(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の粉体塗料、塗膜付きアルミニウム基材の製造方法、および塗装物品について詳述する。
なお、本明細書において、「単量体に基づく単位」とは、単量体1分子が重合することで直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換することで得られる原子団との総称である。なお、単量体に基づく単位は、以下、単に「単位」ともいう。
重合体や樹脂の数平均分子量および質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。数平均分子量をMnとも言い、質量平均分子量をMwとも言う。
重合体や樹脂のガラス転移温度(以下、Tgとも称する)は、Thermal Analysis System(パーキンエルマー社製)を用い、温度範囲:−25〜250℃、昇温速度:5℃/分の条件にて、重合体や樹脂(10mg)の熱収支を測定し、得られたチャートの変曲点から中点法によって求める温度である。ガラス転移温度は、Tgとも言う。
「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」と「メタクリレート」の総称である。
可塑剤の融点は、Thermal Analysis System(パーキンエルマー社製)を用いて、温度範囲:−25〜200℃、昇温速度:5℃/分の条件にて、可塑剤(10mg)の熱収支を測定し、得られたチャートの融解ピークから求める温度である。
【0012】
本発明の粉体塗料の特徴点は、可塑剤の融点と、コア−シェル型粒子のシェル部の重合体のTgとの差の絶対値と、可塑剤の含有量とを調整している点である。
可塑剤の融点と、上記シェル部の重合体のTgとの差の絶対値が所定範囲内であれば、コア−シェル型粒子が塗膜中でより均一に分散しやすくなり、結果として所望の効果が得られる。また、可塑剤の含有量が所定範囲であれば、Mnが所定範囲にある含フッ素重合体(A)の溶融粘度を充分に下げられ、コア−シェル型粒子が塗膜中においてより均一に分散しやすくなる。そのため、基材への塗膜の密着性と、塗膜の加工性および耐衝撃性とが向上する。また、これらの効果が得られれば、塗膜と基材との界面で発生する腐食が起こりにくくなる。
【0013】
さらに、本発明の別の特徴点は、含フッ素重合体(A)のMnが、所定範囲(10000〜50000)に調整されている点である。
本発明者らは、特許文献2に具体的に開示される粉体塗料を調製し、この粉体塗料を用いて得られる塗膜付きアルミニウム基材を評価した結果(実施例の例8参照)、塗膜の加工性および耐衝撃性に、更なる改良が必要であることを知見した。その原因を鋭意検討した結果、塗膜の加工性および耐衝撃性と、フッ素樹脂の物性と可塑剤の物性とが関連しており、後述する実施例にも示すように、Mnが所定範囲にある含フッ素重合体(A)と特定の可塑剤とを併用する条件において、塗膜の加工性および耐衝撃性とが大幅に改善された塗膜付きアルミニウム基材が得られることを、本発明者らは見出したのである。
【0014】
以下、本発明の粉体塗料に含まれる各成分について詳述する。
本発明における含フッ素重合体(A)のMnは10000〜30000が好ましい。また、加工性が優れる観点から、Mnに対するMwの比(Mw/Mn)は1〜3.5が好ましい。
含フッ素重合体(A)のフッ素含有量は、耐候性に優れる観点から、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は、粉体塗料の分散安定性に優れる観点から、70質量%が好ましく、60質量%がより好ましい。
【0015】
含フッ素重合体(A)は、フルオロオレフィンに基づく単位と、架橋性基を有する単量体に基づく単位と、フッ素原子および架橋性基のいずれも有しない単量体に基づく単位とを有するのが好ましい。
なお、架橋性基を有する単量体としては、塗膜特性に優れる観点から、硬化剤と反応しうる架橋性基を有する単量体が好ましい。具体的には、硬化剤がブロック化イソシアネート系硬化剤であれば、架橋性基を有する単量体は、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有する単量体が好ましく、水酸基を有する単量体がより好ましい。
つまり、含フッ素重合体(A)は、架橋性基を有する含フッ素重合体が好ましく、水酸基を有する含フッ素重合体がより好ましい。含フッ素重合体(A)の水酸基価は、5〜100mgKOH/gが好ましく、7〜95mgKOH/gがより好ましく、9〜90mgKOH/gが特に好ましい。含フッ素重合体(A)の水酸基価が5mgKOH/g以上であれば、硬化剤との架橋反応により強靭な塗膜が得られる。また、含フッ素重合体(A)の水酸基価が100mg/g以下であれば、塗膜の柔軟性や基材への密着性が良好となる。
【0016】
フルオロオレフィンは、オレフィンの水素原子の1個以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数は、塗膜の耐候性がより優れる観点から、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。
フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンは、CF
2=CF
2、CF
2=CFCl、CF
2=CFCF
3、CH
2=CF
2またはCF
2=CHFが好ましく、CF
2=CF
2またはCF
2=CFClがより好ましい。
フルオロオレフィンは、2種以上を用いてもよい。
フルオロオレフィン単位の含有量は、含フッ素重合体(A)が有する全単位に対して、20〜70モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましく、45〜55モル%が特に好ましい。
【0017】
架橋性基を有する単量体は、フッ素原子を有さず、フルオロオレフィンと共重合可能な二重結合を有する単量体であり、式CH
2=CX
1(CH
2)
n1−Q
1−R
1−Y
1で表される単量体が好ましい。
式中、X
1は水素原子またはメチル基であり、n1は0または1であり、Q
1はエーテル性酸素原子、−C(O)O−または−OC(O)−であり、R
1は環構造またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜20のアルキレン基であり、Y
1は架橋性基である。
【0018】
n1は0が好ましい。
Q
1は、エーテル性酸素原子が好ましい。
R
1は、直鎖状のアルキレン基が好ましい。アルキレン基の炭素数は1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、2〜4が特に好ましい。
X
1は、水素原子が好ましい。
Y
1は、活性水素を有する官能基(水酸基、カルボキシル基、アミノ基等)、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基等)、エポキシ基またはオキセタニル基が好ましく、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基がより好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0019】
水酸基を有する単量体の具体例としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルカルボン酸ビニルエステル、ヒドロキシアルキルカルボン酸アリルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシ基を有する単量体の具体例としては、不飽和カルボン酸、飽和多価カルボン酸モノビニルエステル、不飽和ジカルボン酸またはその分子内酸無水物、不飽和カルボン酸モノエステル等が挙げられる。
アミノ基を有する単量体の具体例としては、アミノアルキルビニルエーテル、アミノアルキルアリルエーテル、アミノアルキルカルボン酸ビニルエステル、アミノアルキルカルボン酸アリルエステル、アミノメチルスチレン等が挙げられる。
架橋性基を有する単量体としては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル(2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ヒドロキシアルキルアリルエーテル(2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等)およびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等)が好ましく、共重合性と塗膜の耐候性により優れる観点から、ヒドロキシアルキルビニルエーテルがより好ましく、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが特に好ましい。
【0020】
架橋性基を有する単量体に基づく単位の含有量は、含フッ素重合体(A)が有する全単位に対して、5〜40モル%が好ましく、8〜35モル%がより好ましい。
【0021】
フッ素原子および架橋性基のいずれも有しない単量体は、フルオロオレフィンおよび架橋性基を有する単量体と共重合可能な二重結合を有する単量体であり、式CH
2=CX
2(CH
2)
n2−Q
2−R
2で表される単量体が望ましい。
式中、X
2は水素原子またはメチル基であり、n
2は0または1であり、Q
2はエーテル性酸素原子、−C(O)O−または−OC(O)−であり、R
2は環構造またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよい炭素数2〜20のアルキル基である。
該単量体の具体例としては、アルキルビニルエーテル、アルキルカルボン酸ビニルエステル、アルキルアリルエーテル、アルキルカルボン酸アリルエステル、アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルキルビニルエーテルが好ましい。アルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルまたは2−エチルへキシルビニルエーテルが好ましい。
【0022】
該単量体に基づく単位の含有量は、含フッ素重合体(A)が有する全単位に対して、0〜50モル%が好ましく、3〜45モル%がより好ましく、5〜40モル%が特に好ましい。
【0023】
本発明における樹脂(B)は、フッ素含有量が10質量%未満である含フッ素重合体またはフッ素原子を含まない樹脂である。樹脂(B)である上記含フッ素重合体のフッ素含有量は、8質量%以下、かつ0質量%超であるのが好ましい。
樹脂(B)としてはフッ素原子を含まない樹脂が好ましく、そのうちでも、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂およびシリコーン樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0024】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに基づく単位を主たる単位とする重合体からなる樹脂である。
(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基、水酸基またはスルホ基を有するのが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の数平均分子量は、5000〜100000が好ましく、30000〜100000がより好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸化合物に基づく単位と多価アルコール化合物に基づく単位とが、エステル結合で連結した重合体からなる樹脂である。また、ヒドロキシカルボン酸に基づく単位や環状エステルの開環した単位がエステル結合で連結した重合体からなるポリエステル樹脂であってもよい。ポリエステル樹脂は、これら単位以外の単位を有していてもよい。ポリエステル樹脂は、重合鎖の末端にカルボキシル基および水酸基の少なくとも一方を有するのが好ましい。
【0026】
多価カルボン酸化合物の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フタル酸無水物等が挙げられ、塗膜の耐候性がより優れる観点から、イソフタル酸が好ましい。
多価アルコール化合物は、塗膜と基材との密着性および塗膜の柔軟性が優れる観点から、脂肪族多価アルコール化合物または脂環族多価アルコール化合物が好ましく、脂肪族多価アルコール化合物がより好ましい。
多価アルコール化合物の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、4−ヒドロキシ酪酸等が挙げられ、環状エステルの具体例としては、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
ポリエステル樹脂のMnは、塗膜の溶融粘度を適度に低くできる観点から、5000以下が好ましい。
【0027】
ポリウレタン樹脂の具体例としては、ポリオール(アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリプロピレングリコール等)と、イソシアネート化合物とを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂は、分子内にエポキシ基を2つ以上有する樹脂である。エポキシ樹脂は、エポキシ基以外の他の反応性基をさらに有してもよい。
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等が挙げられる。
シリコーン樹脂の具体例としては、ジメチルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のポリアリールシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のポリアルキルアリールシロキサンからなるシリコーン等のシリコーン樹脂、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等の変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0028】
本発明における硬化剤は、水酸基と反応する基を2以上有する化合物であるのが好ましい。硬化剤の具体例としては、ブロック化イソシアネート系硬化剤、アミン系硬化剤(メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等)、β−ヒドロキシアルキルアミド系硬化剤、エポキシ系硬化剤(トリグリシジルイソシアヌレート等)等が挙げられ、ブロック化イソシアネート系硬化剤が好ましい。
【0029】
ブロック化イソシアネート系硬化剤は、25℃で固体であるのが好ましく、脂肪族、芳香族または芳香脂肪族のジイソシアネートと、活性水素を有する低分子化合物とを反応させて得られたポリイソシアネートを、さらにブロック剤と反応させて得られるブロック化イソシアネート系硬化剤が特に好ましい。
【0030】
ジイソシアネートの具体例としては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
活性水素を有する低分子化合物の具体例としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビトール、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソシアヌレート、ウレチジオン、水酸基を含有する低分子量ポリエステル、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
ブロック剤の具体例としては、アルコール系化合物(メタノール、エタノール、ベンジルアルコール等)、フェノール系化合物(フェノール、クレゾーン等)、ラクタム系化合物(カプロラクタム、ブチロラクタム等)、オキシム系化合物(シクロヘキサノン、オキシム、メチルエチルケトオキシム等)等が挙げられる。
【0031】
本発明における可塑剤の融点は、50〜150℃であり、塗膜の加工性および耐衝撃性がより優れる観点から、70〜130℃が好ましく、90〜120℃がより好ましい。
可塑剤の分子量は、塗膜の加工性および耐衝撃性がより優れる観点から、200〜1000が好ましく、220〜980がより好ましく、240〜960が特に好ましい。
可塑剤は、1分子中に1〜4個のエステル基(−C(O)O−)を有するのが好ましく、2〜4個のエステル基を有するのがより好ましい。
可塑剤は、さらに、環状炭化水素基を有するのが好ましい。環状炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよく、環状芳香族炭化水素基であってもよい。
【0032】
可塑剤の具体例としては、ジシクロヘキシルフタレート(融点:68℃、分子量:330)、トリ安息香酸グリセリド(融点:68℃、分子量:404)、テトラ安息香酸ペンタエリスリトール(融点:108℃、分子量:552)、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(融点:118℃、分子量:352)、ジステアリン酸エチレングリコール(融点:73.8℃、分子量595)等がある。
【0033】
本発明におけるコア−シェル型粒子は、コア部およびシェル部から構成されるコア−シェル構造を有する粒子である。コア部はゴム(すなわち、ゴム弾性を有する重合体)からなる粒子から構成され、シェル部はゴム弾性を有しない重合体から構成されている。シェル部は1層構造であってもよく、多層構造であってもよい。
【0034】
本発明におけるコア−シェル型粒子は、水酸基を有する。コア−シェル型粒子が有する水酸基は、コア部のゴム粒子に由来していてもよいが、通常は粒子の表面を構成するシェル部の重合体に由来する。すなわち、シェル部の重合体は、水酸基を有する重合体が好ましい。
コア−シェル型粒子の水酸基価は、1〜50mgKOH/gが好ましい。水酸基価が1mgKOH/g以上であると、塗膜からのコア−シェル型粒子の脱落が生じにくく、基材への塗膜の密着性、塗膜の加工性、および塗膜の耐衝撃性が維持されやすい。水酸基価が50mgKOH/g以下であると、塗膜中の架橋密度が高くなりすぎず、塗膜が脆くなりにくい。
コア−シェル型粒子の平均粒子径は、0.1〜100μmが好ましく、0.1〜20μmがより好ましく、0.1〜5μmが特に好ましい。
【0035】
コア−シェル型粒子におけるコア部は、ゴム粒子から構成され、ゴムとしては、アクリルゴム、ブタジェンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー等)等が挙げられる。
例えば、アクリルゴムとしては、エチルアクリレート単位と、ブチルアクリレート等の長鎖アルキルアクリレートに基づく単位とを有する共重合体が好ましい。さらにヒドロキシアルキルアクリレート単位を有する共重合体は水酸基を有するアクリルゴムとなる。
【0036】
コア−シェル型粒子におけるシェル部は、ゴム弾性を有しない重合体から構成され、水酸基を有する重合体から構成されるのが好ましい。
水酸基を有する重合体は、水酸基を有する単量体に基づく単位と水酸基を有しない単量体に基づく単位とを有する共重合体が好ましい。水酸基を有する単量体としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート、水酸基を有する不飽和アルコール、水酸基を有するビニルエーテル等が挙げられる。水酸基を有しない単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、オレフィンやスチレン等の不飽和炭化水素、ハロゲン化オレフィン、酢酸ビニル等の不飽和エステル等が挙げられる。
水酸基を有する重合体としては、水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体が好ましい。水酸基を有する(メタ)アクリレート系重合体としては、少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの共重合体が好ましい。
【0037】
コア−シェル型粒子は、通常、コア部となるゴム粒子を含む乳濁駅や懸濁液中でシェル部の重合体となる単量体を重合させることにより、ゴム粒子の周囲に重合体を形成してシェル部とすることにより得られる。コア−シェル型粒子は、市販品を使用できる。
【0038】
コア−シェル型粒子におけるコア部のゴムのTgは、塗膜の加工性および耐衝撃性がより優れる観点から、−70〜0℃が好ましく、−60〜−20℃がより好ましい。
コア−シェル型粒子におけるシェル部の重合体のTgは、塗膜の加工性および耐衝撃性がより優れる観点から、50〜150℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。
本発明における可塑剤の融点と、コア−シェル型粒子のシェル部の重合体のTgとの差の絶対値は、塗膜の加工性および耐衝撃性がより優れる観点から、25℃以内が好ましく、20℃以内がより好ましい。なお、該差の絶対値の下限は、特に制限されず、0℃である。
【0039】
本発明の粉体塗料は、顔料を含有するのが好ましい。
顔料は、無機顔料であってもよく、有機顔料であってもよい。顔料の具体例としては、着色顔料、体質顔料、光輝顔料等が挙げられる。
着色顔料の具体例としては、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等の無機顔料、モノアゾイエロー等のアゾ系顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド等の縮合多環系顔料等の有機顔料が挙げられる。
体質顔料の具体例としては、タルク、マイカ、硫酸バリウム、クレー、炭酸カルシウム等が挙げられる。
光輝顔料の具体例としては、アルミニウム粉、ニッケル粉、金粉、銀粉、青銅粉、銅粉、ステンレス銅粉、マイカ(雲母)、プラスチック粉、グラファイト、ガラスフレーク、鱗片状酸化鉄等が挙げられる。ガラスフレーク、マイカ、プラスチック粉は、金属でコーティングされていてもよい。
本発明の粉体塗料が顔料を含む場合、顔料の含有量は、含フッ素重合体(A)と樹脂(B)との合計質量100質量部に対して、20〜100質量部が好ましい。本発明の粉体塗料は、顔料を含有量が多くても、その分散性が高いため、本発明の効果を損ないにくい。
【0040】
本発明の粉体塗料は、上述した成分以外の他の成分を含有していてもよい。
他の成分の具体例としては、硬化触媒、紫外線吸収剤(各種の有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤等)、光安定剤(ヒンダードアミン光安定剤等)、つや消し剤(超微粉合成シリカ等)、レベリング剤、表面調整剤(塗膜の表面平滑性を向上させる。)、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤等が挙げられる。
【0041】
本発明の粉体塗料における含フッ素重合体(A)の含有量は、粉体塗料全質量に対して、1〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
樹脂(B)は、粉体塗料全質量に対して、1〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。
硬化剤の含有量は、粉体塗料全質量に対して、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
可塑剤の含有量は、粉体塗料全質量に対して、0.1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
コア−シェル型粒子の含有量は、粉体塗料全質量に対して、0.1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
可塑剤の含有量は、含フッ素重合体(A)100質量部に対して、5〜25質量部であり、塗膜の耐衝撃性と加工性とが優れる観点から、10〜22質量部が好ましく、15〜20質量部がより好ましい。
【0042】
本発明の粉体塗料は、粉末状である。
粉末状の粉体塗料の製造方法としては、各成分を混合して得られる混合物を溶融混練して溶融混練物を得て、該溶融混練物で0〜25℃に冷却して得られる固化物を粉砕する方法が挙げられる。また、該固化物の粉砕した後に、さらに分級すれば、任意の粒子径を有する粉末状の粉体塗料が得られる。
溶融混練における、温度は80〜140℃が好ましい。
粉体塗料の平均粒子径は、1〜100μmが好ましく、25〜75μmがより好ましい。
また、本発明の粉末塗料は本発明における樹脂組成物の粉末以外の粉末状成分を有していてもよい。例えば、前記顔料を含まない樹脂組成物の粉末と顔料粉末とを含む粉体塗料であってもよい。
【0043】
本発明の塗装物品は、基材と、基材上に配置された、本発明の粉体塗料から形成された塗膜とを有する。
基材の材質は、無機物、有機物、有機無機複合材等である。
無機物は、例えば、コンクリート、自然石、ガラス、金属(鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮、チタン等)等である。
有機物は、例えば、プラスチック、ゴム、接着剤、木材等である。有機無機複合材は、例えば、繊維強化プラスチック、樹脂強化コンクリート、繊維強化コンクリート等である。
また、基材には、化成処理がされているのが好ましい。
基材の材質は、金属が好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるのが特に好ましい。アルミニウム基材は、防食性に優れ、軽量で外装材等の建築材料用途に適する。
基材の形状、サイズ等は、特に限定されない。
【0044】
なお、基材としてアルミニウム基材を用いた場合、塗装物品は、基材と塗膜との間に、化成処理皮膜または陽極酸化皮膜のいずれか一方をさらに有していてもよい。
化成処理皮膜とは、化成処理剤による処理によって形成される皮膜である。化成処理剤は、後述するクロムを含まない化成処理剤が好ましい。
また、陽極酸化皮膜とは、陽極酸化処理によって形成される皮膜である。
本発明の粉体塗料を用いて形成される塗膜の厚さは、20〜1000μmが好ましく、20〜500μmがより好ましく、20〜300μmが特に好ましい。
【0045】
本発明の塗装物品の製造方法は、本発明の粉体塗料を基材に付与して粉体塗料層を形成し、粉体塗料層に対して加熱処理をして塗膜を形成する方法が好ましい。
粉体塗料層の形成は、例えば、静電塗装法、静電吹付法、静電浸漬法、噴霧法、流動浸漬法、スプレー法、溶射法、プラズマ溶射法等の公知の塗装方法によって実施するのが好ましい。
粉体塗料層の加熱処理(焼き付け処理)は、粉体塗料層を溶融させ溶融状態とした後に、溶融状態の粉体塗料層を冷却して塗膜を形成する方法によって実施するのが好ましい。
加熱処理における温度は、通常120〜300℃であり、硬化剤による架橋反応を充分に進行させて塗膜物性を向上させる観点から、150〜250℃であるのが好ましい。また、加熱処理における加熱時間(焼き付け時間)は、加熱温度によって適宜変更されるが、通常2〜60分間である。
溶融状態の粉体塗料層の冷却は、室温(20〜25℃)まで冷却するのが好ましい。冷却は、急冷および徐冷のいずれでもよく、塗膜の基材密着性の観点から、徐冷が好ましい。
【0046】
本発明の粉体塗料が適用される基材は、アルミニウム基材が好ましい。なお、アルミニウム基材とは、前述したとおり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を意味する。つまり、本発明の塗装物品の製造方法の好適な態様は、以下の塗膜付きアルミニウム基材の製造方法が好ましい。
化成処理剤による処理または陽極酸化処理により形成された皮膜を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材の該皮膜上に、前記本発明の粉体塗料を付与して粉体塗料層を形成し、該粉体塗料層を加熱処理して塗膜を形成することを特徴とする塗膜付きアルミニウム基材の製造方法。
【0047】
上記製造方法において、化成処理剤による処理または陽極酸化処理により形成された皮膜を有するアルミニウム基材は、酸エッチング処理およびアルカリエッチング処理の少なくとも一方を施すことにより得られたアルミニウム基材に上記皮膜を形成して得られたものであることが好ましい。このエッチング処理により、アルミニウム基材上に形成されている自然酸化皮膜を除去できる。なお、エッチング処理の前に、アルミニウム基材は、脱脂処理または水洗処理がされていてもよい。
酸エッチング処理における酸は、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等である。
アルカリエッチング処理におけるアルカリは、例えば、カセイソーダ、カセイカリ、メタケイ酸ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、グルコン酸ソーダ等である。
【0048】
酸エッチング処理は、上述した酸を含む溶液(特に水溶液)とアルミニウム基材とを接触させる処理である。酸のエッチング量は、2〜8g/m
2が好ましい。
アルカリエッチング処理は、上述したアルカリを含む溶液(特に水溶液)とアルミニウム基材とを接触させる処理である。アルカリのエッチング量は、1〜5g/m
2が好ましい。
なお、エッチング処理の後に生成したスマットを除去するデスマット処理または水洗処理をしてもよい。
【0049】
エッチング処理された基材に対して、化成処理剤を用いた化成処理または陽極酸化処理を行うことにより、化成処理によって形成される化成処理皮膜、または陽極酸化処理によって形成される陽極酸化皮膜のいずれかが形成されたアルミニウム基材が得られる。
【0050】
化成処理剤としては前記のようにクロムを含まない化成処理剤が好ましい。クロムを含まない化成処理剤の具体例としては、ジルコニウム系化成処理剤(ジルコニウム系皮膜処理剤)、チタニウム系化成処理剤(チタニウム系皮膜処理剤)が挙げられる。
化成処理剤を用いた基材の処理の手順としては、化成処理剤中に基材を浸漬する方法や、基材上に化成処理剤を塗布する方法が挙げられる。
ジルコニウム系化成処理剤を用いた場合、基材表面上に付着したジルコニウム原子量は、1〜200mg/m
2が好ましく、2〜150mg/m
2がより好ましい。
チタニウム系化成処理剤を用いた場合、基材表面上に付着したチタン原子量は、0.1〜150mg/m
2が好ましく、0.5〜100mg/m
2がより好ましい。
なお、基材表面上に付着した金属元素量は、蛍光エックス線分析装置で測定できる。
【0051】
陽極酸化処理は、以下の状態にある陽極酸化処理浴槽中に基材を浸漬する態様が挙げられる。
遊離硫酸濃度:100〜200g/L
溶存アルミニウム濃度:25g/L以下
塩素イオン濃度:0.2g/L以下
槽内温度:15〜25℃
電流密度:100A/m
2
なお、陽極酸化皮膜の厚さ(μm)は、0.003×電流密度(A/m
2)×電解時間(分)の算式で求められる。
なお、上記化成処理または陽極酸化処理の後、基材を洗浄する処理をしてもよい。また、陽極酸化処理の後には熱水処理をしてもよい。
【0052】
本発明の製造方法は、本発明の粉体塗料を含む粉体塗料を上記皮膜付アルミニウム基材上の該皮膜上に付与して粉体塗料層を形成し、粉体塗料層に対して加熱処理をして塗膜を形成する製造方法である。
塗膜の形成は、本発明の塗装物品の製造方法と、同様の方法により実施するのが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の説明では、成分割合における「質量%」を単に「%」とも示す。
例1〜2は実施例であり、例3〜8は比較例である。
【0054】
使用した含フッ素重合体は、以下の製造例により製造した。
<含フッ素重合体1の製造例>
内容積250mLのステンレス鋼製撹拌機付きオートクレーブに、シクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)(51.2g)、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)(13.3g)、キシレン(55.8g)、エタノール(15.7g)、炭酸カリウム(1.1g)、tert−ブチルペルオキシピバレートの50質量%キシレン溶液(0.7g)、および、CF
2=CFCl(63.0g)を導入し、反応液を得た。反応液の液温を55℃に昇温し、そのまま20時間保持した。次に、反応液の液温を65℃に昇温し、さらに5時間保持した。その後、反応液を冷却し、反応液のろ過を行い、含フッ素重合体1を含むろ液を得た。このろ液を、65℃にて24時間真空乾燥して溶媒を除去し、さらに130℃にて20分加真空乾燥して得られたブロック状の含フッ素重合体1を粉砕して、粉末状の含フッ素重合体1を得た。
含フッ素重合体1は、CF
2=CFClに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位を、この順に50モル%、35モル%、15モル%含み、Mnが12000である含フッ素重合体(フッ素含有量25質量%、Mw/Mn2.5)であることを確認した。
<含フッ素重合体2の製造例>
反応液の液温を80℃とし、液温の保持時間を24時間とする以外は、含フッ素重合体1の製造例と同様にして、粉末状の含フッ素重合体2を得た。含フッ素重合体2は、CF
2=CFClに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位を、この順に50モル%、35モル%、15モル%含み、Mnが9600である含フッ素重合体(フッ素含有量25質量%、Mw/Mn6.5)であることを確認した。
【0055】
含フッ素重合体以外の成分として、下記の成分を使用した。
樹脂(B)1:ポリエステル樹脂(ダイセル・オルネクス社製、CRYLCOAT(登録商標)4890−0、数平均分子量(Mn):2500、軟化点:120℃)
硬化剤1:ブロック化イソシアネート系硬化剤(エボニック社製、ベスタゴン(登録商標)B1530)
【0056】
可塑剤1:1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエート(VELSICOL社製、Benzoflex(登録商標)352、融点:118℃、分子量:352)
可塑剤2:ジシクロヘキシルフタレート(和光純薬工業社製、融点:68℃、分子量:330)
可塑剤3:リン酸トリフェニル(城北化学工業社製、JP−360、融点:50℃、分子量:326)
可塑剤4:ジステアリン酸エチレングリコール(日光ケミカルズ社製、NIKKOL EGDS、融点:73.8℃、分子量:595)
【0057】
コア−シェル型粒子1:アイカ工業社製、商品名「スタフィロイドAC−4030」、水酸基価5mgKOH/g、コア部のガラス転移温度:−40℃、シェル部のガラス転移温度:100℃、平均粒子径:0.5μm
【0058】
顔料1:酸化チタン(デュポン社製、Ti−Pure(登録商標)R960、酸化チタン含有量:89質量%)
脱ガス剤:ベンゾイン
表面調整剤1:ビックケミー社製、BYK(登録商標)−360P
表面調整剤2:ビックケミー社製、CERAFLOUR(登録商標)960、マイクロナイズド変性アマイドワックス、融点:145℃
硬化触媒:ジブチルスズジラウレートのキシレン溶液(10,000倍希釈品)
紫外線吸収剤:BASF社製、Tinuvin(登録商標)405、分子量:583.8、融点:76.3℃、揮発温度:348.5℃
光安定剤:BASF社製、Tinuvin(登録商標)111FDL
【0059】
<評価方法>
(1.耐腐食性)
塗膜付きアルミニウム基材の塗膜に、アルミニウム板に達するようにカッターでクロスカット傷を入れた。次に、塗膜付きアルミニウム基材を、塩水噴霧環境下に、4000時間静置した。次に、イオン交換水を用いて、塩水噴霧処理が施された塗膜付きアルミニウム基材を水洗した後、塗膜付きアルミニウム基材を乾燥させた。その後、塗膜付きアルミニウム基材中のクロスカット傷部周辺の膨れ幅の状態を、以下の基準に従って評価した。
◎:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、0.5mm未満
○:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、0.5mm以上1.0mm未満
△:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、1.0mm以上、3.0mm未満
×:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、3.0mm以上
【0060】
(2.加工性)
JIS K 5600−5−1(耐屈曲性、円筒形マンドレル法)に準拠し、塗膜付きアルミニウム基材を用いて、加工性を評価した。
具体的には、円筒形マンドレル屈曲試験器(オールグッド社製)および2mmのマンドレルを使用し、塗膜付きアルミニウム基材上の塗膜の割れおよび剥離状態を、以下の基準に従って評価した。
○:割れおよび剥離は見られなかった。
△:端部に、割れが若干確認された。
×:全面に、割れまたは剥離が確認された。
【0061】
(3.耐衝撃性(耐おもり落下性))
JIS K 5600−5−3(デュポン式)に準拠し、塗膜付きアルミニウム基材を用いて、耐衝撃性(耐おもり落下性)を評価した。
具体的には、500gのおもりを、高さ70cmから塗膜上に落下させ、塗膜付きアルミニウム基材上の塗膜の割れおよび剥離状態を、以下の基準に従って評価した。
○:割れおよび剥離は見られなかった。
△:端部に、割れが若干確認された。
×:全面に、割れまたは剥離が確認された。
【0062】
(4.耐候性)
塗膜付きアルミニウム基材の塗膜に対して、アルミニウム板に達するようにカッターでクロスカット傷を入れた。次に、塗膜付きアルミニウム基材を、沖縄県那覇市の屋外に設置した。設置から2年経過後、塗膜付きアルミニウム基材中のクロスカット傷部周辺の膨れ幅の状態を、以下の基準に従って評価した。
○:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、1.0mm未満
△:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、1.0mm以上、3.0mm未満
×:クロスカット傷部周辺の膨れ幅は、3.0mm以上
【0063】
<粉体塗料の製造>
[例1]〜[例8]
高速ミキサ(佑崎有限公司社製)を用いて、表1に記載の各成分を10〜30分程度混合し、粉末状の混合物を得た。次に、2軸押出機(サーモプリズム社製、16mm押出機)を用いて、120℃のバレル設定温度にて該混合物を溶融混練し、粉体塗料からなるペレットを得た。次に、粉砕機(FRITSCH社製、製品名:ロータースピードミルP14)を用いて、得られたペレットを常温で粉砕し、150メッシュで分級し、平均粒子径が約40μmの粉体を得た。
なお、表1に記載の各成分の量は、正味量(質量部)である。
【0064】
(アルミニウム板の表面処理)
処理剤(日本シー・ビー・ケミカル社製、製品名「ケミクリーナー514A」)を水で希釈して調製した処理浴(濃度:30g/L、温度:55℃)中に、サイズ150mm×70mm、厚み2mmのアルミニウム板(JIS A6063S−T5)を5分間浸漬し、アルミニウム板表面を脱脂処理した。次に、常温のイオン交換水を用いて、脱脂処理が施されたアルミニウム板を1分間洗浄した。
次に、処理液(日本シー・ビー・ケミカル社製、製品名「シービー B−21dL」)を水で希釈して調製した処理浴(濃度:250g/L、温度:25℃)中に、脱脂処理が施されたアルミニウム板を3分間浸漬し、アルミニウム板表面を酸エッチング処理した。エッチング量は、3.5g/m
2であった。次に、常温のイオン交換水を用い、アルミニウム板を1分間×2回洗浄した。
次に、化成処理剤(日本シー・ビー・ケミカル社製、製品名「ケミボンダ−5507」)を水で希釈して調製した処理浴(濃度:50g/L、温度:45℃)中に、酸エッチング処理したアルミニウム板を2分間浸漬して、アルミニウム板をクロムフリー化成皮膜処理し、アルミニウム板上に皮膜を形成した。その後、常温のイオン交換水を用い、アルミニウム板を1分間×2回洗浄した。その後、70℃のオーブン中で、アルミニウム板を5分間乾燥させ、皮膜付きアルミニウム板を作製した。
【0065】
(塗膜付きアルミニウム基材の作製)
静電塗装機(小野田セメント社製、GX3600C)を用いて、該皮膜付きアルミニウム板の皮膜の一面に、[例1]〜[例7]で得られた粉体塗料を静電塗装し、粉体塗料層を有するアルミニウム板を得た。次に、このアルミニウム板を、200℃の雰囲気中で20分間保持した。次に、アルミニウム板を室温まで冷却し、厚さ55〜65μmの塗膜を有する塗膜付きアルミニウム基材(塗装物品に該当)を得た。得られた塗膜付きアルミニウム基材を試験片として、上述した各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
表1において、「粉体塗料の組成」欄中の各成分欄の数値は、各成分の質量部を表す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、本発明の粉体塗料を用いれば、所望の効果が得られることが確認された。
一方、コア−シェル型粒子を用いていない例3と、可塑剤およびコア−シェル型粒子を用いていない例4と、可塑剤の含有量が所定範囲外である例5と、可塑剤の融点およびコア−シェル型粒子のシェル部のTgとの差の絶対値が所定範囲外である例6および7とでは、所望の効果が得られなかった。また、含フッ素重合体のMnが所定範囲外である例8では、所望の効果が得られなかった。
なお、2016年01月25日に出願された日本特許出願2016−011585号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。