特許第6841236号(P6841236)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841236
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】金属酸化物粉体、分散液および化粧料
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/053 20060101AFI20210301BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20210301BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20210301BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20210301BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C01G23/053
   C01G23/047
   A61K8/29
   A61Q1/02
   A61Q1/12
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-559211(P2017-559211)
(86)(22)【出願日】2016年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2016088916
(87)【国際公開番号】WO2017115802
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-255773(P2015-255773)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】八久保 鉄平
【審査官】 宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−298316(JP,A)
【文献】 特開2005−206412(JP,A)
【文献】 特開2002−293542(JP,A)
【文献】 特許第4382873(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/053
A61K 8/29
A61Q 1/02
A61Q 1/12
C01G 23/047
A61K 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物粒子を形成材料とする金属酸化物粉体であって、
前記金属酸化物粉体は、突起部を少なくとも一つ以上有する第一の金属酸化物粒子と、第二の金属酸化物粒子と、を有し、
前記第一の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下であるアナターゼ型の酸化チタン粒子であり、
前記第二の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm未満であるアナターゼ型の酸化チタン粒子であり、
前記金属酸化物粉体の総質量に対する一次粒子径が100nm未満の粒子の総質量の割合が、0.3質量%以上かつ10質量%以下であり、
前記金属酸化物粉体の総質量に対する前記第一の金属酸化物粒子及び前記第二の金属酸化物粒子の合計質量は、99.7質量%以上である金属酸化物粉体。
【請求項2】
前記第一の金属酸化物粒子は、
前記第一の金属酸化物粒子の中心軸から略垂直方向に放射状に突出する複数の第一の突起部と、
前記中心軸に沿って互いに先端が離間する方向に突出する一対の第二の突起部と、を含み、
前記第一の突起部における各々の先端と、前記第二の突起部における各々の先端との間に稜を形成し、
全体として、星型の形態を有する請求項1に記載の金属酸化物粉体。
【請求項3】
前記金属酸化物粒子の表面に、表面処理剤を形成材料とする表面処理層を有する請求項1又は2に記載の金属酸化物粉体。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか一項に記載の金属酸化物粉体と、分散媒とを含む分散液。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の金属酸化物粉体および請求項に記載の分散液からなる群から選択される少なくとも一種を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粉体、分散液および化粧料に関する。
本願は、2015年12月28日に、日本に出願された特願2015−255773号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物粒子を形成材料とする金属酸化物粉体は、高い屈折率や紫外線遮蔽性等を有していることから種々の用途に利用されている。例えば、特許文献1に記載された星型酸化チタン粒子は、可視光から近赤外光の光散乱能を有しており、塗料、樹脂組成物、プラスチックフィルム、プラスチック板および化粧料に含有され、利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4382607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような金属酸化物粉体を含有させた塗料や化粧料等は、被塗布物への密着性が十分ではなかった。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、光散乱性に優れた金属酸化物粉体を提供することを目的とする。さらに、この金属酸化物粉体を含有し、光散乱性に優れ、かつ被塗布物への密着性に優れた分散液および化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、金属酸化物粒子を形成材料とする金属酸化物粉体であって、金属酸化物粉体は、突起部を少なくとも一つ以上有する第一の金属酸化物粒子と、第二の金属酸化物粒子と、を有し、前記第一の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下であり、前記第二の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm未満であり、前記金属酸化物粉体の総質量に対する一次粒子径が100nm未満の粒子の総質量の割合が、0.3質量%以上かつ10質量%以下である金属酸化物粉体を提供する。
【0007】
本発明の一態様においては、前記第一の金属酸化物粒子は、前記第一の金属酸化物粒子の中心軸から略垂直方向に放射状に突出する複数の第一の突起部と、前記中心軸に沿って互いに先端が離間する方向に突出する一対の第二の突起部と、を含み、前記第一の突起部における各々の先端と、前記第二の突起部における各々の先端との間に稜を形成し、全体として、星型の形態を有することが好ましい。
【0008】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物粒子の表面に、表面処理剤を形成材料とする表面処理層を有してもよい。
【0010】
本発明の一態様は、上記の金属酸化物粉体と、分散媒とを含む分散液を提供する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の金属酸化物粉体および上記の分散液からなる群から選択される少なくとも一種を含む化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、光散乱性に優れた金属酸化物粉体が提供される。さらに、この金属酸化物粉体を含有し、光散乱性に優れ、かつ被塗布物への密着性に優れた分散液および化粧料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子を模式的に示す平面図である。
図2図1のA−A線に沿う断面図である。
図3】本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子の変形例を模式的に示す平面図である。
図4】実施例4の酸化チタン粉体を示す走査型電子顕微鏡像である。
図5】比較例1の酸化チタン粉体を示す走査型電子顕微鏡像である。
図6】比較例2の酸化チタン粉体を示す走査型電気顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る金属酸化物粉体、分散液および化粧料の実施形態について説明する。
本実施形態は、本発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
<第一実施形態>
[金属酸化物粉体]
本実施形態の金属酸化物粉体は、金属酸化物粒子を形成材料とする。金属酸化物粉体は、突起部を少なくとも一つ以上有する第一の金属酸化物粒子と、第二の金属酸化物粒子と、を有する。以下、本実施形態における第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子のそれぞれの形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
以下の説明で用いる平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(以下、SEM)で得られた画像から次のようにして求めた値を採用する。SEM画像における各金属酸化物粒子の一次粒子径は、ノギス等の計測器具や画像解析装置を用いて測定することができる。
【0017】
一次粒子径は、SEM画像における各金属酸化物粒子を、2本の平行線で挟んだときに平行線の間隔が最大になる値(最大フェレー径(JIS Z 8827−1:2008))を採用する。この一次粒子径を、ランダムに100個測定し、得られた測定値を加重平均した値を平均一次粒子径とする。
【0018】
金属酸化物粒子が凝集体(二次粒子)を形成している場合には、この二次粒子を構成する一次粒子の一次粒子径を、ランダムに100個測定し、平均一次粒子径とする。
【0019】
金属酸化物粒子の質量は、次のようにして求めた値を採用する。まず、SEM画像上で、金属酸化物粒子の一次粒子径をランダムに100個測定する。次いで、この一次粒子径から、金属酸化物粒子の形状に応じて、金属酸化物粒子の体積を算出する。さらに、この体積に、金属酸化物粒子を構成する金属酸化物の密度を乗じることにより、金属酸化物粒子の質量を算出する。
【0020】
(第一の金属酸化物粒子)
本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下のものを指す。この範囲内において、第一の金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、150nm以上かつ800nm以下であることが好ましく、200m以上かつ600nm以下がより好ましく、250nm以上かつ400nm以下であることがさらに好ましい。
【0021】
図1は、本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子100を模式的に示す平面図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。図1および図2に示す第一の金属酸化物粒子100は、中心軸Zから中心軸Zの略垂直方向に放射状に突出する複数の第一の突起部1と、中心軸Zに沿って互いに先端が離間する方向に突出する一対の第二の突起部2と、を含む。第一の金属酸化物粒子100は、第一の突起部1における各々の先端1aと、第二の突起部における各々の先端2aとの間に稜10を形成し、全体として、星型の形態を有することが好ましい。
【0022】
第一の金属酸化物粒子100が「星型の形態」を有する場合、第一の金属酸化物粒子100は、6個の第一の突起部1を有することが好ましい。このとき、6個の第一の突起部1は、中心軸Zの周方向に略等間隔に形成されていることが好ましい。
【0023】
図2において、星型の形態を有する第一の金属酸化物粒子100の、対向する2つの先端2a間の距離は、金属酸化物粒子の種類や、露出結晶面によって、結晶学的に決定されている。例えば、アナターゼ型の酸化チタンで主露出結晶面が(101)面である場合には、結晶学的には一次粒子径(対向する2つの先端1a間の距離)の0.56倍である。そのため、本実施形態では、星型の形態を有する第一の金属酸化物粒子100の、対向する2つの先端2a間の距離は、結晶学的に決定されている値(アナターゼ型の酸化チタンで主露出結晶面が(101)面である場合には一次粒子径の0.56倍)とみなして、星型の形態を有する第一の金属酸化物粒子100の体積を算出する。
【0024】
本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子は、第一の突起部および第二の突起部からなる群から選択される突起部を少なくとも一つ以上有していればよい。例えば、図3に示す金属酸化物粒子101は、図1に示す第一の金属酸化物粒子100の形状と比較すると、第一の突起部1が破損していると推測できる。このような場合には、金属酸化物粒子101は、本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子に分類することができる。すなわち、図1に示す第一の金属酸化物粒子100と類似する形状を有し、この形状が破損によって第一の金属酸化物粒子100から形成されたことが推測される場合には、第一の金属酸化物粒子としてみなすこととする。
【0025】
第一の金属酸化物粒子のうち、上述の星型の形態を有する粒子の割合は、95質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態の金属酸化物粉体においては、第二の金属酸化物粒子は、第一の金属酸化物粒子同士の間に点在することが好ましい。これにより、本実施形態の金属酸化物粉体を含有させた分散液や化粧料は、被塗布面への密着性に優れている。
【0027】
本実施形態に係る第一の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび酸化スズ等で形成されることが好ましい。第一の金属酸化物粒子の形成材料としては、屈折率が高く、紫外線遮蔽性に優れていることから、酸化チタンまたは酸化亜鉛がより好ましく、隠蔽力が高く肌色に近い色が得られやすいアナターゼ型の酸化チタンがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態において、アナターゼ型の酸化チタン粒子は、さらに主露出結晶面が(101)面であることが好ましい。ここで、「主露出結晶面が(101)面」であるとは、電界放射型透過電子顕微鏡(以下、FE−TEM)で格子像を観察し、面間隔から露出結晶面を決定することができ、他の露出結晶面は実質的に観察されないことを意味する。
本実施形態では、FE−TEMで格子像を観察した時に、2種類以上の主露出結晶面が観察される場合には、露出表面が不定であるとする。
【0029】
本実施形態では、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の金属酸化物粒子に添加剤が含まれていてもよい。金属酸化物粒子に添加剤が添加されている例としては、アンチモンが添加された酸化スズ粒子等が挙げられる。このアンチモンが添加された酸化スズ粒子は熱線遮蔽性に優れている。
【0030】
(第二の金属酸化物粒子)
本実施形態に係る第二の金属酸化物粒子は、平均一次粒子径が100nm未満のものを指す。本実施形態に係る第二の金属酸化物粒子の平均一次粒子径の下限値は特に限定されないが、安定的に製造できる点で、1nm以上であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る第二の金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、1nm以上かつ100nm未満であり、3nm以上かつ70nm以下であることが好ましく、5nm以上かつ50nm以下であることがより好ましく、10nm以上かつ30nm以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態に係る第二の金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムおよび酸化スズ等で形成されることが好ましい。第二の金属酸化物粒子の形成材料としては、屈折率が高く、紫外線遮蔽性に優れていることから、酸化チタンまたは酸化亜鉛がより好ましく、隠蔽力が高く肌色に近い色が得られやすいアナターゼ型の酸化チタンがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態において、アナターゼ型の酸化チタン粒子は、さらに主露出結晶面が(101)面であることが好ましい。第二の金属酸化物粒子は、第一の金属酸化物粒子と同じ形成材料で形成されるとよい。
【0033】
本実施形態に係る第二の金属酸化物粒子は、特定の形態に限定されない。第二の金属酸化物粒子の形態としては、例えば、球状、楕円状、直方体状、立方体状、多面体状、三角錘状、四角錘状、紡錘状、突起状、星型等の形態が挙げられる。また、第二の金属酸化物粒子は、複数の形態をもつ金属酸化物粒子の混合物であってもよい。第二の金属酸化物粒子は、密着効果がより得られやすい点で、鋭角な端部を有さない形態が好ましい。このような形態としては、球状、楕円状、直方体状、立方体状等が挙げられる。
【0034】
第二の金属酸化物粒子が、一つ以上の突起部を有する金属酸化物粒子を含む場合、例えば星型等の形態を有する金属酸化物粒子を含む場合には、以下のような実施形態が好ましい。すなわち、第一の金属酸化物粒子の総質量に対する、平均粒子径が100nm未満である一つ以上の突起部を有する金属酸化物粒子の総質量の割合は、0.01質量%以上かつ7質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上かつ5質量%以下であることがより好ましく、1.3質量%以上かつ3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子は、SEMで得られた画像から目視で区別することが可能である。
【0036】
(含有量)
金属酸化物粉体の総質量に対する、金属酸化物粒子の含有量は、誘導結合プラズマ(以下、ICP)発光分光分析法により測定することができる。
【0037】
本実施形態に係る金属酸化物粉体の総質量に対する第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子の合計質量は、99.7質量%以上が好ましく、99.8質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましい。
【0038】
例えば、第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物微粒子が酸化チタン粒子であるときは、酸化チタン粉体中の酸化チタン粒子の含有量が99.7質量%以上であることが好ましく、99.8質量%以上あることがより好ましく、99.9質量%以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本実施形態の金属酸化物粉体中に含まれる成分のうち、第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子以外の成分としては、例えば、金属酸化物粒子に付着している吸着水や、原料由来の不純物などが挙げられる。金属酸化物粒子が酸化チタン粒子である場合には、例えば、酸化鉄が含まれる場合がある。
【0040】
本実施形態に係る金属酸化物粉体の総質量に対する平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下の粒子(第一の金属酸化物粒子)の総質量の割合は、90質量%以上かつ99.7質量%以下であり、92質量%以上かつ99.5質量%以下であることが好ましく、94質量%以上かつ99.0質量%以下であることがより好ましく、96質量%以上かつ98.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0041】
本実施形態に係る金属酸化物粉体の総質量に対する平均一次粒子径が100nm未満の粒子(第二の金属酸化物粒子)の総質量の割合は、0.3質量%以上かつ10質量%以下であり、0.5質量%以上かつ8質量%以下であることが好ましく、1質量%以上かつ6質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上かつ4質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
本実施形態の金属酸化物粉体は、金属酸化物粉体の総質量に対する一次粒子径が100nm未満の粒子の総質量の割合が上記の条件を満たしていることで、分散液や化粧料に含有させたときに、その分散液や化粧料が、肌等の被塗布物に対して優れた密着性を示す。
【0043】
[金属酸化物粉体の製造方法]
本実施形態に係る金属酸化物粉体の製造方法は、第一の金属酸化物粒子、第二の金属酸化物粒子をそれぞれ準備して、両者を混合することにより製造する方法である。本実施形態に係る金属酸化物粉体の製造方法の一例を説明する。以下の説明では、第一の金属酸化物粒子として平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下の星型酸化チタン粒子を用いる。また、第二の金属酸化物粒子として平均一次粒子径が1nm以上かつ40nm以下のアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を用いる。
【0044】
(アナターゼ型の星型酸化チタン粒子の製造方法)
平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下の星型酸化チタン粒子は、公知の方法で製造することができる。公知の方法としては、例えば、特開2009−292717号公報に記載の製造方法が挙げられる。具体的には、上述の星型酸化チタン粒子は、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物と、有機アルカリ類とを所定の溶媒中で混合し、得られた反応溶液を、高温高圧の熱水の存在下で反応(水熱合成)することにより製造することができる。
【0045】
本実施形態のチタンアルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタンまたはテトラノルマルブトキシチタン等が挙げられる。入手が容易であり、かつ加水分解速度が制御しやすいことから、チタンアルコキシドとしては、テトライソプロポキシチタンおよびテトラノルマルブトキシチタンが好ましく、テトライソプロポキシチタンがより好ましい。
【0046】
本実施形態のチタン金属塩としては、例えば、四塩化チタンまたは硫酸チタン等が挙げられる。
【0047】
本実施形態において、高純度の星型酸化チタン粒子を得るためには、高純度のチタンアルコキシドまたは高純度のチタン金属塩を用いることが好ましい。
【0048】
本実施形態の加水分解生成物は、上述のチタンアルコキシドまたはチタン金属塩を加水分解することにより得られる。得られる加水分解生成物は、例えば、ケーキ状固体であり、メタチタン酸やオルトチタン酸と呼ばれる含水酸化チタンである。
【0049】
チタンアルコキシドまたはチタン金属塩を加水分解することにより得られた加水分解生成物には、副生成物であるアルコール類、塩酸および硫酸が含まれる。これらは、酸化チタン粒子の結晶成長を阻害するため、純水で洗浄することが好ましい。加水分解生成物の洗浄方法としては、例えば、デカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法が好ましい。
【0050】
本実施形態の有機アルカリ類は、反応溶液のpH調整剤としての機能と、後述する水熱合成の触媒としての機能とを有する。この有機アルカリ類としては、例えば、アミン類、高分子アミンおよび高分子アミンの塩、アンモニアまたは窒素を含む五員環を有する化合物等が挙げられる。
【0051】
上述のアミン類としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0052】
上述の高分子アミンおよび高分子アミンの塩としては、上述のアミン類からなる高分子アミンおよび高分子アミンの塩が挙げられる。
【0053】
上述の窒素を含む五員環を有する化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、インドール、プリン、ピロリジン、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾールまたは1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0054】
上述した窒素を含む五員環を有する化合物において、窒素原子を一つ含む五員環を有する化合物は、粒度分布が狭いことで結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できるため好ましい。例えば、ピロール、インドール、ピロリジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾールおよび1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンが挙げられる。
【0055】
さらに、上述した窒素原子を一つ含む五員環を有する化合物において、五員環が飽和複素環構造を有する化合物は、上述の化合物よりもさらに粒度分布が狭く、結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できるためより好ましい。例えば、ピロリジン及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンが挙げられる。
【0056】
これらの窒素を含む五員環を有する化合物を、水熱合成の触媒として使用することによって、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ単相(アナターゼ型)の星型酸化チタン粒子を得ることができる。
【0057】
本実施形態において、有機アルカリ類の配合量は、加水分解生成物中のチタン原子1molに対して0.008mol〜0.09molが好ましく、0.009mol〜0.08molがより好ましく、0.01mol〜0.07molがさらに好ましい。
【0058】
本実施形態の反応溶液は、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物と、有機アルカリ類とを所定の溶媒中で混合することにより得られる。この反応溶液の作製方法は、これらを均一に分散できるのであれば、特に限定されない。反応溶液の作製方法としては、例えば、加水分解生成物および有機アルカリ類を、撹拌機、ビーズミル、ボールミル、アトライターおよびディゾルバー等を使用して混合する方法が挙げられる。
【0059】
また、本実施形態においては、反応溶液に水を添加し、反応溶液の濃度調整を行ってもよい。反応溶液に添加される水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水または純水等が挙げられる。
【0060】
本実施形態に係る水熱反応後の溶液のpHは、9〜12.5が好ましく、10〜12が好ましい。本実施形態においては、有機アルカリ類の配合量を制御することによって、水熱反応後の溶液のpHを上述の範囲内に制御することが可能である。
【0061】
本実施形態において、水熱反応後の溶液のpHが9よりも小さいと、核形成に対する有機アルカリ類の触媒作用が小さくなることがある。これにより、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が遅くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が少なくなる場合がある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が大きくなりすぎてしまうことがある。
【0062】
一方、水熱反応後の溶液のpHが12.5よりも大きいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が速くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が多くなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が小さくなりすぎてしまうことがある。
【0063】
本実施形態において、反応溶液のpHを調整することにより、得られる星型酸化チタン粒子の形状、平均一次粒子径および粒度分布を制御することができる。
【0064】
本実施形態に係る反応溶液中のチタン原子濃度は、酸化チタン粒子の所望の平均一次粒子径に応じて適宜設定することができる。反応溶液中のチタン原子濃度は、0.05mol/L〜3.0mol/Lが好ましく、0.1mol/L〜2.5mol/Lがより好ましい。本実施形態においては、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物の含有量を制御することによって、反応溶液中のチタン原子濃度を上述の範囲内に制御することができる。
【0065】
本実施形態において、反応溶液中におけるチタン原子濃度が0.05mol/Lよりも小さいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が遅くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核の数が少なくなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が大きくなりすぎてしまうことがある。
【0066】
一方、反応溶液中におけるチタン原子濃度が3.0mol/Lよりも大きいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が速くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が多くなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が小さくなりすぎてしまうことがある。
【0067】
本実施形態において、反応溶液中のチタン原子と有機アルカリ類とのモル比は、1.00:0.008〜1.00:0.09の範囲が好ましく、1.00:0.009〜1.00:0.08の範囲がより好ましい。反応溶液中のチタン原子と有機アルカリ類とのモル比が上述の範囲内であると、結晶性に優れた酸化チタン粒子を合成できる。
【0068】
本実施形態において、上述の反応溶液を高温高圧の熱水の存在下で反応させることにより、星型酸化チタン粒子を製造することができる。このように高温高圧の熱水の存在下で反応させる合成を水熱合成という。本実施形態の水熱合成では、密閉可能な高温高圧容器(オートクレーブ)が好ましく使用される。
【0069】
本実施形態の水熱合成における加熱温度は、150〜350℃が好ましく、200〜350℃がより好ましい。本実施形態において、室温から上述の温度範囲までの加熱速度は、特に限定されない。また、本実施形態の水熱合成における圧力は、密閉容器において反応溶液を上述の温度範囲に加熱したときの圧力に設定される。
【0070】
水熱合成における加熱温度が上述の範囲内であると、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物の水への溶解性が向上し、反応溶液中で溶解させることができる。さらに、水熱合成における加熱温度が上述の範囲内であると、酸化チタン粒子の核を生成でき、その核を成長させることができる。これにより所望の星型酸化チタン粒子を製造することができる。
【0071】
本実施形態の水熱合成における加熱時間は、金属酸化物粒子が所望の大きさになるように適宜調整して実施すればよいが、2時間以上が好ましく、3時間以上がより好ましい。加熱時間が2時間よりも短いと、原料(チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物)が消費されず、収率が低下することがある。加熱時間は、原料の種類や濃度に影響されるため、適宜予備実験をして、金属酸化物粒子が所望の大きさになるような加熱時間で実施すればよい。例えば、加熱時間は9時間であってもよく、12時間であってもよく、24時間であってもよく、48時間であってもよく、72時間であってもよい。ただし、生産効率の観点から、金属酸化物粒子が所望の大きさに達した時点で加熱をやめてもよい。
【0072】
本実施形態の水熱合成では、予備加熱(予め反応溶液を上述の温度範囲よりも低い温度で加熱すること)を行うことが好ましい。例えば、70℃〜150℃の温度範囲で予備加熱を1時間以上行うと、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下である星型酸化チタン粒子のみが形成される。これに対して、予備加熱を行わないと、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下である星型酸化チタン粒子に加えて、平均一次粒子径が1nm以上かつ40nm以下の粒状酸化チタン粒子が形成されてしまう。
【0073】
本実施形態において、上述の反応溶液から星型酸化チタン粒子を取り出す方法としては、例えば、デカンテーションやヌッチェ法等により固液分離する方法が挙げられる。星型酸化チタン粒子を取り出した後、不純物を低減させる目的で、得られた星型酸化チタン粒子を純水等で洗浄してもよい。
【0074】
取り出した星型酸化チタン粒子を公知の方法で乾燥させることにより、所望の星型酸化チタン粒子を得ることができる。
【0075】
本実施形態では、スターラーまたは撹拌羽等の攪拌装置を用いて、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物を含む溶液や、反応溶液を強制的に撹拌させることが好ましい。本実施形態における攪拌速度は、例えば、100rpm〜300rpmが好ましい。
【0076】
(アナターゼ型の粒状酸化チタン粒子の製造方法)
アナターゼ型の粒状酸化チタン粒子は、公知の方法で製造することができる。公知の方法としては、例えば、特開2007−176753号公報に記載の製造方法が挙げられる。具体的には、上述の酸化チタン粒子は、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物を出発原料とし、これにアルカリ水溶液、水、ジオールまたはトリオールを混合したものを結晶化することにより製造することができる。
【0077】
また、他の方法としては、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物と、窒素を含む五員環を有する化合物とを混合して反応溶液を作製し、この反応溶液を高温高圧の熱水の存在下で反応(水熱合成)させることにより製造することができる。
【0078】
本実施形態のチタンアルコキシドとしては、例えば、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラノルマルプロポキシチタンまたはテトラノルマルブトキシチタン等が挙げられる。入手が容易であり、かつ加水分解速度が制御しやすいことから、チタンアルコキシドとしては、テトライソプロポキシチタンおよびテトラノルマルブトキシチタンが好ましく、テトライソプロポキシチタンがより好ましい。
【0079】
本実施形態のチタン金属塩としては、例えば、四塩化チタンまたは硫酸チタン等が挙げられる。
【0080】
本実施形態において、高純度のアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を得るためには、高純度のチタンアルコキシドまたは高純度のチタン金属塩を用いることが好ましい。
【0081】
本実施形態の加水分解生成物は、上述のチタンアルコキシドまたはチタン金属塩を加水分解することにより得られる。得られる加水分解生成物は、例えば、ケーキ状固体であり、メタチタン酸やオルトチタン酸と呼ばれる含水酸化チタンである。
【0082】
チタンアルコキシドまたはチタン金属塩を加水分解することにより得られた加水分解生成物には、副生成物であるアルコール類、塩酸および硫酸が含まれる。これらは、酸化チタン粒子の結晶成長を阻害するため、純水で洗浄することが好ましい。加水分解生成物の洗浄方法としては、例えば、デカンテーション、ヌッチェ法、限外濾過法が好ましい。
【0083】
本実施形態の窒素を含む五員環を有する化合物は、反応溶液のpH調整剤としての機能と、後述する水熱合成の触媒としての機能を有する。この窒素を含む五員環を有する化合物としては、例えば、ピロール、イミダゾール、インドール、プリン、ピロリジン、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾールまたは1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0084】
上述した窒素を含む五員環を有する化合物において、窒素原子を一つ含む五員環を有する化合物は、粒度分布が狭いことで結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できるため好ましい。例えば、ピロール、インドール、ピロリジン、イソチアゾール、イソオキサゾール、フラザン、カルバゾールおよび1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンが挙げられる。
【0085】
さらに、上述した窒素原子を一つ含む五員環を有する化合物において、五員環が飽和複素環構造を有する化合物は、上述の化合物よりもさらに粒度分布が狭く、結晶性の優れた酸化チタン粒子を製造できるためより好ましい。例えば、ピロリジン及び1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネンが挙げられる。
【0086】
これらの窒素を含む五員環を有する化合物を、水熱合成の触媒として、使用することによって、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ単相(アナターゼ型)の粒状酸化チタン粒子を得ることができる。
【0087】
本実施形態において、窒素を含む五員環を有する化合物の配合量は、加水分解生成物中のチタン原子1molに対して0.1mol〜1.0molが好ましく、0.1mol〜0.7molがより好ましく、0.1mol〜0.5molがさらに好ましい。
【0088】
本実施形態の反応溶液は、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物と、窒素を含む五員環を有する化合物と、を混合することにより得られる。この反応溶液の作製方法は、これらを均一に分散できるのであれば、特に限定されない。反応溶液の作製方法としては、例えば、加水分解生成物および窒素を含む五員環を有する化合物を、撹拌機、ビーズミル、ボールミル、アトライターおよびディゾルバー等を使用して混合する方法が挙げられる。
【0089】
また、本実施形態においては、反応溶液に水を添加し、反応溶液の濃度調整を行ってもよい。反応溶液に添加される水としては、例えば、脱イオン水、蒸留水または純水等が挙げられる。
【0090】
本実施形態に係る水熱合成後の溶液のpHは、9〜13が好ましく、11〜13が好ましい。本実施形態においては、窒素を含む五員環を有する化合物の配合量を制御することによって、水熱合成後の溶液のpHを上述の範囲内に制御することが可能である。
【0091】
本実施形態において、水熱合成後の溶液のpHが9よりも小さいと、核形成に対する窒素を含む五員環を有する化合物の触媒作用が小さくなることがある。これにより、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が遅くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が少なくなる場合がある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が大きくなりすぎてしまうことがある。
【0092】
一方、水熱合成後の溶液のpHが13よりも大きいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が速くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が多くなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が小さくなりすぎてしまうことがある。
【0093】
また、水熱合成後の溶液のpHが13よりも大きいと、反応溶液の分散性が変化し、生成する酸化チタン粒子の粒度分布が広くなりすぎることがある。
【0094】
本実施形態において、反応溶液のpHを調整することにより、得られるアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子の形状、平均一次粒子径および粒度分布を制御することができる。
【0095】
本実施形態に係る反応溶液中のチタン原子濃度は、酸化チタン粒子の所望の平均一次粒子径に応じて適宜設定することができる。反応溶液中のチタン原子濃度は、0.05mol/L〜3.0mol/Lが好ましく、0.5mol/L〜2.5mol/Lがより好ましい。本実施形態においては、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物の含有量を制御することによって、反応溶液中のチタン原子濃度を上述の範囲内に制御することができる。
【0096】
本実施形態において、反応溶液中におけるチタン原子濃度が0.05mol/Lよりも小さいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が遅くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核の数が少なくなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は大きくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が大きくなりすぎてしまうことがある。
【0097】
一方、反応溶液中におけるチタン原子濃度が3.0mol/Lよりも大きいと、反応溶液中に生成する酸化チタン粒子の核生成速度が速くなり、反応溶液中に酸化チタン粒子の核が多くなることがある。これにより、個々の酸化チタン粒子の一次粒子径は小さくなり、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径が小さくなりすぎてしまうことがある。
【0098】
また、反応溶液中におけるチタン原子濃度が3.0mol/Lよりも大きいと、反応溶液の分散性が変化し、生成する酸化チタン粒子の粒度分布が広くなりすぎることがある。
【0099】
本実施形態において、反応溶液中のチタン原子と窒素を含む五員環を有する化合物とのモル比は、1.00:0.10〜1.00:1.00の範囲が好ましく、1.00:0.10〜1.00:0.70の範囲がより好ましい。反応溶液中のチタン原子と窒素を含む五員環を有する化合物とのモル比が上述の範囲内であると、粒度分布が狭く、結晶性に優れた酸化チタン粒子を合成できる。
【0100】
本実施形態において、上述の反応溶液を高温高圧の熱水の存在下で反応させることにより、アナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を製造することができる。このように高温高圧の熱水の存在下で反応させる合成を水熱合成という。本実施形態の水熱合成では、密閉可能な高温高圧容器(オートクレーブ)が好ましく使用される。
【0101】
本実施形態の水熱合成における加熱温度は、150〜350℃が好ましく、150〜210℃がより好ましい。本実施形態において、室温から上述の温度範囲までの加熱速度は、特に限定されない。また、本実施形態の水熱合成における圧力は、密閉容器において反応溶液を上述の温度範囲に加熱したときの圧力に設定される。
【0102】
水熱合成における加熱温度が上述の範囲内であると、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物の水への溶解性が向上し、反応溶液中で溶解させることができる。さらに、水熱合成における加熱温度が上述の範囲内であると、酸化チタン粒子の核を生成でき、その核を成長させることができる。これにより所望のアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を製造することができる。
【0103】
本実施形態の水熱合成における加熱時間は、金属酸化物粒子が所望の大きさになるように適宜調整して実施すればよいが、3時間以上が好ましく、4時間以上がより好ましい。
加熱時間が3時間よりも短いと、原料(チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物)が消費されず、収率が低下することがある。加熱時間は、原料の種類や濃度に影響されるため、適宜予備実験をして、金属酸化物粒子が所望の大きさになるような加熱時間で実施すればよい。例えば、加熱時間は9時間であってもよく、12時間であってもよく、24時間であってもよく、48時間であってもよく、72時間であってもよい。ただし、生産効率の観点から、金属酸化物粒子が所望の大きさに達した時点で加熱をやめてもよい。
【0104】
本実施形態において、上述の反応溶液からアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を取り出す方法としては、例えば、デカンテーションやヌッチェ法等により固液分離する方法が挙げられる。アナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を取り出した後、不純物を低減させる目的で、得られた粒状酸化チタン粒子を純水等で洗浄してもよい。
【0105】
取り出したアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を公知の方法で乾燥させることにより、所望のアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を得ることができる。
【0106】
本実施形態では、スターラーまたは撹拌羽等の攪拌装置を用いて、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物を含む溶液や、反応溶液を強制的に撹拌させることが好ましい。本実施形態における攪拌速度は、例えば、100rpm〜300rpmが好ましい。
【0107】
(金属酸化物粉体の製造方法)
第一の金属酸化物粒子と第二の金属酸化物粒子の混合方法は、特に限定されず、公知の器具や装置を用いて混合する方法が挙げられる。公知の器具としては例えば、乳鉢等が挙げられる。公知の装置としては例えば、ミキサーやボールミル等が挙げられる。
【0108】
本実施形態によれば、光散乱性に優れ、かつ分散液や化粧料に含有させたときに、その分散液や化粧料が、被塗布物(被塗布面)への密着性に優れた金属酸化物粉体を得ることができる。
【0109】
[表面処理]
本実施形態においては、金属酸化物粒子の表面に、表面処理剤を形成材料とする表面処理層を有してもよい。
【0110】
上述の表面処理剤は、特に限定されず、金属酸化物粉体の用途に応じて適宜選択することができる。以下、本実施形態の金属酸化物粉体が化粧料に含まれる場合を示して、本実施形態に係る表面処理剤の一例を説明するが、本実施形態に係る表面処理剤はこれらに限定されない。
【0111】
本実施形態の表面処理剤は、従来化粧料に用いられる表面処理剤であれば、特に限定されず、無機成分または有機成分のいずれかを使用することができる。
【0112】
上述の無機成分としては、例えば、シリカ、アルミナ等が挙げられる。上述の有機成分としては、例えば、シリコーン化合物、オルガノポリシロキサン、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステル及び有機チタネート化合物からなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
また、無機成分または有機成分としては、界面活性剤を用いてもよい。
【0113】
上述のシリコーン化合物としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーンオイル、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルシラン、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、メチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマーまたはトリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。また、シリコーン化合物としては、これらのシリコーン化合物の共重合体を用いてもよい。
【0114】
これらのシリコーン化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
上述の脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0116】
上述の脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0117】
上述の脂肪酸エステルとしては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0118】
上述の有機チタネート化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネートまたはネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0119】
以上のように、本実施形態の金属酸化物粉体が化粧料に含まれる場合を示して、本実施形態に係る表面処理剤の一例を説明した。本実施形態の金属酸化物粉体が、紫外線遮蔽フィルムやガスバリア性フィルム等に含まれる場合には、上述した表面処理剤以外に、一般的な分散剤も使用することができる。一般的な分散剤としては、例えば、アニオン系分散剤、カチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、シランカップリング剤または湿潤分散剤等が挙げられる。
【0120】
本実施形態に係る金属酸化物粒子の表面に、表面処理剤を形成材料とする表面処理層を形成する方法は、特に限定されず、表面処理剤の種類に応じて、公知の方法を採用することができる。
【0121】
本実施形態によれば、光散乱性に優れた金属酸化物粉体を得ることができる。また、金属酸化物粉体を上述の表面処理剤で表面処理することにより、金属酸化物粉体の表面活性を抑制し、分散性を向上させることができる。
【0122】
[分散液]
本実施形態の分散液は、上述の金属酸化物粉体と、分散液とを含んでいる。本実施形態の分散液は、粘度が高いペースト状の分散体も含む。
【0123】
本実施形態の分散液に含まれる分散媒は、分散液の用途に応じて、適宜選択することができる。以下に、本実施形態に係る分散媒の一例を説明するが、本実施形態の分散媒はこれらに限定されない。
【0124】
本実施形態に係る分散媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素、アミド類、ポリシロキサン類またはポリシロキサン類の変性体が挙げられる。
【0125】
上述のアルコール類としては、例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、オクタノール、グリセリン等が好ましい。
【0126】
上述のエステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等が好ましい。
【0127】
上述のエーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が好ましい。
【0128】
上述のケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等が好ましい。
【0129】
上述の炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン等の環状炭化水素が好ましい。
【0130】
上述のアミド類としては、例えば、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等が好ましい。
【0131】
上述のポリシロキサン類としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン類や、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン類が好ましい。
【0132】
上述のポリシロキサン類の変性体としては、例えば、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が好ましい。
【0133】
また、他の分散媒としては、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等の疎水性の分散媒を用いてもよい。
【0134】
本実施形態の分散媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0135】
本実施形態の分散液に含まれる分散媒の含有量は、分散液の用途に応じて適宜調整することができる。分散液の質量に対する分散媒の含有量は、例えば、10質量%以上かつ99質量%以下であることが好ましく、20質量%以上かつ90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上かつ80質量%以下がさらに好ましい。
【0136】
本実施形態の分散液は、本発明の効果を損なわない範囲において、分散液に一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。上述の添加剤としては、例えば、分散剤、安定剤、水溶性バインダー、増粘剤、油溶性防腐剤、紫外線吸収剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、植物油または動物油等が挙げられる。
【0137】
本実施形態に係る分散液の製造方法は、特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、本実施形態の金属酸化物粉体を、分散媒に対して、分散装置で機械的に分散させることにより、分散液を得ることができる。
【0138】
上述の分散装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー、サンドミル、ボールミルまたはロールミル等が挙げられる。
【0139】
本実施形態によれば、光散乱性に優れ、かつ被塗布物への密着性に優れた分散液を得ることができる。
【0140】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、上述の金属酸化物粉体および分散液からなる群から選択される少なくとも一種を含む。
別の一実施形態の化粧料は、化粧品基剤原料と、本実施形態の酸化亜鉛粉体および本実施形態の分散液からなる群から選択される少なくとも1種を含有してなる。

化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料を意味し、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。 粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
【0141】
本実施形態の金属酸化物粉体および分散液からなる群から選択される少なくとも一種は、従来公知の化粧料に配合して用いられる。これらの成分を、化粧料の質量に対して0.1〜50質量%の範囲で配合することが好ましい。
【0142】
本実施形態に係る化粧料の配合方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、金属酸化物粉体および分散液からなる群から選択される少なくとも一種を、あらかじめ化粧品基剤原料に配合してから、他の化粧料成分を配合してもよいし、既存の化粧料に後から配合してもよい。
【0143】
本実施形態の化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、軟膏、ファンデーション、リップクリーム、リップスティック、マスカラ、アイシャドー、眉墨、ネールエナメル、チークカラーなどが挙げられる。
【0144】
本実施形態の化粧料は、金属酸化物粉体の特性に応じて適宜選択すればよい。例えば、酸化チタン粉体は、紫外線遮蔽性およびシミやしわ等を隠す隠蔽性の特性があることからファンデーション等のメイクアップ化粧料に用いることが好ましい。この酸化チタン粉体の形成材料としては、肌色に近い色調を有することから、アナターゼ型の酸化チタン粒子を用いることが好ましく、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ型の酸化チタン粒子を用いることがより好ましい。
【0145】
ここで、金属酸化物粒子の主露出面は、次のようにして求めた値を採用する。FE−TEMを用いて、金属酸化物粒子の格子像を観察し、面間隔から露出結晶面を決定する。このとき2種類以上の主露出結晶面が観察される場合には、露出表面が不定であるとする。
【0146】
本実施形態に係る化粧料の様態としては、特に限定されず、固形状、液状、ジェル状等が挙げられる。また、化粧料の様態が液状やジェル状の場合には、化粧料の分散形態も特に限定されず、油中水型(W/O型)エマルジョン、水中油型(O/W型)エマルジョン、油型、水型等のいずれかを選択することができる。
【0147】
本実施形態の化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲において、上述の金属酸化物粉体以外に従来、化粧料に用いられる公知の成分が配合されていてもよい。公知の成分としては、例えば、溶媒、油剤、界面活性剤、保湿剤、有機紫外線吸収剤、酸化防止剤、増粘剤、香料、着色剤、生理活性成分、抗菌剤等が挙げられる。
【0148】
本実施形態によれば、光散乱性に優れ、かつ被塗布物への密着性に優れた化粧料を得ることができる。
【0149】
<第二実施形態>
本発明の第一実施形態と第二実施形態とで異なるのは、金属酸化物粉体の製造方法において、第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子を同時に製造することである。したがって、本実施形態において、第一実施形態と共通する部分の説明は適宜省略する。
【0150】
[金属酸化物粉体の製造方法]
本実施形態に係る金属酸化物粉体の製造方法の一例を説明する。以下の説明では、第一の金属酸化物粒子として平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下の星型酸化チタン粒子を用いる。また、第二の金属酸化物粒子として平均一次粒子径が1nm以上かつ40nm以下のアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子を用いる。
【0151】
本実施形態の酸化チタン粉体は、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物と、有機アルカリ類とを混合して反応溶液を作製し、この反応溶液を高温高圧の熱水の存在下で反応(水熱合成)させることにより製造することができる。
【0152】
本実施形態のチタンアルコキシドまたはチタン金属塩は、第一実施形態で使用できるものと同じものを使用することができる。したがって、これらの加水分解生成物も第一実施形態と同じものが得られる。
【0153】
本実施形態の有機アルカリ類は、反応溶液のpH調整剤としての機能と、後述する水熱合成の触媒としての機能とを有する。この有機アルカリ類としては、例えば、アミン類、高分子アミンおよび高分子アミンの塩、アンモニアまたは窒素を含む五員環を有する化合物等が挙げられる。
【0154】
上述のアミン類としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0155】
上述の高分子アミンおよび高分子アミンの塩としては、上述のアミン類からなる高分子アミンおよび高分子アミンの塩が挙げられる。
【0156】
上述の窒素を含む五員環を有する化合物としては、第一実施形態で使用できるものと同じものを使用できる。
【0157】
本実施形態においては、第一実施形態と同様に、反応溶液に水を添加し、反応溶液の濃度調整を行ってもよい。
【0158】
本実施形態に係る水熱反応後の溶液のpHは、9〜11が好ましく、9.5〜10.5が好ましい。本実施形態においては、有機アルカリ類の配合量を制御することによって、水熱反応後の溶液のpHを上述の範囲内に制御することが可能である。
【0159】
実施形態において、反応溶液のpHを調整することにより、得られる酸化チタン粒子の形状、平均一次粒子径および粒度分布を制御することができる。
【0160】
本実施形態に係る反応溶液中のチタン原子濃度は、酸化チタン粒子の所望の平均一次粒子径に応じて適宜設定することができる。反応溶液中のチタン原子濃度は、0.05mol/L〜10mol/Lが好ましく、0.1mol/L〜2.5mol/Lがより好ましい。本実施形態においては、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物の含有量を制御することによって、反応溶液中のチタン原子濃度を上述の範囲内に制御することができる。
【0161】
本実施形態に係る反応溶液中のチタン原子濃度が上述の範囲内であることによって、得られる酸化チタン粒子の平均一次粒子径を制御することができる。
【0162】
本実施形態において、反応溶液のpHおよびチタン原子濃度が上述の範囲内になるように制御することで、反応溶液は、スラリー状となる。
【0163】
本実施形態において、窒素を含む五員環を有する化合物の配合量は、加水分解生成物中のチタン原子1molに対して0.008mol〜0.09molが好ましく、0.009mol〜0.08molがより好ましく、0.01mol〜0.07molがさらに好ましい。
【0164】
本実施形態において、上述の反応溶液を用いて水熱合成を行うことにより、反応溶液中のチタンアルコキシドの加水分解生成物又はチタン金属塩の加水分解生成物は、高温及び加圧下で分解するとともに、得られたチタン源の結晶成長が進行する。本実施形態の水熱合成では、第一実施形態と同様に、密閉可能な高温高圧容器(オートクレーブ)が好ましく使用される。
【0165】
本実施形態の水熱合成における加熱温度は、200℃〜350℃が好ましく、210℃〜350℃がより好ましく、220℃〜350℃がさらに好ましい。本実施形態において、室温から上述の温度範囲までの加熱速度は、特に限定されない。
【0166】
本実施形態の水熱合成における加熱時間は、2時間以上が好ましく、6時間〜12時間がより好ましい。
【0167】
本実施形態の水熱合成では、予備加熱(予め反応溶液を上述の温度範囲よりも低い温度で加熱すること)を行わないことが好ましい。例えば、70℃〜150℃の温度範囲で予備加熱を1時間以上行うと、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下である星型酸化チタン粒子のみが形成され、所望の酸化チタン粉体を得ることができない。これに対して、予備加熱を行わないことにより、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下である星型酸化チタン粒子に加えて、平均一次粒子径が1nm以上かつ40nm以下の酸化チタン粒子が形成される。
【0168】
この反応溶液から酸化チタン粉体を取り出し、乾燥させる方法としては、第一実施形態と同じ方法を採用することができる。
【0169】
本実施形態では、スターラーまたは撹拌羽等の攪拌装置を用いて、チタンアルコキシドまたはチタン金属塩の加水分解生成物を含む溶液や、反応溶液を強制的に撹拌させることが好ましい。本実施形態における攪拌速度は、例えば、100rpm〜300rpmが好ましい。
【0170】
このようにして、平均一次粒子径が100nm以上かつ1000nm以下である星型酸化チタン粒子と、平均一次粒子径が1nm以上かつ40nm以下の酸化チタン粒子を、同時に製造することができる。
【0171】
本実施形態によれば、光散乱性に優れ、かつ分散液や化粧料に含有させたときに、その分散液や化粧料が、被塗布物への密着性に優れた金属酸化物粉体を得ることができる。本実施形態では、第一の金属酸化物粒子および第二の金属酸化物粒子を同時に製造することができるため、両者が均一に混合された金属酸化物粉体が得られやすい。そのため、本実施形態の分散液および化粧料は、第一実施形態の分散液および化粧料に比べて、被塗布物への密着性により優れている。
【実施例】
【0172】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
本実施例では金属酸化物粒子の一例として酸化チタン粒子を用いた。
【0173】
<酸化チタン粉体の作製および評価>
[酸化チタン粒子の結晶相の同定]
酸化チタン粒子の結晶相は、X線回折装置(スペクトリス株式会社製、X’Pert PRO)を用いて同定した。
【0174】
[酸化チタン粒子の主露出面の同定]
酸化チタン粒子の主露出面は、FE−TEM(日本電子株式会社製、JEM−2100F)を用いて同定した。具体的には、FE−TEMで酸化チタン粒子の格子像を観察し、面間隔から露出結晶面を決定した。このとき2種類以上の主露出結晶面が観察される場合には、露出表面が不定であるとした。
【0175】
[酸化チタン粒子の一次粒子径および平均一次粒子径の測定]
酸化チタン粒子の一次粒子径は、画像解析装置を用いて測定した。一次粒子径は、SEM画像における各金属酸化物粒子を、2本の平行線で挟んだときに平行線の間隔が最大になる値(最大フェレー径(JIS Z 8827−1:2008))を採用した。この一次粒子径を、ランダムに100個測定し、得られた測定値を加重平均した値を平均一次粒子径とした。酸化チタン粒子が凝集体(二次粒子)を形成している場合には、この二次粒子を構成する一次粒子の一次粒子径を、ランダムに100個測定し、平均一次粒子径とした。
【0176】
[酸化チタン粒子および一次粒子径が100nm未満の粒子の質量の測定]
酸化チタン粒子の質量の測定方法を説明する。まず、SEM画像上で、酸化チタン粒子の一次粒子径(単位:nm)をランダムに100個測定した。次いで、この一次粒子径から酸化チタン粒子の体積(単位:nm)を算出した。
【0177】
このとき、星型酸化チタン粒子の体積は、次のようにして求めた。
まず、星型酸化チタン粒子を、中心軸Zを含む仮想平面を用い、稜線と、2つの稜線に挟まれた谷線と、に沿って分割したとすると、星型酸化チタン粒子は、図1の平面図において色付けした三角錐が12個集合して構成されているものと考えることができる。ここで、構成単位である三角錐は、図2の断面図を中心軸Zで分割した図中右の二等辺三角形を底面として考えるものとする。
【0178】
このように考えた場合、上述の三角錐の高さは、結晶学的には一次粒子径の0.142倍となる。
また、上述の三角錐の底面である二等辺三角形について、二等辺三角形の底辺は、結晶学的には一次粒子径の0.563倍となる。
また、二等辺三角形の高さは、結晶学的には一次粒子径の0.5倍となる。
【0179】
これらの数値から、上述の構成単位である三角錐の体積を求め、得られた三角錐の体積を12倍すると、星型酸化チタン粒子の体積が概算できる。すなわち、星型酸化チタン粒子の体積は、下記式(1)で求めることができる。本実施例においては、星型酸化チタン粒子の体積は、下記式(1)に基づいて算出した。
星型酸化チタン粒子の体積=0.08×(一次粒子径) …(1)
【0180】
また、酸化チタン粒子の形状を球で近似できる場合には、球の体積を求める式に基づいて、酸化チタン粒子の体積を算出した。この体積に酸化チタン粒子の密度を乗じることにより、酸化チタン粒子の質量を算出した。
【0181】
[酸化チタン粒子の含有量に係る測定]
酸化チタン粉体の質量に対する、酸化チタン粒子の含有量は、高周波ICP発光分光装置(株式会社リガク社製、CIROS−120 EOP)を用いて測定した。
【0182】
[製造例1]
(加水分解)
容量1Lのガラス容器に10℃に冷却した純水250mLを入れた。この純水に、撹拌羽を用いて300rpmで撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(株式会社高純度化学研究所製)71gを、滴下ロートを用いて滴下し、1時間反応させた。これにより、チタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物を含む白色の水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を、ヌッチェおよび濾紙(東洋濾紙株式会社製、No2)を用いて吸引濾過し、チタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物を白色のケーキ状固体として得た。このケーキ状固体を、純水500mLを用いて洗浄した。
【0183】
(反応溶液の調製)
洗浄後のチタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物と、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド26%水溶液(東京化成工業株式会社製)1.4gと、を純水中に入れ、総質量が200gになるように反応溶液を調製した。反応溶液中に含まれるチタン原子濃度は1.25mol/Lであることを確認した。
【0184】
(水熱合成)
上述の反応溶液を、オートクレーブに入れ、120℃で4時間予備加熱を行った。その後、反応溶液を270℃で12時間加熱し、反応させることにより、酸化チタン粒子を含む白色の水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を、ヌッチェおよび濾紙(東洋濾紙株式会社製、No2)を用いて吸引濾過し、酸化チタン粒子を含む白色のケーキ状固体を得た。このケーキ状固体を、純水500mLを用いて洗浄し、120℃で一昼夜乾燥させることにより、製造例1の酸化チタン粒子を得た。
【0185】
製造例1の酸化チタン粒子は、平均一次粒子径は300nmの星型酸化チタン粒子であることがわかった。この酸化チタン粒子は、主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ型の星型酸化チタン粒子であることがわかった。
【0186】
[製造例2]
(加水分解)
容量2Lのガラス容器に10℃に冷却した純水1Lを入れた。この純水に、撹拌羽を用いて300rpmで撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド(株式会社高純度化学研究所製)71gを、滴下ロートを用いて滴下し、1時間反応させた。これにより、チタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物を含む白色の水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を、ヌッチェおよび濾紙(東洋濾紙株式会社製、No2)を用いて吸引濾過し、チタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物を白色のケーキ状固体として得た。このケーキ状固体を、純水500mLを用いて洗浄した。
【0187】
(反応溶液の調製)
洗浄後のチタンテトライソプロポキシドの加水分解生成物と、ピロリジン(関東化学株式会社製)2.5gと、を純水中に入れ、総質量が1kgになるように反応溶液を調製した。また、反応溶液中に含まれるチタン原子濃度は0.25mol/Lであることを確認した。
【0188】
(水熱合成)
上述の反応溶液を、オートクレーブに入れ、200℃で9時間加熱し、反応させることにより、酸化チタン粒子を含む白色の水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を、ヌッチェおよび濾紙(東洋濾紙株式会社製、No2)を用いて吸引濾過し、酸化チタン粒子を含む白色のケーキ状固体を得た。このケーキ状固体を、純水500mLを用いて洗浄し、120℃で一昼夜乾燥させることにより、製造例2の酸化チタン粒子を得た。
【0189】
製造例2の酸化チタン粒子は主露出結晶面が(101)面であるアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子であることがわかった。この酸化チタン粒子の平均一次粒子径は20nmであることがわかった。
【0190】
[製造例3]
反応溶液を、予備加熱を行わずに、250℃で8時間加熱したこと以外は、製造例1と同様にして行い、製造例3の酸化チタン粒子を得た。
【0191】
製造例3の酸化チタン粒子には、主露出結晶面が(101)面である酸化チタン粒子が含まれることがわかった。また、平均一次粒子径は300nmの星型酸化チタン粒子と、平均一次粒子径は20nmの粒状酸化チタン粒子とが含まれていることがわかった。
【0192】
表1に、製造例1〜3で製造した酸化チタン粒子の形状、平均一次粒子径、結晶相および主露出結晶面を示した。
【0193】
【表1】
【0194】
[実施例1]
製造例1で作製した星型酸化チタン粒子1.99gと、製造例2で作製したアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子0.01gとを乳鉢で混合することにより、実施例1の酸化チタン粉体を得た。
【0195】
得られた酸化チタン粉体には、一次粒子径が100nm未満である粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して0.5質量%含まれていることがわかった。この酸化チタン粉体には、星型酸化チタン粒子およびアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して99.9質量%含まれていることがわかった。すなわち、酸化チタン粒子以外のものは実質的に含有されておらず、高純度な酸化チタン粒子が得られていることが確認された。
【0196】
[実施例2]
製造例1で作製した星型酸化チタン粒子1.84gと、製造例2で作製したアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子0.16gとを乳鉢で混合することにより、実施例2の酸化チタン粉体を得た。
【0197】
得られた酸化チタン粉体には、一次粒子径が100nm未満である粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して8質量%含まれていることがわかった。この酸化チタン粉体には、星型酸化チタン粒子およびアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して99.9質量%含まれていることがわかった。
【0198】
[実施例3]
製造例1で作製した星型酸化チタン粒子を1.96g、製造例2で作製したアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子0.04gを乳鉢で混合することにより、実施例3の酸化チタン粉体を得た。
【0199】
得られた酸化チタン粉体には、一次粒子径が100nm未満である粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して2質量%含まれていることがわかった。さらに、この酸化チタン粉体には、星型酸化チタン粒子およびアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して99.9質量%含まれていることがわかった。
【0200】
[実施例4]
製造例3で作製した酸化チタン粒子2gを用いて、実施例4の酸化チタン粉体を得た。図4に、実施例4に係る酸化チタン粉体のSEM画像を示した。得られた酸化チタン粉体には、一次粒子径が100nm未満の粒子が、酸化チタン粒子の総質量に対して1.5質量%含まれていることがわかった。また、100nm未満の星型酸化チタン粒子は、一次粒子径が100nm未満の粒子の総質量に対して0.2質量%含まれていることがわかった。この酸化チタン粒子には、星型酸化チタン粒子およびアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して99.9質量%含まれていることがわかった。
【0201】
[比較例1]
製造例1で作製した星型酸化チタン粒子2gを用いて、比較例1の酸化チタン粉体を得た。図5に、比較例1に係る酸化チタン粉体のSEM画像を示した。得られた酸化チタン粉体に、一次粒子径が100nm未満の粒子は含まれていなかった。
【0202】
[比較例2]
製造例1で作製した星型酸化チタン粒子1.6gと、製造例2で作製したアナターゼ型の粒状酸化チタン粒子0.4gとを乳鉢で混合することにより、比較例2の酸化チタン粉体を得た。図6に、比較例2に係る酸化チタン粉体のSEM画像を示した。得られた酸化チタン粉体には、一次粒子径が100nm未満の粒子が、酸化チタン粉体の総質量に対して20質量%含まれていることがわかった。
【0203】
<化粧料の作製および評価>
酸化チタン粉体と、従来、ファンデーション用の基剤として用いられるタルクとを混合することにより、疑似的にファンデーションを作製した。具体的には、実施例および比較例の酸化チタン粉体2gと、タルク8gとを乳鉢で混合することにより、評価用粉体を得た。
【0204】
得られた評価用粉体を、50mm角の基板(ヘリオスクリーン社製、ヘリオプレートHD−6)に、膜厚が3μmとなるように載せ、評価サンプルを作製した。
【0205】
[光散乱性の評価]
得られた評価サンプルについて、450nm、600nm、750nmにおける積分反射率を測定することにより、実施例1〜4、及び比較例1〜2の酸化チタン粉体の光散乱性を評価した。評価サンプルの積分反射率は、紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−3150)で測定した。積分反射率が100%である基準サンプルとしては、硫酸バリウム(関東化学社製)の圧粉体を用いた。
【0206】
[密着性の評価]
得られた評価サンプルに、密着性試験用テープ(ニチバン社製 CT−12)を、50mm×12mmとなるように貼り付けた後、ゆっくりと剥がして評価サンプルの質量(A)を測定した。あらかじめ測定した基板の質量(B)、評価サンプルの質量(C)を用いて、実施例1〜3の酸化チタン粉体における剥離率を、下記式(2)に基づいて算出した。
剥離率(%)=100×(C−A)/(C−B) …(2)
【0207】
表2に、実施例および比較例で作製した酸化チタン粉体の光散乱性および密着性の評価結果を示した。
【0208】
【表2】
【0209】
本実施例において、本発明の酸化チタン粉体は、光散乱性に優れていることがわかった。具体的には、実施例1〜4の評価用粉体は、比較例2の評価用粉体に比べて、測定したすべての波長に対して積分反射率が高く、光散乱性に優れていることがわかった。
【0210】
また、本発明の酸化チタン粉体と、タルクとを混合させた評価用粉体は、基板に対して密着性に優れることがわかった。具体的には、実施例1〜4の評価用粉体は、比較例1の評価用粉体に比べて剥離率が低く、基板に対する密着性により優れていた。
【0211】
以上のとおり、本発明の酸化チタン粉体を含有させた化粧料は、光散乱性と基板に対する密着性との両方に優れることがわかった。したがって、本発明の酸化チタン粉体を含有させた化粧料は、隠蔽力と化粧持ちに優れていると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0212】
光散乱性に優れ、かつ分散液や化粧料に含有させたときに密着性に優れた金属酸化物粉体、分散液および化粧料を提供することができる。
【符号の説明】
【0213】
1 第一の突起部
2 第二の突起部
1a 第一の突起部における先端
2a 第二の突起部における先端
10 稜
100、101 第一の金属酸化物粒子
Z 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6