(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、紫外域において光吸収帯を有する接着剤で発光層と透明基板(支持基板)を接合した基板をレーザーでスクライブするスクライブ・ブレーキング工程において、可視透明接着剤がレーザーエネルギーを吸収し、破壊され、接合部から剥離することを抑制した発光素子の製造方法の開発が求められていた。
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、半導体基板から発光素子をダイス状に分離するためにレーザー光によりスクライブ・ブレーキング工程を行う発光素子の製造方法において、スクライブ・ブレーキング工程においてスクライブする領域の接着剤を予め除去して接着層が存在しないようにすることで、接合部からの剥離を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明は、発光素子の製造方法であって、
(1)出発基板上に、エピタキシャル成長により、第一半導体層、活性層、及び第二半導体層が順次積層された発光層部を含む積層構造を形成し、発光素子用ウェーハを作製する工程、
(2)支持基板を準備する工程、
(3)前記支持基板を、接着層を介して前記発光素子用ウェーハに接着し、接合基板を作製する工程、
(4)前記接合基板において、前記出発基板を除去して、前記第一半導体層を露出させる工程、
(5)前記接合基板の一部の領域において、少なくとも前記第一半導体層及び活性層を除去し、除去部を形成する工程、
(6)前記第一半導体層の表面に第一オーミック電極を、前記除去部の表面に第二オーミック電極を形成する工程、及び
(7)レーザー光によるスクライブ・ブレーキング法を用いて前記接合基板から発光素子をダイス状に分離する工程、
を含み、かつ、スクライブを行う前に、予めスクライブ領域にある前記接着層を除去しておく発光素子の製造方法である。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
[工程(1)]
工程(1)は、出発基板上に、エピタキシャル成長により、第一半導体層、活性層、及び第二半導体層が順次積層された発光層部を含む積層構造を形成し、発光素子用ウェーハを作製する工程である。
【0023】
工程(1)で作製する発光素子用ウェーハは、第一半導体層、活性層、及び第二半導体層が順次積層された発光層部を含み、発光層部の他にも、例えば、発光層部と出発基板との間にエッチストップ層を形成することができる。また、発光層部の上に、さらに中間組成層、GaP電流拡散層、第一誘電体膜等を形成することができる。そして発光素子用ウェーハは、これらの層の一番上に、後述の支持基板と発光素子用ウェーハを接合するための第一接着層を有するものとすることができる。本発明では、これらの層を、出発基板の上に順次積層することで、発光素子ウェーハを作製することができる。出発基板としては特に限定されないが、GaAsやGe基板とすることができ、第一半導体層、活性層、第二半導体層としてはAlGaInP系のものとすることができる。
【0024】
[工程(2)]
工程(2)は、支持基板を準備する工程である。
【0025】
工程(2)で準備する支持基板は少なくとも可視透明基板からなる。可視透明基板としては、サファイア基板、石英基板等を用いることができる。可視透明基板の上には誘電体膜を、その上には上述の発光素子用ウェーハと支持基板を接合するための第二接着層を形成することができる。
【0026】
また、工程(2)において、支持基板を第二接着層を有するものとする場合、フォトリソグラフィー法等により第二接着層を所望のパターンに加工することによって、スクライブ領域にある接着層を除去することができる。
【0027】
[工程(3)]
工程(3)は、支持基板を、接着層を介して発光素子用ウェーハに接着し、接合基板を作製する工程である。
【0028】
このとき、支持基板、もしくは発光素子ウェーハの少なくともいずれか一方を、接着層を有するものとすることが好ましい。ここで用いることができる接着剤としては、特に限定されずBCB、エポキシ系樹脂、塩ビ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン等が挙げられる。
【0029】
[工程(4)]
工程(4)は、接合基板において、出発基板を除去して、第一半導体層を露出させる工程である。
【0030】
工程(4)では、接合基板が有する出発基板をエッチング等により除去する。さらに、エッチストップ層があれば、エッチストップ層も除去することができる。これらの層を除去することにより、第一半導体層を露出させる。
【0031】
[工程(5)]
工程(5)は、接合基板の一部の領域において、少なくとも第一半導体層及び活性層を除去し、除去部を形成する工程である。
【0032】
工程(5)では、少なくとも第一半導体層や活性層を切り欠いて除去し、除去部を形成する。また、第一半導体層と活性層だけではなく、可視透明基板のみを残し、全ての層を切り欠いて除去して、除去部を形成してもよい。
【0033】
[工程(6)]
工程(6)は、第一半導体層の表面に第一オーミック電極を、除去部の表面に第二オーミック電極を形成する工程である。
【0034】
工程(6)では、例えば、以下の方法で電極を形成することができる。まず、工程(5)で除去部を形成した接合基板の表面に誘電体層を形成する。次に、フォトリソグラフィー法及びウェットエッチング法により、誘電体層に開口部(第一半導体層及び除去部が露出した部分)を形成する。そして開口部において、第一半導体層表面に第一オーミック電極を、除去部の表面に第二オーミック電極を形成する。
【0035】
[工程(7)]
工程(7)は、レーザー光によるスクライブ・ブレーキング法を用いて前記接合基板から発光素子をダイス状に分離する工程である。
【0036】
工程(7)では、まず、スクライブ領域内では、可視透明基板のみを残し、全ての層を除去する。工程(2)でスクライブ領域にある接着層を除去していない場合には、ここで接着層の除去も同時に行うことができる。
【0037】
次に、
図1に示すように、接着層(第一接着層10及び第二接着層15)を除去して可視透明基板13が露出したスクライブ領域においてレーザー光によるスクライブ部28を形成した後、ブレーキングを行い、発光素子をダイス状に分離する。
【0038】
以上のような発光素子の製造方法とすれば、スクライブ・ブレーキング工程においてスクライブする領域に接着層が存在しないようにすることで、接着剤が破壊され、接合部から剥離するのを抑制することができる。
【0039】
また、予めスクライブ領域にある接着層を除去するのは、スクライブを行う前であればいつでもよいが、工程(7)においてスクライブを行う直前、もしくは工程(2)で支持基板を準備するときとすれば、比較的容易に行うことができる。また、接着剤が存在しない領域の幅を、スクライブ方向に対して垂直な方向で20μm以上とすることで、確実に接着層にレーザー光を照射しないで済むことから、劇的な剥離改善効果が得られる。
【0040】
以下、第一の実施形態と第二の実施形態を用いて、本発明の発光素子の製造方法を、図を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
[第一実施形態]
[工程(1)]
最初に本発明の第一実施形態について説明する。
図2に示すように、発光素子用ウェーハ1を、例えば[001]方向に15度傾斜したGaAs基板(出発基板)2上に有機金属気相成長法(MOVPE)法にて、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.1〜1.0μmのエッチストップ層3、厚さ0.5〜1.0μmの第一導電型第一半導体層4、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.1〜1.0μmの活性層5、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.5〜1.0μmの第二導電型第二半導体層6、Ga
yIn
1−yP(0.0≦y≦1.0)から成る中間組成層7、0.5〜20μmの厚さを有するGaP電流拡散層8を順次積層して形成することができる。
【0042】
発光素子用ウェーハ1の作製方法はMOVPEに限定されるものではなく、分子線エピタキシー(MBE)法や、化学線エピタキシー(CBE)法で作製してもよい。また、図示しないが、GaAs基板と第一半導体層の間にバッファ層を設けてもよい。
【0043】
また、
図3に示すように、発光素子用ウェーハ1は、GaP電流拡散層8の上にさらにSiO
2あるいはSiN
xからなる第一誘電体膜9を例えば厚さ0.4μmにて形成し、その上にBCB接着剤をスピンコートにて塗布した第一接着層10を形成することで第一接合層11を有するものとすることができる。第一接着層の厚さはBCB接着剤の粘度とスピンコート時回転数によって変わるが、例えば回転数5000rpmにて0.5μm程度の第一接着層10を形成することができる。本実施形態では第一接合層11を設けたが、本発明に用いる発光素子用ウェーハは、第一接合層11を有しない構造、あるいは第一誘電体膜9を有しない構造、もしくは第一接着層10を有しない構造でもよい。
【0044】
[工程(2)]
支持基板30は、
図4に示すように、サファイアあるいは石英等の可視透明基板13上に例えばSiO
2あるいはSiN
xからなる誘電体膜14を形成し、その上にさらに、例えばBCB樹脂からなる接着剤を塗布して第二接着層15を形成することで、第二接合層12を有するものとすることができる。第二接着層15の厚さはBCB接着剤の粘度とスピンコート時回転数によって変わるが、本実施形態では回転数5000rpmにて0.5μm程度の第二接着層15を形成することができる。なお、第一接着層10を形成した場合、第二接着層15を設けなくともよいし、また、第二接着層15を形成した場合、第一接着層10を設けなくともよく、両方に形成してもよい。また、接着剤としてBCB樹脂の他に、エポキシ等の他の透明かつ常温で液状の部材で第一接着層10及び第二接着層15を形成してもよい。
【0045】
[工程(3)]
次に
図5に示すように第一接着層10と第二接着層15を対向させ、かつ、真空もしくは減圧雰囲気下で圧力と熱を加えることで第一接着層10と第二接着層15を接着した接合基板16を形成する。圧力は6N/cm
2以上、温度は100℃以上の条件で圧着することで接着することができる。特に30N/cm
2、300℃に達する条件で接合することが好適である。
【0046】
[工程(4)]
次に
図6に示すように接合基板16よりGaAs基板2を化学的エッチングにより除去する。化学的エッチング液はAlGaInP系材料とエッチング選択性があるものが好ましく、一般にはアンモニア含有エッチャントで除去する。GaAs基板2を除去した後、エッチストップ層3を除去し、第一半導体層露出面(第一の面)18を有する接合基板17とする。なお、エッチストップ層3は、AlGaInP系材料をエッチングする過酸化水素と酸との混合液にて除去する。
【0047】
[工程(5)]
次に
図7に示すように接合基板17より第一半導体層露出面18の一部を切り欠き、除去部(第二の面)19を形成する。この態様では、第一半導体層4と活性層5を除去し、第二半導体層6を露出させている。
【0048】
[工程(6)]
次に
図8に示すように切り欠かれた側面20を被覆するように、誘電体層21を形成し、開口部22を設ける。誘電体層21はSiO
2又はSiN
xが好適である。誘電体層の製膜には、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法いずれの方法も選択できる。開口部22は誘電体層21を成膜後、フォトリソグラフィー法によりマスク部を形成し、BHFによるウェットエッチング法にて露出部を形成することにより設けることができる。
【0049】
次に
図9に示すように第一半導体層露出面18の一部に第一オーミック電極23、除去部19の一部に第二オーミック電極24を形成する。
【0050】
[工程(7)]
次に
図10に示すようにフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーにより、第一半導体層露出面18全体と除去部19の一部を被覆する被覆部25と開口部26を形成する。
【0051】
次に
図11に示すようにドライエッチング法にて開口部26を除去し、可視透明基板13の一部27を露出させる。ここでのドライエッチングにより、スクライブ領域にある接着層が除去されることになる。AlGaInP層の除去は、ICP装置内で、Cl含有ガスとArの混合雰囲気にて行い、SiO
2もしくはSiN
xの誘電体層とBCB層の除去はF含有ガスとArの混合雰囲気にて行うことができる。圧力雰囲気は0.5Pa、出力はプラズマ300Wとすることができる。Cl含有ガスを使用する層の除去とF含有ガスを使用する層の除去は、別々のチャンバーで行うこともできるし、真空雰囲気からウェーハを取り出すことなく、ガスの切替のみで同一チャンバー内にて実施することもできる。
【0052】
次に
図12に示すように、露出部27形成後、フォトレジストによる被覆部25を除去する。被覆部25を除去後、露出部27にレーザーを照射してスクライブ部28を形成する。そしてスクライブ部28に沿ってブレーキング処理を実施し、ダイス化する。
【0053】
このような第一実施形態の方法であればレーザー照射領域に接着剤層が存在しないため接着剤がレーザーエネルギーを吸収し、破壊され、接合部から剥離することを抑制した発光素子を比較的容易に製造することができる。
【0054】
[第二実施形態]
[工程(1)]
次に本発明の第二実施形態について説明する。
図13に示すように発光素子用ウェーハ1を、[001]方向に15度傾斜したGaAs基板(出発基板)2上に有機金属気相成長法(MOVPE)法にて、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.1〜1.0μmのエッチストップ層3、厚さ0.5〜1.0μmの第一導電型第一半導体層4、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.1〜1.0μmの活性層5、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1,0.4≦y≦0.6)からなる厚さ0.5〜1.0μmからなる第二導電型第二半導体層6、Ga
yIn
1−yP(0.0≦y≦1.0)から成る中間組成層7、0.5〜20μmの厚さを有するGaP電流拡散層8を順次積層して形成することができる。
【0055】
発光素子用ウェーハ1の作製方法はMOVPEに限定されるものではなく、分子線エピタキシー(MBE)法や、化学線エピタキシー(CBE)法で作製してもよい。また、図示しないが、GaAs基板と第一半導体層の間にバッファ層を設けてもよい。
【0056】
また、
図14に示すように発光素子用ウェーハ1を、GaP電流拡散層8の上に例えばSiO
2あるいはSiN
xからなる第一誘電体膜9を厚さ0.4μm程度にて形成して第一接合層11を有するものとすることができる。本実施形態では第一接合層11を設けたが、第一接合層11を有しない構造でもよい。
【0057】
[工程(2)]
支持基板30は、
図15に示すようにサファイアあるいは石英等の可視透明基板13上にSiO
2あるいはSiN
xからなる誘電体膜14を形成し、その上にさらにBCB接着剤を塗布した接着層15´を形成することで第二接合層12を有するものとすることができる。接着層15´の厚さはBCB接着剤の粘度とスピンコート時回転数によって変わるが、例えば回転数5000rpmにて0.5μmの接着層15´を形成することができる。
【0058】
次に
図16に示すように接着層15´を所望のパターン29の形状に加工する。この段階で、スクライブ領域にある接着層が除去されることになる。接着層15´として、BCB材料のうち、感光性材料を選択した場合、フォトリソグラフィー法により所望のパターン29を得ることができる。また、接着層15´としてBCB材料のうち、非感光性材料を選択した場合、フォトレジスト法により所望のパターンとなるようにレジストを被覆し、F含有ガス雰囲気のICP装置にて所望のパターン29を得ることができる。ここでパターン29の形状及び大きさは求める発光素子の大きさと接着層15´の厚さによって制約を受ける。パターン29の形状及び大きさは、求める発光素子の大きさと開口部26の差以下となる。
【0059】
[工程(3)]
次に
図17に示すように第一接合層11と第二接合層12を対向させ、かつ、真空又は減圧雰囲気下で圧力と熱を加えることで第一接合層11と第二接合層12を接着した接合基板16を形成する。圧力を6N/cm
2以上、温度を100℃以上の条件で圧着することで接着することができる。特に30N/cm
2、300℃に達する条件で接合することが好適である。
【0060】
[工程(4)]
次に
図18に示すように接合基板16よりGaAs基板2を化学的エッチングにより除去する。化学的エッチング液はAlGaInP系材料とエッチング選択性があるものが好ましく、一般にはアンモニア含有エッチャントで除去する。GaAs基板2を除去した後、エッチストップ層3を除去し、第一半導体層露出面18を有する接合基板17を形成する。なお、エッチストップ層3はAlGaInP系材料をエッチングする過酸化水素と酸との混合液にて除去する。
【0061】
[工程(5)]
次に
図19に示すように接合基板17より、パターン29を超えない範囲で第一半導体層露出面18を残留させ、かつ、第一半導体層露出面18の一部を切り欠き、除去部19を形成する。
【0062】
[工程(6)]
次に
図20に示すように切り欠かれた側面20を被覆するように、誘電体層21を形成し、開口部22を設ける。誘電体層21はSiO
2又はSiN
xが好適である。誘電体層の製膜には、ゾルゲル法、スパッタ法、CVD法いずれの方法も選択できる。開口部22は誘電体層21を成膜後、フォトリソグラフィー法によりマスク部を形成し、BHFによるウェットエッチング法にて露出部を形成することにより設けることができる。
【0063】
次に
図21に示すように第一半導体層露出面18の一部に第一オーミック電極23、除去部19の一部に第二オーミック電極24を形成する。
【0064】
[工程(7)]
次に
図22に示すようにフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーにより、第一半導体層露出面18全体と除去部19の一部を被覆する被覆部25と開口部26を形成する。
【0065】
次に
図23に示すようにドライエッチング法にて開口部26を除去し、可視透明基板13の一部27を露出させる。AlGaInP層の除去は、ICP装置内で、Cl含有ガスとArの混合雰囲気にて行い、SiO
2もしくはSiN
xの誘電体層とBCB層の除去はF含有ガスとArの混合雰囲気にて行なうことができる。圧力雰囲気は0.5Pa、出力はプラズマ300Wとすることができる。Cl
2含有ガスを使用する層の除去とF含有ガスを使用する層の除去は、別々のチャンバーで行うこともできるし、真空雰囲気からウェーハを取り出すことなく、ガスの切替のみで同一チャンバー内にて実施することもできる。
【0066】
次に
図24に示すように、露出部27形成後、フォトレジストによる被覆部25を除去する。被覆部25を除去後、露出部27にレーザーを照射してスクライブ部28を形成する。そしてスクライブ部28に沿ってブレーキング処理を実施し、ダイス化する。
【0067】
このような第二実施形態の方法であってもレーザー照射領域に接着剤層が存在しないため接着剤がレーザーエネルギーを吸収し、破壊され、接合部から剥離することを抑制した発光素子を比較的容易に製造することができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
[実施例1]
図2〜
図12に示すような本発明の発光素子の製造方法の第一実施形態に基づいて、発光素子の製造を行った。
【0070】
まず、発光素子用ウェーハの作製を行った。出発基板としてGaAs(001)からなる基板(出発基板)を準備し、この基板上に、機能層たるダブルヘテロ層(発光層)をMOVPE法にて形成した。発光層は、下部クラッド層(第一半導体層)、活性層、上部クラッド層(第二半導体層)を順次積層したものとした。
【0071】
第一半導体層及び第二半導体層は、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0.6≦x≦1.0、0.4≦y≦0.6)の組成が選択され、本実施例では、第一半導体層として、n型AlInPクラッド層を0.7μm(ドーピング濃度3.0×10
17/cm
3)、n型Al
0.85GaInP層を0.3μm(ドーピング濃度1.0×10
17/cm
3)の2層構造とした。
【0072】
活性層は、(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0.15≦x≦0.8、0.4≦y≦0.6)から選択され、波長によって組成x及びyは変更した。本実施例において活性層は、多重活性層を用いた。活性層及び障壁層の膜厚は求める波長により変更され、それぞれ4〜12nmの範囲で波長に合わせて調整した。
【0073】
第二半導体層として、p型AlInPクラッド層を0.9μm(ドーピング濃度3.0×10
17/cm
3)、p型Al
0.6GaInP層を0.1μm(ドーピング濃度1.0×10
17/cm
3)の2層構造とした。
【0074】
発光層上には、GaInPからなる緩衝層を成膜した。次に緩衝層上にSiO
2からなる誘電体膜を厚さ0.4μmにて形成し、その上にBCB接着剤をスピンコートにて塗布して第一接着層を形成した。
【0075】
次に、支持基板の準備を行った。まず、サファイア上にSiO
2からなる誘電体膜を形成し、その上にBCB樹脂からなる接着剤を塗布した第二接着層を形成した。
【0076】
次に発光用ウェーハと支持基板を接合するため、第一接着層と第二接着層を接着した。その後、GaAs基板をアンモニア含有エッチャントにより除去した。引き続きエッチストップ層を除去し、第一半導体層を露出させた。次に第一半導体層及び活性層の一部を切り欠き、第二半導体の一部を露出させた。
【0077】
次に切り欠かれた側面を被覆するように、誘電体層を形成し、開口部を設けた。誘電体層はSiO
2とし、TEOSとO
2を使用するP−CVD法にて製膜した。開口部は誘電体層を成膜後、フォトリソグラフィー法によりマスク部を形成し、BHFによるウェットエッチング法にて露出部を形成することで設けた。
【0078】
次に第一オーミック電極、第二オーミック電極を形成した。その後、フォトリソグラフィー及びドライエッチング法にて、可視透明基板の一部を露出させた。このとき露出部の幅(スクライブ方向と垂直な方向)を5,10,15,20,25,30μmとした。AlGaInP層の除去は、ICP装置内で、Cl含有ガスとArの混合雰囲気にて行い、SiO
2の誘電体層とBCB層の除去はF含有ガスとArの混合雰囲気にて行なった。圧力雰囲気は0.5Pa、出力はプラズマ300Wとした。
【0079】
露出部形成後、フォトレジストを除去し、レーザーを照射してスクライブ部を形成した。スクライブ部に沿ってブレーキング処理を実施し、ダイス化した。このとき接着剤による接合部が剥離した面積と露出部の幅(ストリート部幅)の関係を
図28に示す。後述する比較例(幅0μm)に比べ、いずれの露出部の幅とした場合にも、剥離面積が減少しているのが判る。特に幅が20μm以上の場合には剥離が劇的に改善した。
【0080】
[実施例2]
図13〜
図24に示すような本発明の発光素子の製造方法の第二実施形態に基づいて、発光素子の製造を行った。接着剤を所望のパターン形状に加工してから透明基板を貼り合わせることを除き、実施例1と同様な方法で発光素子を製造した。
図28に剥離状況の結果を示す。実施例2においても、実施例1と同様な結果が得られた。
【0081】
[比較例]
図25〜
図27に示すような従来の方法を用いて、発光素子の製造を行った。接着剤が存在する領域でスクライブを行ったことを除いて実施例1と同様な方法で発光素子を製造した。
図28に剥離状況の結果を示す。実施例1、2に比べて剥離面積が大きいことが判る。
【0082】
以上のように、本発明の発光素子の製造方法であれば、紫外域において光吸収帯を有する接着剤で発光層と透明基板を接合した基板をレーザーでスクライブするスクライブ・ブレーキング工程において、可視透明接着剤がレーザーエネルギーを吸収し、破壊され、接合部から剥離することを抑制することができることが明らかになった。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。