特許第6841530号(P6841530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧

特許6841530重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法
<>
  • 特許6841530-重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法 図000023
  • 特許6841530-重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法 図000024
  • 特許6841530-重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法 図000025
  • 特許6841530-重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法 図000026
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841530
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/58 20060101AFI20210301BHJP
【FI】
   C08F220/58
【請求項の数】5
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-517730(P2019-517730)
(86)(22)【出願日】2018年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2018018424
(87)【国際公開番号】WO2018207934
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2019年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-95058(P2017-95058)
(32)【優先日】2017年5月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 明
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩靖
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼島 義徳
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼原 智子
(72)【発明者】
【氏名】呑村 優
(72)【発明者】
【氏名】荒本 光
(72)【発明者】
【氏名】以倉 崚平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 七海
【審査官】 中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−216724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00−246/00;301/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系重合性化合物と、該ビニル系重合性化合物に溶解するホスト基含有重合性化合物と、ゲスト基含有重合性化合物とを含有する溶液を含み、
前記ホスト基含有重合性化合物が有するホスト基は、シクロデキストリンから一つの水素原子又は水酸基が除された基であり、
前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1以上であり、
前記ビニル系重合性化合物は、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、Raは水素原子またはメチル基、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。RとRとは、これらが結合する窒素原子と共にヘテロ原子を介し又は介することなく互いに結合して飽和環を形成してもよい)
で表される(メタ)アクリルアミド誘導体を含み
前記ゲスト基は、前記ホスト基と包接錯体を形成することができる基であり、
前記ビニル系重合性化合物、前記ホスト基含有重合性化合物及び前記ゲスト基含有重合性化合物の全量に対し、前記ビニル系重合性化合物を90〜99.5モル%含む、重合用組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリルアミド誘導体が、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、及び、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の重合用組成物。
【請求項3】
前記ホスト基含有重合性化合物と、前記ゲスト基含有重合性化合物とは包接錯体を形成している、請求項1又は2に記載の重合用組成物。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1項に記載の重合用組成物の重合体。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項に記載の重合用組成物を、溶媒の不存在下で重合して重合体を得る工程を備える、重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホスト−ゲスト相互作用に代表される非共有結合的相互作用を巧みに利用して、様々な機能性を付与した超分子材料の開発が盛んに行われている。例えば、特許文献1には、ホスト−ゲスト相互作用の可逆性を活かした自己修復機能等を有する高分子材料が開示されている。このような高分子材料は、高分子が有するホスト基及びゲスト基によるホスト−ゲスト相互作用が作用することで、材料の強度及び伸びが従来の高分子材料よりも優れることから、新規な機能性高分子材料として大いに期待されている。
【0003】
ホスト基を有する高分子材料は、例えば、ホスト基を有する重合性単量体を含む原料を重合することで製造できることが知られている。このようなホスト基を有する高分子材料は、それ単独で特有の機能が発揮され、また、ゲスト基を有する高分子材料との組み合わせで、ホスト−ゲスト相互作用が形成され得る高分子材料も得ることができることから、利用価値の高い材料である。近年では、このようなホスト基を有する高分子材料の物性をさらに向上させるとともに、より簡便な方法で製造する技術の確立も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/162019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のホスト基を有する高分子材料は、例えば、水系溶媒中で重合性単量体の重合反応を行う方法によって製造されるものであり、溶媒を使用してその反応が行われることから、溶媒を除去する工程等が必要であった。具体的には、ホスト基を含有する重合性単量体は、その他の重合性単量体(例えば、主成分となる重合性単量体等)との相溶性が低いため、重合反応を効率よく進めるには、ホスト基を含有する重合性単量体を溶解可能な水系溶媒を使用せざるを得ないものであった。そのため、製造工程が複雑になり、製造に時間も要していた。また、製造時に溶媒を使用することで、例えば、コーティング膜やフィルム等の形状とすることが難しい場合があり、用途上の制約を受けやすいという課題も有していた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、溶媒を使用せずにホスト基が導入された重合体を含む高分子材料を製造することができ、しかも、破壊エネルギーに優れる高分子材料を製造することができる重合用組成物及びその重合体並びに重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ホスト基含有重合性化合物と、このホスト基含有重合性化合物を溶解することができる重合性化合物との混合物とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.第1の重合性化合物と、該重合性化合物に溶解するホスト基含有重合性化合物との溶液を含み、
前記ホスト基含有重合性化合物が有するホスト基は、シクロデキストリンから一つの水素原子又は水酸基が除された基であり、
前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1以上である、重合用組成物。項2.前記第1の重合性化合物は、ビニル系重合性化合物である、項1に記載の重合用組成物。
項3.前記第1の重合性化合物は、(メタ)アクリルアミド誘導体を含む、項1又は2に記載の重合用組成物。
項4.ゲスト基含有重合性化合物をさらに含有する、項1〜3のいずれか1項に記載の重合用組成物。
項5.前記ホスト基含有重合性化合物と、前記ゲスト基含有重合性化合物とは包接錯体を形成している、項4に記載の重合用組成物。
項6.項1〜5のいずれか1項に記載の重合用組成物の重合体。
項7.項1〜5のいずれか1項に記載の重合用組成物を、溶媒の不存在下で重合して重合体を得る工程を備える、重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る重合用組成物は、溶媒を使用せずにホスト基が導入された重合体を含む高分子材料を製造することができ、しかも、破壊エネルギーに優れる高分子材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1−1,1−2で得られた重合体の引張り試験の結果を示す。
図2】各実施例及び比較例で得られた重合体の引張り試験の結果を示す。
図3】各実施例及び比較例で得られた重合体の引張り試験の結果を示す。
図4】各実施例及び比較例で得られた重合体の引張り試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
1.重合用組成物
本発明に係る重合用組成物は、第1の重合性化合物と、該重合性化合物に溶解するホスト基含有重合性化合物とを含有する溶液を含む。前記ホスト基含有重合性化合物が有するホスト基は、シクロデキストリンから一つの水素原子又は水酸基が除された基である。前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1以上である。
【0013】
本発明に係る重合用組成物は、ホスト基を有する重合体を得るための原料として使用することができる。重合用組成物を重合反応することで、重合体を得ることができる。特に、本発明の重合用組成物は、ホスト基含有重合性化合物が第1の重合性化合物に溶解した溶液を含有するので、ホスト基含有重合性化合物を溶解させるための溶媒を使用することなく重合反応を行うことができる。しかも、得られる重合体は、重合反応用の溶媒が含まれないので、強靭であり、破壊エネルギーに優れる。なお、念のための注記に過ぎないが、本発明でいう重合反応用の溶媒とは、一般的に重合反応に使用される化合物であって、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及び後記ゲスト基含有重合性化合物以外の化合物のことを示し、それ自体が重合反応しない化合物をいう。
【0014】
ホスト基含有重合性化合物は、分子中にホスト基及び重合性の官能基を有する化合物である。
【0015】
ホスト基は、シクロデキストリンから一つの水素原子又は水酸基が除された基をいう。そして、前記シクロデキストリンは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及びγ−シクロデキストリンからなる群より選ばれる少なくとも1以上である。
【0016】
ホスト基含有重合性化合物は、例えば、分子中にホスト基及び重合性の官能基を有する重合性単量体を挙げることができる。また、ホスト基含有重合性化合物は、重合性単量体に限らず、例えば、ホスト基及び重合性の官能基を有する限りは、二量体、三量体等の多量体、オリゴマー、プレポリマー(いずれも重合性である)も含み得るものであり、これらを二以上含む混合物の場合もある。
【0017】
重合性の官能基は特に限定的ではない。なお、本明細書でいう「重合性」とは、例えば、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、リビングラジカル重合、その他、従来から知られている各種重合をする性質を有していることをいう。
【0018】
重合性の官能基としては、例えば、アルケニル基、ビニル基等の他、−OH、−SH、−NH、−COOH、−SOH、−POH、イソシアネート基等が挙げられる。
【0019】
重合性の官能基としては、例えば、ラジカル重合性を有する官能基を挙げることができる。ラジカル重合性を有する官能基は、炭素−炭素二重結合を含む基を挙げることができ、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO))、メタクリロイル基(CH=CCH(CO))、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
【0020】
ホスト基含有重合性化合物は、前記ホスト基及び重合性の官能基を有している限りは、その構造は特に限定されない。ホスト基含有重合性化合物の具体例としては、前記ホスト基が結合したビニル系の重合性単量体を挙げることができる。
【0021】
ホスト基含有重合性化合物の具体例として、例えば、下記の一般式(h1)
【0022】
【化1】
【0023】
(式(h1)中、Raは水素原子またはメチル基を示し、Rは前記ホスト基を示し、Rはヒドロキシル基、チオール基、1個以上の置換基を有していてもよいアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいチオアルコキシ基、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、1個の置換基を有していてもよいアミノ基、1個の置換基を有していてもよいアミド基、アルデヒド基及びカルボキシル基からなる群より選択される1価の基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基を示す。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
あるいは、ホスト基含有重合性化合物は、下記の一般式(h2)
【0025】
【化2】
【0026】
(式(h2)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。)
で表される化合物を挙げることができる。
【0027】
さらには、ホスト基含有重合性化合物は、下記の一般式(h3)
【0028】
【化3】
【0029】
(式(h3)中、Ra、R及びRはそれぞれ式(h1)のRa、R及びRと同義である。nは1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の整数である。Rbは、水素又は炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基)を示す)
【0030】
また、ホスト基含有重合性化合物は、式(h1)、式(h2)及び式(h3)で表される化合物のうちのいずれか一以上又は全てを含むことができる。この場合、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRaは互いに同一又は異なる場合がある。同様に、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のR、式(h1)、式(h2)及び式(h3)のRは互いに同一又は異なる場合がある。
【0031】
式(h1)〜(h3)中、前記置換基は、特に限定されない。例えば、置換基としては、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルケニル基、炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキニル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
【0032】
式(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミノ基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミノ基の窒素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
【0033】
式(h1)〜(h3)において、Rが1個の置換基を有していてもよいアミド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アミド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
【0034】
式(h1)〜(h3)において、Rがアルデヒド基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基であれば、アルデヒド基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
【0035】
式(h1)〜(h3)において、Rがカルボキシル基から1個の水素原子を除去することにより形成される2価の基である場合、カルボキシル基の炭素原子がC=C二重結合の炭素原子と結合し得る。
【0036】
式(h1)〜(h3)で表されるホスト基含有重合性単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−であり、Rは前記置換基と同義である)であることが好ましい。この場合、重合反応が進みやすく、また、得られる重合体の靭性及び強度もより高くなり得る。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルのいずれかを示す。
【0037】
ホスト基含有重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0038】
ホスト基含有重合性化合物を製造する方法は特に限定されない。ホスト基含有重合性化合物を製造する方法の一例として、ホスト基を有していない重合性化合物と、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体とを反応することでホスト基含有重合性化合物を得ることができる。以下、この製造方法を「単量体製造方法1」と略記する。
【0039】
より具体的に、単量体製造方法1は、ホスト基を有していない重合性単量体と、シクロデキストリンとを反応してホスト基含有重合性単量体を得る工程を具備する。
【0040】
単量体製造方法1において、ホスト基を有していない重合性単量体としては、下記一般式(h1−1)又は(h1−2)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【化4】
【0042】
【化5】
【0043】
(式(h1−1)及び(h1−2)中、Raは水素原子またはメチル基、Rは上記一般式(h1)のRと同義である。)
【0044】
単量体製造方法1において、式(h1−1)で表される化合物を使用してホスト基含有重合性化合物を製造する場合は、前記式(h1)で表わされるホスト基含有重合性単量体が得られる。式(h1−2)で表される化合物を使用してホスト基含有重合性化合物を製造する場合は、前記式(h2)で表わされるホスト基含有重合性単量体が得られる。
【0045】
単量体製造方法1は、一般式(h1−1)又は(h1−2)で表される化合物と、シクロデキストリンとを、必要に応じて酸触媒の存在下、溶媒中にて脱水縮合する工程を備えることができる。
【0046】
前記脱水縮合は、例えば、酸触媒の存在下で行うことができる。酸触媒は特に限定されず、公知の触媒を広く使用でき、例えば、p−トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、例えば、シクロデキストリンに対して20mol%以下、好ましくは10mol%以下とすることができ、シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体に対して0.001mol%以上、好ましくは0.01mol%以上、より好ましくは0.1mol%以上とすることができる。
【0047】
単量体製造方法1で使用する溶媒も特に限定されず、例えば、水、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。特に、上記酸の濃度の調整が容易になる上に、反応を制御しやすいという観点から、溶媒はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、水であることが好ましく、ジメチルホルムアミド又は水であることが特に好ましい。
【0048】
脱水縮合の反応温度及び反応時間も限定されず、適宜の条件で行うことができる。反応をより速やかに進めるという観点から、反応温度は25〜90℃、反応時間は1〜3時間であることが好ましい。反応時間は5分〜1時間であることがさらに好ましい。上記反応の後は、公知の精製手段を採用して精製を行うことができる。
【0049】
単量体製造方法1により、ホスト基含有重合性単量体を得ることができる。なお、ホスト基含有重合性化合物の製造方法は、単量体製造方法1に限定されず、その他、公知の方法で製造することもできる。しかし、上述した脱水縮合を利用すれば、1段階の反応によって、ホスト基含有重合性化合物を製造できるという利点がある。
【0050】
本発明に係る重合用組成物に含まれる第1の重合性化合物は、前記ホスト基含有重合性化合物を溶解させることができ、かつ、重合性の官能基を有する化合物である。重合性の官能基の種類は、ホスト基含有重合性化合物が有する重合性の官能基と同様の種類が例示される。第1の重合性化合物が有する重合性の官能基は、ラジカル重合性を有する官能基であることが好ましく、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO))、メタクリロイル基(CH=CCH(CO))、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
【0051】
第1の重合性化合物は、例えば、分子中にホスト基を有していない重合性単量体を挙げることができる。また、第1の重合性化合物は、重合性単量体に限らず、例えば、重合性の官能基を有する限りは、二量体、三量体等の多量体、オリゴマー、プレポリマー(いずれも重合性である)も含むものであり、これらを二以上含む混合物の場合もある。
【0052】
第1の重合性化合物は、ホスト基含有重合性化合物を溶解させることができ、かつ、重合性の官能基を有する化合物である限り、その種類は特に限定されない。
【0053】
第1の重合性化合物は、例えば、25℃又は25℃以上において、第1の重合性化合物1Lあたり、ホスト基含有重合性化合物を1g以上溶解させることが好ましく、ホスト基含有重合性化合物を40g以上溶解させることがより好ましく、ホスト基含有重合性化合物を50g以上溶解させることがさらに好ましく、ホスト基含有重合性化合物を70g以上溶解させることが特に好ましい。第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物との組み合わせによっては、第1の重合性化合物は、例えば、25℃又は25℃以上において、第1の重合性化合物1Lあたり、500g以上溶解させることが可能である。
【0054】
なお、本明細書でいう「溶解する」とは、第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物との溶液が透明溶液の状態となり、一方が分散及び相分離等が発生していないことを示す。
【0055】
第1の重合性化合物は、常温、例えば、25℃において液体及び固体のいずれであってもよい。第1の重合性化合物は、25℃において固体である場合は、例えば、当該固体を加温して融解させ、この融解した第1の重合性化合物1Lに対し(例えば、当該固体の融点において)、ホスト基含有重合性化合物を1g以上溶解させることが好ましく、ホスト基含有重合性化合物を40g以上溶解させることがより好ましく、ホスト基含有重合性化合物を50g以上溶解させることがさらに好ましく、ホスト基含有重合性化合物を70g以上溶解させることが特に好ましい。
【0056】
第1の重合性化合物は、ビニル系重合性化合物であることが好ましい。この場合、ビニル系重合性化合物へのホスト基含有重合性化合物の溶解性が優れ、また、ホスト基含有重合性化合物との重合反応性にも優れるので、重合体が得られやすい。
【0057】
第1の重合性化合物がビニル系重合性化合物である場合、例えば、前記ホスト基含有重合性化合物及び後記するゲスト基含有重合性化合物と共重合可能な各種の化合物を挙げることができる。この場合、例えば、第1の重合性化合物としては、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリルエステル等を挙げることができる。
【0058】
第1の重合性化合物は、ビニル系重合性化合物の中でも、(メタ)アクリルアミド誘導体を含むことが好ましい。この場合、第1の重合性化合物に対するホスト基含有重合性化合物の溶解性がさらに優れ、また、ホスト基含有重合性化合物との重合反応性にも優れる。
【0059】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、下記一般式(1)
【0060】
【化6】
【0061】
(式(1)中、Raは水素原子またはメチル基、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。RとRとは、これらが結合する窒素原子と共にヘテロ原子を介し又は介することなく互いに結合して飽和環を形成してもよい)
で表される化合物を挙げることができる。
【0062】
式(1)中、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基である場合、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基のいずれでもよい。また、炭化水素基は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基である場合の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、窒素原子が1又は2個のアルキル基(炭素数1〜3)で置換されたアミノ基(以下、Nアルキル置換アミノ基という)、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
【0063】
の具体例としては、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐のプロピル基、直鎖又は分岐のブチル基、直鎖又は分岐のヘキシル基等が挙げられ、これらはさらに水酸基、アミノ基又はNアルキル置換アミノ基等で置換されていてもよい。
【0064】
は、Rが置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基である場合の炭化水素基と同様である。RとRとは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
及びRにおいて、置換基を有していてもよい炭素数1〜10の炭化水素基は、炭素数1〜8であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜5であることが特に好ましい。
【0066】
とRとは、これらが結合する窒素原子と共にヘテロ原子を介し又は介することなく互いに結合して飽和環を形成してもよい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を挙げることができ、構造が安定であるという点で酸素原子が特に好ましい。飽和環は、例えば、五員環又は六員環とすることができる。
【0067】
とRとは、これらが結合する窒素原子と共にヘテロ原子を介し又は介することなく互いに結合して飽和環を形成する場合は、例えば、モルホリン環を挙げることができる。この場合、モルホリン環の窒素原子は、R及びRが結合している窒素原子に対応する。
【0068】
式(1)で表される化合物の具体例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド等の各種(メタ)アクリルアミド、誘導体を挙げることができる。
【0069】
第1の重合性化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0070】
本発明の重合用組成物において、ホスト基含有重合性化合物が第1の重合性化合物に溶解するためには、ホスト基含有重合性化合物の分子間水素結合を切断する必要があると考えられる。第1の重合性化合物により、その水素結合が切断されて溶媒和が生じ、第1の重合性化合物にホスト基含有重合性化合物が溶解し得る。この水素結合を切断し易いという観点から、ホスト基含有重合性化合物は、(メタ)アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリルエステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリルアミド誘導体を含むことが特に好ましい。
【0071】
本発明の重合用組成物は、ゲスト基含有重合性化合物をさらに含有することができる。ゲスト基含有重合性化合物は、分子中にゲスト基及び重合性の官能基を有する化合物である。特に、ゲスト基含有重合性化合物は、前記第1の重合性化合物以外の化合物を指す。
【0072】
ゲスト基含有重合性化合物は、例えば、分子中にゲスト基及び重合性の官能基を有する重合性単量体を挙げることができる。また、ゲスト基含有重合性化合物は、重合性単量体に限らず、例えば、ホスト基及び重合性の官能基を有する限りは、二量体、三量体等の多量体、オリゴマー、プレポリマー(いずれも重合性である)も含むものであり、これらを二以上含む混合物の場合もある。
【0073】
ゲスト基含有重合性化合物において、重合性の官能基の種類は、前述のホスト基含有重合性化合物が有する重合性の官能基と同様の種類が例示される。ゲスト基含有重合性化合物が有する重合性の官能基は、ラジカル重合性を有する官能基であることが好ましく、具体的には、アクリロイル基(CH=CH(CO))、メタクリロイル基(CH=CCH(CO))、その他、スチリル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。これらの炭素−炭素二重結合を含む基は、ラジカル重合性が阻害されない程度であればさらに置換基を有していてもよい。
【0074】
ゲスト基としては、前記ホスト基とホスト−ゲスト相互作用をすることができる基である限りはその種類は限定されない。
【0075】
ゲスト基としては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐状の炭化水素基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及び有機金属錯体等が挙げられ、これらは一以上の置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。より具体的なゲスト基としては、炭素数4〜18の鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられる。環状のアルキル基は、かご型の構造であってもよい。置換基としては、前述の置換基と同様であり、例えば、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、保護されていてもよい水酸基等が挙げられる。
【0076】
ゲスト基は、その他、例えば、アルコール誘導体;アリール化合物;カルボン酸誘導体;アミノ誘導体;環状アルキル基又はフェニル基を有するアゾベンゼン誘導体;桂皮酸誘導体;芳香族化合物及びそのアルコール誘導体;アミン誘導体;フェロセン誘導体;アゾベンゼン;ナフタレン誘導体;アントラセン誘導体;ピレン誘導体:ペリレン誘導体;フラーレン等の炭素原子で構成されるクラスター類;ダンシル化合物の群から選ばれる少なくとも1種が例示されるゲスト分子から一個の原子(例えば、水素原子)が除されて形成される1価の基を挙げることもできる。
【0077】
ゲスト基のさらなる具体例としては、n−ブチル基、t−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、アダマンチル基及びこれらに前記置換基が結合した基(例えば、エチル置換アダマンチル基)を挙げることができる。
【0078】
ゲスト基含有重合性単量体の具体例としては、前記ゲスト基が結合したビニル系の重合性単量体を挙げることができる。このようなゲスト基含有重合性単量体は、下記の一般式(g1)
【0079】
【化7】
【0080】
(式(g1)中、Raは水素原子またはメチル基を表し、Rは前記ゲスト基を表し、Rは式(h1)のRと同義である。)
で表される化合物を挙げることができる。式(g1)中、Rの定義は前記式(h1)中のRと同義であり、主鎖(C=C結合)への結合の仕方も同様である。
【0081】
式(g1)で表される重合性単量体の中でも、(メタ)アクリル酸エステル又はその誘導体(すなわち、Rが−COO−)、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体(すなわち、Rが−CONH−又は−CONR−である)であることが好ましい。この場合、重合反応が進みやすく、また、得られる高分子材料の靭性及び強度も向上しやすい。Rとしては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、窒素原子が1又は2個のアルキル基(炭素数1〜3)で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、スルホン基、シアノ基等を挙げることができる。
【0082】
式(g1)で表される重合性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアダマンチル、1−(メタ)アクリルアミドアダマンタン、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸t−ブチル、1−アクリルアミドアダマンタン、N−(1−アダマンチル)(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N−1−ナフチルメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシ化o−フェニルフェノールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、イソステアリルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0083】
ゲスト基含有重合性単量体は、1種単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0084】
ゲスト基含有重合性単量体は、公知の方法で製造することができる。また、ゲスト基含有重合性単量体は、市販品を使用することもできる。
【0085】
以上のように、本発明の重合用組成物は、第1の重合性化合物と、ホスト基含有重合性化合物を必須の構成成分として含有し、さらにゲスト基含有重合性化合物を含むこともできる。この溶液にゲスト基含有重合性化合物が含まれる場合には、ゲスト基含有重合性化合物もその溶液に溶解し得る。
【0086】
第1の重合性化合物は、ホスト基含有重合性化合物を溶解させることができるので、第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物とを混合することで溶液を形成することができる。前述のように、第1の重合性化合物が常温(例えば25℃)で固体である場合は、第1の重合性化合物を融解させて液体としてから、ホスト基含有重合性化合物を混合することで溶液とすることができる。
【0087】
前記溶液に含まれる第1の重合性化合物及びホスト基含有重合性化合物の含有量は特に限定されない。例えば、ホスト基含有重合性化合物の第1の重合性化合物に対する溶解性及び得られる重合体の破壊エネルギーが向上しやすいという点で、溶液は、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物の全量に対し、第1の重合性化合物を90〜99.5モル%含むことができ、第1の重合性化合物を96〜99.5モル%含むことが好ましく、第1の重合性化合物を98〜99.5モル%含むことが特に好ましい。
【0088】
また、ホスト基含有重合性化合物の第1の重合性化合物に対する溶解性及び得られる重合体の破壊エネルギーが向上しやすいという点で、前記溶液に含まれるホスト基含有重合性化合物の含有量は、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物の全量に対し、0.5〜10モル%含むことができ、0.5〜4モル%含むことが好ましく、0.5〜2モル%含むことが特に好ましい。
【0089】
また、得られる重合体の破壊エネルギーが向上しやすいという点で、前記溶液に含まれるゲスト基含有重合性化合物の含有量は、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物の全量に対し、0.5〜10モル%含むことができ、0.5〜4モル%含むことが好ましく、0.5〜2モル%含むことが特に好ましい。
【0090】
本発明の重合用組成物は、本発明の効果が阻害されない限りは、他の添加剤が含まれていてもよい。他の添加剤としては、例えば、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物以外の重合性単量体(以下、「その他重合性単量体」という)、その他、分散安定剤、界面活性剤、重合禁止剤、光安定剤等の公知の添加物が挙げられる。他の添加剤は、前記溶液に溶解していてもよいし、溶解せずに溶液中に分散等する場合もある。
【0091】
その他重合性単量体としては、例えば、第1の重合性化合物以外の(メタ)アクリルエステル等を挙げることができ、中でも、メトキシ−トリエチレングリコール(メタ)アクリレート(TEGAA)、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が例示される。このようなその他重合性単量体が含まれる場合は、ホスト基含有重合性化合物の溶解性が特に向上し、また、得られる重合体に柔軟性が付与される。その他重合性単量体の含有量は、例えば、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物、ゲスト基含有重合性化合物及びその他重合性単量体の全量に対して0.1〜50モル%とすることができ、0.2〜40モル%とすることが好ましく、0.5〜30モル%とすることがより好ましく、1〜20モル%とすることが特に好ましい。
【0092】
本発明の重合用組成物を調製する方法は特に限定されず、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物並びにその他の添加剤を所定の配合量で混合することで調製することができる。
【0093】
本発明の重合用組成物において、第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物との溶液を調製する方法も特に限定されない。例えば、第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物とを混合して、必要に応じて撹拌することで溶液を得ることができ、ホスト基含有重合性化合物の第1の重合性化合物に対する溶解性が優れる場合は、特に好適である。
【0094】
第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物との溶液は、加温することで調製することもできる。また、第1の重合性化合物が、例えば、固体状態である場合は、第1の重合性化合物を融解温度以上に加熱して液体状態とし、この状態で、ホスト基含有重合性化合物と混合することで、溶液を調製することもできる。この加温後、溶液の温度が下がると、第1の重合性化合物が固体として析出することもあるが、後記する重合反応で再度、加温することで、ホスト基含有重合性化合物が溶解した第1の重合性化合物溶液の状態となり得る。
【0095】
本発明の重合用組成物がホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物を含む場合、ホスト基含有重合性化合物と、ゲスト基含有重合性化合物とは、包接化合物を形成することもできる。
【0096】
包接化合物は、例えば、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物を含む重合用組成物を、超音波処理及び/又は加熱処理を行う工程を経て形成され得る。以下、包接化合物を形成するための前記工程を「包接化合物形成工程」ということがある。
【0097】
前記包接化合物は、ホスト基とゲスト基とのホスト−ゲスト相互作用が起こることで形成される。このような包接化合物が形成されると、重合用組成物がより均一な溶液となり得る。その結果、重合用組成物の重合反応が進行しやすく、また、得られる重合体は、ホスト−ゲスト相互作用が形成されやすくなり、得られる重合体の破壊エネルギーが向上しやすい。
【0098】
包接化合物形成工程における超音波処理は特に限定されず、例えば、公知の方法で行うことができる。
【0099】
包接化合物形成工程における加熱処理の条件も特に限定されない。例えば、加熱温度は、20〜100℃、好ましくは50〜80℃である。また、加熱時間は、1分〜12時間、好ましくは15分〜1時間である。加熱手段も特に限定されず、例えば、ホットスターラーを用いる方法、恒温槽を用いる方法等が挙げられる。加熱と共に又は加熱に替えて前記超音波処理を施すこともできる。
【0100】
包接化合物形成工程において、包接化合物が形成されたか否かについては、例えば、重合用組成物の状態を目視することで判定することができる。具体的には、包接化合物が形成されていなければ、重合用組成物は懸濁した状態あるいは静置すると相分離した状態であるが、包接化合物が形成されると、ジェル状又はクリーム状等の粘性を有する状態となり得る。また、包接化合物が形成されると、重合用組成物は透明となり得る。
【0101】
本発明の重合用組成物では、第1の重合性化合物が重合性のオリゴマー、重合性のプレポリマー等の重合性の鎖状高分子を含む場合は、第1の重合性化合物は、ホスト基含有重合性化合物のホスト基であるシクロデキストリンの環内を貫通して存在する場合がある。この場合、第1の重合性化合物は、一又は二以上のシクロデキストリンを貫通し、いわゆるポリ擬ロタサキンを形成することもある。このような重合用組成物から得られる重合体は、破壊エネルギーがさらに向上する。また、第1の重合性化合物が単量体であっても、単量体が重合していく過程で形成される鎖状高分子がシクロデキストリンを貫通することで、ポリ擬ロタサキンを形成することもある。
【0102】
ホスト基含有重合性化合物のホスト基がβ−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリン由来の基である場合は、鎖状高分子(例えば、第1の重合性化合物のオリゴマー又はポリマー)はシクロデキストリンの環内を貫通しやすいので、ポリ擬ロタサキンが形成されやすい。
【0103】
本発明の重合用組成物は、重合体を形成するための原料として使用でき、重合用組成物を、後記の重合反応することで重合体を得ることができる。
【0104】
2.重合体及び重合体の製造方法
本発明の重合体は、前記重合用組成物を重合反応することで形成される。このように形成される重合用組成物の重合体は、少なくとも第1の重合性化合物単位及びホスト基含有重合性化合物単位を構成単位として有する高分子化合物である。さらに、重合体は、ゲスト基含有重合性化合物単位も含み得る。なお、本明細書でいう重合性化合物単位とは、重合性化合物が重合した場合に形成される重合体中の繰り返し構造単位を意味し、化合物そのものを示すわけではない。また、本明細書でいう「単量体Aに由来する単量体単位」とは、単量体Aを重合して得られる重合体を構成している繰り返しの構成単位を意味する。
【0105】
重合体を得るための重合用組成物の重合反応は、例えば、公知の重合反応の条件を広く採用することができ、本発明の重合体の製造方法は特に限定的ではない。
【0106】
特に本発明の重合体の製造方法は、前記重合用組成物を、重合用の溶媒の不存在下で重合して重合体を得る工程を備えることができる。重合用組成物は、第1の重合性化合物にホスト基含有重合性化合物が溶解した溶液を含んでいることで、従来のようにホスト基含有重合性化合物を溶解させるための溶媒を使用することなく重合反応を行うことができる。
【0107】
本発明の重合体の製造方法において、重合反応で使用する重合用組成物として、前述のように包接化合物形成工程により包接化合物が形成されたものを使用することもできる。包接化合物が形成された重合用組成物を使用する場合は、得られる重合体は、よりホスト−ゲスト相互作用が形成されやすくいので、破壊エネルギーにより優れる重合体が製造されやすい。
【0108】
前記重合反応は、重合開始剤の存在下で行うことができる。重合開始剤の種類は特に限定されず、公知の重合開始剤を使用できる。
【0109】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム(以下、APSと称することもある)、アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称することもある)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)シリーズ等)等が挙げられる。
【0110】
特に本発明の製造方法では、溶媒の不存在下で重合反応が行われることから、重合用組成物をコーティング膜状あるいはフィルム状に形成した状態で重合反応を行うことができる。この場合、重合開始剤としては、光重合開始剤(イルガキュア(登録商標)シリーズ等)等を好適に使用することができる。
【0111】
重合開始剤の濃度は、例えば、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物の総量に対し、0.5〜5モル%とすることができる。
【0112】
上記重合反応を行うにあたり、必要に応じて、その他の添加剤を添加してもよい。その他の添加剤としては、重合促進剤、架橋剤等が例示される。上記重合促進剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等である。重合促進剤の濃度は、例えば、第1の重合性化合物、ホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物の総量に対し、0.5〜5モル%とすることができる。
【0113】
重合反応の条件は、重合用組成物の成分、重合開始剤の種類及び半減期温度等に応じて適宜の条件で行うことができる。例えば、上記反応温度を、0〜100℃、好ましくは、20〜25℃で撹拌することで行える。また、重合反応を、紫外線等を照射する光重合によって行う場合は、波長200〜400nmのUV光を照射することにより重合反応を行うことができる。
【0114】
重合反応を行う際、重合用組成物中のホスト基含有重合性化合物の第1の重合性化合物に対する溶解性をより高めるために、あらかじめ溶液を加熱することで、ホスト基含有重合性化合物を第1の重合性化合物に溶解させることが好ましい。また、重合用組成物中、第1の重合性化合物が固体として析出している場合も、第1の重合性化合物が液体となり、かつ、ホスト基含有重合性化合物が液状の第1の重合性化合物に溶解するように、少なくとも第1の重合性化合物の融解温度以上まで加熱し、ホスト基含有重合性化合物が第1の重合性化合物に溶解した状態で、重合反応を行うことが好ましい。
【0115】
重合反応の時間は特に限定されず、1分〜24時間とすることができ、好ましくは、1〜24時間とすることができる。
【0116】
その他、重合反応の条件としては、公知の条件を採用することができる。重合反応を行った後は、必要に応じて精製や乾燥、養生等を行うことができる。
【0117】
本発明の製造方法では、溶媒の不存在下での重合用組成物の重合反応により重合体を得ることができるので、溶媒を除去する工程等が不要となり、より簡便な方法とすることができる。また、本発明の製造方法では、前述のように、コーティング膜やフィルム等の状態で重合反応を行うことができることから、重合体を膜状、フィルム状、シート状等の種々の形状に形成することができる。
【0118】
また、重合体は、溶媒の不存在下での重合反応で得られることから、溶媒による可塑効果等の影響がなく、より靭性及び強度に優れるので、破壊エネルギーに優れる。
【0119】
本発明の重合用組成物の重合体は、分子中にホスト基含有重合性化合物に由来するホスト基を備えた構造を有する。重合用組成物の重合体は、第1の重合性化合物とホスト基含有重合性化合物との重合反応で形成される。この重合体は、例えば、両者のランダム共重合体なり得る他、ポリ擬ロタキサン構造にもなり得る。該ポリ擬ロタキサンは、第1重合性化合物の重合により形成された鎖状高分子が、ホスト基の環内を串刺し状に貫通した構造を有し得るものであり、この場合は、破壊エネルギーが特に向上しやすい。従って、本発明の重合用組成物の重合体は、つまり、ホスト基含有重合体は、例えば、引張りに対する破断強度高く、伸び特性にも優れることもあり、高い破壊エネルギーを有することができる。
【0120】
また、ホスト基含有重合体は、ゲスト基を有する重合体と複合化することが可能であり、このように複合化された重合体は、例えば、ホスト−ゲスト相互作用を形成し得ることから、破断強度が高及び伸び特性が向上する場合もあるので、さらに高い破壊エネルギーを有し得る。
【0121】
ホスト基含有重合性化合物に加えてゲスト基含有重合性化合物を含有する重合用組成物を使用して製造された重合体(ホスト基含有重合性化合物とゲスト基含有重合性化合物を含む混合物の共重合体)は、分子中にホスト基含有重合性化合物に由来するホスト基と、分子中にゲスト基含有重合性化合物に由来するゲスト基とを備えた構造を有する。この場合、重合体間にはホスト−ゲスト相互作用が形成されるので、重合体どうしが架橋された架橋構造体となり得る。これにより、重合体は、優れた破断強度及び伸び特性を有し得るものとなり、破壊エネルギーが特に向上することもある。
【0122】
本発明の重合用組成物及び製造方法において、ホスト基及びゲスト基の組み合わせとしては、ホスト基がα−シクロデキストリン由来の基である場合、ゲスト基はn−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基及びn−ドデシル基の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。ホスト基を構成するホスト分子がβ−シクロデキストリン由来の基である場合、ゲスト基はアダマンチル基及びイソボルニル基の群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。ホスト基を構成するホスト分子がγ−シクロデキストリン由来の基である場合、ゲスト基はn−オクチル基及びn−ドデシル基、シクロドデシル基等が好ましい。
【0123】
このようなホスト基及びゲスト基の組み合わせにするには、重合用組成物に含まれるホスト基含有重合性化合物及びゲスト基含有重合性化合物が前記組み合わせとなるように選択すればよい。
【0124】
上記のようなホスト−ゲスト相互作用が形成される重合体は、破壊エネルギーが向上することに加えて、ホスト−ゲスト相互作用の可逆性に基づく自己修復機能も発揮され得る。
【0125】
ここで、重合体が、前記式(h1)で表される化合物を含む重合用組成物を用いて得られた重合体である場合は、ホスト基が、−O−CH−(以下、「リンカー」と称することがある)を介してRに結合している。具体的にホスト基は、上記リンカーの酸素原子に結合しており、Rの一端は、上記リンカーの炭素原子に結合している。このリンカーを介してホスト基Rが側鎖に結合していることで、リンカーがない場合に比べてホスト基の自由度が高いため、ホスト基とゲスト基とのホスト−ゲスト相互作用がより生じやすい。その結果、架橋重合体が容易に形成され、重合体の構造も安定化しやすく、靭性及び強度が顕著に向上し得る。
【0126】
その理由の一つは、上述したホスト基がリンカーを介して結合していることによる自由度の高さにある。つまり、ホスト基の自由度が高いことで、ホスト−ゲスト相互作用の解離が起こりにくく、これによって、重合体の靭性が高くなって優れた強度を有し得る。
【0127】
本発明の重合体は、単独又は他の材料と組み合わせて、各種の高分子材料を形成することができる。このような高分子材料は、破壊エネルギーに優れるものであり、例えば、自動車用途、電子部品用途、建築部材用途、食品容器用途、輸送容器用途等の各種の部材に好適に使用することができる。
【0128】
高分子材料の形状は特に限定されない。例えば、高分子材料は、膜状、フィルム状、シート状、粒子状、板状、ブロック状、ペレット状、粉末状等の各種の形態を取り得る。
【実施例】
【0129】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0130】
(製造例1;アクリルアミドメチルαシクロデキストリンの製造)
下記の式(6−1)のスキームに従って、アクリルアミドメチルαシクロデキストリン(αCDAAmMe)を製造した。
【0131】
【化8】
【0132】
300mL丸底フラスコにα−シクロデキストリン20g(20mmol)、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド2g(20mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物190mg(1mmol(10mol%))を秤量し、これらを50mLのN,N−ジメチルホルムアミドに加えて反応液を調製した。この反応液をオイルバスで90℃に加熱し、1時間にわたり加熱撹拌した。次いで、反応液を放冷し、激しく撹拌しているアセトン500mLに注ぎこんだ。生じた沈殿をろ別した後、100mLのアセトンで三回洗浄し、常温(20℃、以下同じ)で一時間、減圧乾燥することで反応物を得た。該反応物を蒸留水500mLに溶解し、多孔質ポリスチレン樹脂(三菱化学ダイヤイオンHP−20)を充填したカラム(見かけ密度600g/L)に通じ、30分間吸着させた。なお、前記カラムを使用する代わりに、分取型高圧液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を行う場合もあった。その後、溶液成分を除去し、カラムに新たに蒸留水500mLを2回通じ、ポリスチレン樹脂を洗浄することで未反応α−シクロデキストリンを除去した。続いてカラムに30%メタノール(もしくはアセトニトリル)水溶液500mLを2回通ずることで、目的物であるαCDAAmMeを溶出させた。溶媒を減圧除去することで、白色粉末2.1gを得た。収率は約10%であった。
【0133】
(製造例2;アクリルアミドメチルβシクロデキストリンの製造)
下記の式(6−2)のスキームに従って、アクリルアミドメチルβシクロデキストリン(βCDAAmMe)を製造した。
【0134】
【化9】
【0135】
200mLガラス製丸底フラスコにβシクロデキストリン15g(15mmol)、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド2g(22.5mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物500mg(2.6mmol、1wt%)を秤量し、これらを50mLのN,N−ジメチルホルムアミドに加えて反応液を調製した。反応液をオイルバスで90℃に加熱し、1時間にわたって加熱撹拌することで反応液を得た。次いで、該反応液を放冷し、激しく撹拌しているアセトン45mLに注ぎこんだ。生じた沈殿をろ別した後、10mLのアセトンで三回洗浄し常温で一時間減圧乾燥することで反応物を得た。反応物を蒸留水100mLに溶解し、多孔質ポリスチレン樹脂(三菱化学ダイヤイオンHP−20)を充填したカラム(見かけ密度600g/L)に通じ、30分間吸着させた。なお、前記カラムを使用する代わりに、分取型高圧液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を行う場合もあった。その後溶液成分を除去し、カラムに新たに10%メタノール(もしくはアセトニトリル)水溶液50mLを3回通じ、ポリスチレン樹脂を洗浄することで未反応βシクロデキストリンを除去した。続いてカラムに25%メタノール水溶液500mLを二回通ずることで、目的物であるβCDAAmMeを溶出させた。溶媒を減圧除去することで、白色粉末156mgを得た。収率は約13%であった。
【0136】
(製造例3;アクリルアミドメチルγシクロデキストリンの製造)
200mLガラス製丸底フラスコにγシクロデキストリン5g(5mmol)、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド700mg(1.3mmol)及びp−トルエンスルホン酸一水和物95mg(0.5mmol)を秤量し、これらを25mLのN,N−ジメチルホルムアミドに加えて反応液を調製した。反応液をオイルバスで90℃に加熱し、1時間にわたって加熱撹拌することで反応液を得た。次いで、該反応液を放冷し、激しく撹拌しているアセトン45mLに注ぎこんだ。生じた沈殿をろ別した後、10mLのアセトンで三回洗浄し常温で一時間減圧乾燥することで反応物を得た。反応物を蒸留水100mLに溶解し、多孔質ポリスチレン樹脂(三菱化学ダイヤイオンHP−20)を充填したカラム(見かけ密度600g/L)に通じ、30分間吸着させた。なお、前記カラムを使用する代わりに、分取型高圧液体クロマトグラフィーを用いて分離精製を行う場合もあった。その後溶液成分を除去し、カラムに新たに10%メタノール(もしくはアセトニトリル)水溶液50mLを3回通じ、ポリスチレン樹脂を洗浄することで未反応βシクロデキストリンを除去した。続いてカラムに25%メタノール水溶液500mLを二回通ずることで、目的物であるアクリルアミドメチルγシクロデキストリン(γCDAAmMe)を溶出させた。溶媒を減圧除去することで、白色粉末809mgを得た。収率は約15%であった。
【0137】
(実施例1−1)
下記の式(7−1)で表される繰り返し単位を有する重合体を製造した。なお、スキーム中、−r−は繰り返し構成単位がランダムに配列した、いわゆるランダム共重合体であることを示し、以降において同様である。
【0138】
【化10】
【0139】
製造例1で得られたホスト基含有重合性化合物であるαCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアクリル酸ドデシル(Dod−AA)をymol%、第1の重合性化合物であるN,N−ジメチルアクリルアミドを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ポリプロピレンフィルム基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をαCD−Dod PDMAA(x,y)と表記した。この実施例1−1では、x=0.5、y=0.5とした。
【0140】
(実施例1−2)
x=0.5、y=0としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法で重合体を得た。
【0141】
(比較例1−1)
x=0、y=0.5としたこと以外は、実施例1−1と同様の方法で重合体を得た。
【0142】
(実施例2−1)
下記の式(8−1)で表される重合体を製造した。
【0143】
【化11】
【0144】
製造例2で得られたホスト基含有重合性化合物であるβCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアダマンタンアクリルアミド(Ad−AAm)をymol%、第1の重合性化合物であるN,N−ジメチルアクリルアミドを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をβCD−Ad PDMAA(x,y)と表記した。この実施例2−1では、x=1、y=1とした。
【0145】
(実施例2−2)
x=1、y=0としたこと以外は、実施例2−1と同様の方法で重合体を得た。
【0146】
(実施例2−2−1)
x=2、y=2としたこと以外は、実施例2−1と同様の方法で重合体を得た。
【0147】
(比較例2−1)
x=0、y=1としたこと以外は、実施例2−1と同様の方法で重合体を得た。
【0148】
(実施例2−3)
下記の式(8−2)で表される重合体を製造した。
【0149】
【化12】
【0150】
製造例2で得られたホスト基含有重合性化合物であるβCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアダマンタンアクリルアミド(Ad−AAm)をymol%、メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート(TEGAA)をzmol%、第1の重合性化合物であるヒドロキシエチルアクリルアミドを100−x−y−zmol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をβCD−AdAAm−TEGA−HEAA(x,y,z)と表記した。この実施例2−3では、x=1、y=1,z=20とした。
【0151】
(実施例2−4)
x=1、y=0,z=20としたこと以外は、実施例2−3と同様の方法で重合体を得た。
【0152】
(比較例2−2)
x=0、y=1,z=20としたこと以外は、実施例2−3と同様の方法で重合体を得た。
【0153】
(比較例2−3)
x=0、y=0,z=20としたこと以外は、実施例2−3と同様の方法で重合体を得た。
【0154】
(比較例2−4)
メチレンビスアクリルアミドを0.5モル%、N,N−ジメチルアクリルアミドを99.5%となるように混合し、この混合物に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。
【0155】
(実施例2−5)
下記の式(8−3)で表される重合体を製造した。
【0156】
【化13】
【0157】
製造例2で得られたホスト基含有重合性化合物であるβCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアダマンタンアクリルアミド(Ad−AAm)をymol%、第1の重合性化合物であるアクリロイルモルホリンを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をβCD−AdAAm−ACMO(x,y)と表記した。この実施例2−5では、x=2、y=2とした。
【0158】
(実施例2−5−1)
x=3、y=3としたこと以外は、実施例2−5と同様の方法で重合体を得た。
【0159】
(実施例2−5−2)
x=4、y=4としたこと以外は、実施例2−5と同様の方法で重合体を得た。
【0160】
(実施例2−6)
x=2、y=0としたこと以外は、実施例2−5と同様の方法で重合体を得た。
【0161】
(実施例2−7−1)
製造例2で得られたホスト基含有重合性化合物であるβCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアダマンタンアクリルアミド(Ad−AAm)をymol%、第1の重合性化合物であるヒドロキシエチルアクリルアミドを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をβCD−AdAAm−HEAA(x,y)と表記した。この実施例2−7−1では、x=2、y=2とした。
【0162】
(実施例2−7−2)
x=3、y=3としたこと以外は、実施例2−7−1と同様の方法で重合体を得た。
【0163】
(実施例2−7−3)
x=4、y=4としたこと以外は、実施例2−7−1と同様の方法で重合体を得た。
【0164】
(実施例2−7−4)
x=5、y=5としたこと以外は、実施例2−7−1と同様の方法で重合体を得た。
【0165】
(実施例3−1)
下記の式(9−1)で表される重合体を製造した。
【0166】
【化14】
【0167】
製造例3で得られたホスト基含有重合性化合物であるγCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアクリル酸エチルアダマンチル(EtAd−AAm)をymol%、第1の重合性化合物であるN,N−ジメチルアクリルアミドを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をβCD−Ad PDMAA(x,y)と表記した。この実施例3−1では、x=1、y=1とした。
【0168】
(実施例3−2)
x=1、y=0としたこと以外は、実施例3−1と同様の方法で重合体を得た。
【0169】
(実施例3−3)
x=2、y=2としたこと以外は、実施例3−1と同様の方法で重合体を得た。
【0170】
(実施例3−4)
x=2、y=0としたこと以外は、実施例3−1と同様の方法で重合体を得た。
【0171】
(比較例3−1)
x=0、y=1としたこと以外は、実施例3−1と同様の方法で重合体を得た。
【0172】
(比較例3−2)
x=0、y=2としたこと以外は、実施例3−1と同様の方法で重合体を得た。
【0173】
(比較例3−3)
メチレンビスアクリルアミドを1モル%、N,N−ジメチルアクリルアミドを99%となるように混合し、この混合物に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。
【0174】
(比較例3−4)
メチレンビスアクリルアミドを2モル%、N,N−ジメチルアクリルアミドを98%となるように混合したこと以外は、比較例3−2と同様の方法で重合体を得た。
【0175】
(実施例4−1)
下記の式(9−2)で表される重合体を製造した。
【0176】
【化15】
【0177】
製造例3で得られたホスト基含有重合性化合物であるγCDAAmMeをxmol%、ゲスト基含有重合性化合物であるアクリル酸エチルアダマンチル(EtAd−AAm)をymol%、第1の重合性化合物であるアクリロイルモルホリンを100−x−ymol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をγCD−Ad PACMO(x,y)と表記した。この実施例4−1では、x=1、y=1とした。得られた重合体の水膨潤率は約700%であった。
【0178】
(実施例4−2)
x=1、y=0としたこと以外は、実施例4−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約900%であった。
【0179】
(比較例4−1)
メチレンビスアクリルアミドを1モル%、アクリロイルモルホリンを99%となるように混合し、この混合物に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約300%であった。
【0180】
(実施例5−1)
下記の式(10−1)で表される重合体を製造した。
【0181】
【化16】
【0182】
製造例1で得られたホスト基含有重合性化合物であるαCDAAmMeをxmol%、第1の重合性化合物であるN,N−ジメチルアクリルアミドを100−xmol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をγCD PACMO(x)と表記した。この実施例5−1では、x=1とした。得られた重合体の水膨潤率は約2400%であった。
【0183】
(実施例5−2)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例2で得られたβCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例5−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約6400%であった。
【0184】
(実施例5−3)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例3で得られたγCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例5−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約300%であった。
【0185】
(実施例6−1)
下記の式(10−2)で表される重合体を製造した。
【0186】
【化17】
【0187】
製造例1で得られたホスト基含有重合性化合物であるαCDAAmMeをxmol%、第1の重合性化合物であるヒドロキシエチルアクリルアミドを100−xmol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をγCD PACMO(x)と表記した。この実施例6−1では、x=1とした。得られた重合体の水膨潤率は約1100%であった。
【0188】
(実施例6−2)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例2で得られたβCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例6−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約1200%であった。
【0189】
(実施例6−3)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例3で得られたγCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例6−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約800%であった。
【0190】
(実施例7−1)
下記の式(10−3)で表される重合体を製造した。
【0191】
【化18】
【0192】
製造例1で得られたホスト基含有重合性化合物であるαCDAAmMeをxmol%、第1の重合性化合物であるアクリロイルモルホリンを100−xmol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をγCD PACMO(x)と表記した。この実施例7−1では、x=1とした。得られた重合体の水膨潤率は約2200%であった。
【0193】
(実施例7−2)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例2で得られたβCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例7−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約2200%であった。
【0194】
(実施例7−3)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例3で得られたγCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例7−1と同様の方法で重合体を得た。得られた重合体の水膨潤率は約700%であった。
【0195】
(実施例8−1)
下記の式(10−4)で表される重合体を製造した。
【0196】
【化19】
【0197】
製造例1で得られたホスト基含有重合性化合物であるαCDAAmMeをxmol%、第1の重合性化合物であるN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを100−xmol%となるように混合して溶液を調製し、この溶液に超音波を1時間照射して、重合用組成物を得た。次いで、重合用組成物に重合開始剤であるIRUGACURE184(登録商標)を、全ての重合性化合物の総mol数に対して1mol%となるように加えた後、ガラス基板上に重合用組成物の塗膜を形成し、この塗膜に365nmの紫外光を照射して、重合用組成物の重合反応を行った。その後、真空オーブンで乾燥することで、重合体を得た。この重合体をγCD PACMO(x)と表記した。この実施例8−1では、x=1とした。
【0198】
(実施例8−2)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例2で得られたβCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例8−1と同様の方法で重合体を得た。
【0199】
(実施例8−3)
ホスト基含有重合性化合物として、製造例3で得られたγCDAAmMeを用いたこと以外は、実施例8−1と同様の方法で重合体を得た。
【0200】
(引張り試験)
各実施例及び比較例で得られた重合体(厚み1mm)について「ストローク―試験力曲線」試験(島津製作所社製「AUTOGRAPH」(型番:AGX−plus)を行い、重合体の破断点を観測した。また、この破断点を終点として、終点までの最大応力を重合体の破断応力とした。この引張り試験は、重合体の下端を固定し上端を引張り速度0.1〜1mm/minで稼動させるアップ方式で実施し、測定温度は139℃とした。また、破断時のストローク、すなわち、重合体を引っ張った際の最大長さを、引張り前の重合体長さで除した値を延伸率として算出した。
【0201】
図1には実施例1−1,1−2の重合体、図1には実施例2−1,2−2、比較例2−1の重合体、図3には実施例2−3,2−4、比較例2−2、2−3,2−4の重合体、図4(a)には、実施例3−1,3−2、比較例3−1、3−2の重合体、図4(b)には、実施例3−3,3−4、比較例3−3、3−4の重合体の引張り試験の結果を示している。
【0202】
実施例で得られた重合体は、比較例で得られた重合体と同等以上の破断強度及び/又は伸びを有する材料であり、破壊エネルギーに優れる材料であることがわかった。
【0203】
表1は、具体的に実施例で得られた重合体の破壊エネルギー(kJ/m)の計測結果を示している。なお、重合体の破壊エネルギーは、ストローク−試験力曲線(応力−歪曲線)の面積から算出した値をいう。
【0204】
【表1】
【0205】
表1からもわかるように、第1の重合性化合物と、該重合性化合物に溶解するホスト基含有重合性化合物とを含有する溶液を含む組成物から得られた重合体は、高い破壊エネルギーを有することがわかる。一方、表には示していないが、比較例で得られる従来の重合体は、破壊エネルギーが5kJ/mを下回るものであった。
【0206】
従って、実施例で得られた重合用組成物は、たとえ無溶媒で重合したとしても、得られる重合体は破壊エネルギーに優れるものであり、しかも、従来公知の化学架橋の重合体(例えば、比較例2−4、3−2,3−3の重合体)を上回る破壊エネルギーを有する重合体であることが示された。
図1
図2
図3
図4