【文献】
小林昭夫,低温粉砕,低温工学,12(4),1977年,133-141,URL,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcsj1966/12/4/12_4_133/_pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリビニルアルコールおよび微結晶性セルロースが、共混合物の総量に基づき、比率2:1〜1:2、好ましくは比率1.5:1〜1:1.5、特に1:1で集中的に相互に混合されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
c)において、活性成分プロプラノロールおよび/またはその医薬的に許容される塩、水和物または溶媒和物あるいはテオフィリン無水物またはその一水和物が有効量で加えられ、および混合されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
抗高血圧β遮断剤として活性成分プロプラノロールおよび/またはその医薬的に許容される塩、水和物または溶媒和物ならびに微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された、活性成分の徐放を有する医薬的に活性な組成物。
活性成分テオフィリンおよび/またはその医薬的に許容される塩、水和物または溶媒和物、好ましくはその無水物、ならびに微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された、活性成分の徐放を有する医薬的に活性な組成物。
微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を、共混合物の総量に基づき、比率2:1〜1:2、好ましくは比率1.5:1〜1:1.5、特に1:1で含み、ならびにポリビニルアルコールが、JPEまたはPh. Eur.の要件にしたがって等級28−99を含む、Ph. Eur.、USPまたはJPE薬局方の要件にしたがって等級18−88、26−88、40−88、48−88および間のすべての等級から選択され、および、Dv50が50〜100μmの範囲、好ましくはDv50が60〜95μmの範囲で共混合物において平均的な粒子の大きさの分画を有することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
微結晶性セルロースおよび等級26−88および/または40−88のポリビニルアルコールの共混合物を含み、ここで、共混合物におけるポリビニルアルコールは、圧縮前に平均的な粒子の大きさの分画をDv50が60〜95μmの範囲で有することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を含み、ここで、用いられるポリビニルアルコールは、圧縮前に、0.40〜0.65g/ml、好ましくは0.45〜0.60g/mlの範囲でバルク密度を有し、および0.50〜0.80g/mlの範囲で、特に0.55〜0.75g/mlの範囲でタップ密度を有することを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の概要】
【0007】
目的
したがって、本発明は、先行技術の製剤よりも利点を有する、プロプラノロール、またはその医薬的に許容される塩の1つ、またはテオフィリンなどの活性成分の医薬徐放製剤を提供するという目的に基づく。
プロプラノロールの不利な動力学的な特性のため、1日あたりの複数回の用量が通常必要であり、これは頻繁に不適切な患者コンプライアンスをもたらし、結果として不満足な治療結果をもたらす。したがって、目標は、薬物が服用される頻度を1日あたり単一用量まで低減させることである。
【0008】
したがって、投与形態は、活性成分プロプラノロールの薬理学的に有効な血漿濃度を、延長された期間、好ましくは少なくとも12時間だが特に24時間にわたって確保すべきであり(制御された放出)、これは、服用スキームを簡略化することを可能にする。
同時に、本発明の目的は、比較上の製剤と比較して改善された薬物動態の挙動を有する製剤を提供することであり、これによって活性成分の急速な用量ダンピング(dose dumping)および結果として生じる血圧の相当な急降下などの副作用は、できる限り低減され得る。さらに、本発明の目的は、活性成分の改変された放出を通じて、改善された患者コンプライアンスを達成することである。
【0009】
発明の簡潔な記載
目的は、請求項1〜8によって特徴付けられる、活性成分の徐放を有する組成物の医薬投与形態の調製のためのプロセス、ならびに、医薬製剤における使用について承認されているポリビニルアルコールおよび微結晶性セルロースの共混合物を使用して調製される、請求項9〜26に記載の活性成分の徐放を有する新規な医薬的に活性な組成物によって達成される。
【0010】
特に、この目的は、活性成分の徐放を有する組成物の医薬投与形態の調製のためのプロセスによって達成され、ここで、
a)医薬製剤における使用について承認されているポリビニルアルコールは、マイナス30℃〜0℃の範囲の低温で研削され、平均的な粒子の大きさDv50を、50〜100μmの範囲、好ましくはDv50を60〜95μmの範囲で有する微粉を与え、および
b)平均的な粒子の大きさDv50を100〜150μmの範囲で有する微結晶性セルロースと集中的に混合され、
c)この混合物は適当な量の活性成分と混合され、
e)
流動化剤または
光沢剤などの、さらなる処理に有利である添加剤が任意に加えられ、
f)得られた混合物の適当な混合後および任意に依然として存在するかたまりを除去するために800μmのふるいを通して篩過した後、混合物は好適な圧力で圧縮によって錠剤化される。
【0011】
特に、ポリビニルアルコールおよび微結晶性セルロースは、共混合物の総量に基づき、2:1〜1:2の比率で、好ましくは1.5:1〜1:1.5の比率で、特に1:1の比率で相互に集中的に混合される。
活性成分として、それらの1日全体にわたる有効性のために血漿における最小の濃度を必要とするすべての活性成分は、それ自体、またはそれらの医薬的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の形態で、発明によるプロセスにおいて共混合物と混合され、錠剤へと変換される。発明によるプロセスの特定の態様において、活性成分プロプラノロールおよび/またはその医薬的に許容される塩、水和物または溶媒和物は、有効量で共混合物へ加えられ、c)においてそれとともに混合される。例として選択された別の態様において、テオフィリン無水物またはその一水和物は、c)において活性成分として用いられる。
【0012】
活性成分を含む混合物の圧縮前、少量の追加の添加剤は処理補助として混合物へ加えることができ、それとともに混合される。これは、例えば、少量の、
流動化剤としての二酸化ケイ素および
光沢剤としてのステアリン酸マグネシウムであり得る。その後のプロセスステップにおいて、活性成分を含有する得られた混合物は、錠剤を与えるために充分な圧縮力で圧縮される。5〜32kNの範囲での圧縮力での圧縮に際して、硬さを50〜290Nの範囲で有する錠剤が好ましくは得られる。このように生産された発明による錠剤は、それらのそれぞれの硬さとは独立して、少なくとも9〜12時間の期間で、活性成分の80%の平均的な放出速度を有する。結果として、本発明の目的は、活性成分の徐放を有し、上記に特徴付けられたプロセスによって調製される、医薬的に活性な組成物の提供によって達成される。特定の態様において、本発明は、抗高血圧β遮断剤として活性成分プロプラノロールおよび/またはその医薬的に許容される塩、水和物または溶媒和物、ならびに微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を含む、対応する医薬的に活性な組成物に関する。特に、これは、プロプラノロールを塩酸塩またはコハク酸塩の形態で含む、あるいはテオフィリンを含む、対応する医薬的に活性な組成物に関する。
【0013】
良好な放出特性は、微結晶性セルロースおよびポリビニルアルコールの共混合物を、共混合物の総量に基づき、2:1〜1:2の比率で、好ましくは1.5:1〜1:1.5の比率で、特に1:1の比率で含む医薬的に活性な組成物によって保持され、ここで、ポリビニルアルコールは、Ph. Eur.、USPまたはJPE薬局方の要件にしたがって、等級18−88、26−88、40−88、48−88および間のすべての等級から選択され(JPEまたはPh. Eur.の要件にしたがって等級28−99を含む)、50〜100μmのDv50の範囲で、好ましくは60〜95μmのDv50の範囲で、共混合物において平均的な粒子の大きさの分画を有する。
【0014】
特に好ましいのは、微結晶性セルロースならびに等級26−88および/または40−88のポリビニルアルコールの共混合物を含む組成物であり、ここで、共混合物におけるポリビニルアルコールは、圧縮前に、平均的な粒子の大きさの分画を60〜95μmのDv50の範囲で、バルク密度を0.40〜0.65g/ml、好ましくは0.45〜0.60g/mlの範囲で示し、タップ密度を0.50〜0.80g/mlの範囲で、特に0.55〜0.75g/mlの範囲で有する。対応する組成物は、
流動化剤として二酸化ケイ素および
光沢剤としてステアリン酸マグネシウムを含み得る。さらなる添加剤をまた加えてもよい。
【0015】
本発明は、特に、硬さを50〜290Nの範囲で有し、活性成分の80%の平均的な放出速度を少なくとも9〜12時間の期間で有する錠剤を与えるように圧縮されている、医薬的に活性な組成物に関する。これに関連して、放出プロファイルが錠剤の硬さから事実上独立していることは特に有利である。対応する錠剤は、活性成分の適度な初期の放出を示し、その後、活性成分の均一な放出を示し、よって活性成分の望まない用量ダンピングを回避する。
【0016】
発明にしたがって提供される活性成分の徐放を有する医薬投与形態は、経口投与に役立つ。それは、胃腸系(GIT)における液体の存在下で拡散および/または緩やかな浸食により活性成分を放出するマトリックス中に、活性成分を含む。錠剤の形態の発明による組成物は、1用量あたりに少量〜大量の活性成分、例えば、1用量あたりのプロプラノロールとして算出される活性成分の10〜140mgなどの量を含み得る。したがって、プロプラノロール塩酸塩を活性成分として含む活性成分の徐放を有する対応する組成物の形態の医薬投与形態は、1用量あたり80または160mgの量で後者を含み得る。対応する状況は、発明によるテオフィリン含有製剤にあてはまる。
【0017】
発明の詳細な記載
β遮断剤の医薬製剤の開発についての特定の薬理学的な重要性は、β1受容体の遮断によって抑制されるカテコールアミンの心臓への陽性変力作用および変時性作用である。非選択的β遮断剤(とりわけ、プロプラノロール、ナドロール、ペンブトロール、カルベジロール)とβ1選択的受容体遮断剤(とりわけ、メトプロロール、アテノロール、ビソプロロール)とは、基本的には区別することができる。しかしながら、β1受容体の阻害のこの選択性は絶対的ではなく、β2受容体に対する攻撃も高濃度で生じ得るという点で濃度依存的である[Kendall, M. J.: Clinical Relevance of Pharmacokinetic Differences between Beta Blockers In: Am J Cardiol (1997)
80,15-19.]。達成される最終濃度は薬物形態の特性にも依存するため、この点で医薬製剤の側面も同様に重要である。
【0018】
したがって、例えば、毎日1回投与用の医薬調製物の開発において、肺の副作用のリスクを制限するために、この「選択性の限界」を超えるピークレベルが回避されることが確保されるべきである。
プロプラノロールなどの比較的高い親油性を有する活性成分は、腸から実質的に完全に吸収されるが、通常は、しばしば明白な変動性に関連する明白な初回通過効果を受ける。それらは主に肝臓で排除され、比較的短い血漿半減期を有する。
したがって、例えばプロプラノロールの2〜6時間の排出半減期の観点において、かかる活性成分の徐放調製物の開発は、薬物動態の観点から、とりわけ毎日1回の投与を容易にするために望ましい。
【0019】
例えばプロプラノロールなどの活性成分の優れた溶解性および良好な透過性のために、すでに示されるとおり、生体における胃腸管からの活性成分の吸収が薬剤形態からのその放出に依存し、活性成分の吸収が服用されたそれぞれの調製物の生物医薬特性によって決定されると仮定され得る。
特に、患者コンプライアンスの改善に関して、「1日1回の形態」は利点を提供する。同時に、この出願には、1日を通じての適当な有効性が治療上望ましい。1日全体にわたるβ受容体の適当な遮断もまた、特に高血圧の一定の減少を達成するために、β遮断剤の徐放製剤の治療上の目標である。この程度まで、徐放調製物を通じて、活性成分の濃度またはプロプラノロールの濃度は、投薬間隔全体にわたって最小作用レベルを上回ることが確保されるべきである。
【0020】
この種の徐放製剤の開発において解決されるべき課題は:
1.活性成分を含む製剤の最も簡単で可能な調製物であること、ここで、例えば押出プロセスによって生産されるペレットなどの複雑な徐放製剤は回避されるべきである、
2.この種の改変された製剤からのin vitroの放出挙動はできる限り、例えば既知のプロプラノロール薬物などのすでに市販の徐放経口活性成分の調製物のそれと同一であるか、またはそれよりも良好であること、
である。
実験は、驚くべきことに、今般、制御された様式で活性成分が少なくとも9〜12時間にわたって、最良の場合では24時間にわたって放出される、活性成分プロプラノロールまたはその医薬的に許容される塩の投与形態、あるいはテオフィリンなどの別の易溶解性の活性成分の投与形態(この投与形態は、追加して、先行技術からの既知の投与形態に対してさらなる利点を有する)が、簡単な様式で調製され得ることを示した。
【0021】
本発明は、したがって、有効量の活性成分が短い期間の後にin vivoで放出され、これによって、適当な血漿レベルが達成され、有効血漿レベルに到達した後、活性成分が引き続き放出されて、1日にわたって均一に分配され、9時間後、特に12時間後または24時間後にも有効血漿濃度がまた依然として確保され、その後、もとは投与形態で存在する活性成分の量の少なくとも80%が放出されるように、活性成分、特にプロプラノロール、またはその医薬的に許容された塩の制御された放出のための投与形態に関する。
【0022】
標準化された実験において、プロプラノロール塩酸塩およびテオフィリン無水物についてのかかる値は、in vitroで測定され得るであろう、ここで、放出値は、欧州薬局方にしたがって、pH6.8、37℃の温度および50rpmの緩衝液(好ましくは900ml)においてパドル撹拌装置を使用して決定される。結果は「例」の項において下記に与えられる。
徐放を有する活性成分の製剤の調製のための様々な手順は、医薬製剤の科学者にそれ自体既知である。特定の場合において好ましい製剤の種類は、薬剤の所望の作用および適用領域に依存するが、活性成分の化学的および物理的特性にも依存する。
【0023】
徐放製剤を好適な親水性の巨大分子の補助により調製すること、および、溶解性マトリックスまたは親水コロイドマトリックスとして後者を使用することは文献から既知である。対応する巨大分子は水の存在下で大いに膨潤性である。水において適度に溶解性である賦形剤物質を使用することにより、取り込まれた活性成分が遅延された様式で放出され得る高度に粘性の系が形成される。放出は、次いで、液体が系へ入ることおよびゲル層を通じた活性成分の拡散速度の両方に依存する。これにより、頻繁に、比較的高い活性成分濃度が初期に放出されるが、増加拡散距離の結果として活性成分の放出は後に急降下するという結果を有する。
【0024】
対照的に、膨潤の少ない他の親水コロイドは段階的に溶解される。この場合において、活性成分の徐放の程度および速度は系の浸食に依存する。これらの条件下で、拡散距離は放出期間中に増加せず、好ましい条件下で事実上一定の放出速度をもたらす。
両方の場合において、活性成分の放出は、活性成分それ自体の溶解挙動よりも、親水コロイドマトリックスの膨潤または浸食に依存する。よって、かかる系は特に易溶解性の薬剤に使用され得る。
【0025】
本件において、加えて、2〜6時間の範囲のかなり短い排出半減期もまた有する易水溶解性の活性成分は、少なくとも9時間、好ましくは少なくとも12時間または24時間にわたって均一に製剤から投薬されるべきであり、さらに、例えば、非選択的なβ遮断剤としての活性成分プロプラノロールがβ受容体を占有することによって患者の血圧に直接的に作用するため、短時間の高い放出速度、すなわち活性成分の用量ダンピングは、回避されなければならない。さらに、例えば、12時間または所望の場合に24時間の放出期間の終了時でさえ、徐放製剤による血圧の望まない上昇を回避するために、有効血漿濃度を維持することが望ましい。
【0026】
驚くべきことに、今般、活性成分の徐放を有する対応する経口製剤の開発における前記課題は、活性成分、あるいは、下記例によって示されるとおり、プロプラノロール(好ましくは塩酸塩の形態)またはテオフィリン(無水物)を、ポリビニルアルコール(PVA)および微結晶性セルロース(MCC)からなる共混合物と物理的に混合し、混合物を圧縮された錠剤に直接的に変換することによって、簡単な様式で解決され得ることが見出された。発明による徐放製剤の調製に好適である共混合物は、総重量に基づき、2:1〜1:2の比率で、好ましくは1:1.5〜1.5:1の比率で、ポリビニルアルコール(PVA)および微結晶性セルロース(MCC)を含み得る。この目的のために、総重量に基づき構成成分を1:1の比率で含む共混合物は特に好ましい。
【0027】
発明による徐放製剤の調製のために、活性成分は対応する共混合物に加えることができ、混合物は極めて少量の
流動化剤および
光沢剤と集中的に混合することができ、これによって活性成分は混合物において均質に分布する。このように得られた混合物は、その後、打錠機における直接圧縮プロセスにおいて圧縮された錠剤へ変換される。
【0028】
親水性ポリマーポリビニルアルコール(PVA)の使用のために、膨潤およびゲル形成は、胃腸系における液体の存在下で、GI管(GIT)における滞留期間の経過において生じ、ポリマー混合物の緩やかな浸食は、誘導されているPVAマトリックスからの活性成分の遅延された放出とともに生じる。発明にしたがって調製された錠剤製剤の研究は、驚くべきことに、活性成分の放出が必要に応じて、期間にわたって分布される制御された様式で生じ、これによって、特に、(プロプラノロールの場合においては、血圧の望まない急降下の増加をもたらすであろう)最初における放出の増加は生じないことを示している。研究されたプロプラノロールは水の存在下で易溶解性である活性成分であるが、活性成分の放出のこのスキームは記載された製剤で達成され得る。
【0029】
発明による製剤は、したがって、以下の利点によって区別される:
1.活性成分を含む個々の構成成分を、簡単な混合およびその後の圧縮により徐放錠剤へ製剤することによって複雑化することなく調製することは、極めて簡単であり、安価である。複雑な造粒、押出またはコーティングプロセスは調製に必要ではない。
2.圧縮性データは、低い圧縮力においてさえも、充分な硬さおよび驚くほど低い摩耗を有する錠剤が得られることを示し、これは、錠剤を問題なくさらに処理することができ、患者が扱うことができることを意味する。
3.活性成分を含有する混合物の圧縮中、極めて低い突き出し力が必要とされ、結果としてまた極めて少量の
光沢剤しか必要とならない。これは、装置(特に錠剤化金型)に対する機械的負荷を同時に低減する。
4.実験は、これら徐放錠剤からの活性成分のin vitroの放出が、圧縮力および錠剤の硬さの極めて広い範囲にわたって事実上不変のままであることを示す。これは、良好な生産信頼性および結果として患者の安全性の増加もまたもたらす。
5.比較は、発明による錠剤製剤が治療上用られる市販の薬物(例えば、ドシトン(登録商標)160mg徐放:硬いゼラチンカプセルの徐放ペレット)と同一のin vitroの放出挙動を有することを示す。
【0030】
したがって、本発明は、活性成分の、PVAおよびMCCからなる共混合物との簡単な直接圧縮によって得られ、驚くべきことに、生産するのが顕著により複雑である参照製品と類似するin vitroの放出挙動を有する、マトリックス錠剤を包含する。
このように得られた簡単な錠剤製剤は、圧縮性および扱いに関して良好な医薬製剤特性を示すだけでなく、驚くべきことに良好なin vitroの放出挙動もまた示す。
使用される共混合物の良好な圧縮性は、比較的低い圧縮力での圧縮でさえ、生産される錠剤の高い硬さに反映される。
【0031】
錠剤の硬さは、2つの平行なプレートまたはあご(jaw)の間で共混合物を含む圧縮された錠剤を粉砕するために必要な力として定義される。錠剤の硬さは、第1ステップにおいて、予め決定された圧縮力での錠剤プレスにおける所定の量の混合物の圧縮により錠剤を生産することによって測定され得る。錠剤プレスの圧縮金型におけるラムは、例えばおよそ20kNの圧縮力による混合物の計量された導入量に作用する。このように得られた錠剤の硬さは、その後、例えばErweka Multicheck(登録商標)5.1 tablet hardness tester (Erweka, ドイツ)を使用して、錠剤を粉砕するために必要な力を測定することによって決定され得る。錠剤の硬さの決定は下記に記載される。
【0032】
すでに上述したとおり、発明にしたがって生産される錠剤は、さらなる有利な特性として機械的負荷に対して低い摩耗(低い破砕性)を有する。
ここで破砕性は、例えば、輸送中、貯蔵中、また、さらなる処理中または包装中における機械的エネルギーの作用による、固形物の場合において、ここでは錠剤の場合において生じる摩耗を意味するとされる。破砕性は標準化された方法によって決定される。ここで記載された例において行われた決定は、TA420 friability tester(Erweka, ドイツ)を使用し、これによって、Ph. Eur. 7th Edition “Friability of Uncoated Tablets”にしたがって測定が行われる。錠剤を充填した機器は、試験チャンバーの25min
−1の固定された回転速度で作動する。測定は各場合において錠剤の生産から1日後に行われる。
【0033】
すでに上記のとおり、ポリビニルアルコールおよび微結晶性セルロースの共混合物は、発明による錠剤化された徐放製剤の調製に特に非常に好適である。
ポリビニルアルコール(PVA)は、酢酸ビニルの重合および得られたエステル化ポリマーの部分的な加水分解によって調製される合成ポリマーである。PVAの化学的および物理的特性(粘性、溶解性、熱特性など)は、重合のその度合い(PVAポリマーの鎖長)および加水分解の度合いに大きく依存する。PVAは多数の疾患の処置における極めて多岐にわたる投与形態に好適である。よって、それは、眼、経皮、局所および特に経口の適用のための製剤を含む、極めて多岐にわたる医薬投薬剤型において用いられ得る。
【0034】
ここで行われた実験は、錠剤化製剤が、ポリビニルアルコールがPh. Eur.、USPまたはJPE薬局方の要件にしたがう等級18−88、26−88、40−88、48−88および間のすべての等級(JPEまたはPh. Eur.の要件にしたがう等級28−99を含む)の群から選択される場合、特に有利な特性を有することを特に示す。等級の帰属において、第1の数は、20℃の水溶液におけるポリビニルアルコールの分子量の相対的な測定として生じる粘性を指す(DIN 19 260/61にしたがって、蒸留水中、4.5〜7の範囲のpHで、部分的およびまた完全に加水分解されたポリマーの両方について、DIN 53 015にしたがって、20℃で4%の溶液において測定)。等級の帰属の第2の数は、親のポリ酢酸ビニルの加水分解の度合い(鹸化の度合い)に関する。発明にしたがって使用された共混合物は、これらの基準を満たす、すべての市販のポリビニルアルコールを使用して調製され得る。ポリビニルアルコール(PVA)および微結晶性セルロースの共混合物は、特に、100μmよりも大きい平均的な粒子の大きさを有するPVAを使用して調製される。
【0035】
下記に記載された実験は、賦形剤としての使用のためにMerck KgaA(ダルムシュタット、ドイツ)から様々な品目番号で入手可能である(EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、USP、JPE)、上記で特徴付けられた様々なポリビニルアルコールの等級を用いて行われた。
特に好ましいのは、微結晶性セルロースならびに等級26−88および/または40−88のポリビニルアルコールの共混合物を含む組成物である。
発明にしたがって使用された共混合物の第2の構成成分は、医薬用途のための微結晶性セルロース(MCC)であり、同様に薬局方において特徴付けられる。それは、2000よりも大きい重合の度合いを有するα−セルロースで、植物繊維(セルロース)のパルプから鉱酸の作用によって得られ[Ph. Eur. 2001] [USP 2002] [JP 2001]、その後、水酸化ナトリウム溶液を用いて、精製された溶液から沈殿させる。得られた生成物は部分的な酸加水分解を受ける。加水分解は脱重合を引き起こし、その結果として、特に非晶質領域が除去されるため、セルロース繊維の重合の度合いは急降下し、結晶の含有量は増加する。その後の乾燥、例えば、噴霧乾燥または気流中の乾燥により、粉末状の自由流動性の様々な粒子の大きさのMCCの生成物を得る。
【0036】
MCCは医薬産業の広い領域において使用されている。それはカプセルおよび錠剤のための充填剤、乾燥結合剤、崩壊促進剤または崩壊剤、ゲル形成剤として用いられ、および錠剤コーティング懸濁液に加えて用いられる。
本発明を行うために、商品名Vivapur(登録商標)Type 102 PremiumのJRS Pharma(ローゼンバーグ、ドイツ)から市販のMCCが共混合物において使用されている。この微結晶性セルロースはそれ自体100μmの平均的な粒子の大きさを有する。さらに、同じ方法で用いられ得る同等なMCC等級は他の製品名で市販されている。一般に、150μm未満の平均的な粒子の大きさを有する医薬等級の微結晶性セルロースは発明による共混合物の調製に好適である。好ましいのは、100〜140μmの範囲の平均的な粒子の大きさを有する微結晶性セルロースの使用である。ここで使用されるMCCの粒子の大きさの分布の詳細なリストは下記の「使用された原材料の特徴付け」の項において与えられる。このMCCは極めて良好な流動性を有し、錠剤化可能である。ここで記載された共混合物において、MCCの添加は、製剤の錠剤化可能性およびまた同用途における錠剤からの活性成分の遅延された放出の両方をサポートする。
【0037】
驚くべきことに、PVAおよびMCCのこれらの共混合物の使用は、胃腸管(GIT)を介する延長された期間にわたって制御された様式で、対応する活性成分を放出する投与形態の開発を可能にする。したがって、所定の放出プロファイルを有し、それによって、上記の先行技術の課題が克服され得る薬剤製剤が見出された。ここで、少なくとも9時間〜12時間の期間で80%の平均的な放出速度が維持されることは非常に重要である。
【0038】
発明による製剤およびそれらの特定の放出プロファイルは、活性物質が服用後1日にわたって分配される制御された様式で、錠剤から放出されることを可能にし、胃腸管(GIT)の深部から吸収されることも可能にする。
さらに、活性成分の制御された放出を有するこれらの投与形態は新しい適用の治療にも好適であり、先行技術の急速放出の薬剤形態よりも顕著な利点を示す。活性成分の制御された放出を有する新規な薬剤形態の使用は、顕著により一定の血液レベルに達すること、および、血液レベルピークの発生が抑制されることを可能にし、例えば、治療上の有効性の改善および望まない副作用の低減を可能にする。さらに、この種の投与形態の使用は、投与頻度の低減を可能にし、結果として改善された患者の承諾およびコンプライアンスをもたらす。
【0039】
手順
発明の定義にしたがって初期放出および平均的な放出速度を決定するために、発明による投与形態からの活性成分の放出はパドル撹拌装置において試験される。使用された放出媒体は900mlのpH6.8のリン酸緩衝液である。必要の場合、pHは水酸化ナトリウムまたはオルトリン酸を使用して6.8±0.05まで調節される。放出は37±0.5℃の温度および1分あたり50回転(rpm)のパドル撹拌の回転速度で行われる。試料は、付随する物質が除去されることを確保しなければならないろ過ユニットを介して放出媒体から採取され、そこで溶解した活性成分の量は、UV/VIS検出によって決定される。このように決定された活性成分の量は、用いられた活性成分の量の重量パーセントに変換される。本発明の意味における平均的な放出速度は、80%の活性成分の放出に到達するまでの期間により定義される一方、初期放出は30分後の活性成分の放出の百分率を記載する。
【0040】
活性成分の制御された放出を有する発明による投与形態は、好ましくは、9時間と24時間との間の期間間隔で(9時間で80%および24時間で80%)、特に9時間と12時間との間の期間間隔で、80%の平均的な放出速度を有する。
本発明の活性成分の制御された放出を有する薬剤製剤の特に好ましい態様において、製剤は、9時間および15時間からの期間で少なくとも80%の平均的な放出速度を有し、最初の30分の放出において活性成分のせいぜい10〜15%の初期放出を有し、これは測定された放出プロファイルに由来し得る。
9〜12時間の期間で80%の平均的な放出速度を有する、本発明の活性成分の制御された放出を有する投与形態の好ましい態様において、これは、最初の60分の放出において10〜25%の初期放出を有する。
【0041】
この発明の活性成分の、制御され、遅延された放出を有する投与形態は、活性成分の放出が、例えば、従来の錠剤またはカプセルなどの急速な放出薬剤形態からのものよりも低い放出速度で生じるように改変される、すべての製剤を意味するとされる。
活性成分の制御された放出を有する発明による投与形態の調製のために、活性成分は、例えば、まだ研削されていない形態、研削された形態またはミクロン単位まで小さくされた形態などの様々な粒子の大きさで用いられ得る。
よって、本発明は、医薬製剤の科学者が、活性成分の徐放を有する錠剤製剤を、水溶液に易溶解性である医薬活性成分の、上記のポリビニルアルコール/微結晶性セルロース予混合物(pre-mixture)との簡単な集中的な混合によって、極めて簡単なプロセスで調製し、市販および/または治療関連製品の特性を有する製品を与えることを可能にする。
【0042】
調製のためおよび分析および医薬製剤の試験のための条件は、以下の例から明らかである。例として生産されたプロプラノロール徐放錠剤は、直接圧縮によって生産される。遅延マトリックスは、好ましくは、重量に基づき1:1の比率で、研削されたPVA40−88のMCC Vivapur(登録商標)102(JRS)との共混合物を使用して調製される。しかしながら、市販の製品PVA40−88およびMCC Vivapur(登録商標)102(JRS)もまた、同等な特性を有する他の市販のポリビニルアルコールまたは他の微結晶性セルロースによって置き換えられ得る。使用される共混合物において、2つの構成成分の相互に対する比率は変わり得る。発明にしたがって、2つの構成成分PVAおよびMCCの相互に対する比率は、すでに上記のとおり、2:1と1:2との間の範囲であり得る。
【0043】
以下に与えられた例は、発明によるプロプラノロール徐放製剤の調製のための方法および条件を開示する。ここで記載されたもの以外の予混合物および錠剤マトリックスの調製のための方法もまた入手可能であることは当業者に自明である。
例は、これらのPVA/MCCの組み合わせの特定の利点を示す。
本記載は、当業者が発明を包括的に適用することを可能にする。よって、さらなる注釈がないとしても、当業者が最も広い範囲で上記を利用することができるであろうと推測される。
何か不明な点がある場合には、引用された刊行物および特許文献を考慮に入れるべきであることは言うまでもない。したがって、これらの文書は本記載の開示の部分としてみなされる。
【0044】
発明のより良好な理解および例示のために、例は下記に与えられ、本発明の保護の範囲内である。これらの例もまた可能な変形を説明するために役立つ。各場合において見出された結果の評価はそれぞれの例の後に与えられる。しかしながら、記載された発明の原則の一般的な有効性のため、例は、本願の保護の範囲をこれら単独まで縮小するのには好適ではない。
さらに、与えられた例およびまた残りの記載の両方において、組成物に存在する構成成分量を、全体としての組成物に基づき、常に100重量%またはmol%まで加えるのみであり、示されたパーセント範囲からより高い値が生じ得るとしても、これを超え得ないことは当業者にとって言うまでもない。したがって、特に示されない限り、比率を除いて、%データは重量%またはmol%とみなされ、これは体積の数値で再現される。
例および記載ならびに請求項において与えられた温度は℃である。
【0045】
例
材料特性の特徴付けのための機器および方法
1.
バルク密度:DIN EN ISO 60: 1999(ドイツ語版)にしたがう
−「g/ml」で引用
2.
タップ密度:DIN EN ISO 787-11: 1995 (ドイツ語版)にしたがう
−「g/ml」で引用
3.
安息角:DIN ISO 4324: 1983(ドイツ語版)にしたがう
−「度合い」で引用
4.BET方法によって決定された
表面領域:S. Brunauer et al.による文献「BET Surface Area by Nitrogen Absorption」(Journal of American Chemical Society, 60, 9, 1983)にしたがう評価および手順。機器:ASAP 2420 Micromeritics Instrument Corporation(米国);窒素;試料重量:約3.0000g;加熱:50℃(5h);加熱速度3K/min;引用された3つの決定からの算術平均
5.
乾燥分散での
レーザー回折による
粒子の大きさの決定:Scirocco 2000 dispersion unit(Malvern Instruments Ltd., UK)を有するMastersizer 2000、1、2および3バールの対圧での決定;フラウンホーファー評価;分散剤RI:1.000、オブスキュレーション(obscuration)限界:0.1〜10.0%、トレイ種:一般的な目的、バックグラウンド期間:7500msec、測定期間:7500msec、ISO 13320-1および機器製造者からの技術的マニュアルおよび仕様書における情報にしたがう手順;体積%で引用。
【0046】
6.錠剤化試験は以下のとおり行われる:
実験部分に示された組成物にしたがう混合物は、laboratory tumble mixer(Turbula T2A, Willy A. Bachofen、スイス)の、密封されたステンレススチールの容器(容量:約2l、高さ:約19.5cm、外形寸法で直径:約12cm)において5分間混合される。
用いるステアリン酸マグネシウムは、250μmのふるいを通したParteck(登録商標)LUB MST(植物性(vegetable)ステアリン酸マグネシウム)EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、BP、JP、NF、FCC品目番号1.00663(Merck KgaA, ドイツ)である。
500mgの錠剤(11mmパンチ、円形、平坦、はす縁付き)を与える圧縮を、Catman(登録商標)5.0 evaluation system(Hottinger Baldwin Messtechnik?HBM, ドイツ)を有するKorsch EK 0DMS instrumented eccentric tableting machine(Korsch, ドイツ)において行う。
【0047】
試験した圧縮力に依存して(公称設定:約5、約10、約20および約30kN;有効に測定された実際の値は例において示す)、圧縮データの評価および医薬の特徴の決定のために、少なくとも100の錠剤を生産する。
−
錠剤の硬さ、直径および高さ:Erweka Multicheck(登録商標)5.1(Erweka, ドイツ);各場合において圧縮力あたり20の錠剤測定からの平均データ(算術平均)。測定は錠剤生産から1日後に行う。
−
錠剤摩耗:TA420 friability tester(Erweka, ドイツ);Ph. Eur. 第7版「Friability of Uncoated Tablets」にしたがう機器パラメータおよび測定の性能。測定は錠剤生産から1日後に行う。
−
錠剤重量:圧縮力あたり20の錠剤の計量からの平均(算術平均):Sartorius CPA 64 balance(Sartorius, ドイツ)を有するMulticheck(登録商標)5.1(Erweka, ドイツ)。測定は錠剤生産から1日後に行う。
【0048】
7.
活性成分の放出試験:
プロプラノロールHClまたはテオフィリン無水物を含有する圧縮された錠剤(5、10、20または30kNの圧縮力で圧縮)を、Ph. Eur. 8.4において2.9.3.「Dissolution test for solid dosage forms」で記載された「Apparatus 2(パドル装置)」を使用し、ここで記載された条件下で、ERWEKA(
ホイゼンシュタム, ドイツ)からのin vitroの放出装置において測定する(Ph. Eur.=欧州薬局方)。試料採取はホースポンプ系を介して自動的に行い、その後、Lambda(登録商標)35 photometer(Perkin Elmer、米国)およびフローセルにおいて測定する。
【0049】
測定装置および測定パラメータ:
− Apparatus 2(Ph. Eur.にしたがうパドル装置)に取り付けられたERWEKA DT70放出装置
− 温度:37℃ +/− 0.5℃
− パドルの回転速度:50rpm
− 放出媒体:Ph. Eur.にしたがう900mlのリン酸緩衝液(pH6.8)
−測定の総ランニング期間:12時間(15、30、45、60分後またはその後1時間毎に12時間の総ランニング期間まで試料採取を伴う(表において、15、30および45分の試料についてのデータは示されない)
− 試料採取でのホースポンプ:Ismatec IPC、model ISM 931; App. No. 12369-00031
− Lambda(登録商標)35 photometer, Perkin Elmer
− 0.5mmフロー測定セルにおいて、プロプラノロールについては214nmで、またはテオフィリンについては293nmで測定
− Dissolution Lab Softwar Version 1.1、Perkin Elmer Inc.(米国)を介して評価
【0050】
市販の比較上の調製物:
ドシトン(登録商標)160mg徐放;徐放を有する硬いカプセル;
活性成分:プロプラノロール塩酸塩、バッチ:131203、使用期限:12/2018;Mibe GmbH Arzneimittel(ブレーナ, ドイツ);
硬いカプセルのプロプラノロール含有ペレット(1カプセルあたり160mgのプロプラノロール塩酸塩を含有)からなる;他の構成要素は、エチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、二酸化チタン(E171)、ドデシル硫酸ナトリウム、酸化鉄(III)(E172)、セラックである
ドシトン(登録商標)160mg徐放からの活性成分の放出は、カプセルが放出容器において浮遊するのを防ぐためにspider sinker(Erweka, ドイツ)を使用して行われた。
【0051】
使用された原材料の特徴付け
1.PVA40−88およびPVA26−88:
1.1.研削のための原材料
1.1.1.PVA26−88:ポリビニルアルコール26−88、EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、USP、JPE、品目番号1.41352、Merck KgaA, Darmstadt, ドイツ、賦形剤としての使用に好適
1.1.2.PVA40−88:ポリビニルアルコール40−88、EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、USP、JPE、品目番号1.41353、Merck KgaA, Darmstadt, ドイツ、賦形剤としての使用に好適
これらのPVA等級は、もとは(数ミリメートルの大きさを有する)粗粒子の形態であるが、これはこの形態では直接圧縮可能な錠剤化マトリックスとして用いることはできない。
【0052】
粗粒子は、金型(dies)の再現可能な充填を可能にせず、したがって、また、(回転式)打錠機の高い回転速度では一定の錠剤重量を許容しない。さらに、微粒状のPVAのみが、分離効果を生じさせることなく、錠剤において活性成分の均質な分布を確保することができる。これは、生産された各錠剤における活性成分の個々の投薬精度(含有量の均一性)を確保するために極めて重要である。さらに、微粒状のPVAにのみが、再現性のある遅延に必要でもある、均質なゲル形態を錠剤本体全体にわたって確保し得る。
これらの理由のため、上記の粗粒状のPVA等級は、直接圧縮可能な遅延マトリックスとして使用する前に細かく砕かなければならない、すなわち研削しなければならない。
【0053】
1.2 研削されたPVA等級
1.2.1 平均的な粒子の大きさの分画Dv50(レーザー回折;乾燥分散):Dv50 80〜90μmを有する、ポリビニルアルコール26−88、品目番号1.41352、バッチF1862862からの研削されたPVA26−88
1.2.2 平均的な粒子の大きさの分画Dv50(レーザー回折;乾燥分散):Dv50 68〜75μmを有する、ポリビニルアルコール40−88、品目番号1.41353、バッチF1862963からの研削されたPVA40−88
【0054】
研削:
PVA等級の研削はHosokawa Alpine,
アウクスブルク, ドイツからのAeroplex(登録商標)200 AS spiral jet millにおける冷却研削において、0℃〜マイナス30℃の範囲の温度で冷却研削するために液体窒素下で行う。所望の粒子の大きさは、特に研削温度の変化によって経験的に生産し、すなわち研削条件は、所望の粒子の大きさの分画を得るまで、工程内を進行中の粒子の大きさの制御によって変化する。
研削されたPVA等級の得られた産物の特性、特に、バルク密度、タップ密度、安息角、BET表面領域、BET細孔体積ならびに粒子の大きさ分布などの粉末の特徴付けは以下の表から明らかである:
【0055】
バルク密度、タップ密度、安息角、BET表面領域、BET細孔体積:
(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表1】
【0056】
乾燥分散(1バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表2】
【0057】
乾燥分散(2バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表3】
【0058】
乾燥分散(3バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表4】
【0059】
2.微結晶性セルロース(MCC)
Vivapur(登録商標)Type 102 Premium、微結晶性セルロース、Ph. Eur.、NF、JP、JRS Pharma, ローゼンバーグ, ドイツ
乾燥分散(1バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表5】
【0060】
乾燥分散(2バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表6】
【0061】
乾燥分散(3バール対圧)でのレーザー回折によって決定された粒子分布:
数値(μm)(測定方法の詳細は「方法」を参照)
【表7】
【0062】
3.他の材料
3.1 プロプラノロールHCl BP、EP、USP バッチ番号M130302(Changzhou Yabang Pharmaceutical Co., LTD., 中国)
3.2 Parteck(登録商標)LUB MST(植物性等級のステアリン酸マグネシウム)EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、BP、JP、NF、FCC 品目番号1.00663(Merck KGaA, ドイツ)
3.3 高度に分散した、賦形剤としての使用に好適なコロイド状の二酸化ケイ素
EMPROVE(登録商標)exp Ph. Eur.、NF、JP、E551 品目番号1.13126(Merck KGaA, ドイツ)
3.4 テオフィリン無水物 EP期限10/2016 品目番号000983(Selectchemie, スイス)
【0063】
実験結果
A)
目標:
徐放経口活性成分製剤は、頻繁に複雑な構造を有する。驚くべきことに、活性成分の徐放を有するプロプラノロールおよびテオフィリン錠剤(12時間後の活性成分の累積的な>80%の放出)を、親水性PVA等級を放出遅延ポリマーマトリックスとして使用することによって簡単な様式で生産できることが下記に示され得る。in vitroの放出挙動、特に発明によるプロプラノロール錠剤のものは、治療上使用される市販の製品の放出プロファイルに極めて近い。
以下の例において、共混合物を特許出願PCT/EP2015/001355、PCT/EP2015/001356およびPCT/EP2015/001357において記載されたように用いる。これらは、研削されたポリビニルアルコール(PVA)の、特定の粒子の大きさを有する微結晶性セルロース(MCC)との共混合物である。
【0064】
B)
プロプラノロールによる実験結果の概要:
以下のデータより、活性成分の徐放を有するプロプラノロール錠剤は、記載された共混合物の補助で特に簡単に生産することができることを示すことができ、ここで、驚くべきことに、
1.高い硬さおよび低い破砕性を有する錠剤は低い圧縮力でさえも得られること;
2.これら錠剤からの活性成分の放出は適用された圧縮力から事実上独立していること;
3.活性成分の放出は極めて大きい錠剤の硬さの範囲にわたって不変のままであること;
および
4.この簡単な生産プロセスは徐放プロプラノロール製剤の開発を可能にし、そのin vitro放出挙動は同じ用量の市販の製剤(顕著により複雑な構造を有する)のものと事実上同一であること
が見出された。
これらの利点のため、記載された徐放製剤を簡単な様式で調製することが可能である。同時に、発明による錠剤は改善された薬剤安全性を有する。
【0065】
手順:
1.PVA26−88およびMCCならびにPVA40−88およびMCCからの2つの共混合物の調製、および各場合において、活性成分およびさらなる添加剤との混合、およびその後の5、10、20および30kNの圧縮力での圧縮、および医薬製剤の点における得られたプレスされた産物の特徴付け
2.12時間にわたるリン酸緩衝液(pH6.8)における活性成分のin vitroの放出の測定:10、20および30kNの圧縮力で得られたプレスされた産物の試験
3.リン酸緩衝液(pH6.8)におけるドシトン(登録商標)160mg徐放カプセルのin vitroの放出の12時間にわたる測定:プロプラノロールのこれらのカプセルからのin vitroの放出の、発明によるPVAベースの徐放錠剤からのプロプラノロールのin vitroの放出に対する比較
【0066】
結果:
Re 1.:医薬製剤の点におけるプロプラノロール徐放錠剤の生産および特徴付け:
a.2つの研削されたPVA等級26−88および40−88の、微結晶性セルロース(MCC)との、1:1の混合比率の共混合物の調製(特許出願PCT/EP2015/001355、PCT/EP2015/001356およびPCT/EP2015/001357を参照)。2つの構成要素からなる共混合物の調製のために、微結晶性セルロース(標準的な市販の製品)および好適な粒子の大きさの分画を有するPVAを、1:1の混合比率でTurbula(登録商標)mixerにおいて5分間混合する。
b.これらの共混合物の337.5g(例A)または335.0g(例B)は、160gのプロプラノロールHCLおよび1.25gの高度に分散した二酸化ケイ素(例A)および2.5gの高度に分散した二酸化ケイ素(例B)と、Turbula(登録商標)mixerにおいてさらに5分間混合する。得られた混合物は次いで800μmの手ふるいを通過させる。
c.1.25gのParteck(登録商標)LUB MST(例A)または2,5gのParteck(登録商標)LUB MST(例B)の添加後、混合物を再度5分間混合し、その後Korsch EK 0-DMS eccentric pressにおいて錠剤化し、500mgと計量される錠剤を得る;これは1錠剤あたり160mgのプロプラノロールHCLに対応する。
d.錠剤の特徴付けを、錠剤の硬さ、錠剤重量、錠剤の厚さ、錠剤の摩耗(破砕性)および必要とされる突き出し力のパラメータに関して行う。
【0067】
組成物(重量%)例A:遅延マトリックスとしてPVA26−88を有する
【表8】
【0068】
組成物(重量%)例B:遅延マトリックスとしてPVA40−88を有する
【表9】
【0069】
錠剤の特徴付け
表1:例Aおよび例Bの錠剤化データ
記号解:
A:圧縮力[kN] B:1日後の錠剤の硬さ[N]
C:錠剤重量[mg] D:錠剤の厚さ[mm]
E:摩耗[%] F:突き出し力(N)
【表10】
【0070】
図1は、より良好な例示のために、2つの例の圧縮力/錠剤の硬さのプロファイルのグラフを示す。
すべての錠剤は、機械的負荷後の極めて低い摩耗(低い破砕性)および比較的低い突き出し力とともに、10kNと等しい/よりも大きい圧縮力で異常に高い錠剤の硬さを示す。
マトリックスPVA26−88またはPVA40−88に基づき、錠剤間で錠剤化データに事実上相違はない。特に、錠剤の硬さは同じ圧縮力で事実上同一である。
【0071】
Re 2.:pH6.8でのプロプラノロール徐放錠剤からのin vitroの放出
表2a:pH6.8での例Aのin vitroの放出データ
10、20および30kNの圧縮力で得られた錠剤から放出されたプロプラノロールHClの累積的な量(%)を示す。
【表11】
【0072】
図2aは、より良好な例示のために、pH6.8での例Aの放出データのグラフを示す。
例Aは、それぞれ20および30kNの圧縮力で生産された、212および259Nの得られた錠剤の硬さを有する錠剤について、事実上同一な放出挙動を示す;10kNの圧縮力で生産された錠剤(102Nの錠剤の硬さを有する)は、比較して、わずかに速いin vitroの放出を有する。
【0073】
表2b:pH6.8での例Bのin vitroの放出データ
10、20および30kNの圧縮力で得られた錠剤から放出されたプロプ
ラノロールHCl(%)の累積的な量を示す。
【表12】
【0074】
図2bは、より良好な例示のために、pH6.8での例Bの放出データのグラフを示す。
驚くべきことに、例Bは、10〜30kNの関連する圧縮力の範囲において生産された錠剤について同一の放出挙動を示す。錠剤の硬さ(表1)に関して、これは110〜247Nの極めて大きい硬さの範囲にわたる同一の放出挙動に対応する。
結論:両方の例、特に例Bは、極めて広い圧縮力および錠剤の硬さの範囲にわたる活性成分の不変のin vitroの放出を示す。この効果は、錠剤化圧縮力に生じる変動および極めて広い範囲にわたる錠剤の硬さの得られた変化も活性成分の放出に対して影響を有さないため、この種の徐放錠剤の産業生産において大きな信頼性をもたらす。これは薬剤の安全性に相当に重要である。
【0075】
Re 3.:pH6.8での市販のプロプラノロール徐放製剤からのin vitroの放出
mibe GmbH Arzneimittel(ブレーナ, ドイツ)からのドシトン(登録商標)160mg徐放を試験した
表3:pH6.8でのドシトン(登録商標)のin vitroの放出データ
徐放カプセルから放出されたプロプラノロールHCl(%)の累積的な量を示す。
【表13】
【0076】
これらの放出データは、20および30kNの圧縮力で圧縮された例A(表2a)、および10、20および30kNの圧縮力で圧縮された例B(表2b)からのデータと事実上正確に一致する。
例Aからの放出データと比較したpH6.8でのドシトン(登録商標)160mg徐放の放出データを
図3aに示し、例Bからの放出データと比較したものを
図3bに示す。
結論:PVAおよびMCCからなる共混合物の簡単な直接圧縮プロセスは、顕著により複雑な構造を有するペレットまたはカプセル製剤に対してそのin vitroの放出挙動において同等である徐放マトリックス錠剤を得ることを可能にする。
【0077】
C)
テオフィリンによる実験結果の概要:
以下のデータによって、活性成分の徐放を有するテオフィリン錠剤をPVA/MCC共混合物の補助により特に簡単に生産できることを示すことができ、ここで、驚くべきことに、
1.高い硬さおよび低い破砕性を有する錠剤が低い圧縮力でさえも得られること;
2.活性成分のこれらの錠剤からの放出は適用された圧縮力から事実上独立していること
および
3.活性成分の放出は極めて大きい錠剤の硬さの範囲にわたって不変のままであること
が見出された。
【0078】
【表14】
表4:テオフィリン含有錠剤の成分および量
【0079】
185gのPVA40−88(研削された)および185gのMCCをTurbula(登録商標)mixerにおいて10分間集中的に混合する。125gのテオフィリン無水物、および2.5gの二酸化ケイ素をその後加え、混合物をさらに10分間均質化する。得られた混合物はふるい(800μm)を通過させる。2.5gのステアリン酸マグネシウムを250μmのふるいを通して混合物に加え、Turbula(登録商標)tumble mixerにおいてすべての構成成分を再度一緒に5分間混合する。得られた粉末材料を5、11、21および32kNの圧縮力で圧縮し、500mgと計量される錠剤(直径11mm、平坦、ファセット付き)を得る。
【0080】
【表15】
表5:得られたテオフィリン含有錠剤の1錠剤あたりの物理的データ(125mgのテオフィリン無水物)
【0081】
PVA含有混合物の使用によって、高い錠剤の硬さを有する活性成分の徐放を有するテオフィリン錠剤を得、ここで必要とされる注入力は極端に低い。
表6:pH6.8でのテオフィリン徐放錠剤からのin vitroの放出データ
5、11、21、32kNの圧縮力で得られた錠剤から放出されたテオフィリンの累積的な量(%)を示す。
【表16】
【0082】
図4は、より良好な例示のために、テオフィリンの放出データのグラフを示す。
驚くべきことに、5〜32kNの圧縮力の範囲で生産されたテオフィリン徐放錠剤は同一の放出挙動を示す。錠剤の硬さ(表5)に関して、これは50〜289Nの極めて大きい硬さの範囲にわたる同一の放出挙動に対応する。