(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハとして、シリコンウェーハが広く用いられている。一般に、シリコンウェーハは、チョクラルスキー法(CZ法)等により単結晶シリコンを育成し、該シリコン単結晶をブロックに切断した後、薄くスライスし、平面研削(ラッピング)工程、エッチング工程および鏡面研磨(ポリッシング)工程を経て最終洗浄することにより得られる。その後、各種品質検査を行って異常が確認されなければ製品として出荷される。
【0003】
ここで、結晶の完全性がより要求される場合や、抵抗率の異なる多層構造を必要とする場合などには、シリコンウェーハの表面に単結晶シリコン薄膜からなるエピタキシャル層を気相成長(エピタキシャル成長)させてエピタキシャルウェーハを製造する。また、シリコンウェーハ以外のSiCやGaAsなどの化合物半導体ウェーハに対しても、エピタキシャル成長は広く行われている。エピタキシャル成長を行うためのエピタキシャル成長装置として、半導体ウェーハ表面にエピタキシャル層を1枚ずつ形成する枚葉式エピタキシャル成長装置と、複数枚の半導体ウェーハ表面に同時にエピタキシャル層を形成するバッチ式エピタキシャル成長装置が知られている。
【0004】
図1に、半導体ウェーハWにエピタキシャル層を形成するために用いる一般的な枚葉式のエピタキシャル成長装置150を示す。このエピタキシャル成長装置は150は、気密性を保持するためのアッパーライナー151およびローワーライナー152を備え、アッパードーム153、ローワードーム154によって装置内のエピタキシャル成長炉が区画される。そして、このエピタキシャル成長炉の内部に半導体ウェーハWを水平に載置するためのサセプタ1が設けられている。
【0005】
次に、
図2を用いて、従来公知の一般的なサセプタ1を説明する。
図2には、このサセプタ1の平面図およびA−A断面図の模式図を示す。サセプタ1には、円形凹状の座ぐり部11が設けられ、この座ぐり部11の回転中心軸と半導体ウェーハWの回転中心軸とが中心軸C
0において同心軸となるよう、半導体ウェーハWが載置される。そして、エピタキシャル成長を行う際、半導体ウェーハWをサセプタ1の座ぐり部11に載置し、該サセプタ1を回転させながら成長ガス(ソースガス)を半導体ウェーハWの表面に吹き付ける。
【0006】
なお、半導体ウェーハWとサセプタ1とは、レッジ部11Lで接触している。また、
図2において、サセプタ1の中心軸と座ぐり部11の開口縁11Cとの間の径方向距離Lは周方向で一定である。そのため、ポケット幅とも呼ばれる半導体ウェーハWの径方向外側端面と、内周壁面11Aとの距離L
pも周方向で一定である。したがって、サセプタ1を平面視したときの開口縁11Cは円を描いている。一般的には、サセプタ1の外縁も円を描く。
【0007】
こうしたサセプタとして、例えば特許文献1には、半導体ウェーハを載置する載置領域と、載置状態の半導体ウェーハの面取り加工された外周縁部に対向して当該載置領域の外側に形成された周縁壁部とを有するサセプタが開示されている。そして、この載置領域は、少なくとも周縁壁部に内接して半導体ウェーハを支持する平坦面を有し、周縁壁部は、その内壁面が平坦面に対して外側に傾斜して形成されている。特許文献1に記載のサセプタにより、半導体ウェーハの外周縁部とサセプタの周縁壁部との接触による温度分布変化を抑制することができ、均一な膜厚分布や組成分布を得ることが可能となる。
【0008】
また、特許文献2には、上面には、内部に半導体基板が配置される座ぐりが形成され、該座ぐりは、半導体基板の外周縁部を支持する上段座ぐり部と、該上段座ぐり部よりも中心側下段に形成された下段座ぐり部とを有する二段構成をなすサセプタが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、種々のサセプタがこれまで検討されてきた。しかしながら、近年、エピタキシャル膜厚分布の更なる改良が求められており、エピタキシャル膜厚分布をより均一化することのできるサセプタの確立が期待される。
【0011】
そこで本発明は、エピタキシャル層の膜厚均一性をより均一化することのできるサセプタおよび当該サセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、従来技術によるサセプタを用いてエピタキシャル成長を行った場合に、エピタキシャル層の膜厚分布にばらつきが生ずる原因について改めて詳細に検討した。ここで、
図1に戻ると、従来技術においては、一般的には、エピタキシャル成長装置の炉内中心軸、サセプタ回転中心軸および半導体ウェーハWのウェーハ回転中心軸がいずれも中心軸C
0において同心軸となるように設計されている。これは、エピタキシャル層の膜厚分布を均一化するためには、エピタキシャル成長時には、半導体ウェーハWの表面上の温度分布を均一化し、かつ、半導体ウェーハWの表面上に成長ガスを均一に吹き付けることができるよう、エピタキシャル成長炉内を対称構造とすることが好ましいと考えられてきたためである。
【0013】
しかしながら、
図1,2を参照した上述した従来構造のサセプタ1を用いてエピタキシャル成長を行うと、実際には、径方向のエピタキシャル膜厚分布に極大値及び極小値が数個程度で点在したうねりが見られる。このエピタキシャル膜厚分布に存在するうねりは、同一成長条件でエピタキシャル成長を行えば、同様の傾向を示す。こうしたうねりが形成される原因として、従来技術のサセプタ1を用いたエピタキシャル成長を行うと、エピタキシャル成長時には、装置内において、成長ガス流の分布および温度分布が斑分布を呈しつつ、エピタキシャル成長装置の対称性に起因して当該斑分布を概ね一定に保持し続けるからだと考えられる。また、成長ガスの流入側(上流側)では、エピタキシャル成長速度が高く、成長ガスの流出側(下流側)では、エピタキシャル成長速度が遅いため、サセプタ回転に伴い半導体ウェーハを回転させて成長速度の差を均一化しても、こうした斑分布はやはり形成される。こうした諸理由から、半導体ウェーハ面内でエピタキシャル成長の斑が生じ、その結果、径方向で極大値及び極小値が点在する膜厚分布が形成されると推察される。
【0014】
そこで、エピタキシャル成長時に上述した成長ガス流の分布および温度分布の斑分布を均質化するよう、半導体ウェーハをサセプタ上で偏心回転させることを本発明者は着想した。半導体ウェーハを偏心回転させることにより、成長斑を抑制でき、半導体ウェーハ表面に形成されるエピタキシャル層の膜厚均一性を改善できることが期待される。そして、サセプタ回転中心軸と、サセプタの座ぐり底面の回転中心軸とを偏心させたサセプタを用いることで、こうした半導体ウェーハの偏心回転を実現できることを本発明者らは知見し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
【0015】
(1)枚葉式エピタキシャル成長装置の炉内中心軸と、サセプタ回転中心軸とを同心軸とする、半導体ウェーハを載置するためのサセプタであって、
前記サセプタには、前記半導体ウェーハが載置される凹形状の座ぐり部が設けられ、
前記サセプタのサセプタ回転中心軸と、前記座ぐり部の座ぐり底面の回転中心軸とが偏心することを特徴とするサセプタ。
【0016】
(2)前記サセプタの前記サセプタ回転中心軸と、前記座ぐり部の座ぐり底面の回転中心軸との偏心距離が22mm以下である、前記(1)に記載のサセプタ。
【0017】
(3)前記サセプタの前記サセプタ回転中心軸と、前記座ぐり部の座ぐり底面の回転中心軸との偏心距離が3mm以上である、前記(1)または(2)に記載のサセプタ。
【0018】
(4)前記座ぐり底面の回転中心軸と、前記座ぐりの開口縁との間の径方向距離が周方向で一定である、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のサセプタ。
【0019】
(5)前記座ぐり底面の回転中心軸と、前記座ぐりの開口縁との間の径方向距離が周方向で周期的に変化する、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のサセプタ。
【0020】
(6)前記サセプタの肩口幅が2回回転対称である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載のサセプタ。
【0021】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかに記載のサセプタに半導体ウェーハを載置する載置工程と、
該半導体ウェーハ表面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル層形成工程と、
を含むエピタキシャルウェーハの製造方法であって、
前記載置工程において、前記サセプタの前記座ぐり底面の回転中心軸上に前記半導体ウェーハの回転中心軸が位置するよう、前記半導体ウェーハを載置することを特徴とするエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エピタキシャル層の膜厚均一性をより均一化することのできるサセプタおよび当該サセプタを用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に従うサセプタおよび当該サセプタを用いた半導体エピタキシャルウェーハの製造方法を説明する。
図3、
図4は説明の便宜上、各構成の縦横比を誇張して表記しており、実際の比率とは異なる。
【0025】
なお、本明細書において、「周期」、「対称」および「一定」などの記載が数学的および幾何学な意味での厳密性を要件とするものではないことは当然に理解され、サセプタ作製に伴う不可避の寸法公差および幾何公差は許容される。
【0026】
(サセプタ)
図3に示すサセプタ100の平面図およびB−B断面図の模式図を参照しつつ、本発明の一実施形態に従うサセプタ100を説明する。本発明の一実施形態によるサセプタ100は、枚葉式エピタキシャル成長装置内で半導体ウェーハWを載置するためのサセプタであり、枚葉式エピタキシャル成長装置の炉内中心軸と、サセプタ回転中心軸C
0とは、当該中心軸C
0において同心軸となる。そして、サセプタ100には、半導体ウェーハWが載置される凹形状の座ぐり部110が設けられ、サセプタ100のサセプタ回転中心軸C
0と、座ぐり部110の座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1とが偏心する。
【0027】
図3に示す一実施形態では、2段構造の座ぐり部110(「2段座ぐり」と呼ばれることがある)が図示されている。座ぐり部110は、座ぐり部110の外側内周壁面110A1およびレッジ部110Lにより区画される上段凹部と、座ぐり部110の内側内周壁面110A2および座ぐり底面110Bにより区画させる下段凹部と、を備える。なお、レッジ部110Lとは、サセプタ100と半導体ウェーハWとが接触する部分である。
図3において、上段凹部の開口径は半導体ウェーハWの直径よりも大きく、下段凹部の開口径は半導体ウェーハWの直径よりも大きい。
【0028】
サセプタ100の座ぐり部110を取囲む部分がサセプタ肩口120であり、
図3では、サセプタ100を平面視したときに、サセプタ肩口120の上面120Aが、中心軸C
0,C
1を結ぶ直線に関して線対称に設けられている。こうした形状のサセプタ肩口120を設けることで、サセプタ100のサセプタ回転中心軸C
0と、座ぐり部110の座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1とを偏心させている。なお、以下ではサセプタ回転中心軸C
0と、座ぐり部110の座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1との偏心距離をDと称する。
【0029】
ここで、このサセプタ100を用いて半導体ウェーハWのエピタキシャル成長を行う場合、座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1上に半導体ウェーハWの回転中心軸が位置するよう、半導体ウェーハWをサセプタ100に載置することとなる。サセプタ100のサセプタ回転中心軸C
0は、エピタキシャル成長装置の炉内回転中心軸と同心軸となるため、半導体ウェーハWは偏心距離Dだけずれて、エピタキシャル成長中に偏心回転することとなる。
【0030】
そのため、このサセプタ100を用いてエピタキシャル成長を行えば、エピタキシャル成長中には、半導体ウェーハWの中心付近と半導体ウェーハWの周縁付近における原料ガスとの接触時間をより均一化することができ、径方向での成長斑を抑制することができる。そしてその結果、このサセプタ100を用いることにより、ウェーハ表面に形成されるエピタキシャル層の膜厚均一性を改善することができる。
【0031】
ここで、サセプタ100のサセプタ回転中心軸C
0と、座ぐり部110の座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1との偏心距離Dを22mm以下とすることが好ましい。偏心距離Dが過大となると、サセプタ外周縁に近くなった座ぐり部分の温度の均熱性が取れなくなり、形成されるエピタキシャル層の膜厚および比抵抗が大幅にずれてしまう懸念があるところ、この範囲であれば、半導体ウェーハWの偏心回転による径方向での成長斑を抑制効果が十分なものとなる。また、偏心距離Dは0mm超であれば本発明効果は得られるものの、偏心距離Dを3mm以上とすると、本発明効果をより確実に得ることができ、5mm以上とすることも好ましい。
【0032】
なお、
図3のサセプタ100では、サセプタ肩口120の上面120Aを水平面として図示しているものの、傾斜面や突起を設けるなどしても構わない。サセプタ100の肩口幅L
sを2回回転対称とすれば、上述した回転中心軸C
0,C
1どうしの偏心を確実に実現することができる。ここでいう肩口幅とは、サセプタ肩口120の上面120Aの開口縁110Cからサセプタ100の外径までの水平方向の幅を意味する。また、こうした偏心を実現するためには必ずしも肩口幅L
sの調整に依らずとも可能である。
図3に示すサセプタ100では、座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1と、座ぐりの開口縁110Cとの間の周方向での径方向距離L
Bを一定としているが、径方向距離L
Bを周方向で変化させることによっても回転中心軸C
0,C
1どうしの偏心を実現することは可能であるし、レッジ部110Lを傾斜面とし、そのテーパ角度を周方向で変化させても構わない。
【0033】
また、座ぐり底面110Bの回転中心軸C
1と、座ぐり部110の開口縁110Cとの間の径方向距離L
Bを周方向で一定とすることが好ましく、径方向距離L
Bを周方向周期的に変化させることも好ましい。いずれの場合も、半導体ウェーハWの表面に吹き付けられるガス流を均一化することができる。なお、
図3では、当該径方向距離L
Bを一定として図示している。
【0034】
また、径方向距離L
Bを一定とするにしても、または周期的に変化させるにしても、いずれの場合も、サセプタ100と、シリコンウェーハWとの径方向距離であるポケット幅L
pを0.5mm〜4mmの範囲とするよう、径方向距離L
Bを設定することが好ましい。ポケット幅L
pがこの範囲であれば、半導体ウェーハWとサセプタ100の外側内周壁面110A1との間のスティッキングの発生を防止することができる。ポケット幅L
pは、シリコンウェーハの直径に依存せず、直径150mm〜450mmであっても同程度の範囲で変動させることが好ましい。なお、例えばシリコンウェーハの直径が300mm(半径150mm)の場合、このポケット幅L
pに対応する径方向距離Lは151mm〜154mmとなる。
【0035】
なお、径方向距離L
B、ひいてはポケット幅L
pを周方向で周期的に変化させる場合は、半導体ウェーハの成長速度方位依存性に対応させることが好ましい。例えば、シリコンウェーハの成長面となる主表面が{100}面である場合、成長速度方位依存性が周方向に90度周期で変化するため、成長速度方位依存性による膜厚分布の影響を抑制するよう、ポケット幅L
pを周期的に変化させればよい。
図3では、径方向距離L
Bを一定として図示しているため、開口縁110Cは円を描くが、径方向距離L
Bを周方向で周期的に変化させる場合は、当該周期の周期関数の軌跡に対応した形状を描くこととなる。
【0036】
また、外側内周壁面110A1および内側内周壁面110A2の高さは特に制限されず、通常の2段座ぐり型のサセプタと同様とすることができる。
【0037】
本実施形態によるサセプタの別の態様を
図4のサセプタ200に示す。サセプタ200のように、外側内周壁面210A1および内側内周壁面210A2のそれぞれを傾斜面としても構わず、それらの傾斜角も任意である。サセプタ200は、外側内周壁面210A1および内側内周壁面210A2が傾斜面である以外はサセプタ100と同様であり、サセプタ100と重複する構成には下二桁で同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0038】
また、
図3および
図4では、レッジ部110L、210Lを水平面として図示した。この場合、当該水平面とシリコンウェーハWとが面接触してシリコンウェーハWを支持することができる。しかしながら、レッジ部は水平面に限定されることはなく、テーパー状の傾斜面としてもよい。この場合、シリコンウェーハWとサセプタとが点接触となり、サセプタと半導体ウェーハWとの接触面積を小さくすることができる。また、
図3,4では2段座ぐりのサセプタを用いて例示的に説明したが、サセプタ回転中心軸と、座ぐり底面の回転中心軸とが偏心する限りは、座ぐり部の形状は任意であり、1段座ぐりであっても構わないし、3段構造以上の多段座ぐりであっても構わない。
【0039】
以下、本実施形態によるサセプタの好適な具体的態様について説明する。
【0040】
サセプタの素材としては、エピタキシャル成長時に、サセプタからエピタキシャル膜への汚染を低減するため、炭素基材の表面にシリコンカーバイド(SiC)をコーティングしたものを用いることが一般的である。しかしながら、サセプタ全体がSiCで形成されてもよく、サセプタ表面がSiCでコーティングされていれば、内部には他の材料を含んでサセプタが構成されてもよい。さらに、サセプタ表面の一部または全部がシリコン膜で被覆されていることも好ましい態様である。シリコン膜の被覆により、サセプタからエピタキシャル膜への汚染を防止することができる。
【0041】
また、上記実施形態に従うサセプタにおいて、座ぐり部の座ぐり底面110B、210Bに、半導体ウェーハWを載置する際に昇降リフトピンを挿通して半導体ウェーハWを昇降させるためのリフトピン貫通孔を設けることができる(図示せず)。リフトピン貫通孔は、半導体ウェーハWをローディングするロボットアームの形状に合わせて適宜設けることができ、サセプタ回転中心軸C
0を中心にリフトピン貫通孔を設けてもよいし、座ぐり底面回転中心軸C
1を中心にリフトピン貫通孔を設けてもよい。さらに、座ぐり底面110B、210Bからサセプタの裏面側に貫通する貫通孔が1箇所または複数箇所設けられていてもよい。サセプタの座ぐり部に半導体ウェーハWをローディングする際に、サセプタとシリコンウェーハとの間のガスをサセプタの裏面側に排出するのに有用である。
【0042】
また、本発明の一実施形態に従うサセプタは、一般的な枚葉式エピタキシャル成長装置に設置することが可能であり、サセプタ回転中心軸C
0を、エピタキシャル成長装置の炉内回転中心軸と同心軸となるよう設置すればよい。本発明の一実施形態に従うサセプタを用いれば、半導体ウェーハWが偏心距離Dで偏心回転する以外は、通常のエピタキシャル成長と同様にしてエピタキシャル成長を行うことができる。なお、サセプタの周縁の通常設置されるプリヒートリングまたはローワーライナーとの間のクリアランスの調整は適宜行えばよい。
【0043】
本実施形態に従うサセプタに載置する半導体ウェーハWとしては、シリコンウェーハを用いることが好ましく、シリコンウェーハ上に成膜するエピタキシャル層はシリコンエピタキシャル層であることが好ましい。ただし、本実施形態に従うサセプタに化合物半導体ウェーハなどを載置することも勿論可能であり、ヘテロエピタキシャル成長にも適用可能である。
【0044】
(エピタキシャルウェーハの製造方法)
また、本実施形態に従うエピタキシャルウェーハの製造方法は、上述したサセプタ100,200に半導体ウェーハWを載置する載置工程と、半導体ウェーハWの表面にエピタキシャル層を形成するエピタキシャル層形成工程と、を含む。そして、この載置工程において、サセプタ100,200の座ぐり底面110B,210Bの回転中心軸C
1上に半導体ウェーハWの回転中心軸が位置するよう、半導体ウェーハWを載置する。
【0045】
また、載置工程においては昇降リフトピンを用いたり、エピタキシャル成長工程においては一般的な気相成長条件でシリコンソースガスをシリコンウェーハ表面に吹き付けたりするなど、各工程は常法に従い行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらは代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
[実験例1]
(実施例1)
図3に示すサセプタ100を、偏心距離Dを5.0mmとして作製した。そして、このサセプタ100を、
図1に示す枚葉式エピタキシャル成長装置150に設置した。サセプタ回転中心軸C
0は、成長炉内の回転中心軸と同心軸である。
【0049】
また、半導体ウェーハWとして直径300mmのシリコンウェーハを用意した。次いで、シリコンウェーハの回転中心軸がサセプタ100の座ぐり底面の回転中心軸C
1と同軸となるよう、シリコンウェーハを載置した。その後、シリコンウェーハの表面に、シリコンエピタキシャル層をエピタキシャル成長させ、エピタキシャルシリコンウェーハを得た。
【0050】
なお、シリコンエピタキシャルウェーハの作製にあたり、シリコンウェーハをエピタキシャル膜形成室内に導入し、リフトピンを用いてサセプタ100上に載置した。続いて、1130℃にて、水素ガスを供給し、水素ベークを行った後、1130℃にて、シリコンのエピタキシャル膜を4μm成長させてエピタキシャルシリコンウェーハを得た。ここで、原料ソースガスとしてはトリクロロシランガスを用い、また、ドーパントガスとしてジボランガス、キャリアガスとして水素ガスを用いた。
【0051】
(従来例1)
偏心距離Dが0mmである以外は、サセプタ100と同様の座ぐり形状を備えるサセプタを用いて、実施例1と同様にエピタキシャル成長させ、エピタキシャルシリコンウェーハを得た。
【0052】
<評価:エピタキシャル層の膜厚測定>
FT−IR方式の膜厚測定器(ナノメトリクス社製:QS−3300シリーズ)を用いて、実施例1および従来例1により作製したエピタキシャルウェーハのエピタキシャル膜の膜厚分布をそれぞれ測定した。結果を
図5に示す。ただし、
図5のグラフ縦軸に相当するエピタキシャル膜厚は、平均膜厚を1(グラフ中では縦軸の数値:1.0)とする相対値を用いて示す。また、ウェーハ外縁から10mmまでの領域のエピタキシャル層の膜厚分布はグラフの簡略化のため割愛して図示している。さらに、
図5中、ウェーハ中心からの距離がマイナスであるとは、所定の径方向を正の方向とした場合の、反対方向であることを意味する。
【0053】
図5のグラフより、実施例1では従来例1に比べて、エピタキシャル層の膜厚分布をより均一化できたことが確認された。また、下記式[1]に従い、平均膜厚に対する膜厚分布率(±%)を定義すると、実施例1の膜厚分布率は1.09%であり、従来例1の膜厚分布率は1.13%である。
【数1】
【0054】
[実験例2]
実施例1において作製したサセプタと同じ座ぐり形状としつつ、偏心距離Dを、1.0mmから22.0mmまで、1.0mm単位で変更したサセプタを作製した。これらのサセプタを用いて、実施例1と同様にしてシリコンエピタキシャルシャルウェーハを作製した。
図6のグラフに、上記式[1]により求められるエピタキシャル層の膜厚分布率と、偏心距離Dとの対応関係を示す。なお、偏心距離Dが0mmであるサセプタとしては、従来例1において用いたサセプタを使用した。
【0055】
図6から、偏心があるサセプタを用いれば、偏心のない従来例1のサセプタを用いる場合に比べて膜厚分布率が改善されることが確認できた。特に、偏心距離Dが5.0mm以上となると、膜厚分布率が改善効果がより急峻となり、偏心距離Dが18.0mmのときに改善効果が最大となった。偏心距離Dが18.0mmを超えると、徐々に改善効果が緩和することも確認されたものの、偏心距離Dが22.0mmまでは、膜厚分布の改善効果が確実に得られることが確認された。
【0056】
なお、本実験では、サセプタ以外はエピタキシャル成長条件を同一条件として実験を行った。エピタキシャル成長条件が異なる場合には、最適な偏心距離Dは変動し得るものと推定されるが、偏心があるサセプタを用い、かつ、偏心距離Dを22.0mm以下とすれば、膜厚分布の改善効果は確実に得られる。