特許第6841285号(P6841285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841285封止用樹脂組成物、硬化物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
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  • 特許6841285-封止用樹脂組成物、硬化物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841285
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、硬化物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20210301BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20210301BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20210301BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20210301BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210301BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210301BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K5/057
   C08K5/17
   C08K3/013
   H01L23/30 R
   H01L21/56 R
【請求項の数】10
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-555379(P2018-555379)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2016086386
(87)【国際公開番号】WO2018105056
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寿登
(72)【発明者】
【氏名】江連 智喜
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−117033(JP,A)
【文献】 特開2000−017149(JP,A)
【文献】 特開昭57−053523(JP,A)
【文献】 特開2014−098055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤、(C)金属錯体及び前記金属錯体以外の金属化合物の少なくとも一方、ならびに(D)無機充填材を含み、
前記(C)金属錯体及び前記金属錯体以外の金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し0.1質量部以下である封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)金属錯体及び前記金属錯体以外の金属化合物の少なくとも一方が、アルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の少なくとも1種を含む請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の少なくとも1種は、エステル構造及び不飽和カルボニル構造の少なくとも一方を有する請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(C)金属錯体及び前記金属錯体以外の金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し0.005質量部以上0.1質量部以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
電子部品装置の封止に用いられる請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
アンダーフィル用に用いられる請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項9】
回路層を有する基板と、
前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、
前記基板と前記電子部品との間隙に配置された請求項8に記載の硬化物と、
を備える電子部品装置。
【請求項10】
回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物、硬化物、電子部品装置及び電子部品装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップ等の電子部品について高集積化が要求されており、例えば、半導体チップと基板とがはんだバンプで接合されたフリップチップパッケージが半導体モジュールに用いられる場合が多い。
このような半導体モジュールは、携帯電話、スマートフォン等の小型モバイルに搭載されており、年々市場での需要が大きくなっている。フリップチップパッケージには、その絶縁性を確保するために封止材としてアンダーフィル材が用いられている。アンダーフィル材は室温で流動性を示すため、毛細管現象を利用することでチップと基板との間に充填され、その後アンダーフィル材を硬化させる方法等によりフリップチップパッケージの封止性が得られる。
【0003】
一方で、このような半導体モジュールの製造過程で、毛細管現象でアンダーフィル材を充填する際の充填速度を毛細管速度とすると、毛細管速度が遅く作業性が悪くなる問題がある。一般的に、毛細管速度はアンダーフィル材の粘度に依存し、低粘度であるほど毛細管速度は大きい傾向にある。粘度を低減させる方法としては、低粘度の希釈性エポキシ樹脂を用いる方法、充填材量を低下させる方法等が挙げられる。しかしながら、低粘度の希釈性エポキシ樹脂を用いることによるTg(ガラス転移温度)の低下、充填材量の低下に伴う熱膨張係数の増大等によって、半導体モジュールの信頼性(絶縁信頼性、耐熱性等)が悪化する問題があり、流動性と信頼性との両立可能なアンダーフィル材が求められている。
【0004】
このような要求に対し、例えば、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含み、前記(C)無機充填材の平均粒径及び含有量が、それぞれ5μm未満及びアンダーフィル材全体の67質量%以上85質量%未満であり、かつ110℃における粘度が0.2Pa・s以下である、アンダーフィル材を使用する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。このアンダーフィル材を用いて半導体モジュールを製造することで低粘度かつ高信頼性が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−189847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、半導体チップは益々小型化が求められてきており、チップと基板とを接続するはんだバンプ間の距離を示すバンプピッチは、小さいもので20μm程度となる。このような小型化された半導体チップを対象にアンダーフィル材による充填を行う際、流動中にバンプピッチ間に充填材が目詰まりを起こしてしまいチップと基板との間にアンダーフィル材が充填されないという問題が生じうる。特許文献1に開示のアンダーフィル材では、近年の小型化された半導体モジュールに適用した際の充填性は十分でなく、耐熱性等の信頼性を維持したまま、流動性により優れた組成物が求められている。
【0007】
本発明の一形態は、耐熱性を維持したまま、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物及びこの硬化物を備える電子部品装置ならびにこの封止用樹脂組成物を用いた電子部品装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本願発明者らは鋭意検討した結果、金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方を含む封止用樹脂組成物を用いることにより、耐熱性を維持したまま、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物が得られることを見出した。
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
【0010】
<1> (A)エポキシ樹脂、(B)アミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方、ならびに(D)無機充填材を含む封止用樹脂組成物。
<2> 前記(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方が、アルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の少なくとも1種を含む<1>に記載の封止用樹脂組成物。
<3> 前記アルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の少なくとも1種は、エステル構造及び不飽和カルボニル構造の少なくとも一方を有する<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4> 前記(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し0.5質量部以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<5> 前記(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し0.1質量部以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<6> 前記(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、前記(A)エポキシ樹脂100質量部に対し0.005質量部以上0.1質量部以下である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
<7> 電子部品装置の封止に用いられる<1>〜<6>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物。
【0011】
<8> <1>〜<7>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【0012】
<9> 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、前記基板と前記電子部品との間隙に配置された<8>に記載の硬化物と、を備える電子部品装置。
【0013】
<10> 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一形態によれば、耐熱性を維持したまま、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物及びこの硬化物を備える電子部品装置ならびにこの封止用樹脂組成物を用いた電子部品装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1及び比較例1における封止用樹脂組成物について、110℃における粘度とせん断速度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、1つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「層」の語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0017】
[封止用樹脂組成物]
本開示の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)アミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方、ならびに(D)無機充填材を含む。封止用樹脂組成物は、例えば、電子部品の封止に用いることができる。封止用樹脂組成物は、耐熱性を維持したまま、優れた流動性を有する。
【0018】
なお、本開示において、優れた流動性とは、封止用樹脂組成物を基板等に付与する際の温度、例えば、チップ等の電子部品と基板との間に充填する際の温度(アンダーフィル温度)において、低粘度及び低チキソ性であることを指す。アンダーフィル温度は一般的に90℃〜120℃である。封止用樹脂組成物はアンダーフィル温度においてせん断速度が大きい場合粘度は低下するが、せん断速度が小さい場合粘度は増大する。せん断速度が小さい時の粘度が大きいとチキソトロピック性(チキソ性)を示し、そのチキソ値は1以上に大きくなる。つまり、アンダーフィル温度でのチキソ性が大きい場合、せん断速度が大きい領域のチップ等の電子部品と基板との間への注入前半と比較して、流動摩擦の影響でせん断速度が小さくなる領域のチップ等の電子部品と基板との間への注入後半における粘度は増大し、結果として流動速度が低下しフロー時間が長くなってしまう。一方、アンダーフィル温度でのチキソ性が小さい場合、すなわち、アンダーフィル温度でのチキソ値が1に近くなる場合、封止用樹脂組成物の粘度はせん断速度の依存性が少ないため、チップ等の電子部品と基板との間への注入前半及び注入後半の流動速度の変化は少ない。
【0019】
ここで、本開示の封止用樹脂組成物では、アンダーフィル温度におけるチキソ値は1に近づいており、せん断速度が小さくても粘度が小さく優れた流動性を示す。
【0020】
以下、封止用樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
【0021】
<(A)エポキシ樹脂>
本開示の封止用樹脂組成物は(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂は、封止用樹脂組成物に、硬化性及び接着性を付与し、封止用樹脂組成物の硬化物に、耐久性及び耐熱性を付与する。
【0022】
(A)エポキシ樹脂は、流動性の観点から25℃で液状のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、25℃で固形のエポキシ樹脂を併用してもよく、封止用樹脂組成物の流動性に影響を与えない範囲内において、25℃で固形のエポキシ樹脂を併用することが好ましい。
なお、本開示において、封止用樹脂組成物に含まれる各成分について、25℃における粘度が50Pa・s以下であるものを「25℃で液状」という。
(A)エポキシ樹脂として25℃で液状のエポキシ樹脂を含むことで、封止用樹脂組成物の流動性が向上する傾向にある。
【0023】
(A)エポキシ樹脂の25℃における粘度としては、50Pa・s以下であることが好ましく、0.01Pa・s〜40Pa・sであることがより好ましく、0.5Pa・s〜30Pa・sであることが更に好ましい。
本開示において、(A)エポキシ樹脂等の封止用樹脂組成物に含まれる各成分についての25℃における粘度は、E型粘度計(コーン角3°)を用いて、25℃及び回転数10回転/分の条件において測定された値をいう。
【0024】
(A)エポキシ樹脂の種類は、特に限定されない。エポキシ樹脂としては、ナフタレン型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類とのノボラック樹脂をエポキシ化したもの;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0025】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、粘度調整の観点から、80g/eq〜250g/eqであることが好ましく、85g/eq〜240g/eqであることがより好ましく、90g/eq〜230g/eqであることが更に好ましい。
本開示におけるエポキシ当量の測定手法を以下に記載する。
エポキシ樹脂をメチルエチルケトンに溶解する。溶解液に氷酢酸、セチルトリメチル臭化アンモニウム及びスクリーン指示薬(パテントブルー0.3gを氷酢酸100mLに溶解した溶液と、チモールブルー1.5gをメタノール500mLに溶解した溶液を混合して調製したもの)を加え、0.1Nに調整した過塩素酸溶液を用いて滴定し、溶液の色がピンクに変化し、ピンク色で1分間持続した点を終点とする。また、ブランクテストを行い、下記式よりエポキシ当量を算出する。
エポキシ当量(g/eq)=(1000×W)/{(S−B)×N}
W:試料質量
B:ブランクテストに使用した0.1N過塩素酸溶液の量
S:サンプルの滴定に使用した0.1N過塩素酸溶液の量
N:過塩素酸溶液の規定度(0.1N)
【0026】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量は特に限定されない。(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、100〜1,000であることが好ましく、150〜800であることがより好ましく、200〜500であることが更に好ましい。
本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定手法を以下に記載する。
重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出する。GPCの条件は、以下に示すとおりである。
−GPC条件−
ポンプ:日立 L−6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:以下の計3本
・Gelpack GL−R420
・Gelpack GL−R430
・Gelpack GL−R440
(以上、日立化成株式会社製、商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:25℃
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L−3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0027】
(A)エポキシ樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品の(A)エポキシ樹脂としては、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF−8170C)、新日鉄住金化学株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YD−128)、三井化学株式会社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:R−140P)、三菱化学株式会社製アミン型エポキシ樹脂(品名:jER−630)、DIC株式会社製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP−4032)等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、これら具体例に限定されない。(A)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0028】
(A)エポキシ樹脂の含有率は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、封止用樹脂組成物に対して、10質量%〜50質量%であることが好ましく、15質量%〜40質量%であることがより好ましく、20質量%〜35質量%であることが更に好ましい。
【0029】
<(B)アミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤(特定硬化剤)>
本開示の封止用樹脂組成物は、(B)アミノ基を少なくとも1つ有する硬化剤(以下、「(B)特定硬化剤」とも称する)を含む。(B)特定硬化剤は、後述するその他の硬化剤と比較して、流動性及びポットライフに優れる封止用樹脂組成物を調製できる傾向にある。
【0030】
(B)特定硬化剤は、(A)エポキシ樹脂を硬化させることができるものであれば特に限定されない。(B)特定硬化剤としては、エポキシ樹脂とともに重合により硬化するものであればよく、封止用樹脂組成物としたときに、封止用樹脂組成物が流動性を有するならば、25℃で液状のものでも25℃で固形状のものでも使用可能である。(B)特定硬化剤として25℃で液状の硬化剤を含むことで、封止用樹脂組成物の流動性が向上する傾向にある。
【0031】
(B)特定硬化剤としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、脂肪芳香族アミン、芳香族アミン等のアミン系硬化剤が挙げられる。アミン系硬化剤としては、耐熱性及び電気特性の観点から芳香族アミンが好ましい。
【0032】
アミン系硬化剤としては、具体的には、m−フェニレンジアミン、1,3−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,4−ジアミノトルエン、3,5−ジエチル−2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール等の芳香環1個の芳香族アミン硬化剤;2,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン等の芳香環が2個の芳香族アミン硬化剤;芳香族アミン硬化剤の加水分解縮合物;ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノ安息香酸エステル、ポリテトラメチレンオキシドジ−p−アミノベンゾエート等のポリエーテル構造を有する芳香族アミン;芳香族ジアミンとエピクロルヒドリンとの縮合物;芳香族ジアミンとスチレンとの反応生成物などが挙げられる。
【0033】
(B)特定硬化剤としては、市販品を用いてもよい。市販品の(B)特定硬化剤としては、日本化薬株式会社製アミン硬化剤(品名:カヤハード−AA)、三菱化学株式会社製アミン硬化剤(品名:jERキュア(登録商標)W、jERキュア(登録商標)113等)、アルベルマール日本株式会社製アミン硬化剤(品名:エタキュア300)などが挙げられる。(B)特定硬化剤は、これら具体例に限定されない。(B)特定硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
封止用樹脂組成物における(A)エポキシ樹脂と(B)特定硬化剤との含有比率は特に制限されず、(A)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量数と(B)特定硬化剤に含まれるアミノ基の当量数との比も特に限定されない。それぞれの未反応分を少なく抑えるために、(A)エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の当量数に対する(B)特定硬化剤に含まれるアミノ基の当量数の比率(アミノ基の当量数/エポキシ基の当量数)は、0.6〜1.4の範囲であることが好ましく、0.7〜1.3の範囲であることがより好ましく、0.8〜1.2の範囲であることが更に好ましい。
【0035】
封止用樹脂組成物における(B)特定硬化剤の含有量は特に制限されない。(B)特定硬化剤の含有量は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、5質量部〜60質量部であることが好ましく、10質量部〜50質量部であることがより好ましい。
【0036】
封止用樹脂組成物は、(B)特定硬化剤以外のその他の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、カルボン酸ジヒドラジド系硬化剤等が挙げられる。
【0037】
(B)特定硬化剤以外のその他の硬化剤を併用する場合、封止用樹脂組成物におけるその他の硬化剤の含有量は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5質量部〜5.0質量部であることが好ましく、1.0質量部〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0038】
(B)特定硬化剤以外のその他の硬化剤を併用する場合、封止用樹脂組成物におけるその他の硬化剤の含有率は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、硬化剤成分全量に対して、1質量%〜50質量%であることが好ましく、5質量%〜35質量%であることがより好ましく、8質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0039】
<(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方>
本開示の封止用樹脂組成物は、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方を含む。(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方を含む封止用樹脂組成物は、高い流動性及び高い耐熱性を有する傾向にある。
【0040】
(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方を含む封止用樹脂組成物が耐熱性を維持したまま、高い流動性を示す理由は明らかではないが、以下のように推測される。金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方が含まれることにより、(D)無機充填材の表面活性を高めたり、(A)エポキシ樹脂との相互作用を高めたり、封止用樹脂組成物が(F)シランカップリング剤等のアルコキシ基含有化合物を含む場合、(D)無機充填材と(F)シランカップリング剤等のアルコキシ基含有化合物との縮合反応を促進したりすることができる。その結果、(A)エポキシ樹脂と(D)無機充填材との親和性が良好になり、封止用樹脂組成物について、耐熱性を維持したまま、高い流動性を有する効果が発揮されると考えられる。また、金属錯体及び金属化合物はカルボニル基及びアルコキシ基の少なくとも一方を含むことが好ましい。カルボニル基及びアルコキシ基は電子吸引性であるため、金属錯体及び金属化合物中の金属元素が電子不足状態となり、ルイス酸性が高くなることで、上記効果がより好適に発揮される傾向にある。
【0041】
(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方は、25℃において、液状のものでも固形状のものでも使用可能である。(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方が液状である場合、封止用樹脂組成物中に容易に溶解させることが可能となる傾向にある。一方、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方が固形状の場合は、(A)エポキシ樹脂及び(B)特定硬化剤の少なくとも一方に(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方を溶解させることで封止用樹脂組成物が均一となりやすく、安定した特性が得られる傾向にある。
【0042】
金属錯体及び金属化合物としては、特に制限されず、鉄、亜鉛、インジウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等の金属種の錯体及び化合物が挙げられる。中でも、封止用樹脂組成物の流動性、金属錯体及び金属化合物の取り扱い性ならびにコストの観点から、金属種がアルミニウムである錯体及び化合物が好ましい。また、金属種がアルミニウムである錯体及び化合物の中でも、流動性の観点から、アルミニウムキレート錯体又はアルミニウムアルコキシド化合物が好ましい。
【0043】
アルミニウムキレート錯体としては、下記一般式(1)で示される3つのβ−ケトエノラート陰イオンがアルミニウムに配位した錯体、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で示される一般式(1)におけるβ−ケトエノラート陰イオンの1つ又は2つがアルコキシドイオンに置換された錯体が挙げられる。
【0044】
【化1】
【0045】
一般式(1)〜一般式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜25のアルキル基又は炭素数1〜25のアルコキシ基を表す。R〜Rで表されるアルキル基又はアルコキシ基は直鎖状でも分岐状であってもよい。また、R〜Rで表されるアルキル基又はアルコキシ基は、置換基を有していても、無置換であってもよく、無置換であることが好ましい。アルキル基の置換基としては、フッ素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、R〜Rで表されるアルキル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれないものとする。R〜Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ステアリル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。R〜Rで表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、オレイルオキシ基等が挙げられる。また、一般式(2)及び一般式(3)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜25のアルキル基を表す。R及びRで表されるアルキル基としては、前述のR〜Rで表されるアルキル基と同様のものが挙げられる。
【0046】
一般式(1)〜一般式(3)で示されるアルミニウムキレート錯体の具体例としては、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジセカンダリーブチレート、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムモノアセチルアセトネートビスオレイルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロピレート、アルミニウムアルキルアセテートジイソプロピレート、アルミニウムビスエチルアセトアセテ−ト・モノアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0047】
アルミニウムアルコキシド化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
【0048】
【化2】
【0049】
一般式(4)中、Rは炭素数1〜25のアルキル基を表す。Rで表されるアルキル基は、直鎖状でも分岐状であってもよい。また、Rで表されるアルキル基は、置換基を有していても、無置換であってもよく、無置換であることが好ましい。アルキル基の置換基としては、フッ素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、Rで表されるアルキル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれないものとする。Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ステアリル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0050】
一般式(4)で示されるアルミニウムアルコキシド化合物としては、例えば、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムジイソプロポキシドモノセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリセカンダリーブトキシド等が挙げられる。
【0051】
アルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の分子に含まれるアルミニウムの元素数は複数存在してもよい。そのため、アルミニウムアルコキシド化合物として、環状アルミニウムオキサイドを使用してもよく、好ましくは一般式(5)で表される環状アルミニウムオキサイドを使用してもよい。
【0052】
【化3】
【0053】
一般式(5)中、R10〜R12は炭素数1〜25のアシル基を表す。R10〜R12で表されるアシル基は、直鎖状でも分岐状であってもよい。また、R10〜R12で表されるアシル基は、置換基を有していても、無置換であってもよく、無置換であることが好ましい。アシル基の置換基としては、フッ素原子、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基等が挙げられる。なお、R10〜R12で表されるアシル基の炭素数には、置換基の炭素数は含まれないものとする。R10〜R12で表されるアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、ヘプタデカノイル基、ステアロイル基等が挙げられる。
【0054】
環状アルミニウムオキサイドとしては、環状アルミニウムオキサイドラウレート、環状アルミニウムオキサイド植物性脂肪酸アシレート、環状アルミニウムオキサイドオクチレート、環状アルミニウムオキサイド−2−エチルヘキサノエ−ト、環状アルミニウムオキサイドステアレート、環状アルミニウムオキサイド高級脂肪酸縮合物アシレート等が挙げられる。
【0055】
また、前述のアルミニウムキレート錯体及びアルミニウムアルコキシド化合物の少なくとも1種は、封止用樹脂組成物の流動性をより高める観点から、エステル構造及び不飽和カルボニル構造の少なくとも一方を有することが好ましく、前述のアルミニウムキレート錯体は不飽和カルボニル構造を有することがより好ましく、前述のアルミニウムアルコキシド化合物はエステル構造を有することがより好ましい。
【0056】
金属錯体及び金属化合物としては、市販品を用いてもよい。市販品の金属錯体及び金属化合物としては、東京化成工業株式会社製のアルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムイソプロポキシド等、川研ファインケミカル株式会社製の環状アルミニウムオキサイド−2−エチルヘキサノエート(品名:アルゴマー800AF)等、味の素ファインテクノ株式会社製のアセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(品名:プレンアクトAL−M)等が挙げられる。金属錯体及び金属化合物は、これら具体例に限定されない。(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方としては、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、金属錯体と金属化合物とを併用してもよい。
【0057】
封止用樹脂組成物における(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量は特に制限されない。(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量は、流動性の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.005質量部〜0.1質量部であることが更に好ましく、0.03質量部〜0.05質量部であることが特に好ましい。特に(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以下であると、エポキシ樹脂のカチオン重合による粘度上昇を好適に抑制でき、流動性により優れる傾向にある。また、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方の合計の含有量が、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して0.005質量部以上であると、後述する(D)無機充填材表面、好ましくはシリカ粒子表面と、後述する(F)シランカップリング剤と、の脱水縮合が好適に進行し、より良好な流動性が得られる傾向にある。
【0058】
<(D)無機充填材>
本開示の封止用樹脂組成物は(D)無機充填材を含む。
(D)無機充填材を含む封止用樹脂組成物の硬化物は、耐ヒートサイクル性、耐湿性、及び応力低減に優れる傾向にある。
【0059】
(D)無機充填材としては特に限定されない。(D)無機充填材の具体例としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、球状シリカ等のシリカ、タルクなどが挙げられ、塗布時の流動性の観点から球状シリカが好ましい。
【0060】
本開示において、シリカが「球状」であるとは、次のとおりである。
まず、天然シリカ又は合成シリカを加熱処理して球状化する場合、完全に溶融しなかった粒子は形状が真球状にならない場合がある。また、溶融した粒子同士が複数融着したものが混在する場合がある。更に、蒸発したシリカ蒸気がほかの粒子表面に付着して固化し、結果的に微粒子が付着した球状シリカ粒子が得られる場合がある。シリカが実質的に球状とはこのような形状の粒子の混在を許容するものであるが、例えば、粒子の球形度をワーデルの球形度[(粒子の投影面積に等しい円の直径)/(粒子の投影像に外接する最小円の直径)]で表したとき、この値が0.9以上の粒子がシリカ全体の90質量%以上である場合に、シリカが「球状」であると称することとする。
【0061】
(D)無機充填材としては、流動性の観点から、平均粒子径が0.01μm〜20μmの球状シリカが好ましく、平均粒子径が0.02μm〜10μmの球状シリカがより好ましい。
本開示における平均粒子径の測定手法を以下に記載する。
平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)を用いて粒子数及びその頻度を基とした粒度分布により測定された値をいう。分散溶媒としては、粒子を分散させるために水、アセトン又はエタノールのいずれかを使用することが好ましい。測定条件としては、粒子濃度を質量基準で数十ppm〜数百ppmとし、超音波処理時間を30分とし、測定温度を常温(25℃)とする。
【0062】
(D)無機充填材としては、市販品を用いてもよい。市販品の(D)無機充填材としては、株式会社アドマテックス製球状シリカ(品名:SO−E2、SE2300、SE2200−SEJ等)が挙げられる。(D)無機充填材は、これら具体例に限定されない。(D)無機充填材は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0063】
(D)無機充填材は、下記(F)カップリング剤の少なくとも1種によって予め表面処理の施されたものを用いてもよく、(F)カップリング剤によって表面処理の施された(D)無機充填材と、表面処理の施されていない(D)無機充填材とを併用してもよい。(F)カップリング剤によって表面処理の施された(D)無機充填材を用いることで、(D)無機充填材と樹脂成分との親和性が向上し、封止用樹脂組成物の作業性及び流動性、ならびに、硬化物の靭性、弾性率及び接着力を向上させることができる傾向にある。
【0064】
(D)無機充填材を(F)カップリング剤によって表面処理する場合、(D)無機充填材と(F)カップリング剤との比率は、(D)無機充填材に対して(F)カップリング剤が0.2質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.3質量%〜3.0質量%であることがより好ましく、0.4質量%〜2.0質量%であることが更に好ましい。
【0065】
(D)無機充填材の含有量は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、5質量部〜80質量部であることが好ましく、20質量部〜70質量部であることがより好ましい。
【0066】
(D)無機充填材の含有率は、流動性、絶縁信頼性等の観点から、封止用樹脂組成物に対して、40質量%〜85質量%であることが好ましく、50質量%〜75質量%であることがより好ましく、55質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0067】
前記封止用樹脂組成物が、(F)カップリング剤によって予め表面処理の施された(D)無機充填材を含む場合、(F)カップリング剤によって予め表面処理の施された(D)無機充填材の含有量は、流動性、接着性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、5質量部〜80質量部であることが好ましく、20質量部〜70質量部であることがより好ましい。
【0068】
前記封止用樹脂組成物が、(F)カップリング剤によって予め表面処理の施された(D)無機充填材を含む場合、その含有率は、流動性、接着性等の観点から、封止用樹脂組成物に対して、40質量%〜85質量%であることが好ましく、50質量%〜75質量%であることがより好ましく、55質量%〜70質量%であることが更に好ましい。
【0069】
<(E)ゴム添加物>
本開示の封止用樹脂組成物は、必要に応じて、(E)ゴム添加物を含んでもよい。
(E)ゴム添加物を含む封止用樹脂組成物の硬化物は、応力緩和に優れる傾向にある。
【0070】
(E)ゴム添加物の種類は特に限定されるものではなく、従来より公知のものから適宜選択できる。(E)ゴム添加物の具体例としては、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。(E)ゴム添加物は、25℃で液状のものでも25℃で固形状のものでも使用可能である。
【0071】
(E)ゴム添加物が25℃で固形状である場合、(E)ゴム添加物の形態としては特に限定されず、粒子状、粉末状、ペレット状等が挙げられる。耐熱性の観点から、(E)ゴム添加物は粒子状であることが好ましい。(E)ゴム添加物が粒子状の場合、(E)ゴム添加物の平均粒子径は0.01μm〜20μmであることが好ましく、0.02μm〜10μmであることがより好ましく、0.03μm〜5μmであることが更に好ましい。
【0072】
(E)ゴム添加物が25℃で液状である場合、(E)ゴム添加物としては、ポリブタジエン、ブタジエン・アクリロニトリルコポリマー、ポリイソプレン、ポリプロピレンオキシド、ポリジオルガノシロキサン等の低分子量成分が挙げられる。上記低分子量成分の重量平均分子量は5,000〜80,000であることが好ましく、8,000〜50,000であることがより好ましい。
【0073】
(E)ゴム添加物が25℃で固形状の場合、加熱して(A)エポキシ樹脂又は(B)特定硬化剤に溶解させて使用することが好ましい。また、(E)ゴム添加物は、末端にエポキシ基と反応する基を有するものを使用してもよい。末端にエポキシ基と反応する基を有する(E)ゴム添加物は、25℃で液状のものでも25℃で固形状のものでも使用可能である。エポキシ基と反応する基としては、カルボキシ基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。
【0074】
(E)ゴム添加物としては、市販品を用いてもよい。市販品の(E)ゴム添加物としては、宇部興産株式会社製CTBN1300、ATBN1300−16、CTBN1008−SP等、東レ・ダウコーニング株式会社製シリコーンゴムパウダー(品名:AY42−119)、JSR株式会社製ゴムパウダー(品名:XER81)などが挙げられる。(E)ゴム添加物は、これら具体例に限定されない。(E)ゴム添加物は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0075】
封止用樹脂組成物が(E)ゴム添加物を含む場合、(E)ゴム添加物の含有量としては、流動性、密着性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.2質量部〜5.0質量部であることが好ましく、0.5質量部〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0076】
封止用樹脂組成物が(E)ゴム添加物を含む場合、(E)ゴム添加物の含有率は、流動性、密着性等の観点から、封止用樹脂組成物に対して、0.05質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.1質量%〜4.0質量%であることがより好ましく、0.4質量%〜3.0質量%であることが更に好ましい。
【0077】
<(F)カップリング剤>
封止用樹脂組成物は、必要に応じて、(F)カップリング剤を含んでいてもよい。
(F)カップリング剤を含む封止用樹脂組成物は、密着性に優れる傾向にある。更に、封止用樹脂組成物が(F)カップリング剤を含むことにより、(D)無機充填材がシリカである場合、シリカ表面のシラノール基とシランカップリング剤に含まれるアルコキシ基との間の縮合が促進され、(A)エポキシ樹脂と(D)無機充填材との相溶性がより良好になり、より優れた流動性が得られる傾向にある。
【0078】
(F)カップリング剤の種類は特に限定されるものではなく、従来より公知のものから適宜選択できる。(F)カップリング剤の具体例としては、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するシラン化合物、エポキシ基を有するシラン化合物、メルカプト基を有するシラン化合物、アルキル基を有するシラン化合物、フェニル基を有するシラン化合物、ウレイド基を有するシラン化合物、メタクリル基を有するシラン化合物、アクリル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するシラン化合物等のシラン系化合物;チタネート系化合物などが挙げられる。これらの中でも、封止用樹脂組成物の密着性の観点から、エポキシ基を有するシラン化合物であることが好ましい。
【0079】
(F)カップリング剤としては、市販品を用いてもよい。市販品の(F)カップリング剤としては、信越化学工業株式会社製KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−403、KBE−903、KBE−9103、KBM−573、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503、KBM−5103、KBM−1003、KBE−585、KBM−9659、KBM−803、KBE−846、KBE−9007、X−12−967C、KBM−103、KBM−202SS等が挙げられる。(F)カップリング剤は、これら具体例に限定されない。(F)カップリング剤は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0080】
(F)カップリング剤は、(D)無機充填材の表面処理剤として(D)無機充填材の表面に付着した状態で封止用樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0081】
封止用樹脂組成物が(F)カップリング剤を含む場合、(F)カップリング剤の含有量は、流動性、耐熱性等の観点から、(A)エポキシ樹脂100質量部に対して、0.2質量部〜5.0質量部であることが好ましく、0.5質量部〜3.0質量部であることがより好ましい。
【0082】
封止用樹脂組成物が(F)カップリング剤を含む場合、(F)カップリング剤の含有率は、流動性、耐熱性等の観点から、封止用樹脂組成物に対して、0.05質量%〜5.0質量%であることが好ましく、0.1質量%〜4.0質量%であることがより好ましく、0.4質量%〜3.0質量%であることが更に好ましい。
【0083】
<その他の成分>
封止用樹脂組成物は、ブリード現象の発生を抑制する効果が得られる範囲で、更に必要に応じ、作業性向上のための揺変剤、カーボンブラック等の顔料、染料、イオントラッパ、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、硬化促進剤、反応性希釈剤、有機溶剤などを含んでいてもよい。
【0084】
<封止用樹脂組成物の調製方法>
本開示の封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)特定硬化剤、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方、(D)無機充填材ならびに、(E)ゴム添加物、(F)カップリング剤等のその他の添加剤を一括して又は別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散等させることにより得ることができる。特に、(A)エポキシ樹脂、(B)特定硬化剤、(C)金属錯体及び金属化合物の少なくとも一方等が固形の場合には、固形のまま配合すると粘度が上昇し、作業性が低下することがあるため、予め加熱により液状化して、混合等することが好ましい。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではなく、撹拌装置、加熱装置等を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミルなどが挙げられる。これらの装置を用いて上記成分を混合し、混練し、必要に応じて脱泡することによって封止用樹脂組成物を得ることができる。
【0085】
<封止用樹脂組成物の物性>
封止用樹脂組成物の粘度は特に制限されない。中でも流動性の観点から、封止用樹脂組成物の粘度は、25℃において0.1Pa・s〜100.0Pa・sであることが好ましく、25℃において0.1Pa・s〜80.0Pa・sであることがより好ましい。なお、25℃における封止用樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(コーン角3°、回転数10回転/分)を用いて測定することができる。
【0086】
封止用樹脂組成物をフリップチップ用アンダーフィル材等に用いる場合、100℃〜120℃付近で数十μm〜数百μmの狭ギャップ間に充填する際の指標として、封止用樹脂組成物の粘度は、110℃において0.40Pa・s以下であることが好ましく、110℃において0.30Pa・s以下であることがより好ましく、110℃において0.25Pa・s以下であることが更に好ましく、110℃において0.20Pa・s以下であることが特に好ましい。なお、110℃における封止用樹脂組成物の粘度は、レオメーターAR2000(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、アルミコーン40mm、せん断速度32.5/s)を用いて測定することができる。
【0087】
封止用樹脂組成物では、25℃におけるチキソ値は、アンダーフィル材用途での充填性及びフィレット形成性の観点から、0.48以上1.5以下であることが好ましく、0.5以上1.5以下であることがより好ましく、0.8以上1.2以下であることが更に好ましい。ここで、25℃におけるチキソ値は、後述の実施例に記載の方法により算出できる。
【0088】
また、110℃におけるチキソ値は、2.2以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。110℃におけるチキソ値は、チップ等の電子部品と基板との間における封止用樹脂組成物の注入前半と注入後半の速度に与える影響を想定している。封止用樹脂組成物の110℃におけるチキソ値は、後述の実施例に記載の方法により算出できる。
【0089】
なお、封止用樹脂組成物の粘度及びチキソ値(揺変指数)は、各成分の組成比を適宜選択することで所望の範囲とすることができる。
【0090】
封止用樹脂組成物の貯蔵安定性についての指標となるポットライフは、25℃、24時間雰囲気下における貯蔵前後の粘度変化率であり、下記式により算出する。
ポットライフ(%)=100×[(貯蔵後の粘度−貯蔵前の粘度)/貯蔵前の粘度]
【0091】
ポットライフは、数値が小さいものほど貯蔵安定性が高いことを示し、150%以下であることが好ましく、130%以下であることがより好ましく、100%以下であることが更に好ましい。
【0092】
[硬化物]
本開示の硬化物は、耐熱性を維持したまま、優れた流動性を有する封止用樹脂組成物を硬化してなる。硬化物は、封止用樹脂組成物を例えば、80℃〜165℃で、1分間〜150分間の加熱処理を行うことで硬化させることにより作製可能であり、後述するように、電子部品を封止する封止材として用いられる。
【0093】
[電子部品装置]
本開示の電子部品装置は、回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品と、前記基板と前記電子部品との間隙に配置された本開示の硬化物と、を備える。本開示の電子部品装置は、本開示の封止用樹脂組成物により電子部品を封止して得ることができる。電子部品が本開示の封止用樹脂組成物によって封止されていることで、本開示の電子部品装置は、耐温度サイクル性に優れる。
【0094】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド配線板、フレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の回路層を有する基板に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などの電子部品を搭載し、必要な部分を本開示の封止用樹脂組成物で封止して得られる電子部品装置等が挙げられる。
特に、リジッド配線板、フレキシブル配線板又はガラス上に形成した配線に、半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置が、本開示を適用し得る対象の1つとして挙げられる。具体的な例としてはフリップチップBGA(Ball Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、COF(Chip On Film)等の電子部品装置が挙げられる。
【0095】
本開示の封止用樹脂組成物は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材として好適である。本開示の封止用樹脂組成物が特に好適に適用されるフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプ材質が従来の鉛含有はんだではなく、Sn−Ag−Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品である。従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだを用いてバンプ接続をしたフリップチップに対しても、本開示の封止用樹脂組成物は良好な信頼性を維持できる。また、ウエハーレベルCSP等のチップスケールパッケージを基板に実装する際にも本開示の封止用樹脂組成物を適用することで、信頼性の向上を図ることができる。
【0096】
[電子部品装置の製造方法]
本開示の電子部品装置の製造方法は、回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された電子部品とを、本開示の封止用樹脂組成物を用いて封止する工程を有する。
本開示の封止用樹脂組成物を用いて回路層を有する基板と電子部品とを封止する工程に特に限定はない。例えば、電子部品と回路層を有する基板とを接続した後に、電子部品と基板とのギャップに毛細管現象を利用して封止用樹脂組成物を付与し、次いで封止用樹脂組成物の硬化反応を行う後入れ方式、ならびに、先に回路層を有する基板及び電子部品の少なくとも一方の表面に本開示の封止用樹脂組成物を付与し、熱圧着して電子部品を基板に接続する際に、電子部品及び基板の接続と封止用樹脂組成物の硬化反応とを一括して行う先塗布方式が挙げられる。
封止用樹脂組成物の付与方法としては、注型方式、ディスペンス方式、印刷方式等が挙げられる。
【0097】
電子部品と基板とのギャップに付与した封止用樹脂組成物を硬化する場合の硬化条件としては特に限定されず、例えば、80℃〜165℃で、1分間〜150分間の加熱処理を行うことが好ましい。
【0098】
本開示の封止用樹脂組成物を用いることにより、狭ギャップ充填性に優れた硬化物を備える電子部品装置を、短い作業時間で製造することができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、以下の実施例において、部及び%は特に断りのない限り、質量部及び質量%を示す。
【0100】
(実施例1〜14、比較例1)
表1及び表2に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空ライカイ機にて混練分散して、実施例1〜14及び比較例1の封止用樹脂組成物を作製した。なお、表中の配合単位は質量部であり、また「−」は「配合無し」を表す。更に封止用樹脂組成物における無機充填材の含有率(質量%)は、各成分の配合量から算出した。
【0101】
(A)エポキシ樹脂として、下記材料を用意した。
・エポキシ樹脂1:ビスフェノールF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「YDF8170C」)
・エポキシ樹脂2:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名「HP−4032」)
・エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三井化学株式会社製、商品名「R−140P」)
【0102】
(B)特定硬化剤として、下記材料を用意した。
・硬化剤1:ジアミノフェニルメタン型アミン硬化剤(日本化薬株式会社製、商品名「カヤハード−AA」)
・硬化剤2:ジメチルチオトルエンジアミン硬化剤(アルベルマール日本株式会社製、商品名「エタキュア300」)
【0103】
金属錯体及び金属化合物として、下記材料を用意した。
・金属錯体1:アルミニウムトリスアセチルアセトネート(東京化成工業株式会社製)
・金属化合物1:環状アルミニウムオキサイド−2−エチルヘキサノエート(川研ファインケミカル株式会社製、商品名「アルゴマー800AF」)
・金属化合物2:アルミニウムイソプロポキシド(東京化成工業株式会社製)
・金属錯体2:アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート(味の素ファインテクノ株式会社製、商品名「プレンアクトAL−M」)
【0104】
(D)無機充填材として、下記材料を用意した。
・無機充填材1:平均粒子径0.6μmのエポキシ基を有するシラン化合物で処理が施された球状シリカ(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2200−SEJ」)
【0105】
(F)シランカップリング剤として、下記材料を用意した。
・シランカップリング剤1:エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−403」)
・シランカップリング剤2:脂環式エポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製、商品名「KBM−303」)
【0106】
着色剤1としてカーボンブラック(三菱化学株式会社製、商品名「MA−100」)を用意した。
【0107】
上記材料を用いて得られた封止用樹脂組成物について、以下のようにして諸特性の評価を行った。また、以下の表1及び表2に各数値を示す。
【0108】
(1)流動性:粘度及びチキソ値
封止用樹脂組成物の25℃における粘度(常温の粘度、Pa・s)を、E型粘度計(コ−ン角度3°、回転数10回転/分)を用いて測定した。また、25℃におけるチキソ値は、E型粘度計(トキメック社製VISCONIC、コ−ン角度3°)を用いて、回転数10回転/分で測定した場合の粘度(η2)に対する回転数2.5回転/分で測定した場合の粘度(η1)の比(η1/η2)とした。
110℃における粘度(Pa・s)はレオメーター(TAインストルメント株式会社製AR2000、アルミコーン40mm)を用いてせん断速度32.5/sにて測定した。実施例1及び比較例1については、せん断速度を変えた場合の110℃における粘度(Pa・s)を測定した。結果を図1に示す。
また、110℃におけるチキソ値はレオメーター(TAインストルメント株式会社製AR2000、アルミコーン40mm、せん断速度32.5/s)を用いて測定した場合の粘度(η4)に対するせん断速度2.5/sで測定した粘度(η3)の比(η3/η4)とした。
【0109】
(2)充填時間
20mm角のガラス基板を25μmのギャップを空けて張り合わせ、該ギャップの中に封止用樹脂組成物を毛細管現象により注入し、注入前半である10mm及び注入後半の20mmにおける到達時間をそれぞれ測定した。
【0110】
(3)耐熱性:ガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数(CTE)
封止用樹脂組成物を150℃及び120分の条件で硬化して試験片(φ4mm×20mm)を作製した。作製した試験片について、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、商品名TMAQ400)を用い、荷重15g、測定温度−50℃〜220℃及び昇温速度5℃/分の条件でガラス転移温度(Tg)及び熱膨張係数(CTE)を測定した。
Tg以下の温度範囲における熱膨張係数をCTE1、Tg以上の温度範囲における熱膨張係数をCTE2とした。Tg及びCTEは熱的安定性を示し、Tgは100℃前後が好ましく、CTE1及びCTE2は低いほど好ましい。
【0111】
【表1】

【表2】
【0112】
表1、表2及び図1からわかるように、本実施例の封止用樹脂組成物は、耐熱性を維持したまま、アンダーフィル時の高い流動性を示すことがわかる。
【0113】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1