(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842303
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】研削ホイール
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20210308BHJP
B24D 7/06 20060101ALI20210308BHJP
【FI】
B24B45/00 A
B24D7/06
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-4116(P2017-4116)
(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公開番号】特開2018-111175(P2018-111175A)
(43)【公開日】2018年7月19日
【審査請求日】2019年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エイチエス チュア
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−143495(JP,A)
【文献】
特開2016−016359(JP,A)
【文献】
特開平07−328919(JP,A)
【文献】
特表平08−507971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24D 5/16、7/06、7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削装置のスピンドルの先端に固定されたホイールマウントに着脱可能に装着される研削ホイールであって、
該ホイールマウントに装着される装着部と該装着部の反対側の自由端部とを有するホイール基台と、
該ホイール基台の該自由端部に配設された複数の研削砥石と、を備え、
該ホイールマウントには該研削ホイールを締結する締結ボルトが挿入される複数の取り付け孔が周方向に離間して形成されており、
該ホイール基台の該装着部には、該締結ボルトが螺合する複数の雌ねじが該取り付け孔に対応して周方向に離間して複数形成されるとともに、該ホイールマウントの互いに隣接する該取り付け孔の間に対応する位置に該ホイールマウントから該研削ホイールを取り外すリリースボルトが螺入される偶数のリリース雌ねじが該スピンドルの回転軸に対して対称位置に形成された研削ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に備えるスピンドルの先端に固定されたホイールマウントに着脱可能に装着される研削ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
研削装置は、ウエーハなどの被加工物を保持するチャックテーブルと、ウエーハを研削する研削砥石をホイール基台の自由端部に装着して構成される研削ホイールとを少なくとも備えており、ウエーハを所望の厚みに研削することができる。研削ホイールは、ホイールマウントに対して締結ボルトによって着脱自在に装着されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−178149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、研削時に発生した研削屑がホイールマウントと研削ホイールとに付着してホイールマウントから研削ホイールを取り外すことが難しくなる場合がある。この場合、ホイールマウントから研削ホイールを無理に取り外そうとすると、例えば、研削ホイールをチャックテーブルにぶつけてしまい、研削ホイールの砥石を傷つけかねない。また、研削ホイールをホイールマウントに装着したままにしておくと、界面(ホイール基台とホイールマウントとが接触する面)が腐食してしまい、スピンドルを交換しなくてはならないおそれもある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、研削屑がホイールマウントや研削ホイールに付着した場合においてもホイールマウントから研削ホイールを容易に取り外すことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、研削装置のスピンドルの先端に固定されたホイールマウントに着脱可能に装着される研削ホイールであって、該ホイールマウントに装着される装着部と該装着部の反
対側の自由端部とを有するホイール基台と、該ホイール基台の該自由端部に配設された複数の研削砥石と、を備え、該ホイールマウントには該研削ホイールを締結する締結ボルトが挿入される複数の取り付け孔が周方向に離間して形成されており、該ホイール基台の該装着部には、該締結ボルトが螺合する複数の雌ねじが該取り付け孔に対応して周方向に離間して複数形成されるとともに、該ホイールマウントの互いに隣接する該取り付け孔の間に対応する位置に該ホイールマウントから該研削ホイールを取り外すリリースボルトが螺入される
偶数のリリース雌ねじが
該スピンドルの回転軸に対して対称位置に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる研削ホイールは、ホイールマウントに装着される装着部と装着部の反対側の自由端部とを有するホイール基台と、ホイール基台の自由端部に配設された複数の研削砥石とを備え、ホイールマウントには研削ホイールを締結する締結ボルトが挿入される複数の取り付け孔が周方向に離間して形成されており、ホイール基台の装着部には、締結ボルトが螺合する複数の雌ねじが取り付け孔に対応して周方向に離間して複数形成されるとともに、ホイールマウントの互いに隣接する取り付け孔の間に対応する位置にホイールマウントから研削ホイールを取り外すリリースボルトが螺入されるリリース雌ねじが形成されているため、リリースボルトをリリース雌ねじに螺入させてホイールマウントを押し上げることができるため、たとえ研削屑が研削ホイールやホイールマウントに付着していたとしてもホイールマウントから研削ホイールを容易に取り外すことができる。
【0008】
上記リリース雌ねじは偶数形成され、スピンドルの回転軸に対して対称位置に形成されるため、研削ホイールのホイールバランスが崩れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ホイールマウント及び研削ホイールの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】ホイールマウントに研削ホイールが装着された状態を示す断面図である。
【
図4】ホイールマウントから研削ホイールを取り外す状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す研削装置1は、被加工物を研削する研削ホイールを備える研削装置の一例である。研削装置1は、Y軸方向に延在する装置ベース2と、装置ベース2のY軸方向後部側に立設されたコラム3とを有している。装置ベース2の上面には、被加工物を保持し自転可能なチャックテーブル4が配設されている。チャックテーブル4の上面は、被加工物を吸引保持する保持面5となっており、図示しない吸引源に接続されている。チャックテーブル4は、Y軸方向に移動可能な移動ベース6によって下方から支持されている。そして、移動ベース6が蛇腹7の伸縮をともないY軸方向に移動することにより、チャックテーブル4をY軸方向に移動させることができる。
【0011】
コラム3のY軸方向前方においては、被加工物に研削を施す研削手段10と、チャックテーブル4に対して接近及び離反する研削送り方向(Z軸方向)に研削手段10を昇降させる研削送り手段20とが配設されている。研削手段10は、Z軸方向の軸心(
図2に示す回転軸110)を有するスピンドル11と、スピンドル11の外周を囲繞するスピンドルハウジング12と、スピンドル11の一端に取り付けられたモータ13と、スピンドルハウジング12を保持するホルダ14と、スピンドル11の先端に固定されたホイールマウント15に着脱可能に装着される研削ホイール16とを備えている。研削手段10は、モータ13による駆動により研削ホイール16を所定の回転速度で回転させることができ
る。
【0012】
研削送り手段20は、Z軸方向に延在するボールネジ21と、ボールネジ21の一端に接続されたモータ22と、ボールネジ21と平行に延在する一対のガイドレール23と、内部に備えたナットがボールネジ21に螺合するとともに側部がガイドレール23に摺接する昇降板24とを備えている。昇降板24には、ホルダ14が固定されている。そして、モータ22がボールネジ21を回動させると、一対のガイドレール23に沿って昇降板24とともに研削手段10をZ軸方向に昇降させることができる。
【0013】
次に、ホイールマウント15及び研削ホイール16の構成について詳述する。
図2に示すように、ホイールマウント15は、円盤状に形成されており、スピンドル11の先端に固定されている。ホイールマウント15の下面は、研削ホイール16が取り付けられる取り付け面150であり、取り付け面150は鉛直方向と直交する水平方向に平行な平坦面となっている。ホイールマウント15には、研削ホイール16を締結するための締結ボルト17が挿入される複数の取り付け孔151が周方向に等間隔で離間して形成されている。取り付け孔151は、ホイールマウント15の上下面を貫通して形成されている。取り付け孔151の数は、特に限定されず、例えば6つ(
図2では4つのみ図示)形成されている。
【0014】
研削ホイール16は、ホイールマウント15に装着される装着部161と装着部161の反対側の自由端部162とを有するホイール基台160と、ホイール基台160の自由端部162に配設された複数の研削砥石163とを備えている。ホイール基台160は、中央に開口を有し環状に形成されており、ホイール基台160の外径はホイールマウント15の外径と略同径に形成されている。研削砥石163は、例えば略長方体のセグメント砥石である。研削砥石163は、ホイール基台160の自由端部162において周方向に等間隔をあけて複数配設され、例えば接着材によって接着固定されている。
【0015】
ホイール基台160の装着部161は、取り付け面150と平行な平坦面に形成されている。装着部161には、締結ボルト17が螺合する複数の雌ねじ164が形成されている。雌ねじ164は、ホイールマウント15に形成された複数の取り付け孔151の位置と対応して周方向に等間隔で離間して複数形成されている。雌ねじ164の数は、取り付け孔151の数と対応しており、例えば6つ形成されている。
【0016】
また、ホイール基台160の装着部161には、ホイールマウント15の互いに隣接する取り付け孔151の間に対応する位置にホイールマウント15から研削ホイール16を取り外す
図3に示すリリースボルト18が螺入されるリリース雌ねじ165が形成されている。リリース雌ねじ165は、ホイール基台160の上下面を貫通して形成されている。リリース雌ねじ165の数は、偶数であることが好ましく、本実施形態では、スピンドル11の鉛直方向の回転軸110に対して対称位置において例えば2つ形成されている。
【0017】
次に、研削ホイール16を用いて被加工物を研削する動作例について説明する。まず、
図1に示したチャックテーブル4に被加工物を搬送する。図示しない吸引源の吸引力を保持面5に作用させて被加工物を吸引保持し、被加工物を保持したチャックテーブル4を研削手段10の下方に移動させる。
【0018】
続いて、チャックテーブル4を回転させるとともに、研削ホイール16を所定の方向に回転させながら、研削送り手段20によって研削ホイール16をチャックテーブル4の保持面5に接近する方向に下降させる。回転しながら下降する研削砥石163で被加工物の被加工面を押圧しながら所望の厚みに至るまで研削を行う。研削中は、回転する研削砥石163の周囲に研削屑が飛散し、研削ホイール16やホイールマウント15に付着する。
被加工物が所望の厚みに形成された時点で研削が終了する。そして、チャックテーブル4から研削後の被加工物を搬出し、洗浄・乾燥が行われ、図示しない収容カセットなどに収容される。
【0019】
次に、ホイールマウント15に対する研削ホイール16の着脱動作について説明する。
図2に示す研削ホイール16をホイールマウント15に装着する場合は、ホイール基台160の装着部161にホイールマウント15の取り付け面150を密着させた状態で、ホイールマウント15の6つの取り付け孔151に締結ボルト17をそれぞれ挿入するとともにホイール基台160の雌ねじ164で締結ボルト17を螺合させて締結する。これにより、
図3に示すように、研削ホイール16がホイールマウント15に装着される。
【0020】
一方、ホイールマウント15から研削ホイール16を取り外す場合は、ホイールマウント15の6つの取り付け孔151から全ての締結ボルト17を取り外してから、
図4に示すように、ホイール基台160の2つのリリース雌ねじ165にリリースボルト18をそれぞれ螺入させながら、リリースボルト18の端部18aをホイールマウント15の取り付け面150に突き当てて押し上げる。ここで、ホイール基台160の装着部161やホイールマウント15の取り付け面150に研削屑が付着していたとしても、リリースボルト18によって取り付け面150と装着部161とが互いに離反する方向の外力がホイールマウント15に作用するため、リリースボルト18の端部18aでホイールマウント15を押し上げて、ホイール基台160の装着部161とホイールマウント15の取り付け面150とを離間させることができる。このようにして、所定の位置までホイールマウント15を押し上げたら、研削ホイール16をホイールマウント15から取り外す。
【0021】
このように、本発明にかかる研削ホイール16は、ホイールマウント15に装着される装着部161と装着部161の反対側の自由端部162とを有するホイール基台160と、ホイール基台160の自由端部162に配設された複数の研削砥石163とを備え、ホイールマウント15には研削ホイール16を締結する締結ボルト17が挿入される複数の取り付け孔151が周方向に離間して形成されており、ホイール基台160の装着部161には、締結ボルト17が螺合する複数の雌ねじ164が取り付け孔151に対応して周方向に離間して複数形成されるとともに、ホイールマウント15の互いに隣接する取り付け孔151の間に対応する位置にホイールマウント15から研削ホイール16を取り外すリリースボルト18が螺入されるリリース雌ねじ165が形成されているため、リリースボルト18をリリース雌ねじ165に螺入させてホイールマウント15を押し上げることができるため、たとえ研削屑が研削ホイール16やホイールマウント15に付着した場合においてもホイールマウント15から研削ホイール16を容易に取り外すことができる。
また、リリース雌ねじ165はホイール基台160において偶数形成され、スピンドル11の回転軸110に対して対称位置に形成されるため、研削ホイール16のホイールバランスが崩れることがない。
【0022】
上記実施形態では、リリース雌ねじ165の数は、偶数として説明したが、ホイールマウント15に装着された状態の研削ホイール16が回転する際に、研削ホイール16のホイールバランスが崩れずに振動が発生しなければ、リリース雌ねじ165の数は、必ずしも偶数でなくてもよい。したがって、この場合は、奇数(例えば3つ)のリリース雌ねじ165をホイール基台160に形成してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1:研削装置 2:装置ベース 3:コラム 4:チャックテーブル
5:保持面 6:移動ベース 7:蛇腹
10:研削手段 11:スピンドル 12:スピンドルハウジング
13:モータ 14:ホルダ 15:ホイールマウント
150:取り付け面 151:取り付け孔
16:研削ホイール 160:ホイール基台 161:装着部 162:自由端部
163:研削砥石 164:雌ねじ 165:リリース雌ねじ
17:締結ボルト 18:リリースボルト
20:研削送り手段 21:ボールネジ 22:モータ 23:ガイドレール
24:昇降板