(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6841845
(24)【登録日】2021年2月22日
(45)【発行日】2021年3月10日
(54)【発明の名称】レーザ装置及びレーザ加工システム
(51)【国際特許分類】
H01S 3/10 20060101AFI20210301BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20210301BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20210301BHJP
【FI】
H01S3/10
H01S3/00 B
H01S5/022
【請求項の数】12
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2018-555400(P2018-555400)
(86)(22)【出願日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】JP2016086572
(87)【国際公開番号】WO2018105082
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 弘司
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【審査官】
高椋 健司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/121281(WO,A1)
【文献】
特開2009−246345(JP,A)
【文献】
特開2009−188031(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0182306(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00−5/50
B23K 26/00−26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパルスを含むバーストシードパルス光を出力する固体レーザ装置と、
前記バーストシードパルス光を放電空間において1回の放電により増幅し、増幅バーストパルス光として出力するエキシマ増幅器と、
前記増幅バーストパルス光に含まれる各パルスの光強度波形を計測する光強度センサと、
前記各パルスの光強度波形に基づき、前記各パルスの特徴を表す複数のパラメータを計測するパルス波形解析部と、
前記パルス波形解析部の計測結果に基づき、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正するレーザ制御部と、を備え、
前記パルス波形解析部は、前記各パルスの光強度波形に基づき、前記増幅バーストパルス光のエネルギを計測し、
前記レーザ制御部は、前記固体レーザ装置から前記バーストシードパルス光が出力されるタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとの差と、前記エネルギの計測値との関係に基づいて、前記バーストシードパルス光が前記放電空間に入射するタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとがほぼ一致するように、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正し、
さらに、前記レーザ制御部は、前記複数のパラメータの計測値をそれぞれの目標値に近づけるように前記固体レーザ装置から出力させる前記バーストシードパルス光の波形を補正するパラメータフィードバック制御を行う、
レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ装置であって、
前記エキシマ増幅器は、一対の放電電極と、パルスパワーモジュールと、充電器とを含み、
前記レーザ制御部は、前記エネルギの計測値を目標値に近づけるように前記充電器の充電電圧を補正するエネルギーフィードバック制御を行う。
【請求項3】
請求項2に記載のレーザ装置であって、
前記レーザ制御部は、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正した後、前記エネルギーフィードバック制御を行う。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ装置であって、
前記パラメータには、ピーク強度と、パルス間隔と、パルス幅とが含まれる。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザ装置であって、
前記レーザ制御部は、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させる
タイミングを補正した後、前記パラメータフィードバック制御を行う。
【請求項6】
複数のパルスを含むバーストシードパルス光を出力する固体レーザ装置と、
前記バーストシードパルス光を放電空間において1回の放電により増幅し、増幅バーストパルス光として出力するエキシマ増幅器と、
前記増幅バーストパルス光のエネルギを計測するエネルギセンサと 、
前記固体レーザ装置から前記バーストシードパルス光が出力されるタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとの差と、前記エネルギの計測値との関係に基づいて、前記バーストシードパルス光が前記放電空間に入射するタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとがほぼ一致するように、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正するレーザ制御部と、
前記増幅バーストパルス光に含まれる各パルスの波長を計測する波長モニタと、を備え、
前記固体レーザ装置は、複数の半導体レーザを含み、前記複数の半導体レーザのそれぞれの波長を変更することにより、前記バーストシードパルス光に含まれる各パルスの波長を変更することを可能とし、
前記レーザ制御部は、前記波長の計測値を目標値に近づけるように前記固体レーザ装置から出力される前記バーストシードパルス光に含まれる各パルスを制御する波長フィードバック制御を行う、
レーザ装置。
【請求項7】
複数のパルスを含むバーストシードパルス光を出力する固体レーザ装置と、
前記バーストシードパルス光を放電空間において1回の放電により増幅し、増幅バーストパルス光として出力するエキシマ増幅器と、
前記増幅バーストパルス光に含まれる各パルスの光強度波形を計測する光強度センサと、
前記各パルスの光強度波形に基づき、前記各パルスの特徴を表す少なくとも1つのパラメータを計測するパルス波形解析部と、
前記パルス波形解析部の計測結果に基づき、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正するレーザ制御部と、
前記増幅バーストパルス光に含まれる各パルスの波長を計測する波長モニタと、を備え、
前記固体レーザ装置は、複数の半導体レーザを含み、前記複数の半導体レーザのそれぞれの波長を変更することにより、前記バーストシードパルス光に含まれる各パルスの波長を変更することを可能とし、
前記パルス波形解析部は、前記各パルスの光強度波形に基づき、前記増幅バーストパルス光のエネルギを計測し、
前記レーザ制御部は、前記固体レーザ装置から前記バーストシードパルス光が出力されるタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとの差と、前記エネルギの計測値との関係に基づいて、前記バーストシードパルス光が前記放電空間に入射するタイミングと、前記放電空間において放電が生じるタイミングとがほぼ一致するように、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正し、
さらに、
前記レーザ制御部は、前記波長の計測値を目標値に近づけるように前記固体レーザ装置から出力される前記バーストシードパルス光に含まれる各パルスを制御する波長フィードバック制御を行う、
レーザ装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のレーザ装置であって、
前記レーザ制御部は、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正した後、前記波長フィードバック制御を行う。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ装置であって、
前記固体レーザ装置は、半導体レーザと、前記半導体レーザからの出力光をパルス増幅する半導体光増幅器と、前記半導体光増幅器の電流を制御するバーストパルス生成器とを含む。
【請求項10】
請求項6又は7に記載のレーザ装置であって、
前記固体レーザ装置は、複数の半導体レーザと、複数の半導体光増幅器と、ビームコンバイナと、前記複数の半導体光増幅器の電流を制御するバーストパルス生成器とを含む。
【請求項11】
請求項1、6又は7に記載のレーザ装置と、
前記レーザ装置から入力される前記増幅バーストパルス光を、被加工物に照射するレーザ照射装置と、を備えるレーザ加工システム。
【請求項12】
請求項1、6又は7に記載のレーザ装置であって、
前記レーザ制御部は、外部から入力される1つの発光トリガ信号に応じて、前記固体レーザ装置に前記バーストシードパルス光を出力させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置及びレーザ加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わって放電励起式のガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用レーザ装置としては、波長248.4nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193.4nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけ上の波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには水中における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350〜400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には、狭帯域化素子を有する狭帯域化モジュール(Line Narrowing Module)が設けられている。この狭帯域化モジュールによりスペクトル線幅の狭帯域化が実現されている。狭帯域化素子は、エタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル線幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【0005】
また、エキシマレーザ装置から出力される紫外のレーザ光は、パルス幅が約数10nsであって、波長が248.4nmや193.4nmと短いことから、高分子材料やガラス材料等の直接加工に用いられることがある。高分子材料は、結合エネルギよりも高いフォトンエネルギをもつ紫外のレーザ光によって、結合が切断される。そのため、紫外のレーザ光を用いることにより、非加熱加工が可能であり、また、綺麗な加工形状が得られることが知られている。また、ガラスやセラミックス等は、可視や赤外のレーザ光では加工することが難しいが、エキシマレーザ装置から出力される紫外のレーザ光に対する吸収率が高いので、紫外のレーザ光によれば加工が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−222173号公報
【特許文献2】特開2016−51897号公報
【特許文献3】特開2014−53627号公報
【特許文献4】特表2012−515450号公報
【0007】
本開示の1つの観点に係るレーザ装置は、以下を備える:
A.複数のパルスを含むバーストシードパルス光を出力する固体レーザ装置;
B.バーストシードパルス光を放電空間において1回の放電により増幅し、増幅バーストパルス光として出力するエキシマ増幅器;
C.増幅バーストパルス光のエネルギを計測するエネルギセンサ;及び
D.固体レーザ装置からバーストシードパルス光が出力されるタイミングと、放電空間において放電が生じるタイミングとの差と、エネルギの計測値との関係に基づいて、固体レーザ装置にバーストシードパルス光を出力させるタイミングを補正するレーザ制御部。
【0008】
本開示の1つの観点に係るレーザ加工システムは、以下を備える:
K.上記レーザ装置;及び
L.レーザ装置から入力される増幅バーストパルス光を、被加工物に照射するレーザ照射装置。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、比較例に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、比較例に係る固体レーザ装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、バーストシードパルス光と放電とのタイミングを示すタイミングチャートである。
【
図4A】
図4Aは、バーストシードパルス光と放電とのタイミングが適正な場合について説明する説明図である。
【
図4B】
図4Bは、バーストシードパルス光と放電とのタイミングが不適正な場合について説明する説明図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る固体レーザ装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、増幅バーストパルス光の波形を規定する各種パラメータを示す図である。
【
図8】
図8は、バーストパルス信号の波形を規定する各種パラメータを示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係るレーザ装置の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図10】
図10は、トリガ遅延時間の補正動作について説明するフローチャートである。
【
図12】
図12は、目標バーストパルスデータの受信時の処理について説明するフローチャートである。
【
図13】
図13は、バーストパルス生成器に設定データを送信する際の処理について説明するフローチャートである。
【
図14】
図14は、バーストパルスエネルギの計測動作について説明するフローチャートである。
【
図15】
図15は、目標遅延時間の最適化処理について説明するフローチャートである。
【
図17】
図17は、エネルギフィードバック制御について説明するフローチャートである。
【
図18】
図18は、第2の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。
【
図19】
図19は、第2の実施形態に係るレーザ装置の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図21】
図21は、目標バーストパルスデータの受信時の処理について説明するフローチャートである。
【
図22】
図22は、パルス波形の解析動作について説明するフローチャートである。
【
図24】
図24は、目標遅延時間の最適化処理について説明するフローチャートである。
【
図26】
図26は、パラメータフィードバック制御について説明するフローチャートである。
【
図27】
図27は、第3の実施形態に係るレーザ装置の構成を概略的に示す図である。
【
図28】
図28は、第3の実施形態に係る固体レーザ装置の構成を示す図である。
【
図30】
図30は、目標バーストパルスデータの受信時の処理について説明するフローチャートである。
【
図31】
図31は、波長データの送信時の処理について説明するフローチャートである。
【
図32】
図32は、波長計測動作について説明するフローチャートである。
【
図33】
図33は、波長フィードバック制御について説明するフローチャートである。
【
図34】
図34は、第1の変形例に係る固体レーザ装置の構成を示す図である。
【
図35】
図35は、第1の変形例に係るレーザ装置の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【
図36】
図36は、第2の変形例に係る固体レーザ装置の構成を示す図である。
【
図37】
図37は、第2の変形例に係るバーストシードパルス生成器の構成を示す図である。
【
図39】
図39は、半導体レーザと半導体光増幅器との具体例を示す図である。
【0010】
<内容>
1.比較例
1.1 構成
1.2 動作
1.3 課題
1.4 シード光のバーストパルス化
2.第1の実施形態
2.1 構成
2.2 定義
2.2.1 増幅バーストパルス光の波形
2.2.2 バーストパルス信号の波形
2.3 動作
2.3.1 基本動作タイミング
2.3.2 トリガ遅延時間の補正処理
2.3.3 発振制御
2.4 効果
3.第2の実施形態
3.1 構成
3.2 動作
3.2.1 基本動作タイミング
3.2.2 トリガ遅延時間の補正処理
2.3.3 発振制御
3.3 効果
4.第3の実施形態
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 発振制御
4.3 効果
5.固体レーザ装置の変形例
5.1 第1の変形例
5.1.1 構成
5.1.2 動作
5.1.3 効果
5.2 第2の変形例
5.2.1 構成及び動作
6.レーザ加工システム
6.1 構成
6.2 効果
7.半導体レーザと半導体光増幅器との具体例
7.1 構成
7.2 動作
7.3 効果
8.放電センサの変形例
8.1 構成及び動作
8.2 効果
9.その他の変形例
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.比較例
1.1 構成
図1及び
図2は、比較例に係るレーザ装置2の構成を概略的に示す。レーザ装置2は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)型のレーザ装置である。
図1において、レーザ装置2は、MO(Master Oscillator)としての固体レーザ装置10と、PA(Power Amplifier)としてのエキシマ増幅器20と、モニタモジュール30と、シャッタ40と、レーザ制御部50と、同期回路60と、を含む。
【0013】
図2は、固体レーザ装置10の構成を示す。固体レーザ装置10は、半導体レーザ11と、半導体光増幅器12と、チタンサファイア増幅器13と、波長変換システム14と、固体レーザ制御部15と、を含む。固体レーザ制御部15は、半導体レーザ11、チタンサファイア増幅器13、及び波長変換システム14の動作を制御する。
【0014】
半導体レーザ11は、波長約773.6nmのCW(Continuous Wave)レーザ光を出力する分布帰還型の半導体レーザである。半導体レーザ11は、半導体の温度設定を変更することによって、発振波長を変化させることが可能に構成されていることが好ましい。半導体光増幅器12は、半導体レーザ11から出力されたシード光を、後述する第2の内部トリガ信号Tr2に応じてパルス増幅する。以下、半導体光増幅器12によりパルス状とされたレーザ光を、シードパルス光と称する。
【0015】
チタンサファイア増幅器13は、図示しないチタンサファイア結晶と、図示しないポンピング用レーザとを含む。チタンサファイア結晶は、半導体光増幅器12から出力されたシードパルス光の光路上に配置されている。ポンピング用レーザは、例えば、YLFレーザの第2高調波光を出力するレーザ装置である。チタンサファイア増幅器13は、半導体光増幅器12から出力されたシードパルス光を増幅する。
【0016】
波長変換システム14は、非線形結晶としてのLBO(LiB
3O
5)結晶とKBBF(KBe
2BO
3F
2)結晶と含む。チタンサファイア増幅器13から出力されたシードパルス光を受けて波長変換を行い、第4高調波光を生成する。すなわち、波長変換システム14は、波長約193.4nmの紫外のシードパルス光SPを出力する。
【0017】
半導体レーザ11の発振波長を変更可能とする場合には、LBO結晶とKBBF結晶とをそれぞれ、図示しない回転ステージ上に配置し、各結晶へのシードパルス光の入射角度を変更可能に構成することが好ましい。固体レーザ制御部15は、各結晶へのシードパルス光の入射角度が、目標波長に対応した位相整合角となるように各回転ステージを回転させる。
【0018】
図1において、エキシマ増幅器20は、レーザチャンバ21と、パルスパワーモジュール(PPM)22と、充電器23と、トリガ補正部24と、凸面ミラー25aと、凹面ミラー25bと、を含む。レーザチャンバ21には、ウインドウ21a,21bが設けられている。レーザチャンバ21の中には、レーザ媒質としてのレーザガスが封入されている。レーザガスは、例えば、アルゴンフッ素(ArF)ガスである。
【0019】
また、レーザチャンバ21には開口が形成されており、この開口を塞ぐように、複数のフィードスルー26aが埋め込まれた電気絶縁プレート26が設けられている。電気絶縁プレート26上には、PPM22が配置されている。レーザチャンバ21内には、主電極としての第1及び第2の放電電極27a,27bと、グランドプレート28と、が配置されている。
【0020】
第1及び第2の放電電極27a,27bは、レーザ媒質を放電により励起するための一対の放電電極として、対向配置されている。第1の放電電極27a及び第2の放電電極27bは、互いの放電面が対向するように配置されている。第1の放電電極27aの放電面と第2の放電電極27bとの放電面との間の空間を、放電空間という。第1の放電電極27aは、放電面とは反対側の面が、電気絶縁プレート26に支持されている。第1の放電電極27aは、フィードスルー26aに接続されている。第2の放電電極27bは、放電面とは反対側の面が、グランドプレート28に支持されている。
【0021】
PPM22は、スイッチ22aの他に、図示しない充電コンデンサと、パルストランスと、磁気圧縮回路と、ピーキングコンデンサと、を含む。ピーキングコンデンサは、図示しない接続部を介してフィードスルー26aに接続されている。充電器23は、充電コンデンサを充電する。具体的には、充電器23は、レーザ制御部50から入力される充電電圧Vの設定値に基づいて充電コンデンサを充電する。
【0022】
スイッチ22aは、後述する第1の内部トリガ信号Tr1に基づいてトリガ補正部24から入力されるスイッチ信号Sによりオン/オフが制御される。スイッチ22aにスイッチ信号Sが入力されてスイッチ22aがオンとなると、充電コンデンサからパルストランスの一次側に電流が流れ、電磁誘導によってパルストランスの二次側に逆方向の電流が流れる。磁気圧縮回路は、パルストランスの二次側に接続されており、電流パルスのパルス幅を圧縮する。ピーキングコンデンサは、この電流パルスにより充電される。ピーキングコンデンサの電圧がレーザガスのブレークダウン電圧に達したときに、第1及び第2の放電電極27a,27bの間のレーザガスに絶縁破壊が生じ、放電が生じる。
【0023】
凸面ミラー25aと凹面ミラー25bとは、固体レーザ装置10から出力されたシードパルス光SPが、第1及び第2の放電電極27a,27bの間の放電空間を3回通過して、ビーム幅が拡大されるように配置されている。固体レーザ装置10から出力されたシードパルス光SPは、ウインドウ21aを透過して放電空間を通過し、ウインドウ21bを透過して凸面ミラー25aにより反射される。凸面ミラー25aにより反射されたシードパルス光SPは、ウインドウ21bを透過して放電空間を通過し、ウインドウ21aを透過して凹面ミラー25bにより反射される。凹面ミラー25bにより反射されたシードパルス光SPは、ウインドウ21aを透過して放電空間を通過し、ウインドウ21bを透過して、エキシマ増幅器20から外部に出力される。シードパルス光SPは、凸面ミラー25aにより反射される際に、ビーム幅が拡大される。
【0024】
同期回路60は、レーザ制御部50から受信した発光トリガ信号Tr0に基づき、第1の内部トリガ信号Tr1と、第2の内部トリガ信号Tr2とを生成する。同期回路60は、第1の内部トリガ信号Tr1をエキシマ増幅器20に入力し、第2の内部トリガ信号Tr2を固体レーザ装置10に入力する。第1の内部トリガ信号Tr1と第2の内部トリガ信号Tr2とは、固体レーザ装置10から出力されたシードパルス光SPがエキシマ増幅器20の放電空間に入射したときに放電が生じるように、所定の時間差Tmodを有する。以下、この時間差Tmodを、トリガ遅延時間Tmodとも称する。
【0025】
トリガ補正部24は、同期回路60から入力される第1の内部トリガ信号Tr1に応じてスイッチ信号Sを生成して出力する。また、トリガ補正部24は、第1の内部トリガ信号Tr1が入力されてからスイッチ信号Sを出力するまでの時間Tpacを、充電電圧Vの設定値に応じて補正する。これは、PPM22が磁気圧縮回路を含む場合には、スイッチ信号Sがスイッチ22aに入力されてから放電が生じるまでの所要時間Tpasが、下式(1)に示すように、充電電圧Vに依存するためである。
Tpas=K/V ・・・(1)
ここで、Kは、一定値である。
【0026】
トリガ補正部24は、第1の内部トリガ信号Tr1がトリガ補正部24に入力されてから放電が生じるまでの時間Tpatが充電電圧Vに依らずに一定となるように、式(1)に基づいてスイッチ信号Sの生成タイミングを補正する。
【0027】
エキシマ増幅器20の放電空間に入射したシードパルス光SPは、放電空間で放電が生じることにより増幅され、増幅された増幅パルス光APとして、エキシマ増幅器20から出力される。モニタモジュール30は、増幅パルス光APの光路上に配置されている。
【0028】
モニタモジュール30は、第1のビームスプリッタ31と、第2のビームスプリッタ32と、エネルギセンサ33と、波長モニタ34と、を含む。第1のビームスプリッタ31は、増幅パルス光APの光路上に配置されており、増幅パルス光APの一部を反射させる。第2のビームスプリッタ32は、第1のビームスプリッタ31により反射された反射光の光路上に配置されており、反射光の一部を反射させる。
【0029】
エネルギセンサ33には、第2のビームスプリッタ32を透過した透過光が入射される。エネルギセンサ33は、例えば、紫外光に感度を有するフォトダイオードを含み、入射光のエネルギを検出する。すなわち、エネルギセンサ33は、増幅パルス光APのパルスエネルギを計測する。エネルギセンサ33は、計測したパルスエネルギの計測値Eをレーザ制御部50に送信する。
【0030】
波長モニタ34には、第2のビームスプリッタ32により反射された反射光が入射される。波長モニタ34は、エタロン分光器を含み、図示しない拡散板と、エアギャップエタロンと、集光レンズと、ラインセンサと、を含んで構成されている。拡散板、エアギャップエタロン、及び集光レンズにより生成される干渉縞の半径をラインセンサで検出することにより、増幅パルス光APの波長が計測される。波長モニタ34は、波長の計測値λをレーザ制御部50に送信する。
【0031】
第1のビームスプリッタ31を透過した増幅パルス光APは、シャッタ40を介してレーザ照射装置3に供給される。シャッタ40は、レーザ制御部50により、開状態と閉状態との間で開閉動作が制御される。レーザ照射装置3は、レーザ照射制御部3aを含む。レーザ照射制御部3aは、発光トリガ信号Tr0と、目標波長λtと、目標パルスエネルギEtとを、レーザ制御部50に送信する。
【0032】
1.2 動作
次に、レーザ制御部50の制御に基づいて行うレーザ装置2の動作について説明する。レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aから目標波長λtを受信すると、固体レーザ装置10から出力されるシードパルス光SPの波長が目標波長λtとなるように、半導体レーザ11の発振波長を変化させる。具体的には、レーザ制御部50は、下式(2)を満たす波長データλ1を半導体レーザ11に設定する。
λ1=4λt ・・・(2)
【0033】
例えば、目標波長λtが193.4nmである場合には、波長データλ1を773.6nmとする。レーザ制御部50は、半導体レーザ11に設定する波長データλ1を変更する場合には、固体レーザ制御部15を介して波長変換システム14に含まれる各回転ステージの制御も行う。具体的には、レーザ制御部50は、LBO結晶及びKBBF結晶へのシードパルス光SPの入射角度が、目標波長λtに対応した位相整合角となるように回転ステージを回転させる。これにより、LBO結晶及びKBBF結晶の波長変換効率が最大となる。
【0034】
レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aから目標パルスエネルギEtを受信すると、目標パルスエネルギEtに対応した充電電圧Vを充電器23に設定する。充電器23は、充電電圧Vの設定値に基づいて、PPM22に含まれる充電コンデンサを充電する。
【0035】
レーザ制御部50がレーザ照射制御部3aに照射許可信号Psを送信した後、レーザ制御部50がレーザ照射制御部3aから発光トリガ信号Tr0を受信すると、レーザ制御部50は、同期回路60に発光トリガ信号Tr0を送信する。同期回路60は、発光トリガ信号Tr0を受信すると、第1の内部トリガ信号Tr1を生成し、第1の内部トリガ信号Tr1を生成してからトリガ遅延時間Tmodの経過後に第2の内部トリガ信号Tr2を生成する。同期回路60は、第1の内部トリガ信号Tr1をエキシマ増幅器20に入力し、第2の内部トリガ信号Tr2を固体レーザ装置10に入力する。
【0036】
エキシマ増幅器20に第1の内部トリガ信号Tr1が入力されると、トリガ補正部24は、レーザ制御部50から充電器23に設定される充電電圧Vに基づいた遅延時間Tpacだけ第1の内部トリガ信号Tr1を遅延させることによりスイッチ信号Sを生成する。すなわち、トリガ補正部24は、第1の内部トリガ信号Tr1がトリガ補正部24に入力されてから放電が生じるまでの時間Tpatが充電電圧Vに依らずに一定となるタイミングでスイッチ信号SをPPM22のスイッチ22aに入力する。
【0037】
固体レーザ装置10に第2の内部トリガ信号Tr2が入力されると、半導体光増幅器12は、半導体レーザ11から入力されるCWレーザ光としてのシード光をパルス増幅し、シードパルス光を生成する。半導体光増幅器12により生成されたシードパルス光は、チタンサファイア増幅器13によってさらに増幅され、波長変換システム14に入射する。波長変換システム14は、非線形結晶としてのLBO結晶及びKBBF結晶により第4高調波光を生成する。この結果、固体レーザ装置10から、目標波長λt(193.4nm)を有するシードパルス光SPが出力される。
【0038】
トリガ補正部24からスイッチ22aにスイッチ信号Sが入力されて、PPM22によりパルス圧縮等が行われると、エキシマ増幅器20の放電空間において放電が生じる。この放電が生じる直前に、固体レーザ装置10から放電空間にシードパルス光SPが入射する。シードパルス光SPは、放電により増幅されるとともに、凸面ミラー25aと凹面ミラー25bとの間での反射によりビーム幅が拡大される。放電空間において増幅され、ビーム幅が拡大されたシードパルス光SPは、増幅パルス光APとしてエキシマ増幅器20から出力される。
【0039】
エキシマ増幅器20から増幅パルス光APは、モニタモジュール30に入射する。モニタモジュール30に入射した増幅パルス光APは、第1のビームスプリッタ31によって一部がサンプリングされ、パルスエネルギと波長が計測される。パルスエネルギの計測値Eと波長の計測値λとは、レーザ制御部50に入力される。
【0040】
レーザ制御部50は、波長の計測値λと目標波長λtとを比較し、計測値λが目標波長λtに近づくように、半導体レーザ11に設定する波長データλ1を変更する。また、レーザ制御部50は、パルスエネルギの計測値Eと目標パルスエネルギEtとを比較し、計測値Eが目標パルスエネルギEtに近づくように、充電器23の充電電圧Vを制御する。
【0041】
モニタモジュール30を通過した増幅パルス光APは、シャッタ40が開状態である場合に、レーザ照射装置3に入射する。レーザ照射装置3は、レーザ装置2から供給された増幅パルス光APを、高分子材料、ガラス、セラミックス等を加工対象物としたレーザ加工に用いられる。
【0042】
1.3 課題
紫外の波長域のレーザ光をレーザ加工に用いる場合には、パルスのピークパワーを高くするために、パルス幅を短くすることが好ましい。上記比較例においては、エキシマ増幅器20に入力されるシードパルス光SPのパルス幅を1ns程度とすることが好ましい。これに対して、エキシマ増幅器20の放電時間(ゲイン持続時間)は、数10ns程度である。このように、シードパルス光SPを短パルス化した場合には、エキシマ増幅器20の放電時間がシードパルス光SPのパルス幅より大きく、放電時間中にシードパルス光SPで放電空間を満たすことができない。
【0043】
すなわち、シードパルス光SPを短パルス化すると、エキシマ増幅器20における増幅効率が低下するという課題がある。また、シードパルス光SPを短パルス化すると、増幅パルス光AP中の自然放射増幅光(ASE)の割合が増加するという課題がある。さらに、シードパルス光SPを短パルス化すると、ウインドウ21a,21b等の光学素子の損傷が生じやすくなり、寿命が短くなるという課題がある。
【0044】
1.4 シード光のバーストパルス化
上記課題を解決するために、シードパルス光SPを、エキシマ増幅器20のゲイン持続時間に対応した時間幅を有するバーストパルスとすることが考えられる。具体的には、
図3に示すように、複数のパルスを含むバーストシードパルス光BSPを固体レーザ装置10からエキシマ増幅器20の放電空間に入射させる。
【0045】
バーストシードパルス光BSPは、例えば、5個のパルスを含む。各パルスのパルス幅を1ns未満とし、パルス間隔を数nsとする。バーストシードパルス光BSPの全体のパルス幅は、前述の放電時間(ゲイン持続時間)Tgに対応した値、例えば、数10nsとする。また、バーストシードパルス光BSPの繰り返し周波数Rpは、例えば、1Hzから6000Hzの範囲内とする。繰り返し周波数Rpが6000Hzの場合には、バーストシードパルス光BSPの繰り返し周期Tprは、約167μsである。
【0046】
バーストシードパルス光BSPをエキシマ増幅器20の放電空間に入射させることにより、放電時間中にバーストシードパルス光BSPで放電空間を満たすことを可能とする。この場合、
図3に示すように、バーストシードパルス光BSPが放電空間に入射するタイミングと、放電空間で放電が生じるタイミングと一致させる必要がある。なお、同図中、符号WFは、1回の放電により生じる放電波形(ゲイン波形)を示している。
【0047】
図4Aに示すように、バーストシードパルス光BSPが放電空間に入射するタイミングと、放電空間で放電が生じるタイミングとがほぼ一致する場合には、放電空間おける増幅効率が向上し、自然放射増幅光の発生は低減される。また、シード光をバースト状とすることによりピーク強度を低下させることが可能となり、光学素子の損傷が低減される。この場合、バーストシードパルス光BSPが放電空間により増幅された結果、エキシマ増幅器20から出力される増幅バーストパルス光BAPは、エネルギが最大化される。ここで、増幅バーストパルス光BAPのエネルギは、1回の放電で増幅された増幅バーストパルス光BAPの各パルスのパルスエネルギの和と定義する。
【0048】
しかしながら、
図4Bに示すように、バーストシードパルス光BSPが放電空間に入射するタイミングと、放電空間で放電が生じるタイミングとにずれが生じた場合には、バーストシードパルス光BSPの一部のパルスのみが増幅され、他のパルスが増幅されずにエキシマ増幅器20から出力されてしまう。この場合、増幅バーストパルス光BAPのエネルギは、
図4Aに示す場合よりも低下する。また、この場合、自然放射増幅光の発生が増加する。
【0049】
このように、放電空間に入射させるシードパルス光をバースト化したとしても、バーストシードパルス光BSPの入射タイミングと放電タイミングとのずれにより、上記比較例と同様の課題が生じる。このずれを最小化し、増幅バーストパルス光BAPのエネルギを最大化することが望まれている。
【0050】
2.第1の実施形態
次に、本開示の第1の実施形態に係るレーザ装置について説明する。以下では、第1の実施形態に係るレーザ装置について、比較例に係るレーザ装置2の構成要素と同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0051】
2.1 構成
図5及び
図6は、第1の実施形態に係るレーザ装置2aの構成を概略的に示す。第1の実施形態に係るレーザ装置2aは、MOとしての固体レーザ装置10aと、PAとしてのエキシマ増幅器20aと、モニタモジュール30と、シャッタ40と、レーザ制御部50と、同期回路60と、を含む。さらに、レーザ装置2aは、第1の光センサ70と、第2の光センサ71と、ビームスプリッタ72と、タイマ73と、を含む。
【0052】
第1の実施形態では、詳しくは後述するが、固体レーザ装置10aは、前述のバーストシードパルス光BSPを出力するように構成されている。ビームスプリッタ72は、固体レーザ装置10aとエキシマ増幅器20aとの間におけるシードパルス光BSPの光路上に配置されている。ビームスプリッタ72は、バーストシードパルス光BSPのうちの一部を反射させる。
【0053】
第1の光センサ70は、例えば、紫外光に感度を有するフォトダイオードであり、ビームスプリッタ72によって反射された反射光を受光する。第1の光センサ70は、反射光を受光した際に、第1の検出信号D1を生成してタイマ73に送信する。すなわち、第1の光センサ70は、固体レーザ装置10aからバーストシードパルス光BSPが出力されるタイミングを検出するセンサである。なお、ビームスプリッタ72を透過したバーストシードパルス光BSPは、比較例の場合と同様に、エキシマ増幅器20aの放電空間に入射する。
【0054】
第1の実施形態では、エキシマ増幅器20aに含まれるレーザチャンバ21に、放電観察用ウインドウ21cが形成されている。第2の光センサ71は、受光面が放電観察用ウインドウ21cに対向する位置に配置されている。
【0055】
第2の光センサ71は、エキシマ増幅器20の放電空間において生じる放電光の一部を、放電観察用ウインドウ21cを介して受光する。放電光には、紫外のレーザ光及び可視光が含まれる。第2の光センサ71は、例えば、紫外または可視光に感度を有するセンサであり、フォトダイオードまたは光電管により構成されている。第2の光センサ71は、放電光を検出した際に、第2の検出信号D2を生成してタイマ73に送信する。すなわち、第2の光センサ71は、放電空間において放電が生じたタイミングを検出する放電センサである。
【0056】
タイマ73は、第1の光センサ70から第1の検出信号D1を受信した時点から、第2の光センサ71から第2の検出信号D2を受信した時点までの遅延時間を計測する。タイマ73は、遅延時間の計測値Dをレーザ制御部50に入力する。詳しくは後述するが、レーザ制御部50は、計測値Dに基づいて、同期回路60が第1の内部トリガ信号Tr1を出力してから第2の内部トリガ信号Tr2を出力するまでのトリガ遅延時間Tmodを、計測値Dに基づいて補正する。なお、トリガ遅延時間Tmodの補正は、固体レーザ装置10aにバーストシードパルス光BSPを出力させるタイミングを補正することに相当する。
【0057】
第1の実施形態では、
図6に示すように、固体レーザ装置10aは、半導体レーザ11と、半導体光増幅器12と、チタンサファイア増幅器13と、波長変換システム14と、固体レーザ制御部15とに加えて、バーストパルス生成器16を含む。詳しくは後述するが、バーストパルス生成器16は、後述する目標バーストパルスデータBPDtに基づく設定データに応じて、バーストパルス信号BPSを生成する。バーストパルス生成器16は、例えば、プログラマブルなファンクションジェネレータによって構成されている。
【0058】
バーストパルス生成器16には、比較例において説明した第2の内部トリガ信号Tr2が、同期回路60から入力される。バーストパルス生成器16は、第2の内部トリガ信号Tr2の入力に応じて、バーストパルス信号BPSを半導体光増幅器12に入力する。バーストパルス信号BPSは、電流制御信号である。半導体光増幅器12は、入力されたバーストパルス信号BPSに応じて、増幅率、パルス数、パルス幅、及びパルス間隔を変更し、バースト状のシードパルス光を生成する。このシードパルス光は、比較例と同様に、チタンサファイア増幅器13により増幅され、波長変換システム14により波長変換が行われる。この結果、固体レーザ装置10aから、前述のバーストシードパルス光BSPが出力される。
【0059】
エキシマ増幅器20aは、前述の放電観察用ウインドウ21cがレーザチャンバ21に形成されていること以外は、比較例に係るエキシマ増幅器20の構成と同一である。エキシマ増幅器20aは、固体レーザ装置10aから放電空間にバーストシードパルス光BSPが入射したタイミングで放電を行う。エキシマ増幅器20aは、1回の放電によりバーストシードパルス光BSPを増幅し、増幅バーストパルス光BAPとして出力する。
【0060】
モニタモジュール30は、比較例と同様の構成であり、増幅バーストパルス光BAPの一部をサンプリングし、エネルギセンサ33により増幅バーストパルス光BAPのエネルギを計測する。本実施形態では、エネルギセンサ33は、1つの増幅バーストパルス光BAPに含まれる複数のパルスのエネルギの和を、計測値Eとして計測する。
【0061】
また、モニタモジュール30は、波長モニタ34により増幅バーストパルス光BAPの波長を計測する。モニタモジュール30は、増幅バーストパルス光BAPのエネルギの計測値E及び波長の計測値λの値をレーザ制御部50に送信する。
【0062】
モニタモジュール30を通過した増幅バーストパルス光BAPは、シャッタ40を介してレーザ照射装置3に供給される。本実施形態では、レーザ照射装置3に含まれるレーザ照射制御部3aは、発光トリガ信号Tr0と、目標波長λtと、目標バーストパルスデータBPDtとを、レーザ制御部50に送信する。レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aに照射許可信号Psを送信する。
【0063】
目標バーストパルスデータBPDtは、レーザ照射装置3が所望とする増幅バーストパルス光BAPの波形を規定する各種パラメータを含む。目標バーストパルスデータBPDtには、例えば、目標バーストパルスエネルギEtや、増幅バーストパルス光BAPに含まれるパルスの目標周波数ft、目標パルス幅Twf、パルス数mが含まれる。パルス数mは、少なくとも2以上であればよい。本実施形態では、パルス数mを「5」としている。
【0064】
レーザ制御部50は、比較例と同様に、波長の計測値λと目標波長λtとを比較し、計測値λが目標波長λtに近づくように、半導体レーザ11に設定する波長データλ1を変更する。また、レーザ制御部50は、バーストパルスエネルギの計測値Eと目標バーストパルスエネルギEtとを比較し、計測値Eが目標バーストパルスエネルギEtに近づくように、充電器23の充電電圧Vを変更する。
【0065】
2.2 定義
2.2.1 増幅バーストパルス光の波形
図7は、増幅バーストパルス光BAPの波形を規定する各種パラメータを示す。増幅バーストパルス光BAPには、m個のパルスP
1〜P
mが含まれる。第n番目のパルスP
nのピーク強度をIp(n)とし、パルス幅をTw(n)と表す。パルス幅Tw(n)は、例えば半値全幅である。また、第1番目のパルスP
1から第n番目のパルスP
nまでのパルス間隔をTd(n)と表す。これらのパラメータは、目標バーストパルスデータBPDtに含まれるパラメータに対応する。
【0066】
2.2.2 バーストパルス信号の波形
図8は、固体レーザ装置10aに含まれるバーストパルス生成器16が生成するバーストパルス信号BPSの波形を規定する各種パラメータを示す。バーストパルス信号BPSには、増幅バーストパルス光BAPに対応して、m個のパルス信号G
1〜G
mが含まれる。第n番目のパルス信号G
nの信号強度をIpg(n)とし、パルス幅をTwg(n)と表す。また、第1番目のパルス信号G
1から第n番目のパルス信号G
nまでのパルス間隔をTdg(n)と表す。パルス信号G
nは、ほぼ矩形状である。これらのパラメータの値は、目標バーストパルスデータBPDtに基づいて、レーザ制御部50により算出される。
【0067】
2.3 動作
2.3.1 基本動作タイミング
図9は、第1の実施形態に係るレーザ装置2aのレーザ発振動作における基本的な動作タイミングを示す。まず、同期回路60は、レーザ制御部50を介して、レーザ照射制御部3aから発光トリガ信号Tr0を受信する。同期回路60は、発光トリガ信号Tr0を受信するとほぼ同時に第1の内部トリガ信号Tr1を生成し、トリガ補正部24に出力する。
【0068】
なお、本明細書において、レーザ装置2aのレーザ発振動作は、固体レーザ装置10aをレーザ発振させ、固体レーザ装置10aから出力されるバーストシードパルス光BSPに同期させてエキシマ増幅器20aを放電させることを含む場合がある。
【0069】
トリガ補正部24は、前述の時間Tpacを充電電圧Vの設定値に基づいて補正し、第1の内部トリガ信号Tr1が入力されてから時間Tpacの経過後に、スイッチ信号Sを生成してスイッチ22aに入力する。スイッチ信号Sによりスイッチ22aがオン状態となると、時間Tpasの経過後に、放電空間において放電が開始する。放電の開始タイミングは、第2の光センサ71が検出される。なお、トリガ補正部24による時間Tpacの補正により、時間Tpatが常に一定となるように制御される。
【0070】
同期回路60は、第1の内部トリガ信号Tr1を出力してから、トリガ遅延時間Tmodの経過後に、第2の内部トリガ信号Tr2を生成してバーストパルス生成器16に出力する。バーストパルス生成器16は、第2の内部トリガ信号Tr2が入力されると、一定時間Tmo0の経過後に、バーストパルス信号BPSを半導体光増幅器12に入力する。
【0071】
半導体光増幅器12は、バーストパルス信号BPSの入力に応じてバースト状のシードパルス光を生成する。このシードパルス光が、チタンサファイア増幅器13により増幅され、波長変換システム14により波長変換が行われた結果、バーストシードパルス光BSPが固体レーザ装置10aから出力される。バーストシードパルス光BSPの出力タイミングは、第1の光センサ70により検出される。
【0072】
固体レーザ装置10aから出力されたバーストシードパルス光BSPは、エキシマ増幅器20aの放電空間に入射する。放電空間では、バーストシードパルス光BSPが入射するとほぼ同時に、前述の放電が生じ、バーストシードパルス光BSPを増幅する。増幅されたバーストシードパルス光BSPは、増幅バーストパルス光BAPとしてエキシマ増幅器20aから出力される。
【0073】
2.3.2 トリガ遅延時間の補正処理
固体レーザ装置10aからのバーストシードパルス光BSPの出力タイミングは、トリガ遅延時間Tmodにより調整される。トリガ遅延時間Tmodは、バーストシードパルス光BSPが固体レーザ装置10aから出力されてから放電空間に入射するまでの時間が、目標遅延時間Dtとなるように設定される。この目標遅延時間Dtは、バーストシードパルス光BSPが固体レーザ装置10aから出力されてから放電が開始するまでの所要時間である。
【0074】
バーストシードパルス光BSPの出力タイミングが適正である場合には、バーストシードパルス光BSPが放電空間に入射するタイミングと、放電空間で放電が生じるタイミングとがほぼ一致し、バーストシードパルス光BSPの増幅効率が高い。この場合、タイマ73により計測される遅延時間の計測値Dは、目標遅延時間Dtにほぼ一致する。
【0075】
しかしながら、何らかの原因によってバーストシードパルス光BSPの出力タイミングにずれが生じ、出力タイミングが非適性である場合には、バーストシードパルス光BSPが放電空間に入射するタイミングと、放電空間で放電が生じるタイミングとにずれが生じ、バーストシードパルス光BSPの増幅効率が低下する。この場合、遅延時間の計測値Dと目標遅延時間Dtとの間に差異が生じる。
【0076】
図10は、遅延時間の計測値Dを目標遅延時間Dtに近づけるためのトリガ遅延時間Tmodの補正動作を説明するフローチャートである。この補正動作は、レーザ発振動作中に実行される。以下、この補正動作について説明する。
【0077】
トリガ遅延時間Tmodの補正動作は、レーザ照射制御部3aにより、シャッタ40を開状態して実行される。まず、レーザ制御部50は、トリガ遅延時間Tmodを初期値Tmod0に設定する(ステップS10)。次に、レーザ制御部50は、トリガ遅延時間Tmodのデータを同期回路60に送信する(ステップS11)。次に、レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtを読み込む(ステップS12)。
【0078】
次に、レーザ制御部50は、発光トリガ信号Tr0を生成して同期回路60に入力する(ステップS13)。このとき、レーザ制御部50は、発光トリガ信号Tr0を、レーザ照射制御部3aから受信することなく、自ら生成して同期回路60に入力する。同期回路60は、発光トリガ信号Tr0が入力されると、第1の内部トリガ信号Tr1を出力し、第1の内部トリガ信号Tr1を出力してからトリガ遅延時間Tmodの経過後に、第2の内部トリガ信号Tr2を出力する。これにより、固体レーザ装置10aからのバーストシードパルス光BSPの出力と、エキシマ増幅器20aの放電とが行われる。
【0079】
タイマ73には、バーストシードパルス光BSPの出力タイミングを検出する第1の光センサ70から第1の検出信号D1が入力され、放電タイミングを検出する第2の光センサ71から第2の検出信号D2が入力される。タイマ73は、第1の検出信号D1と第2の検出信号D2に基づいて遅延時間を計測し、計測値Dをレーザ制御部50に出力する(ステップS14)。
【0080】
レーザ制御部50は、遅延時間の計測値Dと目標遅延時間Dtとの差ΔDを、下式(3)に基づいて算出する(ステップS15)。
ΔD=D−Dt ・・・(3)
【0081】
そして、レーザ制御部50は、差ΔDを算出すると、トリガ遅延時間Tmodを補正する(ステップS16)。具体的には、トリガ遅延時間Tmodに差ΔDを加算した値を、新たにトリガ遅延時間Tmodとする。これにより、トリガ遅延時間Tmodと目標遅延時間Dtとの関係が適正化される。レーザ制御部50は、補正されたトリガ遅延時間Tmodのデータを同期回路60に送信する(ステップS17)。
【0082】
次に、レーザ制御部50は、レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtが更新されたか否かを判定する(ステップS18)。この目標遅延時間Dtの更新は、後述する発振制御中に行われる。レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtが更新されていない場合には(ステップS18でNO)、処理をステップS13に戻す。レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtが更新された場合には(ステップS18でYES)、処理をステップS12に戻す。
【0083】
2.3.3 発振制御
図11A及び
図11Bは、レーザ装置2aの実動作時の発振制御フローを示すフローチャートである。
図11Aは、本発振動作の前に行う発振準備動作に対応する部分である。
図11Bは、本発振動作に対応する部分である。
【0084】
以下、レーザ装置2aの発振制御について説明する。まず、レーザ制御部50は、シャッタ40を閉状態とする(ステップS20)。次に、レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aから目標バーストパルスデータBPDtを受信する(ステップS21)。このステップS21において、レーザ制御部50は、
図12のフローチャートに示す処理を行う。レーザ制御部50は、受信した目標バーストパルスデータBPDtから、目標バーストパルスエネルギEt、目標周波数ft、目標パルス幅Twf、及びパルス数mを取得する(ステップS40)。
【0085】
次に、レーザ制御部50は、目標周波数ftを用い、下式(4)に基づいて、目標パルス間隔Tdt(n)を算出する(ステップS41)。
Tdt(n)=(n−1)/ft ・・・(4)
ここで、n=1,2,・・・mである。
【0086】
そして、レーザ制御部50は、目標パルス幅Twfを用い、下式(5)に基づいて、目標パルス幅Twt(n)を算出する(ステップS42)。
Twt(n)=Twt ・・・(5)
すなわち、本実施形態では、レーザ制御部50は、目標パルス幅Twt(n)を、全て一定値Twfとする。
【0087】
図11Aに戻り、レーザ制御部50は、バーストパルス生成器16に設定データを送信する(ステップS22)。このステップS22において、レーザ制御部50は、
図13のフローチャートに示す処理を行う。設定データは、信号強度Ipg(n)と、パルス間隔Tdg(n)と、パルス幅Twg(n)と、パルス数mと、を含む。
【0088】
まず、レーザ制御部50は、下式(6)に示すように、信号強度Ipg(n)を設定する(ステップS50)。
Ipg(n)=Ipg0 ・・・(6)
すなわち、信号強度Ipg(n)には、一定値Ipg0が設定される。一定値Ipg0は、例えば、目標バーストパルスエネルギEtにより決定される。
【0089】
次に、レーザ制御部50は、下式(7)に示すように、パルス間隔Tdg(n)を設定する(ステップS51)。
Tdg(n)=Tdt(n) ・・・(7)
すなわち、パルス間隔Tdg(n)には、目標パルス間隔Tdt(n)が設定される。
【0090】
レーザ制御部50は、下式(8)に示すように、パルス幅Twg(n)を設定する(ステップS52)。
Twg(n)=Twt(n) ・・・(8)
すなわち、パルス幅Twg(n)には、目標パルス幅Twt(n)が設定される。
【0091】
レーザ制御部50は、ステップS50〜S52において設定された信号強度Ipg(n)、パルス間隔Tdg(n)、及びパルス幅Twg(n)を含む設定データを、バーストパルス生成器16に送信する(ステップS53)。
【0092】
図11Aに戻り、レーザ制御部50は、充電器23の充電電圧Vを一定値V0とし(ステップS23)、充電電圧Vを一定としたまま固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aにレーザ発振動作を行わせる(ステップS24)。具体的には、レーザ制御部50は、発光トリガ信号Tr0を、レーザ照射制御部3aから受信することなく、自ら生成して同期回路60に入力する。発光トリガ信号Tr0は、所定の繰り返し周波数Rpで同期回路60に入力される。固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aは、発光トリガ信号Tr0に同期して前述のレーザ発振動作を行う。
【0093】
このレーザ発振動作に同期して、
図14のフローチャートに示すように、エネルギセンサ33によりバーストパルスエネルギの計測が行われる。エネルギセンサ33は、増幅バーストパルス光BAPの入射を検出することにより、エキシマ増幅器20aにおいて放電が生じたか否かを検出する(ステップS60)。エネルギセンサ33は、放電を検出すると(ステップS60でYES)、バーストパルスエネルギを計測する(ステップS61)。レーザ制御部50は、エネルギセンサ33からバーストパルスエネルギの計測値Eを受信し、図示しないメモリに書き込む(ステップS62)。この後、放電が生じるたびにステップS61及びステップS62の処理が行われる。
【0094】
図11Aに戻り、レーザ制御部50は、レーザ発振動作中に、前述の目標遅延時間Dtを最適化する(ステップS25)。このステップS25において、レーザ制御部50は、
図15のフローチャートに示す処理を行う。まず、レーザ制御部50は、カウンタJの値を「1」とし(ステップS70)、目標遅延時間Dtを初期値Dt0に設定する(ステップS71)。この初期値Dt0は、前述のトリガ遅延時間Tmodの初期値Tmod0に対応する値である。レーザ制御部50は、同期回路60にトリガ遅延時間Tmodとして初期値Tmod0を設定する。
【0095】
レーザ制御部50は、エネルギセンサ33によりバーストパルスエネルギが計測され、メモリに記憶された計測値Eが更新されたか否かを判定する(ステップS72)。レーザ制御部50は、計測値Eが更新されると(ステップS72でYES)、計測値Eをメモリから読み出し(ステップS73)、
図16に示すテーブルT1に、カウンタJに対応付けて書き込む(ステップS74)。
図16において、E(J)は、カウンタJに対応する計測値Eを表している。
【0096】
また、レーザ制御部50は、タイマ73から遅延時間の計測値Dを受信し(ステップS75)、受信した計測値Dを、テーブルT1に、カウンタJに対応付けて書き込む(ステップS76)。
図16において、D(J)は、カウンタJに対応する計測値Dを表している。
【0097】
レーザ制御部50は、カウンタJが最大値Jmaxであるか否かを判定する(ステップS77)。レーザ制御部50は、カウンタJが最大値Jmaxでない場合には(ステップS77でNO)、現在の目標遅延時間Dtに一定時間ΔDtを加算した値を目標遅延時間Dtとして設定する(ステップS78)。このとき、レーザ制御部50は、トリガ遅延時間Tmodから一定時間ΔDtから一定時間ΔDtを減算した値を、同期回路60にトリガ遅延時間Tmodとして設定する。そして、現在のカウンタJに1を加算して(ステップS79)、ステップS72に戻る。
【0098】
カウンタJが最大値Jmaxとなるまでの間は、ステップS72〜ステップS79の処理が繰り返し行われる。カウンタJが最大値Jmaxとなると(ステップS77でYES)、レーザ制御部50は、テーブルT1からE(J)が最大となるD(J)を取得し、これを最適遅延時間Doptとする(ステップS80)。そして、レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtを最適遅延時間Doptに設定する(ステップS81)。このとき、レーザ制御部50は、最適遅延時間Doptに対応するトリガ遅延時間Tmodを同期回路60に設定する。
【0099】
図11Aに戻り、レーザ制御部50は、バーストパルスエネルギのフィードバック制御(エネルギフィードバック制御)を行う(ステップS26)。このステップS26において、レーザ制御部50は、
図17のフローチャートに示す処理を行う。レーザ制御部50は、エネルギセンサ33によりバーストパルスエネルギが計測され、メモリに記憶された計測値Eが更新されたか否かを判定する(ステップS90)。レーザ制御部50は、計測値Eが更新された場合(ステップS90でYES)、計測値Eをメモリから読み出す(ステップS91)。
【0100】
次に、レーザ制御部50は、下式(9)に基づいて、バーストパルスエネルギの計測値Eと、目標バーストパルスエネルギEtと差ΔEを算出する。
ΔE=E−Et ・・・(9)
【0101】
そして、レーザ制御部50は、差ΔEが、下式(10)で表される許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS93)。
|ΔE|≦ΔEmax ・・・(10)
【0102】
レーザ制御部50は、差ΔEが許容範囲内である場合には(ステップS93でYES)、フラグF1を「0」に設定する(ステップS94)。一方、レーザ制御部50は、差ΔEが許容範囲外である場合には(ステップS93でNO)、フラグF1を「1」に設定する(ステップS95)。そして、レーザ制御部50は、差ΔEに基づいて充電電圧Vを補正する(ステップS96)。具体的には、レーザ制御部50は、差ΔEに所定のゲイン値Gを乗じた値を、現在の充電電圧Vの設定値から減算した値を、新たに充電電圧Vとして設定する。
【0103】
図11Aに戻り、レーザ制御部50は、フラグF1が「0」であるか否かを判定する(ステップS27)。レーザ制御部50は、フラグF1が「0」でない場合には(ステップS27でNO)、ステップS26に戻り、バーストパルスエネルギのフィードバック制御を再び実行する。一方、レーザ制御部50は、フラグF1が「0」である場合には(ステップS27でYES)、固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aのレーザ発振動作を停止させ(ステップS28)、シャッタ40を開状態とする(ステップS29)。以上で、レーザ発振の準備動作が終了する。
【0104】
次に、
図11Bに移り、レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aに照射許可信号Psを送信する(ステップS30)。レーザ制御部50がレーザ照射制御部3aから発光トリガ信号Tr0を受信すると、受信した発光トリガ信号Tr0を同期回路60に入力することにより、固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aにレーザ発振動作を行わせる。発光トリガ信号Tr0は、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50に繰り返し周波数Rpで送信される。
【0105】
レーザ制御部50は、バーストパルスエネルギのフィードバック制御を行う(ステップS31)。このステップS31は、ステップS26と同様であるので説明は省略する。レーザ制御部50は、フラグF1が「0」であるか否かを判定する(ステップS32)。レーザ制御部50は、フラグF1が「0」でない場合には(ステップS32でNO)、シャッタ40を閉状態とし(ステップS34)、処理を、発振準備動作のステップS23に戻す。
【0106】
レーザ制御部50は、フラグF1が「0」である場合には(ステップS32でYES)、レーザ照射制御部3aから受信する目標バーストパルスデータBPDtが更新されたか否かを判定する(ステップS33)。レーザ制御部50は、目標バーストパルスデータBPDtが更新されいな場合には(ステップS33でNO)、ステップS31に戻り、再びバーストパルスエネルギのフィードバック制御を行う。一方、レーザ制御部50は、目標バーストパルスデータBPDtが更新された場合には(ステップS33でYES)、処理を、発振準備動作のステップS20に戻す。
【0107】
なお、上記動作において説明を省略しているが、レーザ制御部50は、波長モニタ34による波長の計測値λの取得と、計測値λと目標波長λtとに基づく半導体レーザ11の波長制御とを適宜行う。
【0108】
2.4 効果
第1の実施形態では、タイマ73の計測値Dに基づくトリガ遅延時間Tmodの補正処理に加えて、バーストパルスエネルギの計測値Eに基づき、目標遅延時間Dtの適正化が行われる。目標遅延時間Dtの適正化は、計測値Eが最大となる最適遅延時間Doptを検出する動作である。したがって、第1の実施形態によれば、放電空間へのバーストシードパルス光BSPの入射タイミングと放電タイミングとのずれが最小化され、バーストパルスエネルギが最大化される。さらに、第1の実施形態によれば、放電空間におけるバーストシードパルス光BSPの増幅効率が安定化し、バーストパルスエネルギが安定化するという効果が得られる。
【0109】
なお、第1の実施形態では、波長モニタ34により波長計測を行っているが、高精度な波長制御が不要である場合には、波長モニタ34を省略してもよい。
【0110】
また、第1の実施形態では、固体レーザ装置10aからのバーストシードパルス光BSPの出力タイミングを検出するために、第1の光センサ70及びビームスプリッタ72を設けているが、これらを省略することも可能である。これは、固体レーザ装置10aでは、第2の内部トリガ信号Tr2の入力に対するバーストシードパルス光BSPの出力タイミングのジッタが小さいためである。第1の光センサ70及びビームスプリッタ72を配置せず、タイマ73にレーザ制御部50から第2の内部トリガ信号Tr2を送信してもよい。この場合、タイマ73は、レーザ制御部50から第2の内部トリガ信号Tr2を受信してから、第2の光センサ71から第2の検出信号D2を受信した時点までの遅延時間を、上記計測値Dとして計測する。
【0111】
また、第1の実施形態では、第2の光センサ71により放電タイミングを検出しているが、第2の光センサ71を設けずに、エネルギセンサ33により放電タイミングを算出してもよい。
【0112】
3.第2の実施形態
次に、本開示の第2の実施形態に係るレーザ装置について説明する。第2の実施形態に係るレーザ装置は、第1の実施形態に係るレーザ装置の機能に加えて、レーザ照射装置3に供給する増幅バーストパルス光BAPの波形を制御する機能を含む。以下では、第1の実施形態に係るレーザ装置2aの構成要素と同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0113】
3.1 構成
図18は、第2の実施形態に係るレーザ装置2bの構成を概略的に示す。レーザ装置2bは、モニタモジュール30とレーザ制御部50との間にパルス波形解析部80を含み、モニタモジュール30が、エネルギセンサ33に代えて光センサ33aを備えている。レーザ装置2bのその他の構成は、第1の実施形態に係るレーザ装置2aの構成と基本的に同一である。
【0114】
光センサ33aは、増幅バーストパルス光BAPに含まれるm個のパルスP
1〜P
mの各光強度波形を計測可能とする高速の光強度センサであり、フォトダイオードまたは光電管により構成されている。光センサ33aは、検出した各パルスの光強度波形を電圧信号として出力する。高速の光強度センサの具体例として、PINフォトダイオードやバイプラナー管があげられる。
【0115】
パルス波形解析部80は、光センサ33aに接続されている。パルス波形解析部80は、光センサ33aから入力された電圧信号を、高速でAD(Analog to Digital)変換し、パルス波形データとして図示しないメモリに書き込む。パルス波形解析部80は、例えば、1ns以下のサンプリング周期でADを行う。また、パルス波形解析部80は、メモリに書き込んだパルス波形データに基づき、各パルスの特徴を表す複数のパラメータを計測し、各計測値をレーザ制御部50に入力する。このパラメータには、各パルスのピーク強度と、パルス間隔と、パルス幅と、バーストパルスエネルギと、が含まれる。
【0116】
本実施形態では、バーストパルスエネルギの計測値Eは、パルス波形解析部80がパルス波形を積分することにより得られる。なお、パルス波形解析部80は、図示しないアナログ積分回路によって出力波形のピーク値を読み取ることにより、バーストパルスエネルギを計測してもよい。このアナログ積分回路は、エキシマ増幅器20aの1回の放電で増幅された増幅バーストパルス光BAPの全体のパルスエネルギを積分可能な回路であってもよい。このアナログ積分回路の積分時間は、エキシマ増幅器20aの放電時間以上であってもよく、例えば、数十ns以上数μs以下であってもよい。また、パルス波形解析部80は、デジタル形式のパルス波形を積分処理することによりバーストパルスエネルギを計測してもよい。
【0117】
また、本実施形態では、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50に送信される目標バーストパルスデータBPDtは、増幅バーストパルス光BAPに含まれる複数のパルスを規定するパラメータと、目標バーストパルスエネルギEtとを含む。具体的には、目標バーストパルスデータBPDtは、各パルスの目標ピーク強度Ipt(n)、目標パルス間隔Tdt(n)、目標パルス幅Twt(n)、及びパルス数mを含む。
【0118】
3.2 動作
3.2.1 基本動作タイミング
図19は、第2の実施形態に係るレーザ装置2bのレーザ発振動作における基本的な動作タイミングを示す。本実施形態では、
図19に示すように、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスのピーク強度がほぼ等しくなるようにバーストパルス信号BPSの各信号強度が調整されている。これは、バーストパルス信号BPSの各信号強度を一定とすると、放電波形WFの形状に応じて増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスのピーク強度が変化するためである。
【0119】
3.2.2 トリガ遅延時間の補正処理
第2の実施形態におけるトリガ遅延時間Tmodの補正処理は、第1の実施形態と同様である。本実施形態においても、
図10のフローチャートに示す処理が行われ、トリガ遅延時間Tmodと目標遅延時間Dtとの関係が適正化される。
【0120】
2.3.3 発振制御
図20A及び
図20Bは、レーザ装置2bの実動作時の発振制御フローを示すフローチャートである。
図20Aは、本発振動作の前に行う発振準備動作に対応する部分である。
図20Bは、本発振動作に対応する部分である。
【0121】
以下、レーザ装置2bの発振制御について説明する。第1の実施形態と同様に、レーザ制御部50は、シャッタ40を閉状態とし(ステップS100)、レーザ照射制御部3aから目標バーストパルスデータBPDtを受信する(ステップS101)。このステップS101において、レーザ制御部50は、
図21に示す処理を行う。レーザ制御部50は、受信した目標バーストパルスデータBPDtから、目標バーストパルスエネルギEt、目標ピーク強度Ipt(n)、目標パルス間隔Tdt(n)、目標パルス幅Twt(n)、及びパルス数mを取得する(ステップS120)。
【0122】
次に、レーザ制御部50は、バーストパルス生成器16に設定データを送信する(ステップS102)。設定データは、信号強度Ipg(n)と、パルス間隔Tdg(n)と、パルス幅Twg(n)と、パルス数mと、を含む。レーザ制御部50は、下式(11)〜(13)に示すように、設定データを生成してバーストパルス生成器16に送信する。
Ipg(n)=Ipt(n) ・・・(11)
Tdg(n)=Tdt(n) ・・・(12)
Twg(n)=Tdt(n) ・・・(13)
ここで、n=1,2,・・・mである。
【0123】
次に、レーザ制御部50は、第1の実施形態と同様に、充電器23の充電電圧Vを一定値V0とし(ステップS103)、充電電圧Vを一定としたまま固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aにレーザ発振動作を行わせる(ステップS104)。このレーザ発振動作に同期して、
図22のフローチャートに示すように、パルス波形解析部80によりパルス波形解析が行われる。まず、パルス波形解析部80は、カウンタIの値を「1」とする(ステップS130)。次に、パルス波形解析部80は、光センサ33aが増幅バーストパルス光BAPを検出したことを検知することにより、エキシマ増幅器20aにおいて放電が生じたか否かを検出する(ステップS60)。
【0124】
パルス波形解析部80は、放電を検出すると(ステップS131でYES)、光センサ33aの出力信号に基づいて、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスのパルス波形を計測し、パルス波形データとしてメモリに書き込む(ステップS132)。パルス波形解析部80は、カウンタIが最大値Imaxであるか否かを判定する(ステップS133)。パルス波形解析部80は、カウンタIが最大値Imaxでない場合には(ステップS133でNO)、現在のカウンタIに1を加算して(ステップS134)、ステップS131に戻る。
【0125】
カウンタIが最大値Imaxとなるまでの間は、ステップS131〜ステップS134の処理が繰り返し行われる。カウンタIが最大値Imaxとなると(ステップS133でYES)、パルス波形解析部80は、メモリに記憶された複数のパルス波形データを読み出し、これらを平均化する(ステップS135)。具体的には、パルス波形解析部80は、メモリに記憶されたImax個のパルス波形データを積算し、Imaxで除算することにより平均化する。最大値Imaxは、例えば、1〜10000の範囲内の値である。
【0126】
そして、パルス波形解析部80は、平均化したパルス波形データに基づき、バーストパルスエネルギ、ピーク強度、パルス間隔、目標パルス幅を計測する(ステップS136)。パルス波形解析部80は、計測した各パルスの計測データE,Ip(n),Td(n),Tw(n)を、
図23に示すテーブルT2に書き込む(ステップS137)。パルス波形解析部80は、例えば、各パルスの半値全幅を測定することによりTw(n)を求める。この後、放電が生じるたびにステップS130〜ステップS137の処理が行われる。
【0127】
図20Aに戻り、レーザ制御部50は、レーザ発振動作中に、前述の目標遅延時間Dtを最適化する(ステップS105)。このステップS105において、レーザ制御部50は、
図24のフローチャートに示す処理を行う。ステップS143〜ステップS144、及びステップS151のみが、第1の実施形態と異なる。まず、レーザ制御部50は、カウンタJの値を「1」とし(ステップS141)、目標遅延時間Dtを初期値Dt0に設定する(ステップS142)。
【0128】
レーザ制御部50は、テーブルT2に記憶された計測データが更新されたか否かを判定する(ステップS143)。レーザ制御部50は、計測データが更新されると(ステップS143でYES)、テーブルT2からピーク強度の計測値Ip(n)を読み出す(ステップS144)。レーザ制御部50は、読み出した計測値Ip(n)を、下式(14)に示すように加算することにより、ピーク強度の加算値Isum(J)を算出する(ステップS145)。加算値Isum(J)は、バーストパルスエネルギに対応する。
Isum(J)=Ip(1)+Ip(2)+・・・+Ip(m) ・・・(14)
【0129】
レーザ制御部50は、算出した加算値Isum(J)を、
図25に示すテーブルT3に、カウンタJに対応付けて書き込む(ステップS146)。また、レーザ制御部50は、タイマ73から遅延時間の計測値Dを受信し(ステップS147)、受信した計測値Dを、テーブルT3に、カウンタJに対応付けて書き込む(ステップS148)。
【0130】
レーザ制御部50は、カウンタJが最大値Jmaxであるか否かを判定する(ステップS148)。レーザ制御部50は、カウンタJが最大値Jmaxでない場合には(ステップS148でNO)、現在の目標遅延時間Dtに一定時間ΔDtを加算した値を目標遅延時間Dtとして設定する(ステップS149)。そして、現在のカウンタJに「1」を加算して(ステップS150)、ステップS143に戻る。
【0131】
カウンタJが最大値Jmaxとなるまでの間は、ステップS143〜ステップS150の処理が繰り返し行われる。カウンタJが最大値Jmaxとなると(ステップS148でYES)、レーザ制御部50は、テーブルT1からIsum(J)が最大となるD(J)を取得し、これを最適遅延時間Doptとする(ステップS151)。そして、レーザ制御部50は、目標遅延時間Dtを最適遅延時間Doptに設定する(ステップS152)。このとき、レーザ制御部50は、最適遅延時間Doptに対応するトリガ遅延時間Tmodを同期回路60に設定する。
【0132】
図20Aに戻り、レーザ制御部50は、バーストパルスのパラメータフィードバック制御を行う(ステップS106)。このステップS106において、レーザ制御部50は、
図26のフローチャートに示す処理を行う。レーザ制御部50は、テーブルT2に記憶された計測データが更新されたか否かを判定する(ステップS160)。レーザ制御部50は、計測データが更新されると(ステップS160でYES)、テーブルT2からピーク強度の計測値Ip(n)と、パルス幅の計測値Tw(n)とを読み出す(ステップS161)。
【0133】
次に、レーザ制御部50は、計測波形の目標波形との差を算出する(ステップS162)。具体的には、レーザ制御部50は、下式(15)に基づいて、ピーク強度の計測値Ip(n)と目標ピーク強度Ipt(n)との差ΔIp(n)を算出する。また、レーザ制御部50は、下式(16)に基づいて、パルス幅の計測値Tw(n)と目標パルス幅Twt(n)との差ΔTw(n)を算出する(ステップS162)。
ΔIp(n)=Ip(n)−Ipt(n) ・・・(15)
ΔTw(n)=Tw(n)−Twt(n) ・・・(16)
ここでは、パルス間隔の計測値Td(n)と目標パルス間隔Tdt(n)との差は算出していないが、これには限定されず、当該差を算出してもよい。
【0134】
レーザ制御部50は、計測波形と目標波形との差が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS163)。具体的には、レーザ制御部50は、差ΔIp(n)が、下式(17)で表される許容範囲内であり、かつ、差ΔTw(n)が、下式(18)で表される許容範囲内であるか否かを判定する。
|ΔIp(n)|≦ΔIpmax(n) ・・・(17)
|ΔTw(n)|≦ΔTwmax(n) ・・・(18)
【0135】
レーザ制御部50は、差ΔIp(n)及び差ΔTw(n)がそれぞれ許容範囲内である場合には(ステップS163でYES)、フラグF2を「0」に設定する(ステップS164)。一方、レーザ制御部50は、差ΔIp(n)と差ΔTw(n)とのうち少なくともいずれか1つが許容範囲外である場合には(ステップS163でNO)、フラグF2を「1」に設定する(ステップS165)。
【0136】
レーザ制御部50は、差ΔIp(n)及び差ΔTw(n)に基づいて、バーストパルス信号BPSを補正する(ステップS166)。具体的には、バーストパルス信号BPSのうちの信号強度Ipg(n)とパルス幅Twg(n)とを補正する。レーザ制御部50は、差ΔIp(n)に所定のゲイン値Knを乗じた値を、現在の信号強度Ipg(n)から減算した値を、新たに信号強度Ipg(n)として設定する。また、レーザ制御部50は、差ΔTw(n)に所定のゲイン値Lnを乗じた値を、現在のパルス幅Twg(n)から減算した値を、新たにパルス幅Twg(n)として設定する。
【0137】
レーザ制御部50は、補正したバーストパルス信号BPSを、バーストパルス生成器16に送信する(ステップS167)。これにより、固体レーザ装置10aからバーストシードパルス光BSPの波形が補正される。
【0138】
図20Aに戻り、フラグF2が「0」であるか否かを判定する(ステップS107)。レーザ制御部50は、フラグF2が「0」でない場合には(ステップS107でNO)、ステップS106に戻り、再びバーストパルスのパラメータフィードバック制御を行う。一方、レーザ制御部50は、フラグF2が「0」である場合には(ステップS107でYES)、ステップS108に移行し、バーストパルスエネルギのフィードバック制御を行う。このステップS108は、
図17のフローチャートにより説明した第1の実施形態のステップS26と同一であるので説明は省略する。なお、ステップS108におけるバーストパルスエネルギの計測値Eとして、パルス波形解析部80がパルス波形を積分処理することにより計測したものを用いてもよいが、前述の加算値Isum(J)を用いてもよい。
【0139】
レーザ制御部50は、フラグF1が「0」であるか否かを判定し(ステップS109)、フラグF1が「0」でない場合には(ステップS109でNO)、ステップS108に戻り、バーストパルスエネルギのフィードバック制御を再び実行する。一方、レーザ制御部50は、フラグF1が「0」である場合には(ステップS109でYES)、固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aのレーザ発振動作を停止させ(ステップS110)、シャッタ40を開状態とする(ステップS111)。以上で、レーザ発振の準備動作が終了する。
【0140】
次に、
図20Bに移り、レーザ制御部50は、レーザ照射制御部3aに照射許可信号Psを送信する(ステップS112)。レーザ制御部50がレーザ照射制御部3aから発光トリガ信号Tr0を受信すると、受信した発光トリガ信号Tr0を同期回路60に入力することにより、固体レーザ装置10a及びエキシマ増幅器20aにレーザ発振動作を行わせる。発光トリガ信号Tr0は、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50に繰り返し周波数Rpで送信される。
【0141】
次に、レーザ制御部50は、テーブルT2に記憶されたバーストパルスエネルギの計測データが更新されたか否かを判定する(ステップS113)。レーザ制御部50は、計測データが更新されていない場合(ステップS113でNO)、ステップS113の判定を繰り返し実行する。レーザ制御部50は、計測データが更新されると(ステップS113でYES)、ステップS114に移行する。ステップS114において、レーザ制御部50は、バーストパルスエネルギのフィードバック制御を行う。このステップS114は、ステップS108と同様であるので説明は省略する。次に、バーストパルスのパラメータフィードバック制御を行う(ステップS115)。このステップS115は、ステップS106と同様であるので説明は省略する。
【0142】
レーザ制御部50は、フラグF1及びフラグF2が共に「0」であるか否かを判定する(ステップS116)。レーザ制御部50は、フラグF1又はフラグF2が「0」でない場合には(ステップS116でNO)、シャッタ40を閉状態とし(ステップS118)、処理を、発振準備動作のステップS103に戻す。
【0143】
レーザ制御部50は、フラグF1及びフラグF2が共に「0」である場合には(ステップS116でYES)、レーザ照射制御部3aから受信する目標バーストパルスデータBPDtが更新されたか否かを判定する(ステップS117)。レーザ制御部50は、目標バーストパルスデータBPDtが更新されいな場合には(ステップS117でNO)、ステップS113に戻る。一方、レーザ制御部50は、目標バーストパルスデータBPDtが更新された場合には(ステップS117でYES)、処理を、発振準備動作のステップS100に戻す。
【0144】
レーザ制御部50は、第1の実施形態と同様に、レーザ制御部50は、波長モニタ34による波長の計測値λの取得と、計測値λと目標波長λtとに基づく半導体レーザ11の波長制御とを適宜行う。
【0145】
3.3 効果
第2の実施形態では、増幅バーストパルス光BAPの波形を制御することを可能とする。また、第2の実施形態では、レーザ照射装置3に供給する増幅バーストパルス光BAPの計測波形と目標波形との差を計測し、差が小さくなるようにバーストシードパルス光BSPの波形を補正することを可能とする。すなわち、第2の実施形態では、増幅バーストパルス光BAPの波形を、目標バーストパルスデータBPDtに基づき、目標波形に近づけることを可能とする。
【0146】
なお、第2の実施形態では、目標遅延時間Dtの最適化処理において、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスのピーク強度を加算した加算値Isum(J)に基づいて最適遅延時間Doptを求めている。これに代えて、第1の実施形態と同様に、バーストパルスエネルギの計測値E(J)に基づいて最適遅延時間Doptを求めてもよい。この場合、モニタモジュール30内に、光センサ33aとは別に、第1の実施形態と同様のエネルギセンサ33を設け、エネルギセンサ33によりバーストパルスエネルギを計測することも好ましい。エネルギセンサ33に光を導くためのビームスプリッタをさらに設けてもよい。
【0147】
4.第3の実施形態
次に、本開示の第3の実施形態に係るレーザ装置について説明する。第3の実施形態に係るレーザ装置は、第2の実施形態に係るレーザ装置の機能に加えて、レーザ照射装置3に供給する増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスの波長を制御する機能を含む。以下では、第2の実施形態に係るレーザ装置2bの構成要素と同じ部分については、同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0148】
4.1 構成
図27及び
図28は、第3の実施形態に係るレーザ装置2bの構成を概略的に示す。レーザ装置2bは、バーストパルス光の1パルスごとに波長を変更することを可能とする固体レーザ装置10bを含み、波長モニタ34が1パルスごとに波長を計測することを可能とする。レーザ装置2cのその他の構成は、第2の実施形態に係るレーザ装置2bの構成と基本的に同一である。
【0149】
本実施形態では、波長モニタ34は、増幅バーストパルス光BAPに含まれるm個のパルスP
1〜P
mについてそれぞれ波長を計測する。波長モニタ34は、各パルスP
nの計測波長を、計測波長データλ(n)としてレーザ制御部50に出力する。また、本実施形態では、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50に、各パルスP
nに対する目標波長λt(n)が送信される。
【0150】
図28に示すように、固体レーザ装置10bは、第1〜第mの半導体レーザ111〜11mと、第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mと、ビームコンバイナ90と、を含む。また、固体レーザ装置10bは、チタンサファイア増幅器13と、波長変換システム14と、固体レーザ制御部15と、バーストパルス生成器16と、を含む。ここで、mは、前述のパルス数mに対応する。
【0151】
第1〜第mの半導体レーザ111〜11mのそれぞれは、第1及び第2の実施形態における半導体レーザ11と同一の構成である。第1〜第mの半導体レーザ111〜11mのそれぞれには、個別に波長データが設定される。レーザ制御部50は、第nの半導体レーザ11nに対して波長データλnを設定する。
【0152】
第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mのそれぞれは、第1及び第2の実施形態における半導体光増幅器12と同一の構成である。第nの半導体光増幅器12nは、第nの半導体レーザ11nに対応する位置に配置されており、第nの半導体レーザ11nから出力されたレーザ光が入射する。第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mには、バーストパルス生成器16からバーストパルス信号BPSが入力される。第nの半導体光増幅器12nには、信号強度Ipg(n)、パルス幅Twg(n)、及びパルス間隔Tdg(n)に対応したパルス信号G
nが入力される
【0153】
ビームコンバイナ90は、複数の高反射ミラー91と、複数のハーフミラー92と、を含んで構成されている。高反射ミラー91とハーフミラー92との数は、パルス数mに応じて適宜変更される。ビームコンバイナ90は、第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mから出力された複数のレーザ光を、1つの光路軸に一致するように光路を結合して出力する。ビームコンバイナ90からの出力光の光路上には、前述のチタンサファイア増幅器13及び波長変換システム14が配置されている。
【0154】
固体レーザ装置10bは、第1〜第mの半導体レーザ111〜11mに設定する波長データλ1〜λmを制御することにより、固体レーザ装置10bから出力されるバーストシードパルス光BSPの各パルスの波長を個別に変更することを可能とする。
【0155】
4.2 動作
4.2.1 発振制御
図29A及び
図29Bは、レーザ装置2cの実動作時の発振制御フローを示すフローチャートである。このフローチャートは、
図20A及び
図20Bに示されるフローチャート中に、ステップS200〜ステップS203が追加されている以外は、基本的に第2の実施形態と同一である。ステップS200は、ステップS102とステップS103との間に追加されている。ステップS201及びステップS202は、ステップS105とステップS106との間に追加されている。ステップS203は、ステップS115とステップS116との間に追加されている。
【0156】
以下、第3の実施形態の第2の実施形態との差異について説明する。本実施形態では、ステップS101において、レーザ制御部50は、
図30に示すように、前述の目標バーストパルスデータBPDtに加えて、パルスごとの目標波長λt(n)をレーザ照射制御部3aから受信する(ステップS210)。
【0157】
ステップS200において、レーザ制御部50は、固体レーザ装置10bを介して第1〜第mの半導体レーザ111〜11mに、波長データλ1〜λmを設定する。具体的には、
図31に示すように、レーザ制御部50は、目標波長λt(n)に基づき、下式(19)を満たす波長データλnを算出する(ステップS220)。
λn=4λt(n) ・・・(19)
【0158】
そして、レーザ制御部50は、算出した波長データλ1〜λmを、第1〜第mの半導体レーザ111〜11mに送信する(ステップS221)。
【0159】
本実施形態では、レーザ制御部50は、第2の実施形態において
図22を用いて説明したパルス波形解析制御に加えて、
図32のフローチャートに示す波長計測制御を行う。具体的には、光センサ33a又は第2の光センサ71により、エキシマ増幅器20aにおいて放電が生じたか否かを検出する(ステップS230)。
【0160】
波長モニタ34は、放電を検出すると(ステップS230でYES)、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスの波長を計測する(ステップS231)。レーザ制御部50は、波長モニタ34から計測波長データλ(1)〜λ(m)を受信し、図示しないメモリに書き込む(ステップS232)。この後、放電が生じるたびにステップS231及びステップS232の処理が行われる。
【0161】
ステップS201において、レーザ制御部50は、
図33のフローチャートに示す波長フィードバック制御を行う。具体的には、レーザ制御部50は、メモリに記憶された計測波長データが更新されたか否かを判定する(ステップS240)。レーザ制御部50は、計測波長データが更新されると(ステップS240でYES)、メモリから計測波長データλ(n)を読み出す(ステップS241)。
【0162】
次に、レーザ制御部50は、計測波長と目標波長との差を算出する(ステップS242)。具体的には、レーザ制御部50は、下式(20)に基づいて、計測波長データλ(n)と目標波長λt(n)との差Δλ(n)を算出する。
Δλ(n)=λ(n)−λt(n) ・・・(20)
レーザ制御部50は、この算出を、nが1からmまで行う。
【0163】
レーザ制御部50は、計測波長と目標波長との差が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS243)。具体的には、レーザ制御部50は、差Δλ(n)が、下式(21)で表される許容範囲内であるか否かを判定する。
|Δλ(n)|≦Δλmax(n) ・・・(21)
レーザ制御部50は、この判定を、nが1からmまで行う。
【0164】
レーザ制御部50は、nが1からmまでの全てについて、差Δλ(n)が許容範囲内である場合には(ステップS243でYES)、フラグF3を「0」に設定する(ステップS244)。一方、レーザ制御部50は、nが1からmまでの少なくとも1つについて、差Δλ(n)が許容範囲外である場合には(ステップS243でNO)、フラグF3を「1」に設定する(ステップS245)。
【0165】
レーザ制御部50は、差Δλ(n)に基づいて、波長データλnを補正する(ステップS246)。具体的には、差Δλ(n)に「4」を乗じた値を、波長データλnから減算した値を、新たに波長データλnとする。レーザ制御部50は、補正した計測波長データλ(1)〜λ(m)を、第1〜第mの半導体レーザ111〜11mに送信する(ステップS247)。これにより、固体レーザ装置10aからバーストシードパルス光BSPに含まれる各パルスの波長がそれぞれ補正される。
【0166】
図29AのステップS202において、レーザ制御部50は、フラグF3が「0」であるか否かを判定し、フラグF3が「0」でない場合には(ステップS202でNO)、処理をステップS201に戻す。一方、レーザ制御部50は、フラグF3が「0」である場合には(ステップS202でYES)、処理をステップS106に移行する。
【0167】
図29BのステップS203は、ステップS201と同様であるので説明は省略する。本実施形態では、ステップS203の後のステップS116において、レーザ制御部50は、フラグF1〜F3がすべて「0」であるか否かを判定する。レーザ制御部50は、フラグF1〜F3のうち少なくとも1つが「0」でない場合には(ステップS116でNO)、処理をステップS118に移行する。レーザ制御部50は、フラグF1〜F3がすべて「0」である場合には、処理をステップS117に移行する。
【0168】
本実施形態に係るレーザ装置2cのその他の動作については、第2の実施形態と同様である。
【0169】
4.3 効果
第3の実施形態では、レーザ照射装置3に供給する増幅バーストパルス光BAPの波形に加えて、波形に含まれる各パルスの波長を制御することを可能とする。また、第3の実施形態では、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスの計測波長と目標波長との差を計測し、差が小さくなるように各パルスの波長を補正することを可能とする。
【0170】
なお、第3の実施形態では、波長モニタ34により波長計測を行っているが、高精度な波長制御が不要である場合には、波長モニタ34を省略してもよい。この場合、レーザ制御部50は、固体レーザ装置10aの発振波長を設定し、波長のフィードバック制御を行わなくてもよい。
【0171】
5.固体レーザ装置の変形例
5.1 第1の変形例
5.1.1 構成
以下、固体レーザ装置の第1の変形例について説明する。
図34は、第1の変形例に係る固体レーザ装置10cの構成を示す。固体レーザ装置10cは、第1の固体レーザ装置211と、第2の固体レーザ装置212と、ダイクロイックミラー213と、高反射ミラー214と、波長変換システム215と、同期回路216と、固体レーザ制御部217と、を含む。
【0172】
第1の固体レーザ装置211は、第1の半導体レーザ220と、第1の半導体光増幅器221と、第1の増幅器222と、波長変換部223と、を含む。第1の増幅器222は、ファイバ増幅器222aと、固体増幅器222bと、図示しないCW励起半導体レーザと、を含む。波長変換部223は、LBO結晶223aと、CLBO結晶223bと、を含む。
【0173】
第1の半導体レーザ220は、シングル縦モードであって、波長が約1030nmのCWレーザ光を第1のシード光として出力する。第1の半導体レーザ220は、例えば、分布帰還型の半導体レーザである。第1の半導体光増幅器221は、第1のシード光をパルス増幅して所定のパルス幅のレーザ光を生成する。以下、第1の半導体光増幅器221によって生成されたレーザ光を、第1のシードパルス光という。
【0174】
ファイバ増幅器222aは、Ybがドープされた複数の石英ファイバが多段に接続されたものである。固体増幅器222bは、YbがドープされたYAG結晶である。ファイバ増幅器222a及び固体増幅器222bは、図示しないCW励起半導体レーザから入力されるCW励起光によって光励起される。第1の増幅器222は、第1の半導体光増幅器221から入射する第1のシードパルス光を増幅する。
【0175】
波長変換部223は、第1の増幅器222によって増幅された第1のシードパルス光を波長変換して、第1のパルスレーザ光PL1として出力する。具体的には、波長変換部223は、LBO結晶223aとCLBO結晶223bとを含むことにより、第1のシードパルス光から、波長が約257.5nmの第4高調波光を生成し、これをパルスレーザ光PL1として出力する。
【0176】
第2の固体レーザ装置212は、第2の半導体レーザ230と、第2の半導体光増幅器231と、第2の増幅器232と、バーストパルス生成器233と、を含む。第2の半導体レーザ230、第2の半導体光増幅器231、及びバーストパルス生成器233は、バーストシードパルス生成器234を構成している。第2の増幅器232は、ErとYbが共にドープされた複数の石英ファイバが多段に接続された図示しないErファイバ増幅器と、図示しないCW励起半導体レーザと、を含む。
【0177】
第2の半導体レーザ230は、シングル縦モードであって、波長が約1554nmのCWレーザ光を第2のシード光として出力する。第2の半導体レーザ230は、例えば、分布帰還型の半導体レーザである。第2の半導体レーザ230は、半導体の温度設定を変更することによって、発振波長を変化させることが可能に構成されていることが好ましい。
【0178】
バーストパルス生成器233は、第1の実施形態におけるバーストパルス生成器16と同様の構成である。バーストパルス生成器233は、レーザ制御部50から固体レーザ制御部217を介して受信したバーストパルス信号BPSを、第2の半導体光増幅器231に入力する。第2の半導体光増幅器231は、バーストパルス信号BPSに基づき、第2のシード光を、バースト状のレーザ光に変換する。以下、第2の半導体光増幅器231によって生成されたバースト状のレーザ光を、第2のシードパルス光という。
【0179】
第2の増幅器232に含まれるErファイバ増幅器は、図示しないCW励起半導体レーザから入力されるCW励起光によって光励起される。第2の増幅器232は、第2の半導体光増幅器231から入射する第2のシードパルス光を増幅する。第2の増幅器232は、増幅した第2のシードパルス光を、バーストパルス光PL2として出力する。
【0180】
ダイクロイックミラー213は、第1の固体レーザ装置211から出力されるパルスレーザ光PL1が入射する位置に配置されている。高反射ミラー214は、第2の固体レーザ装置212から出力されるバーストパルス光PL2を高反射し、高反射されたバーストパルス光PL2がダイクロイックミラー213に入射するように配置されている。
【0181】
ダイクロイックミラー213には、波長が約257.5nmのパルスレーザ光PL1を高透過し、波長が約1554nmのバーストパルス光PL2を高反射する膜がコートされている。ダイクロイックミラー213は、高透過したパルスレーザ光PL1の光路軸と、高反射したバーストパルス光PL2の光路軸とが一致するように配置されている。
【0182】
波長変換システム215は、第1のCLBO結晶240と、第2のCLBO結晶241と、第1の回転ステージ242と、第2の回転ステージ243と、第1のダイクロイックミラー244と、第2のダイクロイックミラー245と、高反射ミラー246と、を含む。
【0183】
第1のCLBO結晶240と、第1のダイクロイックミラー244と、第2のCLBO結晶241と、第2のダイクロイックミラー245とは、この順序で、パルスレーザ光PL1及びバーストパルス光PL2の光路上に配置されている。第1のCLBO結晶240には、パルスレーザ光PL1とバーストパルス光PL2とが入射する。
【0184】
第1のCLBO結晶240では、パルスレーザ光PL1とバーストパルス光PL2とが重なり、波長約257.5nmと波長約1554nmとの和周波に対応する波長約220.9nmのバーストパルス光PL3が生成される。波長変換されなかったパルスレーザ光PL1及びバーストパルス光PL2は、第1のCLBO結晶240を透過する。
【0185】
第1のダイクロイックミラー244は、パルスレーザ光PL1を高反射し、バーストパルス光PL2とバーストパルス光PL3とを高透過する膜がコートされている。第1のダイクロイックミラー244を高透過したバーストパルス光PL2,PL3が、第2のCLBO結晶241に入射する。
【0186】
第2のCLBO結晶241では、バーストパルス光PL2とバーストパルス光PL3とが重なり、波長約1554nmと波長約220.9nmとの和周波に対応する波長約193.4nmのバーストパルス光PL4が生成される。波長変換されなかったバーストパルス光PL2,PL3は、第2のCLBO結晶241を透過する。
【0187】
第2のダイクロイックミラー245は、バーストパルス光PL4を高反射し、バーストパルス光PL2,PL3を高透過する膜がコートされている。高反射ミラー246は、第2のダイクロイックミラー245により高反射されたバーストパルス光PL4が高反射されて、波長変換システム215から出力される位置に配置されている。バーストパルス光PL4が、前述のバーストシードパルス光BSPに対応する。
【0188】
第1の回転ステージ242は、第1のCLBO結晶240を回転可能に保持している。第2の回転ステージ243は、第2のCLBO結晶241を回転可能に保持している。
【0189】
固体レーザ制御部217は、第1及び第2の回転ステージ242,243の回転動作を制御する。また、固体レーザ制御部217は、第1の半導体レーザ220及びバーストパルス生成器233の動作を制御する。
【0190】
5.1.2 動作
次に、固体レーザ装置10cの動作を説明する。
図35は、固体レーザ装置10cをMOとして適用したレーザ装置のレーザ発振動作における基本的な動作タイミングを示す。
【0191】
固体レーザ制御部217は、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50を介して目標バーストパルスデータBPDtを受信する。この目標バーストパルスデータBPDtは、設定データとしてバーストパルス生成器233に送信される。
【0192】
同期回路216は、前述の同期回路60から第2の内部トリガ信号Tr2が入力されると、第3の内部トリガ信号Tr3と第4の内部トリガ信号Tr4とを生成する。第3の内部トリガ信号Tr3は、第1の半導体光増幅器221に入力される。第4の内部トリガ信号Tr4は、バーストパルス生成器233に入力される。
【0193】
第1の半導体光増幅器221は、第3の内部トリガ信号Tr3の入力に応じて、第1の半導体レーザ220から出力される第1のシード光をパルス増幅して第1のシードパルス光を生成する。ここで、
図35に示すように、第1の半導体光増幅器221は、第1のシードパルス光のパルス幅を、バーストパルスの全体のパルス幅よりも長くする。
【0194】
この第1のシードパルス光は、第1の増幅器222でさらに増幅され、波長変換部223に入射する。波長変換部223は、入射した第1のシードパルス光から第4高調波光を生成する。この第4高調波光は、パルスレーザ光PL1として第1の固体レーザ装置211から出力される。
【0195】
第2の半導体光増幅器231は、バーストパルス生成器233に第4の内部トリガ信号Tr4が入力されると、バーストパルス信号BPSに基づき、第2の半導体光増幅器231から出力される第2のシード光をパルス増幅して、バースト状の第2のシードパルス光を生成する。この第2のシードパルス光は、第2の増幅器232でさらに増幅され、バーストパルス光PL2として第2の固体レーザ装置212から出力される。
【0196】
パルスレーザ光PL1とバーストパルス光PL2とは、波長変換システム215に入射する。同期回路216は、波長変換システム215において、パルスレーザ光PL1が、バーストパルス光PL2のすべてと時間的に重なるように、第3の内部トリガ信号Tr3と第4の内部トリガ信号Tr4とのタイミングを調整している。この結果、波長変換システム215から、波長約193.4nmのバーストパルス光PL4が、バーストシードパルス光BSPとして出力される。
【0197】
5.1.3 効果
固体レーザ装置10cは、第1の固体レーザ装置211からの出力光と、第2の固体レーザ装置212からの出力光との和周波光を生成して出力するものであり、強度の高いバーストシードパルス光BSPを出力することができる。
【0198】
また、固体レーザ装置10cは、第1の固体レーザ装置211からの第1の出力光をバーストパルス化せず、第2の固体レーザ装置212からの第2の出力光をバーストパルス化することによりバーストシードパルス光BSPを生成している。第1の出力光の波長が約257.5nmであるのに対して、第2の出力光の波長が約1554nmであるので、第1の固体レーザ装置211からの出力光をバースト化する場合に比べて、各パルスのピーク強度が高くなり、波長変換効率が向上する。さらに、通過する非線形結晶の数が少ない第2の出力光をバースト化するほうが、波長可変が容易となる。
【0199】
なお、第1の出力光と第2の出力光との両方をバーストパルス化してもよい。この場合には、第1の半導体光増幅器221に対するバースストパルス生成器をさらに設け、同期回路216により、第1の出力光と第2の出力光との出力タイミングを同期させればよい。
【0200】
5.2 第2の変形例
5.2.1 構成及び動作
以下、固体レーザ装置の第2の変形例について説明する。
図36及び
図37は、第2の変形例に係る固体レーザ装置10dの構成を示す。固体レーザ装置10dは、前述の第3の実施形態に係る固体レーザ装置10bと同様に、バーストパルス光の1パルスごとに波長を変更することを可能とする。固体レーザ装置10dは、バーストシードパルス生成器234に代えて、バーストシードパルス生成器300を備えること以外は、第3の実施形態に係る固体レーザ装置10bと同様の構成である。
【0201】
図37に示すように、バーストシードパルス生成器300は、第3の実施形態と同様のバーストパルス生成器16と、第1〜第mの半導体レーザ111〜11mと、第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mと、ビームコンバイナ301と、を含む。本変形例のビームコンバイナ301は、複数の光ファイバにより構成されており、光ファイバは、融着によって、他の光ファイバに接続されている。ビームコンバイナ301の複数の入力端には、第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mが接続されており、出力端には、前述の第2の増幅器232が接続されている。ビームコンバイナ301は、第1〜第mの半導体光増幅器121〜12mから出力される複数のレーザ光の光路を結合する。
【0202】
本変形例では、第3の実施形態と同様に、レーザ照射制御部3aからレーザ制御部50に、増幅バーストパルス光BAPに含まれる各パルスP
nに対する目標波長λt(n)が送信される。本変形例では、固体レーザ装置10dが和周波光を生成することから、レーザ制御部50は、目標波長λt(n)に基づき、下式(22)を満たす波長データλbnを算出して第1〜第mの半導体レーザ111〜11mに送信する。
λbn=2/(1/λt(n)−1/257.5) ・・・(22)
【0203】
固体レーザ装置10dの動作は、第1の変形例に係る固体レーザ装置10cの動作と同様である。また、バーストシードパルス生成器300の動作は、第3の実施形態と同様である。
【0204】
6.レーザ加工システム
6.1 構成
図38は、本発明のレーザ装置を適用したレーザ加工システム400を示す図である。レーザ照射装置3は、前述のレーザ照射制御部3aの他に、テーブル433と、XYZステージ434と、光学システム436と、筐体437と、フレーム438と、を含んでいる。筐体437内には光学システム436が配置される。フレーム438には、筐体437とXYZステージ434とが固定されている。レーザ装置2aと筐体437とは、光路管5により接続されている。
【0205】
テーブル433は、被加工物441を支持する。被加工物441は、パルスレーザ光が照射されてレーザ加工が行われる対象であり、例えば、炭素原子を含む材料である。XYZステージ434は、テーブル433を支持している。XYZステージ434は、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能であり、テーブル433の位置を調整することにより、被加工物441の位置を調整可能である。XYZステージ434は、光学システム436から出射するパルスレーザ光が照射されるように被加工物441の位置を調整する。
【0206】
光学システム436は、例えば、高反射ミラー436a〜436cと、集光レンズ436dとを備えている。高反射ミラー436a〜436c及び集光レンズ436dは、それぞれが図示しないホルダに固定されており、筐体437内において所定の位置に配置されている。
【0207】
高反射ミラー436a〜436cは、紫外領域のパルスレーザ光を高い反射率で反射する。高反射ミラー436aは、レーザ装置2aから入射したパルスレーザ光を高反射ミラー436bに向けて反射し、高反射ミラー436bは、パルスレーザ光を、高反射ミラー436cに向けて反射する。高反射ミラー436cは、パルスレーザ光を集光レンズ436dに向けて反射する。高反射ミラー436a〜436cは、例えば、合成石英やフッ化カルシウムで形成された透明基板の表面に、パルスレーザ光を高反射する反射膜がコートされている。
【0208】
集光レンズ436dは、入射したパルスレーザ光を、ウインドウ442を介して被加工物441の表面に集光するように配置される。ウインドウ442は、集光レンズ436dと被加工物441との間の光路上に配置されており、筐体437に形成された開口に図示しないOリングによってシールされた状態で固定される。
【0209】
筐体437の内部には、不活性ガスである窒素ガスが常時流れている。筐体437には、窒素ガスを筐体437に吸入する吸入ポート437aと、筐体437から窒素ガスを外部に排出する排出ポート437bとが設けられている。吸入ポート437aには、窒素ガス供給源443が接続される。
【0210】
さらに、レーザ照射装置3は、アッテネータ452、シールド453、及びパージガス供給源454を備えている。アッテネータ452は、筐体437内において、高反射ミラー436aと高反射ミラー436bとの間の光路上に配置されている。アッテネータ452は、例えば、2枚の部分反射ミラー452a及び452bと、これらの部分反射ミラーの回転ステージ452c及び452dとを含んでいる。2枚の部分反射ミラー452a及び452bは、パルスレーザ光の入射角度によって、透過率が変化する光学素子である。部分反射ミラー452a及び部分反射ミラー452bは、パルスレーザ光の入射角度が互いに一致し、且つ所望の透過率となるように、回転ステージ452c及び回転ステージ452dによって傾斜角度が調整される。
【0211】
これにより、パルスレーザ光は、所望のパルスエネルギに減光されてアッテネータ452を通過する。アッテネータ452は、レーザ照射制御部3aから入力される制御信号に基づいて透過率が制御される。アッテネータ452の透過率を制御することにより、加工物441の表面に照射されるパルスレーザ光のフルーエンスを調整することができる。
【0212】
シールド453は、テーブル433に支持された状態の被加工物441を囲う。シールド453は、テーブル433及びXYZステージ434の全体を囲う大きさを有しており、フレーム438に固定される。
【0213】
シールド453の上面には、筐体437に設けられたウインドウ442と接続する開口が形成されている。ウインドウ442は、集光レンズ436dからのパルスレーザ光が入射する入射面が筐体437内に配置され、パルスレーザ光が出射する出射面がシールド453内に配置される。これにより、ウインドウ442と被加工物441の間のパルスレーザ光の照射光路がシールド453で囲われる。
【0214】
パージガス供給源454は、シールド453にパージガスを供給するガス供給源である。パージガスは、例えば、窒素やクリーンドライエアー(CDA)が使用される。CDAは、例えば、大気中のガスから、メカニカルフィルタとモレキュラーシーブスによって、パーティクルと水分等の不純物を除去したガスである。CDAをパージガスとして使用する場合は、レーザ装置2aに含まれる固体レーザ装置10aを、発振波長が酸素の吸収ラインに一致しないように設定して発振させることが好ましい。
【0215】
シールド453の内部空間内には、酸素ガスが常時流れている。シールド453には、酸素ガス供給源454から酸素ガスをシールド453内に吸入する吸入ポート453aと、シールド453から酸素ガスを外部に排出する排出ポート453bが設けられている。
【0216】
6.2 効果
以上の構成のレーザ照射装置3に、バーストパルス光を出力するレーザ装置2a等のレーザ装置を接続した場合には、シングルのパルス光の場合と比べて、パルスのピーク強度を低下させることが可能であり、光学素子の寿命が延びるという効果が得られる。また、レーザ照射装置3に供給されるバーストパルス光のパルス幅が短いため、加工形状が綺麗になるという効果が得られる。
【0217】
また、レーザ照射装置3に、パルスごとの波長を変更可能とするレーザ装置2c等のレーザ装置を接続した場合には、各パルスの波長を制御することによって、深い加工が可能となる。例えば、バーストパルス光に含まれる各パルスの波長をパルスの入射順に長くすることにより、集光レンズ436dの焦点距離が順に長くなるので、深い加工が可能となる。
【0218】
7.半導体レーザと半導体光増幅器との具体例
7.1 構成
図39は、半導体レーザ11と半導体光増幅器12との具体的な構成例を示す。半導体レーザ11は、半導体レーザ制御部500と、第1の半導体素子501と、ペルチェ素子502と、温度センサ503と、第1の電流制御部504と、温度制御部505と、を含む。半導体レーザ11は、シングル縦モードで発振する分布帰還型レーザあり、CWレーザ光を出力する。第1の半導体素子501は、活性層501aとグレーティング501bとを含む。
【0219】
半導体光増幅器12は、第2の半導体素子510と、第2の電流制御部511と、を含む。第2の半導体素子510は、活性層510aを含む。
【0220】
7.2 動作
半導体レーザ制御部500は、固体レーザ制御部15から波長データλ1が入力されると、温度制御部505に、波長データλ1に対応する温度Tλを入力する。温度制御部505は、温度センサ503により検出されるペルチェ素子502の温度を監視し、ペルチェ素子502の温度が温度Tλとなるようにペルチェ素子502に流れる電流を制御する。第1の電流制御部504は、固体レーザ制御部15から入力される電流設定値に基づいて、第1の半導体素子501に電流を流す。第1の半導体素子501の活性層501aには一定の電流が流れ、波長λ1のCWレーザ光が出力される。
【0221】
半導体レーザ11から出力されたCWレーザ光は、第2の半導体素子510の活性層510aに入射する。第2の半導体素子510には、電流制御信号であるバーストパルス信号BPSが入射する。このバーストパルス信号BPSと同期して、増幅されたバースト状のシードパルス光が出力される。
【0222】
7.3 効果
以上の構成によれば、半導体レーザ11は、第1の半導体素子501の温度を制御することにより、発振波長を変更することができる。
【0223】
なお、上記各実施形態では、パルス増幅を行う半導体光増幅器を半導体レーザの出力側に設けているが、半導体光増幅器に代えて、偏光子とEOポッケルスセルを組合せた光シャッタを用いてもよい。
【0224】
また、
図39において、半導体光増幅器12及びバーストパルス生成器16をなくし、この代わりに、半導体レーザ制御部500から第1の電流制御部504にバーストパルス状の電流信号を入力することにより、バースト状のシードパルス光を生成してもよい。さらに、
図39において、半導体光増幅器12及びバーストパルス生成器16を配置したまま、半導体レーザ制御部500から第1の電流制御部504にバーストパルス状の電流信号を入力することにより、バースト状のシードパルス光を生成してもよい。この場合、半導体レーザ11と半導体光増幅器12との動作を同期させる。
【0225】
8.放電センサの変形例
次に、放電センサの変形例について説明する。上記各実施形態では、エキシマ増幅器20に含まれるレーザチャンバ21に放電観察用ウインドウ21cを設け、放電観察用ウインドウ21cを介して放電光を第2の光センサ71により受光することにより放電を検出している。本変形例では、放電観察用ウインドウ21cを設けず、凹面ミラー25bを透過した放電光を第2の光センサ71により受光することで放電を検出する。
【0226】
8.1 構成及び動作
図40は、本変形例に係るエキシマ増幅器の一部を示す。本変形例において、エキシマ増幅器は、第1の高反射ミラー600と、第2の高反射ミラー601と、転写レンズ602と、をさらに含む。本変形例では、凹面ミラー25bは、可視光を透過する基板610に、可視光を透過し、かつ193.4nmの光を高反射する膜611がコートされたものである。
【0227】
第1の高反射ミラー600は、可視光を透過する基板600aに、可視光を透過し、かつ193.4nmの光を高反射する膜600bがコートされたものである。同様に、第2の高反射ミラー601は、可視光を透過する基板601aに、可視光を透過し、かつ193.4nmの光を高反射する膜601bがコートされたものである。第1の高反射ミラー600と第2の高反射ミラー601とは、バーストシードパルス光BSPを放電空間に入射させるように配置されている。
【0228】
転写レンズ602は、放電空間から、ウインドウ21aと凹面ミラー25bと第2の高反射ミラー601とを介して、放電光が入射するように配置されている。前述の第2の光センサ71は、転写レンズ602により放電光の像が転写される位置に配置されている。放電空間において放電が生じると、第2の光センサ71が放電光を受光することにより、放電タイミングが検出される。
【0229】
8.2 効果
本変形例によれば、レーザチャンバ21に放電観察用ウインドウ21cを設けることが不要となる。
【0230】
なお、上記変形例では、放電空間からレーザチャンバ21の入射側に出力される放電光を検出しているが、放電空間からレーザチャンバ21の射出側に出力される放電光を検出してもよい。この場合、第1及び第2の高反射ミラー600,601と同様の高反射ミラーをウインドウ21bと対向する位置に配置し、この高反射ミラーを介して光センサにより放電光を検出すればよい。
【0231】
9.その他の変形例
上記各実施形態では、目標遅延時間Dtを最適化する処理において、目標遅延時間Dtを変化させながら、バーストパルスエネルギの計測値Eが最大となる場合の遅延時間の計測値Dを最適遅延時間Doptとしている。目標遅延時間Dtが高精度に制御可能な場合には、バーストパルスエネルギの計測値Eが大きくなるように目標遅延時間Dtを少しずつ変化させながら同期タイミングを制御してもよい。
【0232】
上記各実施形態及び具体例は、矛盾が生じない限り、組み合わせ可能である。また、上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図したものである。従って、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の各実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0233】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される修飾句「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。