特許第6841359号(P6841359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841359シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6841359
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210301BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20210301BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20210301BHJP
   C30B 25/12 20060101ALI20210301BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20210301BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/205
   C30B29/06 504L
   C30B25/12
   C23C16/42
   C23C16/44 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-39716(P2020-39716)
(22)【出願日】2020年3月9日
【審査請求日】2020年8月12日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】須田 一成
【審査官】 杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−283351(JP,A)
【文献】 特開2007−134688(JP,A)
【文献】 特開平07−335572(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/151294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
C23C 16/42
C23C 16/44
C30B 25/12
C30B 29/06
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法であって、
黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
前記被膜の表面の研磨を行う研磨工程と、
該研磨工程後、前記研磨を行った前記被膜の表面に第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が60μm以下となるように、前記第2の炭化ケイ素被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
を含み、
前記第2の被膜形成工程で形成された前記第2の炭化ケイ素被膜の表面のうち、ウェーハが載置されウェーハ裏面と接触する領域の凹凸を残存させたシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタを製造することを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法。
【請求項2】
前記第2の炭化ケイ素被膜の膜厚を5μm以上とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法で製造されたサセプタを用いて、シリコン単結晶基板の主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させることを特徴とするシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長法によりシリコン単結晶基板(ウェーハ)の表面にエピタキシャル層を形成したシリコンエピタキシャルウェーハは、電子デバイスに広く使用されている。近年電子デバイスの普及が進むとともに、微細化も進んでおり、ウェーハへの品質要求も年々高まってきている。
【0003】
ウェーハ品質の一つとして、ウェーハ内に存在する応力がデバイス作製時にデフォーカス等を引き起こす問題がある。ウェーハ内の応力は主にウェーハ上にエピタキシャル成長を行う熱処理工程で発生しており、熱処理時にウェーハを保持するサセプタの表面状態が大きな影響を及ぼすことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−283351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サセプタの製作において、黒鉛製の基材に炭化ケイ素のCVD(化学蒸着)コートを行い、表面状態を整えるために研磨加工を行うのが一般的である。サセプタの表面状態がウェーハに及ぼす影響については、ウェーハが載置されウェーハ裏面と接触する領域と、ウェーハが載置される領域より外周の領域で、それぞれ影響が異なってくる。
【0006】
ウェーハ裏面と接触する領域においては、サセプタ製作時に炭化ケイ素のCVDコート後に研磨加工を行わないと、CVDコート時に発生する異常成長起因の突起などにより、局所的な応力負荷が高くなり、ウェーハへの応力集中が起き、転位(Slip)の発生が起きる問題がある。
【0007】
一方でCVDコート後に研磨加工を行った場合、突起を除去し鏡面に近い状態まで表面の研磨を行うと、ウェーハを載置しエピタキシャル成長を行った際、ウェーハがサセプタへ貼り付く現象が発生し、こちらもウェーハへ応力ダメージを与える。そのため、CVDコート後の研磨加工は異常成長起因の突起を除去しながら、かつ表面の凹凸もある程度残存させる必要がある。
【0008】
ウェーハが載置される領域より外周の領域では、サセプタの表面状態により、加熱用ランプからの光の吸収が異なる。ウェーハを連続で処理する場合、サセプタ外周の領域では反応ガスによりSiが堆積され表面の凹凸が変化していき、その結果、温度変化が発生する。
【0009】
サセプタの温度変化は伝熱によりウェーハへと伝わり、ウェーハの温度分布に影響を与え、特にウェーハ外周部の温度が変化すると応力の発生や、転位の発生が起きるだけでなく、エピタキシャル成長時の温度も変化するため、外周部のエピタキシャル膜厚の分布も変化する。したがって、ウェーハが載置される領域より外周の領域においてもサセプタの表面状態の制御が重要になってくる。
【0010】
特許文献1には、炭化ケイ素膜の成長と表面研磨を2回以上繰り返し、炭化ケイ素膜を堆積することで、異方成長や欠陥の発生を抑制する方法が開示されているが、サセプタの最終表面は研磨面となっており、上記に示した貼り付きの発生などが起こる可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の問題を鑑みなされたものであり、ウェーハへの応力による転位(Slip)の発生、サセプタとウェーハの貼り付き及びサセプタの温度変化を抑制できるシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法であって、
黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
前記被膜の表面の研磨を行う研磨工程と、
該研磨工程後、前記研磨を行った前記被膜の表面に第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が60μm以下となるように、前記第2の炭化ケイ素被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
を含むシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法を提供する。
【0013】
このような、シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法によれば、サセプタの黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成した後、表面研磨により異方成長等で発生した突起を除去し、表面研磨後に第2の炭化ケイ素被膜を形成することで、ウェーハへの応力集中やサセプタの温度変化を抑制することで、転位(Slip)の発生等やサセプタとウェーハの貼り付きを抑制することができる。
【0014】
このとき、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚を5μm以上とすることが好ましい。
【0015】
これにより、サセプタとウェーハの貼り付きをより抑制することができる。
【0016】
このとき、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法で製造されたサセプタを用いて、シリコン単結晶基板の主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法とすることができる。
【0017】
このようなシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法により製造されたシリコンエピタキシャルウェーハは、転位等を抑制した高品質なウェーハを製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法によれば、ウェーハへの応力集中やサセプタの温度変化を抑制することで、転位(Slip)の発生等を抑制することができる。また、サセプタとウェーハの貼り付きを抑制できる。また、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法により製造されたサセプタを用いて、シリコン単結晶基板の主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させるシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法であれば、転位の発生等を抑制した高品質なウェーハを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法の一例の概略フローチャートである。
図2】本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法に用いることができる、気相成長装置の一例の概略図である。
図3】比較例1に記載のサセプタ製造の概略フローチャートである。
図4】比較例2に記載のサセプタ製造の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
上述のように、ウェーハへの応力による転位の発生、サセプタとウェーハの貼り付き及びサセプタの温度変化を抑制できるシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法が求められていた。
【0022】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法であって、
黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成する第1の被膜形成工程と、
前記被膜の表面の研磨を行う研磨工程と、
該研磨工程後、前記研磨を行った前記被膜の表面に第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が60μm以下となるように、前記第2の炭化ケイ素被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
を含むシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法により、ウェーハへの応力集中やサセプタの温度変化を抑制することで、転位の発生等を抑制すること、また、サセプタとウェーハの貼り付きを抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0023】
以下、図面を参照して説明する。
【0024】
図1に本発明のシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法の一例の概略フローチャートを示す。本発明に係るシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法は、第1の被膜形成工程、研磨工程、第2の被膜形成工程を含むシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法である。
【0025】
[第1の被膜形成工程]
まず、サセプタの基材である黒鉛基材を準備し、これに第1の炭化ケイ素被膜を形成する。形成方法は第1の炭化ケイ素被膜を形成できれば特に限定されず、例えばCVDで第1の炭化ケイ素被膜を形成することができる。また、第1の炭化ケイ素被膜の膜厚は特に限定されず、例えば30〜100μmとすることができる。第1の炭化ケイ素被膜は、1回の膜形成で所望の膜厚の被膜を形成しても、複数回の膜形成で所望の膜厚の被膜を形成してもよい。このようにして、黒鉛基材上に第1の炭化ケイ素被膜を形成する。
【0026】
[研磨工程]
第1の炭化ケイ素被膜を黒鉛基材に形成した後、被膜表面を研磨する。これにより、被膜形成による異常成長等で発生した突起を除去できる。研磨方法は特に限定されず、例えば機械的な表面研磨などが挙げられる。また黒鉛基材上に第1の炭化ケイ素被膜が残っていれば、研磨量や研磨回数は特に限定されない。
【0027】
[第2の被膜形成工程]
研磨工程後、研磨を行った被膜表面に第2の炭化ケイ素被膜を形成する。形成方法は、第2の炭化ケイ素被膜を形成できれば特に限定されず、例えばCVDで第2の炭化ケイ素被膜を形成することができる。
【0028】
第2の炭化ケイ素被膜は、膜厚が60μm以下となるように形成する。このようにすれば、被膜表面の凹凸もある程度残存させることができ、ウェーハへの応力による転位の発生、サセプタとウェーハの貼り付き及びサセプタの温度変化を抑制できる。第2の炭化ケイ素被膜は1回の被膜形成で60μm以下の所望の膜厚を形成してもよいし、複数回の膜形成でトータル60μm以下の所望の膜厚を形成してもよい。例えば、膜厚50μmの第2の炭化ケイ素被膜を10回に分けて被膜形成で形成することができる。
【0029】
このとき、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚の下限値は特に限定されないが、好ましくは第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が3μm以上となるように膜形成を行えば、ウェーハとサセプタの貼り付きを抑制できる。より好ましくは、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が5μm以上となるように膜形成を行えば、貼り付きを確実に防止することができる。
【0030】
本発明に係るシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法は、以上のようにしてサセプタを製造する方法である。また、本発明に係るサセプタの製造方法で作製するサセプタは、シリコンエピタキシャルウェーハを支持できれば形状は特に限定されず、例えば略円盤状とすることができる。
【0031】
次にシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法について詳細に説明する。本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法は、本発明に係るシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法で製造したサセプタを用いて、シリコン単結晶基板の主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させる、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法である。
【0032】
図2に、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法に用いることができる、気相成長装置の一例である気相成長装置100の概略図を示す。気相成長装置100は、シリコン単結晶基板(ウェーハ)W、ウェーハWを支持するサセプタ1、サセプタ1が略水平状態で内部に配される反応容器2、ウェーハ回転機構3、サセプタ1に対して相対的にウェーハWを上下動させるリフトピン4、サセプタ1に設けられリフトピン4の軸部12が挿通される貫通孔5、リフトピン4の軸部12が挿通された支持アーム9に設けられた貫通孔6、ウェーハリフトシャフト7、サセプタ1を下面側から支持するサセプタ支持部材8、サセプタ支持部材8の先端に設けられた支持アーム9、原料ガスを反応容器2内のサセプタ1の上側領域に導入してこのサセプタ1上のウェーハWの主表面上に供給するガス導入管10、反応容器2からガスを排気するガス排出管11を備える気相成長装置である。
【0033】
サセプタ1は、その主表面の内部にエピタキシャル層が気相成長されるウェーハWを載置するザグリ(不図示)が形成されている。反応容器内を加熱するため、例えば、ハロゲンランプ等の加熱装置を気相成長装置100に備えてもよい。
【0034】
ガス導入管10より、プロセスガスを供給する。プロセスガスは、シリコン系原料ガスの他、キャリアガスやドーパントなどを含んでいてもよく、シリコンのエピタキシャル成長が可能なガスである。プロセスガスを温度が調整されたウェーハW上に供給し、エピタキシャル層を形成する。このとき、ウェーハWの直径、シリコン系原料ガスとドーパントの濃度、キャリアガスの種類、ウェーハWの温度などのシリコンエピタキシャル層の成長条件は特に限定されず、製造するシリコンエピタキシャルウェーハに合わせて適宜調整してよい。
【0035】
以上のように、本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法は、本発明に係るシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法で製造したサセプタを用いて、シリコン単結晶基板の主表面上にシリコンエピタキシャル層を気相成長させる、シリコンエピタキシャルウェーハの製造方法である。本発明のシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法であれば、転位の発生や貼り付け等を抑制した高品質なウェーハを製造できる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0037】
(実施例1)
まず、準備した黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を60μm形成した。次に、被膜の表面研磨を行った後、膜厚が5μmの第2の炭化ケイ素被膜を形成し、サセプタを製造した。このサセプタを用いて、直径300mmのシリコン単結晶基板(ウェーハ)にシリコンエピタキシャル層を気相成長させた際、シリコンウェーハへのSlipの発生有無、ウェーハとサセプタの貼り付き発生有無、ウェーハを連続で処理した際の1枚目と2枚目の温度分布の変化としてウェーハ外周から10mm付近の温度の変化について確認した。結果、ウェーハのSlip、ウェーハとサセプタの貼り付きはともに発生せず、外周部の温度の変化も0.4℃であった。表1にこの結果を示す。
【0038】
(比較例1)
実施例1のサセプタ製造過程において、黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を60μm形成した後、表面研磨を行わないでサセプタを製造した。このサセプタ製造の概略フローチャートを図3に示す。このサセプタを用いて、直径300mmシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を気相成長させた。結果、温度分布の差が5.0℃と大きくなっており、貼り付きの発生は無いが、Slipの発生があった。表1にこの結果を併せて示す。
【0039】
(比較例2)
実施例1のサセプタ製造過程において、黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を60μm形成した後、表面研磨を行ってサセプタを製造した。このサセプタ製造の概略フローチャートを図4に示す。このサセプタを用いて、直径300mmシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を気相成長させた。結果、温度分布の差は0.2℃と小さくすることが出来、Slipの発生もなかったが、サセプタへの貼り付きが発生した。表1にこの結果を併せて示す。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例1に記載の第1の炭化ケイ素被膜を形成しただけのサセプタでは、貼り付きは抑制できたが、Slipの発生および温度変化を抑制することができなかった。また、比較例2に記載の第1の炭化ケイ素被膜を形成した後、研磨を行っただけのサセプタでは、Slipと温度変化を抑制することはできたが、貼り付きは抑制できなかった。
【0042】
一方、本発明のサセプタ製造方法及びシリコンエピタキシャルウェーハの製造方法の実施例である実施例1では、黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成した後、表面研磨を行い、第2の炭化ケイ素被膜を膜厚5μmとして形成したサセプタを用いることで、Slip、貼り付きを抑制でき、また温度変化も抑制することができた。
【0043】
(実施例2)
実施例1に記載のサセプタ製造の際、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が、それぞれ、5、31、52、60μmとして形成すること以外は実施例1に記載のサセプタと同様のサセプタを製造し、これらを用いて、直径300mmシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を気相成長させた。その結果、ウェーハのSlip、ウェーハとサセプタの貼り付きはともに発生せず、外周部の温度の変化も、それぞれ、0.4、2.1、3.6、3.9℃と4℃以下であった。この結果を表2に示す。
【0044】
(比較例3)
実施例1に記載のサセプタ製造の際、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚を64μmとする以外は実施例1に記載のサセプタと同様のサセプタを製造し、これを用いて、直径300mmシリコンウェーハにシリコンエピタキシャル層を気相成長させた。結果、温度分布の差が4.3℃と4℃以上となり、ウェーハとサセプタの貼り付きはなかったものの、Slipが発生した。この結果を比較例2とともに表2に併せて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
比較例2は、上述の通りである。また、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚を64μmとした比較例3では、貼り付けは抑制できたが、Slipの発生と温度変化を抑制することができなかった。
【0047】
一方、実施例2では、第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が5〜60μmとして形成することで、Slipの発生、貼り付け及び温度変化を抑制することができた。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0049】
1…サセプタ、 2…反応容器、 3…ウェーハ回転機構、 4…リフトピン、
5…サセプタに設けられた貫通孔、 6…支持アームに設けられた貫通孔、
7…ウェーハリフトシャフト、 8…サセプタ支持部材、 9…支持アーム、
10…ガス導入管、 11…ガス排出管、 12…軸部、
100…気相成長装置、 W…シリコン単結晶基板(ウェーハ)。
【要約】
【課題】ウェーハへの応力による転位の発生、サセプタとウェーハの貼り付き及びサセプタの温度変化を抑制できるシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法を提供すること。
【解決手段】シリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法であって、黒鉛基材に第1の炭化ケイ素被膜を形成する第1の被膜形成工程と、前記被膜の表面の研磨を行う研磨工程と、該研磨工程後、前記研磨を行った前記被膜の表面に第2の炭化ケイ素被膜の膜厚が60μm以下となるように、前記第2の炭化ケイ素被膜を形成する第2の被膜形成工程と、
を含むシリコンエピタキシャルウェーハ製造用サセプタの製造方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4