体2の内側に、カップ体2の周方向に沿った環状に設けている。そのためウエハWから振り切られ、山型ガイド部21の上面に沿って流れる溶剤を開口部60に落とさずに溶剤貯留部64に確実に導くことができる。従って、ウエハWから振り切られる溶剤の回収効率が高い。
またカップ体2の径方向に伸びるように梁部63を設け、梁部63の伸びる方向に沿って溶剤貯留部64を伸びるように設けている。これにより排気路25の幅方向において広い範囲に溶剤が貯留され、塗布液捕集部材6に捕集される糸状の塗布液100が溶剤に接しやすくなる。
【0038】
また上述の実施の形態では、溶剤貯留部64に溶剤を供給する溶剤供給部として、裏面側溶剤ノズル7を用いている。そのため新たな溶剤供給部を設けることなく、溶剤貯留部に溶剤を供給することができる。また裏面側溶剤ノズル7からウエハWに溶剤を供給する処理は、溶剤の供給量が多いため、ウエハWにレシピに沿って、裏面側洗浄処理を行った時に溶剤貯留部64に十分量の溶剤を貯留することができる利点がある。
【0039】
また溶剤ノズル43からウエハWに向けて供給する溶剤を溶剤貯留部64に貯留するようにしてもよい。例えばウエハWにレジスト液を塗布する処理の前にスピンチャック11に保持され、回転するウエハWに向けて、溶剤ノズル43からプリウェット用の溶剤を供給し、ウエハWから振り切られる溶剤を溶剤貯留部64に貯留しておけばよい。
この溶剤貯留部64に溶剤を供給するために用いるウエハWとしては、例えば塗布処理装置が配置される液処理システム内に設けられた保持棚から、溶剤の貯留専用ウエハが搬送アームにより取り出されて、当該塗布処理装置に搬送される。あるいは洗浄専用のウエハWを用いる代わりに例えば最初のロットの先頭のウエハW(製品であるウエハW)を用いてもよい。
【0040】
[実施例]
塗布液捕集部材を設けることによる排気圧の変動の抑制を検証するため、
図1に示したレジスト塗布装置を用い、排気ダクト8に設けたダンパの開度により設定されるカップ体2の設定排気圧を50Paに設定した状態で、実施の形態に示した方法に従って、100枚のウエハWにレジスト液の塗布処理を行い、0、25、50、75、100枚のウエハWを処理したときのカップ体2内(塗布液捕集部材6よりも下流側)の排気圧を計測した。また比較例として塗布液捕集部材6を設けないことを除いて実施例と同様に処理を行った。
【0041】
図13はこの結果を示し、横軸にウエハWの処理枚数、縦軸に排気圧を示す特性図である。
図13に示すように比較例では、ウエハWの処理枚数が増えるにしたがって、排気圧が上昇していることが分かる。これに対して実施例では、排気圧は略50Paに安定していた。これは、比較例では、糸状の塗布液が塗布液捕集部材6に蓄積し、開口部60に詰まりが生じたため、カップ体2内の排気圧が上昇しており、実施例では、塗布液捕集部材6における糸状の塗布液の蓄積が解消しているため、カップ体2内の圧力が上昇しないためと推察される。
【0042】
また更に実施例のレジスト塗布装置を用いてウエハWに塗布処理を行い、ウエハの処理枚数を840枚まで増やしたときにカップ体2内の排気圧の変化について調べた。ウエハWの処理枚数が、100、440、620、720及び840枚に到達した段階で、各々ダンパの開度を調整し、低排気時の設定開度(ウエハWの処理開始前においては、排気圧20Pa)高排気時の設定開度(ウエハWの処理開始前においては、排気圧75Pa)の各開度におけるカップ体2内(塗布液捕集部材6よりも下流側)の排気圧を測定した。
【0043】
図14はこの結果を示し、ダンパの開度を、低排気時の開度及び高排気時の設定開度の夫々における排気圧の変化を示す特性図であり、横軸は、ウエハWの処理枚数、縦軸は、カップ体2内の排気圧を示す。
この結果によればウエハWの処理枚数を840枚まで増えたときにも、ダンパの開度が、低排気時の開度及び高排気時の開度のいずれの場合も排気圧の変化はほとんど見られない。従って、ウエハWの処理枚数が増えたときにも塗布液捕集部材6における糸状の塗布液の詰まりは、ほとんど起こっていないことが分かり、メンテナンスの高頻度化が抑制されていると推察される。