(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記絶縁性基材の材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネートから選択された1種以上の樹脂であり、前記絶縁性基材の厚さが12.5μm以上100μm以下である請求項1に記載の導電性基板。
前記絶縁性基材の材料は、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミド、ポリカーボネートから選択された1種以上の樹脂であり、前記絶縁性基材の厚さが12.5μm以上100μm以下である請求項3に記載の導電性基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の導電性基板、及び導電性基板の製造方法の一実施形態について説明する。
[導電性基板]
本実施形態の導電性基板は、絶縁性基材と、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成された第1銅層と、を有することができる。そして、第1銅層は、含有する結晶の結晶粒径を1μm以上2μm以下とすることができる。
【0012】
なお、本実施形態における導電性基板とは、第1銅層等をパターニングする前の、絶縁性基材の表面に第1銅層等を有する基板と、第1銅層等をパターニングした金属配線を備えた基板、すなわち、配線基板と、を含む。
【0013】
本発明の発明者は、金属層である銅層をパターニングした導電性基板を折り曲げた場合に、金属配線に断線等が生じる原因について鋭意検討を行った。その結果、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に形成した第1銅層が含有する結晶の結晶粒径が粗大化した場合に断線等が観察され、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径を所定の範囲とすることで耐屈折性を高めることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
ここで、本実施形態の導電性基板の構成について、
図1を用いて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の導電性基板において、絶縁性基材の第1銅層等を配置する主表面と垂直な面での断面図を模式的に示したものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の導電性基板10は、絶縁性基材11と、絶縁性基材11の少なくとも一方の面上に形成された第1銅層12とを有することができる。
【0017】
また、第1銅層12上に第2銅層13を有することもできる。
【0018】
なお、ここでは絶縁性基材11の一方の面11a上に、第1銅層12、第2銅層13を配置した例を示したが、係る形態に限定されるものではない。例えば、絶縁性基材11の一方の面11aと対向する他方の面、すなわち
図1中の絶縁性基材11の下端面上にも第1銅層、第2銅層を配置した導電性基板とすることもできる。
【0019】
以下に本実施形態の導電性基板が有する各部材について説明する。
(絶縁性基材)
まず、絶縁性基材について説明する。
【0020】
絶縁性基材の材料としては特に限定されるものではないが、例えばポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等から選択された1種以上の樹脂を好ましく用いることができる。特に、絶縁性基材11の材料としては、ポリアミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ポリイミド、ポリカーボネート等から選択された1種以上の樹脂をより好ましく用いることができる。
【0021】
絶縁性基材の厚さは特に限定されるものではなく、絶縁性基材の材料や、導電性基板に要求される折り曲げの程度等に応じて選択することができる。例えば12.5μm以上100μm以下とすることができる。
【0022】
なお、絶縁性基材には必要に応じてスルーホール等を形成しておくこともできる。
(第1銅層)
次に、第1銅層について説明する。
【0023】
第1銅層は、含有する結晶の結晶粒径を1μm以上2μm以下とすることができる。なお、第1銅層が含有する結晶としては銅結晶が挙げられる。
【0024】
本実施形態の導電性基板は、
図1に示したように、第1銅層12に加えて、第1銅層12上に配置した第2銅層13を有することもできる。そして、本発明の発明者らは、第2銅層13を設けた場合、導電性基板を折り曲げた際のクラックは、主に第2銅層13の表面から、第2銅層13に含まれる結晶粒界を起点として生じることを見出した。
【0025】
そこで、本実施形態の導電性基板では、第1銅層12が含有する結晶の結晶粒径を2μm以下とすることで、該第1銅層12上に第2銅層13を形成した場合、第2銅層13を均一で大きな結晶粒子から構成され、結晶粒界を抑制しためっき被膜とすることができる。このため、該導電性基板を折り曲げた場合でも第2銅層13にクラックが生じることを抑制し、耐屈折性を高めることができる。
【0026】
ただし、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径が1μm未満の場合、第2銅層に含まれる結晶の粒径が十分に大きくならず、耐屈曲性を十分に高めることができない恐れがある。このため、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径は1μm以上であることが好ましい。
【0027】
第1銅層が含有する結晶の結晶粒径の評価方法は特に限定されるものではないが、例えばX線回折(XRD)法を用いて評価することができる。
【0028】
具体的にはまず、第1銅層のX線回折パターンを測定し、以下に式1として示すScherrerの式により算出することができる。
【0029】
D=(K・λ)/(β・cosθ)・・・(式1)
D:結晶粒径(Å)
λ:測定X線波長(Å)
β:回折角の広がり
θ:回折角のブラッグ角
K:シェラー定数
第1銅層が含有する結晶の結晶粒径は、第1銅層の成膜条件を選択することにより制御することができる。第1銅層は、後述のように例えば乾式めっき法により成膜することができるが、乾式めっき法により第1銅層を成膜する場合、成膜する際の絶縁性基材の温度等を選択することにより制御することができる。
【0030】
第1銅層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば600Å以上3000Å以下であることが好ましい。
【0031】
第1銅層は銅を主成分として含有する層とすることができ、銅から構成された層とすることもできる。なお、主成分とは、質量比で最も多く含有されていることを意味し、特に99質量%以上含有されていることが好ましい。また、第1銅層が銅から構成された層の場合であっても、例えばターゲット等の製造工程に由来する不可避成分等を含有していても良い。
【0032】
また、本実施形態の導電性基板は、上述の絶縁性基材、及び第1銅層に加え、必要に応じて各種部材を有することができる。
(第2銅層)
例えば
図1に示したように、第1銅層12上に第2銅層13を有することができる。
【0033】
第2銅層の厚さは特に限定されるものではないが、例えば2μm以上10μm以下とすることができる。
【0034】
第2銅層についても銅を主成分として含有する層とすることができ、銅から構成された層とすることもできる。なお、主成分とは、質量比で最も多く含有されていることを意味し、特に99質量%以上含有されていることが好ましい。また、第2銅層が銅から構成された層の場合であっても、例えばめっき液等の製造工程に由来する不可避成分等を含有していても良い。
【0035】
第2銅層は、後述のように、例えば湿式めっき法により形成することができる。第2銅層は、第1銅層上に配置されているため、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径を所定の範囲とすることで、既述のように第2銅層を粒界が少なく、均一な結晶粒子から構成されるめっき被膜とすることができ、耐屈折性を高めることができる。なお、第2銅層が含有する結晶としては銅結晶が挙げられる。
(金属シード層)
また、本実施形態の導電性基板は、例えば絶縁性基材と、第1銅層との間に金属シード層を有することもできる。金属シード層を設けることにより、絶縁性基材と第1銅層との密着性を高め、第1銅層の耐食性を高めることもできる。
【0036】
金属シード層の厚さは特に限定されないが、例えば50Å以上、300Å以下とすることが好ましい。
【0037】
金属シード層は例えば、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも1種以上の金属を含むことが好ましい。
【0038】
なお、金属シード層は、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金を含むこともできる。この際、Ni,Zn,Mo,Ta,Ti,V,Cr,Fe,Co,W,Cu,Sn,Mnから選ばれる少なくとも2種以上の金属を含む金属合金としては、Cu−Ti−Fe合金や、Cu−Ni−Fe合金、Ni−Cu合金、Ni−Zn合金、Ni−Ti合金、Ni−W合金、Ni−Cr合金、Ni−Cu−Cr合金を好ましく用いることができる。
【0039】
なお、本実施形態の導電性基板が金属シード層を有し、第1銅層等がパターニングされている場合には、金属シード層も第1銅層等にあわせてパターニングされていることが好ましい。
(被覆層)
本実施形態の導電性基板は、例えば導電性基板の最表面に位置する第1銅層や、第2銅層の表面を保護するため、第1銅層等の金属層の表面に被覆層等を有することもできる。被覆層の材料としては特に限定されるものではないが、例えば錫等を用いることができる。なお、本実施形態の導電性基板においては、第1銅層や、第2銅層をパターニングして金属配線とすることができ、被覆層を設ける場合、第1銅層等をパターニングしてからその表面に形成、配置することが好ましい。
【0040】
そして、本実施形態の導電性基板は、例えば第1銅層、場合によってはさらに第2銅層について、所望の金属配線となるようにパターニングすることができる。
【0041】
形成する金属配線の形状、サイズについては特に限定されるものではなく、用途等に応じて所望の形状、配線ピッチとなるようにパターニングすることができる。
【0042】
金属配線は上述のように、導電性基板の第1銅層、場合によってはさらに第2銅層をパターニングして形成することができることから、パターニングされた第1銅層(第1銅配線)、場合によってはさらに、パターニングされた第2銅層(第2銅配線)を有することができる。
【0043】
ところで、既述のように近年、電子機器は、高性能化、薄型化、小型化、軽量化、低コスト化が求められている。このため、電子機器に搭載される電子部品についても同様の要求がなされている。
【0044】
そして、電子機器に対する上記要求に応えるため、導電性基板については、高密度配線を有することが求められるようになっている。具体的には例えば、導電性基板が有する金属配線について、高密度な部分で配線幅を25μm以下とすることが求められる場合がある。
【0045】
ところが、配線幅が25μm以下の部分を含む従来の導電性基板を折り曲げると、金属配線に断線等を生じる場合があった。
【0046】
これに対して、本実施形態の導電性基板については、耐屈折性に優れており、金属配線が高密度配線を有する場合であっても、断線等が生じることを抑制することができる。このため、本実施形態の導電性基板が金属配線を有する場合、本実施形態の耐屈折性の効果を特に発揮できるため、金属配線は、配線幅が25μm以下の部分を含むことが好ましい。導電性基板が有する金属配線の配線幅の下限値は特に限定されるものではなく、製造コスト等を考慮して、例えば10μm以上とすることができる。
【0047】
ただし、本実施形態の導電性基板は、配線幅が25μm以下の部分を含まない場合でも、耐屈折性の効果を十分に発揮することができるため、金属配線が配線幅25μm以下の部分を含まなくても良い。
【0048】
以上に説明した本実施形態の導電性基板によれば、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径を所定の範囲とすることで、折り曲げた場合でも金属配線に断線が生じることを抑制できる耐屈折性に優れた導電性基板とすることができる。
[導電性基板の製造方法]
次に本実施形態の導電性基板の製造方法の一構成例について説明する。
【0049】
本実施形態の導電性基板の製造方法は、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、乾式めっき法により第1銅層を形成する第1銅層形成工程を有することができる。そして、第1銅層は、含有する結晶の結晶粒径が1μm以上2μm以下とすることができる。
【0050】
以下に本実施形態の導電性基板の製造方法について具体的に説明する。
【0051】
なお、本実施形態の導電性基板の製造方法により既述の導電性基板を好適に製造することができる。このため、以下に説明する点以外については上述の導電性基板の場合と同様の構成とすることができるため説明を省略する。
(第1銅層形成工程)
第1銅層形成工程に供する絶縁性基材は予め準備しておくことができる。絶縁性基材に好適に用いることができる材料については既述のため、ここでは説明を省略する。絶縁性基材は必要に応じて予め任意のサイズに切断等行っておくこともできる。
【0052】
そして、第1銅層形成工程では、絶縁性基材の少なくとも一方の面上に、乾式めっき法により第1銅層を形成することができる。
【0053】
第1銅層形成工程で用いる乾式めっき法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。なお、蒸着法としては真空蒸着法を好ましく用いることができる。第1銅層形成工程で用いる乾式めっき法としては、特に膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
【0054】
第1銅層形成工程で形成する第1銅層は含有する結晶の結晶粒径を1μm以上2μm以下とすることができる。第1銅層が含有する結晶の結晶粒径は、第1銅層の成膜条件を選択することにより制御することができる。例えば第1銅層を乾式めっき法により成膜する場合、成膜する際の絶縁性基材の温度等を選択することにより制御することができ、具体的には例えば、成膜する際の絶縁性基材の温度を50℃以上90℃以下とすることが好ましい。
【0055】
また、本実施形態の導電性基板の製造方法は必要に応じて任意の工程を有することができる。
(第2銅層形成工程)
本実施形態の導電性基板の製造方法で作製する導電性基板は、
図1を用いて説明したように、第1銅層上に第2銅層を有することもできる。本実施形態の導電性基板が第2銅層を有する場合、本実施形態の導電性基板の製造方法は、第1銅層上に、湿式めっき法により第2銅層を形成する第2銅層形成工程をさらに有することもできる。
【0056】
第2銅層は例えば湿式めっき法により成膜することができ、湿式めっき法としては電気めっき法を好ましく用いることができる。
【0057】
第2銅層を湿式めっき法により成膜する場合、その成膜条件は特に限定されるものではなく、常法による諸条件を採用すればよい。例えば、銅めっき液を入れためっき槽に第1銅層を形成した絶縁性基材を供給し、電流密度や、基材の搬送速度を制御することによって、第2銅層を形成できる。
(金属シード層形成工程)
また、本実施形態の導電性基板の製造方法で作製する導電性基板は、例えば絶縁性基材と、第1銅層との間に金属シード層を有することもできる。本実施形態の導電性基板が金属シード層を有する場合、本実施形態の導電性基板の製造方法は、絶縁性基材の第1銅層を形成する面上に金属シード層を形成する金属シード層形成工程を有することもできる。
【0058】
金属シード層形成工程において、金属シード層の成膜方法は特に限定されるものではないが、乾式めっき法により成膜することが好ましい。乾式めっき法としては例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法や蒸着法等を好ましく用いることができる。金属シード層を乾式めっき法により成膜する場合、膜厚の制御が容易であることから、スパッタリング法を用いることがより好ましい。
【0059】
金属シード層形成工程を実施する場合、第1銅層形成工程は、金属シード層形成工程の後に実施することができる。
(被覆層形成工程)
また、本実施形態の導電性基板の製造方法で製造する導電性基板は、導電性基板の最表面に位置する第1銅層や、第2銅層の表面を被覆する被覆層を有することもできる。本実施形態の導電性基板が被覆層を有する場合、本実施形態の導電性基板の製造方法は被覆層を形成する被覆層形成工程等を有することもできる。なお、被覆層はパターニングされた第1銅層等の表面に設けられていることが好ましいことから、後述する金属配線を形成してから、被覆層形成工程を実施することが好ましい。
【0060】
被覆層形成工程の具体的な条件は特に限定されないが、例えば無電解めっき法により第1銅層や、第2銅層等の金属層の表面を被覆する被覆層を形成できる。なお、被覆層は、第1銅層等の金属層の表面にのみ配置されていることが好ましく、絶縁性基材の露出した面には配置されていないことが好ましい。
【0061】
既述のように被覆層の材料としては錫等を用いることができる。
(金属配線について)
ここで、本実施形態の導電性基板は、第1銅層、場合によってはさらに第2銅層をパターニングした金属配線を有する導電性基板とすることができる。
【0062】
このように例えば第1銅層、場合によってはさらに第2銅層をパターニングして金属配線とする場合、金属配線はサブトラクティブ法や、セミアディティブ法により形成することができる。そこで、以下に金属配線の形成方法の構成例について説明する。
(1)第1構成例
金属配線を有する導電性基板とする場合の第1構成例について説明する。
【0063】
第1構成例ではサブトラクティブ法を用いて金属配線を形成することができ、第1構成例の場合、本実施形態の導電性基板の製造方法は、さらに第1銅層等の銅層をエッチングによりパターニングするパターニング工程を有することができる。パターニング工程は、例えば既述の第1銅層形成工程の後に実施できる。なお、第2銅層も設ける場合には、パターニング工程は、第2銅層形成工程の後に実施できる。
【0064】
パターニング工程は以下のステップを有することができる。
【0065】
銅層上に、形成する金属配線に対応した形状を有するレジストを形成するレジスト配置ステップ。
レジストを用いて金属層をパターニングし、金属配線を形成する金属配線形成ステップ。
レジストを除去するレジスト除去ステップ。
【0066】
以下、各ステップについて、
図2(A)〜
図2(C)を用いて説明する。
図2(A)〜
図2(C)は、絶縁性基材11の主表面11aと垂直な面における断面図を示している。
【0067】
レジスト配置ステップでは、
図2(A)に示すように、銅層14上にレジスト21を形成することができる。なお、銅層14は、第1銅層12から構成することもできるが、
図2(A)に示したように、第1銅層12上に第2銅層13が配置された構成を有することもできる。
(レジスト配置ステップ)
レジスト21は、例えば以下の手順により形成できる。
【0068】
まず、銅層14の絶縁性基材11と対向する面とは反対の面上に、感光性のレジストを塗布、あるいは貼付する。
【0069】
次いで、レジストが、形成する金属配線に対応した形状となるようにフォトリソグラフィ法により加工する。そして、感光し、不要部を除去することで形成する金属配線に対応した形状を有するレジスト21を形成することができる。
(金属配線形成ステップ)
レジスト配置ステップの後、レジスト21上からエッチング液を供給することで、金属配線形成ステップを実施できる。金属配線形成ステップでは、
図2(B)に示したように、レジスト21を用いて銅層14をエッチングによりパターニングし、所望の形状を有する金属配線24を形成することができる。
【0070】
銅層14が
図2(A)に示したように第1銅層12と、第2銅層13とを有していた場合には、金属配線(銅配線)24は、パターニングされた第1銅層22と、パターニングされた第2銅層23とを有することができる。また、銅層14が、第1銅層12から構成されていた場合には、金属配線24は、パターニングされた第1銅層から構成されることになる。
【0071】
この際、用いるエッチング液としては特に限定されるものではなく、銅層のエッチングに通常用いられるエッチング液を用いることができる。
【0072】
なお、絶縁性基材11と、第1銅層12との間に金属シード層を設けていた場合には、金属シード層についてもパターニングを行うことができる。銅層と、金属シード層とで、異なるエッチング液を用いる必要がある場合には、銅層をパターニング後、金属シード層用のエッチング液を用いて金属シード層をパターニングできる。また、銅層と、金属シード層とで同じエッチング液を用いることができる場合には、銅層のパターニング後、連続して金属シード層をパターニングできる。
(レジスト除去ステップ)
その後、レジスト除去ステップを実施できる。レジスト除去ステップでは、
図2(C)に示すように、金属配線24上に残ったレジスト21を除去することで、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に配置された金属配線24とを備えた導電性基板を得ることができる。
【0073】
ここでは、絶縁性基材11の一方の面上にのみ銅層を設けた導電性基板の場合を例に説明したが、絶縁性基材11の一方の面、及び他方の面上に銅層を設けた導電性基板の場合には、他方の面上に配置した銅層についても同様にしてパターニング工程を実施することができる。
(2)第2構成例
次に、金属配線を有する導電性基板とする場合の第2構成例について説明する。
【0074】
第2構成例ではセミアディティブ法を用いて金属配線を形成することができる。第2構成例の場合、第1銅層形成工程の後、第1銅層上に、形成する金属配線に対応した形状の開口部を有するレジストを形成するレジスト配置工程を有することができる。そして、既述の第2銅層形成工程は、レジスト配置工程後に実施することができ、レジストが有する開口部内に第2銅層を形成する工程とすることができる。
【0075】
さらに、第2銅層形成工程の後は、レジスト、及び第1銅層のレジストで覆われていた部分を除去するレジスト、第1銅層除去工程を実施することができる。
【0076】
以下、各工程について、
図3(A)〜
図3(C)を用いて説明する。
図3(A)〜
図3(C)は、絶縁性基材11の主表面11aと垂直な面における断面図を示している。
(2−1)レジスト配置工程
レジスト配置工程は、第1銅層形成工程の後に実施することができ、レジスト配置工程では、
図3(A)に示すように、第1銅層12上に開口部311を有するレジスト31を形成することができる。
【0077】
レジスト31は、例えば以下の手順により形成できる。
【0078】
まず、第1銅層12の絶縁性基材11と対向する面とは反対の面上に、感光性のレジストを塗布、あるいは貼付する。
【0079】
次いで、レジストに形成する開口部が、形成する金属配線に対応した形状となるようにフォトリソグラフィ法により加工する。そして、感光し、不要部を除去することで、形成する金属配線に対応した形状の開口部311を有するレジスト31を形成することができる。
【0080】
レジスト31の厚さは特に限定されないが、形成する第2銅層33に対応した厚さを有することが好ましい。具体的には、例えばレジスト31の厚さは、形成する第2銅層33の厚さ(高さ)よりも厚いことが好ましい。
(2−2)第2銅層形成工程
レジスト配置工程の後、既述の第2銅層形成工程を実施することができる。第2銅層形成工程は、既述のように第1銅層上に、湿式めっき法により第2銅層を形成する工程とすることができる。
【0081】
具体的には、
図3(B)に示したように、湿式めっき法により、レジスト31の開口部311内に第2銅層33を形成することができる。この際、湿式めっき法として電解めっき法を用いる場合、第1銅層12を給電層として用いることができる。
(レジスト、第1銅層除去工程)
その後、レジスト31の除去、及び第1銅層12のレジスト31で覆われていた部分の除去を実施できる。なお、第1銅層12のレジスト31で覆われていた部分とは、レジスト31を除去した際に第2銅層33により覆われておらず、露出した部分ともいえる。
【0082】
なお、レジストの除去と、第1銅層12のレジストで覆われていた部分の除去は別に行うことができ、例えばレジストを除去した後、第1銅層12のレジストで覆われていた部分をエッチング等により除去できる。
【0083】
これにより、
図3(C)に示すように、絶縁性基材11と、絶縁性基材11上に、パターニングされた第1銅層32、及びパターニングされた第2銅層33を有する金属配線34とを備えた導電性基板、すなわち配線基板を得ることができる。
【0084】
なお、絶縁性基材11と第1銅層12との間に金属シード層を形成した場合には、第1銅層のレジストで覆われていた部分を除去することで、金属シード層のうち、パターニングされた第1銅層32、及びパターニングされた第2銅層33で覆われていない部分が露出する。このため、金属シード層のうち、パターニングされた第1銅層32、及びパターニングされた第2銅層により覆われておらず露出した部分についてもエッチングにより除去することもできる。
【0085】
ここまで、金属配線の形成方法について、第1の構成例、第2の構成例を示して説明したが、係る形態に限定されるものではない。また、金属配線を形成する際には、第1の構成例、第2の構成例、いずれも取り得ることができるが、第2の構成例で示したセミアディティブ法で形成した金属配線は、特に直線性に優れ、かつ形成する金属配線の長さ方向と垂直な面での断面形状の矩形性が高く、アスペクト比も容易に調整できる。特に近年は微細な金属配線が求められているところ、特に第2の構成例で示した方法によれば容易に、微細な金属配線を形成することができる。このため、特に高密度な金属配線を製造することが求められる場合には、第2の構成例で示した金属配線の形成方法を用いることが好ましい。
【0086】
以上に説明した本実施形態の導電性基板の製造方法によれば、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径を所定の範囲としているため、折り曲げた場合でも金属配線に断線が生じることを抑制できる耐屈折性に優れた導電性基板を得ることができる。
【実施例】
【0087】
以下に具体的な実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
まず、絶縁性基材として、厚さが35μmの矩形形状のポリイミドフィルム(宇部興産社製 商品名:Upilex−35SGAV1)を用意し、以下の手順により導電性基板を製造した。
(金属シード層形成工程)
絶縁性基材の一方の面上に、金属シード層として、厚さが250ÅのNi−Cr合金層を成膜した。
【0088】
具体的には、マグネトロンスパッタリング装置内にポリイミドフィルムをセットし、Cr(クロム)を全量に対して20質量%含有し、残部がNi(ニッケル)である、ニッケル−クロム合金ターゲットを用い、真空雰囲気下、Ni−Cr合金層を成膜した。
(第1銅層形成工程)
次いで、金属シード層上に、厚さ3000Åの第1銅層を形成した。なお、金属シード層を成膜したマグネトロンスパッタリング装置には銅ターゲットをセットしておき、金属シード層の成膜後、チャンバーを開けることなく、連続して第1銅層を成膜した。
【0089】
第1銅層形成工程は、絶縁性基材の、第1銅層を形成する面とは反対側の面をキャンロールと呼ばれる冷却ローラーに接触させながら実施した。すなわち、第1銅層を形成している間、絶縁性基材の、第1銅層を形成する面とは反対側の面を、キャンロールと接触させ、継続的に冷却を行った。
【0090】
なお、キャンロールの冷却温度は75℃としており、絶縁性基材は同じ温度に保たれていることになる。
【0091】
得られた第1銅層について、X線回折(XRD)法を用いて、含有する結晶の結晶粒径を評価したところ、1.65μmであることが確認できた。
【0092】
X線回折(XRD)法により結晶粒径を評価するに当たっては、X線源としてCuKαを用い、ステップスキャンにより測定した第1銅層のX線回折パターンを用いた。そして、得られた第1銅層のKα1ピークを用いて、Scherrerの式から結晶粒径(結晶子径)を算出した。
【0093】
次いで、セミアディティブ法を用い、以下の手順により、金属配線を有する導電性基板とした。
(レジスト配置工程)
まず、第1銅層表面にドライフィルムレジスト(日立化成製 商品名:RY−3315EE)をラミネートした。次いで、ドライフィルムレジストへ形成する金属配線のパターンを露光し、0.8質量%の炭酸ナトリウム水溶液にドライフィルムレジストを接触させた。これにより形成する金属配線に対応する形状の開口部を有するレジストを形成した。なお、レジストには、絶縁性基材の一辺と平行で、かつ互いに平行な、配線幅が20μm、配線間の距離が20μmの複数の直線状の金属配線のパターンが形成できるように開口部を形成した。
(第2銅層形成工程)
次に硫酸銅めっき浴で銅めっきを行い、レジストに形成された開口部に厚さ8μmの第2銅層を形成した。なお、第2銅層は、第1銅層上に形成されることになる。
(レジスト、第1銅層除去工程)
そして、2.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液にドライフィルムを接触させることでレジストを剥離、除去した。
【0094】
次に、主成分が硫酸及び過酸化水素からなるソフトエッチング液(CPE−800、三菱ガス化学製)を用いて、第2銅層に覆われていない、露出した第1銅層を除去した。
【0095】
さらに、上記露出した第1銅層を除去することで、第1銅層、及び第2銅層に覆われておらず、露出した金属シード層を、ニッケルクロム選択エッチング液(FLICKER−YL、日本化学産業製)を用いて除去した。
(被覆層形成工程)
得られた金属配線の表面に無電解めっき法により錫めっきを施し、被覆層を形成し、導電性基板を得た。
【0096】
以上に説明した手順により得られた導電性基板の耐屈折性を、JIS P 8115で規格されたMIT耐折度試験の方法により評価した。
【0097】
評価の条件としては、折り曲げ角度+/−90°、折り曲げ速度50rpm、荷重200gfとして実施した。また、折り曲げは、折り曲げ線と、形成した直線状の金属配線とが直交するように行っており、金属配線に断線が確認されるまでの折り曲げ回数をカウントした。
【0098】
その結果、導電性基板が有する金属配線が断線するまでの折り曲げ回数が133回と高い耐屈折性を有することが確認された。
[比較例1]
実施例1の第1銅層形成工程において、キャンロールの冷却温度を40℃にした点以外は、実施例1と同様にして導電性基板の作製、評価を行った。
【0099】
第1銅層形成工程後に、実施例1と同様にしてX線回折(XRD)法を用いて、含有する結晶の結晶粒径を評価したところ、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径が2.34μmであることが確認できた。
【0100】
また、作製した導電性基板について、実施例1と同様にしてMIT耐折度試験を実施したところ、導電性基板が有する金属配線が断線するまでの折り曲げ回数は87回であった。
【0101】
以上のように、比較例1で作製した導電性基板は、MIT耐折度試験の結果、導電性基板が有する金属配線が断線するまでの折り曲げ回数は87回と、実施例の133回に比べて、約35%も耐屈折性が低下することが確認された。
【0102】
これは、比較例1では、第1銅層が含有する結晶の結晶粒径が2μmより大きく、粒界が少ないため、該第1銅層上に第2銅層を形成した場合に、第2銅層のめっき被膜が不均一となり、耐屈折性が低下したためと考えられる。