【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0061】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下、「PTMG」と略記する。)100質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、式(1)に示す構造(以下、「EO」と略記する。)と下記式(2)に示す構造(以下、「PO」と略記する)とのモル比(以下、同じ。)[EO/PO]=50/50、数平均分子量;1,750、以下「EOPO(1)」と略記する。)35質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記する。)3質量部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)121質量部を加え、均一に混合した後、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略記する。)36質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水425質量部を加え、次いで、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)7.9質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「WACKER E22」、固形分;42質量%、以下「QEm(1)」と略記する。)9.1質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、2.18mmol/gであった。
【0062】
【化3】
【0063】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールをベース原料とするもの、数平均分子量;2,000、以下「PC」と略記する。)30質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、[EO/PO]=75/25、数平均分子量;1,400、以下「EOPO(2)」と略記する。)40質量部、DMPA3質量部、MEK149質量部を加え、均一に混合した後、HMDIを46質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水522質量部を加え、次いで、ピペラジン(以下、「PZ」と略記する。)5質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SILICONE FLUID EMULSION C800」、固形分;80質量%、以下「QEm(2)」と略記する。)6.7質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.1mmol/g、EOの濃度は、3.05mmol/gであった。
【0064】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、EOと下記式(3)に示す構造(以下、「TMO」と略記する)とのモル比[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;1,800、以下「EOTMO(1)」と略記する。)80質量部、DMPA4質量部、MEK159質量部を加え、均一に混合した後、HMDI34質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する。)9.4質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水556質量部を加え、次いで、IPDA11質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SLJ1320」、固形分;60質量%、以下「QEm(3)」と略記する。)12質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.13mmol/g、EOの濃度は、3.82mmol/gであった。
【0065】
【化4】
【0066】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、PC50質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、[EO/PO]=75/25、数平均分子量;3,000、以下「EOPO(3)」と略記する。)17質量部、DMPA2質量部、MEK136質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)31質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン1.5質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水476質量部を加え、次いで、PZ4質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(1)12質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.07mmol/g、EOの濃度は、1.42mmol/gであった。
【0067】
[実施例5]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;1,100、以下「EOTMO(2)」と略記する。)45質量部、DMPA3質量部、MEK127質量部を加え、均一に混合した後、HMDI46質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水444質量部を加え、次いで、IPDA10質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(2)10質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.11mmol/g、EOの濃度は、2.51mmol/gであった。
【0068】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;3,000、以下「EOTMO(3)」と略記する。)80質量部、DMPA4.5質量部、MEK174質量部を加え、均一に混合した後、HMDI46質量部、HDI13質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3.4質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水611質量部を加え、次いで、IPDA14質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(3)5.2質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.13mmol/g、EOの濃度は、3.47mmol/gであった。
【0069】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量;1,000、以下「PEG」と略記する。)35質量部、DMPA7質量部、MEK126質量部を加え、均一に混合した後、HDIを35質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン5.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水439質量部を加え、次いで、IPDA12質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させることによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.25mmol/g、EOの濃度は、1.92mmol/gであった。
【0070】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、DMPA5質量部、MEK90質量部を加え、均一に混合した後、HDIを22質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3.8質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水314質量部を加え、次いで、IPDA7.4質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させることによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.28mmol/g、EOの濃度は、0mmol/gであった。
【0071】
[比較例3]
実施例1と同様の組成系にて、ウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、0mmol/gに設計して合成を試みたが、乳化できなかった。よって、以降の評価ができなかったため、「−」とした。
【0072】
[比較例4]
実施例1と同様の組成系にて、ウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、10mmol/gに設計して合成を試みたが、乳化できなかった。よって、以降の評価ができなかったため、「−」とした。
【0073】
[数平均分子量および重量平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0074】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0075】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0076】
[水分散安定性の評価方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物を、5℃条件下で1週間放置して、その後の溶液状態を観察し、以下のように評価した。
「A」;流動性に問題なし。
「B」;流動性が低い。
「C」;流動性がない。
【0077】
[透湿性の評価]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物を用いて、厚さ20μmのフィルムを作製し、これをJIS L1099:2012のA−1法(塩化カルシウム法)に準拠して透湿度(g/m
2/24h)を測定し、以下のように評価した。
「A」;3,000以上
「B」;2,000以上3,000未満
「C」;2,000未満
[合成皮革の作製]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部、黒色顔料(DIC株式会社製「ダイラックHS−9530」)10質量部、増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部を混合した配合液を、離型紙(味の素株式会社製「DN−TP−155T」)上に乾燥後の膜厚が20μmとなる様に塗布し、70℃で2分間、120℃で2分間乾燥させて表皮層を得た。
次いで、水系ポリウレタン接着剤(DIC株式会社製「ハイドランWLA−465」)100質量部、増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部、架橋剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター C5」)5質量部を混合した配合液を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、前記表皮層上に塗布し、70℃で3分間乾燥させた。
乾燥後直ちに、T/R起毛布を貼り合わせた後、120℃で2分間熱処理し、50℃で2日間熟成させてから離型紙を剥離して、合成皮革を得た。
【0078】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を70℃、湿度95%の条件下で5週間放置した。その後の外観観察および指触により、以下のように評価した。
「A」;外観・指触に異常なし。
「B」;外観に艶変化が生じた。
「C」;外観に艶変化が生じ、かつ、ベタツキが確認された。
【0079】
[耐摩耗性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を、テーバー摩耗試験(JISL 1096:2010、摩耗輪:H−18、荷重:500g、回転数:70回転/分、試験回数:1,000回)を行い、合成皮革の表面を観察し、以下のように評価した。
「A」;破れなし。
「B」;若干の破れあり。
「C」;破れが大きく、生地(起毛布)まで露出している。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
本発明のウレタン樹脂組成物である実施例1〜6は、ウレタン樹脂の水分散安定性、透湿性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性に優れる
【0083】
一方、比較例1は、ウレタン樹脂(X)のアニオン性の濃度が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、水分散安定性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性が不良であった。
【0084】
比較例2は、ウレタン樹脂(X)のアニオン性の濃度が、本発明で規定する範囲を超えており、かつ、EOが導入されていない態様であるが、透湿性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性が不良であった。
【0085】
比較例3は、EOが導入されていない態様であるが、乳化できなかった。
【0086】
比較例4は、EOの導入量が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、乳化できなかった。