特許第6841387号(P6841387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841387ウレタン樹脂組成物、皮膜、及び、合成皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841387
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物、皮膜、及び、合成皮革
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20210301BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20210301BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210301BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20210301BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20210301BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20210301BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20210301BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08L83/04
   C08G18/48 045
   C08G18/48 054
   C08G18/00 B
   C09D175/08
   C09D5/02
   C09D183/04
   D06N3/14 101
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-544316(P2020-544316)
(86)(22)【出願日】2019年12月3日
(86)【国際出願番号】JP2019047146
(87)【国際公開番号】WO2020129604
(87)【国際公開日】20200625
【審査請求日】2020年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-236366(P2018-236366)
(32)【優先日】2018年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124143
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/017724(WO,A1)
【文献】 特表2012−515811(JP,A)
【文献】 特開2005−239841(JP,A)
【文献】 特開2003−138131(JP,A)
【文献】 特開2010−280843(JP,A)
【文献】 特開昭58−038723(JP,A)
【文献】 特開2009−007409(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/033732(WO,A1)
【文献】 特開2004−143641(JP,A)
【文献】 特開2012−102210(JP,A)
【文献】 特開2010−084051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00−75/16
C08G 18/00−18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性基を有するウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物であって、
前記ウレタン樹脂(X)が、
アニオン性基の濃度が、0.01〜0.2mmol/gの範囲であり、
下記式(1)の構造を有するポリオールに由来する構造を有し、
下記式(1)で示される構造の濃度が、1〜6mmol/gであり、
前記ウレタン樹脂組成物が、更にシリコーン化合物(Z)を含有するものであることを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)の前記式(1)で示される構造が、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a1−1)、及び/又は、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール(a1−2)から供給されるものである請求項1記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a1−1)、及び、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール(a1−2)が、ランダム共重合体である請求項2記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリイソシアネート(c)を原料とするものであり、前記ポリイソシアネート(c)中における、脂環式ポリイソシアネートの使用割合が40mol%以上である請求項1〜3のいずれか1項記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項のウレタン樹脂組成物により形成されたことを特徴とする皮膜。
【請求項6】
請求項記載の皮膜を表皮層として有することを特徴とする合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、皮膜、及び、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、その機械的強度や風合いの良さから、合成皮革(人工皮革含む。)の製造に広く利用されている。この用途においては、これまでN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を含有する溶剤系のウレタン樹脂が主流であった。しかしながら、欧州でのDMF規制、中国や台湾でのVOC排出規制の強化、大手アパレルメーカーでのDMF規制などを背景に、合成皮革を構成するウレタン樹脂の脱DMF化が求められている。
【0003】
このような時代の推移に対応するため、ウレタン樹脂が水に分散等したウレタン樹脂組成物が広く検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、その置換検討が進められてはいるものの、現行品では耐加水分解性等の物性面において、溶剤系に劣ることが指摘されている。
【0004】
また、スポーツシューズ、機能性シューズ、透湿衣料等の分野においても、脱DMF化の流れがあるものの、上記物性に加え、優れた透湿性も必要であり、これら全ての性能を高いレベルで満たす水系の材料が未だ見出されていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−119749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ウレタン樹脂の水分散安定性、透湿性、及び、耐加水分解性に優れる水系のウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、アニオン性基を有するウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するウレタン樹脂組成物であって、前記ウレタン樹脂(X)が、アニオン性基の濃度が、0.2mmol/g以下であり、下記式(1)で示される構造の濃度が、1〜6mmol/gであることを特徴とするウレタン樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【化1】
【0009】
また、本発明は、前記ウレタン樹脂組成物により形成されたことを特徴とする皮膜、及び、前記皮膜を表皮層とすることを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するものであり、環境に調和するものであり、ウレタン樹脂の水分散安定性、透湿性、及び、耐加水分解性に優れるものである。
【0011】
また、特定の材料を用いた場合には、更に、耐摩耗性の向上、及び、耐加水分解性の更なる向上が得られるものである。
【0012】
よって、本発明のウレタン樹脂組成物により形成された皮膜は、様々な用途に使用することができ、特に、これまで溶剤系から水系への置換が困難とされてきたスポーツシューズ、機能性シューズ、透湿衣料等への使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のウレタン樹脂組成物は、アニオン性基を有する特定のウレタン樹脂(X)、及び、水(Y)を含有するものである。
【0014】
前記ウレタン樹脂(X)は、優れた耐加水分解性を得るうえで、アニオン性基を有し、かつ、その濃度が、0.2mmol/g以下であることが必須である。前記アニオン性基のような親水性基は、ウレタン樹脂を水に分散させるために必要なものであるが、樹脂骨格の中で、加水分解等の引き金となる箇所となる。よって、その濃度を0.2mmol/g以下にすることで、優れた耐加水分解性を得ることができるとともに、後述する式(1)に示す構造であるノニオン性基と組み合わせることにより、ウレタン樹脂の乳化性、及び、水分散安定性を担保することができる。
【0015】
前記ウレタン樹脂(X)におけるアニオン性基の濃度としては、より一層優れた耐加水分解性、及び、水分散安定性が得られる点から、0.01〜0.2mmol/gの範囲であることが好ましく、0.02〜0.17mmol/gの範囲がより好ましく、0.03〜0.15mmol/gの範囲が更に好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)のアニオン性基の濃度は、後述するウレタン樹脂(X)の原料となる、アニオン性基を付与する化合物(d)の使用量により調整することができる。
【0016】
また、前記ウレタン樹脂(X)は、下記式(1)で示される構造の濃度が、1〜6mmol/gであることが必須である。
【0017】
【化2】
【0018】
前記式(1)で示される構造はノニオン性基としても機能するが、ノニオン性基が多い場合には、乳化が非常に困難であることが指摘されていた。この理由として考えられるのが、前記式(1)で示される構造の新水性が極めて高いために、粒子が部分的に水に溶解して粒子形成が不安定化されて、ゲル状となることが一因として考えられる。しかしながら、本発明においては、前記式(1)で示される構造を特定の導入量とすることで、良好な乳化性、及び、水分散安定性が得られただけでなく、優れた透湿性も得ることができた。
【0019】
前記ウレタン樹脂(X)における前記式(1)で示される構造の濃度としては、より一層優れた乳化性、水分散安定性、及び、透湿性が得られる点から、1.1〜5mmol/gの範囲であることが好ましく、1.3〜4.5mmol/gの範囲がより好ましい。なお、前記式(1)で示される構造の濃度は、前記式(1)の構造を有するポリオール(a1)の使用量により調整することができる。前記式(1)で示される構造の濃度の算出にあたっては、前記式(1)の構造(オキシエチレン基1つ)を基準とする。
【0020】
前記ウレタン樹脂(X)としては、具体的には、例えば、前記式(1)の構造を有するポリオール(a1)を含有するポリオール(a)、鎖伸長剤(b)、ポリイソシアネート(c)、及び、アニオン性基を付与する化合物(d)の反応物を用いることができる。
【0021】
前記式(1)の構造を有するポリオール(a1)を含有するポリオール(a)としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a1−1)、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール(a1−1)等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れたウレタン樹脂(X)の水分散安定性が得られる点から、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a1−1)、及び/又は、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール(a1−2)を用いることが好ましい。
【0022】
前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(a1−1)としては、例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールを開始剤として、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドの混合物を付加したランダム共重合体;エチレングリコール又はプロピレングリコールを開始剤として、プロピレンオキサイドを付加した後に、その末端にエチレンオキサイドを付加したもの、エチレングリコール又はプロピレングリコールを開始剤として、エチレンオキサイドを付加した後に、その末端にプロピレンオキサイドを付加したもの等のブロック共重合体などを用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れたウレタン樹脂(X)の水分散安定性が得られる点から、ランダム重合体を用いることが好ましい。
【0023】
前記ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール(a1−2)としては、例えば、エチレングリコール又はテトラヒドロフランを開始剤として、エチレンオキサイド及びテトラメチレンオキサイドの混合物を付加したランダム共重合体;エチレングリコール又はテトラヒドロフランを開始剤として、テトラメチレンオキサイドを付加した後に、その末端にエチレンオキサイドを付加したもの、エチレングリコール又はテトラヒドロフランを開始剤として、エチレンオキサイドを付加した後に、その末端にテトラメチレンオキサイドを付加したもの等のブロック共重合体などを用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れたウレタン樹脂(X)の水分散安定性が得られる点から、ランダム重合体を用いることが好ましい。
【0024】
前記式(1)の構造を有するポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた乳化性、水分散安定性、及び、透湿性が得られる点から、500〜100,000の範囲であることが好ましく、700〜10,000の範囲がより好ましく、1,000〜5,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0025】
前記ポリオール(a1)の使用割合としては、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0026】
前記ポリオール(a)は、前記ポリオール(a1)以外にもその他のポリオールを用いることができる。前記その他のポリオールとしては、例えば、前記ポリオール(a1)以外のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐摩耗性、耐加水分解性、及び、屈曲性が得られる点から、前記ポリオール(a1)以外のポリエーテルポリオール、及び/又は、ポリカーボネートポリオールを用いることが好ましく、前記ポリオール(a1)以外のポリエーテルポリオールとしては、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。
【0027】
前記ポリオール(a)全体の使用割合としては、ウレタン皮膜の機械的強度の点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜40質量%の範囲がより好ましい。
【0028】
前記鎖伸長剤(b)は、分子量が500未満、好ましくは50〜450のものであり、例えば、チレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、水等の水酸基を有する鎖伸長剤;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアミノ基を有する鎖伸長剤を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記鎖伸長剤(b)としては、前記したものの中でも、より一層優れた耐候性、及び、耐加水分解性が得られる点から、アミノ基を有する鎖伸長剤を用いることが好ましい。
【0030】
前記鎖伸長剤(b)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中0.1〜20質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0031】
前記ポリイソシアネート(c)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、カルボジイミド化ジフェニルメタンポリイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記ポリイソシアネート(c)としては、前記したものの中でも、より一層優れた耐摩耗性、及び、耐加水分解性が得られる点から、脂環式ポリイソシアネートを用いることが好ましく、前記脂環式ポリイソシアネートの使用割合は、前記ポリイソシアネート(c)中40mol%以上であることが好ましく、60mol%以上がより好ましい。
【0033】
前記アニオン性基を付与する化合物(d)としては、例えば、カルボキシル基を有する化合物、スルホニル基を有する化合物等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0034】
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−吉草酸等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記スルホニル基を有する化合物としては、例えば、3,4−ジアミノブタンスルホン酸、3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、2,6−ジアミノベンゼンスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸、N−2−アミノエタン−2−アミノスルホン酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン;これらの塩等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記カルボキシル基及びスルホニル基は、ウレタン樹脂組成物中で、一部又は全部が塩基性化合物に中和されていてもよい。前記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム等を含む金属塩基化合物などを用いることができる。
【0037】
前記アニオン性基を付与する化合物(d)の使用割合としては、より一層優れた機械的強度が得られる点から、ウレタン樹脂(X)を構成する原料の合計質量中0.1〜3質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜2.5質量%の範囲がより好ましい。
【0038】
前記ウレタン樹脂(X)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a)、前記鎖伸長剤(b)、前記ポリイソシアネート(c)、及び、前記アニオン性基を付与する化合物(d)を一括に仕込み反応させる方法;前記ポリオール(a)、前記ポリイソシアネート(c)、及び、前記アニオン性基を付与する化合物(d)を反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得、次いで、前記鎖伸長剤(b)を反応させる方法などが挙げられる。これらの中でも、製造安定性の点から、後者の方法が好ましい。前記いずれの反応も、例えば、50〜100℃の温度で3〜10時間行うことが挙げられる。
【0039】
前記ポリオール(a)と前記アニオン性基を付与する化合物(d)と前記鎖伸長剤(b)とが有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(c)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基の合計)]としては、0.8〜1.2の範囲であることが好ましく、0.9〜1.1の範囲がより好ましい。
【0040】
前記前記ウレタン樹脂(X)を製造する際には、前記ウレタン樹脂(X)に残存するイソシアネート基を失活させることが好ましい。前記イソシアネート基を失活させる場合には、メタノール等の水酸基を有するアルコールを用いることが好ましい。前記アルコールを用いる場合の使用量としては、例えば、ウレタン樹脂(X)100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲である。
【0041】
また、前記ウレタン樹脂(X)を製造する際には、有機溶剤を用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル化合物;アセトニトリル等のニトリル化合物;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物などを用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、前記有機溶剤は、ウレタン樹脂組成物を得る際には蒸留法等によって除去されることが好ましい。
【0042】
前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量としては、より一層優れた耐摩耗性、耐加水分解性、及び、機械的強度が得られる点から、50,000〜500,000の範囲であることが好ましく、80,000〜400,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(X)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0043】
前記水(Y)としては、例えば、例えば、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。前記水(Y)の使用割合としては、作業性、塗工性、及び保存安定性の点から、ウレタン樹脂組成物中20〜90質量%の範囲であることが好ましく、30〜60質量%の範囲がより好ましい。
【0044】
本発明のウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(X)、及び、前記水(Y)を含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0045】
前記その他の添加剤としては、例えば、シリコーン化合物(Z)、ウレタン化触媒、架橋剤、シランカップリング剤、増粘剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた耐摩耗性が得られる点から、シリコーン化合物(Z)を用いることが好ましい。
【0046】
前記シリコーン化合物(Z)としては、ウレタン樹脂組成物への良好な分散性が得られる点から、シリコーンエマルジョンを用いることが好ましく、例えば、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョン、アミノ基含有シリコーンオイルのエマルジョン、エポキシ基含有シリコーンオイルのエマルジョン、メルカプト基含有シリコーンオイルのエマルジョン、フェニル基含有シリコーンオイルのエマルジョン、長鎖アルキル基含有シリコーンオイルのエマルジョン、水素基含有シリコーンオイルのエマルジョン、反応型シリコーンオイルのエマルジョン等のシリコーンオイルのエマルジョン;MQレジンのエマルジョン、メチル系シリコーンレジンのエマルジョン等のレジン系エマルジョン;シリコーンゴム系エマルジョン;シリコーンパウダー系エマルジョンなどを用いることができる。これらのシリコーンエマルジョンは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ウレタン樹脂(X)との相溶性がより向上し、より一層優れた耐摩耗性が得られる点から、シリコーンオイルのエマルジョンを用いることが好ましく、ジメチルシリコーンオイルのエマルジョンがより好ましい。
【0047】
前記好ましいシリコーンエマルジョンとしては、例えば、「WACKER E22」、「SILICONE FLUID EMULSION C800」、「SLJ1320」(以上、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)、「KM−740T」、「KM−862T」、「KM−752T」(以上、信越化学工業株式会社製)等を市販品として入手することができる。
【0048】
前記シリコーン化合物(Z)(固形分)の使用量としては、より一層優れた水分散性、及び、耐摩耗性が得られる点から、前記ウレタン樹脂(X)(固形分)100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲であることが好ましく、1〜9質量部の範囲がより好ましい。
【0049】
本発明のウレタン樹脂組成物により皮膜を形成する方法としては、例えば、基材の上に、前記ウレタン樹脂組成物を塗工して、水を乾燥させる方法が挙げられる。
【0050】
前記基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材;前記不織布にポリウレタン樹脂等の樹脂を含浸させたもの;前記不織布に更に多孔質層を設けたもの;樹脂基材;ゴム;ガラス;木材;金属などを用いることができる。
【0051】
前記ウレタン樹脂組成物を前記基材に塗布する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、コンマコーター、アプリケーター等を使用する方法が挙げられる。
【0052】
前記水の乾燥方法としては、例えば、60〜130℃の温度で30秒〜10分間乾燥させる方法が挙げられる。
【0053】
以上の方法により得られるウレタン樹脂皮膜の厚さとしては、例えば、5〜1,000μmである。
【0054】
次に、本発明の合成皮革について説明する。
【0055】
本発明の合成皮革は、前記ウレタン樹脂皮膜を表皮層とするものであり、例えば、以下の構成を有するものが挙げられる。
【0056】
(1)基材、表皮層
(2)基材、接着層、表皮層
(3)基材、接着層、中間層、表皮層
(4)基材、多孔層、接着層、表皮層
(5)基材、多孔層、接着層、中間層、表皮層
【0057】
前記接着層、中間層、及び、多孔層を形成する材料としては、いずれも公知のものを用いることができる。
【0058】
以上、本発明のウレタン樹脂組成物は、水を含有するものであり、環境に調和するものであり、ウレタン樹脂の水分散安定性、透湿性、及び、耐加水分解性に優れるものである。また、特定の材料を用いた場合には、更に、耐摩耗性の向上、及び、耐加水分解性の更なる向上が得られるものである。
【0059】
よって、本発明のウレタン樹脂組成物により形成された皮膜は、様々な用途に使用することができ、特に、これまで溶剤系から水系への置換が困難とされてきたスポーツシューズ、機能性シューズ、透湿衣料等への使用が可能である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0061】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2,000、以下、「PTMG」と略記する。)100質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、式(1)に示す構造(以下、「EO」と略記する。)と下記式(2)に示す構造(以下、「PO」と略記する)とのモル比(以下、同じ。)[EO/PO]=50/50、数平均分子量;1,750、以下「EOPO(1)」と略記する。)35質量部、2,2−ジメチロールプロピオン酸(以下、「DMPA」と略記する。)3質量部、メチルエチルケトン(以下、「MEK」と略記する。)121質量部を加え、均一に混合した後、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(以下、「HMDI」と略記する。)36質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水425質量部を加え、次いで、イソホロンジアミン(以下、「IPDA」と略記する。)7.9質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「WACKER E22」、固形分;42質量%、以下「QEm(1)」と略記する。)9.1質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、2.18mmol/gであった。
【0062】
【化3】
【0063】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、ポリカーボネートジオール(1,6−ヘキサンジオールをベース原料とするもの、数平均分子量;2,000、以下「PC」と略記する。)30質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、[EO/PO]=75/25、数平均分子量;1,400、以下「EOPO(2)」と略記する。)40質量部、DMPA3質量部、MEK149質量部を加え、均一に混合した後、HMDIを46質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水522質量部を加え、次いで、ピペラジン(以下、「PZ」と略記する。)5質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SILICONE FLUID EMULSION C800」、固形分;80質量%、以下「QEm(2)」と略記する。)6.7質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.1mmol/g、EOの濃度は、3.05mmol/gであった。
【0064】
[実施例3]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、EOと下記式(3)に示す構造(以下、「TMO」と略記する)とのモル比[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;1,800、以下「EOTMO(1)」と略記する。)80質量部、DMPA4質量部、MEK159質量部を加え、均一に混合した後、HMDI34質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と略記する。)9.4質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水556質量部を加え、次いで、IPDA11質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、シリコーンエマルジョン(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製「SLJ1320」、固形分;60質量%、以下「QEm(3)」と略記する。)12質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.13mmol/g、EOの濃度は、3.82mmol/gであった。
【0065】
【化4】
【0066】
[実施例4]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、PC50質量部、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム共重合体(エチレングリコールを開始剤としたもの、[EO/PO]=75/25、数平均分子量;3,000、以下「EOPO(3)」と略記する。)17質量部、DMPA2質量部、MEK136質量部を加え、均一に混合した後、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と略記する。)31質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン1.5質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水476質量部を加え、次いで、PZ4質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(1)12質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.07mmol/g、EOの濃度は、1.42mmol/gであった。
【0067】
[実施例5]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;1,100、以下「EOTMO(2)」と略記する。)45質量部、DMPA3質量部、MEK127質量部を加え、均一に混合した後、HMDI46質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン2.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水444質量部を加え、次いで、IPDA10質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(2)10質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.11mmol/g、EOの濃度は、2.51mmol/gであった。
【0068】
[実施例6]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、エチレンオキサイドとテトラメチレンオキサイドのランダム共重合体(テトラヒドロフランを開始剤としたもの、[EO/TMO]=50/50、数平均分子量;3,000、以下「EOTMO(3)」と略記する。)80質量部、DMPA4.5質量部、MEK174質量部を加え、均一に混合した後、HMDI46質量部、HDI13質量部を加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3.4質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水611質量部を加え、次いで、IPDA14質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させた後、QEm(3)5.2質量部を添加することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.13mmol/g、EOの濃度は、3.47mmol/gであった。
【0069】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、ポリエチレングリコール(数平均分子量;1,000、以下「PEG」と略記する。)35質量部、DMPA7質量部、MEK126質量部を加え、均一に混合した後、HDIを35質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン5.3質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水439質量部を加え、次いで、IPDA12質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させることによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.25mmol/g、EOの濃度は、1.92mmol/gであった。
【0070】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、窒素気流下、PTMG100質量部、DMPA5質量部、MEK90質量部を加え、均一に混合した後、HDIを22質量部加え、次いで、ジブチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、70℃で約4時間反応させることで、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
次いで、トリエチルアミン3.8質量部を加え、前記ウレタンポリマー中のカルボキシル基を中和した後、イオン交換水314質量部を加え、次いで、IPDA7.4質量部を加え反応させた。その後、メチルエチルケトンを減圧下留去させることによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.28mmol/g、EOの濃度は、0mmol/gであった。
【0071】
[比較例3]
実施例1と同様の組成系にて、ウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、0mmol/gに設計して合成を試みたが、乳化できなかった。よって、以降の評価ができなかったため、「−」とした。
【0072】
[比較例4]
実施例1と同様の組成系にて、ウレタン樹脂のアニオン性基の濃度は、0.12mmol/g、EOの濃度は、10mmol/gに設計して合成を試みたが、乳化できなかった。よって、以降の評価ができなかったため、「−」とした。
【0073】
[数平均分子量および重量平均分子量の測定方法]
合成例で用いたポリオール等の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0074】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0075】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0076】
[水分散安定性の評価方法]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物を、5℃条件下で1週間放置して、その後の溶液状態を観察し、以下のように評価した。
「A」;流動性に問題なし。
「B」;流動性が低い。
「C」;流動性がない。
【0077】
[透湿性の評価]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物を用いて、厚さ20μmのフィルムを作製し、これをJIS L1099:2012のA−1法(塩化カルシウム法)に準拠して透湿度(g/m/24h)を測定し、以下のように評価した。
「A」;3,000以上
「B」;2,000以上3,000未満
「C」;2,000未満
[合成皮革の作製]
実施例及び比較例で得られたウレタン樹脂組成物100質量部、黒色顔料(DIC株式会社製「ダイラックHS−9530」)10質量部、増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部を混合した配合液を、離型紙(味の素株式会社製「DN−TP−155T」)上に乾燥後の膜厚が20μmとなる様に塗布し、70℃で2分間、120℃で2分間乾燥させて表皮層を得た。
次いで、水系ポリウレタン接着剤(DIC株式会社製「ハイドランWLA−465」)100質量部、増粘剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター T10」)1質量部、架橋剤(DIC株式会社製「ハイドラン アシスター C5」)5質量部を混合した配合液を、乾燥後の膜厚が30μmとなるように、前記表皮層上に塗布し、70℃で3分間乾燥させた。
乾燥後直ちに、T/R起毛布を貼り合わせた後、120℃で2分間熱処理し、50℃で2日間熟成させてから離型紙を剥離して、合成皮革を得た。
【0078】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を70℃、湿度95%の条件下で5週間放置した。その後の外観観察および指触により、以下のように評価した。
「A」;外観・指触に異常なし。
「B」;外観に艶変化が生じた。
「C」;外観に艶変化が生じ、かつ、ベタツキが確認された。
【0079】
[耐摩耗性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた合成皮革を、テーバー摩耗試験(JISL 1096:2010、摩耗輪:H−18、荷重:500g、回転数:70回転/分、試験回数:1,000回)を行い、合成皮革の表面を観察し、以下のように評価した。
「A」;破れなし。
「B」;若干の破れあり。
「C」;破れが大きく、生地(起毛布)まで露出している。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
本発明のウレタン樹脂組成物である実施例1〜6は、ウレタン樹脂の水分散安定性、透湿性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性に優れる
【0083】
一方、比較例1は、ウレタン樹脂(X)のアニオン性の濃度が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、水分散安定性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性が不良であった。
【0084】
比較例2は、ウレタン樹脂(X)のアニオン性の濃度が、本発明で規定する範囲を超えており、かつ、EOが導入されていない態様であるが、透湿性、耐加水分解性、及び、耐摩耗性が不良であった。
【0085】
比較例3は、EOが導入されていない態様であるが、乳化できなかった。
【0086】
比較例4は、EOの導入量が、本発明で規定する範囲を超える態様であるが、乳化できなかった。