特許第6842334号(P6842334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6842334
(24)【登録日】2021年2月24日
(45)【発行日】2021年3月17日
(54)【発明の名称】空気分離方法、及び空気分離装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20210308BHJP
【FI】
   F25J3/04 104
   F25J3/04 101
   F25J3/04 102
   F25J3/04 103
【請求項の数】4
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2017-64413(P2017-64413)
(22)【出願日】2017年3月29日
(65)【公開番号】特開2018-169051(P2018-169051A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橘 博志
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−008778(JP,A)
【文献】 特開平11−257846(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1233739(CN,A)
【文献】 特表平02−501850(JP,A)
【文献】 米国特許第05893276(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、
原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、
前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、
前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、
前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、
前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、
前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、
前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、
前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、
前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、
前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、
を含むことを特徴とする空気分離方法。
【請求項2】
深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、
原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、
前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、
前記高圧原料空気流体の一部、または前記高圧窒素富化空気流体のいずれかを断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、
前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、
前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、
前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、
前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、
前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、
前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、
前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、
を含むことを特徴とする空気分離方法。
【請求項3】
深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、
原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、
前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、
前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、
前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、
前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、
前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、
前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、
前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、
前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、
前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、
を有することを特徴とする空気分離装置。
【請求項4】
深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、
原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、
前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、
前記高圧原料空気流体の一部、または前記高圧窒素富化空気流体のいずれかを断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、
前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、
前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、
前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、
前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、
前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、
前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、
前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、
を有することを特徴とする空気分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気分離方法、及び空気分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
深冷分離法により、空気を窒素と、酸素と、アルゴンとに分離する空気分離方法及び空気分離装置が知られている。かかる空気分離装置は、一般的に大型であるため、設置面積等を削減する試みがなされてきた。
【0003】
図6は、従来の空気分離装置600の概略構成を示す系統図である。
特許文献1で開示されている空気分離装置600は、内圧が約860kPaAである高圧塔4と、内圧が約130kPaAである低圧塔5と、内圧が約230kPaAであるアルゴン塔6と、高圧塔4内の高圧酸素富化液化酸素を間接熱交換器7に送液して導入する液ポンプ34を有している。
【0004】
図7aは、従来の空気分離装置600の構成、及びその配置を示す模式図である。図7aに示すように、空気分離装置600においては、設置面積の削減を図るために、高圧塔4の上方にアルゴン塔6が配置され、さらにその上方に第2間接熱交換器8を収納する第2間接熱交換器外筒14が配置されており、低圧塔5の上方に第1間接熱交換器7を収納する第1間接熱交換器外筒13が配置されている。さらに、高圧塔4の塔底部から高圧酸素富化液化酸素を第1間接熱交換器外筒13に送液する液ポンプ34が高圧塔4の下方に配置されている。
【0005】
特許文献1には、かかる空気分離装置600を用いた空気分離方法が開示されている。従来の空気分離方法においては、高圧塔4内の塔底部の高圧酸素富化液化酸素は、管路61,62を介して、液ポンプ34によって送液され、第1間接熱交換器外筒13に導入される。第1間接熱交換器外筒13に導入された高圧酸素富化液化酸素は、間接熱交換器7によって蒸発気化されて中圧酸素富化空気となる。中圧酸素富化空気は管路651を介して、主熱交換器11で昇温されたのち、膨張タービン10で断熱膨張されている。断熱膨張された流体は、管路652を介して低圧塔5に導入されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−008778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1で開示されている空気分離装置600では、高圧塔4内の圧力が約860kPaAであり、第1間接熱交換器外筒13内の圧力が約600kPaAであり、高圧塔4内の圧力と第1間接熱交換器外筒13内の圧力との圧力差が、約260kPaと小さかった。よって、図7に示す空気分離装置600のように低圧塔5の上方に第1間接熱交換器外筒13を配置するには、高圧塔4の塔底部から高圧酸素富化液化酸素を第1間接熱交換器外筒13に導入する液ポンプ34を空気分離装置600に設ける必要がある。
したがって、空気分離装置600にあっては、液ポンプ34を設置するための余計な設備コスト、スペース、及び動力などが生じていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高圧塔内の圧力と間接熱交換器外筒内の圧力との圧力差を従来より大きくすることができる空気分離方法、及び空気分離装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の構成を備える。
請求項1に係る発明は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする空気分離方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧原料空気流体の一部、または前記高圧窒素富化空気流体のいずれかを断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする空気分離方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする空気分離装置である。
【0012】
請求項4に係る発明は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧原料空気流体の一部、または前記高圧窒素富化空気流体のいずれかを断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする空気分離装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気分離方法、及び空気分離装置によれば、間接熱交換器外筒内の圧力を約130kPaAとし、高圧塔内の圧力を約860kPaAとし、これらの圧力差を約730kPa、と従来より大きくすることができる。よって高圧塔の塔底部から高圧酸素富化液化酸素を間接熱交換器に導入する液ポンプを必要とせずに、低圧塔の上方に間接熱交換器を配置することができ、設備コスト、設置スペース及び動力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第1の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図3図3は、本発明の第3の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図4図4は、本発明の第4の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図5図5は、本発明の第5の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図6図6は、従来の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
図7図7aは従来の空気分離装置の構成、及びその配置を示す模式図である。図7bは、本発明の空気分離装置の構成、及びその配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の空気分離装置の寸法関係とは異なる場合がある。
【0016】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の空気分離装置は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧窒素富化空気流体を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。
なお、第1の実施形態の説明において、「低圧」とは、製品低圧窒素ガスの圧力以上で、かつ、アルゴン塔6の操作圧力よりも低い圧力のことをいう。「中圧」とは、アルゴン塔6の操作圧力以上で、かつ製品高圧窒素ガスの圧力よりも低い圧力のこという。「高圧」とは、製品高圧窒素ガスの圧力以上の圧力のことをいう。
図1に示すように、第1の実施形態の空気分離装置100は、第1原料空気圧縮機1と、精製器2と、第2原料空気圧縮機3、高圧塔4と、低圧塔5と、アルゴン塔6と、第1間接熱交換器7と、第2間接熱交換器8と、第3間接熱交換器9と、膨張タービン10と、主熱交換器11と、過冷器12と、第1間接熱交換器外筒13と、第2間接熱交換器外筒14と、減圧弁21〜27と、液ポンプ31,32,33と、第1製品回収管路46と、第2製品回収管路41,44,45と、第3製品回収管路42,43と、管路50〜63,65〜79,641,642とを有する。
【0018】
空気分離装置100は、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備を有する。原料空気前処理設備は、第1原料空気圧縮機1、精製器2、主熱交換器11を通過する管路51,52、及び、第2原料空気圧縮機3から構成されている。
【0019】
第1原料空気圧縮機1は、管路50に設けられている。第1原料空気圧縮機1は、管路50を介して、酸素、窒素、及びアルゴンを含む空気(以下「原料空気」とも記す。)の供給源(図示略)と接続されている。第1原料空気圧縮機1は、原料空気の供給源(図示略)から供給された原料空気を圧縮する。
【0020】
管路50は、一端が原料空気供給源(図示略)と接続され、他端が管路51と、管路52とに分岐されている。管路50は、第1原料空気圧縮機1により圧縮された原料空気を、後述する精製器2に導入する。
【0021】
精製器2は、管路50のうち、管路51と管路52との分岐位置と、第1原料空気圧縮機1との間に設けられている。精製器2は、第1原料空気圧縮機1により圧縮された原料空気中に含まれる水、及び二酸化炭素等の不純物を除去する。
【0022】
第2原料空気圧縮機3は、管路52のうち、管路50から分岐する位置と、主熱交換器11との間に設けられている。第2原料空気圧縮機3は、精製器2により不純物が除去された原料空気の残部を圧縮する。
減圧弁21は、管路52のうち、第1原料空気圧縮機1と、高圧塔4との間に設けられている。減圧弁21は、主熱交換器11で冷却された当該原料空気を減圧する。
【0023】
主熱交換器11は、管路51,52の一部、及び後述する管路641,642の一部、第2製品回収管路41の一部、及び第3製品回収管路42,43の一部が通過するように配置されている。主熱交換器11は、管路51,52,641,642、第2製品回収管路41、及び第3製品回収管路42,43の各管路を流れる流体間で間接熱交換させ、各流体を冷却、または昇温する。
【0024】
管路51は、高圧塔4の下部と接続されている。管路51の一部は、主熱交換器11を通過している。管路51は、精製器2により不純物が除去された原料空気の一部を、主熱交換器11で冷却し、高圧塔4に第1の高圧原料空気流体として導入する。
管路52は、高圧塔4の中部と接続されている。管路52の一部は、主熱交換器11を通過している。管路52は、第2原料空気圧縮機3により圧縮された当該原料空気を主熱交換器11で冷却し、冷却された当該原料空気を減圧弁21で減圧し、高圧塔4の中部に第2の高圧原料空気流体として導入する。
【0025】
高圧塔4は、管路51,52,53,57,61,641の一端とそれぞれ接続されている。
高圧塔4は、第1及び第2の高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する。具体的には、高圧塔4は管路51,52から導入される第1及び第2の高圧原料空気流体と、管路57から導入される流体と、を低温蒸留して、高圧窒素ガス流体と、高圧窒素富化空気流体と、高圧酸素富化液化空気流体とに分離する。なお、高圧塔4には、精留段(棚)、規則充填材、または不規則充填材等が設けられている。
【0026】
具体的には、高圧塔4に導入された第1の高圧原料空気流体は、高圧塔4内で上昇する際に、高圧塔4の還流液(すなわち、後述する高圧液化窒素流体の一部、及び第2の高圧原料空気流体である。)と向流接触され、低沸点成分の組成が増加する。一方、高圧塔4の還流液である高圧液化窒素流体、及び第2の高圧原料空気流体は、高圧塔4内で下降する際に、高圧塔4の上昇ガスである第1の高圧原料空気流体と向流接触され、高沸点成分の組成が増加する。
【0027】
高圧窒素ガス流体は、高圧塔4の塔頂部で生成される。高圧窒素ガス流体の窒素濃度は、原料空気の窒素濃度より高く、高圧窒素ガス流体の酸素濃度は、原料空気の酸素濃度より低い。高圧窒素ガス流体は、管路53に導出される。
高圧窒素富化空気流体は、高圧塔4の中間部で生成される。高圧窒素富化空気流体の窒素濃度は、高圧酸素富化液化空気流体の窒素濃度より高い。高圧窒素富化空気流体は、管路641に導出される。
高圧酸素富化液化空気流体は、高圧塔4の塔底部で生成される。高圧酸素富化液化空気流体は、管路61に導出される。
【0028】
管路53は、一端が高圧塔4の上部と接続され、他端が管路54と、管路55とに分岐されている。
管路54は、第2製品回収管路41と接続されている。管路54は、管路53に導出された高圧窒素ガス流体の一部を、第2製品回収管路41に導出する。
管路55は、第3間接熱交換器9の流体通路入口と接続されている。管路55は、管路53に導出された高圧窒素ガス流体の残部を、第3間接熱交換器9に導入する。
第2製品回収管路41は、管路53から分岐された管路54と接続されている。第2製品回収管路41の一部は、主熱交換器11を通過している。第2製品回収管路41は、高圧窒素ガス流体を主熱交換器11で間接熱交換させて昇温する。第2製品回収管路41は、管路54に導出された高圧窒素ガス流体を、製品高圧窒素ガスとして回収するための管路である。
【0029】
管路57は、一端が高圧塔4の上部と接続され、他端が管路56と、管路58とに分岐されている。管路56は、第3間接熱交換器9の流体通路出口と接続されている。管路57は、第3間接熱交換器9で生成される高圧液化窒素流体の一部を高圧塔4の上部に導入する。
管路58は、管路59と、管路60とにさらに分岐している。管路58の一部は、過冷器12を通過している。管路58は、第3間接熱交換器9で生成された高圧液化窒素流体の残部を、過冷器12で冷却する。
管路59は、低圧塔5の上部と接続されている。減圧弁26は、管路59に設けられている。減圧弁26は、過冷器12で冷却された高圧液化窒素流体を減圧する。管路59は、管路58に導出された高圧液化窒素流体の一部を、減圧弁26で減圧し、低圧液化窒素流体として低圧塔5の塔頂部に導入する。なお、低圧塔5に導入された低圧液化窒素流体は、低圧塔5の還流液となる。
管路60は、第2製品回収管路44と接続されている。管路60は、管路58から分岐された管路である。第2製品回収管路44は、管路58に導出された高圧液化窒素流体の残部を製品液化窒素として回収するための管路である。
【0030】
管路61は、一端が高圧塔4の底部と接続され、他端が管路62と、管路63とに分岐されている。管路62は、第1間接熱交換器外筒13の上部と接続されている。減圧弁22は、管路62に設けられている。すなわち、減圧弁22は、高圧塔4と、第1間接熱交換器外筒13との間に設けられている。
減圧弁22は、管路62に導出される高圧酸素富化液化空気流体を減圧する。すなわち、減圧弁22は、高圧塔4で分離された高圧酸素富化液化空気流体の一部を減圧する。管路62は、高圧酸素富化液化空気流体の一部を減圧弁22で減圧し、第2の低圧酸素富化液化空気流体としたのち、第1間接熱交換器外筒13に導入する。
管路63は、低圧塔5の中部と接続されている。管路63の一部は、過冷器12を通過している。減圧弁23は、管路63のうち、過冷器12と、低圧塔5との間に設けられている。減圧弁23は、管路63に導出される高圧酸素富化液化空気流体を減圧する。管路63は、前記高圧酸素富化液化空気流体を、過冷器12で冷却し、減圧弁23で減圧したのち、第1の低圧酸素富化液化空気流体として低圧塔5の中間部に導入する。なお、低圧塔5の中間部に導入された第1の低圧酸素富化液化空気流体は、低圧塔5の還流液となる。
【0031】
管路641は、一端が高圧塔4の中部と接続され、他端が膨張タービン10の流体通路入口と接続されている。管路641の一部は、主熱交換器11を通過している。管路641は、主熱交換器11で高圧窒素富化空気流体を、間接熱交換させて昇温し、膨張タービン10に導入する。
膨張タービン10は、管路641に導出された高圧窒素富化空気流体を断熱膨張して寒冷流体である低圧窒素富化空気流体を生成する。膨張タービン10は、当該断熱膨張によって、空気分離装置100に必要な寒冷を発生させる。
管路642は、一端が膨張タービン10の流体通路出口と接続され、他端が第1間接熱交換器7の流体通路入口と接続されている。管路642の一部は、主熱交換器11を通過している。管路642は、低圧窒素富化空気流体を、主熱交換器11で間接熱交換させて冷却したのち、第1間接熱交換器7に導入する。
【0032】
第1間接熱交換器外筒13は、管路62の一端と接続されている。第1間接熱交換器外筒13は、内部に第1間接熱交換器7を収納している。第1間接熱交換器外筒13は、管路62から導入された第2の低圧酸素富化液化空気流体を貯留する。
第1間接熱交換器7は、第1間接熱交換器外筒13に収容されている。第1間接熱交換器7の流体通路入口は、管路642の一端と接続されている。第1間接熱交換器7は、寒冷流体である低圧窒素富化空気流体と、第2の低圧酸素富化液化空気流体(第1間接熱交換器外筒13の内部に貯留される流体)とを間接熱交換する。
より具体的には、第1間接熱交換器7は、管路642から導入される低圧窒素富化空気流体と、管路62から導入される第2の低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換させる。第1間接熱交換器7は、当該間接熱交換によって、管路642から導入される低圧窒素富化空気流体を凝縮液化して低圧窒素富化液化空気流体(「低圧液化ガス流体」とも記す。)を生成するとともに、管路62から導入される第2の低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する。
【0033】
管路65は、一端が第1間接熱交換器外筒13の頂部と接続され、他端が低圧塔5の中部と接続されている。管路65は、低圧酸素富化空気流体を、低圧塔5の中間部に導入する。なお、低圧塔5の中間部に導入された低圧酸素富化空気流体は、低圧塔5の上昇ガスとなる。
【0034】
管路66は、一端が第1間接熱交換器外筒13の底部と接続され、他端が低圧塔5の中部と接続されている。減圧弁25は、管路66に設けられている。減圧弁25は、管路66に導出される第2の低圧酸素富化液化空気流体を減圧する。管路66は、液ヘッド差で加圧された第2の低圧酸素富化液化空気流体を減圧弁25で減圧し、第2の低圧酸素富化液化空気流体として、低圧塔5の中間部に導入する。なお、低圧塔5に導入された第2の低圧酸素富化液化空気流体は、低圧塔5の還流液となる。
【0035】
管路67は、一端が第1間接熱交換器7の流体通路出口と接続され、他端が低圧塔5の上部と接続されている。管路67の一部は、過冷器12を通過している。減圧弁24は、管路67のうち、過冷器12と、低圧塔5との間に設けられている。減圧弁24は、管路67に導出される低圧窒素富化液化空気流体を減圧する。管路67は、前記低圧窒素富化液化空気流体を、過冷器12で冷却し、減圧弁24で減圧したのち、低圧塔5の上部に導入する。なお、低圧塔5に導入された低圧窒素富化液化空気流体は、低圧塔5の還流液となる。
【0036】
低圧塔5は、管路59,63,65,66,67,68,69,70,74の一端とそれぞれ接続されている。
管路74は、一端が第2間接熱交換器外筒14の頂部と接続され、他端が低圧塔5の下部と接続されている。管路74は、後述する第2間接熱交換器8で生成される低圧酸素ガス流体を、低圧塔5に導入する。なお、低圧塔5に導入された低圧酸素ガス流体は、低圧塔5の上昇ガスとなる。
【0037】
低圧塔5は管路59から導入される低圧液化窒素流体と、管路63から導入される第1の低圧酸素富化液化空気流体と、管路65から導入される低圧酸素富化空気流体と、管路66から導入される第2の低圧酸素富化液化空気流体と、管路67から導入される低圧窒素富化液化空気流体と、管路74から導入される低圧酸素ガス流体と、を低温蒸留して、塔頂部の低圧窒素ガス流体と、塔底部の低圧液化酸素流体と、中間部の低圧アルゴン富化液化酸素流体と、に分離する。なお、低圧塔5内には、精留段(棚)、規則充填材、または不規則充填材等が設けられている。
【0038】
具体的には、低圧塔5に導入された低圧塔5の上昇ガス(すなわち、低圧酸素富化空気流体、及び低圧酸素ガス流体である。)は、低圧塔5内で上昇する際に、低圧塔5の還流液(すなわち、低圧液化窒素流体、第1の低圧酸素富化液化空気流体、第2の低圧酸素富化液化空気流体、及び低圧窒素富化液化空気流体である)と向流接触され、低沸点成分の組成が増加する。一方、低圧塔5に導入された低圧塔5の還流液(すなわち、低圧液化窒素流体、第1の低圧酸素富化液化空気流体、第2の低圧酸素富化液化空気流体、及び低圧窒素富化液化空気流体である。)は、低圧塔5内で下降する際に、低圧塔5の上昇ガス(すなわち、低圧酸素富化空気流体、及び低圧酸素ガス流体である。)と向流接触され、高沸点成分の組成が増加する。
【0039】
低圧窒素ガス流体は、低圧塔5の塔頂部で生成される。低圧窒素ガス流体の窒素濃度は、低圧液化窒素流体、第1の低圧酸素富化液化空気流体、第2の低圧酸素富化液化空気流体、及び低圧窒素富化液化空気流体から構成される低圧塔5の還流液の各流体の窒素濃度より高く、低圧窒素ガス流体の酸素濃度は、低圧塔5の還流液の各流体の酸素濃度より低い。低圧窒素ガス流体は、管路68に導出される。
低圧液化酸素流体は、低圧塔5の塔底部で生成される。低圧液化酸素流体の窒素濃度は、低圧窒素富化空気流体及び低圧酸素ガス流体から構成される低圧塔5の上昇ガスの各流体の窒素濃度より低く、低圧液化酸素流体の酸素濃度は、低圧塔5の上昇ガスの各流体の酸素濃度より高い。低圧液化酸素流体は、管路69に導出される。
低圧アルゴン富化液化酸素流体は、低圧塔5の中間部で生成される。低圧アルゴン富化液化酸素流体のアルゴン濃度は、低圧液化酸素流体のアルゴン濃度より高い。低圧アルゴン富化液化酸素流体は、管路70に導出される。
【0040】
管路68は、一端が低圧塔5の頂部と接続され、他端が第3製品回収管路43と接続されている。管路68の一部は、過冷器12を通過している。管路68に導出された低圧窒素ガス流体は過冷器12で昇温される。
第3製品回収管路43は、管路68と接続されている。第3製品回収管路43の一部は、主熱交換器11を通過している。第3製品回収管路43は、主熱交換器11で低圧窒素ガス流体を、間接熱交換させて昇温する。第3製品回収管路43は、管路68に導出された低圧窒素ガス流体を、製品低圧窒素ガスとして回収するための管路である。
【0041】
管路69は、一端が低圧塔5の底部と接続され、他端が第2間接熱交換器外筒14の上部と接続されている。液ポンプ31は、管路69に設けられている。液ポンプ31は、管路69に導出される低圧液化酸素流体を加圧する。管路69は、低圧液化酸素流体を液ポンプ31で加圧したのち、第2間接熱交換器外筒14に導入する。
管路70は、一端が低圧塔5の中部と接続され、他端がアルゴン塔6の中部と接続されている。液ポンプ32は、管路70に設けられている。液ポンプ32は、管路70に導出される低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧する。管路70は、低圧アルゴン富化液化酸素流体を液ポンプ32で加圧したのち、アルゴン塔6の中間部に導入する。アルゴン塔6の中間部に導入された当該流体は、アルゴン塔6の還流液となる。
【0042】
第2間接熱交換器外筒14は、管路69の一端と接続されている。第2間接熱交換器外筒14は、内部に第2間接熱交換器8を収納している。第2間接熱交換器外筒14は、管路69から導入された低圧液化酸素流体を貯留する。
第2間接熱交換器8は、第2間接熱交換器外筒14に収容されている。第2間接熱交換器8の流体通路入口は、管路79の一端と接続されている。第2間接熱交換器8は、管路69から導入される低圧液化酸素流体(すなわち、第2間接熱交換器外筒14の内部に貯留される流体である。)と、管路79から導入されるアルゴンガス流体と、を間接熱交換させる。第2間接熱交換器8は、当該間接熱交換によって、管路79から導入されるアルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、管路69から導入される低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する。
【0043】
管路71は、一端が第2間接熱交換器8の流体通路出口と接続され、他端が管路72と、管路73とに分岐されている。管路71は、第2間接熱交換器8で生成される液化アルゴン流体の一部を管路72に導出し、その残部を管路73に導出する。
管路72は、アルゴン塔6の上部と接続されている。管路72は、管路71に導出された液化アルゴン流体の一部をアルゴン塔6の塔頂部に導入する。なお、アルゴン塔6の塔頂部に導入された液化アルゴン流体は、アルゴン塔6の還流液となる。
管路73は、第1製品回収管路46と接続されている。第1製品回収管路46は、管路71に導出された液化アルゴン流体の残部を、製品液化アルゴンとして回収するための管路である。なお、第1の実施形態では液化アルゴン流体を製品として回収しているが、アルゴンガス流体を製品として回収してもよい。
管路74は、第2間接熱交換器8で生成される低圧酸素ガス流体を、低圧塔5に導出する。なお、低圧塔5に導入された低圧酸素ガス流体は、低圧塔5の上昇ガスとなる。
管路75は、一端が第2間接熱交換器外筒14の下部と接続され、他端がアルゴン塔6の下部と接続されている。減圧弁27は、管路75に設けられている。減圧弁27は、管路75に導出される低圧液化酸素流体を減圧する。管路75は、液ヘッド差で加圧された低圧液化酸素流体を減圧弁27で減圧し、アルゴン塔6の塔底部に導入する。
【0044】
アルゴン塔6は、管路70,72,75,76,79の一端とそれぞれ接続されている。
アルゴン塔6は管路70から導入される低圧アルゴン富化液化酸素流体と、管路72から導入される液化アルゴン流体と、後述する中圧酸素ガス流体と、を低温蒸留して、塔頂部のアルゴンガス流体と、塔底部の中圧液化酸素流体とに分離する。なお、アルゴン塔6内には、精留段(棚)、規則充填材、または不規則充填材等が設けられている。
【0045】
具体的には、アルゴン塔6に導入された低圧アルゴン富化液化酸素流体、及び液化アルゴン流体は、アルゴン塔6の還流液として、アルゴン塔6内で下降する。アルゴン塔6の還流液が下降する際に、アルゴン塔6の上昇ガス(すなわち、中圧酸素ガス流体である。)と向流接触され、低圧アルゴン富化液化酸素流体、及び液化アルゴン流体の高沸点成分の組成が増加する。一方、アルゴン塔6の上昇ガスである中圧酸素ガス流体は、アルゴン塔6内で上昇する際に、アルゴン塔6の還流液(すなわち、低圧アルゴン富化液化酸素流体、及び液化アルゴン流体である。)と向流接触され、低沸点成分の組成が増加する。
アルゴンガス流体は、アルゴン塔6の塔頂部で生成される。前記アルゴンガス流体は管路79に導出される。中圧液化酸素流体は、アルゴン塔6の塔底部で生成される。前記中圧液化酸素流体は管路76に導出される。
【0046】
第3間接熱交換器9は、アルゴン塔6の塔底部に収容されている。第3間接熱交換器9の流体通路入口は管路55と接続されている。第3間接熱交換器9は、管路55から導入される高圧窒素ガス流体と、アルゴン塔6の塔底部に貯留された中圧液化酸素流体と、を間接熱交換させる。第3間接熱交換器9は、当該間接熱交換によって、管路55から導入される高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、アルゴン塔6の塔底部で生成される中圧液化酸素流体を蒸発気化して前述した中圧酸素ガス流体を生成する。
管路56の一端は、第3間接熱交換器9の流体通路出口と接続されている。管路56は、第3間接熱交換器9で生成される高圧液化窒素流体を導出する。
【0047】
管路76は、一端がアルゴン塔6の底部と接続され、他端が管路77と、管路78とに分岐されている。
管路77は、第3製品回収管路42と接続されている。液ポンプ33は、管路77に設けられている。液ポンプ33は、管路76に導出される中圧液化酸素流体の一部を加圧する。管路77は、管路76に導出される中圧液化酸素流体の一部を液ポンプ33で加圧し、液ポンプ33で加圧された当該流体を第3製品回収管路42に導入する。
第3製品回収管路42は、管路77と接続されている。第3製品回収管路42の一部は、主熱交換器11を通過している。第3製品回収管路42は、管路76に導出される中圧液化酸素流体の残部を主熱交換器11で間接熱交換し、昇温する。
第3製品回収管路42は、管路77に導出され、液ポンプ33で加圧された流体を主熱交換器11で昇温し、製品高圧酸素ガスとして回収するための管路である。なお、液ポンプ33で加圧される流体は、第2間接熱交換器外筒14から、第2間接熱交換器外筒14に接続される図示せぬ管路を介して管路77に直接導出される低圧液化酸素流体であってもよい。
【0048】
管路78は、第2製品回収管路45と接続されている。管路78は、管路76に導出される中圧液化酸素流体の残部を第2製品回収管路45に導入する。
第2製品回収管路45は、管路78と接続されている。第2製品回収管路45は、管路76に導出される中圧液化酸素流体の残部を、製品液化酸素ガスとして回収するための管路である。
管路79は、一端がアルゴン塔6の上部と接続され、他端が第2間接熱交換器8の流体通路入口と接続されている。管路79は、アルゴン塔6の塔頂部で生成されるアルゴンガス流体を、第2間接熱交換器8に導入する。
【0049】
以上説明した第1の実施形態の空気分離装置100は、上記の構成を有する。かかる構成を有する第1の実施形態の空気分離装置100によれば、第1間接熱交換器外筒13内の圧力を、130kPaAとすることができる。これにより、管路61に導出される高圧酸素富化液化空気流体の一部を送液する管路62に液ポンプを設けなくとも、低圧塔5の上方に設けられた第1間接熱交換器外筒13に当該高圧酸素富化液化空気流体を送液することができる。したがって、かかる液ポンプを設置するための設備コスト、設置スペース及び動力を削減することができる。
【0050】
以下、図1を参照して、第1の実施形態の空気分離方法について説明する。
第1の実施形態の空気分離方法は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧原料空気流体の一部、または前記高圧窒素富化空気流体のいずれかを断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0051】
原料空気は管路50に導入される。管路50に導入された原料空気は、第1原料空気圧縮機1により圧縮され、精製器2で当該原料空気中に含まれる水、及び二酸化炭素等の不純物が除去される。
精製器2で不純物が除去された原料空気の一部は、管路51を経て主熱交換器11で冷却され第1の高圧原料空気流体となる(原料空気圧縮工程)。
【0052】
精製器2で不純物が除去された原料空気の残部は、管路51から分岐された管路52に設けられた第2原料空気圧縮機3によりさらに圧縮されて昇圧された後に、主熱交換器11で冷却される。主熱交換器11で冷却された当該原料空気は、減圧弁21で減圧され、第2の高圧原料空気流体となる(原料空気圧縮工程)。このように、原料空気圧縮工程では、原料空気を圧縮、精製、冷却し、第1、及び第2の高圧原料空気流体を得る。
【0053】
主熱交換器11では、管路51,52,642を流れる高温流体と、管路641、第2製品回収管路41、及び第3製品回収管路42,43を流れる低温流体と、の間接熱交換により、高温流体が冷却され、低温流体が昇温される。
【0054】
高圧分離工程では、第1、及び第2の高圧原料空気流体を、低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する。具体的に高圧塔4では、管路51,52を介して導入される第1、及び第2の高圧原料空気流体と、管路57を介して導入される高圧液化窒素流体と、が低温蒸留により、高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離される(高圧分離工程)。高圧窒素ガス流体は、高圧塔4の塔頂部に生成され、高圧窒素富化空気流体は、高圧塔4の中間部に生成され、高圧酸素富化液化空気流体は、高圧塔4の塔底部に生成される。
【0055】
高圧塔4の塔底部の高圧酸素富化液化空気流体は、管路61に導出される。管路61に導出された高圧酸素富化液化空気流体の一部は、管路62を介して、減圧弁22で所定の圧力に減圧された後、第2の低圧酸素富化液化空気流体として第1間接熱交換器外筒13に導入される。
管路61に導出された高圧酸素富化液化空気流体の残部は、管路63を介して、過冷器12で冷却され、減圧弁23で所定の圧力に減圧された後、第1の低圧酸素富化液化空気流体として低圧塔5に導入され、低圧塔5の還流液となる。
【0056】
高圧塔4の中間部の高圧窒素富化空気流体は、管路641を介して、主熱交換器11で間接熱交換によって昇温された後、膨張タービン10に導入される。膨張タービン10によって高圧窒素富化空気流体の一部は、断熱膨張させられ、寒冷流体である低圧窒素富化空気流体が発生する(断熱膨張工程)。すなわち、断熱膨張工程は、高圧窒素富化空気流体を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる。当該断熱膨張によって、空気分離装置100に必要な寒冷が発生する。空気分離装置100に必要な寒冷が発生したのち、低圧窒素富化空気流体は、管路642を介して、主熱交換器11で間接熱交換によって冷却され、第1間接熱交換器7に導入される。
【0057】
高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体は管路53に導出される。管路53に導出された高圧窒素ガス流体の一部は、管路54を介して、第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で間接熱交換によって昇温され、第2製品回収管路41から製品高圧窒素ガスとして導出される(第2製品回収工程)。
【0058】
管路53に導出された高圧窒素ガス流体の残部は、管路55を介して、第3間接熱交換器9に導入される。管路55を介して第3間接熱交換器9に導入された高圧窒素ガス流体は、アルゴン塔6の塔底部の中圧液化酸素流体との間接熱交換により、自らは凝縮液化して高圧液化窒素流体になると共に、アルゴン塔6の塔底部の中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する(第3間接熱交換工程)。
【0059】
第3間接熱交換器9から管路56に導出される高圧液化窒素流体の一部は、管路57を介して、高圧塔4に導入され、高圧塔4の還流液となる。
第3間接熱交換器9から管路56に導出される高圧液化窒素流体の残部は、管路58を介して、過冷器12で冷却される。
過冷器12で冷却された当該高圧液化窒素流体の一部は、管路59を介して、減圧弁26で所定の圧力に減圧された後、低圧液化窒素流体として低圧塔5に導入され、低圧塔5の還流液となる。
過冷器12で冷却された当該高圧液化窒素流体の残部は、管路60を介して、第2製品回収管路44から製品液化窒素として導出される(第2製品回収工程)。
【0060】
管路642を介して第1間接熱交換器7に導入される低圧窒素富化空気流体は、高圧窒素富化空気流体の一部を断熱膨張させて発生する寒冷流体である。第1間接熱交換器外筒13の内部の第2の低圧酸素富化液化空気流体は、高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた流体である。
寒冷流体である低圧窒素富化空気流体と、第2の低圧酸素富化液化空気流体とを間接熱交換させることにより、寒冷流体である低圧窒素富化空気流体は、自らは凝縮液化して低圧窒素富化液化空気流体(すなわち、低圧液化ガス流体である。)になると共に、第2の低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化させて低圧酸素富化空気流体を生成する(第1間接熱交換工程)。
【0061】
第2の低圧酸素富化液化空気流体は、第1間接熱交換器外筒13の底部から管路66を介して、液ヘッド差で加圧された後に減圧弁25で所定の圧力に減圧された後、第2の低圧酸素富化液化空気流体として低圧塔5に導入され、低圧塔5の還流液となる。
低圧窒素富化液化空気流体は、第1間接熱交換器7から管路67を介して、過冷器12で冷却され、減圧弁24で所定の圧力に減圧された後、低圧塔5に導入され、低圧塔5の還流液となる。
【0062】
低圧塔5では、管路59を介して導入される低圧液化窒素流体と、管路63を介して導入される第1の低圧酸素富化液化空気流体と、管路66を介して導入される第2の低圧酸素富化液化空気流体と、管路67を介して導入される低圧窒素富化液化空気流体と、管路65を介して導入される低圧酸素富化空気流体と、管路74を介して導入される低圧酸素ガス流体とが低温蒸留され、低圧塔5の塔頂部の低圧窒素ガス流体と、低圧塔5の塔底部の低圧液化酸素流体と、低圧塔5の中間部の低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離される(低圧分離工程)。実施形態の低圧分離工程では、低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留に利用する。なお、低圧酸素ガス流体は、低圧塔5の上昇ガスを構成する。
【0063】
低圧塔5の塔頂部の低圧窒素ガス流体は、管路68を介して、過冷器12で昇温され、さらに主熱交換器11で間接熱交換によって昇温され、第3製品回収管路43から製品低圧窒素ガスとして導出される。
低圧塔5の中間部の低圧アルゴン富化液化酸素流体は、管路70を介して、液ポンプ32で所定の圧力に加圧されたのち、アルゴン塔6の中間部に導入され、アルゴン塔6の還流液となる。
低圧塔5の塔底部の低圧液化酸素流体は、管路69を介して、液ポンプ31で所定の圧力に加圧された後、第2間接熱交換器外筒14に導入される。
【0064】
高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体は、管路53を介して、アルゴン塔6の底部に収容された第3間接熱交換器9に導入される。
【0065】
管路79を介して第2間接熱交換器8に導入されるアルゴンガス流体は、第2間接熱交換器外筒14の内部の低圧液化酸素流体との間接熱交換により、自らは凝縮液化して液化アルゴン流体になると共に、低圧液化酸素流体を蒸発気化させて低圧酸素ガス流体を生成する(第2間接熱交換工程)。
液化アルゴン流体は管路71に導出される。管路71に導出された液化アルゴン流体の一部は管路72を介して、アルゴン塔6の塔頂部に導入され、アルゴン塔6の還流液となる。
低圧酸素ガス流体は、管路74に導出される。管路74に導出された低圧酸素ガス流体は、低圧塔5の下部に導入され、低圧塔5の上昇ガスを構成する。
第2間接熱交換器外筒14の塔底部の低圧液化酸素流体の一部は、管路75に導出される。管路75に導出された低圧液化酸素流体は液ヘッド差で加圧され、減圧弁27で所定の圧力に減圧されたのち、アルゴン塔6に導入される。
【0066】
管路71に導出された液化アルゴン流体の残部は管路73を介して、第1製品回収管路46から製品液化アルゴンとして導出される(第1製品回収工程)。なお、第1の実施形態では液化アルゴン流体を製品として回収したが、アルゴンガス流体を製品として回収してもよい。
【0067】
アルゴン塔6では、管路70を介して導入される低圧アルゴン富化液化酸素流体と、管路72を介して導入される液化アルゴン流体の一部と、中圧酸素ガス流体とが低温蒸留され、アルゴン塔6の塔頂部のアルゴンガス流体と、アルゴン塔6の塔底部の中圧液化酸素流体とに分離される(アルゴン分離工程)。
アルゴン塔6の塔頂部のアルゴンガス流体は、管路79を介して、第2間接熱交換器8に導入される。
【0068】
アルゴン塔6の塔底部の中圧液化酸素流体は、管路76に導出される。管路76に導出された中圧液化酸素流体の一部は、管路77を介して、液ポンプ33で所定の圧力に加圧されたのち、主熱交換器11で間接熱交換によって蒸発気化、および昇温され、第3製品回収管路42から製品高圧酸素ガスとして導出される(第2製品回収工程)。なお、液ポンプ33に供給される流体として、第2間接熱交換器外筒14に貯留された低圧液化酸素流体を用いてもよい。
管路76に導出された中圧液化酸素流体の残部は、管路78を介して、第2製品回収管路45から製品液化酸素として導出される。
【0069】
第1の実施形態の空気の分離方法および装置では、間接熱交換器外筒13内の圧力が、130kPaAとなっている。これにより、高圧酸素富化液化空気流体の一部を送液する管路62に液ポンプを設ける必要がなく、液ポンプを設置するための設備コスト、設置スペース及び動力を削減することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の空気分離装置は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする。
【0071】
図2は、本発明の第2の実施形態の空気分離装置200の概略構成を示す系統図である。図2において、図1に示す第1の実施形態の空気分離装置100と同一構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、第2の実施形態の説明において、「低圧」とは、製品低圧窒素ガスの圧力以上で、かつ、アルゴン塔6の操作圧力よりも低い圧力のことをいう。「中圧」とは、アルゴン塔6の操作圧力以上で、かつ製品高圧窒素ガスの圧力よりも低い圧力のこという。「高圧」とは、製品高圧窒素ガスの圧力以上の圧力のことをいう。
【0072】
図2に示すように、第2の実施形態の空気分離装置200は、第1の実施形態の空気分離装置100を構成する管路641を構成要素から除くこと、並びに管路80,81,82、及び減圧弁28を有すること以外は、空気分離装置100と同様に構成される。
【0073】
管路80は、一端が膨張タービン10の流体通路入口と接続され、他端が、第2製品回収管路41のうち、主熱交換器11を通過する部分と接続されている。すなわち、第2製品回収管路41は、一端が管路54と接続され、他端が管路80と、管路81とに分岐されている。なお、管路81は、管路80と、第2製品回収管路41とが接続する位置より二次側の第2製品回収管路41の部分と同一である。
管路80は、第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で昇温された高圧窒素ガス流体の一部を、膨張タービン10に導入する。
管路81は、第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で昇温された高圧窒素ガス流体の残部を、製品高圧窒素ガスとして回収するための管路である。
管路82は、一端が高圧塔4の中部と接続され、他端が低圧塔5の中部と接続されている。管路82の一部は、過冷器12を通過している。減圧弁28は、管路82のうち、過冷器12と、低圧塔5との間に設けられている。減圧弁28は、管路82に導出される高圧塔4の還流液を減圧する。管路82は、高圧塔4の還流液の一部を、過冷器12で冷却し、減圧弁28で減圧したのち、低圧塔5の中間部に導入する。
【0074】
上記構成とされた第2の実施形態の空気分離装置200では、膨張タービン10は、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離装置100と同様の効果を奏する。
【0075】
以下、図2を参照して、第2の実施形態の空気分離方法について説明する。
第2の実施形態の空気分離方法は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0076】
第2の実施形態の空気分離方法は、高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部を管路53、管路54、及び第2製品回収管路41を介して、管路80に導出し、当該高圧窒素ガス流体を管路80から膨張タービン10に導入することによって、空気分離装置200に必要な寒冷を発生させていること以外は、先に説明した第1の実施の形態の空気分離方法と同様な手法により行うことができる。
【0077】
第2の実施形態の空気分離方法では、管路53に導出された高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部は、管路54を介して第2製品回収管路41に導出される。第2製品回収管路41に導出された高圧窒素ガス流体は、主熱交換器11で昇温される。
第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で昇温された高圧窒素ガス流体の一部は膨張タービン10で断熱膨張され、空気分離装置200に必要な寒冷を発生させる。
膨張タービン10で断熱膨張させて発生した寒冷流体は、管路642を介して、主熱交換器11で冷却されたのち、第1間接熱交換器7に導入される。
【0078】
第2の実施形態の空気分離方法では、管路82に導出された高圧塔4を下降する還流液は、過冷器12で冷却され、減圧弁28で減圧されたのち、低圧塔5の中間部に導入される。減圧弁28で減圧されたのちに低圧塔5の中間部に導入された低圧窒素富化液化空気流体は、低圧塔5の還流液となる。
【0079】
図2に示す空気分離装置200を用いた第2の実施形態の空気分離方法では、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離方法と同様の効果を奏する。
【0080】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の空気分離装置は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧原料空気流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする。
【0081】
図3は、本発明の第3の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。図3において、図1に示す第1の実施形態の空気分離装置100と同一構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、第3の実施形態の説明において、「低圧」とは、製品低圧窒素ガスの圧力以上で、かつ、アルゴン塔6の操作圧力よりも低い圧力のことをいう。「中圧」とは、アルゴン塔6の操作圧力以上で、かつ製品高圧窒素ガスの圧力よりも低い圧力のこという。「高圧」とは、製品高圧窒素ガスの圧力以上の圧力のことをいう。
【0082】
図3に示すように、第3の実施形態の空気分離装置300は、第1の実施形態の空気分離装置100を構成する第2原料空気圧縮機3、減圧弁21、管路52、及び管路641を構成要素から除くこと、並びに管路83,84、減圧弁29、及び圧縮機35を有すること以外は、空気分離装置100と同様に構成される。
【0083】
管路83は、一端が膨張タービン10の流体通路入口と接続され、他端が、管路51のうち、主熱交換器11を通過する部分と接続されている。
管路83は、第1原料空気圧縮機1で圧縮され、精製器2で不純物が除去された高圧原料空気流体の一部を、膨張タービン10に導入する。
管路84は、一端が高圧塔4の上部と接続され、他端が第2製品回収管路41のうち、主熱交換器11を通過していない部分と接続されている。すなわち、第2製品回収管路41は、一端が管路54と接続され、他端が管路84と、管路85とに分岐されている。なお、管路85は、管路84と、第2製品回収管路41とが接続する位置より二次側の第2製品回収管路41の部分と同一である。
圧縮機35は、管路84のうち、第2製品回収管路41から分岐する位置と、主熱交換器11との間に設けられている。圧縮機35は、第2製品回収管路41に導出された高圧窒素ガス流体の一部を圧縮し、昇圧窒素ガス流体を生成する。
減圧弁29は、管路84のうち、主熱交換器11と、高圧塔4との間に設けられている。減圧弁29は、圧縮機35で圧縮された、主熱交換器11で昇温された昇圧窒素ガス流体を減圧する。
管路84は、第2製品回収管路41に導出された高圧窒素ガス流体の一部を、圧縮機35で圧縮し、昇圧窒素ガス流体とし、昇圧窒素ガス流体を主熱交換器11で冷却し、減圧弁29で減圧したのち、高圧塔4の塔頂部に導入する。
【0084】
上記構成とされた第3の実施形態の空気分離装置300では、膨張タービン10は、高圧原料空気流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離装置100と同様の効果を奏する。
【0085】
以下、図3を参照して、第3の実施形態の空気分離方法について説明する。
第3の実施形態の空気分離方法は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧原料空気流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0086】
第3の実施形態の空気分離方法は、第1原料空気圧縮機1で圧縮され、精製器2で不純物が除去された高圧原料空気流体の一部を、管路83を介して、膨張タービン10に導入することによって、空気分離装置300に必要な寒冷を発生させていること、及び、第2製品回収管路41を介して、管路84に導出された高圧窒素ガス流体の一部を圧縮機35で圧縮し、昇圧窒素ガス流体を生成していること以外は、先に説明した第1の実施の形態の空気分離方法と同様な手法により行うことができる。
【0087】
第3の実施形態の空気分離方法では、第1原料空気圧縮機1で圧縮され、精製器2で不純物が除去された高圧原料空気流体の一部は管路83に導出される。管路83に導出された当該高圧原料空気流体の一部は、膨張タービン10で断熱膨張され、空気分離装置300に必要な寒冷を発生させる。
膨張タービン10で断熱膨張させて発生する寒冷流体は、管路642を介して、主熱交換器11で冷却されたのち、第1間接熱交換器7に導入される。
【0088】
第3の実施形態の空気分離方法では、管路84に導出された高圧窒素ガス流体は、圧縮機35で所定の圧力に昇圧され、昇圧窒素ガス流体となる。昇圧窒素ガス流体は、主熱交換器11で冷却され、減圧弁29で所定の圧力に減圧されたのち、高圧塔4の塔頂部に導入される。
【0089】
図3に示す空気分離装置300を用いた第3の実施形態の空気分離方法は、高圧原料空気流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離方法と同様の効果を奏する。
【0090】
[第4の実施形態]
第4の実施形態の空気分離装置は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧窒素ガス流体の一部を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする。
【0091】
図4は、本発明の第4の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。図4において、図1図3に示す第1乃至第3の実施形態の空気分離装置100,200,300と同一構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
なお、第4の実施形態の説明において、「低圧」とは、製品低圧窒素ガスの圧力以上で、かつ、アルゴン塔6の操作圧力よりも低い圧力のことをいう。「中圧」とは、アルゴン塔6の操作圧力以上で、かつ製品高圧窒素ガスの圧力よりも低い圧力のこという。「高圧」とは、製品高圧窒素ガスの圧力以上の圧力のことをいう。
【0093】
図4に示すように、第4の実施形態の空気分離装置400は、第1の実施形態の空気分離装置100を構成する第2原料空気圧縮機3、減圧弁21、管路52、及び管路641を構成要素から除くこと、並びに管路80,84、減圧弁29、及び圧縮機35を有すること以外は、空気分離装置100と同様に構成される。
【0094】
上記構成とされた第4の実施形態の空気分離装置400では、膨張タービン10は、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離装置100と同様の効果を奏する。
【0095】
以下、図4を参照して、第4の実施形態の空気分離方法について説明する。
第4の実施形態の空気分離方法は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0096】
第4の実施形態の空気分離方法は、高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部を管路53、管路54、及び第2製品回収管路41を介して、管路80に導出し、当該高圧窒素ガス流体を管路80から膨張タービン10に導入することによって、空気分離装置400に必要な寒冷を発生させていること、及び、第2製品回収管路41を介して、管路84に導出された高圧窒素ガス流体の一部を圧縮機35で圧縮し、昇圧窒素ガス流体を生成していること以外は、先に説明した第1の実施の形態の空気分離方法と同様な手法により行うことができる。
【0097】
第4の実施形態の空気分離方法では、管路53に導出された高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部は、管路54を介して第2製品回収管路41に導出される。第2製品回収管路41に導出された高圧窒素ガス流体は、主熱交換器11で昇温される。
第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で昇温された高圧窒素ガス流体の一部は、管路80に導出され、膨張タービン10で断熱膨張され、空気分離装置200に必要な寒冷を発生させる。
膨張タービン10で断熱膨張させて発生する寒冷流体は、管路642を介して、主熱交換器11で冷却されたのち、第1間接熱交換器7に導入される。
【0098】
第4の実施形態の空気分離方法では、管路84に導出された高圧窒素ガス流体は、圧縮機35で所定の圧力に昇圧され、昇圧窒素ガス流体となる。昇圧窒素ガス流体は、主熱交換器11で冷却され、減圧弁29で所定の圧力に減圧されたのち、高圧塔4の塔頂部に導入される。
【0099】
図4に示す空気分離装置400を用いた第4の実施形態の空気分離方法は、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離方法と同様の効果を奏する。
【0100】
[第5の実施形態]
第5の実施形態の空気分離装置は、深冷分離法によって原料空気を分離する空気分離装置であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し、高圧原料空気流体を得る原料空気前処理設備と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留して塔頂部の高圧窒素ガス流体と中間部の高圧窒素富化空気流体と塔底部の高圧酸素富化液化空気流体とに精留分離する高圧塔と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる膨張タービンと、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を生成するとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を生成する第1間接熱交換器と、前記低圧酸素富化空気流体を前記膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧塔と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン塔と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を生成するとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を生成する第2間接熱交換器と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を生成するとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を生成する第3間接熱交換器と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換器で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収管路と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収管路と、を有することを特徴とする。
【0101】
図5は、本発明の第4の実施形態の空気分離装置の概略構成を示す系統図である。図5において、図1図4に示す第1乃至第4の実施形態の空気分離装置100,200,300,400と同一構成部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。
なお、第5の実施形態の説明において、「低圧」とは、製品低圧窒素ガスの圧力以上で、かつ、アルゴン塔6の操作圧力よりも低い圧力のことをいう。「中圧」とは、アルゴン塔6の操作圧力以上で、かつ製品高圧窒素ガスの圧力よりも低い圧力のこという。「高圧」とは、製品高圧窒素ガスの圧力以上の圧力のことをいう。
【0102】
図5に示すように、第5の実施形態の空気分離装置500は、第1の実施形態の空気分離装置100を構成する第2原料空気圧縮機3、減圧弁21、管路52、及び管路641を構成要素から除くこと、及び管路80,86を有すること以外は、空気分離装置100と同様に構成される。
【0103】
管路86は一端がアルゴン塔6の下部と接続され、他端が第3製品回収管路42と接続されている。管路86は、アルゴン塔6内の中圧酸素ガス流体の一部を第3製品回収管路42に導出する。第5の実施形態では、第3製品回収管路42は、アルゴン塔6内の第3間接熱交換器9で蒸発気化された中圧酸素ガス流体の一部を、製品中圧酸素ガスとして回収する管路である。
【0104】
上記構成とされた第5の実施形態の空気分離装置500は、先に説明した第1の実施形態の空気分離装置300と同様の効果を奏する。
【0105】
上記構成とされた第5の実施形態の空気分離装置500では、膨張タービン10は、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張して寒冷流体を発生させる。第5の実施形態の空気分離装置500は、前記寒冷流体と、減圧後の低圧酸素富化液化空気流体とを間接熱交換する第1間接熱交換器7を有するので、先に説明した第1の実施形態の空気分離装置100と同様の効果を奏する。
【0106】
以下、図5を参照して、第5の実施形態の空気分離方法について説明する。
第5の実施形態の空気分離方法は、深冷分離法により、原料空気を分離する空気分離方法であって、原料空気を圧縮、精製、冷却し高圧原料空気流体を得る原料空気圧縮工程と、前記高圧原料空気流体を低温蒸留により高圧窒素ガス流体と高圧窒素富化空気流体と高圧酸素富化液化空気流体とに分離する高圧分離工程と、前記高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させて寒冷流体を発生させる断熱膨張工程と、前記寒冷流体と、前記高圧酸素富化液化空気流体を減圧して得られた低圧酸素富化液化空気流体と、を間接熱交換し、前記寒冷流体を凝縮液化して低圧液化ガス流体を得るとともに、前記低圧酸素富化液化空気流体を蒸発気化して低圧酸素富化空気流体を得る第1間接熱交換工程と、前記低圧酸素富化空気流体を膨張タービンを経由することなく低温蒸留により低圧窒素ガス流体と低圧液化酸素流体と低圧アルゴン富化液化酸素流体とに分離する低圧分離工程と、前記低圧アルゴン富化液化酸素流体を加圧した後、低温蒸留によりアルゴンガス流体と中圧液化酸素流体とに分離するアルゴン分離工程と、前記アルゴンガス流体と前記低圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記アルゴンガス流体を凝縮液化して液化アルゴン流体を得るとともに、前記低圧液化酸素流体を蒸発気化して低圧酸素ガス流体を得る第2間接熱交換工程と、前記高圧窒素ガス流体と前記中圧液化酸素流体とを間接熱交換し、前記高圧窒素ガス流体を凝縮液化して高圧液化窒素流体を得るとともに、前記中圧液化酸素流体を蒸発気化させて中圧酸素ガス流体を得る第3間接熱交換工程と、前記アルゴンガス流体の一部、前記液化アルゴン流体の一部または前記第2間接熱交換工程で液化しなかったアルゴンガス流体のうち、少なくとも1種のアルゴン流体を製品アルゴンガスとして導出する第1製品回収工程と、前記低圧液化酸素流体の一部、前記中圧液化酸素流体の一部、前記高圧窒素ガス流体の一部もしくは前記高圧液化窒素流体の一部のうち、少なくとも1種以上の流体を製品として導出する第2製品回収工程と、を含むことを特徴とする。
【0107】
第5の実施形態の空気分離方法は、高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部を管路53、及び管路54を介して、管路80に導出し、当該高圧窒素ガス流体を管路80から膨張タービン10に導入することによって、空気分離装置500に必要な寒冷を発生させていること、及び、アルゴン塔6内の中圧酸素ガス流体を、管路86を介して、第3製品回収管路42に導出し、当該中圧酸素ガス流体を主熱交換器11で間接熱交換によって昇温し、第3製品回収管路42から製品中圧酸素ガスとして導出していること以外は、先に説明した第1の実施の形態の空気分離方法と同様な手法により行うことができる。
【0108】
第5の実施形態の空気分離方法では、管路53に導出された高圧塔4の塔頂部の高圧窒素ガス流体の一部は、管路54を介して第2製品回収管路41に導出される。第2製品回収管路41に導出された高圧窒素ガス流体は、主熱交換器11で昇温される。
第2製品回収管路41に導出され、主熱交換器11で昇温された高圧窒素ガス流体の一部は膨張タービン10で断熱膨張され、空気分離装置500に必要な寒冷を発生させる。
膨張タービン10で断熱膨張させて発生する寒冷流体は、管路642を介して、主熱交換器11で昇温されたのち、第1間接熱交換器7に導入される。
第5の実施形態では、アルゴン塔6内の第3間接熱交換器9で蒸発気化された中圧酸素ガス流体の一部を管路86に導出し、第3製品回収管路42で製品中圧酸素ガスとして導出している。
【0109】
図5に示す空気分離装置500を用いた第5の実施形態の空気分離方法は、高圧窒素ガス流体の一部を断熱膨張させるので、先に説明した第1の実施形態の空気分離方法と同様の効果を奏する。
【0110】
図7aは従来の空気分離装置600の構成、及びその配置を示す模式図である。図7bは、本発明の第1乃至第5の実施形態の空気分離装置100,200,300,400,500の構成、及びその配置を示す模式図である。
【0111】
図7a,bを比較すると、どちらの空気分離装置とも、低圧塔5の上方に第1間接熱交換器7が配置されている。従来の空気分離装置では液ポンプ34が必要であるが、本発明では液ポンプ34を設置する必要がないため、従来よりも省スペース化を図ることができ、コスト、設置面積、及び消費動力を削減可能な空気分離装置を実現することができる。
【0112】
以上説明した少なくとも一つの実施形態の空気分離方法、及び空気分離装置によれば、第1間接熱交換器外筒13内の圧力を、130kPaAとすることができる。これにより、管路61に導出される高圧酸素富化液化空気流体の一部を送液する管路62に液ポンプを設けなくとも、第1間接熱交換器外筒13に当該高圧酸素富化液化空気流体を送液することができる。したがって、かかる液ポンプを設置するための設備コスト、設置スペース及び動力を削減することができる。
【0113】
以上、本発明のいくつかの実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されない。また、本発明は特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が加えられてよい。
【符号の説明】
【0114】
100,200,300,400,500,600・・・空気分離装置、1・・・第1原料空気圧縮機、2・・・精製器、3・・・第2原料空気圧縮機、4・・高圧塔、5・・・低圧塔、6・・・アルゴン塔、7・・・第1間接熱交換器、8・・・第2間接熱交換器、9・・・第3間接熱交換器、10・・・膨張タービン、11・・・主熱交換器、12・・・過冷器、13・・・第1間接熱交換器外筒、14・・・第2間接熱交換器外筒、21〜29・・・減圧弁、31,32,33,34・・・液ポンプ、35・・・圧縮機、41,44,45・・・第2製品回収管路、42、43・・・第3製品回収管路、46・・・第1製品回収管路、50〜63,65〜86,641,642・・・管路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7