特許第6841621号(P6841621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6841621検体検査装置用テストキット及び検体検査装置の校正方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841621
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】検体検査装置用テストキット及び検体検査装置の校正方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20210301BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20210301BHJP
【FI】
   G01N35/00 Z
   G01N21/27 F
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-170797(P2016-170797)
(22)【出願日】2016年9月1日
(65)【公開番号】特開2018-36187(P2018-36187A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 良介
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂樹
【審査官】 川瀬 正巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−205763(JP,A)
【文献】 特開2009−109428(JP,A)
【文献】 特開平9−15142(JP,A)
【文献】 特開2003−59994(JP,A)
【文献】 特開2011−133463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 33/52
G01N 21/25
G01N 21/27
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略480nmの極大吸収波長を有する第1の色素を保管し、上記第1の色素と水とを混合するための保管容器と、
略620nmの極大吸収波長を有する第2の色素を保管し、上記第2の色素と水とを混合するための保管容器と、
乳脂肪剤を保管し、上記乳脂肪剤と水とを混合するための保管容器
備え、検体検査装置の校正に使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項2】
請求項1に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素、上記第2の色素及び上記乳脂肪剤の水溶液は、正常血清、低溶血、高溶血、乳び及び黄疸の色を再現することを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項3】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、オレンジG(C1610Na)を含むことを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項4】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第2の色素は、アミドブラック10B(C22146Na292)を含むことを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項5】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記乳脂肪剤は、イントラリピッド又はイントラリポスを含むことを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項6】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、略0.625mgのオレンジG(C1610Naであり、上記略0.625mgのオレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記正常血清のサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項7】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、略10.0mgのオレンジG(C1610Naであり、上記略10.0mgのオレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記低溶血のサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項8】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、略40.0mgのオレンジG(C1610Na)であり、上記略40.0mgのオレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記高溶血のサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項9】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、略0.625mgのオレンジG(C1610Naであり、上記乳脂肪剤は、略200μlのイントラリピッド20%であり、上記略0.625mgのオレンジG(C1610Na)及び上記略200μlのイントラリピッド20%を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記乳びのサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項10】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、略0.625mgのオレンジG(C1610Naであり、上記第2の色素は、略20μgのアミドブラック10B(C22146Na292)であり、上記略0.625mgのオレンジG(C1610Na)及び上記略20μgのアミドブラック10B(C22146Na292を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記黄疸のサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項11】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素は、オレンジG(C1610Naであり、上記第2の色素は、アミドブラック10B(C22146Na292)であり、上記乳脂肪剤は、イントラリピッド20%であり
0.625mgの上記オレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記正常血清のサンプルとして使用され
10.0mgの上記オレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記低溶血のサンプルとして使用され
40.0mgの上記オレンジG(C1610Na)を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記高溶血のサンプルとして使用され、
上記略0.625mgの上記オレンジG(C1610Na)及び略200μlの上記イントラリピッド20%を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記乳びのサンプルとして使用され、
上記略0.625mgのオレンジG(C1610Na)及び略20μgの上記アミドブラック10B(C22146Na292を略20mlの水で溶解した水溶液は、上記黄疸のサンプルとして使用されることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項12】
請求項2に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記第1の色素はオレンジG(C1610Na)であり、上記第2の色素はアミドブラック10B(C22146Na292)であり、上記乳脂肪剤はイントラリピッド又はイントラリポスであり、上記第1の色素を所定倍率で希釈した水溶液に、上記第2の色素を所定量添加して、正常血清、低溶血、高溶血、及び黄疸の色を再現し、上記第1の色素を所定倍率希釈した水溶液に、上記脂肪剤を所定量添加して、正常血清、低溶血及び乳びの色を再現することを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項13】
請求項6、7、8、9、10、11、12のうちのいずれか一項に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記保管容器には、液体の収容量を示す標線が形成されていることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の検体検査装置用テストキットにおいて、
上記略480nmは465nmから505nmであり、上記略620nmは580nmから635nmであることを特徴とする検体検査装置用テストキット。
【請求項15】
請求項1に記載の検体検査装置用テストキットを用いて、検体検査装置を校正する検体検査装置の校正方法であって、
上記第1の色素、上記第2の色素及び上記乳脂肪剤のうちの少なくとも一つと水とを上記保管容器により混合して溶液色が規格化された水溶液を生成し、
上記保管容器に収容された上記水溶液に、上記検体検査装置の光源から光を照射し、
上記水溶液から散乱された光を撮像カメラで撮像し、
撮像した画像の色情報と、上記規格化された溶液色の水溶液の色情報とを比較し、
比較した結果に従って、上記撮像カメラを校正することを特徴とする検体検査装置の校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の成分により構成される生体試料に対し、構成成分の色を高精度に検出する検出装置の性能評価に用いる検体検査装置用テストキット及び検体検査装置の校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から生体試料を用いて当該生体試料を構成する成分を分析する技術が提供されてきた。この技術には、専用の容器が用意されており、患者から採取した生体試料は、当該容器で処理される。例えば、試料が血液の場合、採取した血液を、予め分離剤が収納されている採血管に投入する。その後、当該採血管に対し遠心分離を施すことで、血液を血餅と血清に分離し、分析に必要な成分である血清を抽出している。
【0003】
近年、血清を用いて測定できる検査項目が多様化している。その結果、自動分析装置の数も増加しており、検体数の増加も顕著となっている。この状況を受け、生体試料を自動分析装置に投入する前に行う処理(前処理)や、自動分析装置への検体の搬送処理を自動で行うシステムへの要求が高まっている。
【0004】
前処理の例として、血清の種別、液量を検出する処理がある。血清が溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)のように通常(薄黄色)と異なる色をもつ検体の場合、吸光度を測定原理とする自動分析装置ではエラーを生じる原因となる。
【0005】
そのため、前処理の段階で、血清が溶血・黄疸・乳びの検体を除外し、特に溶血の場合には医者に再採血を要求する必要がある。このような、血清種を判別する検出装置として、特許文献1がある。
【0006】
特許文献1においては、採血管に貼付されたラベルによる散乱光等の影響を考慮し、血清もしくは遠心分離後の血液を含む採血菅をカメラで撮像した画像データを用いて血清領域の色情報から血清種を分類する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−014506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されたような検出装置では、製品出荷時や装置据付時の性能評価時において、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)などの標準サンプルを用いて、検体検査装置における検査装置の性能評価を実施する必要がある。
【0009】
一般的には、ベースとなる馬由来などの血清に、溶血(赤色)ではヘモグロビンを、黄疸(暗黄色)では遊離型および抱合型ビリルビンを、乳び(乳白色)ではイントラリポスなどの乳脂肪剤を、適当な濃度で溶解させたものを標準サンプルとして、性能評価を行っている。
【0010】
しかし、上記のヘモグロビン、遊離型および抱合型ビリルビンなどは、生体試料であり、製品化されたキットは製造ロット毎に、ヘモグロビン等の濃度が異なるため、濃度および溶液色が統一された標準サンプルを容易に作製することは非常に困難であった。
【0011】
また、上記のヘモグロビン、遊離型および抱合型ビリルビン、イントラリポスなどを用いて調製した、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)乳び(乳白色)などの標準サンプルは、生体試料であるため、調製や持ち運びや管理に、十分注意をして扱う必要があった。
【0012】
そして、遊離型ビリルビンである、(ZZ)−ビリルビンは、可視光領域である450nmの光を吸収し、(ZE)−ビリルビンへと、立体異性化反応をすることが広く知られている。このため、遊離型ビリルビンを用いて調製した黄疸(暗黄色)の標準サンプルは、経時的に立体異性化反応の進行に従い、溶液色が変わるため、特許文献1における検出装置では、血清色の標準サンプルとして長時間使用することは困難であった。
【0013】
以上のことから、ヘモグロビン、遊離型および抱合型ビリルビン、イントラリポスなどの生体試料を用いて調製した、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)などの標準サンプルは、検出装置の性能評価用として使用する事が困難となる場合があった。
【0014】
また、血清種の色見本として色を似せた印刷物を採血菅内に入れて、例えば特許文献1における検出装置で測定することが考えられるが、カメラ側の照明と採血菅との間で生じる多重反射、ハレーション等の影響で正しい色情報の測定が難しく、加えて、採血菅の照明反射の位置が必ずしも毎測定ごとに厳密に同じ位置ではないため、測定色情報の繰り返し安定性に欠けることが、検証実験により分かっている。
【0015】
本発明の目的は、溶融色が統一され、調整や持ち運びが容易であり、長時間の使用が可能で安定性を有する検体検査装置用のテストキット及び検体検査装置の校正方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0017】
検体検査装置用テストキットにおいて、略480nmの極大吸収波長を有する第1の色素を保管し、上記第1の色素と水とを混合するための保管容器と、略620nmの極大吸収波長を有する第2の色素を保管し、上記第2の色素と水とを混合するための保管容器と、乳脂肪剤を保管し、上記乳脂肪剤と水とを混合するための保管容器とを備え、検体検査装置の校正に使用される。

【0018】
また、上記検体検査装置用テストキットを用いて、検体検査装置を校正する検体検査装置の校正方法であって、上記第1の色素、上記第2の色素及び上記乳脂肪剤のうちの少なくとも一つと水とを上記保管容器により混合して溶液色が規格化された水溶液を生成し、上記保管容器に収容された上記水溶液に、上記検体検査装置の光源から光を照射し、上記水溶液から散乱された光を撮像カメラで撮像し、撮像した画像の色情報と、上記規格化された溶液色の水溶液の色情報とを比較し、比較した結果に従って、上記撮像カメラを校正する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、溶融色が統一され、調整や持ち運びが容易であり、長時間の使用が可能で安定性を有する検体検査装置用のテストキット及び検体検査装置の校正方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】検体検査装置における検査装置の概略構成図である。
図2】採血管に貼られたラベルの向きとカメラとの関係を説明する図である。
図3図1に示した検体チェックモジュールの動作フローチャートである。
図4図3のステップS302に示した画像処理のフローチャートである。
図5】本発明の実施例1における、正常血清(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを容易に調製できるテストキット(サンプルキット)の外観図である。
図6】本発明の実施例1における標準サンプルキットの詳細説明図である。
図7】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、照明の照度を変化させて測定したH値(色相)を示すグラフである。
図8】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、照明の照度を変化させて測定したS値(彩度)を示すグラフである。
図9】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、照明の照度を変化させて測定したV値(明度)を示すグラフである。
図10】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Blue/Green比を変化させて測定したH値(色相)を示すグラフである。
図11】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Blue/Green比を変化させて測定したS値(彩度)を示すグラフである。
図12】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Blue/Green比を変化させて測定したV値(明度)を示すグラフである。
図13】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Red/Green比を変化させて測定したH値(色相)を示すグラフである。
図14】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Red/Green比を変化させて測定したS値(彩度)を示すグラフである。
図15】正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジンにおけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Red/Green比を変化させて測定したV値(明度)を示すグラフである。
図16】飽和オレンジG水溶液を2倍希釈した水溶液にアミドブラック10B水溶液を添加した水溶液を検体チェックモジュールで測定し、判別した血清種別を示す表である。
図17】飽和オレンジG水溶液を2倍希釈した水溶液に、Intralipid20%を添加した水溶液を検体チェックモジュールで測定し、判別した血清種別を示す表である。
図18】飽和オレンジG水溶液を2倍希釈した水溶液のH値(色相)を示すグラフである。
図19】飽和オレンジG水溶液を2倍希釈した水溶液のS値(彩度)を示すグラフである。
図20】飽和オレンジG水溶液を2倍希釈した水溶液のV値(明度)を示すグラフである。
図21】飽和オレンジG水溶液を256倍希釈した水溶液にアミドブラック10B水溶液を0〜40μl添加した水溶液のH値(色相)を示すグラフである。
図22】飽和オレンジG水溶液を256倍希釈した水溶液にアミドブラック10B水溶液を0〜40μl添加した水溶液のS値(彩度)を示すグラフである。
図23】飽和オレンジG水溶液を256倍希釈した水溶液にアミドブラック10B水溶液を0〜40μl添加した水溶液のV値(明度)を示すグラフである。
図24】飽和オレンジG水溶液を1024倍希釈した水溶液にIntralipid20%を0〜300μl添加した水溶液のH値(色相)を示すグラフである。
図25】飽和オレンジG水溶液を1024倍希釈した水溶液にIntralipid20%を0〜300μl添加した水溶液のS値(彩度)を示すグラフである。
図26】飽和オレンジG水溶液を1024倍希釈した水溶液にIntralipid20%を0〜300μl添加した水溶液のV値(明度)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
図1は、検体検査装置(検体分析装置)における検査装置(検体チェックモジュール)の概略構成図であり、血清種を分類する検体分析装置の検体チェックモジュールの例を示している。
【0023】
図1の検体チェックモジュールは、検体前処理処理装置に備えられ、血清の種別の判断に使用される。
【0024】
図1において、検体チェックモジュールは、光源(照明)106a、106bと、光源用ドライバ(照明ドライバ)107a、107bと、カメラ(撮像カメラ)101と、画像処理エンジン(検知部)108と、背景板(背景部)105と、コントローラ109と、入出力インタフェース(入出力I/F)110と、データバス111とを備えている。
【0025】
照射部である光源106a、106bは、それぞれ採血管102の前方上部および前方下部に光を照射する。光源106a、106bとしては、強度が強く、指向性の高い光であるLED光源などを用いる。波長の範囲は、おおよそ、400nmから700nmの可視光を用いる。光源106a、106bを駆動するためには電源などの光源用ドライバ107a、107bを用いる。
【0026】
採血管102の前方上部および前方下部に、上下方向から光を照射することで、ひとつの光源を用いる場合と比較し、採血管102に当たる光の強度分布を一様にすることができる。光の強度分布を一様にすることにより、より正確に血清色情報を取得することができる。また、照明部の光源によるハレーション等の反射光により、取得した血清色情報の正確性が失われることを防ぐ目的で、光源106a、106bと、カメラ(撮像部)101との間に、それぞれ同じ偏光成分の偏光フィルターを用いても良い。
【0027】
カメラ101では採血管102全体の2次元画像を撮像する。図2は、採血管102に貼られたラベル103の向きとカメラ101との関係を説明する図である。カメラ101と採血管102に貼られたラベル103の向きとの関係は、図2の(c)のように、ラベル102の隙間から採血管102の中の試料(検出対象領域203)を撮像できる状態とする。
【0028】
このとき、光源106a、106bから照射された光は採血管102を透過し、波長の一部は採血管102の中の血清(検出対象領域)104に吸収され、一部は血清104を透過する。透過した光は採血管102を透過して、採血管102表面に貼付されたラベル103上で散乱する。散乱した光は再度、採血管102、血清104、採血管102の順に透過してカメラ101に入射する。画像処理エンジン108ではカメラ101で撮像された画像から血清領域抽出処理などの画像処理を行い、血清領域の位置、色(色情報)を認識する。
【0029】
図3は、図1に示した検体チェックモジュールの動作フローチャートである。図3において、まず、採血管102全体をカメラ101で撮像する(ステップS301)。次に、カメラ101により撮像した画像は、画像処理エンジン108により画像処理が行われる(ステップS302)。さらに、ステップS302における画像処理によって検出した血清種別の情報を出力し(ステップS303)、処理は終了する。
【0030】
図4は、図3のステップS302に示した画像処理のフローチャートである。図4において、まず、取得した画像をRGB表色系からHSV表色系へ変換する(ステップS401)。HSV表色系は人間が色を知覚する方法と類似していることが知られており、従来人手で行っていた血清種別の認識を自動化する際に適している。
【0031】
次に、HSV表色系に変換された画像を用い、ラベル103を背景とする検出対象領域である血清領域104の色の平均値を血清の色として取得する(ステップS402)。血清領域104を抽出するために使用する採血菅の画像は、図2の(c)のようにラベル103とラベル103の隙間から採血管102201の中の試料(検出対象領域203)を撮像できる状態とする。また、色情報の計算は、平均値を求めるとしたが、これに限るものではなく、中央値、分散などを取得することも考えられる。
【0032】
次に、取得した色情報から血清種別を判定し(ステップS403)、処理は終了する。
【0033】
血清種別の判定には、閾値を用い、正常血清(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)などの判定を行う。閾値はラベル103を背景として血清領域にあわせ、あらかじめ設定しておく。あらかじめ設定しておいた閾値と取得した血清の色情報を比較し、血清種別の判別を行う。
【0034】
同様に、採血管102後方の背景板105を背景とする血清領域にあわせ、血清種別の判定の閾値を持っておくことも有効である。
【0035】
なお、血清種別判別のための閾値は、採血管102の種類や、光源106a、106bの光量、カメラ101の設定値などにより変更してもよい。採血管102の種類によっては、壁面の材質が異なり、光の透過率が異なるため、同様な血清であった場合においても、カメラ101で撮像された画像での色は異なる場合がある。このため、領域抽出の閾値を採血管の種類により変更することにより、より正確に血清種別を判別することが可能となる。
【0036】
図5は、本発明の実施例1における、正常血清(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを容易に調製できるテストキット(サンプルキット)の外観図であり、複数の保管容器502がサンプルキットの外箱501に収容されている。
【0037】
一般的に、溶血の程度は、血清中のヘモグロビン濃度に応じて、血清の色味(赤色)が幅広く変化することが知られており、溶血サンプルとして、高溶血(濃赤色)キットと低溶血(薄赤色)キットとしてもよい。
【0038】
サンプルキットには、極大吸収波長を480nm前後(略480nm)にもつ色素(第1の色素)と、極大吸収波長を620nm前後(略620nm)にもつ色素(第2の色素)と、乳脂肪剤とを含む色素及び乳脂肪剤を溶解させて、水溶液としたものをキットとしても良いが、水溶液中の成分の変化による色の変動を最小限にするためには、化学的安定性に優れた非水溶液系物質、つまり、色素、及び乳脂肪剤をできる限り粉末状のものを用い、使用する際に水を添加して水溶液とする方法が望ましい。
【0039】
また、サンプルキットに、極大吸収波長を480nm前後(略480nm)にもつ色素(第1の色素)と、極大吸収波長を620nm前後(略620nm)にもつ色素(第2の色素)と、乳脂肪剤とを含む色素及び乳脂肪剤を溶解させて、水溶液としたものを収容する保管容器と、第1の色素、第2の色素及び乳脂肪剤のうちの少なくとも一つを収容する保管容器との両者を有するように構成することもできる。
【0040】
図6は、本発明の実施例1における標準サンプルキットの詳細説明図である。保管容器502には、図6の(a)に示すような角柱型の保管容器と、図6の(b)に示すような試験管型の保管容器とがあり、何れも保管容器を用いることができる。
【0041】
図6の(a)、(b)のように、サンプルキットの保管容器502に、液体の収容量を示す標線603が形成され、標線603に従い、キャップ601を保管容器502から取り外し、保管容器502に水を添加するだけで、保管容器502の底部に収容された溶質604が水に溶解し、使用可能なサンプルを調製することができる。
【0042】
また、予め溶質604が保管容器502に収容されているので、必要以上に色素に触れる必要がなく、作業中に誤って衣服や手指を色素で着色させてしまう等の問題がない。
【0043】
図6の(b)に示す保管容器のように、採血菅102と同じ形状、もしくは採血菅102をキットの保管容器502にすることで、形成された標線603に従い、水を添加して調製したサンプルを、直ぐに検体チェックモジュールで使用することが可能となる。
【0044】
本発明の実施例1によるサンプルキットは、一般的な採血管に調製した血清を入れても過不足のない体積である20mlの血清を調製するキットとする。
【0045】
このため、正常血清(薄黄色)、高溶血(濃赤色)、低溶血(薄赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)それぞれのサンプル保管容器502が備えられ、各保管容器502に水20ml添加し、溶質604と混合し完全に溶解させることで、容易に目的の血清サンプルを調製することができる。溶解に用いる水は、水溶液の色に影響を与える可能性のある異物(成分)の混入を最小限に防ぐ目的で、純水、もしくはイオン交換水を使用することが望ましい。
【0046】
本発明の実施例1におけるサンプルキットに含まれる成分において、極大吸収波長を480nm前後にもつ色素としては、例えばオレンジG(C1610Na)がある。極大吸収波長を620nm前後にもつ色素としては、例えばアミドブラック10B(C2214Na)がある。乳脂肪剤としては、例えばIntraripid(イントラリピッド)20%がある。
【0047】
ここで、極大吸収波長を480nm前後にもつとは、極大吸収波長を465nm〜505nmにもつこととし、極大吸収波長を620nm前後にもつとは、極大吸収波長を580nm〜635nmにもつこととする。
【0048】
正常血清(薄黄色)のサンプルキット(テストキット)としては、溶質604として、例えば、オレンジGを0.625mg含み、これを使用時に水20mlで溶解するものがある。
【0049】
また、低溶血(薄赤色)のサンプルキット(テストキット)としては、例えば、溶質604として、オレンジGを10.0mg含み、これを使用時に水20mlで溶解するものがある。
【0050】
また、高溶血(濃赤色)のサンプルキット(テストキット)としては、例えば、溶質604としてオレンジGを40.0mg含み、これを使用時に水20mlで溶解するものがある。
【0051】
また、乳び(乳白色)のサンプルキット(テストキット)としては、例えば、溶質604としてオレンジGを0.625mgと、Intralipid20%を200μl含み、これを使用時に水20mlで溶解するものがある。
【0052】
ここで、乳びサンプル作成時までの、サンプルキットの保管状態は、オレンジGとIntralipid20%が、長期的に化学反応が進行することのないように、それぞれが物理的に接触する事のない、別の容器に保管しておく事が望ましい。
【0053】
また、黄疸(暗黄色)のサンプルキット(テストキット)としては、例えば、溶質604として、オレンジGを0.625mgと、アミドブラック10Bを20μg含み、これを使用時に水20mlで溶解するものがある。黄疸サンプル作成時までの、キットの保管状態は、オレンジGとアミドブラック10Bが、長期的に化学反応が進行することのないよう、それぞれ別の保管容器に保管しておく事が望ましい。
【0054】
また、当キットのように、アミドブラック10Bを20μg含んでいる場合は、非常に微量なため、サンプル調製の際に、環境下の風圧や、保管容器の開栓時の衝撃で、アミドブラック10Bの質量が変動する可能性がある。その場合は、例えば、キットの一部として、別容器でアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を適当な体積(例えば、100ml)で調製し、これをマイクロピペッターなどの一定量を分注できる器具を用いて、20μlだけ添加しても良い。
【0055】
以上に説明した手順を実施すると、目的に応じた濃度や溶液色を、常に安定して再現でき、濃度と溶液色が規格化された、正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを容易に調製することができる。
【0056】
本発明の実施例1によるサンプルキット(テストキット)を用いることで、検体チェックモジュールの製品出荷時や装置据付時の検査装置の性能評価を容易に行うことができる。それだけに限らず、病院などの検査室に設置された検体チェックモジュールの血清識別性能の精度管理試料として、日常的に本発明のサンプルキット(テストキット)を利用する事で、容易に精度管理を実施することができる。
【0057】
さらに、日常の精度管理時に加えて、例えば検体チェックモジュールの設置箇所を変更した場合、規格化された標準サンプルを測定することで、検査室の室内照明等の影響で変動した色情報(HSV値)の変化量を容易に調査する事が可能となる。ここで、色情報(HSV値)の変動を補正する手順として、照明106a、106bの照度と、画像処理エンジン108におけるRGB表色系のホワイトバランス比を変更することで、標準サンプルに求められるHSV値に補正が可能となることが検証により分かっている。
【0058】
図7図8及び図9は、正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、照明106a、106bの照度を変化させて測定したH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)を示すグラフである。
【0059】
そして、図7の縦軸はH値、横軸は照度を示し、図8の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸は照度を示す。また、図9の縦軸はV値(明度)を示し、横軸は照度を示す。
【0060】
また、図7図8図9において、×印は正常サンプル、四角形は高溶血、菱形は低溶血、丸印は黄疸、三角形は乳びを示している。
【0061】
図7図8及び図9に示すように、図9のV値(明度)のみ、正常サンプル、高溶血、低溶血、黄疸及び乳びの全てが照度に比例して単調増加する事が分かった。
【0062】
このことより、照明106a、106bの照度を変化させることで、V値(明度)のみを選択的に変動させる事ができることが分かった。
【0063】
図10図11及び図12は、正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジン108におけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Blue/Green比を変化させて測定したH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)をそれぞれ示すグラフである。
【0064】
そして、図10の縦軸はH値、横軸はBlue/Green比を示し、図11の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸はBlue/Green比を示す。また、図12の縦軸はV値(明度)を示し、横軸はBlue/Green比を示す。
【0065】
また、図10〜12において、図7図9と同様に、×印は正常サンプル、四角形は高溶血、菱形は低溶血、丸印は黄疸、三角形は乳びを示している。
【0066】
図10図11及び図12から、図11に示すS値(彩度)のみ、正常サンプル、高溶血、低溶血、黄疸及び乳びの全てが、Blue/Green比に比例して単調減少する事が分かった。このことより、ホワイトバランス比のうち、Blue/Green比を変化させることで、S値(彩度)のみを選択的に変動させる事ができることが分かった。
【0067】
図13図14及び図15は、正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の標準サンプルを、画像処理エンジン108におけるRGB表色系のホワイトバランス比のうち、Red/Green比を変化させて測定したH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)をそれぞれ示すグラフである。
【0068】
そして、図13の縦軸はH値、横軸はRed/Green比を示し、図14の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸はRed/Green比を示す。また、図15の縦軸はV値(明度)を示し、横軸はRed/Green比を示す。
【0069】
また、図13図15において、図7図9と同様に、×印は正常サンプル、四角形は高溶血、菱形は低溶血、丸印は黄疸、三角形は乳びを示している。
【0070】
図13図14及び図15から、図13に示すH値のみがRed/Green比に比例して単調減少し、図15に示すV値のみが、Red/Green比に比例して単調増加する事が分かった。
【0071】
ここで、図9より、V値(明度)は、照度により変化させる事ができることが分かっている。このため、ホワイトバランス比のうち、Red/Green比と、照明106a、106bの照度とを変化させることでV値(明度)を一定とすることができ、H値(色相)は照度の変化により変化せず、Red/Green比により変化するのであるから、H値(色相)のみを選択的に変動させる事ができることが分かった。
【0072】
つまり、V値(明度)、S値(彩度)、H値(色相)のそれぞれを選択的に変動させることができる。
【0073】
上述した正常血清、低溶血、高溶血、黄疸、乳びのサンプルキットについて、図1に示した検査装置の照度、Blue/Green比、Red/Green比を変化させて、色情報であるH値、S値、V値を算出する。サンプルキットの色情報であるH値、S値、V値は既知であるから、既知のH値、S値、V値と、検査装置が算出したH値、S値、V値とを比較することにより、検査装置の光源の照度、Blue/Green比、Red/Green比を校正することができる。
【0074】
以上から、本発明の実施例1によるサンプルキット(テストキット)によれば、正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の色が規格化され、調整や持ち運びが容易であり、長時間の使用が可能で安定性を有し、上記正常サンプル(薄黄色)、溶血(赤色)、黄疸(暗黄色)、乳び(乳白色)の色を再現する標準サンプルを容易に調製することが出来る。
【0075】
また、調製した溶液色が規格化されたサンプルを用いる事で、容易に検査装置の測定色情報(HSV値)の精度管理を行う事が可能となる。また、万が一、測定色情報(HSV値)に変動が生じた場合、溶液色が規格化されたサンプルを用いる事で、検査装置による測定色情報の調整、補正を正しく行うことが可能となる。
【0076】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0077】
本発明のサンプルキット(テストキット)に含まれる成分において、極大吸収波長を480nm前後にもつ色素としては、例えばオレンジG(C1610Na)がある。また、極大吸収波長を620nm前後にもつ色素としては、例えばアミドブラック10B(C22146Na292)がある。また、乳脂肪剤としては、例えばIntraripid 20%がある。
【0078】
図16は、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を2(n=3〜12)倍希釈した水溶液20mlそれぞれに、アミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を0〜40μl添加した水溶液を、図1に示した検体チェックモジュールで測定し、判別した血清種別を示す表である。
【0079】
図16において、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/8〜1/32に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を0〜40μl添加することにより、高溶血の標準サンプルを調整することができる。
【0080】
また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/64〜1/512に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を無添加とすることにより低溶血の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/64、1/128に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を10μl添加とすることによっても低溶血の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/64に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を20μl添加とすることによっても低溶血の標準サンプルを調整することができる。
【0081】
また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/256〜1/2048に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を10μl添加とすることにより黄疸の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/128〜1/512に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を20μl添加とすることによっても黄疸の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/64〜1/512に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を30μl添加とすることによっても低溶血の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/64〜1/256に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を40μl添加とすることによっても黄疸の標準サンプルを調整することができる。
【0082】
また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/1024〜1/4096に希釈した水溶液20mlにアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を無添加とすることにより正常の標準サンプルを調整することができる。
【0083】
図17は、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を2(n=9〜12)倍希釈した水溶液20mlそれぞれに、Intralipid20%を0〜300μl添加した水溶液を、図1に示した検体チェックモジュールで測定し、判別した血清種別を示す表である。
【0084】
図17において、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/512に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を無添加とすることにより、低溶血の標準サンプルを調整することができる。
【0085】
また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/1024〜1/4096に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を無添加とすることにより、正常の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/512〜1/1024に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を100μl添加することにより、正常の標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/512に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を200μl添加すること、及び300μl添加することにより正常の標準サンプルを調整することができる。
【0086】
また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/2048に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を100μl添加することにより、乳びの標準サンプルを調整することができる。また、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1/1024に希釈した水溶液20mlにIntralipid20%を200μl添加すること、及び300μl添加することにより乳びの標準サンプルを調整することができる。
【0087】
図16図17に示した表のように、オレンジGと、アミドブラック10Bと、Intralipid20%とを組み合わせることで、正常サンプル(薄黄色)、高溶血(濃赤色)、低溶血(薄赤色)、黄疸(暗黄色)及び乳び(乳白色)の標準サンプルを調製することができる。
【0088】
実施例2においても、図5及び図6に示すように、保管容器502内にオレンジGと、アミドブラック10Bと、Intralipid20%を収容しておき、保管容器502又は他の適切な容器を用いて、図16図17に示した希釈倍率、添加量に従って、正常サンプル(薄黄色)、高溶血(濃赤色)、低溶血(薄赤色)、黄疸(暗黄色)及び乳び(乳白色)の標準サンプルを調製するものである。
【0089】
図18図19及び図20は、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を2(n=3〜12)倍希釈した水溶液20mlの、H値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)をそれぞれ示すグラフである。
【0090】
図18の縦軸はH値、横軸は飽和オレンジG水溶液の希釈倍率を示し、図19の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸は飽和オレンジG水溶液の希釈倍率を示す。また、図20の縦軸はV値(明度)を示し、横軸は飽和オレンジG水溶液の希釈倍率を示す。
【0091】
図18図19及び図20から、飽和オレンジG水溶液の濃度変化に従い、S値(彩度)、V値(明度)は大きな変化がないのに対し、H値(色相)は単調増加する事が分かった。
【0092】
図21図22及び図23は、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を256倍希釈した水溶液20mlに、アミドブラック10B水溶液(1.0g/l)を0〜40μl添加した水溶液の、H値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)をそれぞれ示すグラフである。
【0093】
図21の縦軸はH値、横軸はアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)の添加量(μl)を示し、図22の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸はアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)の添加量(μl)を示す。また、図23の縦軸はV値(明度)を示し、横軸はアミドブラック10B水溶液(1.0g/l)の添加量(μl)を示す。
【0094】
図21図22及び図23から、アミドブラック10Bの濃度に従い、H値(色相)、S値(彩度)は大きな変化がないのに対し、V値(明度)は単調減少する事が分かった。
【0095】
図24図25及び図26は、飽和オレンジG水溶液(50g/l)を1024倍希釈した水溶液20mlに、Intralipid20%を0〜300μl添加した水溶液のH値(色相)、S値(彩度)、V値(明度)をそれぞれ示すグラフである。
【0096】
図24の縦軸はH値、横軸はIntralipid20%の添加量(μl)を示し、図25の縦軸はS値(彩度)を示し、横軸はIntralipid20%の添加量(μl)を示す。また、図26の縦軸はV値(明度)を示し、横軸はIntralipid20%の添加量(μl)を示す。
【0097】
図24図25及び図26から、Intralipid20%の濃度に従い、H値(色相)、V値(明度)は大きな変化がないのに対し、S値(彩度)は単調増加する事が分かった。
【0098】
以上のことから、オレンジG水溶液とアミドブラック10BとIntralipid20%とを組み合わせることで、任意の色情報(HSV値)の標準サンプルを自在に調製することができ、任意の色情報(HSV値)の標準サンプルを有するサンプルキット(テストキット)を実現することができる。
【0099】
また、本発明の実施例2によるサンプルキット(テストキット)を用いることで、例えば、病院の検査室に応じて、検体チェックモジュールの血清識別性能の精度管理試料として使用したい色がある場合、その色情報(HSV値)の標準サンプルを、オレンジGとアミドブラック10BとIntralipid20%を組み合わせることで自在に再現し、調製することができる。
【0100】
なお、乳脂肪剤として、Intralipos(イントラリポス)を使用することも可能である。
【0101】
以上のように、本発明によれば、溶融色が統一され、調整や持ち運びが容易であり、長時間の使用が可能で安定性を有する検体検査装置用のテストキット及び検体検査装置の校正方法を実現することができる。
【0102】
また、本発明におけるサンプルキットは溶液であるため、照明反射の影響は、印刷物を用いた場合に比べて少なく、測定色情報の繰り返し安定性に優れる。
【符号の説明】
【0103】
101・・・撮像部、102・・・採血菅、103・・・ラベル、104・・・検出対象領域、105・・・背景板、106a、106b・・・照明、107a、107b・・・照明ドライバ、108・・・画像処理エンジン、109・・・コントローラ、110・・・入出力インタフェース、111・・・データバス、201・・・採血菅、203:検出対象領域、501・・・サンプルキットの外箱、502・・・保管容器、601・・・キャップ、603・・・標線、604・・・キット内の溶質
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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