(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チョクラルスキー法により引き上げられたシリコン単結晶のインゴットを切断し、外周研削を行って、シリコン単結晶のインゴットブロックを製造するインゴットブロックの製造方法であって、
前記インゴットの長手方向に沿った1以上の箇所で、前記インゴットの径方向中心位置を計測する工程と、
計測された前記インゴットの径方向中心位置のずれ量が、所定の偏芯量以下となる基準位置を設定する工程と、
設定された基準位置に基づいて、前記インゴットをインゴットブロックに切断する工程と、
切断されたそれぞれのインゴットブロックの外周研削を行う工程と、
を実施することを特徴とするインゴットブロックの製造方法。
チョクラルスキー法により引き上げられたシリコン単結晶のインゴットを切断して、シリコン単結晶のインゴットブロックを製造するインゴットブロックの製造装置であって、
前記インゴットが載置される載置台と、
前記載置台上のインゴットの長手方向に沿って移動可能に設けられる計測器と、
前記載置台上のインゴットの長手方向に沿って移動可能に設けられる切断機と、
前記計測器および前記切断機の移動制御を行う制御器と、を備え、
前記計測器は、
前記インゴットの外周面の端部にレーザ光を照射し、照射後のレーザ光を検出して、前記インゴットの外周面の端部位置を検出する外周端面位置検出部と、
前記外周端面位置検出部により検出された前記インゴットの外周面の端部位置に基づいて、前記インゴットの径方向中心位置を演算する中心位置演算部と、を備え、
前記制御器は、
前記計測器を移動させて、インゴットの長手方向の1以上の箇所で前記インゴットの径方向中心位置を計測させる計測位置移動制御部と、
前記インゴットの長手方向のそれぞれの箇所で、前記中心位置演算部により演算された径方向中心位置のずれ量が、所定の偏芯量以下となる基準位置を設定する基準位置設定部と、
前記基準位置設定部により設定された基準位置に、前記切断機を移動させて、前記インゴットの切断を行う切断位置移動制御部と、
を備えていることを特徴とするインゴットブロックの製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の技術では、インゴットの状態で外周研削を行っているため、インゴットに、いわゆるくねりと呼ばれるインゴットの径方向中心位置に偏芯が生じることがある。このようなインゴットを所望の位置でインゴットブロックに切断し、外周研削を行うと、径方向中心位置の偏芯に伴い、低酸素濃度領域にも偏芯が生じるため、インゴットブロックの低酸素濃度領域が増加してしまう。
そして、低酸素濃度領域が増加したインゴットブロックを、スライスして半導体ウェーハを製造すると、半導体ウェーハの外周部の低酸素濃度領域が多くなり、デバイスプロセスにおけるスリップ転位起因の不良のリスクが高くなるという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、デバイスプロセスにおけるスリップ転位起因の不良の発生リスクが低減された半導体ウェーハを製造することのできるインゴットブロックの製造方法、半導体ウェーハの製造方法、およびインゴットブロックの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインゴットブロックの製造方法は、チョクラルスキー法により引き上げられたシリコン単結晶のインゴットを切断し、外周研削を行って、シリコン単結晶のインゴットブロックを製造するインゴットブロックの製造方法であって、前記インゴットの長手方向に沿った1以上の箇所で、前記インゴットの径方向中心位置を計測する工程と、計測された前記インゴットの径方向中心位置のずれ量が、所定の偏芯量以下となる基準位置を設定する工程と、設定された基準位置に基づいて、前記インゴットをインゴットブロックに切断する工程と、切断されたそれぞれのインゴットブロックの外周研削を行う工程と、を実施することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、インゴットの長手方向に沿った複数箇所で、インゴットの径方向中心位置を計測しているため、インゴットの長手方向位置に応じて、インゴットの径方向中心位置のずれ量を把握することができる。したがって、径方向中心位置のずれ量が、基準位置に対して、所定の偏芯量以下となる径方向中心位置で、インゴットブロックに切断して、インゴットブロック内の径方向中心位置のずれ量を所定の偏芯量以下とすることができる。
【0010】
そして、径方向位置のずれ量が所定の偏芯量以下となるインゴットブロックを外周研削することにより、インゴットブロックの外周部の低酸素濃度領域を少なくすることができる。したがって、このようなインゴットブロックをスライスして半導体ウェーハを製造することにより、デバイスプロセスにおけるスリップ転位起因の不良の発生リスクを低減することができる。
【0011】
本発明では、前記径方向中心位置を計測する工程は、前記インゴットを周方向に回転させて計測するのが好ましい。
この発明によれば、インゴットを回転させて計測することにより、径方向中心位置がどの方向に偏芯しているかを把握することができる。したがって、インゴットの偏芯方向を把握できるため、より高精度にインゴットの径方向中心位置を計測することがすることができる。
【0012】
本発明では、前記所定の偏芯量Δ(mm)は、引き上げ後の前記インゴットの直径をD1(mm)、前記インゴットから製造される半導体ウェーハの直径をD2(mm)としたときに、下記式(1)で与えられるのが好ましい。
(D1−D2)/2−Δ≧3(mm)・・・(1)
インゴットの外周端部に生じる低酸素濃度領域は、インゴットの外周端部から所定の径方向深さに生じる。したがって、式(1)を満たす所定の偏芯量Δとすることにより、低酸素濃度領域を確実に除去することができる。
【0013】
本発明の半導体ウェーハの製造方法は、前述したいずれかのインゴットブロックの製造方法により、シリコン単結晶のインゴットブロックを製造する工程と、製造されたインゴットブロックをスライスして複数のウェーハを製造する工程と、を実施することを特徴とする。
この発明によれば、前述した作用および効果と同様の作用および効果を享受できる。
【0014】
本発明のインゴットブロックの製造装置は、チョクラルスキー法により引き上げられたシリコン単結晶のインゴットを切断して、シリコン単結晶のインゴットブロックを製造するインゴットブロックの製造装置であって、前記インゴットが載置される載置台と、前記載置台上のインゴットの長手方向に沿って移動可能に設けられる計測器と、前記載置台上のインゴットの長手方向に沿って移動可能に設けられる切断機と、前記計測器および前記切断機の移動制御を行う制御器と、を備え、前記計測器は、前記インゴットの外周面の端部にレーザ光を照射し、照射後のレーザ光を検出して、前記インゴットの外周面の端部位置を検出する外周端面位置検出部と、前記外周端面位置検出部により検出された前記インゴットの外周面の端部位置に基づいて、前記インゴットの径方向中心位置を演算する中心位置演算部と、を備え、前記制御器は、前記計測器を移動させて、インゴットの長手方向の1以上の箇所で前記インゴットの径方向中心位置を計測させる計測位置移動制御部と、前記インゴットの長手方向のそれぞれの箇所で、前記中心位置演算部により演算された径方向中心位置に基づいて、前記インゴットの切断位置の基準となる基準位置を設定する基準位置設定部と、前記基準位置設定部により設定された基準位置に、前記切断機を移動させて、前記インゴットの切断を行う切断位置移動制御部と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、前述したインゴットブロックの製造方法を、装置により自動的に実行できるため、インゴットブロックの製造の効率化、省力化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[1]シリコン単結晶の引き上げ装置1の構造
図1には、本発明の第1の実施形態に係るシリコン単結晶10の製造方法を適用できるシリコン単結晶の引き上げ装置1の構造の一例を表す模式図が示されている。引き上げ装置1は、チョクラルスキー法によりシリコン単結晶10を引き上げる装置であり、外郭を構成するチャンバ2と、チャンバ2の中心部に配置されるルツボ3とを備える。
ルツボ3は、内側の石英ルツボ3Aと、外側の黒鉛ルツボ3Bとから構成される二重構造であり、回転および昇降が可能な支持軸4の上端部に固定されている。
【0017】
ルツボ3の外側には、ルツボ3を囲む抵抗加熱式のヒーター5が設けられ、その外側には、チャンバ2の内面に沿って断熱材6が設けられている。
ルツボ3の上方には、支持軸4と同軸上で逆方向または同一方向に所定の速度で回転するワイヤなどの引き上げ軸7が設けられている。この引き上げ軸7の下端には種結晶8が取り付けられている。
【0018】
チャンバ2内には、ルツボ3内のシリコン融液9の上方で育成中のシリコン単結晶10を囲む円筒状の水冷体11が配置されている。
水冷体11は、たとえば、銅などの熱伝導性の良好な金属からなり、内部に流通される冷却水により、シリコン単結晶10を強制的に冷却する。この水冷体11は、育成中のシリコン単結晶10の冷却を促進し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸7方向の温度勾配を制御する役割を担う。
【0019】
さらに、水冷体11の外周面および下端面を包囲するように、筒状の熱遮蔽体12が配置されている。
熱遮蔽体12は、育成中のシリコン単結晶10に対して、ルツボ3内のシリコン融液9やヒーター5やルツボ3の側壁からの高温の輻射熱を遮断するとともに、結晶成長界面である固液界面の近傍に対しては、外部への熱の拡散を抑制し、単結晶中心部および単結晶外周部の引き上げ軸方向の温度勾配を制御する役割を担う。
また、熱遮蔽体12は、シリコン融液9からの蒸発物を炉上方から導入した不活性ガスにより、炉外に排気する整流筒としての機能もある。
【0020】
チャンバ2の上部には、アルゴンガス(以下、Arガスと称す)などの不活性ガスをチャンバ2内に導入するガス導入口13が設けられている。チャンバ2の下部には、図示しない真空ポンプの駆動により、チャンバ2内の気体を吸引して排出する排気口14が設けられている。
ガス導入口13からチャンバ2内に導入された不活性ガスは、育成中のシリコン単結晶10と熱遮蔽体12との間を下降し、熱遮蔽体12の下端とシリコン融液9の液面との隙間を経た後、熱遮蔽体12の外側、さらにルツボ3の外側に向けて流れ、その後にルツボ3の外側を下降し、排気口14から排出される。
【0021】
このような引き上げ装置1を用いてシリコン単結晶10を製造する際、チャンバ2内を減圧下の不活性ガス雰囲気に維持した状態で、ルツボ3に充填した多結晶シリコンなどの固形原料をヒーター5の加熱により溶融させ、シリコン融液9を形成する。
ルツボ3内にシリコン融液9が形成されると、引き上げ軸7を下降させて種結晶8をシリコン融液9に浸漬し、ルツボ3および引き上げ軸7を所定の方向に回転させながら、引き上げ軸7を徐々に引き上げ、これにより種結晶8に連なったシリコン単結晶10を育成する。
【0022】
[2]半導体ウェーハに低酸素濃度領域が生じる原因
前述したシリコン単結晶の引き上げ装置1によりシリコン単結晶10の引き上げを行った場合、引き上げられたシリコン単結晶10のインゴットの外周部分は、シリコン融液9の液面表層の低酸素融液が取り込まれやすい。
このため、半導体ウェーハの外周部分は、格子間酸素濃度[Oi]が低下する傾向が大きく、
図2に示すように、300mm径の半導体ウェーハの場合、ウェーハ中心から147mmを超える外周部分で格子間酸素濃度[Oi]が大きく低下している。
【0023】
このように、一般的に引き上げられたシリコン単結晶10のインゴットでは、径方向外側に向かうにしたがって、格子間酸素濃度[Oi]が低下し、インゴット表面に最も格子間酸素濃度[Oi]が低い領域が存在する。
そこで、シリコン単結晶10の外周研削を行うことにより、格子間酸素濃度[Oi]が低下している領域を除去することができるため、格子間酸素濃度[Oi]の低い領域が除去された最終製品である半導体ウェーハを得ることができる。
【0024】
ここで、シリコン単結晶10が偏芯することがない、または許容範囲の偏芯で引き上げられた場合、シリコン単結晶10のインゴットは、
図3(A)のA−A線断面図に示すように、結晶中心Oを中心として、格子間酸素濃度[Oi]の高酸素濃度領域の外周部分に、低酸素濃度領域が一様な厚さで形成される。
この場合、シリコン単結晶10のインゴットの状態で、一定の取り代で外周研削を行えば、研削後における低酸素濃度領域、たとえば、
図2における[Oi]変化率0.7〜0.8の部分を完全に削り取ることができる。
【0025】
これに対して、実際のシリコン単結晶10の引き上げでは、
図3(B)に示すように、シリコン単結晶10のインゴットにくねりが生じ、シリコン単結晶10の径方向に結晶中心の偏芯が生じることがある。
シリコン単結晶10のインゴットのくねりは、引き上げの狙い値に対して、引き上げ実績値がばらつくために生じ、主として引き上げ速度、結晶回転速度に起因する。
シリコン単結晶10のインゴットにくねりが生じていた場合、基準位置となる引き上げ開始位置における結晶中心O1に対して、
図3(B)のB−B線断面図のように引き上げ途中における結晶中心O2は径方向に偏芯してしまう。すると、結晶中心O2周りに一定の厚さ寸法で生じる低酸素濃度領域も偏芯してしまう。
【0026】
この状態でシリコン単結晶10のインゴットの外周研削を行うと、外周研削は、シリコン単結晶10のインゴット周りに、一定の取り代で行われる。したがって、シリコン単結晶10のインゴットは、外周研削を行うと、B−B線断面図の下部のように、取り代の大きな部分と、取り代の少ない部分が生じしてしまう。取り代の小さな部分では、取り代が少ないため、
図3(B)の領域10Aのように、低酸素濃度領域が残存してしまう。
【0027】
このようなシリコン単結晶10のインゴットをスライスして、半導体ウェーハを製造すると、ウェーハ外周部分に酸素濃度が非常に低い低酸素濃度領域の残存した半導体ウェーハが製造され、この低酸素濃度領域の残存に起因して、デバイスプロセスにおけるスリップ転位起因の不良のリスクが大きくなる。
そこで、本実施の形態では、シリコン単結晶10のインゴットの引き上げ方向に沿った複数箇所でインゴットの径方向中心位置、すなわち、結晶中心を計測し、計測結果に基づいて、インゴットブロックに切断する位置を決定することとした。
【0028】
[3]偏芯計測器20の構造
シリコン単結晶10のインゴットの径方向中心位置は、
図4に示す偏芯計測器20を使用することにより、計測することができる。偏芯計測器20は、載置台21、移動機構22、および計測部23を備える。
載置台21は、シリコン単結晶10のインゴットが載置される台であり、シリコン単結晶10の径方向寸法よりも若干小さな幅寸法と、シリコン単結晶10のインゴットの直胴部の長さ寸法と略同じ長手方向寸法とを有している。載置台21の上面には、載置台21の上面には、載置台21の長手方向に沿って複数の固定ローラ21Aが設けられている。
【0029】
移動機構22は、計測部23をシリコン単結晶10の長手方向に沿って移動可能に構成され、移動機構本体22Aおよび計測部取付部22Bを備える。
移動機構本体22Aは、載置台21がセットされる定盤上に、シリコン単結晶10のインゴットの長手方向に沿って移動自在に設けられる。移動機構本体22Aは、内部に演算機能が組み込まれたロボットとして構成され、計測部23によるインゴットの径方向中心位置の計測終了をトリガとして、移動制御を行う。
計測部取付部22Bは、移動機構本体22Aの上面から垂直方向に突出する柱状部材として構成される。計測部取付部22Bの上部には、計測部23が設けられる。
【0030】
計測部23は、シリコン単結晶10のインゴットの径方向中心位置を計測する。計測部23は、保持アーム23A、垂下部23B、レーザ光照射部23C、およびレーザ光受光部23Dを備える。
保持アーム23Aは、計測部取付部22Bの上部に設けられ、水平方向に延出している。
垂下部23Bは、保持アーム23Aから下方に垂下するように2本設けられ、シリコン単結晶10の径方向端部に配置される。なお、それぞれの垂下部23Bは、シリコン単結晶10の径に応じて、保持アーム23Aに対して摺動自在に取り付けられていてもよい。
【0031】
レーザ光照射部23Cは、それぞれの垂下部23Bの延出方向基端に設けられる。レーザ光照射部23Cは、シリコン単結晶10のインゴットに対して、インゴットの径方向端部に所定幅のレーザ光を照射する。
レーザ光受光部23Dは、それぞれの垂下部23Bの延出方向下端に設けられる。レーザ光受光部23Dは、レーザ光照射部23Cから照射されたレーザ光を検出し、照射後のレーザ光から、シリコン単結晶10のインゴットの端部位置を検出する。具体的には、レーザ光受光部23Dは、レーザ光照射部23Cのレーザ光照射窓に応じた受光窓を有し、シリコン単結晶10のインゴットにより、遮蔽されたレーザ光の幅方向位置を検出する。
【0032】
すなわち、レーザ光照射部23Cおよびレーザ光受光部23Dは、シリコン単結晶10のインゴットの両端部に対称配置され、インゴットの外周面端部位置を検出する外周端面位置検出部として機能する。なお、本実施形態ではインゴットの両端にレーザ光照射部23Cおよびレーザ光受光部23Dを設けているが、本発明はこれに限られない。たとえば、シリコン単結晶10のインゴットの片側端部にのみレーザ光照射部23Cおよびレーザ光受光部23Dを設け、シリコン単結晶10のインゴットを回転させることにより、シリコン単結晶10のインゴットの端部を検出できるようにしてもよい。
【0033】
このような計測部23では、インゴットの両端部におけるインゴットによるレーザ光の遮蔽量をそれぞれ求める。幅方向のレーザ光の遮蔽量から、シリコン単結晶10の端部位置が、両端部が均等な場合に比較すれば、どの程度幅方向にずれているかを求めることができる。求められたずれ量が、シリコン単結晶10のインゴットの径方向中心位置として求めることができる。このようなインゴットの径方向中心位置の演算は、別途外部に設けられたコントローラによっても実施できるが、本実施の形態では、移動機構本体22A内の演算処理装置によって演算される。つまり、演算処理装置が、本発明の中心位置演算部として機能する。
【0034】
載置台21は、
図4に示すように、固定ローラ21Aによって、シリコン単結晶10のインゴットを周方向に回転させることが可能となっている。インゴットを回転させれば、同じ箇所でずれ量を複数回計測することが可能となり、インゴットの径方向中心位置がどの方向に向いているかを把握することができる。
この場合、1つの方向のずれ量d1に対して、他の方向のずれ量をd2とすれば、代表値としてのずれ量は、d=√(d1
2+d2
2)により算出することができる。
【0035】
[4]本実施の形態におけるシリコン単結晶10のインゴットブロックの製造方法
シリコン単結晶10のインゴットブロックの製造方法は、
図5に示すフローチャートに基づいて、実施される。
前述した引き上げ装置1を用いて、シリコン単結晶10の引き上げを行う(工程S1)。
【0036】
引き上げられたシリコン単結晶10のインゴットについて、径方向中心の計測を行う(工程S2)。具体的には、シリコン単結晶10のトップ側、またはテール側の直胴部の長手方向端部を最初の基準位置として、引き上げ方向に沿って複数箇所で計測を行う。たとえば、トップ側の直胴部端部を基準位置とした場合は、トップ側からテール側に向かって、複数箇所での径方向中心位置の計測を行う。
【0037】
1箇所で複数計測が行われているか否かを判定する(工程S3)。
複数回の計測が終了していない場合、シリコン単結晶10のインゴットを引き上げ軸周りに回転させ(工程S4:
図4参照)、工程S2に戻って、複数回の計測を実施する。
複数回の計測が終了したら、移動機構22により、計測部23をシリコン単結晶10の長手方向に移動させ、新たな計測位置を設定する(工程S5)。
計測部23を移動させたら、新たな計測位置において工程S2からを行い、シリコン単結晶10のインゴットの長手方向の全長に亘って、径方向中心位置がすべて計測されるまで計測を繰り返す(工程S6)。
【0038】
すべてのシリコン単結晶10の径方向中心位置が計測されたら、計測結果が所定の偏芯量未満となっている位置を、シリコン単結晶10のインゴットの切断位置の基準となる基準位置として設定する(工程S7)。
ここで、基準位置とは、計測済みのシリコン単結晶10の径方向中心位置のずれ量の最大値と、ブロック両端位置のずれ量の差が大きい方のインゴットブロックの端面をいう。具体的には、基準位置は、インゴットブロックの偏芯量の計測値の最大値をMAX(mm)、トップ側のインゴットブロックの端面のずれ量の計測値をX1(mm)、テール側のインゴットブロックの端面のずれ量の計測値をX2(mm)としたときに、|MAX−X1|(mm)および|MAX−X2|(mm)のうち、大きい方の端面として設定される。
【0039】
所定の偏芯量Δは、シリコン単結晶10のインゴットの直径をD1(mm)、インゴットから製造される半導体ウェーハの直径をD2(mm)とした場合、下記式(2)により設定される。
(D1−D2)/2−Δ≧3(mm)・・・(2)
たとえば、D1=312mm、D2=300mmの場合、3(mm)≧Δとなるので、シリコン単結晶10の径方向中心位置の所定の偏芯量Δは、3mmとなる。
基準位置は、所定の偏芯量Δに基づいて設定され、所定の偏芯量Δ以下で設定される。たとえば、所定の偏芯量Δが3mmである場合、径方向中心位置のずれ量が3mm以下の範囲を、基準位置として設定することができる。
【0040】
基準位置が設定されたら、基準位置を切断位置として、シリコン単結晶10のインゴットを切断して、複数のインゴットブロックを製造する(工程S8)。インゴットブロックの切断は、バンドソー等汎用の切断機械を用いて行う。なお、本実施の形態では、専らくねりという観点のみで切断位置を決定しているが、実製造上、計測された前記インゴットの径方向中心位置のずれ量が所定の偏芯量以下となる範囲内で、すなわち、くねりという観点で定められる条件を満足する範囲内で、くねり以外の観点で切断位置を設定することができる。
たとえば、ブロックの外周を研削する外周研削加工機あるいはブロックをウェーハ状にスライスするスライス加工機が、加工処理できるブロック長さを超えないように切断位置を設定することができる。一例を挙げると、シリコン単結晶10の径方向中心位置のずれ量がほとんどなく、シリコン単結晶の長手方向の全域においてインゴットの径方向中心位置のずれ量が所定の偏芯量以下となる場合は、外周研削加工機あるいはスライス加工機が加工処理できる最大のブロック長さになるようにインゴットを切断する場合がある。
また、引き上げ速度の実績結果等の他の引き上げ制御データや、インゴットブロックの端部から切り出されたサンプルウェーハの品質評価結果によっても切断位置を設定することができる。
最後に、切断されたインゴットブロックの外周研削を行う(工程S9)。インゴットブロックの外周研削は、汎用の外周研削機を用いて行う。
【0041】
すべてのインゴットブロックの切り出し、および外周研削が終了したら、インゴットブロックを、スライス工程に払い出し(工程S10)、スライス工程では、ワイヤソー等によって半導体ウェーハのスライスを行い、半導体ウェーハを製造する。
【0042】
[5]実施の形態の効果
このような本実施の形態によれば、以下のような効果がある。
すなわち、
図6の上段に示すように、引き上げられたシリコン単結晶10のインゴットでは、全長で径方向中心位置が3mmを超えるずれ量があった。これをそのまま外周研削した場合、外周研削による取り代では、シリコン単結晶10の外周表面に生じた低酸素濃度領域を除去することができず、デバイスプロセスにおけるスリップ転位起因の不良を少なくすることができない。
【0043】
これに対して、本実施の形態によるインゴットブロックの製造方法により、インゴットブロックの切り出しを行うと、
図6の下段に示すように、インゴットブロックAではずれ量を1.7mm、インゴットブロックBではずれ量を1.0mm、インゴットブロックCではずれ量を0.4mm、インゴットブロックDではずれ量を1.0mm、インゴットブロックEではずれ量を1.5mmに抑えることができる。
したがって、それぞれのインゴットブロックAからインゴットブロックEのそれぞれを外周研削することにより、インゴット表面に生じる低酸素濃度領域を確実に除去することができ、製造された半導体ウェーハのスリップ転位起因の不良を低減することができる。
【0044】
[6]第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一部分については、その説明を省略する。
前述した第1の実施の形態では、シリコン単結晶10のインゴットの径方向中心の偏芯量は、偏芯計測器20を用いて測定し、インゴットからインゴットブロックの切断は、汎用のバンドソー等で別途行っていた。
【0045】
これに対して、本実施の形態では、
図7に示すように、偏芯計測器20と、切断機32を一体化したインゴットブロックの製造装置30により、インゴットブロックを製造する点が相違する。
インゴットブロックの製造装置30は、
図7に示すように、シリコン単結晶10のインゴットの下部に設けられる載置台(図示略)、偏芯計測器20、レール31、切断機32、およびコントローラ33を備える。
計測器としての偏芯計測器20は、第1実施形態と同様の構造なので、説明を省略する。また、レール31は、第1の実施の形態と同様に、シリコン単結晶10のインゴットブロックの長手方向に沿って延出して設けられ、偏芯計測器20を延出方向に移動可能に支持する。
【0046】
切断機32は、偏芯計測器20と同様に、レール31上を移動可能に支持される。切断機32は、汎用バンドソー切断機であり、一対のプーリー32Aおよびブレード32Bを備える。
一対のプーリー32Aは、図示しない支持台上に回転可能に支持され、一方のプーリーには、サーボモータ等の駆動源が接続される。
ブレード32Bは、一対のプーリー32Aに巻装される。ブレード32Bは、所定の幅寸法を有する無端ベルトから構成され、ブレード32Bの幅方向下端部には、メタルボンド等から構成される刃先が形成される。
【0047】
制御器としてのコントローラ33は、偏芯計測器20の移動制御および計測制御と、切断機32の移動制御および切断制御を行う。コントローラ33は、
図8に示すように、計測位置移動制御部33A、基準位置設定部33B、および切断位置移動制御部33Cを備える。
計測位置移動制御部33Aは、偏芯計測器20をレール31のどの位置に移動させるかを制御する。計測位置移動制御部33Aは、偏芯計測器20に対して、シリコン単結晶10のインゴットの直胴部端部からステップ状の位置決め制御を行い、インゴットの長手方向で均等な位置に偏芯計測器20を移動させる。
【0048】
基準位置設定部33Bは、偏芯計測器20により計測されたインゴットの径方向中心位置が、所定の偏芯量Δに対して設定された閾値以上となる位置を基準位置として設定する。具体的には、基準位置設定部33Bは、たとえば、前述した式(2)をメモリ等から読み出し、式(2)に偏芯計測器20により計測されたずれ量を代入し、シリコン単結晶10の径方向中心位置のずれ量が、所定の偏芯量Δ以下の部分で、偏芯量Δ未満として設定された閾値を超えている範囲で基準位置を設定する。設定された基準位置は、コントローラ33のメモリ等の記憶装置に保存される。
【0049】
切断位置移動制御部33Cは、基準位置設定部33Bにより設定された切断位置をメモリから呼び出して、切断機32を切断位置まで移動させ、切断機32のサーボモータの駆動を開始させ、切断機32に制御指令を出力して、シリコン単結晶10のインゴットを、所定の長さ寸法のインゴットブロックに切断させる。
このような本実施の形態によっても、前述した第1の実施の形態と同様の作用および効果を享受できる。