特許第6841202号(P6841202)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841202半導体ウェーハの評価方法および半導体ウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841202
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの評価方法および半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20210301BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   H01L21/66 P
   H01L21/66 J
   G01B11/24 K
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-197421(P2017-197421)
(22)【出願日】2017年10月11日
(65)【公開番号】特開2019-71375(P2019-71375A)
(43)【公開日】2019年5月9日
【審査請求日】2019年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】西村 雅史
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏知
【審査官】 小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−503164(JP,A)
【文献】 特開2009−168634(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/093488(WO,A1)
【文献】 特開2009−156686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハの評価方法であって、
評価対象の半導体ウェーハの断面像を取得すること、
前記断面像は、ウェーハ外周縁部の面取り面と該面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含み、
前記取得された断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を作成すること、
前記作成された拡大像において、前記境界部の形状を評価すること、
を含む半導体ウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記断面像は、評価対象の半導体ウェーハをへき開して露出させたへき開面において撮像された断面像である、請求項1に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記拡大像は、前記取得された断面像をウェーハ厚み方向のみに4倍以上の拡大倍率で拡大させて作成された拡大像である、請求項1または2に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項4】
前記拡大倍率は、4倍以上15倍以下である、請求項3に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項5】
前記評価に用いる拡大像は、前記拡大後に二値化処理が行われた像である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項6】
前記評価を、前記拡大像において前記境界部の形状に円をフィッティングさせて作成した円のサイズを指標として行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項7】
評価対象の半導体ウェーハの前記境界部の評価を、前記作成された拡大像と比較対象拡大像と対比することにより行い、
前記比較対象拡大像は、比較対象の半導体ウェーハのウェーハ外周縁部の面取り面と該面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含む断面像を取得し、該取得された断面像を、ウェーハ厚み方向のみに、前記評価対象の半導体ウェーハの拡大像と同じ拡大倍率で拡大して作成された拡大像である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の半導体ウェーハの評価方法。
【請求項8】
複数の半導体ウェーハを含む半導体ウェーハロットを製造すること、
前記半導体ウェーハロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出すること、
前記抽出された半導体ウェーハを請求項1〜7のいずれか1項に記載の評価方法によって評価すること、および
前記評価の結果、良品と判定された半導体ウェーハと同じ半導体ウェーハロットの半導体ウェーハを製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付すこと、
を含む半導体ウェーハの製造方法。
【請求項9】
テスト製造条件下で評価用半導体ウェーハを製造すること、
前記製造された評価用半導体ウェーハを請求項1〜7のいずれか1項に記載の評価方法によって評価すること、
前記評価の結果に基づき、前記テスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定するか、または前記テスト製造条件を実製造条件として決定すること、
前記決定された実製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
を含む半導体ウェーハの製造方法。
【請求項10】
前記変更が加えられる製造条件は、半導体ウェーハ表面の研磨処理条件および面取り加工条件の少なくとも一方である、請求項9に記載の半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの評価方法および半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェーハについて、ウェーハ外周縁部を含むウェーハの断面形状を評価することが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2017−503164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、ウェーハの断面像から表面輪郭の座標列を求め、これを数学的座標系で曲線に表現することにより、曲線を数学的に処理してウェーハの形状に関する形状分析データを数値化して表現することが提案されている(特許文献1の段落0032等参照)。
【0005】
ところで、半導体ウェーハは、一般に、インゴットから切り出したウェーハに各種加工を施して製造される。インゴットから切り出したウェーハの外周縁部は、そのままでは角部を有するため割れや欠けが生じやすい。そこで、ウェーハの外周縁部に面取り加工を施し面取り面を形成することが通常行われる。
【0006】
面取り面が形成された半導体ウェーハの断面像を取得することにより、その断面像において、半導体ウェーハのデバイス形成面となる表面(おもて面)またはおもて面とは反対側の表面(裏面)と面取り面との境界部の形状を観察することができる。以下において、半導体ウェーハの「表面」とは、特記しない限り、上記のおもて面または裏面のいずれか一方または両方を言うものする。ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状は、半導体デバイスの製造工程における欠け、キズの発生のし易さ等を予測するための指標とすることができる。例えば、半導体デバイスの製造工程において、熱処理時にウェーハを支持するウェーハサポートの形状に合わせてウェーハ表面(例えば裏面)と面取り面との境界部の形状を適切に設定することによって、接触による境界部の欠けやキズが発生し難くなるため、欠けやキズを原因とする転位(スリップ)や発塵の発生率を低減することができる。しかし、特許文献1に記載の方法は、ウェーハの形状を数値化するための工程が複雑であるため、より簡便な評価方法によってウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を評価できることが望ましい。
【0007】
そこで本発明の目的は、半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を簡便に評価するための新たな方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
半導体ウェーハの評価方法であって、
評価対象の半導体ウェーハの断面像を取得すること、
上記断面像は、ウェーハ外周縁部の面取り面と、この面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含み、
上記取得された断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を作成すること、
上記作成された拡大像において、上記境界部の形状を評価すること、
を含む半導体ウェーハの評価方法(以下、「評価方法」とも記載する。)、
に関する。
【0009】
一態様では、上記断面像は、評価対象の半導体ウェーハをへき開して露出させたへき開面において撮像された断面像であることができる。
【0010】
一態様では、上記拡大像は、上記取得された断面像をウェーハ厚み方向のみに4倍以上の拡大倍率で拡大させて作成された拡大像であることができる。
【0011】
一態様では、上記拡大倍率は、4倍以上15倍以下であることができる。
【0012】
一態様では、上記評価に用いる拡大像は、上記拡大後に二値化処理が行われた像であることができる。
【0013】
一態様では、上記評価は、上記拡大像において上記境界部の形状に円をフィッティングさせて作成した円のサイズを指標として行うことができる。
【0014】
一態様では、評価対象の半導体ウェーハの上記境界部の評価を、上記作成された拡大像と比較対象拡大像と対比することにより行うことができる。この比較対象拡大像は、比較対象の半導体ウェーハのウェーハ外周縁部の面取り面とこの面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含む断面像を取得し、この取得された断面像を、ウェーハ厚み方向のみに、上記評価対象の半導体ウェーハの拡大像と同じ拡大倍率で拡大して作成された拡大像であることができる。
【0015】
本発明の更なる態様は、
複数の半導体ウェーハを含む半導体ウェーハロットを製造すること、
上記半導体ウェーハロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出すること、
上記抽出された半導体ウェーハを上記評価方法によって評価すること、および
上記評価の結果、良品と判定された半導体ウェーハと同じ半導体ウェーハロットの半導体ウェーハを製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付すこと、
を含む半導体ウェーハの製造方法(以下、「第一の製造方法」とも記載する。)、
に関する。
【0016】
本発明の更なる態様は、
テスト製造条件下で評価用半導体ウェーハを製造すること、
上記製造された評価用半導体ウェーハを上記評価方法によって評価すること、
上記評価の結果に基づき、上記テスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定するか、または上記テスト製造条件を実製造条件として決定すること、
上記決定された実製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
を含む半導体ウェーハの製造方法(以下、「第二の製造方法」とも記載する。)、
に関する。
【0017】
一態様では、上記変更が加えられる製造条件は、半導体ウェーハ表面の研磨処理条件および面取り加工条件の少なくとも一方であることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、半導体ウェーハの面取り面とウェーハ表面との境界部の形状を簡便に評価することができる評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】2つの半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部を含む断面像(二値化処理なし)である。
図2図1に示す断面像を二値化処理した二値化処理済像である。
図3図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに2倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図4図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに3倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図5図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに4倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である
図6図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに5倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図7図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに10倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図8図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに15倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図9図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに20倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図10図1に示す断面像をウェーハ厚み方向のみに30倍に拡大した拡大像(二値化処理済)である。
図11図2図10の最右に記載されている比の値とウェーハ厚み方向における拡大倍率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[半導体ウェーハの評価方法]
本発明の一態様は、半導体ウェーハの評価方法であって、評価対象の半導体ウェーハの断面像を取得すること、上記断面像は、ウェーハ外周縁部の面取り面と、この面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含み、上記取得された断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を作成すること、上記作成された拡大像において、上記境界部の形状を評価すること、を含む半導体ウェーハの評価方法に関する。
【0021】
上記評価方法では、半導体ウェーハの面取り面とウェーハ表面との境界部を含む断面像を、ウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を用いて境界部の形状を評価する。ウェーハ厚み方向のみに断面像を拡大することにより、断面形状の輪郭において、半導体ウェーハの境界部の形状の違いをウェーハ表面(いわゆる水平面)に対して強調することができるため、境界部のなだらかさ/急峻さを精度よく評価することが可能となる。したがって、例えば、複数の半導体ウェーハの断面形状を縦横等倍の撮影倍率で取得された断面像により比較すると境界部の違いがほぼ見られない場合でも、複数の半導体ウェーハの境界部の形状の違いを強調することができるため、わずかな境界部の形状の違いも判別することができる。また、上記評価方法によれば、複雑な工程を経ることなく、断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大するという簡便な画像処理により、半導体ウェーハの面取り面とウェーハ表面との境界部の形状を評価することができる。
以下、上記評価方法について、更に詳細に説明する。
【0022】
<評価対象の半導体ウェーハ>
上記評価方法の評価対象の半導体ウェーハは、ウェーハの外周縁部に面取り加工が施されて面取り面が形成された半導体ウェーハであればよい。評価対象の半導体ウェーハは、一般に半導体基板として使用される各種半導体ウェーハであることができる。例えば、半導体ウェーハの具体例としては、各種シリコンウェーハを挙げることができる。シリコンウェーハは、例えば、シリコン単結晶インゴットから切り出された後に面取り加工等の各種加工を経たシリコン単結晶ウェーハであることができる。かかるシリコン単結晶ウェーハの具体例としては、例えば、研磨が施されて表面に研磨面を有するポリッシュドウェーハを挙げることができる。また、シリコンウェーハは、シリコン単結晶ウェーハ上にエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハ、シリコン単結晶ウェーハにアニール処理により改質層を形成したアニールウェーハ等の各種シリコンウェーハであることもできる。
【0023】
<断面像の取得>
上記評価方法では、評価対象の半導体ウェーハの断面像を取得する。この断面像は、面取り面と、この面取り面と隣接するウェーハ表面(おもて面または裏面)との境界部を含むように取得すればよい。面取り加工された半導体ウェーハの外周縁部には、通常、ウェーハのおもて面と隣接する面取り面と、ウェーハの裏面と隣接する面取り面が存在する。断面像には、ウェーハのおもて面と面取り面との境界部、ウェーハの裏面と面取り面との境界部の一方または両方が含まれ得る。
【0024】
断面像は、一態様では、評価対象の半導体ウェーハの断面を露出させることなく、投影像として取得することができる。投影像は、公知の投影法によって取得することができる。また、他の一態様では、断面像は、評価対象の半導体ウェーハの断面を露出させ、この露出させた断面を撮像して取得することができる。例えば評価対象の半導体ウェーハをへき開するか、または公知の切断手段によって切断することにより、断面を露出させることができる。断面露出の容易性の観点からは、上記断面は、評価対象の半導体ウェーハを表面に対して垂直にへき開して露出させたへき開面であることが好ましい。例えば、表面が(100)面であるシリコン単結晶ウェーハであれば、(110)面でへき開することにより、表面に対して垂直なへき開面を露出させることができる。露出させた断面の撮像には、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)、レーザー顕微鏡等の公知の各種顕微鏡を用いることができる。光学顕微鏡としては、好ましくは光学式の金属顕微鏡(落射照明型顕微鏡等と呼ばれる。)を用いることができる。また、微分干渉観察機能を更に備えた微分干渉顕微鏡を用いると、焦点深度が浅くなり、わずかな形状の違いも断面像に現れるため、より好ましい。
【0025】
断面像は、撮像倍率を1倍として(即ち実サイズで)取得してもよく、撮像倍率を1倍超として拡大して取得してもよい。拡大する場合、撮像倍率は、例えば50〜1000倍とすることができ、50〜500倍とすることが好ましい。ただし、ここでの拡大では、公知の顕微鏡に備えられた拡大機能により行われる通り、いずれの方向においても等しい倍率で行われる。そして上記評価方法では、こうして取得された断面像を、ウェーハ厚み方向(いわゆる縦方向)のみに拡大し、ウェーハ径方向(いわゆる横方向)には拡大せずに、拡大像を作成する。このようにウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を用いることにより、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を精度よく評価することができる。
【0026】
<拡大像の作成>
上記断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像の作成は、画像を拡大することができる公知の画像処理ソフトを使用して行うことができる。ウェーハ厚み方向での拡大倍率は、1倍超であり、例えば2倍以上または3倍以上とすることができる。ウェーハ表面と面取り面との形状をより精度よく評価する観点からは、ウェーハ厚み方向での拡大倍率は4倍以上とすることが好ましく、5倍以上とすることがより好ましく、6倍以上とすることが更に好ましく、7倍以上とすることが一層好ましく、8倍以上とすることがより一層好ましい。また、ウェーハ厚み方向での拡大倍率は、例えば30倍以下、25倍以下または20倍以下とすることができ、19倍以下、18倍以下、17倍以下または16倍以下とすることもできる。ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状をより精度よく評価する観点からは、15倍以下とすることが好ましく、14倍以下とすることがより好ましく、13倍以下とすることが更に好ましく、12倍以下とすることが一層好ましい。
【0027】
ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状をより一層精度よく評価する観点からは、断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大する前または拡大した後に、得られた画像を二値化処理することが好ましく、断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した後に、得られた画像を二値化処理することがより好ましい。二値化処理することにより、断面形状の輪郭をより鮮明に表示させることができるため、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状をより一層精度よく評価することが可能となる。二値化処理は、公知の通り、濃淡のある画像を白と黒との2階調に変換する処理であり、ある閾値を定めて行われる。上記評価方法において二値化処理された断面像を評価に用いる場合、二値化処理における閾値は、断面形状の輪郭が鮮明に表示されるように適宜設定すればよい。
【0028】
<境界部の形状の評価>
上記評価方法では、以上のようにウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像において、ウェーハ表面と、この表面と隣接する面取り面との境界部の形状を評価する。この形状の評価は、例えば、複数の異なる半導体ウェーハについて得られた拡大像を目視で対比して、相対評価として行うことができる。例えば、作成された拡大像において境界部の形状が、よりなだらかであるか、またはより急峻であるかを目視により相対的に評価して、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を評価することができる。また、例えば、所望の境界部形状を有する標準サンプルの拡大像と評価対象の半導体ウェーハについて作成された拡大像とを目視で対比して、評価対象の半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を評価することもできる。以上の評価において、対比する複数の拡大像は、ウェーハ厚み方向のみに同じ倍率で拡大された拡大像であることが、評価の精度の観点から好ましい。即ち、評価対象の半導体ウェーハの境界部の評価は、評価対象ウェーハについて作成された拡大像と、1つ以上の比較対象拡大像と対比することにより行うことが好ましい。この比較対象拡大像は、比較対象の半導体ウェーハのウェーハ外周縁部の面取り面とこの面取り面と隣接するウェーハ表面との境界部を含む断面像を取得し、この取得された断面像を、ウェーハ厚み方向のみに、評価対象の半導体ウェーハの拡大像と同じ拡大倍率で拡大して作成された拡大像であることが好ましい。
【0029】
また、ウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像において、ウェーハ断面形状の輪郭では、通常、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状は曲線形状となる。そこで、この曲線の曲率円に基づき、境界部の形状を評価することもできる。詳しくは、ウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像のウェーハ断面形状の輪郭上で、ウェーハ表面と面取り面との境界部の曲線の形状に、この曲線の形状に近似する円弧形状を有する円をフィッティングさせるか、またはウェーハ表面と面取り面との境界部の曲線の形状に、この曲線の形状と一致する円弧形状を有する円をフィッティングさせる。この円のフィッティングは、必ずしもフィッティング式を用いた正確な円フィッティングでなくてもよい。例えば、ウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像において、手動での円の描画が可能な公知のソフトを用いて、ウェーハ断面形状の輪郭上の境界部の曲線の形状と一致または近似する形状の円弧を有する円を設定することができる。または、画像処理ソフトを用いて公知のフィッティング式を用いて円のフィッティングを行ってもよい。こうして得られた円(曲率円)のサイズ、例えば直径または半径が大きいほど、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状はなだらかであると判断することができ、上記円のサイズが小さいほどウェーハ表面と面取り面との境界部の形状は急峻であると判断することができる。このように円のサイズを用いて境界部の形状を評価することは、数値に基づき客観的に評価を行うことができるため、評価の信頼性の観点から好ましい。
【0030】
以上の通り、本発明の一態様にかかる評価方法によれば、半導体ウェーハのウェーハ表面(おもて面または裏面)と、この表面と隣接する面取り面との境界部の形状を、複雑な工程を経ることなく簡便に評価することができる。更に、本発明の一態様にかかる評価方法によれば、評価対象の半導体ウェーハの断面形状の輪郭において、ウェーハ表面に対して境界部の形状の違いを強調することができるため、境界部のなだらかさ/急峻さを精度よく評価することが可能となる。
【0031】
<半導体ウェーハの製造方法>
本発明の一態様にかかる半導体ウェーハの製造方法(第一の製造方法)は、
複数の半導体ウェーハを含む半導体ウェーハロットを製造すること、
上記半導体ウェーハロットから少なくとも1つの半導体ウェーハを抽出すること、
上記抽出された半導体ウェーハを上記評価方法によって評価すること、および
上記評価の結果、良品と判定された半導体ウェーハと同じ半導体ウェーハロットの半導体ウェーハを製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付すこと、
を含む半導体ウェーハの製造方法、
である。
【0032】
本発明の他の一態様にかかる半導体ウェーハの製造方法(第二の製造方法)は、
テスト製造条件下で評価用半導体ウェーハを製造すること、
上記製造された評価用半導体ウェーハを上記評価方法によって評価すること、
上記評価の結果に基づき、上記テスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定するか、または上記テスト製造条件を実製造条件として決定すること、
上記決定された実製造条件下で半導体ウェーハを製造すること、
を含む半導体ウェーハの製造方法、
である。
【0033】
第一の製造方法では、いわゆる抜き取り検査を行った結果、良品と判定された半導体ウェーハと同じロットの半導体ウェーハを製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付す。一方、第二の製造方法では、テスト製造条件下で製造された半導体ウェーハを評価し、この評価結果に基づき実製造条件を決定する。第一の製造方法および第二の製造方法のいずれにおいても、半導体ウェーハの評価は、先に説明した本発明の一態様にかかる評価方法によって行われる。したがって、半導体ウェーハの評価を簡便に行うことができ、更には精度よく行うこともできる。
【0034】
(第一の製造方法)
第一の製造方法における半導体ウェーハロットの製造は、一般的な半導体ウェーハの製造方法と同様に行うことができる。例えば、シリコンウェーハの一態様であるポリッシュドウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)等により育成されたシリコン単結晶インゴットからのシリコンウェーハの切断(スライシング)、面取り加工、粗研磨(例えばラッピング)、エッチング、鏡面研磨(仕上げ研磨)、上記加工工程間または加工工程後に行われる洗浄を含む製造工程により製造することができる。また、アニールウェーハは、上記のように製造されたポリッシュドウェーハにアニール処理を施して製造することができる。エピタキシャルウェーハは、上記のように製造されたポリッシュドウェーハの表面にエピタキシャル層を気相成長(エピタキシャル成長)させることにより製造することができる。半導体ウェーハロットに含まれる半導体ウェーハの総数は特に限定されるものではない。製造された半導体ウェーハロットから抜き出し、いわゆる抜き取り検査に付す半導体ウェーハの数は少なくとも1つであり、2つ以上であってもよく、その数は特に限定されるものではない。
【0035】
半導体ウェーハロットから抽出された半導体ウェーハは、本発明の一態様にかかる評価方法によって、ウェーハ表面と、この表面と隣接する面取り面との境界部の形状が評価される。評価方法の詳細は、先に記載した通りである。そして評価の結果、良品と判定された半導体ウェーハと同じ半導体ウェーハロットの半導体ウェーハを、製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付す。良品と判定するための基準は、製品半導体ウェーハに求められる品質に応じて決定すればよい。例えば一態様では、先に記載したようにウェーハ表面と面取り面との境界部の形状に円をフィッティングさせて作成した円のサイズが、ある値以上(即ち閾値以上)であることを、良品と判定するための基準とすることができる。または、所望の境界部形状を有する標準サンプルの拡大像と、半導体ウェーハロットから抜き出した評価対象の半導体ウェーハについて作成された拡大像とを目視で対比して、標準サンプルの境界部の形状と評価対象の半導体ウェーハの境界部の形状とが近似していることを目視で判断して、良品と判定することもできる。次いで、良品と判定された半導体ウェーハと同じロットの1つ以上の半導体ウェーハが、製品半導体ウェーハとして出荷するための準備に付される。この準備としては、例えば梱包等を挙げることができる。こうして第一の製造方法によれば、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状が製品半導体ウェーハに望まれる形状である半導体ウェーハを、安定的に量産することが可能となる。
【0036】
(第二の製造方法)
第二の製造方法について、テスト製造条件および実製造条件としては、半導体ウェーハの製造のための各種工程における各種条件を挙げることができる。半導体ウェーハの製造のための各種工程については、先に第一の製造方法について記載した通りである。なお、「実製造条件」とは、製品半導体ウェーハの製造条件を意味するものとする。
【0037】
第二の製造方法では、実製造条件を決定するための前段階として、テスト製造条件を設定し、このテスト製造条件下で評価用半導体ウェーハを製造する。製造された半導体ウェーハは、本発明の一態様にかかる評価方法によって、ウェーハ表面と、この表面と隣接する面取り面との境界部の形状が評価される。評価方法の詳細は、先に記載した通りである。評価用半導体ウェーハは、少なくとも1つであり、2つ以上であってもよく、その数は特に限定されるものではない。評価の結果、評価用半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状が、製品半導体ウェーハに望まれる形状であれば、このテスト製造条件を実製造条件として製品半導体ウェーハを製造して出荷することにより、ウェーハ表面と面取り面との形状が所望の形状である製品半導体ウェーハを、安定的に量産することができる。他方、評価の結果、評価用半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状が、製品半導体ウェーハに望まれる形状とは異なる場合には、テスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定する。変更を加える製造条件は、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状に影響を及ぼすと考えられる製造条件であることが好ましい。そのような製造条件の一例としては、半導体ウェーハの表面(おもて面および/または裏面)の研磨条件を挙げることができる。かかる研磨条件の具体例としては、粗研磨条件および鏡面研磨条件を挙げることができ、より詳しくは、研磨液の種類、研磨液の砥粒濃度、研磨パットの種類(例えば硬さ等)等を挙げることができる。また、製造条件の一例としては、面取り加工条件を挙げることもでき、詳しくは、面取り加工における研削、研磨等の機械加工条件を挙げることができ、より詳しくは、面取り加工に用いる研磨テープの種類等を挙げることができる。こうしてテスト製造条件に変更を加えた製造条件を実製造条件として決定し、この実製造条件下で製品半導体ウェーハを製造し出荷することにより、ウェーハ表面と面取り面との形状が所望の形状である製品半導体ウェーハを、安定的に量産することができる。なおテスト製造条件に変更を加えた製造条件下で改めて評価用半導体ウェーハを製造し、この評価用半導体ウェーハを本発明の一態様にかかる評価方法により評価して、この製造条件を実製造条件とするか更に変更を加えるかを判定することを、1回または2回以上繰り返してもよい。
以上の第二の製造方法において、評価用半導体ウェーハのウェーハ表面と面取り面との境界部の形状が製品半導体ウェーハに望まれる形状であるか否かの判定方法については、先に第一の製造方法の良品の判定に関する記載を参照できる。
【0038】
第一の製造方法および第二の製造方法のその他の詳細については、半導体ウェーハの製造方法に関する公知技術を適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明を実施例に基づき更に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0040】
1.評価用半導体ウェーハの準備
ウェーハ表面の研磨条件および面取り加工条件が異なる二種類の半導体ウェーハ(直径300mmの表面が(100)面のポリッシュドウェーハ)を準備した。以下において、一方の半導体ウェーハを「サンプル1」、他方の半導体ウェーハを「サンプル2」と記載する。
【0041】
2.断面観察用試料の作製
サンプル1およびサンプル2を、それぞれ(110)面でへき開して断面観察用試料を作製した。
【0042】
3.断面像の取得
上記2.で作製した断面観察用試料を、微分干渉顕微鏡を用いて、明るさやコントラストを調整して、ウェーハの表面(おもて面)と隣接する面取り面との境界部を含む断面像(撮像倍率:500倍)を取得した。取得した断面像を図1に示す。
【0043】
4.拡大像の作成
上記3.で取得した断面像を画像処理ソフト(Adobe社製ソフト名Photoshop CS5)に取り込み、ウェーハ厚み方向のみに2〜30倍に拡大した後、二値化処理を行った。二値化処理後の拡大像を、図3図10に示す。図2に、上記3.で取得した断面像を、拡大せずに上記と同じく二値化処理のみ行った二値化処理済像を示す。
【0044】
5.円フィッティング
上記4.で作成した各像をソフト(マイクロソフト社製パワーポイント)に取り込み、同ソフトの図形描画ツールを用いて、断面形状の輪郭上、ウェーハ表面と面取り面との境界部の曲線の形状と円弧の形状がほぼ一致する円を描画した。曲線の形状と円弧の形状がほぼ一致することは、目視で判断した。図2図10には、こうして描画された円または円の一部も示した。各図の円の中に記載されている数字は、円の直径である。
また、図2図10中、最左に記載されている倍率は、ウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大倍率である。例えば図3には、ウェーハ厚み方向のみに2倍の拡大倍率で拡大した拡大像が示されているため、図3の最左には、「×2」と表記されている。図2には上記3.で取得した断面像(拡大なし)の二値化処理済像が示されているため、図1の最左には、「×1」と表記されている。
一方、図2図10中、最右に記載されている数値は、サンプル2について描画された円の直径の、サンプル1について描画された円の直径に対する比(サンプル2について描画された円の直径/サンプル1について描画された円の直径)である。
【0045】
図2に示されたサンプル1の断面像とサンプル2の断面像を対比しても、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状の違いは目視では確認困難である。また、図2の最右に記載されている比の値が1をわずかに超える程度であることからわかるように、サンプル1について描画された円の直径とサンプル2について描画された円の直径の違いもわずかである。
これに対し、図2に示されている拡大なしの二値化処理像と、図3図10に示されている拡大像との対比から、断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大することにより、サンプル1とサンプル2のウェーハ表面と面取り面との境界部の形状の違いをウェーハ表面に対して強調することができ、境界部の形状の違いを目視で確認することが容易になることがわかる。
更に、図2の最右に記載されている比の値と、図3図10の最右に記載されている比の値との対比から、断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大することにより、ウェーハ表面と面取り面との境界部の曲線形状にフィッティングさせた円のサイズ(直径)の違いが大きくなり、境界部の形状の違いがわずかであっても、その違いを円のサイズを指標として判定することが容易になることが確認できる。
【0046】
拡大倍率については、図2図10の対比から、ウェーハ厚み方向における拡大倍率を4倍以上とすると、ウェーハ1とウェーハ2のウェーハ表面と面取り面との境界部の形状の違いが目視で容易に確認できることがわかる。
一方、図11は、図2図10の最右に記載されている比の値とウェーハ厚み方向における拡大倍率との関係を示すグラフである。図11のグラフから、拡大倍率が4倍以上になると比の値が単調に増加することが確認できる。また、図11のグラフから、拡大倍率が15倍を超えると比の値の増加の程度が小さくなることが確認できる。また、ウェーハ厚み方向における拡大倍率が20倍(図9)または30倍(図10)の拡大像では、他の拡大像と比べて、ウェーハ表面側の凹凸が大きい(画像のウェーハ表面側が他の拡大像と比べてぼやけている)。これらのことから、ウェーハ厚み方向の形状の情報をより正確に得る観点からは、ウェーハ厚み方向における拡大倍率は、15倍以下が好ましいと考えられる。
以上の結果から、ウェーハ厚み方向における拡大倍率は、4倍以上15倍以下であることが好適であると判断できる。
【0047】
以上の通り、評価対象の半導体ウェーハの断面像をウェーハ厚み方向のみに拡大した拡大像を用いることにより、ウェーハ表面と面取り面との境界部の形状を簡便に評価することができ、またわずかな違いも精度よく評価できることが確認された。
このような評価の結果は、先に記載したようにロットからの抜き取り検査に用いることができ、半導体ウェーハの実製造条件の決定のために用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、シリコンウェーハ等の各種半導体ウェーハの製造分野において有用である。
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