(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.2nm以上10nm以下である請求項2に記載のキャリア付金属箔。
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下である請求項2又は3に記載のキャリア付金属箔。
前記第一中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
前記第一中間層が含むCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素の合計付着量が1000〜50000μg/dm2である請求項8に記載のキャリア付金属箔。
前記第二中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む請求項10に記載のキャリア付金属箔。
前記第二中間層が含むCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素の合計付着量が1000〜50000μg/dm2である請求項10又は11に記載のキャリア付金属箔。
前記第三中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む請求項13に記載のキャリア付金属箔。
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させ、前記キャリアを剥離することにより露出した、前記キャリア付金属箔の前記金属層の第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO2換算での前記金属層表面からの深さの平均値が0.5nm以上300nm未満で、標準偏差/平均値が0.6以下である請求項1〜17のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させ、前記キャリアを剥離することにより露出した、前記キャリア付金属箔の前記金属層の第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO2換算での前記金属層表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下である請求項1〜18のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
前記第一中間層は、キャリア側から、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン、バナジウム、又は、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素を含む合金のいずれか1種の層と、クロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層とをこの順で有する請求項1〜21のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
前記粗化処理層が、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、鉄、バナジウム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である請求項26に記載のキャリア付金属箔。
前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項26又は27に記載のキャリア付金属箔。
前記金属層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する請求項1〜28のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔。
前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える請求項28又は29に記載のキャリア付金属箔。
請求項1〜34のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔と樹脂とを含む積層体であって、前記キャリア付金属箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われている積層体。
一つの請求項1〜34のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔を前記キャリア側から、もう一つの請求項1〜34のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔のキャリア側に積層した積層体。
前記一つのキャリア付金属箔のキャリアと前記もう一つのキャリア付金属箔のキャリアとが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて構成されている請求項39に記載の積層体。
前記キャリア上に、ニッケルを含むめっき層を形成した後、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成することで前記第一中間層を形成する工程と、前記第一中間層上に電解めっきにより前記金属層を形成する工程とを含む請求項1〜34のいずれか一項に記載のキャリア付金属箔の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
キャリア付金属箔においては、絶縁基板への積層工程前にはキャリアから金属箔が容易に剥離してはならず、一方、絶縁基板への積層工程後に金属箔からキャリアが容易に剥離する必要がある。
【0015】
特許文献1については、加熱プレス後の剥離性は良好であるが、極薄銅箔表面の状態に関しては言及されていない。また、同特許文献では、拡散防止層と第一中間層の順番はどちらでも良いと記載されているが、記載の実施例は全てキャリア箔、第一中間層、拡散防止層、電気銅めっきの順番であり、剥離の際に第一中間層/拡散防止層界面は剥離する恐れがある。そうなると電気銅めっき(極薄銅層)の表面に拡散防止層が残り、回路を形成する際のエッチング不良に繋がる。
【0016】
特許文献2、3については、キャリア/極薄銅箔間の剥離強度等の特性を十分に検討したと考えられる記載が見られず、未だ改善の余地が残っている。
【0017】
特許文献4については、キャリア付銅箔から極薄銅層を剥がした後、キャリアの剥離面のクロム濃度、及びクロム濃度の面内分布のバラツキを制御することで、剥離強度の面内分布を一定の範囲内に制御し、これにより、キャリア/極薄銅箔界面での剥離性の向上に極めて効果的であることを見出したものの、クロム自体には中間層に含まれるニッケル及び銅箔及び極薄銅層の銅の拡散をニッケル以上に抑制する効果がないことは、各金属の拡散を考慮する公知であり,クロム濃度のみで剥離強度のバラつきを制御することは不十分であることがわかった。
【0018】
特許文献5、6、7については、酸化膜を均一に制御する条件が不明確であるため酸化膜の分布によって剥離強度が変動する問題が生じる。
【0019】
特許文献8,9については、Niめっき表面の酸化方法が大気曝露であり、酸化膜が薄くて剥離ができない場合がある。
【0020】
そこで、本発明は、絶縁基板への積層工程前にはキャリアと金属層の密着力が高い一方で、絶縁基板への積層工程によるキャリアと金属層の密着性の極端な上昇や低下が無く、キャリア/金属層で容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するため、本発明者は鋭意研究を重ねたところ、酸素を含む第一中間層を有するキャリア付金属箔において、第一中間層/金属層間で所定の方法にて剥離させてキャリアの第一中間層側表面からAESによる深さ方向の分析を行ったとき、酸素濃度が10at%以下となるまでのSiO
2換算でのキャリアの第一中間層側表面からの深さの平均値及び標準偏差/平均値が所定範囲となるように制御することで、上記課題を解決することが可能なキャリア付金属箔を提供することができることを見出した。
【0022】
本発明は上記知見を基礎として完成したものであり、一側面において、キャリア、酸素を含む第一中間層、金属層をこの順で有するキャリア付金属箔であって、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の前記酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下で、標準偏差/平均値が0.6以下であるキャリア付金属箔である。
【0023】
本発明のキャリア付金属箔は一実施形態において、前記第一中間層がクロメート処理層を含む。
【0024】
本発明のキャリア付金属箔は別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.2nm以上10nm以下である。
【0025】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下である。
【0026】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層が更に銅を含む。
【0027】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層が更に亜鉛を含む。
【0028】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアの前記第一中間層側表面から、前記酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での深さの範囲におけるCu濃度の最大値の平均値が15at%以下である。
【0029】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む。
【0030】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層が含むCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素の合計付着量が1000〜50000μg/dm
2である。
【0031】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアと前記第一中間層との間に第二中間層を有する。
【0032】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層と前記金属層との間に第三中間層を有する。
【0033】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第二中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む。
【0034】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第二中間層が含むCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素の合計付着量が1000〜50000μg/dm
2である。
【0035】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層と前記金属層との間に第三中間層を有する。
【0036】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第三中間層が、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む。
【0037】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層がクロメート処理層であり、且つ、Crの付着量が10〜50μg/dm
2である。
【0038】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔を前記金属層側から絶縁基板に大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下である。
【0039】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔を前記金属層側から絶縁基板に大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下である。
【0040】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させ、前記キャリアを剥離することにより露出した、前記キャリア付金属箔の前記金属層の第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記金属層表面からの深さの平均値が0.5nm以上300nm未満で、標準偏差/平均値が0.6以下である。
【0041】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させ、前記キャリアを剥離することにより露出した、前記キャリア付金属箔の前記金属層の第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記金属層表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下である。
【0042】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアがCu系材である。
【0043】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記金属層がCu系めっき層である。
【0044】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記第一中間層は、キャリア側から、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン、バナジウム、又は、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素を含む合金のいずれか1種の層と、クロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層とをこの順で有する。
【0045】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記クロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層がクロメート処理層を含む。
【0046】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアは、前記金属層を有する面とは反対側の面に、更に第一中間層及び金属層をこの順で有する。
【0047】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記キャリアが電解銅箔または圧延銅箔で形成されている。
【0048】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記金属層表面及び前記キャリアの表面のいずれか一方または両方に粗化処理層を有する。
【0049】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層が、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、鉄、バナジウム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層である。
【0050】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0051】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記金属層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を有する。
【0052】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記金属層上に樹脂層を備える。
【0053】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記粗化処理層上に樹脂層を備える。
【0054】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層の上に樹脂層を備える。
【0055】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記樹脂層が接着用樹脂である。
【0056】
本発明のキャリア付金属箔は更に別の一実施形態において、前記樹脂層が半硬化状態の樹脂である。
【0057】
本発明は別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔を用いて製造した積層体である。
【0058】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔と樹脂とを含む積層体であって、前記キャリア付金属箔の端面の一部または全部が前記樹脂により覆われている積層体である。
【0059】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔を用いて製造したプリント配線板である。
【0060】
本発明は更に別の一側面において、本発明のプリント配線板を用いて製造した電子機器である。
【0061】
本発明は更に別の一側面において、一つの本発明のキャリア付金属箔を前記キャリア側から、もう一つの本発明のキャリア付金属箔のキャリア側に積層した積層体である。
【0062】
本発明の積層体は一実施形態において、前記一つのキャリア付金属箔のキャリアと前記もう一つのキャリア付金属箔のキャリアとが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて構成されている。
【0063】
本発明の積層体は別の一実施形態において、前記一つのキャリア付金属箔のキャリアと前記もう一つのキャリア付金属箔のキャリアとが接合されている。
【0064】
本発明は更に別の一側面において、本発明の積層体の表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付金属箔から前記金属層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0065】
本発明のキャリア付金属箔の製造方法は一実施形態において、前記キャリア上に、ニッケ
ルを含むめっき層を形成した後、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成することで前記第一中間層を形成する工程と、前記第一中間層上に電解めっきにより前記金属層を形成する工程とを含む。
【0066】
本発明のキャリア付金属箔の製造方法は別の一実施形態において、前記金属層上に粗化処理層を形成する工程をさらに含む。
【0067】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付金属箔と絶縁基板とを積層する工程、及び、前記キャリア付金属箔と絶縁基板とを積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって、回路を形成する工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0068】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付金属箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアまたは前記金属層を剥離させる工程、及び、前記キャリアまたは前記金属層を剥離させた後に、前記金属層または前記キャリアを除去することで、前記金属層側表面または前記キャリア側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0069】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付銅箔を前記キャリア側から樹脂基板に積層する工程、前記キャリア付銅箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面に回路を形成する工程、前記回路が埋没するように前記キャリア付銅箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面に樹脂層を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成する工程、前記樹脂層上に回路を形成した後に、前記キャリアまたは前記金属層を剥離させる工程、及び、前記キャリアまたは前記金属層を剥離させた後に、前記金属層または前記キャリアを除去することで、前記金属層側表面または前記キャリア側表面に形成した、前記樹脂層に埋没している回路を露出させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0070】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記キャリア付金属箔の樹脂基板と積層した側とは反対側の金属層側表面または前記キャリア側表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記金属層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【0071】
本発明は更に別の一側面において、本発明のキャリア付金属箔の前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記キャリア付金属箔の樹脂基板と積層した側とは反対側の金属層側表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付金属箔から前記キャリアを剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、絶縁基板への積層工程前にはキャリアと金属層の密着力が高い一方で、絶縁基板への積層工程によるキャリアと金属層の密着性の極端な上昇や低下が無く、キャリア/金属層で容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0074】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは一般的には金属箔であり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、チタン箔及びチタン合金箔、樹脂フィルム、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCDフィルム等の形態で提供される。
本発明に用いることのできる金属箔は原料コストの観点から銅系材料、好ましくは銅材が好ましい。ここで、銅系材料とは銅を含む材料、例えば、銅を含む金属箔のことを意味する。また、銅系材料とは、好ましくは銅を50質量%以上含む金属箔、より好ましくは銅を60質量%以上含む金属箔、より好ましくは銅を70質量%以上含む金属箔、より好ましくは銅を80質量%以上含む金属箔、より好ましくは銅を90質量%以上含む金属箔である。また、銅材とは銅を主成分とする材料のことを意味する。そして、銅系材料または銅材等の材料は一般的に圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0075】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜150μmであり、より典型的には8〜120μmであり、より典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付金属箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。なお、プリント配線板の製造方法の一つである埋め込み工法(エンベッティド法(Enbedded Process))にキャリア付金属箔が用いられる場合には、キャリアの剛性が高いことが必要である。そのため、埋め込み工法に用いる場合には、キャリアの厚みは18μm以上300μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上100μm以下であることが好ましく、35μm以上70μm以下であることが更により好ましい。
なお、キャリアの金属層を設ける側の表面とは反対側の表面に粗化処理層を設けてもよい。当該粗化処理層を公知の方法を用いて設けてもよく、後述の粗化処理により設けてもよい。キャリアの金属層を設ける側の表面とは反対側の表面に粗化処理層を設けることは、キャリアを当該粗化処理層を有する表面側から樹脂基板などの支持体に積層する際、キャリアと樹脂基板が剥離し難くなるという利点を有する。
【0076】
以下に、キャリアとして電解銅箔を使用する場合の製造条件の一例を示す。
<電解液組成>
銅:90〜110g/L
硫酸:90〜110g/L
塩素:50〜100ppm
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):10〜30ppm
レべリング剤2(アミン化合物):10〜30ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
なお、本発明に用いられる電解、表面処理又はめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
【0077】
【化1】
(上記化学式中、R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0078】
<製造条件>
電流密度:70〜100A/dm
2
電解液温度:50〜60℃
電解液線速:3〜5m/sec
電解時間:0.5〜10分間
【0079】
<第一中間層>
キャリアの片面又は両面上には第一中間層を設ける。このように、キャリアは、金属層を有する面とは反対側の面に、更に第一中間層及び金属層をこの順で有してもよい。
本発明で用いる第一中間層は酸素を含む必要がある。第一中間層に酸素が含んでいると第一中間層でキャリア成分や金属層成分の拡散が抑制され、キャリア/金属層で容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することができる。
【0080】
また、第一中間層は酸素とCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より1種又は2種以上の元素や合金または有機物を含むことが好ましい。
また、第一中間層は、クロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層であることが好ましい。また、前述のクロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層を含むことが好ましい。
また、第一中間層は、キャリア側から、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より1種又は2種以上の元素や合金または有機物を含む層とクロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層とをこの順で有することが好ましい。また、前述のクロム、クロム合金及びクロムの酸化物のいずれか1種以上を含む層はクロメート処理層を含むことが好ましい。
【0081】
酸素を含む第一中間層を有するためには、各金属を大気酸化、大気加熱及び陽極酸化等により酸化させる方法や(第一中間層形成後に酸化)、予め酸素を有する第一中間層を形成してもよい。また各工程の処理条件は各工程に適した条件が適用される。
なお第一中間層はクロメート処理層を形成するのがより好ましい。クロムめっきは表面に緻密なクロム酸化物層を形成するため、電気めっきで金属箔を形成する際に電気抵抗が上昇し、ピンホールが発生しやすくなる恐れがある。クロメート処理層を形成した表面は、クロムめっきとくらべ緻密ではないクロム酸化物層が形成されるため、表面処理箔を電気めっきで形成する際の抵抗になり難く、ピンホールを減少させることができる。ここで、クロメート処理層として、亜鉛クロメート処理層を形成することにより、金属箔を電気めっきで形成する際の抵抗が、通常のクロメート処理層より低くなり、よりピンホールの発生を抑制することができる。なお、キャリアとして電解銅箔を使用する場合には、ピンホールを減少させる観点からシャイニー面に第一中間層を設けることが好ましい。
また、第一中間層にCuを含んでいるとキャリア/金属層界面での剥離強度の調整がしやすくなるため好ましい。但し、CuはキャリアがCu系の場合、第一中間層が酸系溶液である場合浸漬した際、第一中間層を設ける側の面とは逆側の面のCuが溶解する。そのためCu濃度の管理は非常に重要である。
また、第一中間層は更に亜鉛を含んでいることが好ましい。第一中間層に亜鉛を含んでいるとキャリア/金属層界面での剥離強度の調整がよりしやすくなる。なお亜鉛は第一中間層形成溶液に添加すると第一中間層の制御がしやすい。
【0082】
ここで、クロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、純クロメート処理層や亜鉛クロメート処理層等が挙げられる。本発明においては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層を純クロメート処理層という。また、本発明においては無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層を亜鉛クロメート処理層という。
【0083】
また、第一中間層は、例えば電解クロメートや浸漬クロメート等で形成することができる。なお、第一中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。
【0084】
<金属層>
第一中間層の上には金属層を設ける。なお、第一中間層と金属層との間には他の層を設けてもよい。金属層には各目的に合わせて元素から構成されることが好ましく、例えばCu系めっき層を用いてもよい。ここで、Cu系めっき層とは銅を含むめっき層のことである。Cu系めっき層は、銅を50質量%以上含むめっき層であることが好ましく、銅を60質量%以上含むめっき層であることが好ましく、銅を70質量%以上含むめっき層であることが好ましく、銅を80質量%以上含むめっき層であることが好ましく、銅を90質量%以上含むめっき層であることが好ましい。
【0085】
また、金属層は、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの群から選択される一種以上の元素を含んでもよい。また、金属層は、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの群から選択される一種以上の元素からなる金属層でもよい。
【0086】
また、金属層は、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン、バナジウム、又は、ニッケル、コバルト、鉄、タングステン、モリブテン及びバナジウムからなる群から選択される1種以上の元素を含む合金のいずれか1種の層を含んでもよく、クロムおよびクロム合金のいずれか1種以上を含む層を含んでもよい。また、金属層は複数の層、例えば前述の層を複数有していてもよい。
【0087】
金属層が極薄銅層の場合には、当該極薄銅層は硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができる。一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから、硫酸銅浴を利用した電気めっきにより極薄銅層を形成することが好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には1〜5μm、更に典型的には1.5〜5μm、更に典型的には2〜5μmである。なお、キャリアの両面に金属層を設けてもよい。
【0088】
<第二中間層>
本発明のキャリア付金属箔は、キャリアと第一中間層との間に第二中間層を有することが好ましい。この第二中間層により、キャリア成分や金属層成分の拡散がより抑制され、キャリア及び第一中間層の間でより容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することができる。
【0089】
第二中間層は、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より1種又は2種以上の元素を含むことが好ましい。
【0090】
<第三中間層>
本発明のキャリア付金属箔は、第一中間層と金属層との間に第三中間層を有することが好ましい。この第三中間層により、キャリア成分や金属層成分の拡散がより抑制され、キャリアと第一中間層との間でより容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することができる。また、キャリア付金属箔を金属層側から樹脂に積層し、その後キャリア付金属箔から金属層を剥離した際、第三中間層は金属層のキャリア側表面に残存する。そのため、第三中間層にレーザーの吸収性が良好な元素を用いた場合、当該金属層のキャリア側表面からレーザーを用いて加工をする際に、レーザーの吸収性が向上し、レーザー加工性が向上するため好ましい。
【0091】
第三中間層は、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlからなる群より1種又は2種以上の元素を含むことが好ましい。キャリア成分や金属層成分の拡散がより抑制され、キャリアと第一中間層との間でより容易に剥離できるキャリア付金属箔を提供することができると共に、金属層のレーザー加工性が向上するためである。
Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの1種又は2種以上の元素を含む第二中間層及び第三中間層は、例えば電気めっき、無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっき、或いはスパッタリング、CVD及びPDVのような乾式めっきにより形成することができる。コストの観点から電気めっきが好ましい。なお、キャリアが樹脂フィルムの場合には、CVD及びPDVのような乾式めっきまたは無電解めっき及び浸漬めっきのような湿式めっきにより第二中間層及び第三中間層を形成することができる。
【0092】
<キャリア付金属箔>
本発明のキャリア付金属箔は、キャリア、第一中間層、金属層をこの順に有する。なお第二中間層をキャリア/第一中間層の間に、また第三中間層を第一中間層/金属層の間に有していても良い。キャリア付金属箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば金属層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した金属層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0093】
<第一中間層、第二中間層の元素の付着量>
第一中間層及び/または第二中間層を構成するCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計付着量が1000〜50000μg/dm
2であることが好ましい。1000μg/dm
2未満であると第一中間層及び第二中間層の設ける効果が少なく、キャリア成分や金属層成分の拡散を抑制しにくく、適度な剥離強度を安定して得ることが難しくなる恐れがある。一方50000μg/dm
2を超えると、これら元素による応力が大きくなりキャリアに反りが発生する恐れがある。第一中間層及び/又は第二中間層を構成するCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlの合計付着量は、より好ましくは5000〜30000μg/dm
2である。
第一中間層がクロメート処理層の場合には、Crの合計付着量が10〜50μg/dm
2であることが好ましい。10μg/dm
2未満であるとクロメート処理層を設ける効果が少ない場合がある(剥離強度が大きく変わらない)。一方、50μg/dm
2未満であるとクロメート処理層が厚く、金属層の密着性が悪い場合もある。
【0094】
<第三中間層の元素の付着量>
第三中間層を構成するCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計付着量が50〜50000μg/dm
2であることが好ましい。50μg/dm
2未満であると第三中間層の設ける効果が少なくなる恐れがある。一方50000μg/dm
2を超えると、これら元素による応力が大きくなりキャリアに反りが発生する恐れがある。第三中間層を構成するCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlの合計付着量は、より好ましくは250〜30000μg/dm
2、更により好ましくは500〜25000μg/dm
2である。
【0095】
<キャリア付金属箔の構造>
本発明のキャリア付金属箔は、キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AES(オージェ電子分光法:Auger Electron Spectroscopy)による深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下で、標準偏差/平均値が0.6以下である必要がある。当該平均値が0.5nm未満であると剥離強度が目標よりも高くなる。当該平均値が15nmを超える場合には金属層の密着性が悪くなり、また剥離強度が目標よりも低くなる等の問題が生じる。当該平均値は、好ましくは5nm以上10nm以下である。また、当該標準偏差/平均値が0.6を超えると剥離強度のバラつきが大きくなるという問題が生じる。
【0096】
また、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.2nm以上10nm以下であるのが好ましい。当該平均値が0.2nm未満であるとCrが存在する効果が少ない場合がある(剥離強度が大きく変わらない)。一方、当該平均値が10nmを超える場合には金属層の密着性が悪くなり、また剥離強度が目標よりも低くなる等の問題が生じる恐れがある。当該平均値は、より好ましくは2.5nm以上5nm以下である。
【0097】
また、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所のCrが5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下であるのが好ましい。標準偏差/平均値が0.6を超えると剥離強度のバラつきが大きくなる恐れがある。
【0098】
前記キャリアの前記第一中間層側表面から、前記酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での深さの範囲におけるCu濃度の最大値の平均値が15at%以下であることが好ましい。当該Cu濃度の最大濃度の平均が15at%以上であると剥離強度が高くなる場合がある。
【0099】
前記キャリア付金属箔を前記金属層側から絶縁基板に大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下であることが好ましい。当該平均値が0.5nm未満であると剥離強度が目標よりも高くなる場合がある。一方、平均値が15nmを超える場合には金属層の密着性が悪くなり、また剥離強度が目標よりも低くなる等の問題が生じる恐れがある。
【0100】
前記キャリア付金属箔を前記金属層側から絶縁基板に大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させ、前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、前記10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前記剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下であることが好ましい。当該標準偏差/平均値が0.6を超えると剥離強度のバラつきが大きくなるという問題が生じる恐れがある。
【0101】
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離した金属層の前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記金属層表面からの深さの平均値が0.5nm以上300nm未満でることが好ましい。当該平均値が0.5nm未満の場合にはレーザー加工性が向上しない場合がある。一方、300nm以上である場合には金属層のエッチング性が悪くなる場合がある。当該平均値は、より好ましくは5nm以上100nm未満である。
【0102】
前記キャリア付金属箔から前記キャリアをJIS C 6471に準拠して剥離させて、前記剥離した金属層の前記第一中間層側表面から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記金属層表面からの深さの標準偏差/平均値が0.6以下であることが好ましい。当当該標準偏差/平均値は0.6を超えると、レーザー加工性やエッチング性のバラつきが大きくなるという問題が生じる恐れがある。
【0103】
<粗化処理およびその他の表面処理>
金属層の表面には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、鉄、バナジウム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、金属層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0104】
例えば、粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が15〜40mg/dm
2の銅−100〜3000μg/dm
2のコバルト−100〜1500μg/dm
2のニッケルであるような3元系合金層を形成するように実施することができる。Co付着量が100μg/dm
2未満では、耐熱性が悪化し、エッチング性が悪くなることがある。Co付着量が3000μg/dm
2 を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、エッチングシミが生じ、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化がすることがある。Ni付着量が100μg/dm
2未満であると、耐熱性が悪くなることがある。他方、Ni付着量が1500μg/dm
2を超えると、エッチング残が多くなることがある。好ましいCo付着量は1000〜2500μg/dm
2であり、好ましいニッケル付着量は500〜1200μg/dm
2である。ここで、エッチングシミとは、塩化銅でエッチングした場合、Coが溶解せずに残ってしまうことを意味しそしてエッチング残とは塩化アンモニウムでアルカリエッチングした場合、Niが溶解せずに残ってしまうことを意味するものである。
【0105】
このような3元系銅−コバルト−ニッケル合金めっきを形成するための一般的浴及びめっき条件の一例は次の通りである:
めっき浴組成:Cu10〜20g/L、Co1〜10g/L、Ni1〜10g/L
pH:1〜4
温度:30〜50℃
電流密度D
k:20〜30A/dm
2
めっき時間:1〜5秒
【0106】
<キャリア付金属箔の製造方法>
本発明のキャリア付金属箔の製造方法は、キャリア上に第一中間層を形成しその後金属層を形成する。キャリア/第一中間層の間に第二中間層を形成してもよい。また第一中間層/金属層の間に第三中間層を形成していてもよい。
本発明の第一中間層形成方法は、空気酸化、大気加熱、陽極酸化及びクロメート処理等を用いる。第一中間層の酸素濃度を制御するためには空気酸化の場合には時間、大気加熱の場合には温度と時間、陽極酸化の場合には液温、電流密度及び時間、クロメート処理の場合には液組成、液温、電流密度、時間等の条件を制御する。
【0107】
より具体的な条件について大気加熱の場合、温度が低いと所定の酸化層を有するまでの処理時間が長くなり、一方温度が高いと酸化速度が速く面内の酸化層の濃度部分布にばらつきが生じることから50〜150℃が好ましい。時間は短過ぎても長過ぎても所定の酸化層を形成することは困難であるため、10〜100sが好ましい。陽極酸化の場合、電流密度が低いと所定の酸化層を有するまでの処理時間が長くなり、一方電流密度が高いと酸化速度が速く面内の酸化層の濃度部分布にばらつきが生じる恐れがあることから0.5〜5A/dm
2が好ましい。時間は所定の酸化層を形成するように調整すれば良く、本発明の場合、30s前後が好ましい。クロメート処理の場合には、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成するためのめっき液または処理液の液温を30〜60℃に制御することが好ましい。クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成するためのめっき液または処理液の液温が40℃未満であるとCrの濃度分布によりキャリア/極薄銅層間の剥離強度にばらつきが大きくなる場合がある。クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成するためのめっき液または処理液の液温が60℃を超えると耐熱塩ビ配管の使用がし難いなど生産ライン構成部材の選択性が狭まる問題が生じるおそれがある。クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成する際の電流密度CrDkは0.1A/dm
2よりも大きく、1.5A/dm
2以下であることが好ましい。CrDkを0.1A/dm
2以下とするとCrの深さ方向の濃度分布のばらつきによりキャリア/極薄銅層間の剥離強度にばらつきが大きくなる場合がある。CrDkが1.5A/dm
2を超えるとクロムの原子濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記キャリアの中間層側表面からの深さを好ましい範囲に制御することが難しくなるおそれがある。また、クロムを含むめっき層またはクロメート処理層を形成するための処理の処理時間は2秒以上、60秒以下であることが好ましい。処理時間が60秒を超えるとCrの深さ方向の濃度分布のばらつきによりキャリア/極薄銅層間の剥離強度にばらつきが大きくなる場合がある。また、処理時間が2秒未満であると、クロムの原子濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での前記キャリアの中間層側表面からの深さを好ましい範囲に制御することが難しくなるおそれがある。
【0108】
本発明の第二中間層の形成方法は、めっきやスパッタで形成される。めっきの場合、液組成、pH、液温及び電流密度及び時間を、スパッタの場合にはスパッタ出力、アルゴン圧力及び時間等の条件を制御して第二中間層を形成させる。
本発明の第三中間層の形成方法は、第二中間層形成方法と同一である。
【0109】
<プリント配線板、積層体、電子機器>
キャリア付金属箔自体の使用方法は当業者に周知であるが、例えば金属層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がして銅張積層板とし、絶縁基板に接着した金属層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0110】
また、キャリアと、キャリア上に第一中間層が積層され、第一中間層の上に積層された金属層とを備えたキャリア付金属箔は、前記金属層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群の中から選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記金属層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付金属箔は前記金属層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
【0111】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0112】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂などを含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。
【0113】
前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体(無機化合物及び/または有機化合物を含む誘電体、金属酸化物を含む誘電体等どのような誘電体を用いてもよい)、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399号、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0114】
これらの樹脂を例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記金属層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。
【0115】
前記樹脂層を備えたキャリア付金属箔(樹脂付きキャリア付金属箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリアを剥離して金属層を表出せしめ(当然に表出するのは該金属層の第一中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0116】
この樹脂付きキャリア付金属箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張り積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0117】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
【0118】
この樹脂層の厚みは0.1〜80μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付金属箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0119】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0120】
更に、この樹脂付きキャリア付金属箔のもう一つの製品形態としては、前記金属層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上に樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0121】
更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。以下に、本発明に係るキャリア付金属箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0122】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付金属箔と絶縁基板を金属層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0123】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0124】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記金属層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0125】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記金属層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0126】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記金属層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0127】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記金属層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び金属層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0128】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0129】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した金属層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0130】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び金属層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0131】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0132】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記金属層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記金属層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0133】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0134】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記金属層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記金属層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0135】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付金属箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付金属箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付金属箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した金属層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記金属層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記金属層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0136】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0137】
ここで、本発明のキャリア付金属箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは金属層として極薄銅層を挙げ、さらに粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限らず、粗化処理層が形成されていない金属層を有するキャリア付金属箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、
図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図1−B及び
図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
【0138】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0139】
上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば
図4−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、
図4−J及び
図4−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
【0140】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂(レジン)には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグを使用することができる。
【0141】
また、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔の表面に基板または樹脂層を有してもよい。当該基板または樹脂層を有することで一層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板または樹脂層には、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板または樹脂層を用いることが出来る。例えば前記基板または樹脂層として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0142】
本発明のキャリア付金属箔を用いて積層体(銅張積層体等)を作製することができる。ここで、本発明の第一中間層が、単独のもの、第三中間層と積層されているもの、第二中間層と積層されているもの、第二中間層及び第三中間層と積層されているものをまとめて「中間層」とすると、当該積層体としては、例えば、「金属層/中間層/キャリア/樹脂又はプリプレグ」の順に積層された構成であってもよく、「キャリア/中間層/金属層/樹脂又はプリプレグ」の順に積層された構成であってもよく、「金属層/中間層/キャリア/樹脂又はプリプレグ/キャリア/中間層/金属層」の順に積層された構成であってもよく、「キャリア/中間層/金属層/樹脂又はプリプレグ/金属層/中間層/キャリア」の順に積層された構成であってもよい。前記樹脂又はプリプレグは前述する樹脂層であってもよく、前述する樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、キャリア付金属箔は平面視したときに樹脂又はプリプレグより小さくてもよい。
【0143】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付金属箔の前記金属層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記樹脂基板と積層した金属層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付金属箔の表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付金属箔から前記キャリアまたは前記金属層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法(コアレス工法)であってもよい。当該コアレス工法について、具体的な例としては、まず、本発明のキャリア付金属箔の金属層側表面またはキャリア側表面と樹脂基板とを積層する。その後、樹脂基板と積層した金属層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付金属箔の表面に樹脂層を形成する。キャリア側表面に形成した樹脂層には、さらに別のキャリア付金属箔をキャリア側から積層してもよい。この場合、樹脂基板を中心として当該樹脂基板の両表面側に、キャリア/第一中間層/金属層の順あるいは金属層/第一中間層/キャリアの順でキャリア付金属箔が積層された構成となっている。両端の金属層あるいはキャリアの露出した表面には、別の樹脂層を設け、さらに銅層を設けた後、当該銅層を加工することで回路を形成してもよい。さらに、別の樹脂層を当該回路上に、当該回路を埋め込むように設けても良い。また、このような回路及び樹脂層の形成を1回以上設けてもよい(ビルドアップ工法)。そして、このようにして形成した積層体(以下、積層体Bとも言う)について、それぞれのキャリア付金属箔の金属層またはキャリアをキャリアまたは金属層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。なお、前述のコアレス基板の作製には、2つのキャリア付金属箔を用いて、後述する金属層/第一中間層/キャリア/キャリア/第一中間層/金属層の構成を有する積層体や、キャリア/第一中間層/金属層/金属層/第一中間層/キャリアの構成を有する積層体や、キャリア/第一中間層/金属層/キャリア/第一中間層/金属層の構成を有する積層体を作製し、当該積層体を中心に用いることもできる。これら積層体(以下、積層体Aとも言う)の両側の金属層またはキャリアの表面に樹脂層及び回路の2層を1回以上設け、樹脂層及び回路の2層を1回以上設けた後に、それぞれのキャリア付金属箔の金属層またはキャリアをキャリアまたは金属層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。
なお、本明細書において、「積層体A」または「積層体B」と特に記載していない「積層体」は、少なくとも積層体A及び積層体Bを含む積層体を示す。
【0144】
なお、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付金属箔または積層体(積層体A)の端面の一部または全部を樹脂で覆うことにより、ビルドアップ工法でプリント配線板を製造する際に、第一中間層または積層体を構成する1つのキャリア付金属箔ともう1つのキャリア付金属箔の間のへの薬液の染み込みを防止することができ、薬液の染み込みによる金属層とキャリアの分離やキャリア付金属箔の腐食を防止することができ、歩留りを向上させることができる。ここで用いる「キャリア付金属箔の端面の一部または全部を覆う樹脂」または「積層体の端面の一部または全部を覆う樹脂」としては、樹脂層に用いることができる樹脂を使用することができる。また、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付金属箔または積層体において平面視したときにキャリア付金属箔または積層体の積層部分(キャリアと金属層との積層部分、または、1つのキャリア付金属箔ともう1つのキャリア付金属箔との積層部分)の外周の少なくとも一部が樹脂又はプリプレグで覆ってもよい。また、上述のコアレス基板の製造方法で形成する積層体(積層体A)は、一対のキャリア付金属箔を互いに分離可能に接触させて構成されていてもよい。また、当該キャリア付金属箔において平面視したときにキャリア付金属箔または積層体の積層部分(キャリアと金属層との積層部分、または、1つのキャリア付金属箔ともう1つのキャリア付金属箔との積層部分)の外周の全体にわたって樹脂又はプリプレグで覆われてなるものであってもよい。このような構成とすることにより、キャリア付金属箔または積層体を平面視したときに、キャリア付金属箔または積層体の積層部分が樹脂又はプリプレグにより覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中のキャリアと金属層またはキャリア付金属箔同士の剥がれを少なくすることができる。また、キャリア付金属箔または積層体の積層部分の外周を露出しないように樹脂又はプリプレグで覆うことにより、前述したような薬液処理工程におけるこの積層部分の界面への薬液の浸入を防ぐことができ、キャリア付金属箔の腐食や侵食を防ぐことができる。なお、積層体の一対のキャリア付金属箔から一つのキャリア付金属箔を分離する際、またはキャリア付金属箔のキャリアと銅箔(金属層)を分離する際には、樹脂又はプリプレグで覆われているキャリア付金属箔又は積層体の積層部分(キャリアと金属層との積層部分、または、1つのキャリア付金属箔ともう1つのキャリア付金属箔との積層部分)を切断等により除去する必要がある。
【0145】
本発明のキャリア付金属箔をキャリア側又は金属層側から、もう一つの本発明のキャリア付金属箔のキャリア側または金属層側に積層して積層体を構成してもよい。また、前記一つのキャリア付金属箔のキャリア又は金属層と、前記もう一つのキャリア付金属箔のキャリア又は金属層とが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られた積層体であってもよい。また、前記一つのキャリア付金属箔のキャリア又は金属層と、前記もう一つのキャリア付金属箔のキャリア又は金属層とが接合されていてもよい。また、当該積層体の端面の一部または全部が樹脂により覆われていてもよい。
【0146】
キャリア同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
【0147】
一方のキャリアの一部または全部と他方のキャリアの一部または全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方のキャリアと他方のキャリアを積層し、キャリア同士を分離可能に接触させて構成される積層体を製造することができる。一方のキャリアと他方のキャリアとが弱く接合されて、一方のキャリアと他方のキャリアとが積層されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアとの接合部を除去しないでも、一方のキャリアと他方のキャリアとは分離可能である。また、一方のキャリアと他方のキャリアとが強く接合されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアとが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方のキャリアと他方のキャリアを分離することができる。
【0148】
また、このように構成した積層体の表面に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付金属箔から前記金属層を剥離させる工程を実施することでプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路との2層を設けてもよい。
【実施例】
【0149】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0150】
1.キャリア付金属箔の製造
キャリアとして、厚さ35μmの長尺の電解銅箔(JX日鉱日石金属社製JTC)及び圧延銅箔(JX日鉱日石金属社製 タフピッチ銅箔 JIS H3100 合金番号C1100)、そして厚さ100μmの長尺の圧延銅材(JX日鉱日石金属社製 タフピッチ銅箔 JIS H3100 合金番号C1100)を用意し、表面に第一中間層及び金属層を形成した。なお、キャリアとして電解銅箔を用いた場合は、S面(光沢面)側に第1中間層を設けた。また一部のサンプルについては第二中間層及び第三中間層も設けた。また一部のサンプルについては、第二中間層、第一中間層及び第三中間層の順に設けた。また、一部のサンプルについては、第二中間層、第一中間層の順に設けた。なお第一中間層、金属層、第二中間層及び第三中間層はキャリアの片面に設けた。第一中間層、金属層、第二中間層及び第三中間層の形成は、表1、表5及び表9に記載の条件で行った。表1、5、9の「キャリア粗さRz[μm]」欄に第一中間層または第二中間層を設けた側のキャリアの表面の十点平均粗さRz(JIS B0601 1994)を記載した。電解銅箔のS面(光沢面)の粗さについては、電解銅箔製造装置の、銅を析出させる陰極ドラムの表面の粗さを調節することで制御した。陰極ドラムの表面の粗さを大きくすることで、電解銅箔のS面(光沢面)の粗さを粗くすることができる。また、陰極ドラムの表面の粗さを小さくすることで、電解銅箔のS面(光沢面)の粗さを大きくすることができる。また、圧延銅箔の表面粗さについては、圧延銅箔製造時に用いる圧延ロールの粗さを調整することで制御した。圧延ロールの表面の粗さを大きくすることで、圧延銅箔の表面の粗さを大きくすることができる。また、圧延ロールの表面の粗さを小さくすることで、圧延銅箔の表面の粗さを小さくすることができる。なお表記において「Ni」と表記されているのは純ニッケルめっきを行ったことを意味し、「純クロメート」と表記されているのは純クロメート処理を行ったことを意味し、「亜鉛クロメート」と表記されているのは亜鉛クロメート処理を行ったことを意味する。以下に、各処理条件を示す。なお、めっき液等の液組成の残部は水である。
【0151】
・「Niめっき」:ニッケルめっき
(液組成)硫酸ニッケル:270〜280g/L、塩化ニッケル:35〜45g/L、酢酸ニッケル:10〜20g/L、ホウ酸:30〜40g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)2〜6
(液温)40〜60℃
(電流密度)1〜11A/dm
2
【0152】
・「各元素スパッタ」:各元素のスパッタ
各金属99mass%以上の組成のスパッタリングターゲットを用いて、以下の条件にて各金属の層を形成した。
装置:株式会社アルバック製のスパッタ装置
出力:DC50W
アルゴン圧力:0.2Pa
【0153】
・「純クロメート」:純クロメート処理
(液組成)重クロム酸カリウム:1〜10g/L、亜鉛:0g/L
(pH)2〜5
(液温)30〜60℃
【0154】
・「亜鉛クロメート」:亜鉛クロメート処理
上記純クロメート処理条件において、液中に硫酸亜鉛(ZnSO4)の形態の亜鉛を添加し、亜鉛濃度:0.05〜5g/Lの範囲で調整して亜鉛クロメート処理を行った。
なおクロメート処理が電解の場合には電流密度0.1〜1.5A/dm
2で処理をした。
【0155】
・「空気酸化」:室温25℃で酸化させた。なお、第二中間層を設けた実施例、比較例については、第二中間層を設けた後に、第二中間層を室温25℃で酸化させることで、第二中間層上に第一中間層を形成した。
【0156】
・「大気加熱」:ホットプレート上で、キャリアが所定の温度(表1、表5及び表9に記載の第一中間層形成条件欄に記載の温度)となる条件を見出し、所定の時間(表1、表5及び表9に記載の第一中間層形成条件欄に記載の時間)で加熱処理した。なお、第二中間層を設けた実施例、比較例については、キャリアに第二中間層を設けた後に、キャリアに対して上述の加熱処理を行うことで、第二中間層上に第一中間層を形成した。
【0157】
・「陽極酸化」:次の条件で所定の時間陽極酸化した。
NaOH濃度 0.5〜20g/L
液温:20〜50℃
電流密度:1〜10A/dm
2
なお、第二中間層を設けた実施例、比較例については、キャリアに第二中間層を設けた後に、第二中間層の表面に対して上述の陽極酸化を行うことで、第二中間層上に第一中間層を形成した。
【0158】
・「Cuめっき」:銅めっき
銅濃度:30〜120g/L
H
2SO
4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
【0159】
・「Coめっき」:コバルトめっき
(液組成)硫酸コバルト:270〜280g/L、ホウ酸:30〜40g/L、光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等、ドデシル硫酸ナトリウム:55〜75ppm
(pH)2〜6
(液温)40〜60℃
(電流密度)1〜11A/dm
2
【0160】
なお、実施例40には実施例15の極薄銅層の上に更に、粗化処理層、耐熱処理層、クロメート処理層、シランカップリング処理層を設けた。実施例41には実施例15の極薄銅層の上に更に、耐熱処理層、クロメート処理層、シランカップリング処理層を設けた。実施例42には実施例15の極薄銅層の上に更に、クロメート処理層、シランカップリング処理層を設けた。
・粗化処理
Cu:10〜20g/L
Co:1〜10g/L
Ni:1〜10g/L
pH:1〜4
温度:40〜50℃
電流密度Dk:20〜30A/dm
2
時間:1〜5秒
Cu付着量:15〜40mg/dm
2
Co付着量:100〜3000μg/dm
2
Ni付着量:100〜1000μg/dm
2
・耐熱処理
Zn:0〜20g/L
Ni:0〜5g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk:0〜1.7A/dm
2
時間:1秒
Zn付着量:5〜250μg/dm
2
Ni付着量:5〜300μg/dm
2
・クロメート処理
K
2Cr
2O
7
(Na
2Cr
2O
7或いはCrO
3):2〜10g/L
NaOH或いはKOH:10〜50g/L
ZnO或いはZnSO
47H
2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:30〜60℃
電流密度:0.1〜1.5A/dm
2
時間:0.5〜100秒
Cr付着量:
・シランカップリング処理
ビニルトリエトキシシラン水溶液
(ビニルトリエトキシシラン濃度:0.1〜1.4wt%)
pH:4〜5
時間:5〜30秒
【0161】
上記のようにして得られた実施例及び比較例のキャリア付金属箔について、以下の方法で各評価を実施した。
【0162】
<表面処理層の厚み>
作製したキャリア付金属箔のCuめっき(表面処理層)の厚みは、重量法により測定した。
まず、キャリア付金属箔からCuめっき(表面処理層)を引き剥がし、引き剥がしたCuめっきを濃度20質量%の塩酸で溶解してICP発光分析した。そしてサンプルの大きさ(面積)とICP分析の結果かCuめっき(金属層)の厚みを算出した。
【0163】
<キャリア付金属箔から金属層を引き剥がしたときのキャリア側の金属付着量>
Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlはサンプルを濃度20質量%の塩酸で溶解してICP発光分析によって測定した。なお、サンプルの分析は、キャリアの第一中間層を形成している側の面(キャリアのS面)とは逆側の面(キャリアのM面)に若干付着する金属成分の付着量を排除するため、第一中間層を形成する面とは逆側の面に絶縁基板を積層し、大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させた。その後、キャリア付金属箔から金属層側を剥離した後に、第一中間層、第二中間層が、それぞれ完全に溶解するように(例えば厚みで1μm〜3μm溶解する)、露出したキャリアの表面を上記濃度20質量%の塩酸で溶解して測定を行った。
なお、上述のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlが濃度20質量%の塩酸で十分に溶解しない場合には、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlが溶解する液(王水、塩酸と硝酸の混合水溶液等)を用いて溶解した後にICP発光分析によって測定してもよい。
【0164】
<キャリア付金属箔から金属層を引き剥がしたときの金属層側の金属付着量>
Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlはサンプルを濃度20質量%の塩酸で溶解してICP発光分析によって測定した。なお、サンプルの分析は、金属層の第三中間層が付着している側の面とは逆側の面に若干付着する金属成分の付着量を排除するため、キャリア付金属箔を金属層のキャリア側とは反対側の面側から絶縁基板を積層し、大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させた。その後、キャリアを剥離した後に第三中間層が完全に溶解するように(例えば厚みで0.5μm〜3μm溶解する)、露出したキャリアの表面を上記濃度20質量%の塩酸で溶解して測定を行った。なお、上述のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlが濃度20質量%の塩酸で十分に溶解しない場合には、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Zn及びAlが溶解する液(王水、塩酸と硝酸の混合水溶液等)を用いて溶解した後にICP発光分析によって測定してもよい。
【0165】
<AES分析>
キャリア付金属箔からキャリアを90°剥離法(JIS C 6471)に準拠して剥離させて、露出したキャリアの第一中間層側表面及び露出した金属層の第一中間層側表面から、キャリア側の第1中間層表面及び金属層側の第1中間層表間から、幅方向(TD方向)に20mm間隔で5箇所および長手方向(MD方向)に20mm間隔で5箇所の合計10箇所について下記のAES測定装置を用いてAES分析を行った。
また、金属層に絶縁基板BT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)を大気中、圧力20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させたキャリア付銅箔についても同様に測定した。
・装置:AES測定装置(日本電子株式会社製、型式JAMP−7800F)
・真空到達度:2.0×10
-8Pa
・試料傾斜角:30度
・フィラメント電流:2.22A
・プローブ電圧:10kV
・プローブ電流:2.8×10
-8A
・プローブ径:約500nm
・スパッタリングレート1.9nm/min(SiO
2換算)
分析した元素は、キャリア、第一中間層、第二中間層、第三中間層、金属層構成元素とCu、Zn、C及びOであった。これら元素を指定元素とした。また、指定元素の合計を100at%として、各元素の濃度(at%)を分析した。深さ(nm)は、SiO
2をスパッタリングの対象物とした際のスパッタリングレート1.9nm/min(SiO
2換算)を用い、スパッタリングを行った時間(min)に基づいて以下の式から算出した。
測定している箇所の深さ(nm)=スパッタリングレート1.9nm/min(SiO
2換算)×スパッタリングを行った時間(min)
そのため、深さ(nm)はSiO
2をスパッタリングした場合における深さ(nm)(SiO
2換算深さ(nm))を意味する。得られたデータについて、データ処理ソフト「Spectra investigator(Version1.08)」を使用して各元素の濃度(at%)を得た。
そして、各測定点において、前述の剥離して露出したキャリアの前記第一中間層側表面から、AESによる深さ方向の分析を行ったとき、酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での前述の剥離されたキャリアの前記第一中間層側表面からの深さを測定した。そして、前述の10箇所について測定した、当該深さの算術平均値を、酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での剥離されたキャリアの第一中間層側表面からの深さの平均値とした。また、前述の10箇所について測定した深さの値に基づいて、酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での剥離されたキャリアの第一中間層側表面からの深さの標準偏差並びに、標準偏差/平均値の値を算出した。また、前述の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での深さの範囲におけるCu濃度の最大値の平均値を算出した。
【0166】
また、金属層の各測定点において、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での金属層の第一中間層側表面からの深さを測定し、10箇所の深さの算術平均値を、Cr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での金属層の第一中間層側表面からの深さの平均値とした。また、10箇所のCr、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、ZnおよびAlの合計濃度が5at%以下となるまでのSiO
2換算での金属層の第一中間層側表面からの深さの標準偏差ならびに標準偏差/平均値の値を算出した。
【0167】
<剥離強度>
キャリア付金属箔の表面処理箔側をBT樹脂(トリアジン−ビスマレイミド系樹脂、三菱瓦斯化学株式会社製)に、大気中、圧力:20kgf/cm
2、220℃×2時間の条件下で熱圧着させて貼り付けた。続いて、ロードセルにてキャリア側を引っ張り、90°剥離法(JIS C 6471)に準拠して、長手方向に30mm間隔で10点および幅方向に30mm間隔で10点測定した。目標とする剥離強度は2〜30N/mである。
【0168】
<金属層密着性>
キャリア付金属箔をキャリア側からプリプレグに積層し、金属張積層板を製造した。そして、金属張積層板のキャリア付金属箔の極薄金属層の上に回路を形成し、回路を埋没させるように樹脂層を積層した。その後、樹脂層上に回路、樹脂層を2回設けた後に、キャリアから極薄金属層を剥離し、その後、極薄金属層をエッチングすることにより4層回路基板を作成した。当該4層回路基板を10回作成し、4層回路基板作成中にキャリアから金属層が8回以上剥離した場合には、金属層密着性を「×」とした。また、4〜7回剥離した場合には金属層密着性を「△」、剥離しなかった又は1〜3回剥離した場合には、金属密着性を「○」とした。
【0169】
<レーザー加工性>
キャリア付銅箔と基材(三菱ガス化学(株)製:GHPL−832NX−A)に対して、220℃で2時間加熱の積層プレスを行った後、銅箔キャリアをJIS C 6471(1995、なお、銅箔を引き剥がす方法は、8.1 銅箔の引き剥がし強さ 8.1.1試験方法の種類(1)方法A(銅箔を銅箔除去面に対して90°方向に引き剥がす方法)とした。)に準拠して引き剥がし、極薄銅層の中間層側表面を露出させた。そして露出させたキャリア付銅箔の極薄銅層の中間層側表面に、レーザーを下記条件にて1ショットまたは2ショット照射し、照射後の穴形状を顕微鏡にて観察し、計測を実施した。表では、穴開けの「実数」として、100個の地点に穴開けを試みて実際に何個の穴が空けられなかったか(未開口穴数)を観察した。なお、穴の径は、穴を取り囲む最小円の直径とした。
・ガス種:CO
2
・銅箔開口径(狙い):50μm径
・ビーム形状:トップハット
・出力:2.40W/10μs
・パルス幅:33μs
・ショット数:
1ショット(極薄銅層の厚みが0.8〜2μmの場合)
2ショット(極薄銅層の厚みが3〜5μmの場合)
【0170】
<エッチング性>
キャリア付銅箔をポリイミド基板に貼り付けて220℃で2時間加熱圧着し、その後、極薄銅層を銅箔キャリアから剥がした。続いて、ポリイミド基板上の極薄銅層表面に、感光性レジストを塗布した後、露光工程により50本のL/S=5μm/5μm幅の回路を印刷し、銅層の不要部分を除去するエッチング処理を以下のスプレーエッチング条件にて行った。
(スプレーエッチング条件)
エッチング液:塩化第二鉄水溶液(ボーメ度:40度)
液温:60℃
スプレー圧:2.0MPa
エッチングを続け、回路トップ幅が4μmになるまでの時間を測定し、さらにそのときの回路ボトム幅(底辺Xの長さ)及びエッチングファクターを評価した。エッチングファクターは、末広がりにエッチングされた場合(ダレが発生した場合)、回路が垂直にエッチングされたと仮定した場合の、銅箔上面からの垂線と樹脂基板との交点からのダレの長さの距離をaとした場合において、このaと銅箔の厚さbとの比:b/aを示すものであり、この数値が大きいほど、傾斜角は大きくなり、エッチング残渣が残らず、ダレが小さくなることを意味する。
図6に、回路パターンの幅方向の横断面の模式図と、該模式図を用いたエッチングファクターの計算方法の概略とを示す。このXは回路上方からのSEM観察により測定し、エッチングファクター(EF=b/a)を算出した。なお、a=(X(μm)−4(μm))/2で計算した。このエッチングファクターを用いることにより、エッチング性の良否を簡単に判定できる。本発明では、エッチングファクターが5以上をエッチング性:○、2.5以上5未満をエッチング性:△、2.5未満或いは算出不可をエッチング性:×と評価した。なお、表中「底辺Xの長さ」における「連結」は、少なくとも底辺部分において隣接する回路と連結してしまい、回路が形成できなかったことを示している。
【0171】
<反り量>
反り量は、キャリア付金属箔を10cm角のシート状に切り出して極薄金属層側を上にして水平面上に24時間以上静置した後、シート4隅角部の水平面からの浮き上がり高さの最大値を測定した。シート四隅角部が浮き上がらず、下方向に反っている場合、極薄金属層側を下にして置いてシート四隅角部の浮き上がり高さの最大値を測定した。
反り量は20mm以下を良好として「○」とし、20mmを超える場合には不良として「×」とした。
以上の試験条件及び結果を表1〜12に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
【表4】
【0176】
【表5】
【0177】
【表6】
【0178】
【表7】
【0179】
【表8】
【0180】
【表9】
【0181】
【表10】
【0182】
【表11】
【0183】
【表12】
【0184】
(評価結果)
実施例1〜60は、いずれもキャリアの第一中間層側表面のAES分析において、10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での剥離されたキャリアの第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下で、標準偏差/平均値が0.6以下であったため、金属層密着性及び剥離性が良好であった。
比較例1〜
6、比較例8〜11は、いずれもキャリアの第一中間層側表面のAES分析において、10箇所の酸素が10at%以下となるまでのSiO
2換算での剥離されたキャリアの第一中間層側表面からの深さの平均値が0.5nm以上15nm以下の範囲外又は標準偏差/平均値が0.6以下の範囲外であったため、金属層密着性及び剥離性の少なくともいずれかが不良であった。
図5に、実施例15の一部サンプルのキャリアの第一中間層側表面の基板貼り合わせ前の深さ方向のAES分析結果を示す。